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【発明の名称】 剥離帯電防止チャック
【発明者】 【氏名】松本 力也

【氏名】越智 敏晴

【要約】 【課題】液晶カラーフィルタの製造工程において、剥離帯電による透明基板の割れを発生させることなく、当該透明基板を引き離すことのできるチャック10を提供する。

【解決手段】本発明のチャック10は、基底面11上に突設されて、その突端面13で透明基板を支える保持部12や、隣接する保持部12の側壁面14と基底面11とによって区画され、チャック10上に透明基板を載置したときに閉じられた空間を形成する溝状の吸引部15の面積比率等を調整したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】カラーフィルタの製造時に当該カラーフィルタの透明基板を設置、固定するチャックであって、当該チャックの基底面上に突設されて、その突端面で前記透明基板を支える凸条でかつ断面略矩形状の保持部と、隣接する保持部の側壁面とチャックの基底面とによって区画され、チャック上に透明基板を載置したときに閉じられた空間を形成する溝状の吸引部と、前記透明基板を押し上げて前記保持部から剥離させる突き上げピンと、を備えており、前記吸引部は、チャック上に透明基板を載置した後、吸引部内の基底面に設けられた吸引口からエアーを吸い込むことによって略真空状態とすることができるものであり、チャック表面の全面積に占める前記突端面の全面積の割合が10〜15%で、チャック表面の全面積に占める前記吸引部での基底面の全面積の割合が5〜10%であり、さらに、前記突端部の幅が5〜8mm、前記吸引部の幅が3〜5mm、かつ隣接する突端部の最大間隔が230mmである、ことを特徴とする剥離帯電防止チャック。
【請求項2】前記突き上げピンは、その表面全体がグラファイトライクカーボンでコーティングされたものである請求項1記載の剥離帯電防止チャック。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子用等のカラーフィルタの製造において、ガラス製の透明基板を剥離帯電による損傷を引き起こすことなく引き離すのに用いられるチャックに関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置(LCD)は、軽量化、省スペース化、省電力化を実現し得る画像表示装置として、近年、パーソナルコンピュータを初めとする各種機器類の表示装置として広く用いられている。カラーフィルタは、LCDのカラー表示を実現するとともに、光学特性(コントラスト)や色特性(明るさ、色再現)を左右する重要な部材であって、例えば図5(8) に示すように、パターン化された赤(R)、緑(G)および青(B)の着色フィルタ層73(厚さ各1.5μm程度)と、各着色フィルタ層73の境界にあって隣合う着色フィルタの混色を遮る厚さ0.2μm程度のブラックマトリックス(BM)72とが、厚さ1mm程度のガラス製透明基板71上に規則的に配列され、さらにその表面に、オーバーコート層(保護膜)74や透明電極(ITO膜)75が設けられたものである。
【0003】このカラーフィルタ70は、図4および図5に示すように、少なくとも、(1) 透明基板71上へのCrOx膜72aやCr膜72b等の形成〔スパッタリング〕、(2) レジスト(ポジレジスト)76の塗布〔スピンコート〕、(3) フォトマスク77を用いたレジスト膜への露光(3a)、現像(3b)、エッチング(3c)およびレジスト膜の剥離(3d)の各処理によるブラックマトリックス72のパターニング、(4) 着色レジスト(ネガレジスト)78の塗布〔スピンコート〕、(5) フォトマスク77’を用いた着色レジスト膜への露光(5a)と現像(5b)処理による着色フィルタ(R)層73のパターニング、(6) 上記(4) および(5) 工程の繰り返し(2回)によるRGB層の形成、(7) オーバーコート層74の塗布形成〔スピンコート〕、および、(8) 透明電極(ITO膜)75の形成、の工程を経て製造される。
