トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般




【発明の名称】 薬液膜形成方法および薬液膜形成装置
【発明者】 【氏名】平川 幸太

【要約】 【課題】被膜形成体の表面に薬液膜を形成するに際して、その表面への異物の付着を抑制し得る薬液膜形成方法および薬液膜形成装置を提供する。

【解決手段】下降工程において液槽52内に入れられたフィルタ54内にはその外壁を透過してラッカー溶液42が入ることから、そのラッカー溶液42中に異物が含まれていてもその外壁に濾過されることとなるため、その外壁を透過し得ない一定の大きさ以上の異物はフィルタ54内に入り込まない。そのため、浸漬工程においては、そのフィルタ54内に入った実質的に異物を含まないラッカー溶液42、すなわち、フィルタ54の外壁で隔離されることで異物の侵入が抑制されている領域に前面板16が浸されることから、引上工程において前面板16をラッカー溶液42から引き上げることによってその一面12にラッカー溶液膜が形成される際には、その一面12には異物が付着し得ない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被膜形成体の表面に所定の薬液から成る膜を形成する方法であって、前記薬液が透過可能な外壁を備えた有底容器を、その薬液がその外壁を透過する経路だけを通ってその外壁に濾過されつつその内側に入るようにその薬液を蓄えた薬液槽内に入れる工程と、前記有底容器内に入った前記薬液に前記被膜形成体を浸す浸漬工程と、前記被膜形成体を前記薬液から引き上げることにより、その引上過程でその被膜形成体の表面にその薬液から成る膜を形成する引上工程とを、含むことを特徴とする薬液膜形成方法。
【請求項2】 被膜形成体の表面に所定の薬液から成る膜を形成するための薬液膜形成装置であって、前記薬液を蓄える薬液槽と、前記薬液が透過可能な外壁を備えた有底容器を、前記薬液槽内に蓄えられたその薬液がその外壁を透過する経路だけを通ってその外壁に濾過されつつその内側に入る槽内位置とその薬液槽外の位置との間で移動させる有底容器移動装置と、前記被膜形成体を前記有底容器内に入った前記薬液に浸される浸漬位置と前記薬液槽外の位置との間で移動させる被膜形成体移動装置とを、含むことを特徴とする薬液膜形成装置。
【請求項3】 前記有底容器移動装置は、底面の反対側に位置する一面が開放された筒状容器を前記有底容器として移動させるものであり、その有底容器を、前記一面が移動方向における後端に位置する向きで所定の洗浄液内で移動させ且つその向きでその洗浄液内から取り出すことによって洗浄する洗浄装置を更に含むものである請求項2の薬液膜形成装置。
【発明の詳細な説明】【0001】本発明は、被膜形成体の表面に薬液を塗布して薬液膜を形成する方法および装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、気密容器の外囲器の一部を構成する透光性壁部の気密空間に面する略平坦な内面に蛍光体層およびそれを覆う薄膜金属を備え、その気密空間内で発生させられた電子でその蛍光体を励起発光させ、その光をその透光性壁部を通して射出することにより画像を表示する形式の電子線励起発光装置や表示装置が知られている。例えば、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管) や、FED(FieldEmission Display:電界放出表示装置)等がそれである。このような発光装置では、ガラス等から構成される透光性壁部の内面に蛍光体層およびそれを覆うアルミニウム等から構成される薄膜金属によってメタル・バック蛍光面が構成されていることから、蛍光体層で発生させられて気密空間側に向かう光はその薄膜金属で反射され、外部に向かわせられる。一方、その薄膜金属は通常、蒸着によって形成されて多孔質であると共に膜厚が極めて薄いことから、電子線は容易に透過させられて蛍光体層に到達し蛍光体を励起する。そのため、蛍光体層で発生した光が有効に利用されることから、高い発光効率が得られるという利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、透光性壁部の内面に上記のようなメタル・バック蛍光面を形成するに際しては、その内面に蛍光体ペーストを塗布して焼成することにより蛍光体層を例えば 20(μm)程度の所定厚みに形成し、その上にアルミニウム等の金属を100 〜200(nm) 程度の厚さで蒸着する。