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【発明の名称】 懸架装置
【発明者】 【氏名】山内 雅和

【氏名】川崎 裕章

【氏名】中尾 幸夫

【要約】 【課題】車高の調整が容易で、乗り心地を向上させ、取付けの容易な、特に車高調整式として用いられる懸架装置を提供することを目的とする。

【解決手段】緩衝装置2と、コイルスプリング3とエアスプリング4とを備えた懸架装置に於て、コイルスプリング3の上部もしくは下部に直列的にエアスプリング4を配置したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 緩衝装置2と、コイルスプリング3とエアスプリング4とを備えた懸架装置に於て、該コイルスプリング3の上部もしくは下部に直列的に該エアスプリング4を配設したことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】 緩衝装置2が、コイルスプリング3・エアスプリング4から独立して配設されている請求項1記載の懸架装置。
【請求項3】 エアスプリング4にエアを出し入れすることで車高を調整するよう構成された請求項1又は2記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の車輪懸架装置に係り、特に車高調整式の懸架装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車高調整式の懸架装置としては、例えばエアサスペンションがある。図7にエアサスペンション41の一例を示す。エアサスペンション41は、下端42を車軸を支持するハウジングに取付けられたストラット本体43、該ストラット本体43に軸方向に伸縮可能なるよう嵌装され上端44を車体側に取付けられたロッド45と、上記ストラット本体43とロッド45の外周部に形成されたエアチャンバー46により構成され、車軸の上下動に伴うストラット本体43とロッド45との伸縮をチャンバー46内に封入された空気の圧縮弾性により緩衝するようになっている(例えば特開昭52−106520号公報)。これらのエアサスペンションは、主に乗り心地の向上や悪路走行時の車高アップによる腹付き防止のために行われる。
【0003】また、車高を調整するのに、既設のコイルスプリングを切断したり、あるいは、専用の車高調整サスペンションキットへの取替えが行われている。これらは主に車高を低くすることにより車の見栄えを良くしたり、走行性能をアップするために行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エアサスペンションは、非常に高価で、ごく一部の高級車にしか装着されておらず、普及率が低い。また、エアサスペンションは、専用のストラットを使用しているため、車両製造時に装着されている以外、後からの装着は困難である。一方、既設のコイルスプリングを切断した場合は、車高を元に戻すことは不可能となる。また、専用の車高調整サスペンションキットへ取替えた場合は、一度設定した車高から再度車高を変更する際に、車両をジャッキアップして調整しなければならず非常に面倒であった。
【0005】そこで、本発明は、従来の問題を解決し、車高の調整が容易で、乗り心地を向上させ、取付けの容易な、特に車高調整式として用いられる懸架装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明に係る懸架装置は、緩衝装置と、コイルスプリングとエアスプリングとを備えた懸架装置に於て、該コイルスプリングの上部もしくは下部に直列的に該エアスプリングを配設したものである。
【0007】また、緩衝装置が、コイルスプリング・エアスプリングから独立して配設されてもよく、エアスプリングにエアを出し入れすることで車高を調整するよう構成されている。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳説する。
【0009】図1は、本発明に係る自動車の車輪懸架装置の実施の一形態を示したものであり、本懸架装置1は、緩衝装置(ダンパー)2と、コイルスプリング3とエアスプリング4とを備え、コイルスプリング3の上部に直列的にエアスプリング4を配設したものであり、自動車5の車体6と車軸8との間に装着されている。ここで、「直列的」とは、車体6側と車軸8側の間の力の伝達が、一方のみを介して伝達されることが無く、必ず両者を介して伝達されるような配置を言う。
