| 【発明の名称】 |
耐熱耐摩耗複合構造部材およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】江守 宏二
【氏名】泉 真吾
【氏名】綾垣 昌俊
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| 【要約】 |
【課題】製鉄分野における圧延工場で使用されるガイドロールや圧延用ロール等のような温度や荷重の負荷を受けるものに使用される耐熱耐摩耗複合構造部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素鋼からなる母材の外側に、質量%で、C:0.9〜2.5%、Si:0.15〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:3.5〜12.0%、Mo:3.0〜10.0%、V:0.8〜8.0%、W:1.0〜10.0%、さらにNi:0.5〜3.0%、Nb:0.8〜8.0%、Co:1.0〜12.0%、の内の1種または2種以上、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の粉末を第1のHIP処理層と成し、該第1のHIP処理層の外層に、金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物の内の1種または2種以上からなる粉末を合計体積比率で5〜30%、残部を上記成分からなる粉末との混合粉末からなる第2のHIP処理層を形成したことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。およびその製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭素鋼からなる母材の外側に、質量%で、C:0.9〜2.5%、Si:0.15〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:3.5〜12.0%、Mo:3.0〜10.0%、V:0.8〜8.0%、W:1.0〜10.0%残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の粉末を第1のHIP処理層と成し、該第1のHIP処理層の外層に、金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物の内の1種または2種以上からなる粉末を合計体積比率で5〜30%、残部を上記成分からなる粉末との混合粉末からなる第2のHIP処理層を形成したことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 【請求項2】 請求項1記載の成分に、さらにNi:0.5〜3.0%、Nb:0.8〜8.0%、Co:1.0〜12.0%、の内の1種または2種以上含有せしめたことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 【請求項3】 請求項1または2記載の第1の処理層を溶射または肉盛り溶接にて形成したことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 【請求項4】 請求項1記載の第2のHIP処理層用の混合粉末をメカニカルアロイング法により、予め合金化した複合粉末を形成する第1の工程と、その後、炭素鋼からなる母材の外側に、請求項1または2記載の粉末を第1層用として充填し、第1層用粉末の外部に、上記予め作成した第2のHIP処理用の複合粉末を充填する第2の工程と、その後、温度1000〜1200℃、圧力98〜196MPa、2〜5時間のHIP処理を行い3層構造とする第3の工程と、該構造材を硬化熱処理する第4の工程からなることを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材の製造方法。 【請求項5】 請求項1記載の第2のHIP処理層用の混合粉末をメカニカルアロイング法により、予め合金化した複合粉末を形成する第1の工程と、その後、炭素鋼からなる母材の外側に、請求項1または2記載の粉末を溶射または肉盛り溶接にて第1層を形成し、該第1層の外部に、上記予め作成した第2のHIP処理用の複合粉末を充填する第2の工程と、その後、温度1000〜1200℃、圧力98〜196MPa、2〜5時間のHIP処理を行い3層構造とする第3の工程と、該構造材を硬化熱処理する第4の工程からなることを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば製鉄分野における圧延工場で使用されるガイドロールや圧延用ロール等のような温度や荷重の負荷を受けるものに使用される耐熱耐摩耗複合構造部材およびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、鉄鋼圧延分野、例えば圧延工場等において、製品の精度、品質向上や生産性向上の要求が高く、そのため操業条件は苛酷となっている。