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【発明の名称】 多孔質体の製造方法
【発明者】 【氏名】朝比奈 正

【氏名】馬渕 守

【氏名】山田 康雄

【氏名】下島 康嗣

【要約】 【課題】各種金属、合金を多孔質化して超軽量金属材料を製造する方法を提供する。

【解決手段】材料金属の主成分となる粉末と、室温度において主成分ないし合金成分の水素化物の粉末を混合し、それを塑性変形が可能な金属製容器内に封入し、強加工が可能な中温度において容器の外から強加工を加えることにより粉末をバルク化した後、バルク化した材料を容器から取り出し、高温度の超塑性発現加工条件下で水素化物を分解させ、水素のガス圧による空孔をバルク体内に発生させてバルク体を多孔質化させるか、若しくは、バルク化した材料を容器内に封入したままで昇温させ、上記高温度でバルク体を多孔質化させてから容器から取り出すことを特徴とする多孔質体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 材料金属の主成分となる粉末と、室温度において主成分ないし合金成分の水素化物の粉末を混合し、それを塑性変形が可能な金属製容器内に封入し、強加工が可能な中温度において容器の外から強加工を加えることにより粉末をバルク化した後、バルク化した材料を容器から取り出し、高温度の超塑性発現加工条件下で水素化物を分解させ、水素のガス圧による空孔をバルク体内に発生させてバルク体を多孔質化させるか、若しくは、バルク化した材料を容器内に封入したままで昇温させ、上記高温度でバルク体を多孔質化させてから容器から取り出すことを特徴とする多孔質体の製造方法。
【請求項2】 材料金属の主成分が、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、ニッケル、銅の内から選択されるいずれか1種である請求項1記載の多孔質体の製造方法。
【請求項3】 水素化物が、マグネシウム水素化物、チタニウム水素化物、ニッケル水素化物の内から選択されるいずれか1種である請求項1記載の多孔質体の製造方法。
【請求項4】 塑性変形が可能な金属製容器が、ステンレス鋼、銅、金、銀、白金のいずれか1種からなる請求項1記載の多孔質体の製造方法。
【請求項5】 塑性変形が可能な金属製容器に加える強加工が、圧延加工、型鍛造加工、プレス加工、押出し加工のいずれか1種である請求項1記載の多孔質体の製造方法。
【請求項6】 加圧下でゆっくりと多孔質化する請求項1記載の多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種金属や合金材料を多孔質化して超軽量金属材料を製造する方法に関するものであり、さらに詳しくは、多くの空隙を含むことによりその見かけの密度が著しく小さい超軽量金属材料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超軽量金属材料を製造する従来の方法は、3つに大別される。その1は、発泡ポリウレタンのような多孔質高分子材料を石膏等で型どりし、高分子材料を焼失すると同時に鋳型を焼成させ、その空隙に溶融金属を注入・凝固させた後に、鋳型を破砕・除去する鋳造法と呼ばれる方法である。その2は、微小粒子の集合体の空隙に、無電解メッキ等の手法で金属を充填した後、微小粒子を焼失ないし破砕・除去するメッキ法と呼ばれる方法である。その3は、溶融した金属中に発泡剤を混合し、生じたガスを多量に含んだ状態で凝固させることで多孔質化する溶湯発泡法と呼ばれる方法である。
【0003】しかし、上記従来の方法に示した鋳造法においては、行程プロセスが複雑であり、特に、鋳型の破砕・除去が困難なため、生産性が著しく悪く板状の材料しか作製できないという問題があり、また、メッキ法においては、作製できる金属がニッケル等に限られる上、生産性が低く、板状の材料しか作製できないという問題があった。一方、溶湯発泡法では、発泡と凝固に時間のずれが生じるため、一様な多孔質体が製造しにくく、また、高空隙率部分が凝固開始部分に偏ったり、凝固終了部分では多孔性が著しく低下する等、プロセスの制御が著しく困難であるという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来の方法における諸問題を解消し得る新しい多孔質体の製造方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、金属材料と水素化物を金属製容器に封入し、強加工によりバルク化する工程と、バルク化した材料を水素化物により多孔質化する工程を組み合わせることにより所期の目的を達成し得ることを見出し、さらに研究を重ねて、本発明を完成するに至った。