【0010】具体的に述べると、図1と図2に示すように、エアスプリング4は、ケース9に装着されており、ケース9の下部に、緩衝装置2のロッド2aを連結し、かつ、コイルスプリング3の上部を押し当てる。そして、ケース9の上部を、ボルト12等を介して、車体6に固定し、緩衝装置2のストラット本体2bの下部を、車輪7,7間に架け渡された車軸8に取付け、車輪7…を懸架する。
【0011】なお、ケース9の下部と、緩衝装置2のロッド2aの連結部に、ラバーブッシュ(緩衝部材)を用いて、あらゆる方向に対して弾性支持されることにより、地面等からの衝撃の伝達を緩和させることが出来る。一方、サスペンションと車体6の接点部分の剛性をアップさせ、サスペンションの動きを直に伝えたい場合は、ピローボールベアリング等を用いるも好ましい。
【0012】また、本装置1は、エアスプリング4に(加圧)エアを出し入れすることで車高を調整するよう構成されている。具体的に述べると、エアスプリング4は、(図2に示すように、)金属製の鉛直円筒状のケース9の内部に装着されている。そして、ケース9は、上ケース10と下ケース11から成り、上ケース10は、水平円盤状の板部材32の下面に複数個の円弧板材30…が垂設され、下ケース11は、水平円盤状の板部材33の上面に複数個の円弧板材31…が鉛直状に設けられている。そして、上ケース10の円弧板材30…と、下ケース11の円弧板材31…が相互に噛み合うように嵌合することで、上下ケース10・11を合わせて鉛直円筒状となるよう形成されている。さらに、上ケース10と下ケース11は、円弧板材30,31の相互の噛み合った状態を保ちつつ、上下に(鉛直方向に)移動可能となるよう構成されている。
【0013】そして、図2(イ)に示すように、エアスプリング4の内圧が無いときは、上ケース10の円弧板材30の下端が下ケース11の板部材33に当接し、かつ、下ケース11の円弧板材31の上端が上ケース10の板部材32に当接して、車体6等の荷重をエアスプリング4にかけず、ケース9にて受け持つようにする。このとき、エアスプリング4は弾発力が働かず、剛体として作用するといえる。
【0014】他方、図2(ロ)に示すように、エアスプリング4のエア出入口13から、エアを供給すると、エアスプリング4内に加圧空気が充填され、エアスプリング4は鉛直方向に力を発生し、車体6等の荷重と釣り合う高さまで伸び、(図1参照の)車体6と車軸8の間隔を広げ、車高を変えることができる。このとき、上・下ケース10,11は、相互に噛み合っているため、鉛直軸心を中心とする回転方向にその動きを規制する機能を発揮できる。
【0015】なお、図示省略するが、エアスプリング4のエア出入口13への加圧エアの供給は、コンプレッサから、ドライヤ、エアタンク、電磁弁、レギュレーター等を介して行われ、運転席のスイッチにて、電磁弁を開閉させることで、エアスプリング4への加圧エアの出し入れを行うようにする。また、コンプレッサの電源は、バッテリーより供給する。
【0016】エアスプリング4の発生力Fは、エアスプリング4の内圧Pと、エアスプリング4の受圧有効面積Sとの間に、次の■式の関係が成り立つ。
F=P×S ■従って、発生力Fは、空気の圧力(内圧P)に比例するので、数値化され易く、確実に所定の車高に変化できる。
【0017】また、エアスプリング4への加圧エアの出し入れは、エアスプリング4のばね定数K1 を、様々に調整することであり、ばね定数K1 は、エアスプリング4の内圧Pと、エアスプリング4の受圧有効面積Sと、エアスプリング4の容積Vとの間に、次の■式の関係が成り立つ。
1 =P×S2 /V ■従って、ばね定数K1 は、空気の圧力(内圧P)に比例するので、車体6等の荷重の変化によらず、固有振動数をほぼ一定に保つことができ、乗り心地を向上させ、さらに、確実に車高を所望値に調整できる。
【0018】また、コイルスプリング3とエアスプリング4を直列的に配置しているため、全体の直列合成のばね定数Kは、上述のエアスプリング4のばね定数K1 と、コイルスプリング3のばね定数をK2 との間に、次の■式の関係が成り立つ。
K=K1 ×K2 /(K1 +K2■従って、直列合成のばね定数Kは、単独のばね定数K1 ,K2 より小さくなり、乗り心地が一層向上したものとなる。なお、■式より、エアスプリング4のばね定数K1 は、空気の圧力(内圧P)によって、変化させることができるので、直列合成のばね定数Kを、所定の値に変化させることができる。
