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【発明の名称】 車両用ストラット型懸架装置
【発明者】 【氏名】中田 悦郎

【氏名】浅野 秀彦

【氏名】茅野 好一

【要約】 【課題】ピッグテール状の小径コイル部とこれに連接された大径コイル部とからなるコイルスプリングが万一途中で折損されても上方の大径コイル部の落下を防止すると共に、大径コイル部が横方向に移動してタイヤと干渉するのを防止する。

【解決手段】ストラット型ショックアブソーバ1に偏心コイルスプリング4を介在させ、コイルスプリングは端部にピッグテール状の小径コイル部6と、小径コイル部に偏心して連なる大径コイル部5とからなり、スプリングシート30,はショックアブソーバ1に挿着される取付部37,37aと、小径コイル部を支える螺旋状のスプリング支承面38,38aと、その外周に連設され大径コイル部の外径に対応する複数のつば部19,20,21,22,とを有し、二つのつば部を対角線上に対向して設け、つば部間の外径寸法を大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きく設定し、少なくとも一つのつば部がタイヤT側に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ストラット型ショックアブソーバ側のスプリングシートと車体側サポートとの間に偏心コイルスプリングを介在させ、コイルスプリングは端部にピッグテール状の小径コイル部と、この小径コイル部に偏心して連なる大径巻き径の大径コイル部とからなり、スプリングシートはショックアブソーバに挿着される取付部と、小径コイル部の巻き上り部分を支える螺旋状のスプリング支承面と、スプリング支承面の外周に連設され且つ上記大径コイル部の外径に対応する複数のつば部とを有している車両用ストラット型懸架装置において、少なくとも二つのつば部を対角線上に対向して設け、当該二つのつば部間の外径寸法を上記大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きく設定し、少なくとも一つのつば部がタイヤ側に配置されていることを特徴とする車両用ストラット型懸架装置。
【請求項2】 対角線上の寸法が大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きくした正方形の母材により取付部とスプリング支承面とを成形すると共に当該母材の内接円からはみ出す四隅のうち少なくとも対角線上の二つを水平なつば部として成形したことを特徴とする請求項1の車両用ストラット型懸架装置。
【請求項3】 対角線上の寸法が大径コイル部の外径寸法より若干大きくした正方形の母材により取付部とスプリング支承面とを成形すると共に当該母材の内接円からはみ出す四隅を水平なつば部として成形し、更にいずれか一つのつば部をタイヤ側に配置すると共に当該つば部の端部を垂直に折り曲げて起立したことを特徴とする請求項2の車両用ストラット型懸架装置。
【請求項4】 対角線上の二つの水平なつば部のうち、一方のつば部を他方のつば部より対角線方向に沿って長く成形し、当該長い方のつば部をタイヤ側に配置すると共にその端部を垂直方向に折り曲げて起立したことを特徴とする請求項2の車両用ストラット型懸架装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ストラット型ショックアブソーバ側のスプリングシートと車体側サポートとの間に、例えば、端部にピッグテール状の小径コイル部を有する偏心コイルスプリングを介装させた車両用ストラット型懸架装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ストラット型ショックアブソーバ側スプリングシートと車体側サポートとの間にコイルスプリングを介装したストラット型懸架装置が車両に配設されて車体を懸架しているが、このうちコイルスプリングとしてピッグテール状のコイルスプリングを使用したものとして、例えば、実公昭58−26810号公報に開示されたものが開発されている。
【0003】この懸架装置は、図5に示すように、ストラット型ショックアブソーバ1と、車体側サポート2とショックアブソーバ1に取付けたスプリングシート3との間に介装した偏心コイルスプリング4とからなる。