このとき、焼成して形成された蛍光体層の表面には大きな凹凸が存在することから、上記のように極めて薄い金属膜を直接その上に一様な厚さで滑らかに形成することは困難である。そのため、一般には以下のような手順で蒸着が為される。先ず、蛍光体層が設けられている透光性壁部の内面上の全面にSiイオンや Kイオン等を含むアルカリ性水溶液をスピン・コータ等で塗布して略均一に濡らすウェッティング処理を施す。次いで、その内面が乾かないうちに、例えばアクリル樹脂等を含むラッカー溶液等の樹脂液をその内面上に塗布して乾燥するフィルミング処理を施すことにより、その内面上に例えば1(μm)程度の略一様な厚さを有して滑らかな表面を備えた樹脂膜を形成する。その後、所定パターンでマスクしてアルミニウムを蒸着し、更に、焼成処理を施して樹脂膜を分解除去することにより、上記のように極めて薄い金属膜を一様な厚さで設けることができる。
【0004】上記の各工程のうち、フィルミング処理は、従来、例えばウェッティング処理と同様にスピン・コータを用いて実施されていたが、このような方法では、塗布面積が大きくなるほど樹脂膜に厚みむらが生じ易くなる等の不都合がある。そのため、近年では、例えば5(cp) 程度の粘度に調製した樹脂液中に透光性壁部を浸して引き上げ、余分な樹脂液をたらし落とすディップ・コート(浸漬被覆)法で、樹脂膜を形成することが提案されている。しかしながら、ディップ・コータでは、樹脂液を蓄えた液槽が複数の透光性壁部に順次樹脂液を塗布する間は定常的にその上面を開放させられていることから、空気中に存在する異物(ごみ)が液槽内に入ることは避けられない。そのため、図14に示すように、樹脂液110の液面112に浮遊する異物114が透光性壁部(基板116)の引き上げ時に同時に引き上げられることから、その内面(表面118)に異物114が付着するという問題があった。
【0005】なお、図15に模式的に示すように、通常、ディップ・コータ120には、樹脂液110中の異物114を除去する目的でフィルタ122を通る経路で樹脂液110を循環させる濾過装置124が液槽126に併設されている。樹脂液110は、上部の吸込口128から吸い込まれてフィルタ122を通る過程で異物114を除去され、ポンプ130によって排出口132から液槽126内に戻される。しかしながら、このような循環式の濾過装置124では、液面112に浮遊する異物114は吸込口128から吸い込まれ難い。そのため、ディップ・コート法においては液面112に浮遊する異物114が表面118に付着し易く最も問題となるにも拘わらず、上記のような濾過装置124ではこれを除去することができないのである。このような問題は、上述したようなメタル・バック蛍光面の製造過程におけるフィルミングの場合だけでなく、ディップ・コート法によって樹脂液や無機材料を含む液等の薬液を被膜形成面に塗布する場合にも同様に生じ得る。
【0006】本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、被膜形成体の表面に薬液膜を形成するに際して、その表面への異物の付着を抑制し得る薬液膜形成方法および薬液膜形成装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】斯かる目的を達成するため、第1発明の薬液膜形成方法の要旨とするところは、被膜形成体の表面に所定の薬液から成る膜を形成する方法であって、(a) 前記薬液が透過可能な外壁を備えた有底容器を、その薬液がその外壁を透過する経路だけを通ってその外壁で濾過されつつその内側に入るようにその薬液を蓄えた薬液槽内に入れる工程と、(b) 前記有底容器内に入った前記薬液に前記被膜形成体を浸す浸漬工程と、(c) 前記被膜形成体を前記薬液から引き上げることにより、その引上過程でその被膜形成体の表面にその薬液から成る膜を形成する引上工程とを、含むことにある。
【0008】