【0019】図6に、図1・図2の構造のエアスプリング4の内圧、荷重、高さ変位量の関係の一例を示す。このエアスプリング4を株式会社タナベのサステックPROストリートシリーズのサスペンションの上部に取付け、アコードワゴンに装着した。ケース9の下部は、緩衝装置2のロッド2aとピローボールで連結し、コイルスプリング3を押し当てた。
【0020】エアスプリング4に内圧がないときは、図2(イ)のように、上ケース10と下ケース11とが接し、剛体として作用する。他方、エアスプリング4内に加圧空気が充填されると、エアスプリング4は軸方向に力を発生し、荷重と釣り合う高さまで伸長し、車高を変えることができる。なお、この状態でも、上ケース10と下ケース11とは、図2(ロ)のように噛み合っているので、鉛直軸心廻りに回転しない。
【0021】エアスプリング4に加圧空気を充填したときの内圧と、車高の上昇幅(高さ変位量)の関係の実測結果を、次の表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】なお、アコードワゴンは、排気量2200cc,軸重は、フロント830kgf,リア590kgfであり、本発明の懸架装置はフロントに左右一対、リアに左右一対が用いられる。図6に於て×印はフロントの実測値を、・印はリアの実測値をプロットして示し、測定誤差が存在する点を勘案すると、エアスプリング4単体の傾斜直線(図6参照)と良く一致しているといえる。
【0024】上記表1からも判るように、0.8 MPaの内圧を加えることにより、フロントで約25mm、リアで約33mm車高を上昇させることができた。(仮に、もっと車重の大きい車両の場合や、更に車高を上昇させたい場合には、エアスプリング4として受圧有効面積Sの大きい───発生力Fの大きい───ものを用いれば良い。
【0025】次に、図3に、本装置1の他の実施の形態を示す。本装置1は、緩衝装置2とコイルスプリング3とエアスプリング4とを備え、コイルスプリング3の下部に直列的にエアスプリング4を配置し、さらに、緩衝装置2が、コイルスプリング3とエアスプリング4から独立するよう構成されており、自動車5の車体6と車軸8との間に装着されている。
【0026】具体的に述べると、エアスプリング4は、ケース9に装着されており、ケース9の上部を、コイルスプリング3の下部と連結し、ケース9の下部を、ボルト12等を介して、車軸8に固定し、コイルスプリング3の上部を、車体6に取付け、車輪を懸架する。そして、緩衝装置2は、コイルスプリング3とエアスプリング4から独立して、緩衝装置2のロッド2aを車体6に取付け、緩衝装置2のストラット本体2bの下部を、車軸8に取付けられている。言い換えると、並列に設けられている。
【0027】次に、図6の各傾斜線にて示したような特性のエアスプリングを、図3に示すように、配設した場合の実施例についてその特性を実測した。即ち、排気量2000ccのステップワゴンの後輪(リア)に、図3のように配設する。コイルスプリング3としては、標準のものと同じばね定数(6kgf/mm)のままで、長さを70mm短くしたものを使用して、直列に、(下部側に)エアスプリング4を配置した。なお、後述の図4に示したようなエアスプリング4を上下反転して、配設し、軸心と直交方向への位置づれをしないような構造のものを用いた。
【0028】このステップワゴンの軸重はリアが630kgf(フロントは840kgf)であり、本発明の懸架装置は、リアに左右一対用いられるから、エアスプリング4の1本当たり、630kgf÷2=315kgfである。
【0029】この状態のエアスプリング4に加圧空気を充填したときの内圧と、車高の上昇幅(高さ変位量)の関係の実測結果を、次の表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】この実測結果を図6の中に合わせて示す。即ち、★印がその実測値をプロットしたものであり、測定誤差が存在する点を勘案すると、エアスプリング単体の傾斜直線と良く一致しているといえる。この表2から、0.8 MPaの内圧を加えることで、約31mm車高を上昇させることができた。
【0032】次に、図4に、ケース9の他の実施の形態を示し、ケース9は、金属製の鉛直円筒状の、内ケース14と外ケース15から成り、内ケース14は、外ケース15の内部に嵌入され、外ケース15の内部を上下に(鉛直方向に)移動可能となるように構成されている。また、エアスプリング4は、内ケース14の内部に装着されている。