【0004】コイルスプリング4は、図6,図7に示すように、コイル径がほぼ一定な大径コイル部5と、大径コイル部5の下方に偏心して連設したピッグテール状の小径コイル部6とからなり、同じく、スプリングシート3はショックアブソーバ1への取付部7と、小径コイル部6の巻き上り部分を支える螺旋状のスプリング支承面8と、スプリング支承面8の上部外周に水平に張出して設けた複数のつば部9,10,11とを備えているものである。
【0005】つば部9,10,11は、コイルスプリング4が途中で切損されても、上方の外径の大きい大径コイル部5がスプリングシート3を乗り越えて下方に落下するのを防止するように大径コイル部5の外径に対応して水平に張出して設けられている。
【0006】上記のようなスプリングシートは、例えば特許第2632825号公報に開示されたような成形方法によって成形されるのが普通である。
【0007】この成形方法は、図8に示すように、コイルスプリングの最大外径、例えば上記偏心コイルスプリング4の大径コイル部5の外径に対応した巾d1の長い帯状の基材12からスプリングシートの円形母材13を打ち抜き、その後この母材13を利用して深絞り加工等で上記取付部7とスプリング支承面8と、つば部9,10,11を成形し、更に無駄な部分は切除しているものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の懸架装置やスプリングシートの成形方法には次のような不具合があり、その改善が望まれている。
【0009】第1に、図6に示す従来の懸架装置では、ピッグテール状小径コイル部6よりも大径のコイル部5が途中で折損された時、つば部9,10,11で上方の大径コイル部5の下方への落下を防止するが、この大径コイル部5が切損して更にタイヤT方向たる横方向に移動した時、折損した大径コイル部5の下部がタイヤTと干渉するおそれがある。
【0010】第2に、スプリングシート3の母材は円形であり、無駄な部分を切除しているので基材12に対する歩留りが悪い。
【0011】特に、図8に示す従来の打ち抜きによる母材13の成形方法であると、母材13のコーナ部に対応する四つの隅部14は後から切除されるため、この隅部14が無駄となる。
【0012】しかも、基材12の巾d1はコイルスプリング4の最大外径に対応している為に偏心コイルスプリング4の外径に対応した巾d1がどうしても必要となり、基材12の材料費が嵩むものである。
【0013】そこで、本発明の第1の目的は、ピッグテール状の小径コイル部6よりも大径のコイル部5が万一途中で折損を起こしても、上方の大径コイル部5の落下を防止すると共に歩留りの良好なスプリングシートを備えた車両用ストラット型懸架装置を提供することである。
【0014】第2の目的は、上記第1の目的に加えて、折損した大径コイル部が万一横方向に移動してもタイヤと干渉するのを防止することのできるスプリングシートを備えた車両用ストラット型懸架装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の手段は、ストラット型ショックアブソーバ側のスプリングシートと車体側サポートとの間に偏心コイルスプリングを介在させ、コイルスプリングは端部にピッグテール状の小径コイル部と、この小径コイル部に偏心して連なる大径巻き径の大径コイル部とからなり、スプリングシートはショックアブソーバに挿着される取付部と、小径コイル部の巻き上り部分を支える螺旋状のスプリング支承面と、スプリング支承面の外周に連設され且つ上記大径コイル部の外径に対応する複数のつば部とを有している車両用ストラット型懸架装置において、少なくとも二つのつば部を対角線上に対向して設け、当該二つのつば部間の外径寸法を上記大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きく設定し、少なくとも一つのつば部がタイヤ側に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】この場合、対角線上の寸法が大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きくした正方形の母材により取付部とスプリング支承面とを成形すると共に当該母材の内接円からはみ出す四隅のうち少なくとも対角線上の二つを水平なつば部として成形するのが好ましい。
【0017】同じく、対角線上の寸法が大径コイル部の外径寸法より若干大きくした正方形の母材により取付部とスプリング支承面とを成形すると共に当該母材の内接円からはみ出す四隅を水平なつば部として成形し、更にいずれか一つのつば部をタイヤ側に配置すると共に当該つば部の端部を垂直に折り曲げて起立してもよい。