本発明は、各種金属材料や合金材料を多孔質化して超軽量化する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、各種金属、合金材料と、水素化物を用いて、多孔質体を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、一様な空隙率を有する多孔質体を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、材料を超塑性加工条件下で多孔質化する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)材料金属の主成分となる粉末と、室温度において主成分ないし合金成分の水素化物の粉末を混合し、それを塑性変形が可能な金属製容器内に封入し、強加工が可能な中温度において容器の外から強加工を加えることにより粉末をバルク化した後、バルク化した材料を容器から取り出し、高温度の超塑性発現加工条件下で水素化物を分解させ、水素のガス圧による空孔をバルク体内に発生させてバルク体を多孔質化させるか、若しくは、バルク化した材料を容器内に封入したままで昇温させ、上記高温度でバルク体を多孔質化させてから容器から取り出すことを特徴とする多孔質体の製造方法。
(2)材料金属の主成分が、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、ニッケル、銅の内から選択されるいずれか1種である前記(1)記載の多孔質体の製造方法。
(3)水素化物が、マグネシウム水素化物、チタニウム水素化物、ニッケル水素化物の内から選択されるいずれか1種である前記(1)記載の多孔質体の製造方法。
(4)塑性変形が可能な金属製容器が、ステンレス鋼、銅、金、銀、白金のいずれか1種からなる前記(1)記載の多孔質体の製造方法。
(5)塑性変形が可能な金属製容器に加える強加工が、圧延加工、型鍛造加工、プレス加工、押出し加工のいずれか1種である前記(1)記載の多孔質体の製造方法。
(6)加圧下でゆっくりと多孔質化する前記(1)記載の多孔質体の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明では、まず、材料金属の主成分となる粉末と、室温度において、主成分ないし合金成分の水素化物を混合し、それを塑性変形が可能な金属製容器内に封入する。上記工程では、材料金属の主成分となる粉末に、必要により、合金成分の粉末を適宜配合し、これに、室温度において、前記主成分ないし合金成分の水素化物の粉末を混合する。この場合、材料金属と水素化物の構成としては、材料金属の主成分と主成分の水素化物、主成分と合金成分及び主成分の水素化物、主成分と合金成分及び合金成分の水素化物、主成分と合金成分及び主成分の水素化物と合金成分の水素化物、の組み合わせがあげられる。また、粉末の形態としては、好適には、旋盤によって切削粉化したものが例示されるが、これに限らず、これと同等のものであれば同様に使用することができる。
【0007】本発明では、材料金属の主成分として、好適には、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、ニッケル、銅などが例示されるが、その他、それらの合金、AZ91やAZ31といったマグネシウム合金、A7075やA5052といったアルミニウム合金、6AI−4VやSP700といったチタン合金など、適宜のものを用いることができる。また、主成分ないし合金の水素化物として、好適には、マグネシウム水素化物、チタニウム水素化物、ニッケル水素化物などが例示されるが、その他、CaNi5 やMg2 Niなどの金属間化合物の水素化物、La−Ni系やチタン−鉄系といった合金の水素化物など、好適なものを用いることができる。
【0008】次に、上記材料金属と水素化物からなる粉末材料を塑性変形が可能な材料金属の成分からなる当該材料金属成分製の容器内に封入する。この場合、容器材料の構成としては、粉末材料の主成分金属(純金属)、粉末材料と主成分を同じとする合金、粉末材料の合金成分金属(純金属)、粉末材料の合金成分を主成分とする合金、の組み合わせがあげられる。本発明では、上記粉末材料を室温度において混合し、それを塑性変形が可能な金属製容器に封入し、例えば、中温度、すなわち材料融点を絶対温度で表したものに0.50〜0.65を乗じた温度、好ましくは、自己拡散係数が大きいマグネシウム材料等では0.50〜0.60を乗じた温度、自己拡散係数が小さいニッケル材料等では0.55〜0.65を乗じた温度において、加熱装置にて、容器の外から強加工を加えて、粉末材料をバルク化する。この場合、金属製容器として、好適には、ステンレス鋼、銅、金、銀、白金からなるものが例示されるが、これらと同効の材料からなるものであれば同様に使用することができる。また、上記強加工として、好適には、例えば、圧延加工、型鍛造加工、プレス加工、押出し加工などがあげられるが、これらに制限されない。上記中温度は、材料金属、合金により上述のように異なるので、適宜調整すればよい。
【0009】次に、上記バルク化した材料を、容器から取り出し、加熱装置にて、高温度、すなわち材料融点を絶対温度で表したものに0.70〜0.85を乗じた温度、好ましくは、自己拡散係数が大きいマグネシウム材料等では0.70〜0.80を乗じた超塑性加工温度、自己拡散係数が小さいニッケル材料等では0.75〜0.85を乗じた超塑性加工温度において、上記水素化合物を超塑性加工温度において、上記水素化物を分解し、発生した水素のガス圧による空隙をバルク体内に形成し、多孔質化させるか、あるいはバルク化した材料を容器内に封入したまま昇温させ、所定の温度でバルク体を多孔質化させてから容器から取り出すことにより多孔質体を製造する。この場合、好適には、バルク化した材料を加圧下でゆっくりと多孔質化することにより、急激な膨張で材料に不要の変形が生じるのを防ぐことができる。上記加熱装置は、上記処理を実施し得るものであればよく、特に制限されない。