従って、上記製品を製造するツールでの1つであるガイドロールや圧延用ロール等に対し、耐久性が求められ、特に、ツールの原単位や保守の低減を主な理由として、強度の信頼性を確保しつつ耐熱、耐摩耗性の向上が強く要求されてきている。一方、耐熱、耐摩耗性の向上については、これまで、多くの研究、開発が試みられており、最新の技術の1つとして、例えば特開10−280101号公報に開示されているように、強靱性を持った炭素鋼母材の外側に、金属の炭化物、窒化物、ホウ化物のうちの1種以上からなる粉末と残部が高速度鋼(ハイス)粉末とからなる複合粉末をHIP処理してなる第2の処理層を形成した2層構造とし、外層に硬化熱処理を行ったものである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上述した特開10−280101号公報に開示されている技術のものは、外層に耐熱耐摩耗性に優れたハイスサーメット(金属化合物とハイスの複合粉末)、内層に強靱性を持った炭素鋼の2層構造となっているため耐熱耐摩耗性と強度信頼性を同時に有している。しかしながら、外層のハイスサーメットが内層の炭素鋼に拡散接合されていること、さらに、硬化熱処理されるために、この硬化熱処理時に外層はマルテンサイト変態により膨張し、硬化熱処理後の内外層の境界部では半径方向の引っ張り残留応力がピークとなる。 【0004】一方、境界部の接合強度は外層材のハイスサーメット中のセラミックの添加割合やハイスの炭素含有量が多くなるにつれ低下する。この接合強度が低下すると、製造中や使用中に境界部でのクラックが発生する危険性を有する。従って、特開10−280101号公報に開示されている炭素鋼の外側に、ハイスサーメットを拡散結合された技術のものでは、接合部での境界部での接合強度を確保するために、外層材のハイスサーメット中へのセラミックやハイスの炭素含有量を多くして、しかも境界部の接合強度を高めることは難しい。そのために、特開10−280101号公報に開示されている2層構造材料では境界部に充分な強度を付与することが困難であると言う問題がある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上述したような問題を解消するもので、従来の技術が有する耐熱、耐摩耗性の作用・効果を有すると共に母材との接着強度の優れた、強度信頼性の高い、しかも極めて実用的な適用範囲の広い耐熱耐摩耗性複合材料を提供することを目的とするものである。その発明の要旨とするところは、(1)炭素鋼からなる母材の外側に、質量%で、C:0.9〜2.5%、Si:0.15〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:3.5〜12.0%、Mo:3.0〜10.0%、V:0.8〜8.0%、W:1.0〜10.0%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の粉末を第1のHIP処理層と成し、該第1のHIP処理層の外層に、金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物の内の1種または2種以上からなる粉末を合計体積比率で5〜30%、残部を上記成分からなる粉末との混合粉末からなる第2のHIP処理層を形成したことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 【0006】(2)前記(1)記載の成分に、さらにNi:0.5〜3.0%、Nb:0.8〜8.0%、Co:1.0〜12.0%、の内の1種または2種以上含有せしめたことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 (3)前記(1)または(2)記載の第1の処理層を溶射または肉盛り溶接にて形成したことを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材。 