| 【発明の名称】 |
ステンレス鋼粉末、微小ステンレス鋼コンテナ及びそれらの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】飴山 惠
【氏名】今井 清一郎
【氏名】真田 龍司
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| 【要約】 |
【課題】メカニカルミリングにより加工されるステンレス鋼粉末の用途の拡大を図ることができ、メカニカルミリング後に粉末単体での利用も可能となるステンレス鋼粉末、触媒や薬剤等を収容するのに用いる微小ステンレス鋼コンテナ及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させた冷間加工済ステンレス鋼粉末。上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相又はマルテンサイト相と炭化物とを分布させた熱処理済ステンレス鋼粉末。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させたことを特徴とする冷間加工済ステンレス鋼粉末。 【請求項2】 原料粉末の平均粒子径が数10μm乃至数mm程度であることを特徴とする請求項1記載の冷間加工済ステンレス鋼粉末。 【請求項3】 上記表面層のフェライトの結晶粒径が数nm乃至数十nmであることを特徴とする請求項1記載の冷間加工済ステンレス鋼粉末。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度以下の低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを分布させたことを特徴とする熱処理済ステンレス鋼粉末。 【請求項5】 上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より低い温度で熱処理することにより、上記粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させたことを特徴とする請求項4記載の熱処理済ステンレス鋼粉末。 【請求項6】 請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度以上の高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物とを分布させたことを特徴とする熱処理済ステンレス鋼粉末。 【請求項7】 上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より高い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させたことを特徴とする請求項6記載の熱処理済ステンレス鋼粉末。 【請求項8】 上記基準温度が500乃至600°C程度であることを特徴とする請求項4又は6記載の熱処理済ステンレス鋼粉末。 【請求項9】 請求項4乃至8のいずれかの熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により形成したことを特徴とする微小ステンレス鋼コンテナ。 【請求項10】 オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させることを特徴とする冷間加工済ステンレス鋼粉末の製造方法。 【請求項11】 請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを分布させることを特徴とする熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法。 【請求項12】 粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させることを特徴とする請求項11記載の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法。 【請求項13】 請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物とを分布させることを特徴とする熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法。 【請求項14】 粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させることを特徴とする請求項13記載の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法。 【請求項15】 請求項11乃至14のいずれかの方法により製造された熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により微小ステンレスコンテナを形成することを特徴とする微小ステンレス鋼コンテナの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼粉末の表面層をフェライト化又はマルテンサイト化したステンレス鋼粉末及びその製造方法に関する。本発明は、また、上記ステンレス鋼粉末の表面層以外の部位を抽出してなる微小ステンレス鋼コンテナ及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】新素材の作製や材料の高い機能化のための方法として、混合した素粉末や合金粉末をアトライターやボールミルを用いてミリングし、大きなひずみエネルギーを与えて非平衡化するメカニカルアロイングやメカニカルミリングなどの非平衡粉末冶金プロセスが注目されている。 【0003】例えば、従来、ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数100時間常温でメカニカルミリングを施して冷間加工済ステンレス鋼粉末を製造することが提案されている(特開平10−195502号公報参照)。この方法では、メカニカルミリングによって原料粉末にひずみが与えられることにより元の結晶が破壊され、時間の経過とともに粉末内部で再結晶が始まる。そして、再結晶後の結晶の平均粒子径は数10nm乃至数100nmと極めて微細なものとなる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記公報の方法では、メカニカルミリングの作用を粉末内部にまで及ぼすことを目的としていた。