【0004】カラーフィルタの構成部分は前述のようにいずれも極めて微細なものであって、光学特性や色特性を優れたものにするという観点からも、いずれの部分も極めて精密に形成される必要がある。そこで、上記(1) 〜(8) の工程では、透明基板71の位置にずれが生じないように、一般にチャックと呼ばれる支持台上に設置・固定される。このチャック80は、例えば図7および図8に示すように、基底面81に断面略矩形状の凸条である保持部82を設けて、保持部82の突端面83で透明基板71を保持するものである。
【0005】また、隣合った保持部82間には、保持部82の側壁面84とチャック80の基底面81とによって溝状の吸引部85が区画されており、この吸引部85は吸引口86を含んで連続し、かつ、チャック80の他の基底面81とは隔離された閉じられた空間を形成している。それゆえ、透明基板71を保持部82の突端面83に設置した後、吸引口86から吸引部85内の空気を吸引することによって、当該吸引部85内を減圧して、略真空状態とすることができる。この結果、透明基板71を保持部82の突端面83上に真空吸着させて、強固に固定することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、真空吸引によって強固に固定された透明基板71をチャック80から剥離させるには、通常、前記吸引部85内の真空状態を解くとともに、図6(a),(b) に示すように、チャック80に備えられた突き上げピン87を上昇させて、両者を強制的に引き離す操作(剥離操作)が行われている。しかしながら、この剥離操作において、チャック80の表面と透明基板71の表面との間にいわゆる剥離帯電(静電気)が生じ(図6(b) 参照)、その衝撃によって透明基板71に割れが生じるという問題があった。
【0007】かかる問題は、特に透明基板71上にCrOx膜72aやCr膜72bからなるブラックマトリックス72のみが形成されている場合(図4(1) 参照)に顕著である。これは、金属クロムや酸化クロムの膜が静電気を保持し易い材質であることが一因となっている。また、ブラックマトリックス(BM)72上に着色フィルタ層73、オーバーコート層74および透明電極(ITO膜)75が形成されている場合(図5(4)〜(8) 参照)は、チャック80と透明基板71間の帯電量が少なくなるため、たとえ剥離帯電が生じたとしても透明基板71が割れるまでの衝撃には至らないことが多いものの、生産効率の向上を目的として剥離操作の速度を上げると、やはり透明基板71に割れが生じるという問題が生じる。
【0008】一方、本発明者らは、剥離帯電による透明基板の割れを防止すべく、先に下記の(i) 〜(vi)の方法を試みた。
(i) 突き上げピン87の上昇速度の低下:突き上げピン87とチャック10との相対移動速度を低下させることによって、透明基板71を剥離させる際の衝撃を緩和し、割れの発生を低減させる。
(ii) 除電装置の取り付け:チャック80の表面にアースを取り付けて、チャック80と透明基板71間に生じた静電気を放電させる。
【0009】(iii) チャック表面の粗面化:チャック基底面81の表面粗さを大きくして、剥離帯電を招くチャック80と透明基板71との接触面積を低減させる。
(iv) チャックと透明基板との接触面積の低減:チャック基底面81上に突設された保持部82(とりわけ、その突端面83)の面積を低減させることによって、剥離帯電を招くチャック80と透明基板71との接触面積を低減させる。
(v) チャック表面への洗剤の塗布:チャック80の表面に洗剤を塗布して界面活性剤の膜を形成させることによって、チャック80と透明基板71との剥離をスムーズにさせる。
【0010】(vi) 突き上げピンのアンバランス化:突き上げピン87を透明基板71に接触させるタイミングを各突き上げピン毎に異ならせることにより、透明基板71を剥離させる際の衝撃を緩和し、割れの発生を低減させる。しかしながら、上記(ii),(iii) ,(iv)および(vi)の方法では、透明基板71の割れを十分に防止できる程度の効果が得られなかった。さらに、上記(ii)の方法では、透明基板71に帯電した電荷を急激に放電することになり、かえって透明基板71の割れを引き起こす問題があった。
