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【発明の名称】 軸受の製造方法
【発明者】 【氏名】宮坂 元博

【氏名】竹花 敏一

【氏名】栗原 健

【氏名】徳島 秀和

【要約】 【課題】焼結体がハウジング内に組み込まれた2点支持構造の軸受を、比較的簡素な方法で効率よく、かつ、優れた軸受性能を有するものに製造する。

【解決手段】軸受本体10Aに成形される素材(焼結体)1Aをダイ31の成形孔30内に配置するとともに、素材1Aに、動圧溝形成用の大径部32bを有するコアロッド32を挿入し、かつ、その大径部32bを素材1Aの軸方向中央部の内径面に対応させた状態に保持するセット工程と、ハウジング21を成形孔30内に押し込んでハウジング21内に素材1Aを圧入させる圧入工程とを備える。圧入工程において、素材1Aをハウジング21に圧着させる一方、素材1Aの内径面をコアロッド32に圧接させ、コアロッド32の大径部32bにより中逃げ部13を、本体部32aにより軸支面12をそれぞれ形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒状で、軸方向中央部の内径面に回転軸が接触しない中逃げ部を有し、この中逃げ部の両側の軸方向両端部に回転軸を支持する軸支面を有する軸受本体を、円筒状のハウジング内に組み込んでなる軸受の製造方法であって、前記軸受本体に成形される円筒状の素材を成形孔内に配置するとともに、素材に、前記中逃げ部を形成し得る大径部を有するコアロッドを挿入し、かつ、該大径部を素材の軸方向中央部の内径面に対応させた状態に保持するセット工程と、ハウジングを成形孔内に押し込んでハウジング内に素材を圧入させる圧入工程とを備え、該圧入工程において、素材の外径面をハウジングの内径面に圧着させる一方、素材の内径面をコアロッドに圧接させ、該内径面に前記中逃げ部および前記軸支面を形成することを特徴とする軸受の製造方法。
【請求項2】 前記素材の軸方向両端部の内径面が圧接させられる前記コアロッドの外径面に、動圧溝形成用の凸部または凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、精密機器に内蔵されるスピンドルモータの駆動軸等、比較的高速で回転する軸を高精度で支持する場合に用いて好適な軸受であって、特に、回転軸が接触しない中逃げ部を有する軸受本体がハウジング内に組み込まれたタイプの軸受を製造する方法に関する。軸受本体は、焼結体あるいは焼結体にサイジングを施した多孔質体からなる素材を成形したものであり、潤滑油が含浸され、焼結含油軸受として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】上記焼結含油軸受は、焼結体に含浸された潤滑油が内径面にしみ出し、内径面と回転軸との間に油膜が形成されることにより、摩擦抵抗が低減して騒音や振動が抑えられるといった特性を有する。また、振動や騒音の抑制効果をさらに高めた焼結含油軸受として、軸方向中央部の内径面に、内径が回転軸の外径より僅かに大きく回転軸と接触しない隙間(以下、中逃げ部と称する)を形成し、回転軸の軸支面を両端部の内径面に限定した2点支持構造として摩擦抵抗の低減効果と回転軸の支持力をより安定化させたものがある。
【0003】焼結含油軸受は、通常、原料の金属粉末を圧縮成形して得た円筒状の圧粉体を焼結し、焼結体をサイジングして最終形状に仕上げるといった工程を主体として製造されているが、軸受としては、焼結体単体の他に、焼結体がハウジング内に組み込まれたタイプのものがある。ところで、上記中逃げ部を形成する場合、その中逃げ部を焼結体への機械加工で形成すると、内径面に表出している気孔が潰れて潤滑油の循環作用に支障を来すことになる。このため、焼結体のサイジング工程で中逃げ部を同時に形成するか、もしくはサイジング後にもう1度焼結体を変形させて中逃げ部を独自に形成する方法が好ましい。いずれの場合も、軸方向両端部の内径面が径方向内側に突出したり、軸方向中央部が径方向外側に膨出したりする塑性変形を焼結体に生じさせることにより、離間する2つの軸支面とこれらの間の中逃げ部が内径面に同時に形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記2点支持構造の軸受においては、前述した摩擦抵抗の低減や回転軸の支持力向上といった軸受性能を高める上で、離間する2つの軸支面の内径および同軸度が高い精度で一致していることや、軸支面への潤滑油の供給量が十分になされることが要求される。ところが、従来より焼結体の塑性変形のさせ方は種々提案されているものの、比較的簡素で、軸受性能向上のための要求が十分満たされる一定の製造方法は見い出されていないのが現状であった。また、焼結体をハウジング内に組み込んだタイプの軸受にあっては、焼結体に軸支面および中逃げ部を形成してからハウジングに組み込んでも、焼結体に変形が生じて軸支面の内径に差異が生じたり同軸度が損なわれたりすることが多く、さりとて、組み込んだ後に焼結体をサイジングして軸支面および中逃げ部を形成することは、きわめて困難であった。