【第1発明の効果】このようにすれば、容器を薬液槽内に入れる工程において薬液槽内に入れられた有底容器内にはその外壁を透過して濾過されつつ薬液が入ることから、その薬液中に異物が含まれていても、その外壁を透過し得ない一定の大きさ以上の異物は容器内に入り込まない。そのため、浸漬工程においては、その容器内に入った実質的に異物を含まない薬液、すなわち、有底容器の外壁で隔離されることで異物の侵入が抑制されている領域に被膜形成体が浸されることから、引上工程において被膜形成体を薬液から引き上げる際にその表面に異物が付着し得ない。したがって、被膜形成体の表面に薬液膜を形成するに際して、その表面への異物の付着を好適に抑制できる。
【0009】
【第1発明の他の態様】ここで、好適には、前記の容器を薬液槽内に入れる工程は、外壁が所定メッシュの網状体で構成された有底容器を前記薬液槽内に入れるものである。このようにすれば、網状体の目開きを適宜設定することにより、その開口よりも大きい異物を好適に除去できる。
【0010】また、好適には、前記の薬液膜形成方法は、前記表面における許容異物量に応じて予め定められた所定周期で前記有底容器を取り替える容器取替工程を含むものである。このようにすれば、有底容器が一定の周期で取り替えられるため、薬液槽内に入れられている間にその有底容器内に混入した異物が被膜形成体の表面に付着することが一層抑制される。すなわち、有底容器内に入る薬液はその外壁によって濾過されるが、異物の透過を完全に防止することは困難である。また、有底容器の上端部が開放されている場合は定常的に、そうでない場合には被膜形成体の入れ替え時等に断続的に、有底容器内には空気中の異物が混入する。したがって、容器内の異物量は次第に増加することとなるが、有底容器を取り替えて、再び薬液が外壁を透過する経路だけを通って容器内に入るように液槽内に入れることにより、その容器内の薬液は異物量が十分に少ない初期状態に戻る。そのため、所定周期で容器を取り替えることで、被膜形成体が浸漬される容器内の異物量を少なくできるため、容易にその被膜形成体の表面に付着する異物量を許容量以下に維持することができる。なお、上記の「有底容器の取り替え」は、使用中の容器に替えて清浄な容器を薬液槽内に入れることを意味し、別の容器に取り替えることだけでなく、取り出した容器を洗浄して再度薬液槽内に入れることをも含むものである。
【0011】因みに、薬液槽内に被膜形成体を直接浸漬する場合には、前述したように循環式の濾過装置等を用いても液面に浮遊する異物を十分に除去できない。そのため、このような膜形成方法で薬液中に含まれる異物の量を被膜形成体への付着量が許容量以下となる一定値以下に保とうとすると、薬液の入れ替えや薬液槽を空にして清掃する等の大掛かりな作業が必要となる。
【0012】また、好適には、前記の薬液膜形成方法は、前記容器取替工程において前記薬液槽から取り出された前記有底容器を洗浄してその内部に混入した異物を除去する容器洗浄工程を更に含むものである。このようにすれば、容器の内面には薬液内に混入していた異物がその容器を取り替えるために薬液槽から取り出す際に付着するが、容器洗浄工程において洗浄することによって容器内に混入した異物が除去されるため、その容器を被膜形成体への薬液膜形成に繰り返し用いることができる。
【0013】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記目的を達成するための第2発明の薬液膜形成装置の要旨とするところは、被膜形成体の表面に所定の薬液から成る膜を形成するための薬液膜形成装置であって、(a) 前記薬液を蓄える薬液槽と、(b) 前記薬液が透過可能な外壁を備えた有底容器を、前記薬液槽内に蓄えられたその薬液がその外壁を透過する経路だけを通ってその外壁で濾過されつつその内側に入る槽内位置とその薬液槽外の位置との間で移動させる有底容器移動装置と、(c) 前記被膜形成体を前記有底容器内に入った前記薬液に浸される浸漬位置と前記薬液槽外の位置との間で移動させる被膜形成体移動装置とを、含むことにある。
【0014】
【第2発明の効果】このようにすれば、薬液の透過可能な有底容器は有底容器移動装置によって薬液槽内の位置と薬液槽外の位置との間で移動させられ、その槽内位置においては薬液槽内に蓄えられた薬液が外壁を透過して濾過されつつその内側に入るため、被膜形成体移動装置によって浸漬位置と槽外位置との間で移動させられる被膜形成体は、その浸漬位置において有底容器内に外壁を透過して入った薬液に浸される。そのため、薬液中に異物が含まれていても薬液はその外壁に濾過されることになるため、その外壁を透過し得ない一定の大きさ以上の異物は容器内に入り込まない。したがって、被膜形成体が浸される薬液には実質的に異物が含まれないことから、その表面に薬液膜を形成するに際して、その表面に異物が付着することが好適に抑制される。