【0007】(4)前記(1)記載の第2のHIP処理層用の混合粉末をメカニカルアロイング法により、予め合金化した複合粉末を形成する第1の工程と、その後、炭素鋼からなる母材の外側に、前記(1)または(2)記載の粉末を第1層用として充填し、第1層用粉末の外部に、上記予め作成した第2のHIP処理用の複合粉末を充填する第2の工程と、その後、温度1000〜1200℃、圧力98〜196MPa、2〜5時間のHIP処理を行い3層構造とする第3の工程と、該構造材を硬化熱処理する第4の工程からなることを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材の製造方法。 【0008】(5)前記(1)記載の第2のHIP処理層用の混合粉末をメカニカルアロイング法により、予め合金化した複合粉末を形成する第1の工程と、その後、炭素鋼からなる母材の外側に、前記(1)または(2)記載の粉末を溶射または肉盛り溶接にて第1層を形成し、該第1層の外部に、上記予め作成した第2のHIP処理用の複合粉末を充填する第2の工程と、その後、温度1000〜1200℃、圧力98〜196MPa、2〜5時間のHIP処理を行い3層構造とする第3の工程と、該構造材を硬化熱処理する第4の工程からなることを特徴とする耐熱耐摩耗複合構造部材の製造方法にある。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る第1層および第2層に適用する成分組成の限定理由について説明する。 C:0.9〜2.5%Cは主としてマトリックス中に固溶されるマルテンサイト相を生成する。また、さらにFe,Cr,Mo,Nb,V,W等と結合して種々の炭化物を形成する。しかし、0.9%未満ではその炭化物量が少なく、耐摩耗性が得られない。また、2.5%を超えると、粗大な炭化物が形成され、靱性の低下や肌荒れの原因となる。従って、その範囲を0.9〜2.5%とする。 【0010】Si:0.15〜1.5%Siは脱酸作用を目的として添加する。しかし、0.15%未満ではその効果が不十分であり、1.5%を超える添加は、靱性を低下させるため、その範囲を0.15〜1.5%とする。 Mn:0.1〜2.0%Mnは脱酸、脱硫作用や焼入れ性を高めマトリックス硬度の増加を目的として添加する。しかし、0.1%未満ではその効果が不十分であり、2%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.1〜2.0%とする。 【0011】Cr:3.5〜12.0%Crはマトリックス中に固溶されて焼入れ性を高めると共に、Cと結合した炭化物を形成する。しかし、3.5%未満では炭化物量が少なく、耐摩耗性が低下し、また、12.0%を超えると、粗大な炭化物が形成され、靱性の低下を招く。従って、その範囲を3.5〜12.0%とする。 Mo:3.0〜10.0%MoはCrと同様に、マトリックス中に固溶されて基地を強化すると共に、Cと結合して炭化物を形成する。基地強化のためには、最低3.0%以上の含有が必要であるが、10.0%を超えても効果は変わらず、従って、経済的な理由からその上限を10.0%とした。 【0012】V:0.8〜8.0%VはCと結合して高硬度のMC炭化物を形成する。しかし、0.8%未満ではその効果は不十分であり、8.0%を超えて含有させた場合、マトリックス中の固溶炭素量が減少しマトリックス硬度を下げるので好ましくない。従って、その範囲を0.8〜8.0%とした。 W:1.0〜10.0%WはMoと同様に、マトリックス中に固溶されて基地を強化すると共に、Cと結合した炭化物を形成する。基地強化のためには、最低1.0%以上の含有が必要であるが、しかし、10.0%を超えると粗大炭化物が形成され靱性が低下する。従って、その範囲を1.0〜10.0%とした。 【0013】本発明材の基本成分は、上記の通りであるが、適用を対象とする複合構造材に要求される所要特性により、その他の成分として、上記した本発明の化学成分に加えて、さらに下記の成分を含有してもよい。 Ni:0.5〜3.0%Niはマトリックス中に固溶され、基地のオーステナイトを安定化して焼入れ性を向上する。そのために大きなサイズ部材を製造する場合少量を含有させることがあるが、3.0%を超えて含有させた場合、オーステナイトが安定化し過ぎてオーステナイトの残留を来たし、硬度の確保が困難になったり、熱間圧延使用中に変形等を起こすことがある。しかし、0.5%未満ではその効果がない。従って、その範囲を0.5〜3.0%とした。 【0014】Nb:0.8〜8.0%NbはCと結合して耐摩耗性に大きく寄与するMC炭化物を形成する重要な元素である。しかし、0.8%未満では炭化物量が不十分で耐摩耗性が確保できず、8.0%を超える添加は靱性の低下に繋がる。