その場合、原料粉末として、例えば、数10μm乃至数100μm程度の、粒子径の十分小さいものを使用し、かつ粉末に十分大きな加工エネルギー(ミリング時間、回転数等)を与えるようにしていた。また、ミリング後は粉末同士が凝着状態となり、粉末単体の状態での利用が困難であった。 【0005】本発明では、メカニカルミリングによりステンレス鋼粉末を加工するに際して、加工エネルギーを従来より小さくすることで、主として粉末の表面層のみにメカニカルミリングの作用を及ぼすようにして、メカニカルミリングにより加工されるステンレス鋼粉末の用途の拡大を図ること、メカニカルミリング後に粉末単体での利用も可能にすること等を技術的課題としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】そのため、本発明の請求項1の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させたことを特徴とするものである。 【0007】請求項2の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、請求項1の構成において、原料粉末の平均粒子径を数10μm乃至数mm程度としたことを特徴としている。なお、本明細書では、平均粒子径数mm程度の比較的大きな粒子も粉末と呼ぶ。 【0008】請求項3の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、請求項1の構成において、上記表面層のフェライトの結晶粒径が数nm乃至数十nmであることを特徴としている。 【0009】請求項4の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度以下の低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを分布させたことを特徴とするものである。なお、この熱処理は、粉末単体毎に行ってもよく、一定量の粉末を所望形状の型内に収容して加熱することにより、熱処理と同時に所望形状のステンレス鋼部材を製作するようにしてもよい。 【0010】請求項5の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項4の構成において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より低い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させたことを特徴とするものである。この場合、熱処理を上記基準温度付近で行うことで、オーステナイト相の分布させることができ、かつ熱処理温度を調整することでオーステナイト量等を調整することができる。一方、熱処理を上記基準温度よりかなり低い温度で行うと、粉末の表面層に主としてフェライト相と炭化物のみが分布することになる。 【0011】請求項6の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度以上の高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物とを分布させたことを特徴とするものである。この場合、メカニカルミリングによりフェライト化した粉末の表面層が高温での熱処理によりオーステナイト相と炭化物とが分布した状態に変化するが、その後、常温に戻る過程で上記オーステナイト相がマルテンサイト相に変態するように熱処理及び冷却条件等を調整する。なお、この場合も、熱処理は、粉末単体毎に行ってもよく、一定量の粉末を所望形状の型内に収容して加熱することにより、熱処理と同時に所望形状のステンレス鋼部材を製作するようにしてもよい。 【0012】請求項7の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項6の構成において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より高い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させたことを特徴とするものである。この場合、熱処理を上記基準温度付近で行うことで表面層にオーステナイト相を分布させ、請求項6のものに比べて粉末の表面層の硬度を小さくすることができる。一方、熱処理を上記基準温度よりかなり高い温度で行うと、粉末の表面層に主としてマルテンサイト相と炭化物のみが分布することになる。 【0013】請求項8の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項4又は6の構成において、上記基準温度が大略500乃至600°Cであることを特徴としている。 【0014】請求項9の微小ステンレス鋼コンテナは、請求項4乃至8のいずれかの熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により形成したことを特徴とするものである。 【0015】請求項10の冷間加工済ステンレス鋼粉末の製造方法は、オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させることを特徴とするものである。 【0016】請求項11の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを形成させることを特徴とするものである。 【0017】請求項11の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを分布させることを特徴とするものである。 【0018】請求項12の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項11の方法において、粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させることを特徴とするものである。 【0019】請求項13の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物とを分布させることを特徴としている。 【0020】請求項14の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項13の方法において、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させることを特徴とするものである。 