【0015】
【第2発明の他の態様】ここで、前記の薬液膜形成装置は、好適には、(b-2) 前記有底容器移動装置が底面の反対側に位置する一面が開放された筒状容器を前記有底容器として移動させるものであり、(d) その有底容器を、前記一面が移動方向における後端に位置する向きで所定の洗浄液内で移動させ且つその向きでその洗浄液内から取り出すことによって洗浄する洗浄装置を更に含むものである。このようにすれば、被膜形成体の表面に薬液膜を形成している間にその内部に異物が入った有底容器は、開放された一面が後端に位置する向きで洗浄液内で移動させられる間に、外壁を通って容器内に入る洗浄液の流れによってその一面側からその異物が排出させられ、その一面が後端に位置する向きのまま洗浄液から取り出されることにより、容器内に入っていた異物が好適に除去される。そのため、洗浄後の有底容器を有底容器移動装置に戻して繰り返し用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】図1は、本発明の薬液膜形成方法が前面板の製造工程に適用されたFED10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、FED10は、それぞれの略平坦な一面12,14が向かいあうように互いに平行に配置され且つ同様な寸法・形状の前面板16および背面板18と、それら前面板16と背面板18との間に設けられてそれらを所定間隔を以て隔てて相互に接合することにより、気密空間20を形成するスペーサ22とを備えている。
【0018】上記の前面板16および背面板18は、例えばそれぞれ1 〜2(mm) 程度の均一な厚さを備えて透光性を有する軟化点が600(℃) 程度のソーダ・ライム・ガラスから成るものである。また、前記のスペーサ22は、例えば、前面板16および背面板18と同様な外形寸法を有する矩形枠状乃至格子状を成すものである。このスペーサ22は、例えば426合金から成る0.3(mm) 程度の一様な厚さの矩形枠状乃至格子状の素材の表面に、600(℃) 程度の軟化点の硼珪酸ガラスから成る図示しない絶縁ガラス層が 10(μm)程度の厚さに電着等によって設けられて構成されている。このため、気密空間20の高さは例えば0.3(mm) 程度である。
【0019】また、前面板16の一面12には、例えばITO(酸化インジウム錫:IndiumTin Oxide)等から成るストライプ状の複数本の透明な陽極24が、一方向に沿って並んで設けられている。それら複数本の陽極24の各々の表面には、R(赤),G(緑),B(青)の3つの発光色の何れかに対応する蛍光体層26が、例えば、その一方向と直交する方向にR,G,Bの順に繰り返し並ぶように設けられている。上記の陽極24は、例えばスパッタ等の薄膜法によって例えば1(μm)程度の厚さに形成されたものであり、シート抵抗値が 10(Ω/□) 以下程度と比較的高い導電性を備えている。また、上記の蛍光体層26は、例えば、ZnO:Zn,ZnS:Ag+In2O3等の電子線によって可視光を発する材料から構成されるものであって、例えば厚膜スクリーン印刷法等によって10〜 20(μm)程度の厚さで設けられることにより、面積抵抗率が500(Ω/cm2) 以下程度の導電性を備えている。
【0020】また、図2に前面板16の断面を拡大して示すように、一面12のうちの蛍光体層26が設けられていない残部には、例えば黒色顔料を含むガラスから成るブラック・マスク28が10〜 20(μm)程度の厚さで設けられており、それら蛍光体層26の表面およびブラック・マスク28の表面は、一面12の全面にそれら蛍光体層26およびブラック・マスク28の表面形状に倣って設けられた 100〜 200(nm)程度の厚さのアルミニウム薄膜30によって覆われている。上記のブラック・マスク28は例えば厚膜スクリーン印刷法等によって設けられたものであり、アルミニウム薄膜30は例えば蒸着等によって滑らかな表面を有して設けられたものである。したがって、本実施例においては、前面板16が透光性壁部に、一面12が略平坦なその内面にそれぞれ相当し、その一面12には蛍光体層26およびアルミニウム薄膜30から成るメタル・バック蛍光面が形成されている。このため、FED10は、背面板18側からは蛍光体層26の発光が観察され得ず、前面板16側から蛍光体層26を透過した光を観察する所謂透過型の表示装置に構成されている。