特に、耐摩耗性の著しい改善を必要とする場合に添加される。従って、その範囲を0.8〜8.0%とする。 Co:1.0〜12.0%Coはその殆んどがマトリックス中に固溶され基地を強化する。そのため、高温での硬度および強度を向上させる作用を有している。しかし、1.0%未満ではその効果は不十分であり、12.0%を超えてはその効果が飽和するため、経済性の点からも12.0%以下が望ましい。特に、例えば表面温度が600℃以上の高温となり、表面の高温耐摩耗性を改善する場合に添加するとよい。 【0015】次に、1種以上のセラミックス(金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物)の混合率の合計を体積で5〜30%とした理由は、混合率が増加するにつれて硬質粒子が増加するために硬度が上昇し耐摩耗性が向上するが、5%未満では効果は少なく、30%を超えると、外層の強度低下による欠陥や表面の肌荒れ等が発生し易くなり好ましくない。また、メカニカルアロイングでは、セラミックスと粉末の混合粉末を粉砕、固着を繰り返しすることにより、微細に分散した複合粉末組織となり耐熱耐摩耗耐肌荒れ性の向上をもたらす。 【0016】また、HIP温度は、1000℃未満では焼結の効率的がなく、気孔状欠陥が残りやすくなる。また、1200℃を超えると粒子が粗大化し強度が低下するため、上限を1200℃とした。さらに、圧力は98MPa以上であれば気孔は消滅出来る。しかし、196MPaを超えてもその効果は同じであり、経済性および設備の耐圧性を考慮して、その上限を196MPaとした。 【0017】以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。表1は本発明に係る第1層用粉末を成す化学成分組成を示す。また、第2層用粉末としての金属炭化物の代表例としてはチタン炭化物(TiC)を用い、表1に示す粉末の化学成分組成のものに体積比率で20%添加し、混合粉末を作成した。その後、この混合物をSUJ2製のボールを用いてメカニカルアロイング法によって、60時間の合金化作業を行い混合粉末を製造する。 【0018】 【表1】
【0019】また、試験用の充填容器としては、図1に示すようなものを使用する。すなわち、図1は境界強度測定試験片作製用カプセル構造を示す図である。この図1に示すように、図1(a)は、本発明に係る3層構造であり、図1(b)は従来の2層構造のものである。この容器本体であるカプセル1が炭素鋼からなり、内径Dが14.2mmφ、高さHが140mmのサイズのものを使用した。母材4は全てSCM材の中実円柱を使用し、カプセル1の底部に設置した。図1(b)に示す2層構造試験片は母材4に接して第2層用粉末3を充填し、図1(a)に示す本発明の3層構造試験材は母材4に接して約5mm厚さに第1層用粉末2を充填し、その上部に第2層用粉末3を充填した。 【0020】以上の充填後、真空脱気後、1140℃、147MPa、3時間のHIP処理を行い、軟化焼鈍後、焼き入れは1000℃×2時間で常温まで冷却した後、550℃×3.5時間で3回焼き戻しした。その後それぞれの試験材の母材4と第1層用粉末2との境界を中央部としたJIS4号引張り試験片の1/2サイズの試験片を加工採取し、その機械的強度を測定した。その結果を表2に示す。その結果、表2に示すように本発明材は、従来の2層構造に比べ、引張り強度、伸び、絞り共に高いことが判る。 【0021】 【表2】
【0022】図2は引張り試験片の境界部破断状況を示す図である。切断箇所は、図2(b)に示す従来の2層構造の場合には、母材4と第2層用粉末3よりなる鋼の境界で破断しているのに対し、図2(a)に示す本発明材は、母材4と第1層用粉末2よりなる鋼と第2層用粉末3よりなる鋼のいずれの境界共に強固に接合されており破断位置は強靱性の高い母材で破断している。このことからも本発明材の境界部分の強度は極めて高いことが判る。 【0023】また、圧延用複合ロールの応力状態については、製造時に発生したロールの残留応力に圧延の負荷応力および熱応力が加わる。このような応力状態について図3に示す。すなわち、図3はロール断面の半径方向の残留応力分布を示す図である。図3(a)は本発明の3層構造での残留応力分布を示し、図3(b)は従来での2層構造での残留応力分布を示すもので、図3(b)においては、焼入れにより第2層はマルテンサイト変態で膨張するために母材との境界で引張り残留応力がピークとなるため、境界強度が充分でないと、焼入れ中、機械加工中や圧延使用中に境界にクラックが発生することがある。