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【発明の名称】 減衰力制御装置
【発明者】 【氏名】大作 覚

【要約】 【課題】車体の上下方向の振動抑制の制御性能を損なうことなく、車体のピッチ運動及びロール運動も抑制する。

【解決手段】ステップ102にて、車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力が、スカイフック理論を用いた車両の単輪モデルに基づいて各輪毎に計算される。ステップ104にて、車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力が、車両の前後輪モデルに基づいて各輪毎に計算される。ステップ106にて、車体のロール方向の振動を抑制するための第3目標減衰力が、車両の左右輪モデルに基づいて各輪毎に計算される。そして、ステップ108にて、前記第1〜第3目標減衰力のうちで絶対値の最大なものが各輪毎に選択される。ステップ110〜116にて、各輪位置のダンパの減衰力が前記選択された目標減衰力に設定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、前記計算された各輪毎の第1及び第2目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を各輪毎にそれぞれ決定する最終目標減衰力決定手段と、前記決定した最終的な各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記決定した最終的な各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項2】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、前記計算された第1及び第2目標減衰力のうちで大きな方の目標減衰力を各輪毎にそれぞれ選択する選択手段と、前記選択した各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記選択した各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項3】前記第1目標減衰力計算手段は車体の上下方向の運動状態量に応じて第1目標減衰力を計算するものであり、前記第2目標減衰力計算手段は車体のピッチ方向の運動状態量に応じて第2目標減衰力を計算するものである前記請求項1又は請求項2に記載の減衰力制御装置。
【請求項4】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、前記計算された各輪毎の第1及び第2目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を各輪毎にそれぞれ決定する最終目標減衰力決定手段と、前記決定した最終的な各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記決定した最終的な各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項5】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、前記計算された第1及び第2目標減衰力のうちで大きな方の目標減衰力を各輪毎にそれぞれ選択する選択手段と、前記選択した各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記選択した各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項6】前記第1目標減衰力計算手段は車体の上下方向の運動状態量に応じて第1目標減衰力を計算するものであり、前記第2目標減衰力計算手段は車体のロール方向の運動状態量に応じて第2目標減衰力を計算するものである前記請求項4又は請求項5に記載の減衰力制御装置。
【請求項7】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するための第3目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第3目標減衰力計算手段と、前記計算された各輪毎の第1、第2及び第3目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を各輪毎にそれぞれ決定する最終目標減衰力決定手段と、前記決定した最終的な各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記決定した最終的な各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項8】車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するための第3目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第3目標減衰力計算手段と、前記計算された第1、第2及び第3目標減衰力のうちで最大の目標減衰力を各輪毎にそれぞれ選択する選択手段と、前記選択した各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記選択した各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。
【請求項9】前記第1目標減衰力計算手段は車体の上下方向の運動状態量に応じて第1目標減衰力を計算するものであり、前記第2目標減衰力計算手段は車体のピッチ方向の運動状態量に応じて第2目標減衰力を計算するものであり、前記第3目標減衰力計算手段は車体のロール方向の運動状態量に応じて第3目標減衰力を計算するものである前記請求項7又は請求項8に記載の減衰力制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の減衰力制御装置における第1の従来技術としては、スカイフック理論に基づいて実減衰係数を決定、すなわち車体の上下方向速度と、車体の車輪に対する上下方向の相対速度との比に応じて実減衰係数を決定する減衰力制御装置が知られている(例えば、特開平5−294122号公報)。この装置においては、各輪位置毎の車体の上下方向速度を車体のロール運動速度、ピッチ運動速度、ヒーブ運動速度及びワープ運動速度に分解し、前後加速度の微分値に応じて変化するピッチゲインを前記分解したピッチ運動速度に乗算し、横加速度の微分値に応じて変化するロールゲインを前記分解したロール運動速度に乗算し、かつ定数ゲインをヒーブ運動速度及びワープ運動速度にそれぞれ乗算し、これらのゲイン調整されたロール運動速度、ピッチ運動速度、ヒーブ運動速度及びワープ運動速度を各輪位置毎の車体の上下方向速度に再合成し、同再合成した各輪位置毎の車体の上下方向速度と各輪位置毎の車体の車輪に対する相対速度との比に応じて実減衰係数を決定し、各輪位置における車体の上下方向の振動を抑制するとともに、車体のピッチング及びローリングも効果的に抑制するようにしている。
【0003】また、第2の従来技術としては、各輪位置における車体の車輪に対する上下方向の相対変位量をそれぞれ検出し、車体のピッチング、ローリングなどを考慮した車両の各種運動方程式に基づき前記相対変位量を用いて各輪位置における車体の上下方向速度を計算するとともに、前記相対変位量を微分することによって各輪位置における車体の車輪に対する上下方向の相対速度を計算し、前記各上下方向速度と前記各相対速度との比に応じて実減衰係数を決めることにより、前記相対変位量を検出するのみで、ダンパの減衰力をスカイフック理論に基づいて制御するようにした減衰力制御装置も知られている(特開平6−344743号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第1及び第2の従来技術にあっては、車体のピッチ運動及びロール運動に応じて、車体の上下方向の振動抑制制御用のアルゴリズム自体すなわちスカイフック理論に基づくアルゴリズム自体を直接補正しているので、同補正により車体のピッチ及びロール方向の振動に対する抑制効果は発揮されるが、本来的には車体の上下方向の振動を抑制するために与えた設計仕様による減衰力制御の基本性能を損なうことになってしまう。
【0005】
【発明の大略】本発明は上記課題に対処するためになされたもので、その目的は、車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体のピッチ運動及び/又はロール運動に対する振動抑制効果も期待できる減衰力制御装置を提供することにある。
【0006】上記目的を達成するために、本発明の第1の構成上の特徴は、車両の各輪と車体との間にそれぞれ設けた各ダンパの減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第1目標減衰力計算手段と、車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段と、前記計算された各輪毎の第1及び第2目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を各輪毎にそれぞれ決定する最終目標減衰力決定手段と、前記決定した最終的な各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記決定した最終的な各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とを備えたことにある。この場合、例えば、前記第1目標減衰力計算手段は車体の上下方向の運動状態量に応じて第1目標減衰力を計算するものであり、前記第2目標減衰力計算手段は車体のピッチ方向の運動状態量に応じて第2目標減衰力を計算するものである。
【0007】前記第1の構成上の特徴によれば、第1及び第2目標減衰力計算手段がそれぞれ第1及び第2目標減衰力を計算し、最終目標減衰力決定手段及び出力手段の作用により、ダンパの減衰力が第1及び第2目標減衰力に基づいて決定した最終的な目標減衰力に各輪毎に設定制御される。この場合、第1目標減衰力は車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するために計算されたものであり、また第2目標減衰力は車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するために前記第1目標減衰力とは独立して計算されたものであるので、第1目標減衰力がもつ本来的な車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体のピッチ運動に対する不足減衰力が補償されることになり、車体の上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体のピッチ運動に対する振動も抑制されて、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0008】また、前記第1の構成上の特徴である最終目標減衰力決定手段と出力手段とを、それぞれ前記計算された第1及び第2目標減衰力のうちで大きな方の目標減衰力を各輪毎にそれぞれ選択する選択手段と、前記選択した各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記選択した各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とで構成してもよい。
【0009】これによれば、選択手段及び出力手段の作用により、ダンパの減衰力が第1及び第2目標減衰力のうちで大きな方の目標減衰力に各輪毎に設定制御されるので、車体のピッチ方向の振動がある程度大きくなったときにのみ、第1目標減衰力が第2目標減衰力よりも小さいことを条件に、各輪位置のダンパの減衰力が車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力に設定される。そして、それ以外の場合には、各輪位置のダンパの減衰力は、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力に設定される。したがって、これによれば、第1目標減衰力計算手段によって計算された第1目標減衰力がもつ本来的な車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能をより的確に確保しつつ、車体のピッチ運動に対する不足減衰力が補償されることになるので、車体の上下振動がより効果的に抑制されるとともに、併せて車体のピッチ運動に対する振動も抑制されて、車両の乗り心地及び走行安定性がより良好に保たれる。
【0010】また、本発明の第2の構成上の特徴は、前記第1の構成上の特徴における前記第2目標減衰力計算手段を、車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するための第2目標減衰力を各輪毎にそれぞれ計算する第2目標減衰力計算手段に置換したことにある。この場合、例えば前記第2目標減衰力計算手段は車体のロール方向の運動状態量に応じて第2目標減衰力を計算するものである。
【0011】この第2の構成上の特徴においては、前記第1の構成上の特徴における車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力が、車体のロール方向の振動を抑制するための第2目標減衰力に置換されているので、第1目標減衰力がもつ本来的な車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体のロール運動に対する不足減衰力が補償されることになり、車体の上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体のロール運動に対する振動も抑制されて、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0012】さらに、本発明の第3の構成上の特徴は、前記第1の構成上の特徴において、前記第2の構成上の特徴である第2目標減衰力計算手段を、第3目標減衰力を計算する第3目標減衰力計算手段として加えるとともに、前記最終目標減衰力決定手段を、前記計算された各輪毎の第1、第2及び第3目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を各輪毎にそれぞれ決定する最終目標減衰力決定手段で置換したことにある。また、この場合も、前記最終目標減衰力決定手段と出力手段とを、それぞれ前記計算された第1、第2及び第3目標減衰力のうちで最大の目標減衰力を各輪毎にそれぞれ選択する選択手段と、前記選択した各目標減衰力に応じた制御信号を前記各ダンパにそれぞれ出力して同各ダンパによる減衰力を前記選択した各目標減衰力にそれぞれ設定制御する出力手段とで構成してもよい。
【0013】この第3の構成上の特徴においては、前記第1及び第2の構成上の特徴における第1及び第2目標減衰力に代えて、ダンプの減衰力は、独立して計算された第1〜第3目標減衰力に基づいて決定した目標減衰力、例えば第1、第2及び第3目標減衰力のうちで最大の目標減衰力に各輪毎に設定制御される。この場合、第1目標減衰力は車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するために計算されたものであり、第2目標減衰力は車両の前後輪モデルに基づいて車体のピッチ方向の振動を抑制するために計算されものであり、第3目標減衰力は車両の左右輪モデルに基づいて車体のロール方向の振動を抑制するために計算されたものであり、これらの第1〜第3目標減衰力はそれぞれ独立して計算されたものである。したがって、この第3の構成上の特徴によれば、第1目標減衰力計算手段によって計算された第1目標減衰力がもつ本来的な車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体のピッチ運動及びロール運動に対する不足減衰力が補償されることになり、車体の上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体のピッチ運動及びロール運動に対する振動も抑制されて、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明すると、図1は同実施形態に係る車両の減衰力制御装置を概略ブロック図により示している。
【0015】この車両は、左右前輪FW1,FW2及び左右後輪RW1,RW2の各輪位置にて車体BD(図3,5,7に示す)と車輪FW1,FW2,RW1,RW2との間に設けられたサスペンション装置10A,10B,10C,10Dを備えている。これらのサスペンション装置10A,10B,10C,10Dは、車体BDと各輪FW1,FW2,RW1,RW2との間に設けられて車体BDを各輪FW1,FW2,RW1,RW2に対してそれぞれ弾性的に支持するばね11a,11b,11c,11dと、これらのばね11a,11b,11c,11dに並列に設けられて車体BDの各輪FW1,FW2,RW1,RW2に対する振動をそれぞれ減衰させるダンパ12a,12b,12c,12dとを備えている。なお、これらのばね11a,11b,11c,11d及びダンパ12a,12b,12c,12dの各組は、それぞれショックアブソーバを構成するものである。ダンパ12a,12b,12c,12dはオリフィス開度を変更可能としており、減衰係数がそれぞれ可変となっている。
【0016】また、この車両は、各ダンパ12a,12b,12c,12dの減衰係数(減衰力)を可変設定するための電気制御装置20を備えている。電気制御装置20は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路などからなり、内蔵のタイマにより所定の短時間毎に図2のプログラム(図3,5,7のサブルーチンを含む)を繰り返し実行して、各ダンパ12a,12b,12c,12dのオリフィス開度を制御する。この電気制御装置20には、ばね上加速度センサ21a〜21d、相対変位量センサ22a〜22d、ピッチ角速度センサ23及びロール角速度センサ24が接続されている。
【0017】ばね上加速度センサ21a〜21dは、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置において車体BD(ばね上部材)にそれぞれ組み付けられ、同各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの絶対空間に対する上下方向の加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''をそれぞれ検出して、同上下加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''を表す検出信号を出力する。なお、上下加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''は、上方向を正とするとともに下方向を負とする。相対変位量センサ22a〜22dは、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BD(ばね上部材)と車輪FW1,FW2,RW1,RW2(ばね下部材)との間にそれぞれ組み付けられ、同各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの各輪FW1,FW2,RW1,RW2に対する上下方向の相対変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4をそれぞれ検出して、同変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4を表す検出信号を出力する。なお、これらの相対変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4は、所定の基準変位量に対する変位量であり、小さくなる方向(ダンパの縮み方向)を正とするとともに大きくなる方向(ダンパの伸び方向)を負とする。
【0018】ピッチ角速度センサ23は、車体BDの重心位置近傍に組み付けられたレートセンサで構成されており、車体BDのピッチ方向の角速度Pa'を検出して同角速度Pa'を表す検出信号を出力する。ロール角速度センサ24は、車体BDの重心位置近傍に組み付けられたレートセンサで構成されており、車体BDのロール方向の角速度Ra'を検出して同角速度Ra'を表す検出信号を出力する。
【0019】次に、上記のように構成した車両の減衰力制御装置の動作について説明すると、図示しないイグニッションスイッチの投入後、電気制御装置20は、図2のプログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行し始める。このプログラムの実行はステップ100にて開始され、ステップ102,104,106にて第1〜第3減衰力計算ルーチンをそれぞれ実行する。
【0020】第1減衰力計算ルーチンは、図3に詳細に示されており、車両の単輪モデルに基づいて車体BDのヒーブ方向(上下方向)の振動を抑制するための各ダンパ12a,12b,12c,12dによる第1目標減衰力を計算するものである。
【0021】この第1減衰力計算ルーチンについて説明する前に、第1目標減衰力の計算方法について説明しておく。図4は、車両における単輪の1自由度モデルを示している。図中、Mbは、車体BDの質量である。xpbは、絶対空間における車体BD(ばね上部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xpwは、絶対空間における車輪W(ばね下部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。これらの変位量xpb,xpwは、いずれも上方向を正とする。Ksは、ばね11a,11b,11c,11dを代表して示すばね11のばね定数である。Csは、各ダンパ12a,12b,12c,12dを代表して示すダンパ12の減衰係数である。Cskは、スカイフック理論に基づいてスカイフックさせた仮想的なダンパ12Aの減衰係数であり、予め適当に定められた定数である。
【0022】まず、ダンパ12に代えて仮想的なダンパ12Aを用いた仮想モデルについて考える。車体BDの上下加速度をxpb''とするとともに、同車体BDの上下速度をxpb'とすると、仮想モデルのヒーブ方向の車体BDの運動方程式は下記数1のように表される。
【0023】
【数1】Mbpb''=Ks(xpw−xpb)−Cskpb’また、現実のダンパ12を用いた実モデルについて考えると、同実モデルの上下方向の運動方程式は下記数2のように表される。
【0024】
【数2】
bpb''=Ks(xpw−xpb)+Cs(xpw'−xpb')前記数1,2より、下記数3が導かれる。そして、この数3で規定される関係により、スカイフック理論に基づいてダンパ12(又はダンパ12A)によって車体BDに付与される理想的な減衰力Fdは下記数4で表される。
【0025】
【数3】Cs(xpw'−xpb')+Cskpb'=0【0026】
【数4】Fd=Cs(xpw'−xpb')=−Cskpb'次に、第1減衰力計算ルーチンについて説明すると、同ルーチンの実行は図3のステップ150にて開始され、ステップ152にてばね上加速度センサ21a〜21dから各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの上下加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''をそれぞれ入力する。次に、ステップ154にて前記入力した上下加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''を積分することにより、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの上下速度xpb1',xpb2',xpb3',xpb4'をそれぞれ計算する。
【0027】次に、ステップ156にて、前記計算した各上下速度xpb1',xpb2',xpb3',xpb4'に予め適当に定めたスカイフック減衰係数Cskをそれぞれ乗算する下記数5の演算の実行により、各ダンパ12a,12b,12c,12dによる第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4をそれぞれ計算する。
【0028】
【数5】Fdi=−Cskpbi'ただし、前記数5中の「i」は、1〜4の正数である。また、この例では、各輪FW1,FW2,RW1,RW2共通のスカイフック減衰係数Cskを用いるようにしたが、前輪FW1,FW2と後輪RW1,RW2とで異なる値を用いるようにしてもよい。そして、ステップ158にて、この第1減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0029】第2減衰力計算ルーチンは、図5に詳細に示されており、車両の前後輪モデルに基づいて車体BDのピッチ方向の振動を抑制するための各ダンパ12a,12b,12c,12dによる第2目標減衰力を計算するものである。
【0030】この第2減衰力計算ルーチンについて説明する前に、第2目標減衰力の計算方法について説明しておく。図6は、車両における前後輪の2自由度モデルを示している。図中、xbfは、前輪FW1,FW2位置における車体BD(ばね上部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xbrは、後輪RW1,RW2位置における車体BD(ばね上部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xwfは、前輪FW1,FW2(ばね下部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xwrは、後輪RW1,RW2(ばね下部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。これらの変位量xbf,xwf,xbr,xwrは、いずれも上方向を正とする。Ksfは、前輪FW1,FW2位置におけるばね11a,11bを代表して示すばね11fのばね定数である。Ksrは、後輪RW1,RW2位置におけるばね11c,11dを代表して示すばね11rのばね定数である。Csfは、前輪FW1,FW2位置におけるダンパ12a,12bを代表して示すダンパ12fの減衰係数である。Csrは、後輪RW1,RW2位置におけるダンパ12c,12dを代表して示すダンパ12rの減衰係数である。Cpは、車体BDのピッチ方向の振動を抑制するための仮想的なダンパ12pの減衰係数であり、予め適当に定められた定数である。
【0031】まず、現実のダンパ12f,12rに代えて仮想的なダンパ12pを用いた仮想モデルについて考える。車体BDの上下加速度をxpb''とするとともに、車体BDのピッチ方向の角加速度及び角速度をそれぞれPa'',Pa'とすると、仮想モデルのヒーブ方向及びピッチ方向の車体BDの各運動方程式は下記数6,7のようにそれぞれ表される。なお、これらのピッチ方向の角加速度Pa''及び角速度Pa'は、共に車体BDの前輪FW1,FW2側が上昇し、後輪RW1,RW2側が下降する回転方向を正とする。
【0032】
【数6】
bpb''=Ksf(xwf−xbf)+Ksr(xwr−xbr)【0033】
【数7】Ipa''=−Lfsf(xwf−xbf)+Lrsr(xwr−xbr)−Cpa'ただし、Ipは車体BDのピッチ方向の慣性モーメントであり、Lfは前輪車軸と重心点間距離であり、Lrは後輪車軸と重心点間距離である。
【0034】また、現実のダンパ12f,12rを用いた実モデルについて考えると、同実モデルのヒーブ方向及びピッチ方向の車体BDの各運動方程式は下記数8,9のようにそれぞれ表される。
【0035】
【数8】