【0021】図1に戻って、前記の背面板18の一面14には、複数本のカソード電極32およびゲート電極34が互いに直交し且つ二酸化珪素(SiO2)等から成る図示しない絶縁膜によって絶縁された状態で設けられており、それらの交差部分において、ゲート電極34には複数個の電子通過孔36が設けられる一方、カソード電極32上にはその電子通過孔36に対応する部分に複数個のエミッタ(冷陰極)38が設けられている。
【0022】上記のカソード電極32は例えば、金(Au)等の導電性の高い金属から成るものであり、ゲート電極34はクロム(Cr)等から成るものである。また、エミッタ38は、例えば、モリブデン(Mo)等から成るスピント(spindt)型と呼ばれる円錐状の冷陰極であり、複数個が何れも1(μm)程度の一様な高さに形成されている。これらは何れも陽極24と同様にスパッタ等の薄膜法によって設けられている。なお、エミッタ38は、表面伝導型、MIM型、或いはMIS型等に構成されたものであってもよい。また、上記の電子通過孔36はそれぞれが直径 1〜2(μm)程度の大きさの略円形を成すものであり、例えばイオン・エッチング等でゲート電極34を部分的に除去することによって形成されている。なお、上述した図示しない絶縁膜は、エミッタ38が形成されている部分を除いたカソード電極32の略全面を覆って設けられており、ゲート電極34はその絶縁膜上に形成されている。また、ゲート電極34はエミッタ38の先端よりも前面板16側に位置させられており、ゲート電極34と前面板16上に設けられた蛍光体層26の表面との距離は例えば0.2 〜1(mm) 程度である。なお、図においては、カソード電極32およびゲート電極34の交差部分において、交点毎に4つの電子通過孔36およびエミッタ38が設けられているように描かれているが、通常は、更に多数の例えば2000個程度の電子通過孔36およびエミッタ38が交点毎に設けられている。
【0023】このため、カソード電極32およびゲート電極34にそれぞれ所定の信号電圧および走査電圧が印加されると、それらの間の大きな電圧勾配に基づいて生じる電界放出(Field Emission)によってエミッタ38から電子が放出される。この電子は、前面板16上に設けられた陽極24に所定の正電圧が印加されることにより、電子通過孔36を通ってその陽極24に向かって飛ぶ。これにより、その陽極24上に設けられている前記蛍光体層26に電子が衝突させられ、蛍光体層26が発光させられる。このとき、蛍光体層26はアルミニウム薄膜30で覆われているが、そのアルミニウム薄膜30は蒸着形成された薄膜であって極めて薄く且つ多孔質である。そのため、エミッタ38から放出され且つ陽極24に引き寄せられた電子は、そのアルミニウム薄膜30を透過して蛍光体層26に入射して蛍光体に衝突する。一方、蛍光体層26で発生した光は、前面板16側だけでなく背面板18側にも向かうが、その背面板18側に向かう光はアルミニウム薄膜30で前面板16側に反射される。したがって、発生した光の殆どが前面板16を透過して射出されることとなるため、実質的な発光効率が高められる。このFED10を全点灯させて発光状態を観察したところ、アルミニウム薄膜30のむらは見られず、また、むらに起因する輝度むらも見られなかった。なお、本実施例においては、カソード電極32とゲート電極34の交点毎に一画素が構成されている。また、FED10には、陽極24、カソード32、ゲート34等を接続するための電気配線や、後述の製造工程で説明するように気密容器を形成した後に内部から排気するための排気穴等が備えられているが、図においてはこれらを省略している。