【0011】また、上記(i) の方法では、透明基板71に割れが発生する確率を著しく低減させることができたものの、一工程に係る時間が長くなってしまい、上記(v) の方法では洗剤の塗布、界面活性剤の膜形成といった余分の手間を要することや、膜形成の度に製造装置の停止を余儀なくされることから、生産効率が著しく低下してしまうため、いずれも製造コストの上昇等を招く問題があった。従って、上記(i) 〜(vi)のいずれの方法も、透明基板の割れ対策として実際に採用するのは困難であった。
【0012】そこで本発明の目的は、上記課題を解決して、たとえチャックに真空吸着されたカラーフィルタの透明基板上にCrOxやCrの膜からなるブラックマトリックスのみが形成されている場合であっても、剥離帯電による透明基板の割れを発生させることなく、当該透明基板を引き離すことのできるチャックを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねていく中で、透明基板を真空吸着させるチャックの表面形状に改良を施し、チャックと透明基板とが実際に接触する面積や真空吸着作用を発揮する吸引部の面積がチャック表面の全面積に占める割合を適宜設定すれば、剥離帯電による透明基板の割れが生じるおそれを低減させることができるのではないかとの着想を得、さらに検討を重ねた。
【0014】その結果、従来の一般的なチャック(例えば図7および8に示すチャック80)では、チャック80表面の全面積に占める突端面83の全面積の割合が50〜60%、チャック80表面の全面積に占める吸引部85での基底面81の全面積の割合が40〜60%、突端部の幅w'Aが5mm程度、吸引部85の幅W'Bが5mm程度であったのに対し、前記割合をいずれも少なくし、かつ、前記幅を所定の範囲に設定することによって、剥離帯電による基板の割れが発生するおそれを著しく低下させることができるという全く新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、本発明の剥離帯電防止チャックは、カラーフィルタの製造時に当該カラーフィルタの透明基板を設置、固定するチャックであって、当該チャックの基底面上に突設されて、その突端面で前記透明基板を支える凸条でかつ断面略矩形状の保持部と、隣接する保持部の側壁面とチャックの基底面とによって区画され、チャック上に透明基板を載置したときに閉じられた空間を形成する溝状の吸引部と、前記透明基板を押し上げて前記保持部から剥離させる突き上げピンと、を備えており、前記吸引部は、チャック上に透明基板を載置した後、吸引部内の基底面に設けられた吸引口からエアーを吸い込むことによって略真空状態とすることができるものであり、チャック表面の全面積に占める前記突端面の全面積の割合が10〜15%で、チャック表面の全面積に占める前記吸引部での基底面の全面積の割合が5〜10%であり、さらに、前記突端部の幅が5〜8mm、前記吸引部の幅が3〜5mm、かつ隣接する突端部の最大間隔が230mmである、ことを特徴とする。
【0016】上記本発明の剥離帯電防止チャックによれば、たとえチャックに真空吸着された透明基板が、その表面にクロムやクロムの化合物の膜からなるブラックマトリックスのみが形成されている、最も剥離帯電が生じ易い条件のものであっても、剥離帯電による透明基板の割れを発生させることなく、当該透明基板をチャック上から引き離すことができる。上記本発明の剥離帯電防止チャックにおいて用いられる突き上げピンは、その表面全体がグラファイトライクカーボンでコーティングされたものであるのが好ましい。
【0017】このように、突き上げピン本体の表面全体(少なくともアースへの接続がなされている部分まで)に上記コーティングが施されることによって、剥離帯電による透明基板の割れが生じるおそれをより一層低減させることができる。従って、前述の工程(1) 〜(8) において透明基板を固定するチャックとして、上記本発明の剥離帯電防止チャックを使用することによって、ならびに上記のコーティングが施された突き上げピンを備えたチャックを使用することによって、カラーフィルタの生産効率や歩留まりを向上させることができ、さらにはカラーフィルタの品質に対する信頼性を向上させることができる。