【0021】請求項15の微小ステンレス鋼コンテナの製造方法は、請求項11乃至14のいずれかの方法により製造された熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により微小ステンレスコンテナを形成することを特徴とするものである。 【0022】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1にメカニカルミリングに用いるアトライタ1を示す。アトライタ1は、外周部に冷却水の循環通路2が形成された水冷容器3内に、多数の鋼球4を収容し、水平方向に延びる攪拌棒5が交差状に取り付けられた垂直方向の軸6を上記水冷容器3の中央に回転自在に配置してなる装置である。上記水冷容器3内に、不図示のステンレス鋼粉末と、Arガス、N2ガス又はH2ガス等のいずれかの不活性ガスを封入して、軸6を回転させることにより、上記ステンレス鋼粉末にメカニカルミリングを施すようになっている。 【0023】図2にメカニカルミリングに使用できる他の装置である遊星型ボールミル7の概略平面図を示す。円形の基台8は、不図示の第1駆動手段によりその中央の軸10を中心に回転駆動されるようになっている。また、1対の円筒容器11(ポット)は各々不図示の第2駆動手段により基台8に対して回転自在とされている。 【0024】そして、各円筒容器11内にステンレス鋼粉末と多数の鋼球(共に図示せず)を収容し、適宜のガスを封入した上で、基台8を上記第1駆動手段により回転(公転)させながら各円筒容器11を上記第2駆動手段により回転(自転)させることにより、ステンレス鋼粉末にメカニカルミリングを施すようになっている。 【0025】ここで、メカニカルミリングを施すステンレス鋼粉末(原料粉末)の組成の一例を表1に示す。このステンレス鋼粉末は、日本工業規格のSUS316Lのオーステナイト系ステンレス鋼であり、プラズマ回転電極法等により作製される。なお、プラズマ回転電極法とは、不活性ガス雰囲気中で高速回転する被溶解材(消耗電極)にプラズマアークを用いて溶解し、溶解された流体金属を電極の回転による遠心力で飛散させ、概略球形の粉末粒子を作製する方法である。 【0026】 【表1】
【0027】本発明者は、図2に示したような遊星型ボールミル7を用いて、上記表1の組成のステンレス鋼粉末にメカニカルミリングを施す実験を行った。以下、その実験条件及び結果につき説明する。遊星型ボールミル7の各円筒容器11としてはSUS316のステンレス鋼製で容積が500ミリリットルのものを使用した。また、各円筒容器11内にSUS304のステンレス鋼からなる不図示のボールを100個挿入した。各ボールの直径は9.8mm、質量は3.6gであった。そして、各円筒容器11内に表1のステンレス鋼粉末を200g挿入し、各円筒容器11を毎分250回転の回転速度で回転させることにより、メカニカルミリングを施した。なお、ミリング時間は100時間と200時間の2通りの場合を実施した。 【0028】ここで、ミリング時間を100時間とした場合のメカニカルミリングによる加工前後のステンレス鋼粉末の電子顕微鏡による写真を示す。図3は加工前のステンレス鋼粉末の断面、図4は加工前のステンレス鋼粉末の表面である。また、図5及び図6は各々加工後のステンレス鋼粉末の断面及び表面である。図3と図5を比較すると、加工後には、粉末表面層に粉末内部とは異なる組織が形成されていることが分かる。 【0029】図7に、上記100時間の加工の前後のステンレス鋼粉末について、表面と断面の双方でのX線反射角度とX線強度の関係を求めた結果を示す。粉末表面では体心立方構造相(bcc相)のピークが観察され、粉末断面では面心立方構造相(fcc相)のピークが観察される。これはメカニカルミリングによって粉末表面層の面心立方構造相(オーステナイト相)が体心立方構造相に変態したものと考えられる。 【0030】図8は100時間メカニカルミリング後の粉末の表面層近傍を拡大して示す顕微鏡写真である。同図から、表面層では体心立方構造相(フェライト相)が分布し、表面層と内部との境界付近では体心立方構造相と面心立方構造相(オーステナイト相)とが混在し、内部では面心立方構造相が分布していることが分かる。 【0031】表面側の微細な結晶粒の外見が滑らかな形状をしていることから、上記体心立方構造相は加工誘起マルテンサイトとは異なるメカニズムにより生成したフェライト粒であると考えられる。このフェライト粒は、メカニカルミリングによりラス状のオーステナイト相が分断、球状化され、界面エネルギーの増大によってフェライト化したものと考えられる。 【0032】このように、本発明では、メカニカルミリングにより、オーステナイト系ステンレス鋼粉末の表面層のみをフェライト化させるようにしたので、加工に要するエネルギー(ミリング時間や円筒容器11の回転速度等)を従来より緩やかにできるとともに、原料粉末として従来より粒子径の大きなものも使用可能となり、メカニカルミリングの対象となる粒子径範囲も広くなる。また、加工エネルギー等を調整することで、表面層のフェライト量を調整でき、ひいては加工後の粉末の磁気特性も調整できるようになる。 【0033】次に、200時間メカニカルミリング後のステンレス鋼粉末に各種温度で熱処理を施した結果を図9乃至図14の顕微鏡写真に示す。図9は500°Cで熱処理を施した場合、図10乃至図14は各々600°C、700°C、800°C、900°C、1000°Cで熱処理を施した場合であって、熱処理時間は全て1時間である。また、図15に200時間ミリング後600°Cで1時間熱処理を行った熱処理済ステンレス鋼粉末の表面から大略15μmの位置の拡大顕微鏡写真を示す。数十nmのフェライト等軸粒と微細炭化物粒子による組織となっていいる。ただし、炭化物粒子は非常に微細であるため、図15の写真からは判別が困難である。 【0034】メカニカルミリング後に熱処理を行った場合、熱処理温度によりステンレス鋼粉末の表面層に異なる結晶構造が現れることが確認された。すなわち、550°C乃至600°C程度を基準温度として、それより低温域では表面層にフェライト相と炭化物とが現れ、基準温度より高温域では表面層にマルテンサイト相と炭化物とが現れた。 【0035】これは、低温の熱処理では、メカニカルミリングによりステンレス鋼粉末の表面層に生成されたフェライト相が熱処理後もそのまま残存するのに対して、高温の熱処理では、粉末の表面層に生成されたフェライト相が熱処理により一旦オーステナイト相に戻った後、冷却の過程でマルテンサイト相に変態したものと考えられる。