【0005】したがって本発明は、焼結体がハウジング内に組み込まれた2点支持構造の軸受を、比較的簡素な方法で効率よく、かつ、優れた軸受性能(2つの軸支面の内径や同軸度の同一性に伴う回転軸の支持力、潤滑性、耐摩耗性等)を有するものに製造することができる方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、円筒状で、軸方向中央部の内径面に回転軸が接触しない中逃げ部を有し、この中逃げ部の両側の軸方向両端部に回転軸を支持する軸支面を有する軸受本体を円筒状のハウジング内に組み込んでなる軸受の製造方法であって、軸受本体に成形される円筒状の素材を成形孔内に配置するとともに、素材に、中逃げ部を形成し得る大径部を有するコアロッドを挿入し、かつ、該大径部を素材の軸方向中央部の内径面に対応させた状態に保持するセット工程と、ハウジングを成形孔内に押し込んでハウジング内に素材を圧入させる圧入工程とを備え、該圧入工程において、素材の外径面をハウジングの内径面に圧着させる一方、素材の内径面をコアロッドに圧接させ、該内径面に中逃げ部および軸支面を形成することを特徴としている。本発明に係る素材は、前述の如く焼結体あるいは焼結体にサイジングを施してなる多孔質体が用いられ、製造後は、潤滑油が含浸され、焼結含油軸受として好適に用いられる。
【0007】上記セット工程では、例えば、ハウジングの外径形状に応じて円筒状に形成された成形孔内に素材を同軸的に配置し、成形孔に挿入した下パンチ上に載せる。そして、この際に下パンチに貫通させたコアロッドに素材が挿入され、コアロッドの大径部を素材の軸方向中央部の内径面に対応させた状態に保持する。素材の内径は、コアロッドの大径部に摺動しながら挿入されることが可能な寸法か、あるいは、その内径面とコアロッドの大径部との間に微小な隙間が形成される寸法が好ましい。また、素材とハウジングは、軸方向長さが等しいと好ましい。
【0008】上記圧入工程では、ハウジングを軸方向に沿って成形孔に押し込むとともに、ハウジング内に素材を圧入させる。この圧入と同時に、両者を軸方向に圧縮してもよい。本発明では、ハウジング、素材および成形孔の形状および寸法が、次のような関係が生じ得るように設定される。すなわち、ハウジングが成形孔に押し込まれるとハウジングの内径面の圧迫を受けた素材が縮径して両者が互いに圧着する一方、素材の内径面がコアロッドに圧接し、その内径面にコアロッドの大径部によって中逃げ部が形成され、この中逃げ部の両側に軸支面が形成される。
【0009】本発明によれば、上記のような変形態様が適宜になされる素材およびハウジングと成形孔との組み合わせを採ることにより、軸受本体がハウジング内に組み込まれた構成であって、中逃げ部を有する2点支持構造の軸受を、比較的簡素な方法で効率よく製造することができる。また、中逃げ部はコアロッドの大径部に圧接されて形成されるので、その大径部を的確に形成しておくことにより、中逃げ部を所望の形状ならびに寸法通りに確実かつ高精度で形成することができる。
【0010】また、軸受本体に形成される軸支面は、素材の内径面がコアロッドに強く圧接させられることにより形成されるので、その内径および同軸度が高い精度で一致する。また、軸支面の密度を高くすることができるので、耐摩耗性の向上が図られる。一方、中逃げ部は軸支面よりも密度を低くすることができ、このため、潤滑油の含有量が増大して軸支面の潤滑性を向上させることができる。これらの結果、高レベルの軸受性能を有する軸受を製造することができる。