本発明の3層構造の場合は、図3(a)に示すように、引張りの残留応力のピークは母材と第1層の境界である。すなわち、本発明材の場合はその境界は強靱な母材よりも引張り強度は強く境界からのクラック発生に対して信頼性の高い複合材料となっていることが判る。 【0024】以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。 【実施例】(実施例1)第1層の粉末については、表3に示す2種類の粉末の化学成分組成のものを使用した。また、第2層の粉末は、チタン炭化物を準備し、表3中の2種類の粉末にそれぞれ体積比率で10%、20%の混合し合計4種類の混合粉末を作成した。その後4種類の混合粉末をそれぞれSUJ2製のボールを用いたメカニカルアロイング法によって60時間の合金化作業を行い複合粉末を製造した。一方、充填容器は、60mmφ×10mmtの摩耗試験片を作成するために、図4(b)に示す従来の2層構造4個と図4(a)に示す本発明の3層構造用カプセルを2個準備した。これらは、内径は78mm、高さは60mmで1個のカプセルから試験片が2個採取出来る。充填はカプセル中央に50mmφの低合金炭素鋼母材をセットし、従来の2層構造はその周囲に第2層粉末の4種類のものを、それぞれ1個づつ充填し、合計4個作成した。 【0025】 【表3】
【0026】図5は本発明に係る3層構造カプセルの充填工程を示す図である。すなわち、本発明の3層構造は、この図5(a)に示すようにカプセル1の中央に母材4をセットし、また、カプセル1と母材4間に第1層と第2層用の空間を形成するために隔壁円筒5をセットする。このような状態で、図5(b)に示すように、第1層空間に第1層用粉末を、第2層空間に第2層用粉末を充填し、隔壁円筒5を上昇させつつ、両粉末の充填を上部まで行う。その後図5(c)に示すように、引上げネジ6によって台座冶具7にて保持していた母材4から、隔壁円筒5を除去後、上カプセル8を溶接し、脱気後密閉する。このような手順で作成し、母材の外周に約2〜3mm厚さに第1層粉末(ハイス粉末)をその周囲に2.3%CハイスにTiCを10%、20%混合した第2層粉末(MAハイスサーメット複合粉末)を充填し、それぞれ1個づつ合計2個作成した。 【0027】以上の充填の後、真空脱気後、1140℃、147MPa、3時間のHIP処理を行い、軟化焼鈍後粗加工を施した。焼入れは、1000℃×2時間で常温まで冷却した後、550℃×3.5時間で3回焼き戻した後仕上げ加工を行った。その製造結果を表4に示す。従来の2層構造材は、焼入れや機械加工中に複合境界にクラックが発生することがあり、高炭素ハイスにTiC高配合率のMAハイスサーメットの2層構造の材料に境界クラックが発生しやすい傾向がある。これに対し、本発明の3構造材は高炭素ハイスにTiC高配合率のMAハイスサーメットでも境界クラックの発生は皆無であった。なお、第1層の設定厚みについては、0.2〜20mmが好ましい。0.2mm未満ではその効果が少なく、また、20mmを超えると効果が飽和するため経済上の点より20mm以下とした。 【0028】 【表4】
【0029】(実施例2)第1層の粉末はついては、表5に示す粉末の化学成分組成のものを使用した。また、第2層の粉末は、チタン炭化物を準備し、表5中の粉末に体積比率で10%混合し混合粉末を作成した。その後SUJ2製のボールを用いたメカニカルアロイング法によって40時間の合金化作業を行い複合粉末を製造した。 一方、充填容器は、図6(a)に示すような内径93mm、高さ190mmで1個のカプセルから図6(b)の製品が2個採取出来る。充填はカプセル中央に45mmφの低合金炭素鋼母材(SCM440)をセットし、図5の要領で、母材の外周に約3〜4mm厚さに第1層用粉末2をその周囲に表5の粉末にTiCを10%混合した第2層用粉末3を充填し、3層構造充填材を作成した。以上の充填の後、真空脱気後、1140℃、147MPa、3時間のHIP処理を行い、軟化焼鈍後粗加工を施した。焼入れは、1140℃×0.5時間で常温まで冷却した後、550℃×3.5時間で3回焼き戻した後図6(b)に示すように直径74mm、長さ70mmの線材圧延用ガイドロールに仕上げ加工を行った。製造中に境界クラックのトラブルは発生せず順調に使用できた。 【0030】 【表5】