【0010】本発明は、従来の方法が有する欠点を克服し、生産性が高く、かつ一様な空隙率を有する多孔質体を製造する方法として、固体内でガスを発生させ、このガスによって材料多孔質化させることを特徴としている。この方法を実現するためには、材料自体を十分な被加工性条件下、すなわち、超塑性加工条件下におくことが必須である。
【0011】本発明の方法は、上述のように、各種金属や合金に適用でき、超軽量金属材料を得ることができる。もちろん、その際に、粉末をバルク化する温度(中温度)と水素化物を分解し、水素発泡させる超塑性加工温度(高温度)は、それぞれの金属や合金において上述のように異なるので、適宜調整すればよい。
【0012】ここで、一例としてマグネシウム材料について具体的に説明する。例えば、旋盤による切り子のような、自然発火しない程度の形状のマグネシウム粉末に、約5%程度のマグネシウム水素化物粉末を室温で十分に攪拌・混合し、これを十分に焼鈍した円筒状の銅製容器に封入する。その後、中温度の200〜300℃において、容器の外から強加工を加えて、加工率50〜100対1程度の押出し加工により、粉末をバルク化する。この強加工に伴う再結晶により、生成する材料組織は超塑性が発現できるほどに十分に小さな結晶粒径を有するようになる。その後、バルク体を容器から取り出し、高温度の超塑性発現加工条件下で、すなわち、材料組織が高速超塑性を十分発現できる高温度の約400℃において、水素化物を分解させ、生じるガス圧により、材料を多孔質化する。このプロセスを図1に模式的に示す。
【0013】本発明のプロセスの多孔質化段階においては、特に、目的製造材料の厚さが大きい場合などには、バルク化した材料を容器内に封入したままで昇温させ、所定の温度に至ってから容器を破り、ガスの放出を図る方が多孔質化に効果的な場合もある。この場合のプロセスを図2に模式的に示す。
【0014】また、バルク化した材料を多孔質化する際に、急激な膨張で材料に不要の変形をもたらさないようにするために、バルク化した材料を加圧下でゆっくりと多孔質化する方が効果的な場合もある。この場合のプロセスを図3に模式的に示す。
【0015】なお、粉末を金属製容器に封入するのは、バルク化操作のために昇温した間に、水素が逃げることを防止して、発泡過程で十分な水素がバルク体内に残留させることを目的とするものである。
【0016】
【作用】本発明では、特に、容器内に封入した材料を、強加工が可能な中温度において容器の外から強加工を加えることによりバルク化すること、次に、バルク化した材料を容器から取り出し、高温度の超塑性発現加工条件下で水素化物を分解し、水素のガス圧による空隙をバルク体内に形成し、多孔質化するか、若しくは、バルク化した材料を容器内に封入したままで昇温させ、上記高温度でバルク体を多孔質化させて容器から取り出すこと、が重要である。これらにより、空隙率が約50%の一様の空隙分布を有する多孔体を製造することができる。また、バルク化した材料を加圧下でゆっくりと多孔質化することにより、材料に不要の変形が生じるのを防ぐことができる。粉末を金属製容器に封入してバルク化するので、水素が封入され、発泡過程で十分な水素をバルク体内に残留させた多孔体が得られる。
【0017】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1鋳造用マグネシウム合金であるAZ91Dを旋盤によって切削粉化したものを用い、これにマグネシウム水素化物の粉末を重量比で5%混合し、ボールミルにて十分に攪拌した。その後、この粉末をよく焼鈍した銅製円筒状容器(板厚0.5mm、直径40mm)に減圧封入した。これを200℃の中温域で後方押し出しにより外径7mmの棒状とし、その後、400℃の高温域へ加熱したところ、直径約10mmの棒状多孔質体が得られた。
【0018】
【発明の効果】本発明により、1)空隙率が約50%の多孔質体を容易に作製することができる、2)材料内での空隙率分布が一様となった超軽量金属材料を得ることができる、3)こうした材料は、エネルギー吸収性に優れ、振動の抑制や大きな衝撃エネルギーの吸収を行うことができる、また、4)こうした構造の材料は、その純度が低くても高機能が発現できるため、今後増大するリサイクルに伴って発生する低純度材料の活用が図れるものである、という効果が奏される。
【出願人】 【識別番号】301000011
【氏名又は名称】経済産業省産業技術総合研究所長
【出願日】 平成12年6月1日(2000.6.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−342503(P2001−342503A)
【公開日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願番号】 特願2000−164099(P2000−164099)