【0011】本発明では、素材の軸方向両端部の内径面が圧接させられるコアロッドの外径面に、動圧溝形成用の凸部または凹部が形成されていることを好ましい形態としている。これによると、前者の凸部の場合では、軸支面には凸部形状に応じた動圧溝が形成される。また、後者の凹部の場合では、凹部形状に応じて刻設された軸支面と軸支面間の動圧溝とが同時に形成される。軸支面に動圧溝を形成すると、両端部の各軸支面により回転軸を支持する2点支持構造に加え、動圧溝に発生する動圧効果(動圧溝に流入する潤滑油の高圧化に伴う剛性向上)によって回転軸の支持力が相乗的に高まり、回転軸の支持力をより安定させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(1)第1実施形態−図1図1は、第1実施形態に係る軸受の成形工程を(a),(b)の順に示している。第1実施形態では、素材1Aを成形装置のダイ31内にセットし、次いで、ハウジング21をダイ31内に押し込むと同時にハウジング21内に素材1Aを圧入し、軸受20Aを製造する。
【0013】成形装置は、図1に示すように、ハウジング21が圧入される成形孔30を有するダイ31と、コアロッド32と、上下のパンチ33,34とから構成されている。ダイ31の成形孔30はハウジング21に略対応する円筒状であって、図1(a)に示すように、主部30aと、主部30aの奥部(下部)に形成された小径部30bと、主部30aの入口側(上側)に形成された開口部30cと、主部30aと開口部30cとの間の水平な段部30dとから構成されている。小径部30bの径は主部30aよりも小さく、開口部30cの径は主部30aよりも大きい。主部30aから小径部30bへの移行部は、なだらかなテーパ面に形成されている。
【0014】図1(a)に示すように、コアロッド32の上端部近傍には、主体をなす他の部分(ここでは本体部32aと称する)よりも直径が大きい大径部32bが、本体部32aと同軸的に形成されている。この大径部32bは、素材1Aの内径面に中逃げ部を形成するものであり、本体部32aとの段差は数μm程度とされている。また、大径部32bの長さは、素材1Aの長さに対し、例えば半分程度とされている。また、大径部32bより上側の本体部32aの長さは、大径部32bを素材1Aの軸方向中央部に配した状態で、その上端が素材1Aから僅かに突出し得る寸法に設定されている。
【0015】図1(b)に示すように、上パンチ33は、成形孔30の開口部30cに摺動自在に挿入されるようになされ、また、下パンチ34は、成形孔30の主部30aに摺動自在に挿入されるようになされている。下パンチ34には、コアロッド32における大径部32bよりも下側の本体部32aが摺動自在に挿入されている。そして、大径部32bよりも上側の本体部32aは、上パンチ33に摺動自在に挿入されるようになされている。
【0016】ハウジング21は、図1(a)に示すように、主体をなす円筒部22の一端部にフランジ23が形成された円筒状のものである。ハウジング21の内径は不均一であって、フランジ23側の端部に内径小径部24aが形成され、他の内径部分が内径大径部24bとなっている。円筒部22の外径は成形孔30の主部30aの径よりも僅かに小さく、その外径面と主部30aの内径面との間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。また、フランジ23の外径は成形孔30の開口部30cの径よりも僅かに小さく、その外径面と開口部30cの内径面との間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。また、軸方向長さ(高さ)に関しては、円筒部22は成形孔30の主部30aから小径部30bにかかる長さを有し、フランジ23は開口部30cよりも短く設定されている。
【0017】ハウジング21は、成形孔30に塑性変形しながら圧入され得る材質が選択され、例えば、青銅、黄銅、アルミニウム合金、鋼の他、焼結材が用いられる。焼結材の場合、素材1Aよりも気孔が大きいものを用いると、ハウジング21に含浸させた油が、毛細管力によって軸受本体側に効果的に供給されるので、軸受寿命を長くすることができ好ましい。
【0018】素材1Aは、焼結体もしくは焼結体にサイジングを施して成形された多孔質体であって、内径および外径がともに均一の単純な円筒状のものである。素材1Aの外径は、ハウジング21の内径大径部24bの径よりも小さく、かつ、内径小径部24aの径よりも大きく、その外径面と内径大径部24bとの間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。また、素材1Aの内径は、コアロッド32の大径部32bに摺動しながら挿入されることが可能で、かつ、その内径面とコアロッド32の本体部32aとの間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。素材1Aの軸方向長さは、ハウジング21のそれと等しく設定されている。