【0036】
【数9】

【0037】前記数6〜9より、下記数10,11が導かれる。
【0038】
【数10】
sf(xwf'−xbf')+Csr(xwr'−xbr')=0【0039】
【数11】Lfsf(xwf'−xbf')−Lrsr(xwr'−xbr')+Cpa'=0そして、これらの数10,11で規定される関係により、車体BDのピッチ方向の振動を抑制するために前輪用ダンパ12f及び後輪用ダンパ12r(又はダンパ12p)によって車体BDに付与される理想的な減衰力PFf,PFrは下記数12,13で表される。
【0040】
【数12】
PFf=Csf(xwf'−xbf')=Cpa'/(Lf+Lr)【0041】
【数13】
PFr=Csr(xwr'−xbr')=−Cpa'/(Lf+Lr)次に、第2減衰力計算ルーチンについて説明すると、同ルーチンの実行は図5のステップ160にて開始され、ステップ162にてピッチ角速度センサ23から車体BDのピッチ角速度Pa'を入力する。次に、ステップ164にて、車体BDのピッチ方向の振動を抑制するための理想的かつ予め適当に定めた減衰係数Cp、前記入力したピッチ角速度Pa'、及び予め定められていて前輪及び後輪車軸と重心点間の各距離Lf,Lrを用いた下記数14,15の演算の実行により、車体BDのピッチ方向の振動を抑制するために前輪用ダンパ12f及び後輪用ダンパ12rの各目標減衰力PFf,PFrをそれぞれ計算する。
【0042】
【数14】PFf=Cpa'/(Lf+Lr)【0043】
【数15】PFr=−Cpa'/(Lf+Lr)次に、ステップ166にて、前記計算した前輪用ダンパ12fの目標減衰力PFfを左右前輪FW1,FW2用の第2目標減衰力PFd1,PFd2としてそれぞれ設定するとともに、前記計算した後輪用ダンパ12rの目標減衰力PFrを左右後輪RW1,RW2用の第2目標減衰力PFd3,PFd4としてそれぞれ設定する。そして、ステップ168にて、この第2減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0044】第3減衰力計算ルーチンは、図7に詳細に示されており、車両の左右輪モデルに基づいて車体BDのロール方向の振動を抑制するための各ダンパ12a,12b,12c,12dによる第3目標減衰力を計算するものである。
【0045】この第3減衰力計算ルーチンについて説明する前に、第3目標減衰力の計算方法について説明しておく。図8は、車両における左右輪の2自由度モデルを示している。図中、xbmは、右輪FW2,RW2位置における車体BD(ばね上部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xbhは、左輪FW1,RW1位置における車体BD(ばね上部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xwmは、右輪FW2,RW2(ばね下部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。xwhは、左輪FW1,RW1(ばね下部材)の基準位置に対する上下方向の変位量である。これらの変位量xbm,xwm,xbh,xwhは、いずれも上方向を正とする。Ksは、右輪FW2,RW2位置におけるばね11b,11dを代表して示すばね11mのばね定数であるとともに、左輪FW1,RW1位置におけるばね11a,11cを代表して示すばね11hのばね定数である。Csは、右輪FW2,RW2位置におけるダンパ12b,12dを代表して示すダンパ12mの減衰係数であるとともに、左輪FW1,RW1位置におけるダンパ12a,12cを代表して示すダンパ12hの減衰係数である。Crは、車体BDのロール方向の振動を抑制するための仮想的なダンパ12rの減衰係数であり、予め適当に定められた定数である。
【0046】まず、ダンパ12m,12hに代えて仮想的なダンパ12rを用いた仮想モデルについて考える。車体BDの上下加速度をxpb''とするとともに、車体BDのロール方向の角加速度及び角速度をそれぞれRa'',Ra'とすると、仮想モデルのヒーブ方向及びロール方向の車体BDの各運動方程式は下記数16,17のようにそれぞれ表される。なお、これらの角加速度Ra''及び角速度Ra'は、共に車体BDの左輪FW1,RW1側が上昇し、右輪FW2,RW2側が下降する回転方向を正とする。
【0047】
【数16】
bpb''=Ks(xwm−xbm)+Ks(xwh−xbh)【0048】
【数17】Ira''=(Ks+K)(xwh−xbh−xwm+xbm)T/2−Cra'ただし、Irは車体BDのロール方向の慣性モーメントであり、Kはスタビライザのばね定数であり、Tは車両のトレッドである。
【0049】また、現実のダンパ12m,12hを用いた実モデルについて考えると、同実モデルのヒーブ方向及びロール方向の車体BDの各運動方程式は下記数18,19のようにそれぞれ表される。
【0050】
【数18】