いずれの場合も、炭化物の量は、原料粉末に添加する炭素の量や、炭化物を生成させやすいTi、Nb、Mo等の元素の添加量を調整することにより調整できる。 【0036】図16にステンレス鋼粉末の熱処理温度と発熱量との関係を測定した結果を示す。約550°Cの位置に発熱量のピークがあり、これにより、約550°Cの温度が、熱処理後に表面層にフェライト相(と炭化物)が現れるかマルテンサイト相(と炭化物)が現れるかの境界温度であることが分かる。 【0037】なお、ミリング条件又は熱処理条件等によっては、表面層にオーステナイト相を一定の割合で分布させて、低温域での熱処理後に表面相にフェライト相、オーステナイト相及び炭化物が現れるようにしたり、高温域での熱処理後に表面相にマルテンサイト相、オーステナイト相及び炭化物が現れるようにすることもできる。 【0038】その場合、表面層にフェライト又はマルテンサイト相と炭化物のみを分布させる場合と比べて、表面層の硬度を幾分低下させることができ、用途によって表面層にオーステナイト相を分布させるか否か、或いはオーステナイト相をどの程度の割合で分布させるかを選択できる。 【0039】上記のような熱処理は、例えば、後述するステンレス鋼コンテナを作製する場合等のように粉末単体毎に行ってもよく、また、一定量のステンレス鋼粉末を所望形状の型内に充填し、熱処理と同時に所望形状のステンレス鋼部材を焼結、作製することもできる。 【0040】次に、メカニカルミリング後のステンレス鋼粉末を単体で熱処理した後、微小ステンレス鋼コンテナを作製する手順を説明する。図17に示すように、単体毎に熱処理済みの多数のステンレス鋼粉末12を白金又はステンレス鋼等からなる皿13(電極)上に載置し、この皿13をビーカ等の容器14内に収容してエッチング液15を容器14内に充填し、皿13と他方の電極16との間で通電することにより、電解腐食によるエッチングを個々の粉末12に施す。エッチング液15は、熱処理済みの粉末12のオーステナイト相の部分のみを溶出できるものであればよく、例えば、過塩素酸と酢酸を1:9程度の割合で混合した混合液を使用する。 【0041】これにより、エッチング後の1つの粉末12を図18及び図19に拡大して示すように、粉末12の表面層17のみが残存し、内部が除去されて微小ステンレス鋼コンテナ18が形成される。コンテナ18は、その直径が元の粉末12の直径(例えば、数10μm乃至数mm程度)と略等しい微細なものとなる。 【0042】なお、熱処理後の粉末12の表面層17は、上記のようにフェライト相又はマルテンサイト相と炭化物により形成されるが、実際には、この表面層17のところどころに空隙や一部残存したオーステナイト相が残存しているため、電解腐食の過程で、これらのオーステナイト相の部分に孔17aが形成され、粉末12の内部のオーステナイト相の部分が孔17aから溶出して、ところどころに孔17aを有するコンテナ18が形成される。 【0043】このようなコンテナ18は、例えば、高温環境で使用する触媒を内部に充填して使用したり、薬剤を内部に充填して、人体等の生体内にコンテナ18ごと挿入して使用する等の各種用途に利用できる。 【0044】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、オーステナイト(面心立方構造)系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト(体心立方構造)化させたものであり、加工の程度により、粉末の表面層に分布するフェライト量を任意に調整できるようになる。また、オーステナイト相が非磁性であるのに対しフェライト相は磁性を有するから、フェライト量に調整することにより、冷間加工済ステンレス鋼粉末の磁気特性を調整できる。 【0045】請求項2の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、請求項1の構成において、原料粉末の平均粒子径を数10μm乃至数mm程度としたものである。すなわち、本発明では、主として粉末の表面層のみに加工を施すようにしたので、従来より粒子径の大きな粉末をもメカニカルミリングの対象とすることができるようになる。これにより、メカニカルミリングを、従来より幅広い粒子径範囲の粉末に対して適用できるようになる。 【0046】請求項3の冷間加工済ステンレス鋼粉末は、請求項1の構成において、上記表面層のフェライトの結晶粒径が数nm乃至数十nmであるから、表面層に十分微細なフェライトの結晶を分布させることができる。これにより、冷間加工済スランレス鋼粉末の機械的特性、磁気的特性を良好なものとすることができる。 【0047】請求項4の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを分布させたものであり、熱処理後も表面層にフェライト相を分布させることができる。その場合、熱処理条件(熱処理温度等)や炭素の含有量等を調整することにより、熱処理後のフェライト量や炭化物量を調整することができる。そして、上記フェライト量の調整により、磁気特性を所望の値に調整することができる。 【0048】請求項5の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項4の構成において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より低い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を形成させたものであるから、請求項3のものに比べてステンレス鋼粉末の表面層の硬度を幾分低くすることができる。そして、熱処理条件等によって表面層におけるフェライト相とオーステナイト相の割合を調整することにより、ステンレス鋼粉末の表面層の硬度を所望の値に調整することができる。 【0049】請求項6の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項1乃至3のいずれかの冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度以上の高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相(体心立方構造)と炭化物とを形成させたものであるから、加工の程度や熱処理条件等により、マルテンサイト量を任意に調整できるようになる。