【0019】次に、成形装置により軸受を製造する手順を説明する。
[工程1−素材のセット]図1(a)に示すように、下パンチ34を成形孔30の小径部30bの途中まで挿入し、成形孔30内に突出させたコアロッド32に素材1Aを同軸的に嵌め込んで下パンチ34上に載せ、さらに、コアロッド32の大径部32bを素材1Aの内径面の軸方向中央部に対応させた状態とする。
【0020】[工程2−ハウジング内への素材の圧入]図1(a)に示すように、フランジ23を上にしてハウジング21を成形孔30上に同軸的に配置してから、図1(b)に示すように上パンチ33を降下させ、上パンチ33によりハウジング21を成形孔30に押し込み、ハウジング21および素材1Aを軸方向に圧縮する。下パンチ34は、ハウジング21とともに降下させる。
【0021】ハウジング21が成形孔30に押し込まれ、ハウジング21および素材1Aが軸方向に圧縮されると、ハウジング21の外径面は成形孔30の内径面に倣って塑性変形する。また、素材1Aの外径面はハウジング21の内径面に倣って塑性変形し、ハウジング21の内径面に圧着する。ハウジング21の円筒部22の下端部は、成形孔30の小径部30bに圧入して縮径し、絞り部25が造形される。これにより、素材1Aの下端部も内径側に圧迫されて縮径し、絞り部11aが造形される。一方、素材1Aの上端部は、ハウジング21の内径小径部24aに圧入し、内径小径部24aからの圧迫を受けて縮径することにより絞り部11bが造形される。
【0022】素材1Aの上下の絞り部11a,11bの外径面はハウジング21の内径面にそれぞれ強く圧着し、内径面はコアロッド32の本体部32aに圧接して軸支面12にそれぞれ形成される。素材1Aの軸方向中央部においては、上下の絞り部11a,11bの造形に伴う塑性流動により、内径面がコアロッド32の大径部32bに圧接して中逃げ部13が形成され、外径面はハウジング21の内径面に圧着する。このようにハウジング21および素材1Aが塑性変形することにより、素材1Aが軸受本体10Aに成形され、かつ、この軸受本体10Aがハウジング21の内径面に圧着して両者が一体化した軸受20Aが成形される。軸受20Aは、上パンチ33を上昇させて退避させ、下パンチ34およびコアロッド32を上昇させてダイ31から押し出すことにより脱型する。この後、コアロッド32を降下させ、軸受20Aを得る。脱型された軸受20Aには、ダイ31による外径面の拘束が開放されて全体が拡径するスプリングバックが生じるので、大径部32bの障害を受けることなくコアロッド32を軸受20Aから抜き出すことができる。
【0023】上記のように、図1(a)に示すような素材1Aとハウジング21の位置から上パンチ33を降下させる方法によれば、素材1Aの上端部はハウジング21の内径小径部24aに上端面側から軸方向中央部方向に順次圧入され、一方、素材1Aの下端部は軸方向中央部側から下端面側に向けて縮径されていく。このため、素材1Aの上端部と下端部は、ともに下パンチ34方向に塑性変形し、その結果、コアロッド32に圧接して形成される軸支面12は、各端面寄りの気孔状態が僅かではあるが異なったものとなる。素材1Aの両端とも端面側から軸方向中央部に向かって塑性変形させたいときは、まず、図1(a)における下パンチ34の上面を成形孔30の小径部30bの領域またはそれよりも上方に位置させておき、素材1Aおよびハウジング21を同軸的に配置する。次いで、上パンチ33によりハウジング21を降下させ、内径小径部24aに素材1Aの上端部を圧入させ、この後、ハウジング21および素材1Aを図1(b)に示すように成形孔30に圧入する手順が採られる。
【0024】上記第1実施形態によれば、素材1Aをダイ31内にセットし、次いで、ハウジング21をダイ31内に押し込んでハウジング21内に素材1Aを圧入させるといった簡素な方法により、焼結体からなる軸受本体10Aがハウジング21内に組み込まれた2点支持構造の軸受20Aを、効率よく製造することができる。また、中逃げ部13はコアロッド32の大径部32bに圧接されて形成されるので、その大径部32bを的確に形成しておくことにより、中逃げ部13を所望の形状ならびに寸法通りに確実かつ高精度で形成することができる。