【0051】
【数19】

前記数16〜19より、下記数20,21が導かれる。
【0052】
【数20】Cs(xwh'−xbh'+xwm'−xbm')=0【0053】
【数21】Cs(xwh'−xbh'−xwm'+xbm')T/2+Cra'=0そして、これらの数20,21で規定される関係により、車体BDのロール方向の振動を抑制するために右輪用ダンパ12m及び左輪用ダンパ12h(又はダンパ12r)によって車体BDに付与される理想的な減衰力は下記数22,23で表される。
【0054】
【数22】RFm=Cs(xwm'−xbm')=Cra'/T【0055】
【数23】RFh=Cs(xpwh'−xpbh')=−Cra'/T次に、第3減衰力計算ルーチンについて説明すると、同ルーチンの実行は図7のステップ170にて開始され、ステップ172にてロール角速度センサ24から車体BDのロール角速度Ra'を入力する。次に、ステップ174にて、車体BDのロール方向の振動を抑制するための理想的かつ予め適当に定めたな減衰係数Cr、前記入力したロール角速度Ra'、及び予め定められていて車両のトレッドTを用いた下記数24,25の演算の実行により、車体BDのロール方向の振動を抑制するために右輪用ダンパ12m及び左輪用ダンパ12hの各目標減衰力RFm,RFhをそれぞれ計算する。
【0056】
【数24】RFm=Cra'/T【0057】
【数25】RFh=−Cra'/T次に、ステップ176にて、前記計算した右輪用ダンパ12mの目標減衰力RFmを右輪FW2,RW2用の第3目標減衰力RFd2,RFd4としてそれぞれ設定するとともに、前記計算した左輪用ダンパ12hの目標減衰力RFhを左輪FW1,RW1用の第3目標減衰力RFd1,RFd3としてそれぞれ設定する。そして、ステップ178にて、この第3減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0058】ふたたび、図2のプログラムの説明に戻ると、前記ステップ102〜106の処理による第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4、第2目標減衰力PFd1,PFd2,PFd3,PFd4及び第3目標減衰力RFd1,RFd2,RFd3,RFd4の計算後、ステップ108にて同第1〜第3目標減衰力のうちで絶対値の最大なものを各輪FW1,FW2,RW1,RW2毎に選択する。すなわち、左前輪FW1用の第1〜第3目標減衰力Fd1,PFd1,RFd1の各絶対値|Fd1|,|PFd1|,|RFd1|をそれぞれ比較して、これらの絶対値|Fd1|,|PFd1|,|RFd1|のうちで最大である値に対応した第1〜第3目標減衰力Fd1,PFd1,RFd1のいずれか一つをダンパ12aの目標減衰力F1として設定する。この左前輪FW1用の処理と同様な処理を右前輪FW2、左後輪RW1及び右後輪RW2についても順次行い、ダンパ12b,12c、12dの各目標減衰力Fi(ただし、iは2〜4の整数)を順次決定する。
【0059】次に、ステップ110にて、相対変位量センサ22a〜22dから相対変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4をそれぞれ入力し、ステップ112にて、同入力した各相対変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4をそれぞれ微分演算することにより、車体BDの各輪FW1,FW2,RW1,RW2に対する相対速度xpw1'−xpb1',xpw2'−xpb2',xpw3'−xpb3',xpw4'−xpb4'をそれぞれ計算する。
【0060】前記ステップ112の処理後、ステップ114にて、相対速度−減衰力テーブルを参照することにより、前記ステップ108の処理によって決定した各目標減衰力F1,F2,F3,F4と、前記ステップ112の処理によって計算した相対速度xpw1'−xpb1',xpw2'−xpb2',xpw3'−xpb3',xpw4'−xpb4'xpw'−xpb'とに対応したダンパ12a,12b,12c、12dの各オリフィス開度OP1,OP2,OP3,OP4をそれぞれ決定する。なお、相対速度−減衰力テーブルはマイクロコンピュータに予め内蔵されたもので、図9に示すような相対速度xpw'−xpb'に対するダンパ12a,12b,12c、12dの減衰力Fの変化特性をオリフィス開度OP毎に表すデータを記憶しているものである。そして、前記各オリフィス開度OP1,OP2,OP3,OP4の決定にあたっては、図9のグラフ上において減衰力Fiと相対速度xpwi'−xpbi'(ただし、iは1〜4の整数)とで決まる点が最も近いカーブがそれぞれ検索され、同検索されたカーブに対応した開度OPが減衰力と相対速度との各組毎にそれぞれ選定される。
【0061】前記ステップ114の処理後、ステップ116にて前記決定したOP1,OP2,OP3,OP4をそれぞれ表す各制御信号をダンパ12a,12b,12c、12dに出力して、各ダンパ12a,12b,12c、12dのオリフィス開度を前記オリフィス開度OP1,OP2,OP3,OP4にそれぞれ設定制御する。その結果、各ダンパ12a,12b,12c、12dは、前記決定した目標減衰力F1,F2,F3,F4を発生することになる。
【0062】以上のように、上記実施形態によれば、第1減衰力計算ルーチン(図3)の処理により、車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4が、スカイフック理論を用いた車両の単輪モデルに基づいて各輪毎にそれぞれ計算される。第2減衰力計算ルーチン(図5)の処理により、車体のピッチ方向の振動を抑制するための第2目標減衰力PFd1,PFd2,PFd3,PFd4が、車両の前後輪モデルに基づいて各輪毎にそれぞれ計算される。第3減衰力計算ルーチン(図7)の処理により、車体のロール方向の振動を抑制するための第3目標減衰力RFd1,RFd2,RFd3,RFd4が、車両の左右輪モデルに基づいて各輪毎にそれぞれ計算される。そして、図2のステップ108の処理により、前記第1〜第3目標減衰力のうちで絶対値の最大なものが各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置毎にそれぞれ目標減衰力F1,F2,F3,F4として選択され、ステップ110〜116の処理により、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置の各ダンパ12a,12b,12c、12dの各減衰力が前記目標減衰力F1,F2,F3,F4にそれぞれ設定制御される。すなわち、ステップ110〜116の処理により、各ダンパ12a,12b,12c、12dの各減衰係数が、それぞれ前記目標減衰力F1,F2,F3,F4に対応した目標減衰係数にそれぞれ設定制御される。
【0063】その結果、車体BDのピッチ又はロール方向の振動がある程度大きくなったときにのみ、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4が第2目標減衰力PFd1,PFd2,PFd3,PFd4又は第3目標減衰力RFd1,RFd2,RFd3,RFd4よりも小さいことを条件に、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置のダンパ12a,12b,12c、12dの減衰力が車両の前後輪又は左右輪モデルに基づいて車体のピッチ又はロール方向の振動を抑制するための第2目標減衰力PFd1,PFd2,PFd3,PFd4又は第3目標減衰力RFd1,RFd2,RFd3,RFd4に設定され、それ以外の場合には、ダンパ12a,12b,12c,12dの減衰力は、車両の単輪モデルに基づいて車体のヒーブ方向の振動を抑制するための第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4に設定される。したがって、この実施形態によれば、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4がもつ本来的な車体BDの上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体BDのピッチ運動及びロール運動に対する不足減衰力が補償されることになるので、車体BDの上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体BDのピッチ運動及びロール運動に対する振動も抑制され、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0064】なお、上記実施形態においては、第1〜第3目標減衰力のうちで絶対値の最大なものが各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置毎にそれぞれ目標減衰力F1,F2,F3,F4として選択されるようにした。しかし、車体BDのロール運動がそれほど問題にならない場合には、第3目標減衰力の計算を省略して、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4と第2目標減衰力PFd1,PFd2,PFd3,PFd4とのうちで絶対値の大きな方の減衰力を各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置毎にそれぞれ目標減衰力F1,F2,F3,F4として選択するようにしてもよい。これによっても、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4がもつ本来的な車体BDの上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体BDのピッチ運動に対する不足減衰力が補償されることになるので、車体BDの上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体BDのピッチ運動に対する振動も抑制され、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0065】また、車体BDのピッチ運動がそれほど問題にならない場合には、第2目標減衰力の計算を省略して、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4と第3目標減衰力RFd1,RFd2,RFd3,RFd4とのうちで絶対値の大きな方の減衰力を各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置毎にそれぞれ目標減衰力F1,F2,F3,F4として選択するようにしてもよい。これによっても、第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4がもつ本来的な車体BDの上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体BDのロール運動に対する不足減衰力が補償されることになるので、車体BDの上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体BDのロール運動に対する振動も抑制され、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0066】また、上記実施形態においては第1〜第3目標減衰力のうちで絶対値が最大なものを最終的な目標減衰力としたが、これらの第1〜第3目標減衰力の各絶対値の大小関係を判定して、各絶対値が大きくなるにしたがって重み付けを大きくして第1〜第3目標減衰力を加算合成したり、第1〜第3目標減衰力のうちの大きい方から2つの目標減衰力を抽出して加算合成したり、同抽出した2つの目標減衰力を大きい方の重み付けを大きくして加算合成したりして、第1〜第3の目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を決定するようにしてもよい。また、前記変形例においては、第1及び第2目標減衰力のうちで絶対値の大きな方、又は第1及び第3目標減衰力のうちで絶対値の大きな方を最終的な目標減衰力として決定するようにしたが、前記各2つの目標減衰力のうちで絶対値の大きい方の重み付けを大きくしてそれぞれ加算合成することにより、第1及び第2目標減衰力、又は第1及び第3目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力を決定するようにしてもよい。これによっても、独立して計算された第1〜第3目標減衰力、第1及び第2目標減衰力、又は第1及び第3目標減衰力に基づいて最終的な目標減衰力が決定されるので、第1目標減衰力がもつ本来的な車体の上下方向の振動を抑制するための制御性能を確保しつつ、車体のピッチ運動及びロール運動に対する不足減衰力が補償されることになり、車体の上下振動が効果的に抑制されるとともに、併せて車体のピッチ運動及びロール運動に対する振動も抑制されて、車両の乗り心地及び走行安定性が良好に保たれる。
【0067】また、上記実施形態においては、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの絶対空間に対する上下方向の運動状態量として車体BDの上下加速度xpb1'',xpb2'',xpb3'',xpb4''をそれぞれ検出するようにしたが、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの同絶対空間に対する上下速度xpb1',xpb2',xpb3',xpb4'を検出するようにしてもよいし、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BDの同絶対空間に対する上下方向の変位量xpb1,xpb2,xpb3,xpb4を検出して上下速度xpb1',xpb2',xpb3',xpb4'を算出するようにしてもよい。また、各輪FW1,FW2,RW1,RW2位置における車体BD(ばね上部材)の各輪FW1,FW2,RW1,RW2に対する上下方向の相対変位量xpw1−xpb1,xpw2−xpb2,xpw3−xpb3,xpw4−xpb4に関しても、相対速度xpw1'−xpb1',xpw2'−xpb2',xpw3'−xpb3',xpw4'−xpb4'を検出したり、相対加速度xpw1''−xpb1'',xpw2''−xpb2'',xpw3''−xpb3'',xpw4''−xpb4''を検出して、相対速度xpw1'−xpb1',xpw2'−xpb2',xpw3'−xpb3',xpw4'−xpb4'を計算するようにしてもよい。
【0068】また、上記実施形態においては、車体BDのピッチ方向の角速度Pa'を検出するためにレートセンサで構成したピッチ角速度センサ23を設けるようにしたが、車体BDの前部と後部における上下方向の各変位量の差により前記角速度Pa'を検出するようにしてもよい。また、車体BDのロール方向の角速度Ra'を検出するためにレートセンサで構成したロール角速度センサ24に代えて、車体BDの左部と右部における上下方向の各変位量の差により前記角速度Ra'を検出するようにしてもよい。
【0069】さらに、各種運動状態量をそれぞれ直接的に検出するばね上加速度センサ21a〜21d、相対変位量センサ22a〜22d、ピッチ角速度センサ23及びロール角速度センサ24の一部に代えて、オブザーバを用いて前記各種運動状態量のうちの一部を推定することにより同一部の運動状態量を検出するようにしてもよい。
【0070】次に、上記第1減衰力計算ルーチンの各種変形例について説明する。この各種変形例は、前記第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4を、非線形なプラントを扱えて周波数領域で設計仕様を与えることができる制御理論に基づいて計算するものである。また、以下の説明では車両の単輪モデルを前提としているので、各輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちの一輪のみに着目し、前記第1目標減衰力Fd1,Fd2,Fd3,Fd4を代表した第1目標減衰力Fdのみを計算する実施形態について説明する。なお、他の車輪に対しても、同様に第1目標減衰力を計算できるものである。まず、各種変形例の説明の前に同変形例に係る車両の単輪モデルについて説明しておく。
【0071】a.モデルまず、サスペンション装置のモデルを考えて、同装置の状態空間表現を図る。図10は、車両の車輪一輪当たりのサスペンション装置の機能図である。Mbは車体(ばね上部材)BDの質量であり、Mwは車輪WH(厳密にはロアアームなどを含むばね下部材)の質量であり、KtはタイヤTRのばね定数である。Ksはばね11のばね定数であり、Cs0は同サスペンション装置内に設けたダンパの減衰係数Csのうちの線形部分(以下、線形減衰係数という)であり、Cvは同減衰係数Csのうちの非線形部分(以下、非線形減衰係数という)である。これらの線形減衰係数Cs0と非線形減衰係数Cvとの合計が、ダンパ12の総合的な減衰係数である(Cs=Cs0+Cv)。RDは路面であり、車体BD、車輪WH及び路面RDの各変位量をxpb,xpw,xprとすれば、下記数26,27の運動方程式が成立する。
【0072】
【数26】