【0024】上記のFED10は、例えば、図3に示される工程に従って製造される。図において、工程SR1乃至SR3は背面板18の処理工程であり、工程SF1乃至SF4は前面板16の処理工程である。背面板18の処理工程においては、先ず、カソード形成工程SR1において、背面板18の一面14上に例えばスパッタ法等で金等から成る導電膜を成膜してパターニングすることによりカソード電極32を形成する。続くゲート形成工程SR2においては、カソード電極32上に絶縁膜を形成した後、その絶縁膜上に同様にスパッタ法等によってクロム等から成る導電膜を成膜し、パターニングすると共にエッチングやイオン・エッチング等によってその導電膜を部分的に除去して、前記電子通過孔36を備えたゲート電極34を形成する。なお、ゲート電極のパターニングは後述のエミッタ38を形成した後に行ってもよい。そして、エミッタ形成工程SR3において、上記電子通過孔36が形成された位置においてカソード電極32上の絶縁膜を部分的に除去した後、スパッタ法等でモリブデン膜を成膜する。これにより、絶縁膜が除去された部分においてはカソード電極32上にモリブデン膜が成膜されるが、その形状は自然に円錐状を成すものとなるため、前記のような形状にエミッタ38が形成されるのである。ゲート電極34上に形成された不要のモリブデン膜はこの後で除去される。
【0025】一方、前面板16の処理工程においては、先ず、陽極形成工程SF1において、一面12にITOから成る陽極24をスパッタ等の薄膜法によって形成し、次いで、蛍光体層形成工程SF2において、RGB3色に対応する3種の蛍光体を色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって塗布して蛍光体層26を設ける。続くブラック・マスク形成工程SF3においては、蛍光体層26が設けられた位置を除く一面12の残部に、例えば厚膜スクリーン印刷法等を用いて黒色顔料を含む絶縁ガラス・ペーストを印刷して焼成処理を施すことにより、ブラック・マスク28を形成する。図4(a) 〜(f) は、この前面板16の処置工程の各段階における断面の要部を陽極24等を省略して示す図であって、同図(a) は、この状態或いはその焼成前の状態を示している。その後、アルミニウム薄膜形成工程SF4において、それら蛍光体層26およびブラック・マスク28の表面を覆うようにアルミニウム薄膜30を形成する。本実施例においては、このアルミニウム薄膜形成工程SF4が金属薄膜形成工程に対応する。
【0026】上記のアルミニウム薄膜形成工程SF4は、例えば、図5に示される工程図に従って以下のようにして実施される。図において、先ず、ウェッティング工程SF41においては、例えば、0.1(%) 程度の濃度で珪素やカリウム等の陽イオンを含む水ガラス等のアルカリ性水溶液40を一面12上の全面に塗布し、スピン・コータ等でその一面12に垂直な回転軸回りに回転させて濡れを均一化させる。図4(b) は、この状態を示している。このとき、回転数は例えば500(r.p.m.)程度、回転時間は 10(秒) 程度である。次いで、フィルミング工程SF42では、例えば粘度が5(cp) 程度で樹脂成分としてアクリル樹脂を、溶剤成分としてトルエンを含むラッカー溶液42を、一面12上がアルカリ性水溶液40で濡れているうちに、その全面に塗布する。図4(c) は、この状態を示している。
【0027】上記のラッカー溶液42の塗布は、例えば、図6、7に示されるディップ・コータ・ユニット44を用いて実施される。図6は、ディップ・コータ46と洗浄装置48とが併設されて構成されるユニット44の全体を一部を切り欠いて示す正面図であり、図7は、そのディップ・コータ46の右側面を一部を切り欠いて示す図である。前面板16にラッカー溶液42を塗布するためのディップ・コータ46は、内部空間への塵埃の侵入を防止するための透明の防塵カバー50で全体が取り囲まれたものであって、その内側には、ラッカー溶液42を蓄えた液槽52と、その液槽52内に前面板16およびフィルタ54を入れ或いはそこから引き上げるための上下移動装置56とが備えられている。液槽52は、温度調節ユニット58上に載せられており、それに蓄えられたラッカー溶液42が一定温度に保たれるようになっている。本実施例においては、液槽52が薬液槽に相当する。