【0025】軸受20Aの軸支面12は、素材1Aの内径面をコアロッド32に強く圧接させることにより形成されるので、その内径および同軸度が高い精度で一致し、加えて高密度化する故、耐摩耗性および回転軸の支持力に優れる。一方、中逃げ部13はコアロッド32の大径部32bに弱く圧接することから、軸支面12よりも密度は低く、このため、潤滑油の含有量を増大させることができ、軸支面12の潤滑性の向上が図られる。これらの結果、軸受20Aは優れた軸受性能を発揮する。また、双方の軸支面12の圧縮度をほぼ等しくすることができることから、それら軸支面12の気孔率が均等化され、その結果、軸支面12に生じる油圧も均等となって回転軸をバランスよく支持することができる。
【0026】(2)第2実施形態−図2次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、図2に示すように、第1実施形態の素材1Aとは異なる形状の素材1Bを成形装置のダイ31内にセットし、次いで、第1実施形態と同様のハウジング21をダイ31内に押し込むと同時にハウジング21内に素材1Bを圧入し、軸受20Bを製造する。
【0027】第2実施形態の成形装置は、第1実施形態で用いたダイ31の成形孔30および下パンチ34を変更したものである。成形孔30は、図2(a)に示すように、上記小径部30bが形成されておらず、主部30aがダイ31の下面まで貫通しており、この主部30aに、下パンチ34が挿入されるようになされている。
【0028】図2(a)の符合1Bで示す第2実施形態の素材は、内径均一で、軸方向一端部に外径大径部4bが形成された円筒状のものである。外径大径部4bの外径は、ハウジング21の内径大径部24bの径よりも大きく設定されている。また、外径大径部4b以外の外径部分である外径小径部4aの外径は、ハウジング21の内径小径部24aの径よりも大きく、かつ、内径大径部24bよりも小さくてその外径面と内径大径部24bの内径面との間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。また、素材1Bの内径は、第1実施形態の素材1Aと同様の寸法、すなわち、コアロッド32の大径部32bに摺動しながら挿入されることが可能で、かつ、その内径面とコアロッド32の本体部32aとの間に微小な隙間が形成される寸法に設定されている。
【0029】次に、成形装置により軸受を製造する手順を説明する。
[工程1−素材のセット]図2(a)に示すように、外径大径部4bを下にして素材1Bをコアロッド32に嵌め込んで下パンチ34上に載せ、さらに、コアロッド32の大径部32bを素材1Bの内径面の軸方向中央部に対応させた状態とする。
【0030】[工程2−ハウジング内への素材の圧入]図2(a)〜(b)に示すように、第1実施形態と同様にしてハウジング21を上パンチ33により成形孔30に押し込み、ハウジング21および素材1Bを軸方向に圧縮する。
【0031】ハウジング21が成形孔30に押し込まれ、ハウジング21および素材1Bが軸方向に圧縮されると、ハウジング21の外径面は成形孔30の内径面に倣って塑性変形する。また、素材1Bの外径面はハウジング21の内径面に倣って塑性変形し、ハウジング21の内径面に圧着する。素材1Bの下端部の外径大径部4bは、ハウジング21の外径大径部24bに圧入して縮径し、消滅させられる。一方、素材1Bの上端部は、ハウジング21の内径小径部24aに圧入して縮径し、絞り部11bが造形される。
【0032】素材1Bの上端部に造形された絞り部11bと下端部の外径面は、それぞれハウジング21の内径面にそれぞれ強く圧着し、これら部分の内径面はコアロッド32の本体部32aに圧接してそれぞれ軸支面12に形成される。素材1Bの軸方向中央部においては、絞り部11bの造形と外径大径部4bの消滅に伴う塑性流動により、内径面がコアロッド32の大径部32bに比較的弱く圧接して中逃げ部13が形成され、外径面はハウジング21の内径面に圧着する。このようにハウジング21および素材1Bが塑性変形することにより、素材1Bが軸受本体10Bに成形され、かつ、この軸受本体10Bがハウジング21の内径面に圧着して両者が一体化した軸受20Bが成形される。軸受20Bは、上パンチ33を上昇させて退避させ、下パンチ34を上昇させてダイ31から押し出すことにより脱型され、この後、コアロッド32を降下させて軸受20Bを得る。
【0033】(3)第3実施形態−図3,図4第3実施形態は、図3に示すように、上記コアロッド32に代えた動圧溝形成用のコアロッド32Aを、上記第1実施形態に適用して素材1Aを成形し、軸支面12に動圧溝が形成された軸受を成形する例である。そのコアロッド42は、上記コアロッド32と同様に本体部42aと大径部42bとを有するもので、さらに、図4(a)に示すように、素材1Aの両端部内径面の圧接を受ける外径面に、複数のV字状の凸部43が周方向に等間隔をおいてヘリングボーン状に形成されたものである。凸部43は、コアロッド42の切削やメッキ等の手段によって形成することができるものであり、その高さは、数μm程度である。