【0018】本発明において「グラファイトライクカーボン」とはアモルファスのグラファイトであって、比抵抗が106 Ω・cm程度と、静電気の穏やかな放電であるコロナ放電を実現し得る程度の導電性を示すものである。さらに、ビッカース硬度Hvが1700〜3000と高く、摩擦係数μが0.1程度と極めて低い素材であって、導電性と摺動性とに優れた硬質の膜を形成し得るものである。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の剥離帯電防止チャックおよび当該チャックに用いられる突き上げピンについて詳細に説明する。
〔剥離帯電防止チャック〕図1は本発明の剥離帯電防止チャック10における平面形状の一例を示す図であって、図2(a) 〜(c) はその部分断面図である。
【0020】カラーフィルタの製造に用いられるチャックは、製造工程によって様々な形状のものが挙げられる。すなわち、前述の(1) 〜(8) に示すカラーフィルタの製造工程のうち(1) や(8) の工程などでは単に透明基板が移動しないように固定させることができればよく、(2),(4) および(7) のスピンコート工程では、透明基板を高速で回転させてもずれが生じないように強固に固定させる必要がある。本発明の剥離帯電防止チャックは、上記のいずれの場合であっても透明基板を強固に固定することができ、かつ、透明基板を剥離させる際の帯電量そのものを低減させ得るものである。
【0021】以下、図1および図2に示す剥離帯電防止チャック10を例にとって説明する。本発明の剥離帯電防止チャック(以下、「チャック」という)10は、前述のように、カラーフィルタの製造時において、図6(a) に示すようにして透明基板71を設置するものである。チャック10の基底面11には、(a) 当該基底面11上に突設されて、その突端面13で透明基板を支える、凸条でかつ断面略矩形状の保持部12と、(b) 隣接する保持部12の側壁面14と、チャック10の基底面11とによって区画され、チャック10上に透明基板を載置したときに閉じられた空間を形成する溝状の吸引部15と、(c) チャック10の規定面に設けられた孔21内に設置されて、透明基板の吸着固定を終えた後に当該透明基板を押し上げて保持部12から剥離させる突き上げピン17と、(d) 透明基板、保持部12の側壁面14およびチャック10の基底面11によって区画される閉じられた空間(吸引部15)内の空気を吸引して、当該空間(吸引部15)内を略真空状態とするための吸引口16と、が備えられている。
【0022】前記チャック10は、例えば720mm×600mmの透明基板を載置、固定するチャックの場合、一般に、縦w1 が630〜660mm、横w2 が520〜550mm程度の支持台である(図1参照)。本発明に係る剥離帯電防止チャックでは、(I) チャック10表面の全面積SA に占める突端面13の全面積SB の割合(比SB /SA )が10〜15%で、(II) 前記全面積SA に占める吸引部15での基底面11の全面積SC の割合(比SC /SA )が5〜10%で、(III) 突端部13の幅wA が5〜8mmで、(IV) 吸引部15の幅wB が3〜5mmで、かつ、(V) 隣接する突端部13の間隔tA が最大230mm、であることを特徴とする。
【0023】上記(I) の比SB /SA は、すなわちチャック10全体のうち透明基板と接触する領域の面積比率を示すものであって、上記範囲の中でも特に10%であるのが好ましい。比SB /SA が上記範囲を下回ると、チャック10上での透明基板の安定性が失われて、透明基板を強固に吸着固定できなかったり、透明基板の固定位置がずれたり、あるいは透明基板に反り、割れ等の損傷が生じるおそれがある。逆に、比SB /SA が上記範囲を超えると、チャック10と透明基板との接触面積を軽減できず、剥離帯電が生じ得る面積も軽減されないことから、透明基板に割れが発生するのを十分に防止できなくなるおそれがある。
【0024】上記(II)の比SC /SA は、すなわちチャック10全体のうち透明基板の吸着固定時に略真空状態となる領域の面積比率を示すものであって、上記範囲の中でも特に5%であるのが好ましい。比SC /SA が上記範囲を下回ると、チャック10上で透明基板を強固に吸着固定できなくなって、透明基板の固定位置にずれが生じたりするおそれがある。逆に、比SC /SA が上記範囲を超えると、チャック10上にて吸着される透明基板の面積が大きくなることから、略真空状態を解いた後の残圧力が大きくなるおそれがある。