また、オーステナイト相が非磁性であるのに対しマルテンサイト相は磁性を有するから、マルテンサイト量に調整することにより、冷間加工済ステンレス鋼粉末の磁気特性を任意に調整できる。 【0050】請求項7の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項6の構成において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より高い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を形成させたものであるから、請求項6のものに比べてステンレス鋼粉末の表面層の硬度を幾分低くすることができる。そして、熱処理条件等により表面層におけるマルテンサイト相とオーステナイト相の割合を調整することにより、ステンレス鋼粉末の表面層の硬度を任意に調整することができる。 【0051】請求項8の熱処理済ステンレス鋼粉末は、請求項4又は6の構成において、上記基準温度が大略500乃至600°Cである。係る基準温度以下の低温域で熱処理を行った場合は、粉末の表面層にフェライト相が分布し、係る基準温度以上の高温域で熱処理を行った場合は、粉末の表面層にマルテンサイト相が分布することが本発明者の実験により明らかになっている。 【0052】請求項9の微小ステンレス鋼コンテナは、請求項4乃至8のいずれかの熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、オーステナイト系ステンレス鋼からなる粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により形成したものである。係るコンテナは、高耐熱性、高耐食性を有し、例えば、内部に触媒等を充填して高温環境等で用いたり、内部に薬剤を充填して生体内に挿入する等、種々の用途に利用することが可能である。 【0053】請求項10の冷間加工済ステンレス鋼粉末の製造方法は、オーステナイト系ステンレス鋼の原料粉末に数分間乃至数百時間常温でメカニカルミリングを施し、粉末の表面層のみをフェライト化させるようにしたので、加工の程度により、表面層のフェライト量を任意に調整できる。また、オーステナイト相が非磁性であるのに対しフェライト相は磁性を有するから、フェライト量を調整することにより、冷間加工済ステンレス鋼粉末の磁気特性を任意に調整できる。さらに、本発明では、主として粉末の表面層のみに加工を施すようにしたので、従来より粒子径の大きな粉末をもメカニカルミリングの対象とすることができる。これにより、従来より幅広い粒子径範囲の粉末に対してメカニカルミリングを適用できるようになる。 【0054】請求項11の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度より低い低温で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物とを形成させるようにしたので、熱処理後も粉末の表面層にフェライト相を分布させることができる。その場合、熱処理条件(熱処理温度等)や炭素の含有量等を調整することにより、熱処理後のフェライト量や炭化物量を調整することができる。 【0055】請求項12の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項11の方法において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より低い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にフェライト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させたものであるから、請求項11の場合に比べてステンレス鋼粉末の表面層の硬度を幾分低くすることができる。 【0056】請求項13の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項10の方法により製造された冷間加工済ステンレス鋼粉末を高温で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物とを分布させるようにしたので、熱処理後も粉末の表面層にマルテンサイト相を分布させて、表面層の硬い粉末とすることができる。 【0057】請求項14の熱処理済ステンレス鋼粉末の製造方法は、請求項13の方法において、上記冷間加工済ステンレス鋼粉末を基準温度近傍の基準温度より低い温度で熱処理することにより、粉末の表面層にマルテンサイト相と炭化物の他にオーステナイト相を分布させるようにしたので、請求項13の場合に比べてステンレス鋼粉末の表面層の硬度を幾分低くすることができる。 【0058】請求項15の微小ステンレス鋼コンテナの製造方法は、請求項11乃至14のいずれかの方法により製造された熱処理済ステンレス鋼粉末に電解腐食を施すことにより、粉末の表面層以外の部位を抽出し、残存した表面層により微小ステンレスコンテナを形成するようにしたので、例えば、触媒等を充填する耐熱微粒子カプセルや、薬剤等を充填して生体内に挿入する高強度生体用金属カプセル等として利用できる微小ステンレスコンテナを提供することが可能になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000046 【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年5月8日(2000.5.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080182 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 三彦
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| 【公開番号】 |
特開2001−316703(P2001−316703A) |
| 【公開日】 |
平成13年11月16日(2001.11.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−176119(P2000−176119) |
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