【0033】そして、図4(イ)に示すように、エアスプリング4の内圧が無いときは、内ケース14と外ケース15が、相互に支持し合い、車体6(図1と図3参照)等の荷重をエアスプリング4にかけず、ケース9にて受け持つようにする。
【0034】その後、図4(ロ)に示すように、エアスプリング4のエア出入口13から、エアを供給すると、エアスプリング4内に加圧空気が充填され、エアスプリング4は鉛直方向に力を発生し、車高を変えることができる。そして、このとき、内ケース14は、外ケース15の内部に嵌入されているため、水平方向の位置づれを規制する機能を発揮する。
【0035】次に、図5は、別の実施の形態を示し、図2と図4では、無圧時に、エアスプリング4の外部のケース9で、荷重を支持しているのに対し、図5では、エアスプリング4の内部で、荷重を支持している。
【0036】具体的に説明すると、エアスプリング4は、上方と下方が開口したビア樽型乃至円筒型の弾性膜4aと、水平状の上板部材20と下板部材21を具備し、上板部材20の中央部には鉛直状の中空棒22が貫通状に設けられ、中空棒22の下部には軸受部16が設けられている。そして、下板部材21の上面中央部には鉛直状の軸棒17が設けられ、エアスプリング4の内部で、軸棒17が、中空棒22の内部と軸受部16の内部を挿入状に上下に(鉛直方向に)移動可能となるよう構成されている。
【0037】そして、図5(イ)に示すように、エアスプリング4の内圧が無いときは、軸受部16と下板部材21が、相互に支持し合い、車体6(図1と図3参照)等の荷重を弾性膜4aにかけない。なお、軸棒17の根元にワッシャー18を設けてもよく、確実に荷重を受けることができる。
【0038】その後、図5(ロ)に示すように、エアスプリング4のエア出入口13から、エアを供給すると、エアが中空棒22の内部を通過し、中空棒22の内部と外部を連通状に設けられた複数個の連通孔19…を通過して、エアスプリング4内に加圧空気が充填される。従って、エアスプリング4は鉛直方向に力を発生し、車高を変えることができる。そして、このとき、軸棒17は、軸受部16の内部に挿入されているため、水平方向にその動きを規制する機能を発揮できる。また、図示省略するが、軸棒17と軸受部16が、相互に鉛直方向にのみ案内されるようキーやスプライン結合に構成してもよく、鉛直軸心を中心とする回転方向にその動きを規制する機能を発揮できる。
【0039】なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、例えば、本装置を上下逆に取付けてもよく、既設の懸架装置に合わせた臨機応変な取付けが行える。また、ケース9を角筒状にしてもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0040】
【発明の効果】本発明は、以下に記載するような著大な効果を奏する。
【0041】(請求項1によれば)コイルスプリング3とエアスプリング4を直列的に配置しているため、全体のばね定数が小さくなり、一層、地面等からの衝撃を和らげ、乗り心地を向上させる。また、エアスプリング4の内圧や受圧有効面積を変えることで、全体のばね定数を変化させ、様々な乗り心地を楽しむことができる。
【0042】(請求項2によれば)コイルスプリング3とエアスプリング4を直列的に配置しているため、全体のばね定数が小さくなり、一層、地面等からの衝撃を和らげ、乗り心地を向上させる。また、エアスプリング4の内圧や受圧有効面積を変えることで、全体のばね定数を変化させ、様々な乗り心地を楽しむことができる。
【0043】(請求項3によれば)エアを出し入れするだけで、車高の調整が容易となり、さらに、全体のばね定数を変化させ、様々な乗り心地を楽しむことができる。
【0044】このように、車高を低くしている車にとっては、車体が当たってしまうような段差でも、運転席から容易に車高を上昇させることが可能で、腹当りを回避することができる。また、通常の車高で走行している車が悪路走行する場合、車高を上昇させ、車体が当るのを回避することができる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【出願日】 平成11年6月16日(1999.6.16)
【代理人】 【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
【公開番号】 特開2001−1730(P2001−1730A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−169653