【0025】上記(III) の幅wA は保持部12の長手方向と直交する方向における突端部13の幅を示すものであって、上記範囲の中でも特に5〜8mmであるのが好ましい。また、上記(V) の最大間隔tA は、チャック10上に設置された透明基板の表面のうち保持部12によって支えられていない部分の幅(通常、保持部12の長手方向と直交する方向における間隔)について許容される最大値を示すものであって、図1に示すチャック10では符号w3 等で示される保持部12間距離に相当する。最大間隔tA は、SB /SA が上記範囲を満足するのであれば、上記範囲の中でも特に200mm以下であるのが好ましい。
【0026】突端部12の全表面積の割合は上記(I) に示すとおりであるが、当該範囲を満たす場合であっても、チャック10上で透明基板を安定して保持するには、チャック10の基底面11上にて保持部12(および突端部13)が適当に分散した状態で形成されている必要がある。このため、上記割合SB /SA を満足するだけでなく、突端部13の幅wA と、隣接する突端部13の最大間隔tA とがそれぞれ上記範囲に設定される必要がある。
【0027】突端部13の幅wA が上記範囲を下回ると、チャック10上での透明基板の安定性が失われて、透明基板を強固に吸着固定できなかったり、透明基板の固定位置がずれたりするおそれがある。逆に、突端部13の幅wA が上記範囲を超えると、チャック10と透明基板との接触面積を軽減できず、剥離帯電が生じ得る面積も軽減されないことから、透明基板に割れが発生するのを十分に防止できなくなるおそれがある。また、たとえ全体的に突端部の表面積が削減されたとしても、幅の太い部分で局所的に剥離帯電が生じるのを十分に防止できなくなるおそれがある。
【0028】一方、突端部13の最大間隔tA が上記範囲を超えると、当該箇所において、透明基板に反り、割れ等の損傷が生じるおそれがある。上記(IV)の幅wB は吸引部15の長手方向と直交する方向における幅を示すものであって、上記範囲の中でも特に5mmであるのが好ましい。吸引部15の全表面積の割合は上記(II)に示すとおりであるが、当該範囲を満たす場合であっても、吸引部15の幅wB が上記範囲を超えると、略真空状態を解いた後の残圧力が大きくなるおそれがある。逆に、吸引部15の幅wB が上記範囲を下回ると、チャック10上で透明基板を強固に吸着固定できなって、透明基板の固定位置にずれが生じたりするおそれがある。
【0029】〔突き上げピン〕本発明の剥離帯電防止チャックに備え付けられる突き上げピンについては特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを使用することができる。もっとも、剥離帯電によって透明基板に割れが生じるのを防止する効果をより一層向上させるには、図3に示すように、突き上げピン本体19表面全体(少なくともアースへの接続がなされている部分まで)にグラファイトライクカーボンまたは導電性を有する硬質アルマイトからなるコーティング膜20を形成したものを用いるのが好ましい。
【0030】突き上げピン本体19の表面に形成するコーティング膜20の材質としては、前述のチャック10の基底面11に施されるコーティング膜と同様のものが挙げられる。
【0031】
【実施例】次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明する。
実施例1透明基板を吸着固定するチャック10には、図1および図2に示すように、縦(W1 )が655mm、横(W2 )が535mm、突端部13の幅wA が最大(w4 )で8mm、最小(w5 )で5mm、吸引部15の幅wB が5mm、保持部12の高さ(および吸引部15の深さ)h1 が2mmであって、さらに隣接する突端部13の間隔tA が最大229.5mmであるものを使用した。このチャック10は、その表面の全表面積SA に占める突端面13の全面積SB の割合(比SB /SA )が14%、前記全面積SA に占める吸引部15での基底面11の全面積SC の割合(比SC /SA )が5%であった。