【0073】
【数27】

【0074】なお、上記数26,27及び後述する各数式における記号「'」は1回微分を表し、記号「''」は2回微分を表している。
【0075】このサスペンション装置における制御入力uは非線形減衰係数Cvである。そこで、路面外乱w1を路面速度xpr'とするとともに、非線形減衰係数Cvを制御入力uとしてサスペンション装置を状態空間表現すると、下記数28のようになる。
【0076】
【数28】xp'=App+Bp11+Bp2(xp)uただし、上記数28中、xp,Ap,Bp1,Bp2(xp)は下記数29〜32のとおりである。
【0077】
【数29】

【0078】
【数30】

【0079】
【数31】

【0080】
【数32】

【0081】この変形例におけるサスペンション装置の特性向上の目標は、車体BD(ばね上部材)の振動に大きく影響する車体BDの上下速度xpb'(以下、ばね上速度xpb'という)、車両の乗り心地に大きく影響する車体BDの上下加速度xpb''(以下、ばね上加速度xpb''という)及び車輪WHの振動に大きく影響する車体BDに対する車輪WHの上下相対速度xpw'−xpb'(以下、相対速度xpw'−xpb'という)を同時に抑制することである。したがって、評価出力zpとして、ばね上速度xpb'、ばね上加速度xpb''及び相対速度xpw'−xpb'を用いる。また、サスペンション装置においては、ばね上加速度xpb''と、車体BDに対する車輪WHの相対変位量xpw−xpb(以下、単に相対変位量xpw−xpbという)とを検出し易いので、基本的には観測出力ypをばね上加速度xpb''及び相対変位量xpw−xpbとする。また、観測出力ypには観測ノイズw2が含まれているとし、これを状態空間表現すると、下記数33,34のようになる。
【0082】
【数33】zp=Cp1p+Dp12(xp)u【0083】
【数34】yp=Cp2p+Dp212+Dp22(xp)uただし、上記数33,34中のzp,yp,Cp1,,Dp12(xp),Cp2,Dp21,Dp22(xp)は、それぞれ下記数35〜41のとおりである。
【0084】
【数35】

【0085】
【数36】

【0086】
【数37】

【0087】
【数38】

【0088】
【数39】

【0089】
【数40】

【0090】
【数41】

【0091】しかし、上記サスペンション装置の状態空間表現は、前記数28に示すように係数Bp2(xp)に状態量xpが含まれているので、双線形システムとなる。双線形システムでは、原点x=oでは制御入力uを変えてもBp2(o)=oとなるため、原点付近では不可制御である。したがって、線形制御理論では前記サスペンション装置の制御系の設計はできず、同制御系の設計を非線形H∞制御理論を用いて、所望の制御性能が得られるように、すなわちばね上速度xpb'、ばね上加速度xpb''及び相対速度xpw'−xpb'を抑える制御系を設計することを試みる。以下、この第1目標減衰力Fdを計算するための各種変形例に係る本発明に係る非線形H∞制御系の各種設計例及び第1目標減衰力Fdの具体的計算例について説明する。
【0092】b.第1変形例b1.非線形H∞状態フィードバック制御系の設計例まず、非線形H∞状態フィードバック制御系の設計について試みるために、評価出力zpと制御入力uに周波数重みを加えた図11に示すような状態フィードバック制御系の一般化プラントを想定する。この場合、周波数重みとは、重みの大きさが周波数に応じて変化する重みであり、伝達関数で与えられる動的な重みのことである。この周波数重みを用いることにより、制御性能を上げたい周波数帯域の重みを大きくし、制御性能を無視してよい周波数帯域に関しては重みを小さくすることが可能となる。さらに、評価出力zp及び制御入力uに周波数重みWs(s),Wu(s)をかけた後、非線形な重み関数として状態量xの関数a1(x),a2(x)をかける。非線形重みa1(x),a2(x)は、リカッチ方程式に帰結して解を得るために、下記数42,43により規定される特性を有する。
【0093】
【数42】a1(x)>0,a2(x)>0【0094】
【数43】a1(o)=a2(o)=1この非線形重みによって、より積極的にL2ゲインを抑えるような制御系の設計が可能となる。このシステムの状態空間表現は、下記数44のようになる。
【0095】
【数44】xp'=App+Bp11+Bp2(xp)uここで、評価出力zpにかかる周波数重みWs(s)の状態空間表現を下記数45,46のように表す。
【0096】
【数45】xw'=Aww+Bwp【0097】
【数46】zw=Cww+Dwpなお、xwは周波数重みWs(s)の状態量を表し、zwは周波数重みWs(s)の出力を表しており、Aw,Bw,Cw,Dwは制御仕様により定まる定数行列である。これらの定数行列Aw,Bw,Cw,Dwは、乗員の乗り心地(ゴツゴツ感)を良好にするためにばね上加速度xb''に対するゲインを3〜8Hz程度の周波数領域で下げ(図12(A))、車体BDの共振を抑制するためにばね上速度xb'に対するゲインを0.5〜1.5Hz程度の周波数領域で下げ(図12(B))、車輪WHの共振を避けるために相対速度xw'−xb'に対するゲインを10〜14Hz程度の周波数領域で下げるように決定される(図12(C))。そして、これらの各ゲインを下げる周波数領域が重ならない、すなわち互いに干渉しないようにして、評価出力zpを構成するばね上加速度xb''、ばね上速度xb'及び相対速度xw'−xb'の各要素が独立して制御されるようにしている。
【0098】また、制御入力uにかかる周波数重みWu(s)の状態空間表現を下記数47,48のように表す。
【0099】
【数47】xu'=Auu+Buu【0100】
【数48】zu=Cuu+Duuなお、xuは周波数重みWu(s)の状態量を表し、zuは周波数重みWu(s)の出力を表しており、Au,Bu,Cu,Duは制御仕様による定数行列である。これらの定数行列Au,Bu,Cu,Duは、減衰係数を制御する電気アクチュエータの応答性を考慮するために、制御入力uに対するゲインが同アクチュエータの周波数特性に合わせて高周波数領域で抑えられるように決定される(図12(D))。
【0101】このとき、非線形H∞状態フィードバック制御系における一般化プラントの状態空間表現は下記数49〜51のようになる。
【0102】
【数49】x'=Ax+B11+B2(x)u【0103】
【数50】z1=a1(x)(C11x+D121(x)u)【0104】
【数51】z2=a2(x)(C12x+D122u)ただし、前記数49〜51中のx,A,B1,B2(x),C11,D121(x),C12,D122は、下記数52〜59のとおりである。
【0105】
【数52】

【0106】
【数53】

【0107】
【数54】

【0108】
【数55】

【0109】
【数56】C11=[Dwp1w o]
【0110】
【数57】D121(x)=[Dwp12(xp)]
【0111】
【数58】C12=[o o Cu
【0112】
【数59】D122=Du次に、リカッチ方程式に基づいて解を求めるために、下記数60により規定される条件のもとで、前記数49〜51により表された一般化プラントの状態空間表現を書き換えると下記数60〜63のようになる。
【0113】
【数60】Dwp12(x)=0【0114】
【数61】x'=Ax+B1w+B2(x)u【0115】
【数62】z1=a1(x)C11x【0116】
【数63】2=a2(x)C12x+a2(x)D122uここで、Aは減衰力制御系を表す安定な行列であるから、前記一般化プラントに対して、「■閉ループシステムが内部指数安定」、かつ「■路面外乱w1から評価出力zまでのL2ゲインがある正定数γ以下である」を満たす非線形H∞状態フィードバック制御則u=k(x)を設計することを試みる。
【0117】前記非線形H∞状態フィードバック制御則u=k(x)は、次の条件が成立するならば求まる。すなわち、■D122-1が存在し、ある正定数γが与えられるとき、この正定数γに対して下記数64のリカッチ方程式を満たす正定対称解Pが存在し、かつ■非線形重みa1(x),a2(x)が下記数65の制約条件を満たすならば、閉ループシステムを内部安定にし、かつL2ゲインをγ以下とする制御則u=k(x)の一つは下記数66で与えられる。
【0118】
【数64】