【0034】軸受を成形するには、まず、図3(a)に示すように、素材1Aを成形装置にセットし、コアロッド42の凸部43が形成された部分を素材1Aの両端部内径面に対応させる。この状態から、第1実施形態と同様の操作(図3(a)〜(b))を行い、軸受本体10Cがハウジング21内に組み込まれた軸受20Cを得る。
【0035】軸受本体10Cの軸支面12には、図4(b)に示すように(同図はハウジング21を省略している)、コアロッド42の凸部43によってヘリングボーン状の動圧溝14が刻設される。脱型された軸受20Cには、ダイ31による外径面の拘束が開放されて全体が僅かに拡径するスプリングバックが生じるので、動圧溝14間の凸部を摩滅することなくコアロッド42から軸受20Cを抜くことができる。
【0036】第3実施形態によって製造された軸受20Cによれば、軸支面12で回転軸を支持する2点支持構造に加え、動圧溝14に発生する動圧効果(動圧溝に流入する潤滑油の高圧化に伴う剛性向上)によって回転軸の支持力が相乗的に高まり、回転軸の支持力がより安定する。なお、潤滑油が動圧溝14の一部に集中して動圧が上昇する効果が十分に期待される観点から、軸受20Cは、回転軸の回転方向が動圧溝14のV字の先端方向(図4(b)で矢印R方向)に向くようにセットされることが好ましい。
【0037】上記第3実施形態のように動圧溝形成用のコアロッド42を用いて軸支面に動圧溝を形成する形態は、第2実施形態にも勿論適用することができる。
【0038】なお、第3実施形態で示した動圧溝の形状は任意であり、その数も適宜に選択されるが、回転軸をより安定して支持する観点から、複数が軸支面の周方向に沿って等間隔をおいて配置されると好ましい。第3実施形態では、ヘリングボーン状として、つまり形状によって、動圧上昇が生じる効果を得るようにしているが、深さの断面形状によってもその効果を得ることができる。
【0039】それには、概略形状を軸方向に沿って延びる溝とし、回転軸が一方向のみに回転する場合には、回転軸の回転方向の逆方向側の端部を最深部とし、この最深部から回転軸の回転方向に向かってしだいに浅くなるよう傾斜させる。また、回転軸が正逆双方向に回転する場合には、周方向の中間部を最深部とし、この最深部から周方向両端部に向かってしだいに浅くなるよう傾斜させる。このように形成された動圧溝は、横断面(輪切りにした場合の断面)形状が回転軸の回転方向に向かって浅くなるくさび状の隙間となり、溝の浅い先端部に潤滑油が集中するくさび効果を得ることができる。
【0040】また、第3実施形態で示した動圧溝14は、コアロッド42に形成した凸部43により形成されているが、このような凸部に代え、凹部によって動圧溝を形成することができる。すなわち、第3実施形態と刻設のパターンが逆であって、素材1Aの内径小径部の内径面がコアロッドに圧接させられるとコアロッドに形成した凹部に導入されて凸部が突設され、この凸部の内径面が軸支面に、また、凸部間の溝が動圧溝として機能する。この場合、凸部がさらに突設されることにより、その高さだけ中逃げ量が大きい軸受が得られる。なお、コアロッドに形成する凹部は、放電加工や電解腐食といった手段により形成することができる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、軸受本体がハウジング内に組み込まれた構成であって、比較的大きな中逃げ部を有する2点支持構造の軸受を、比較的簡素な方法で効率よく製造することができる。また、本発明によって製造された軸受は、軸方向両端部の軸支面においては、内径および同軸度が高い精度で一致するとともに高密度化されて耐摩耗性の向上が図られ、一方、中逃げ部が形成された軸方向中央部においては、高密度化、あるいは比較的低密度と自在に形成することができるので、潤滑油の含有量や保油率を任意に設定することが可能となる。これらの結果、優れた軸受性能を発揮する。
【出願人】 【識別番号】000233572
【氏名又は名称】日立粉末冶金株式会社
【出願日】 平成11年8月24日(1999.8.24)
【代理人】 【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
【公開番号】 特開2001−59105(P2001−59105A)
【公開日】 平成13年3月6日(2001.3.6)
【出願番号】 特願平11−236486