【0018】同じく、対角線上の二つの水平なつば部のうち、一方のつば部を他方のつば部より対角線方向に沿って長く成形し、当該長い方のつば部をタイヤ側に配置すると共にその端部を垂直方向に折り曲げて起立してもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4にもとづいて説明する。
【0020】本発明の車両用ストラット型懸架装置は、図6の従来技術と同じく、ストラット型ショックアブソーバ1と、車体側サポート2とショックアブソーバ1に取付けたスプリングシートとの間に介装した偏心コイルスプリング4とからなるものである。
【0021】コイルスプリング4は、大径巻き径の大径コイル部5と、この大径コイル部5の下方に偏心して連設したピッグテール状の小径コイル部6とからなるが、必ずしもピッグテール状に偏心したコイルスプリング4を使用する必要はなく、通常のコイルスプリングであっても使用可能である。
【0022】本発明は、スプリングシートの構造に特徴があり、図1(A),(B)、図3(A),(B)の実施形態に示すものが使用される。
【0023】図1(A),(B)に示すコイルスプリング30は、正方形状の母材を、例えば、深絞り加工等で成形したものであり、ショックアブソーバ1の外周に嵌合固定する筒状の取付部37と、取付部37の上部に連設されてコイルスプリング4の小径コイル部6の巻き上がり部分を略々3/4巻き程度の所定の範囲に亘って支える螺旋状のスプリング支承面38と、スプリング支承面38の外周に連設した四つの水平なつば部19,20,21,22とからなり、各つば部19,21と、20,22とは対角線上に配設され、このスプリングシート30をショックアブソーバ1に取付けた時一つのつば部21がタイヤT側に配置されている。
【0024】取付部37は、コイルスプリング30自体の中心から偏心した位置に形成され、この取付部37の中心から一番離れた位置のつば部21がタイヤT側に配置されている。
【0025】対角線上に対向する二つのつば部19と21との間、及び20と22との間の外径寸法d1は、コイルスプリング4の大径コイル部5の外径寸法d1と等しいか若干大きく成形されている。
【0026】この為、万一、コイルスプリング4が途中で切断されたような場合、大径コイル部5が小径コイル部6の外側において下方に落下しても、この大径コイル部5の下部はつば部19,20,21,22のいずれか一つ又は複数個に支えられるため、スプリングシート30より下方に落下するのが防止される。
【0027】特に、つば部21がタイヤT側に配置されているから、上記大径コイル部5が万一折損しても、この大径コイル部5はつば部21で支持されタイヤTと干渉するのが防止される。
【0028】図2は、コイルスプリング4の小径コイル部6と大径コイル部5とを軸線に沿って見通した平面図であり、ピッグテール状の小径コイル部6の先端部6aは、スプリングシート30の所定位置に設けた係止段部39に当接して巻き上がると共に、所定の範囲(図2中にハッチングで示した3/4巻き程度)に亘って支承面38により当接支持される。
【0029】図3は、スプリングシート30aの他の実施の形態に係り、これは、図1のスプリングシート30と同じく、正方形の母材から成形され、筒状の取付部37aと、スプリング支承面38aと、対角線上に配設した四つのつば部19a,20a,21a,22aと、つば部21aの端部を垂直に上方に向けて折り曲げて起立した係止片40とで構成され、対角するつば部19aと係止片40、及びつば部20aと22a間の寸法d1は、コイルスプリング4の大径コイル部5の外径d1と等しく又は若干大きく成形されている。
【0030】上記と同じく取付部37aの中心から一番離れたつば部21aと係止片40とはタイヤT側に配置される。
【0031】この為、上記図1の実施の形態の場合と同じく、各つば部19a,20a,21a,22aが大径コイル部5の落下を防止し、少なくともタイヤT側に張出しているつば部21aにおける係止片40は、万一折損した大径コイル部5がタイヤT側につば部21a上をすべって移動するのを防止する。
【0032】他の三つのつば部19a,20a,22aを補強したり、万一コイルスプリング4が折損して横方向にずれるのを防止する為に三つの係止片を夫々各つば部に設けても良い。