【0119】
【数65】

【0120】
【数66】

【0121】ここで、前記数66の制約条件を満たす非線形重みa1(x),a2(x)を下記数67,68に例示しておく。
【0122】
【数67】

【0123】
【数68】

【0124】なお、前記数67,68中のm1(x)は任意の正定関数である。そして、コンピュータによる演算の結果、前記のような正定対称解Pを求めることができた。そして、前記数68を用いると前記数66は下記数69のように変形される。
【0125】
【数69】

【0126】これらのことは、非線形H∞制御理論を用いて制御系を設計するためには、一般的にハミルトン・ヤコビ不等式とよばれる偏微分不等式を解かなければならないが、前記のように非線形重みa1(x),a2(x)に前記数65の制約条件を与えることにより、ハミルトン・ヤコビ不等式を解く代わりにリカッチ不等式を解くことによって制御則が設計できることを示している。リカッチ不等式は、マトラブ(Matlab)等の公知のソフトウェアを用いることにより簡単に解を求めることができるので、この方法によれば、簡単に正定対称解Pを見つけることができるとともに、制御則u=k(x)も導出することができる。
【0127】また、前記D122はリカッチ不等式には現れず、非線形重みに対する制約条件及び制御則のみに関係している。このことは、D122を用いた制御則の調整が、リカッチ不等式を解き直すことなくある程度可能であることを示している。すなわち、前記制御則の調整は制御入力uに対するスケーリングを行うことを意味し、制御入力uのスケーリングを10倍にするとD122が1/10倍になり、前記数66のB2(x)項は100倍、C12の項は10倍になる。
【0128】次に、非線形重みの役割について確認するために、双線形システムの非線形重みを用いない一般化プラントを想定して、上述した非線形重みを用いた一般化プラントとの比較をしておく。すなわち、前記非線形重みa1(x),a2(x)をそれぞれa1(x)=1,a2(x)=1とし、また簡単化のために直交条件を満たすとしてC12=o,D122=Iとする。前記数61〜63により表される状態空間表現は下記数70〜72のようになる。
【0129】
【数70】x'=Ax+B1w+B2(x)u【0130】
【数71】z1=C11x【0131】
【数72】z2=uこれにより、一般化プラントの制御則u=k(x)は下記数73のように表される。
【0132】
【数73】u=B2T(x)Pxただし、Pは下記数74のリカッチ不等式を満たす正定対称解である。
【0133】
【数74】

【0134】一方、前記数70〜72で表される一般化プラントの原点近傍における線形近似システムは、下記数75〜77のようになる。
【0135】
【数75】x'=Ax+B1w【0136】
【数76】z1=C11x【0137】
【数77】z2=u前記数74のリカッチ不等式は、この一般化プラントに対して閉ループシステムが内部安定であり、L2ゲインがγ以下であることを意味している。すなわち、双線形システムのL2ゲインは図13に示す原点(x=o)での値によって決まってしまうのである。これは、原点では双線形システムがB2(o)=oであるので、制御入力uが働かず原点近傍ではL2ゲインを改善できないからである。また、制御入力uをu=oとした一般化プラント(数70〜72)も線形近似した一般化プラント(数75〜77)と一致するので、数74のリカッチ不等式は、一般化プラント(数70〜72)に対して制御入力uがu=oの場合も、閉ループシステムが内部安定であり、L2ゲインがγ以下であることを意味している。すなわち、状態量xが大きくなって制御入力uが効果を発揮するようになっても、制御出力を下記数78,79とする一般化プラント(数70〜72)に対して制御系を設計した場合、制御入力uをかけてもL2ゲインがg0より大きくならないことを保証しているだけである。
【0138】
【数78】z1=C11x【0139】
【数79】z2=uすなわち、制御出力が前記数78,79のように表される場合、制御性能が制御入力uを用いることによって向上しているかもしれないが、u=oの場合と変わらないかもしれないのである。そこで、制御出力z1,z2に非線形重みa1(x),a2(x)を用いて下記数80,81とすることによって原点よりも離れたところでは、非線形重みによって図13のg1の線に表されるように、プラントのL2ゲインを原点レベルを表すX軸に漸近するように抑え込む制御系が設計可能となる。
【0140】
【数80】z1=a1(x)C11x【0141】
【数81】z2=a2(x)uまた、この制御では、ダンパ12の減衰係数Csを線形減衰係数Cs0と非線形減衰係数Cvとに分けて、同非線形減衰係数Cvを制御入力uとして制御系を設計した。そして、図14(A)に示すように、線形減衰係数Cs0をダンパ12の最小減衰力特性線(最大オリフィス開度に対応)と、最大減衰力特性線(最小オリフィス開度に対応)とのほぼ中央付近に設定するとともに、制御入力uのゲインを周波数に応じて制御するようにして、減衰係数Csが線形減衰係数Cs0を挟んだ両側で変化するとともに、同減衰係数による減衰力が前記最小減衰力特性線と最大減衰力特性線との間に納まるようにした。したがって、ダンパ12の設計仕様に合わせて非線形減衰係数Cvを簡単に決定できるとともに、実際のダンパ12により実現可能な範囲内で減衰力制御を行うことができ、意図した減衰力制御を行うことができる。なお、比較のために、図14(B)にスカイフック理論に基づいてダンパ12の減衰係数を制御した場合のリサージュ波形図を示してあるが、この場合には、実際のダンパ12により実現可能な範囲内で制御を行うことができず、意図した減衰力の制御が不能である。
【0142】また、ダンパ12の減衰力(減衰係数)が複数段のいずれかに段階的に切り換えるように構成されている場合には、線形減衰係数Cs0の設定において、同線形減衰係数Cs0により決定される減衰力が、同減衰力の小さい範囲で前記ダンパ12の複数段のうちの所定の1つの段により発生される減衰力にほぼ等しくなるように、前記線形減衰係数Cs0を設定する。この種のサスペンション装置においては、減衰力の小さい範囲では減衰力の相対速度に対する線形性は強く、すなわち計算される非線形減衰係数Cvが「0」である可能性が高い。したがって、ダンパ12においては前記所定の1つの段に維持される可能性が高くて減衰係数の切り換え頻度が低くなるので、ダンパ12の耐久性が高く保たれる。
【0143】b2.具体的計算例次に、上記非線形H∞状態フィードバック制御則を用いた第1目標減衰力Fdの具体的計算例について説明する。
【0144】この場合、電気制御装置20には、図1に破線で示すように、ばね上加速度センサ21a,21b,21c,21d、相対変位量センサ22a,22b,22c,22d、ピッチ角速度センサ23及びロール角速度センサ24に加えて、各輪FW1,FW2,RW1,RW2毎に設けたタイヤ変位量センサ25a,25b,25c,25d及びばね下加速度センサ26a,26b,26c,26dが接続されている。ただし、以降の説明では、各輪FW1,FW2,RW1,RW2を代表して一輪のみの第1目標減衰力Fdを計算する例を示すので、タイヤ変位量センサ25a,25b,25c,25dを単にタイヤ変位量センサ25として説明するとともに、ばね下加速度センサ26a,26b,26c,26dを単にばね下加速度センサ26として説明する。また、ばね上加速度センサ21a,21b,21c,21d及び相対変位量センサ22a,22b,22c,22dに関しても、単にばね上加速度センサ21及び相対変位量センサ22としてそれぞれ説明する。
【0145】タイヤ変位量センサ25は、路面変位xprとばね下変位xpwとの相対変位量であるタイヤTRの変位量xpr−xpwを検出するもので、例えばタイヤの変形度を検出する歪センサ、タイヤの空気圧を検出する圧力センサなどの出力に基づいて前記タイヤ変位量xpr−xpwを検出する。ばね下加速度センサ26は、車輪WHに固定され、車輪WHの上下方向の加速度であるばね下加速度xpw''を検出する。また、電気制御装置20内のマイクロコンピュータは、内蔵のタイマにより所定の短時間毎に図15の第1減衰力計算ルーチンを実行することにより、第1目標減衰力Fdを計算する。
【0146】この第1減衰力計算ルーチンの実行はステップ200にて開始され、ステップ202にて、タイヤ変位量センサ25、相対変位量センサ22、ばね上加速度センサ21及びばね下加速度センサ26から、タイヤ変位量xpr−xpw、相対変位量xpw−xpb、ばね上加速度xpb''及びばね下加速度xpw''を表す各検出信号を入力する。そして、ステップ204にて、ばね上加速度xpb''及びばね下加速度xpw''をそれぞれ時間積分することによりばね上速度xpb'及びばね下速度xpw'を計算するとともに、相対変位量xpw−xpbを時間微分することにより相対速度xpw'−xpb'を計算する。
【0147】次に、ステップ206にて、相対速度xpw'−xpb'を用いた上記数32,38と同じ下記数82,83の演算によりBp2(xp),Dp12(xp)を計算するとともに、これらのBp2(xp),Dp12(xp)を用いた上記数55と同じ下記数84の演算によりB2(x)を計算する。
【0148】
【数82】

【0149】
【数83】

【0150】
【数84】

【0151】なお、前記数82,83中のMw,Mbは、それぞれ車輪WHの質量及び車体BDの質量である。また、前記数84中のBw,Buは、上記数45,47にて設定した周波数重みWs(s),Wu(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。
【0152】前記ステップ206の処理後、ステップ208にて、ステップ202の処理により入力され又はステップ204の処理により計算されたこの変形例の制御目標であり、上記数35により規定される評価出力zp(ばね上速度xpb'、ばね上加速度xpb''及び相対速度xpw'−xpb')を用いて、上記数45と同じ下記数85の演算式に基づいて周波数重みの状態変数xwを計算する。
【0153】
【数85】xw'=Aww+Bwpなお、前記数85中のAw,Bwは、上記数45にて設定した周波数重みWs(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。
【0154】次に、ステップ210にて、上記数47,52,69と同じ数86〜88を用いて、制御入力uに関する周波数重みの状態変数xu、拡張した状態量x及び制御入力uを計算する。
【0155】
【数86】xu'=Auu+Buu【0156】
【数87】