【0032】チャック10内に備えられた突き上げピンには、ステンレス鋼からなる突き上げピン本体の表面にモノマーキャストナイロン(MCナイロン)製のコーティングを施したものを使用した。また、透明基板には、縦720mm、横600mm、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板を使用した。上記透明基板の表面に、スパッタリングによって厚さ0.2μm程度のブラックマトリックス層(クロムおよびクロム化合物の膜)を形成し、さらにその表面に、スピンコートによって厚さ1.5μm程度のポジレジストを形成した。
【0033】次いで、上記透明基板を、上記チャック10上に設置し、吸引口16から吸引部15内の空気を吸引することによって、真空吸着させた。透明基板をチャック10上に吸着させた後、フォトマスクを用いたレジスト膜への露光を行い、露光後、吸引口16を開いて吸引部15内の真空状態を大気下に開放した上で、前記突き上げピンを押し上げて、透明基板をチャック10の保持部12における突端面13から剥離させた。なお、突き上げピンの上昇速度は70mm/秒に設定した。
【0034】こうして透明基板をチャック10から剥離させた後、透明基板に割れが生じていないかを目視にて確認した。
実施例2チャック10内に備えられた突き上げピン17には、図1に示すように、ステンレス鋼からなる突き上げピン本体19の表面にグラファイトライクカーボンの被覆膜20(比抵抗=106 Ω・cm程度)を形成したものを用いた。
【0035】突き上げピンを上記のピン17に取り替えたほかは、実施例1と同様にして、透明基板をチャック10から剥離させる操作を行った。透明基板をチャック10から剥離させた後、透明基板に割れが生じていないかを目視にて確認した。
比較例1透明基板と吸着固定するチャック80として、図7および図8に示すように、縦(W'1)が655mm、横(W'2)が535mm、突端部13の幅wA が最大(w'4)で24mm、最小(w'5)で6mm、吸引部15の幅wB が5mm、保持部12の高さ(および吸引部15の深さ)h1 が2mmであって、さらに隣接する突端部13の間隔tA が最大160mmであるものを使用した。このチャック80は、その表面の全表面積SA に占める突端面83の全面積SB の割合(比SB /SA )が39%、前記全面積SA に占める吸引部85での基底面81の全面積SC の割合(比SC /SA )が20%であった。
【0036】チャック80内に備えられた突き上げピンには、実施例1で使用したのと同じものを使用した。チャックを上記のものに取り替えたほかは、実施例1と同様にして、透明基板をチャック80から剥離させる操作を行った。透明基板をチャック10から剥離させた後、透明基板に割れが生じていないかを目視にて確認した。
【0037】上記実施例1,2および比較例1について、それぞれ透明基板をチャックから剥離させる操作を15000回行った。各々の例において、割れが生じた透明基板の枚数は次のとおりである。
【0038】
【表1】

【0039】表1より明らかなように、表面形状に改良を施し、チャックと透明基板とが実際に接触する面積や真空吸着作用を発揮する吸引部の面積がチャック表面の全面積に占める割合を所定の範囲内に設定したチャックを使用した実施例1では、表面に導電性を有しないチャックを使用した比較例1に比べて、剥離帯電による割れが生じた透明基板の数が著しく低減された。さらに、表面全体がグラファイトライクカーボンでコーティングされた突き上げピンを使用した実施例2では、剥離帯電による透明基板の割れを防止する効果が、実施例1よりも優れていた。
【出願人】 【識別番号】597067873
【氏名又は名称】新エスティーアイ テクノロジー株式会社
【出願日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−310231(P2001−310231A)
【公開日】 平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願番号】 特願2000−131058(P2000−131058)