【0033】図1に示すスプリングシート30の母材は、図4に示す成形方法で得られるもので、巾d2の寸法を有する帯状の基材12aから対角線上の寸法d1からなる正方形の母材13aを連続して切り取り、この母材13aを利用して深絞り加工等でスプリングシート30を成形する。
【0034】この場合、正方形状の母材13aのうち、内接円aからはみだした四隅の片cをそのまま水平なつば部19乃至22として利用し、内接円aより内側の部分を取付部37、スプリング支承面38として成形するものである。
【0035】従って、対角線上に対向する二つの片c,c間の寸法はd1となり、コイルスプリング4の大径コイル部5の外径寸法d1と対応し、各片cがつば部19等としてそのまま利用できるから歩留りが良くなる。
【0036】更に、従来は、図8に示すように、巾d1の帯状の基材12を使用しているが、本発明では、図4に示すように、対角線上の寸法d1はとりもなおさず、母材13の外接円bの直径d1に相当するから、巾d1より小さい巾d2の基材12aを利用して母材13aを得ることができ、(d1−d2)分の基材の材料が節約できることになる。
【0037】図5は、他の実施の形態に係る母材の成形方法に係る。
【0038】この母材の成形方法によるときは、図3に示すスプリングシート30aが得られ、つば部21aの一つに垂直に立ち上がる係止片40を形成できる。
【0039】即ち、母材13aは図4と同じ巾d2の基材12aから正方形状に切り取られて成形される。
【0040】そして、図4に示す内接円aを対角線上に沿って偏心させ、この内接円aより外側にはみ出した四隅の片c1,c2,c3,c4を水平なつば部としてそのまま利用する。
【0041】この時、片c1,c2,c4は面積が大きくなり、片c3は面積が少なくなるが、片c1とc3間の寸法d1、片c2とc4間の寸法d1は変化しないので、コイルスプリング4の大径コイル部5の外径d1に十分対応できる。
【0042】しかも、片c1の面積が広く、この片c1の端部を垂直に折り曲げて起立させることができ、この折り曲げた部分を図3の係止片40として使用する。
【0043】尚、内接円aが母材13aからはみ出す部分にはスプリング支承面が形成できず支承面が一部欠けることになるが、他の部分のスプリング支承面で小径コイル部6の巻き上がり部分を所定範囲に亘り支えているのでスプリングの支持には影響が無い。
【0044】図5の成形方法による場合でも、上記図4と同じく、片c1,c2,c3,c4がつば部としてそのまま利用できるから歩留りが良く、又母材13aの対角線上の寸法d1がそのまま大径コイル部5の外径d1に対応しており、巾d1より小さい巾d2の基材12aを使用することができる。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、次の効果がある。
【0046】■各請求項の発明によれば、対向する二つのつば部間の外径寸法をコイルスプリングの大径コイル部の外径寸法と等しいか又は若干大きくしたから、大径コイル部が万一折損したとしても上記つば部で引掛って下方に落下するのが防止される。
【0047】又、少なくとも一つのつば部がタイヤ側に配置されているから、万一大径コイルが折損してもつば部はよりタイヤと干渉することが無く不測の事故の発生を防止できる。
【0048】■請求項2,3,4の発明によれば、正方形の母材の四隅の二つ又は四つをそのまま水平なつば部として使用するので、正方形の母材全部を有効に利用でき歩留りを良くできる。
【0049】しかも、対角線上に対向する二つのつば部間の寸法がそのまま偏心コイルスプリングの大径コイル部の外径寸法に対応しており、その結果、巾が大径コイル部の外径寸法より小さい巾の基材から母材を得ることができ、材料の節約を図れる。
【0050】■請求項3,4の発明によれば、つば部の端部を垂直に折り曲げて起立又は切り起しているからこの部分が係止片として使用され、万一コイルスプリングの大径コイル部が途中で折損してタイヤ方向に移動しょうとしてもこの係止片が横方向への移動を積極的に阻止し、タイヤとの干渉を防止できる。
【出願人】 【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
【出願日】 平成11年6月18日(1999.6.18)
【代理人】 【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
【公開番号】 特開2001−1729(P2001−1729A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−171841