【0157】
【数88】

【0158】前記数86中のAu,Buは、上記数47にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。また、前記88中のD122は、上記数59で定義され、かつ上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。m1(x)は、任意の正定数関数であり、同関数に関するアルゴリズムが予めマイクロコンピュータ内に記憶されているものである。なお、この正定数関数m1(x)を正の定数、例えば「1.0」に設定しておいてもよい。C11は、上記数37,56により定義され、すなわち車体の質量Mw及び車体の質量Mbと、ばね11のばね定数Ksと、ダンパ12の線形減衰係数Cs0と、上記数46にて設定した周波数重みWs(s)に関する係数行列Cw,Dwとにより規定され、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。B2(x)は、前記ステップ206にて計算された行列である。Pは、上記数64,65を満たす正定対称解であり、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。C12は、上記数58により規定され、上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列Cuを含む予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。
【0159】また、このステップ210の制御入力uの周波数重みに関する状態変数xu、拡張した状態量x及び制御入力uの計算においては、各値に初期値を与えて、各値xu,x,uが収束するまで上記数85〜88からなる演算を繰り返し行って、各値xu,x,uを決定する。
【0160】前記ステップ210の処理後、ステップ212にて、制御入力uは非線形減衰係数Cvに等しいので、線形減衰係数Cs0と制御入力uとを加算する下記数89の演算によりダンパ12の総合的な目標減衰係数Csを計算する。そして、ステップ216にてこの第1減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0161】
【数89】Cs=Cs0+Cv=Cs0+u次に、ステップ214にて、前記計算した目標減衰係数Cに前記ステップ204の処理により計算した相対速度xpw'−xpb'を乗算する下記数90の演算により第1目標減衰力Fdを計算する。
【0162】
【数90】Fd=Cs(xpw'−xpb')c.第2変形例c1.非線形H∞出力フィードバック制御系の設計例次に、上記非線形H∞状態フィードバック制御系の設計を一歩進めて、状態量xp(タイヤ変位量xpr−xpw、相対変位量xpw−xpb、ばね下速度xpw'、ばね上加速度xpb'')の一部(例えば、タイヤ変位量xpr−xpw及びばね下速度xpw'、又はタイヤ変位量xpr−xpw、相対変位量xpw−xpb及びばね下速度xpw')を制御系内に含んだ形のオブザーバで推定し、同推定値を用いて制御系として非線形H∞出力フィードバック制御系の設計を試みる。この場合、評価出力zpと制御入力uに周波数重みを加えた図16に示すような出力フィードバック制御系の一般化プラントを想定する。この場合、評価出力zpに周波数重みWs(s)をかけた後、非線形な重み関数としてa1(x,x^)をかけるとともに、制御入力uに周波数重みWu(s)をかけた後、非線形な重み関数としてa2(x,x^)をかける。この非線形な重み関数a1(x,x^),a2(x,x^)は、下記数91,92に示す特性を有する。これにより、より積極的にL2ゲインを抑えるような制御系の設計が可能となる。なお、x^は前記のように一部に推定値を含む状態量を表す。
【0163】
【数91】a1(x,x^)>0,a2(x,x^)>0【0164】
【数92】a1(o,o)=a2(o,o)=1このシステムの状態空間表現も、評価出力zpにかかる周波数重みWs(s)の状態空間表現も、制御入力uにかかる周波数重みWu(s)の状態空間表現も、上述した状態フィードバック制御系の場合と同様に、下記数93〜97のように表される。
【0165】
【数93】xp'=App+Bp11+Bp2(xp)u【0166】
【数94】xw'=Aww+Bwp【0167】
【数95】zw=Cww+Dwp【0168】
【数96】xu'=Auu+Buu【0169】
【数97】zu=Cuu+Duuなお、状態変数xw、評価関数zw、定数行列Aw,Bw,Cw,Dwも上記状態フィードバック制御系の場合と同じである。
【0170】しかし、この非線形H∞出力フィードバック制御系における一般化プラントの状態空間表現は下記数98〜101のようになる。
【0171】
【数98】x'=Ax+B1w+B2(x)u【0172】
【数99】z1=a1(x,x^)(C11x+D121(x)u)【0173】
【数100】z2=a2(x,x^)(C12x+D122u)【0174】
【数101】y=C2x+D21w+D22(x)uただし、前記数98〜101中のx,w,A,B1,B2(x),C11,D121(x),C12,D122,C2,D21,D22(x)は、下記数102〜113のとおりである。
【0175】
【数102】

【0176】
【数103】

【0177】
【数104】

【0178】
【数105】

【0179】
【数106】

【0180】
【数107】C11=[Dwp1w o]
【0181】
【数108】D121(x)=[Dwp12(xp)]
【0182】
【数109】C12=[o o Cu
【0183】
【数110】D122=Du【0184】
【数111】C2=[Cp2 o o]
【0185】
【数112】D21=[o Dp21
【0186】
【数113】D22(x)=Dp22(xp)次に、リカッチ方程式に基づいて解を求めるために、下記数114により規定される条件のもとで、前記数98〜101により表された一般化プラントの状態空間表現を書き換えると下記数115〜118のようになる。
【0187】
【数114】Dwp12(x)=o【0188】
【数115】x'=Ax+B1w+B2(x)u【0189】
【数116】z1=a1(x,x^)C11x【0190】
【数117】z2=a2(x,x^)C12x+a2(x,x^)D122u【0191】
【数118】y=C2x+D21w+D22(x)uここで、上記状態フィードバック制御系の場合と同様に、前記一般化プラントに対して、「■閉ループシステムが内部指数安定」、かつ「■wからzまでのL2ゲインがある正定数γ以下である」を満たす非線形H∞出力フィードバック制御則u=k(y)を設計することを試みる。さらに、この非線形H∞出力フィードバック制御においては、下記第1〜第3タイプに分けてそれぞれ説明する。
【0192】c1−1)第1タイプの制御系の設計例この第1タイプは、上記数106のB2(x)及び数113のD22(x)が既知関数すなわち少なくとも相対速度xpw'−xpb'が観測可能であり、オブザーバゲインLは定数行列である場合である。
【0193】前記非線形H∞出力フィードバック制御則u=k(y)は、次の条件が成立するならば求まる。すなわち、■D122-1が存在し、γ1はγ12I−D21TΘTΘD12>oを満たす正定数であり、かつγ2は>1であり、下記数119のオブザーバ(オブザーバゲイン)を設計するためのリカッチ不等式、及び下記数120のコントローラ(制御器)を設計するためのリカッチ不等式を満たす正定対称行列P,Q及び正定行列Θが存在し、さらに■非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)が下記数121,122の制約条件を満たすならば、下記数123とする制御則の一つは下記数124,125で与えられる。
【0194】
【数119】

【0195】
【数120】

【0196】
【数121】γ22−a1(x,x^)2>0,γ22−a2(x,x^)2>0【0197】
【数122】

【0198】
【数123】

【0199】
【数124】x'^=(A+LC2)x^+(B2(x)+LD22(x))u−Ly【0200】
【数125】

【0201】ただし、オブザーバゲインLは下記数126のように表される。
【0202】
【数126】L=−QC2TΘTΘまた、「‖ ‖」はユークリッド・ノルムを表し、「‖2」は2乗可積分関数空間L2上のノルムを表していて、f(t)∈L2に対して、下記数127で定義されるものである。
【0203】
【数127】

【0204】また、ΘはΘ-1が存在する正定行列であり、このΘを用いてオブザーバゲインLを調整することが可能である。また、上記状態フィードバック制御則の場合と同様に、コントローラのゲインLはD122を用いて調整することが可能である。さらに、γ1はオブザーバのL2ゲインであり、γ2はコントローラのL2ゲインであり、閉ループシステムのL2ゲインはγ1とγ2の積として決まる。したがって、オブザーバとコントローラをうまく調整してシステムのL2ゲインを決定しなければならない。
【0205】ここで、前記数121,122の制約条件を満たす非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)を下記数128,129に例示しておく。
【0206】
【数128】

【0207】
【数129】

【0208】なお、前記数128,129中のm1(x,x^)は任意の正定関数であり、εはε<1かつεγ22>1である正定数である。そして、コンピュータによる演算の結果、前記のような正定対称解Pを求めることができた。そして、前記数128,129を用いると前記数124,125は下記数130,131のように変形される。
【0209】
【数130】x'^=(A+LC2)x^+(B2(x)+LD22(x))u−Ly【0210】
【数131】

【0211】その結果、この場合も、上記状態フィードバック制御系の場合と同様にして、公知のソフトウェアを用いることにより簡単に解を求めることができるので、この方法によれば、簡単に正定対称解Pを見つけることができるとともに、推定状態量x'^及び制御則u=k(y)も導出することができる。
【0212】c1−2)第1タイプの具体的計算例次に、前記タイプ1の制御則を用いた第1目標減衰力Fdの具体的計算例について説明する。この場合、タイヤ変位量センサ25及びばね下加速度センサ26(図1において、タイヤ変位量センサ25a,25b,25c,25d及びばね下加速度センサ26a,26b,26c,26d)が省略されており、マイクロコンピュータは図15の第1減衰力計算ルーチンに代えて図17の第1減衰力計算ルーチンを実行する。他の部分に関しては上記第1変形例と同じである。
【0213】この場合も、図17の第1減衰力計算ルーチンの実行はステップ200にて開始され、ステップ202aにて、相対変位量センサ22及びばね上加速度センサ21から相対変位量xpw−xpb及びばね上加速度xpb''を表す各検出信号を入力し、ステップ204aにて上記第1変形例の場合と同様に相対速度xpw'−xpb'及びばね上速度xpb'を計算する。
【0214】次に、ステップ206aにて、相対速度xpw'−xpb'を用いた上記数32,38と同じ下記数132,133の演算によりBp2(xp),Dp12(xp)を計算するとともに、これらのBp2(xp),Dp12(xp)を用いた上記数106と同じ下記数134の演算によりB2(x)を計算し、かつ相対速度xpw'−xpb'を用いた上記数41,113と同じ下記数135,136の演算によりD22(x)を計算する。
【0215】
【数132】

【0216】
【数133】

【0217】
【数134】

【0218】
【数135】

【0219】
【数136】D22(x)=Dp22(xp)なお、前記数132〜135中のMw,Mb,Bw,Buは、上記第1変形例と同じ値又は定数行列である。
【0220】前記ステップ206aの処理後、ステップ210aにて、上記数130,131と同じ数137,138を用い、上記第1変形例の場合と同様にして推定状態量x^及び制御入力uを計算する。
【0221】
【数137】x'^=(A+LC2)x^+(B2(x)+LD22(x))u−Ly【0222】
【数138】

【0223】前記数137中のAは、マイクロコンピュータ内に予め記憶されていて前記数104,30,37により決定される定数行列である。Lは、マイクロコンピュータ内に予め記憶されていて前記数126により定義された定数行列であって、正定対称行列Q、前記数39,111により定まる定数行列C2、及び正定行列Θにより決まるオブザーバのゲインである。C2も、マイクロコンピュータ内に予め記憶されている前記定数行列である。B2(x)及びD22(x)は前記ステップ206aにて計算した行列である。また、yは観測値であって、この第1タイプでは前記ステップ202aの処理により入力した相対変位量xpw−xpb及び前記ステップ204aの処理により計算したばね上速度xpb'である。
【0224】また、前記数138中のD122は、上記数110で定義され、かつ上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。γ2は、前述したγ2>1なる正定数である。m1(x,x^)は、任意の正定数関数であり、同関数に関するアルゴリズムが予めマイクロコンピュータ内に記憶されているものである。なお、この正定数関数m1(x)を正の定数、例えば「1.0」に設定しておいてもよい。C11は、上記数37,107により定義され、すなわち車輪WHの質量Mw及び車体BDの質量Mbと、ばね11のばね定数sと、ダンパ12の線形減衰係数Cs0と、上記数46にて設定した周波数重みWs(s)に関する係数行列Cw,Dwとにより規定され、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。B2(x)は、前記ステップ206aにて計算された行列である。Pは、上記数119,120を満たす正定対称解であり、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。C12は、上記数109により規定され、上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列Cuを含む予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。
【0225】前記ステップ210aの処理後、上記第1変形例と同様なステップ212、214の処理により、ダンパ12の総合的な目標減衰係数Csを計算するとともに第1目標減衰力Fdを計算して、ステップ216にてこの第1減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0226】c2−1)第2タイプの制御系の設計例この第2タイプは、上記数106のB2(x)及び数113のD22(x)が未知関数すなわち相対速度xpw'−xpb'が未知であり、オブザーバゲインLは定数行列である場合である。
【0227】この種の双線形システムではB2(x),D22(x)はxの1次関数であり、これを考慮して前記数115〜118により表された一般化プラントを書き換えると、下記数139〜142のようになる。ただし、B20,D220,d122は定数行列である。
【0228】
【数139】x'=Ax+B1w+B20xu【0229】
【数140】z1=a1(x^)C11x【0230】
【数141】z2=a2(x^)C12x+a2(x)d122u【0231】
【数142】y=C2x+D21w+D220xuこの一般化プラントに対して、非線形H∞出力フィードバック制御則を設計することを試みる。オブザーバゲインLを定数行列とする場合、次の定理により出力フィードバック制御則が設計できる。すなわち、■γ1はγ12I−D21TΘTΘD12>oを満たす正定数であり、かつγ2はγ2>1である正定数であり、かつε12−u2>0を満たす正定数εが存在するとき、下記数143のオブザーバ(オブザーバゲイン)を設計するためのリカッチ不等式、及び下記数144のコントローラを設計するためのリカッチ不等式を満たす正定対称行列P,Q及び正定行列Θが存在し、さらに■非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)が下記数145,146の制約条件を満たすならば、下記数147とする制御則の一つは下記数148,149で与えられる。
【0232】
【数143】