【0031】(実施例3)第1層の粉末については、表6に示す粉末の化学成分組成のものを使用した。また、第2層の粉末は、チタン炭化物を準備し、表6中の粉末に体積比率で10%混合し混合粉末を作成した。その後SUJ2製のボールを用いたメカニカルアロイング法によって40時間の合金化作業を行い複合粉末を製造した。 一方、充填容器は、図7(a)に示すような内径387mm、高さ263mmで1個のカプセルから図7(b)の製品が2個採取出来る。充填はカプセル中央に215mmφの低合金炭素鋼母材をセットし、図5の要領で、母材の外周に約3〜5mm厚さに第1層用粉末2をその周囲に表6の粉末にTiCを10%混合した第2層用粉末3を充填し、3層構造充填材を作成した。以上の充填の後、真空脱気後、1140℃、147MPa、3時間のHIP処理を行い、軟化焼鈍後粗加工を施した。焼入れは、1140℃×0.5時間で常温まで冷却した後、550℃×3.5時間で3回焼き戻した後図6(b)に示すように直径330mm、長さ95mmの大径の線材圧延用中間ワークロールに仕上げ加工を行った。製造中に境界クラックのトラブルの発生はなく順調に使用できた。 【0032】 【表6】
【0033】(実施例4)第1層の粉末はついては、表7に示す溶射用粉末の化学成分組成のものを使用した。また、第2層の粉末は、チタン炭化物を準備し、表7中のMAハイスサーメット用ハイスに体積比率で10%混合し混合粉末を作成した。その後SUJ2製のボールを用いたメカニカルアロイング法によって72時間の合金化作業を行い複合粉末を製造した。一方、充填容器は、図8(a)に示すような内径80mm、高さ120mmで1個のカプセルから図8(b)の製品が2個採取出来る。充填はカプセル中央に45mmφのカリバー形状の低合金炭素鋼母材の表面に第1層用粉末を約0.5mm厚さに減圧プラズマ法による溶射した材料をセットし、その外周に第2層用粉末にTiCを20%混合した第2層粉末(MAハイスサーメット複合粉末)を充填し、3層構造充填材を作成した。 【0034】 【表7】
【0035】以上の充填の後、真空脱気後、1140℃、147MPa、3時間のHIP処理を行い、軟化焼鈍後粗加工を施した。焼入れは、1140℃×0.5時間で常温まで冷却した後、550℃×3.5時間で3回焼き戻した後図8(b)に示すように直径60mm、長さ40mmの線材圧延用ガイドロールに仕上げ加工を行った。製造中に境界クラックのトラブルの発生はなく製造し、使用成績はクラックなどのトラブルはなく、表8に示すように、従来の工具系ロールに比べ10倍以上の耐久性を示した。本実施例で示した母材への溶射方法や肉盛り溶接方法は、例えば母材の形状が深いカリバーを有するため前記実施例のように隔壁円筒を使用したセラミック粉の充填方法では実施が困難な場合に有効な方法である。また、この場合、母材への溶射および肉盛り時の厚みは0.1〜1.0mmが好ましい。0.1mm未満では、その効果がなく、1.0mmを超えると経済的でない。 【0036】 【表8】
【0037】以上述べた実施例において、本発明の適用例を線材圧延用のガイドロール、中間ワークロールとしたが、適用例はこれらに限られるものではなく、例えばその他の熱間および冷間圧延用ロール、工具類等に幅広く適用可能であり、また、実施例において、母材の材質は炭素鋼の中から低合金炭素鋼(SCM440)を使用したが、本発明材における母材の材質としては、これに限定されることなく炭素鋼であればよく、例えば機械構造用炭素鋼、軸受鋼等幅広く適用できる。この場合母材の選定に当たっては複合構造材として要求される強靱性、硬度等より適宜選定すればよい。 【0038】 【発明の効果】以上述べたように、本発明により従来の技術が有する耐熱耐摩耗性を有すると共に母材との接着強度の優れた、強度信頼性の高い、しかも極めて実用的な適用範囲の広い耐熱耐摩耗性複合材料を提供することが出来る優れた効果を奏するものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年3月6日(2000.3.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074790 【弁理士】 【氏名又は名称】椎名 彊
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| 【公開番号】 |
特開2001−247905(P2001−247905A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月14日(2001.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−60716(P2000−60716) |
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