【0233】
【数144】

【0234】
【数145】γ22−a1(x,x^)2>0,γ22−a2(x,x^)2>0【0235】
【数146】

【0236】
【数147】‖[z1T 2T]T2≦γ1γ2‖w‖2【0237】
【数148】x'^=(A+L(u)C2)x^+(B20+L(u)D220)x^u−L(u)y【0238】
【数149】

【0239】ただし、オブザーバゲインL(u)は下記数150のように表される。
【0240】
【数150】L(u)=−QC2TΘTΘまた、ΘはΘ-1が存在する正定行列であり、このΘを用いてオブザーバゲインL(u)を調整することが可能である。また、上記状態フィードバック制御則の場合と同様に、コントローラのゲインLはd122を用いて調整することが可能である。
【0241】ここで、前記数145,146の制約条件を満たす非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)を下記数151,152に例示しておく。
【0242】
【数151】

【0243】
【数152】

【0244】なお、前記数151,152中のm1(x,x^)は任意の正定関数であり、εはε<1かつεγ22>1である正定数である。そして、コンピュータによる演算の結果、前記のような正定対称解Pが求めることができた。そして、前記数151,152を用いると前記数148,149は下記数153,154のように変形される。
【0245】
【数153】x'^=(A+L(u)C2)x^+(B20+L(u)D220)x^u−L(u)y【0246】
【数154】

【0247】その結果、この場合も、上記状態フィードバック制御系の場合と同様にして、公知のソフトウェアを用いることにより簡単に解を求めることができるので、この方法によれば、簡単に正定対称解Pを見つけることができるとともに、推定状態量x'^及び制御則u=k(y)も導出することができる。
【0248】c2−2)第2タイプの具体的計算例次に、この第2タイプの制御則を用いた第1目標減衰力Fdの計算例について説明する。この場合、上記第1タイプの場合の図6の相対変位量センサ22(図1の相対変位量センサ22a,22b,22c,22d)を省略するとともに、図17のステップ202a,204aによる相対変位量センサ22からの相対変位量xpw−xpbの入力及び相対速度xpw'−xpb'の計算、並びにステップ206aの演算処理を省略して、前記第2タイプの制御則にしたがった演算を実行するものである。
【0249】この場合も、第1減衰力計算ルーチンは図17のステップ200にて開始され、ステップ202aにてばね上加速度xpb''を入力し、ステップ204aにてばね上速度xpb'を計算し、ステップ210aにて上記数153,154と同じ数155,156を用い、相対速度xpw'−xpb'の推定を含む推定状態量x'^及び制御入力uを計算する。
【0250】
【数155】x'^=(A+L(u)C2)x^+(B20+L(u)D220)x^u−L(u)y【0251】
【数156】

【0252】前記数155,156中のA,L,C2,γ2,m1(x,x^),C11,P,C12に関しては前記第1タイプの場合と同じである。また、B20,D220,d122は、マイクロコンピュータ内に予め記憶されていて前述した適当な定数行列である。また、この場合、yは観測値であって前記ステップ204aの処理により計算したばね上速度xpb'である。
【0253】前記ステップ210aの処理後、上記第1タイプと同様なステップ212,214の処理により、ダンパ12の総合的な目標減衰係数Csを計算するとともに第1目標減衰力Fdを計算する。ただし、この場合、ステップ214の第1目標減衰力Fdの計算では、ステップ210aにて計算した推定相対速度xpw'^−xpb'^を利用する。
c3−1)第3タイプの制御系の設計例この第3タイプも、上記数106のB2(x)及び数113のD22(x)が未知関数すなわち相対速度xpw'−xpb'が未知であり、オブザーバゲインLは関数行列である場合である。
【0254】この第3タイプにおいても、上記第2タイプの数139〜142により表された一般化プラントに対して、非線形H∞出力フィードバック制御則を設計することを試みる。オブザーバゲインLを制御入力uの関数とする場合、次の定理により出力フィードバック制御則が設計できる。すなわち、■γ1はγ12I−D21TΘTΘD12>oを満たす正定数であり、かつγ2はγ2>1である正定数であり、かつε12−u2>0を満たす正定数εが存在するとき、下記数157のオブザーバ(オブザーバゲイン)を設計するためのリカッチ不等式、及び下記数158のコントローラを設計するためのリカッチ不等式を満たす正定対称行列P,Q及び正定行列Θが存在し、さらに■非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)が下記数159,160の制約条件を満たすならば、下記数161とする制御則の一つは下記数162,163で与えられる。
【0255】
【数157】

【0256】
【数158】

【0257】
【数159】γ22−a1(x,x^)2>0,γ22−a2(x,x^)2>0【0258】
【数160】

【0259】
【数161】‖[z1T 2T]T2≦γ1γ2‖w‖2【0260】
【数162】x'^=(A+L12)x^+(B20+L2220)x^u−(L1+L2u)y【0261】
【数163】

【0262】ただし、オブザーバゲインL(u)は下記数164のように表される。
【0263】
【数164】L(u)=−QC2TΘTΘ−uQD220TΘTΘ=L1+uL2また、前記数164中のL1,L2は下記数165,166のように表される。
【0264】
【数165】L1=−QC2TΘTΘ【0265】
【数166】L2=−QD220TΘTΘまた、ΘはΘ-1が存在する正定行列であり、このΘを用いてオブザーバゲインL(u)を調整することが可能である。また、上記状態フィードバック制御則の場合と同様に、コントローラのゲインLはd122を用いて調整することが可能である。
【0266】ここで、前記数159,160の制約条件を満たす非線形重みa1(x,x^),a2(x,x^)を下記数167,168に例示しておく。
【0267】
【数167】

【0268】
【数168】

【0269】なお、前記数167,168中のm1(x,x^)は任意の正定関数であり、εはε<1かつεγ221である正定数である。そして、コンピュータによる演算の結果、前記のような正定対称解Pを求めることができた。そして、前記数167,168を用いると前記数162,163は下記数169,170のように変形される。
【0270】
【数169】x'^=(A+L12)x^+(B2x^+L222x^)u−L(u)y【0271】
【数170】

【0272】その結果、この場合も、上記状態フィードバック制御系の場合と同様にして、公知のソフトウェアを用いることにより簡単に解を求めることができるので、この方法によれば、簡単に正定対称解Pを見つけることができるとともに、推定状態量x'^及び制御則u=k(y)も導出することができる。
c3−2)第3タイプの具体的計算例次に、この第3タイプの制御則を用いた第1目標減衰力Fdの具体的計算例について説明する。この場合の構成は、上記第2タイプの場合と同じである。
【0273】この場合も、第1減衰力計算ルーチンの実行は図17のステップ200にて開始され、前記第1タイプと同様なステップ202a,204aの処理後、ステップ210aにて上記数169,170と同じ数171,172を用い、上記第2タイプの場合と同様にして推定状態量x'^及び制御入力uを計算する。
【0274】
【数171】x'^=(A+L12)x^+(B2x^+L222x^)u−L(u)y【0275】
【数172】

【0276】前記数171,172中のA,C2,B20,,D220,γ2,m1(x,x^),C11,d122,P,C12に関しては前記第2タイプの場合と同じである。また、L,L1,L2は、前記数164〜166により規定されるゲインである。さらに、この場合も、yは観測値であって前記ステップ204aの処理により計算したばね上速度xpb'である。
【0277】前記ステップ210aの処理後、上記第2タイプと同様なステップ212、214の処理により、ダンパ12の総合的な目標減衰係数Csを計算するとともに第1目標減衰力Fdを計算して、ステップ216にてこの第1減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0278】d.第3変形例d1.カルマンフィルタベースの非線形H∞制御系の設計上記aのモデルに対して、双線形項Bp2(xp),Dp2(xp)が既知すなわち相対速度xpw'−xpb'を観測可能とすることを条件に、オブザーバにカルマンフィルタを用いた場合の出力フィードバック系の設計を試みる。
【0279】なお、この第3変形例における符号も上記第2変形例の場合と同じであり、プラントに関する係数及び変数にはサフィックスpが付けられている。サスペンション装置の状態空間表現は、下記数173,174により表される。
【0280】
【数173】xp'=App+Bp11+Bp2(xp)u【0281】
【数174】yp=Cpp+Dp12+Dp2(xp)ut→∞の場合のカルマンフィルタは、Dp1=Iの場合、下記数175のように表される。
【0282】
【数175】xo'=Apo+Bp2u+K(Cpo+Dp2(xp)u−y)ただし、xo,xo'はカルマンフィルタにおける推定状態量であり、フィルタゲインKは下記数176のとおりである。
【0283】
【数176】K=−ΣCpT-1また、推定誤差共分散Σは、下記数177のリカッチ方程式の正定対称解である。
【0284】
【数177】ApΣ+ΣApT+Bp1VBp1T−ΣCpT-1pΣ=oただし、Vはw1の共分散行列であり、Wはw2の共分散行列である。
【0285】このシステムの一般化プラントのブロック線図は図18に示すとおりであり、この場合に、オブザーバの出力である「推定状態量xoに周波数重みW(s)をかけたもの」と、「制御入力uに周波数重みWu(s)をかけたもの」とを評価出力zに用いている。すなわち、ここでは、カルマンフィルタを検出器として使って、そのカルマンフィルタの出力を小さくするように制御系を設計している。この点が、上記第1及び第2変形例とは異なるが、状態推定がうまく行われれば同第1及び第2変形例と同等な性能が得られると考えられる。図18のブロック線図で与えられるシステムの状態空間表現は、下記数178〜184の通りである。
【0286】
【数178】xp'=App+Bp11+Bp2(xp)u【0287】
【数179】xo'=Apo+Bp2(xp)u+L(C2o+Dp2(xp)u−y)【0288】
【数180】y=Cpp+Dp12+Dp2(xp)u【0289】
【数181】xw'=Aww+Bwso【0290】
【数182】z1=a1(xp,xo,xw,xu)(Cww+Dwso)【0291】
【数183】xu'=Auu+Buu【0292】
【数184】z2=a2(xp,xo,xw,xu)(Cuu+Duu)ただし、xpはシステムの状態量、数178はシステムの状態空間表現、xoは推定状態量、数179はオブザーバの状態空間表現、yは観測出力、xwは周波数重みの状態を表す。評価出力z1,z2には、後に設計する非線形重みがかけられている。
【0293】このシステムに対して、「閉ループシステムが内部指数安定」かつ「wからzまでのL2ゲインがある正定数γ以下」を満たすオブザーバの状態をフィードバック制御する制御則u=k(xo)を設計する。そして、このシステムでは下記数185に示すように、周波数重みWs(s)に対する入力がxoとなっていることが特徴である。
【0294】
【数185】

【0295】はじめに、誤差変数を下記数186のように定義すると、誤差システムは下記数187,188のようになる。
【0296】
【数186】xe=xp−xo【0297】
【数187】xe'=(Ap+LCp)xe+Bp11+LDp2【0298】
【数188】

【0299】さらに、yeに対して逆行列が存在する定数行列Θ(スケーリング行列)をかけて前記数187,188により表された誤差システムを変形すると、同変形されたシステムは下記数189,190のようになる。
【0300】
【数189】xpe'=(Ap+LCp)xpe+Bp11+LDp2【0301】
【数190】ye~=ΘCpe+ΘDp12この変形した誤差システムに対して、ある正定数γ1が存在して外乱入力w=[w1T2T]からye~までのL2ゲインがγ1以下(‖ye~‖2≦γ1‖w‖2)となるようにオブザーバゲインLを設計することを考える。
【0302】ここで、γ1はγ1I−Dp1TΘTΘDp1>oを満たす正定数とすれば、‖ye~‖2≦γ1‖w‖2となるLは下記数191で与えられる。
【0303】
【数191】L=−QCpTΘTΘただし、Qは下記数192のリカッチ方程式を満たす正定対称行列である。
【0304】
【数192】

【0305】なお、ここで解く前記数192のリカッチ方程式はプラントの次数であり、上記第1及び第2変形例の一般化プラントの次数より小さいことに注意を要する。
【0306】次に、オブザーバに関する上記数179を書き換えると、下記数193のようになる。
【0307】
【数193】

【0308】この数193により表されたオブザーバを用いてある正定数γ2が存在してオブザーバ誤差ye^から評価出力zまでのL2ゲインがγ2以下(‖z‖2≦γ2‖ye~‖2)となるようにコントローラを設計することを考える。ここで、前記数193により表されたオブザーバを用いて周波数重みに関する状態変数xw,xuを合わせた一般化プラントを構成すると、同プラントの状態空間表現は下記数194〜196のようになる。
【0309】
【数194】xk'=Axk+B2(xp)u+L1Θ-1e~【0310】
【数195】z1=a1(xp,xk)C11k【0311】
【数196】z2=a2(xp,xk)C12k+a2(xp,xk)D12uただし、前記数194〜196における各変数行列及び定数行列は、下記数197〜204のおりである。
【0312】
【数197】

【0313】
【数198】

【0314】
【数199】

【0315】
【数200】

【0316】
【数201】

【0317】
【数202】C11=[Dwsw o]
【0318】
【数203】C12=[o o Cu
【0319】
【数204】D12=Duなお、ここで定義した状態量xkには状態量xpが含まれていない。
【0320】このとき、D12-1が存在するとすれば、下記数205のリカッチ不等式の正定対称解Pが存在し、さらに非線形重みa1(xp,xk),a2(xp,xk)が下記数206を満たせば、ある正定数γ2が存在して‖z‖2≦γ2‖ye2となるコントローラは下記数207で与えられる。
【0321】
【数205】

【0322】
【数206】

【0323】
【数207】

【0324】よって、下記数208,209を満足するオブザーバ及びコントローラが設計できる。
【0325】
【数208】‖ye~‖2≦γ1‖w‖2【0326】
【数209】‖z‖2≦γ2‖ye~‖2これらのことから、下記数210,211のリカッチ方程式及び不等式を満たす正定対称行列Q,Pが存在することがわかる。
【0327】
【数210】

【0328】
【数211】

【0329】そして、非線形重みa1(xp,xk),a2(xp,xk)が下記数212の制約条件を満たすとすれば、下記数213となる制御則は下記数214,215で与えられる。
【0330】
【数212】

【0331】
【数213】‖z‖2≦γ1γ2‖w‖2【0332】
【数214】xk'=(A+L12)xk+(B2(xp)+L1p2(xp))u−L1y【0333】
【数215】

【0334】ここで、カルマンフィルタを設計するために用いた前記数177のリカッチ方程式と、前記数192のリカッチ方程式とを比較すると、共分散行列V,Wを下記数216,217のように規定すれば、両リカッチ方程式の正定対称解ΣとQは一致する。
【0335】
【数216】W-1=ΘTΘ【0336】
【数217】

【0337】すなわち、カルマンフィルタを設計した時に用いた共分散行列V,Wを用いて、前記数216,217を満たすΘ,γ1を選べば、ここで設計し下記数218により表されたオブザーバはカルマンフィルタと一致する。
【0338】
【数218】xo'=Axo+B2(xp)u+L(C2o+Dp2(xp)u−y)ここで、前記数212の制約条件を満たす非線形重みa1(xp,xk),a2(xp,xk)を下記数219,220に例示しておく。
【0339】
【数219】

【0340】
【数220】

【0341】なお、前記数219,220中のm1(x,x^)は任意の正定関数である。そして、コンピュータによる演算の結果、前記のような正定対称解Pを求めることができた。そして、前記数219,220を用いると前記数214,215は下記数221,222のように変形される。
【0342】
【数221】xk'=(A+L12)xk+(B2(xp)+L1p2(xp))u−L1y【0343】
【数222】

【0344】その結果、この場合も、上記状態フィードバック制御系の場合と同様にして、公知のソフトウェアを用いることにより簡単に解を求めることができるので、この方法によれば、簡単に正定対称解Pを見つけることができるとともに、状態量x'及び制御則u=k(y)も導出することができる。
【0345】d2.具体的計算例次に、カルマンフィルタベースの制御則を用いた第1目標減衰力Fdの具体的計算例について説明する。この場合の構成も、上記第2変形例の第1タイプの場合と同じである。
【0346】また、この場合も、第1減衰力計算ルーチンの実行は図17のステップ200にて開始され、前記第2変形例の第1タイプと同様なステップ202a,204a,210aの処理を実行する。ただし、この場合には、ステップ210aにて上記数221,222と同じ下記数223,224を用い、上記第2変形例の第1タイプの場合と同様にして状態量xk'及び制御入力uを計算する。
【0347】
【数223】xk'=(A+L12)xk+(B2(xp)+L1p2(xp))u−L1y【0348】
【数224】

【0349】前記数223中のAは、マイクロコンピュータ内に予め記憶されていて前記数198,185,30,47により決定される定数行列である。L1は、マイクロコンピュータ内に予め記憶されていて前記数200,191,192により定義された定数行列であって、正定対称行列Q、定数行列Cp、前記数39,111により定まる定数行列C2、及び正定行列Θにより決まるオブザーバのゲインである。C2も、マイクロコンピュータ内に予め記憶されている前記定数行列である。B2(xp)は前記数199,32,47により決定される定数行列である。Dp2(xp)は前記数38により決定される定数行列である。また、yは観測値であって、前記ステップ202aの処理により入力した相対変位量xpw−xpb及び前記ステップ204aの処理により計算したばね上速度xpb'である。
【0350】また、前記数224中のD12は、上記数204で定義され、かつ上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列であって、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。m1(xp,xk)は、任意の正定数関数であり、同関数に関するアルゴリズムが予めマイクロコンピュータ内に記憶されているものである。なお、この正定数関数m1(xp,xk)を正の定数、例えば「1.0」に設定しておいてもよい。C11は、上記数202により定義されて、前記数185にて設定した周波数重みWs(s)に関する係数行列Cw,Dw,Csにより規定され、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。B2(xp)は前記数199,32,47により決定される定数行列である。Pは、上記数211を満たす正定対称解であり、予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。C12は、上記数203により規定され、上記数48にて設定した周波数重みWu(s)に関する係数行列Cuを含む予めマイクロコンピュータ内に記憶されている定数行列である。
【0351】前記ステップ210aの処理後、上記第1変形例及び第2変形例の第1タイプと同様なステップ212,214の処理により、ダンパ12の総合的な目標減衰係数Csを計算するとともに第1目標減衰力Fdを計算して、ステップ216にてこの第1減衰力計算ルーチンの実行を終了する。
【0352】f.その他の変形例また、上記第1〜第3変形例においては、一般化プラントの状態空間表現における状態量として、タイヤ変位量xpr−xpw、相対変位量xpw−xpb、ばね下速度xpw'及びばね上速度xpb'を用いるようにしたが、前記状態空間表現が可能であれば、車体BD及び車輪WHの上下方向の運動に関する他の物理量を利用することもできる。また、上記第2変形例の第1タイプ及び第3変形例においてはタイヤ変位量xpr−xpw及びばね下速度xpw'の検出を省略して推定するようにし、上記第2変形例の第2及び第3タイプにおいてはさらに相対変位量xpw−xpb(相対速度xpw'−xpb')の検出をも省略して推定するようにしたが、制御則の多少の変更により他の状態変数の検出を省略して推定することも可能である。
【0353】また、上記第1〜第3変形例の評価出力zpにおいては、3種類の物理量、すなわち車体BDの共振に影響するものとしてばね上速度xpb'を、車輪WHの共振に影響するものとして相対速度xpw'−xpb'を、車両の乗り心地の悪化(ゴツゴツ感)に影響するものとしてばね上加速度xpb''を用いるようにしたが、これらのいずれか1種類又は2種類を評価出力zpとして用いるようにしてもよい。さらに、前記車体BDの共振に影響するものとして、ばね上速度xpb'に代えて、ばね上加速度xpb''、ばね上変位量xpbなどの車体BDの運動に関係の深い物理量を用いるようにしてもよい。車輪WHの共振に影響するものとして、相対速度xpw'−xpb'に代えて、ばね下速度xpw'、タイヤ変位量xpr−xpwなどの車輪WHの運動に関係の深い物理量を用いるようにしてもよい。
【0354】また、上記各種変形例においては、非線形なプラントを扱えて周波数領域で設計仕様を与えることができる制御理論として非線形H∞制御理論を適用するようにしたが、前記制御理論として線形マトリクス不等式(Linear Matrix Inequality)制御理論を拡張した双線形マトリクス不等式(Bilinear Matrix Inequality)制御理論を用いるようにしてもよい。
【0355】上記各種変形例によれば、車輪WH(ばね下部材)の車体BD(ばね上部材)に対する相対速度xpw'−xpb'と、同相対速度xpw'−xpb'に応じて変化する減衰係数Csとの積により与えられる第1目標減衰力Fd=Cs (xpw'−xpb')を扱う双線形制御システムにおいても、設計時に与えた制御仕様(ノルム条件)を満たし、かつ制御入力(非線形減衰係数Cv)が連続的に変化して、制御に違和感を与えない良好な減衰力制御装置が実現される。また、上記した各種変形例は、車体BDの共振に影響する車体BDの上下速度xpb'、車輪WHの共振に影響する車輪WHの車体BDに対する相対速度xpw'−xpb'、及び乗り心地に悪化(ゴツゴツ感)に影響する車体BDの上下加速度xpb''を評価出力とする一般化プラントを想定して第1目標減衰力Fdを計算するものであって、前記上下速度xpb'、相対速度xpw'−xpb'及び上下加速度xpb''に対して所定の周波数重みを付与するので、周波数帯域に応じて同上下速度xpb'、相対速度xpw'−xpb'及び上下加速度xpb''を車両への悪影響をより良好に抑制するように制御することができる。これにより、これらの各種変形例によれば、車両の走行安定性及び乗り心地がより良好となる第1目標減衰力Fdが計算されることになる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年4月19日(2000.4.19)
【代理人】 【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一 (外1名)
【公開番号】 特開2001−1736(P2001−1736A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願2000−118341(P2000−118341)