【0028】上記の上下移動装置56は、鉛直方向に伸びるように立設されて支柱を兼ねる一対のガイド・レール60と、それらの間の中央位置に同様に鉛直方向に沿って伸びるように立設されたねじ軸62とを備え、その下端部近傍に液槽52に隣接して配置された駆動モータ63でそのねじ軸62を回動させることによって、一対の支持板64、66をガイド・レール60で案内しつつ鉛直方向に移動させるものである。上側に位置する一方の支持板64には、液槽52の上方に向かって水平方向に伸び且つその先端部が下方に向かって伸びる鉤型のホルダ支持部材68が取り付けられており、そのホルダ支持部材68の下端には前面板16を保持するための基板ホルダ70が備えられている。基板ホルダ70は、上端および下端に水平方向に沿って互いに平行に伸びる溝72、74をそれぞれ有するものであり、前面板16は、その面方向が鉛直方向に沿った向きで上下端が溝72、74にそれぞれ嵌め入れられた状態で保持される。基板ホルダ70は、支持板64が下端位置にあるときに液槽52内のラッカー溶液42内にその全体が浸漬されるが、支持板64が上端位置にあるときにはラッカー溶液42からその全体が出ている。そのため、基板ホルダ70に保持された前面板16は、その基板ホルダ70が液槽52内にあるときに、そのラッカー溶液42にその全体が浸漬されることとなる。本実施例においては、前面板16が被膜形成体に相当する。
【0029】一方、下側に位置する支持板66には、液槽52の上方に向かって水平方向に伸びるフィルタ支持部材76が取り付けられている。フィルタ支持部材76は、例えば、液槽52の上方に位置させられた部分の水平面内における形状が矩形枠状を成すものであり、前記のフィルタ54はその矩形枠状部分に吊り下げられている。フィルタ54は、例えば図8に一部を切り欠いた斜視図によってその全体形状を示すように、例えば線径 23(μm)程度の金属線を縦糸および横糸として#325程度に織ったステンレス製メッシュに折曲加工および接合加工を施すことにより、上端が開放された箱型容器すなわち有底の筒状容器に構成されたものである。フィルタ54は、支持板66の上端位置においては液槽52内のラッカー溶液42から完全に出た位置にあるが、その下端位置においては上端部が僅かにラッカー溶液42の液面42aよりも上側に突き出して位置し、その開口からラッカー溶液42が内側に入り込むことのないように保たれる。本実施例においては、フィルタ54が有底容器に相当する。
【0030】また、ねじ軸62および支持板64、66はボールねじを構成するが、本実施例においては、例えば上側に位置する支持板64だけがそのねじ軸62に螺合されている。下側に位置する支持板66はねじ軸62に螺合されるための雌ねじ穴をを有しておらず、そのねじ軸62に軸心方向の相対移動可能に嵌め合わされているだけである。支持板64、66間には、例えば図9に例示されるような係合鉤78および係合突起80を有する係合装置(図6、7では省略)が適宜の位置に備えられている。係合鉤78は、紙面に垂直な軸心回りに回動可能に支持板64に取り付けられており、例えば電磁石82によって図に示される位置とそれよりも左回りに回動させられた位置との間で回動させられる。そのため、その係合鉤78の先端が係合突起80に引っ掛けられた図に示される係合状態においては、ねじ軸62が回動させられると支持板66が支持板64に伴って上下に移動させられるが、係合鉤78が係合突起80から外れた非係合状態においては、支持板66はねじ軸62が回動させられても下端位置に留まる。したがって、電磁石82のオン−オフ作動だけで、基板ホルダ70がフィルタ54内に位置させられたまま一体的に移動させられる状態と、基板ホルダ70がフィルタ54に対して鉛直方向に相対移動させられる状態とが容易に切り換えられる。本実施例においては、モータ63、ねじ軸62、支持板64、66、およびフィルタ支持部材76によってフィルタ移動装置(有底容器移動装置)が構成されており、モータ63、ねじ軸62、支持板64、ホルダ支持部材68、および基板ホルダ70によって前面板移動装置(被膜形成体移動装置)が構成されている。
【0031】なお、図6、7において、84は防塵シャッタであり、後述する前面板(基板)16の基板ホルダ70への入替え時やフィルタ54の交換時等に、シャッタ・シリンダ86の作動により液槽52の開口を塞ぐ位置に移動させられる。前者の前面板16の入替え時にはフィルタ54は液槽52内にあり、防塵シャッタ84は、そのフィルタ54の上方で作動させられる。なお、図6、7は、支持板64、66を高さ方向における中間位置に留めた状態で示しており、支持板66の下端位置においてはフィルタ支持部材76が防塵シャッタ84の下側に位置する。また、基板ホルダ70およびフィルタ54を上下移動させないディップ・コータ46の休止時においては、異物混入を防ぐために、別途用意された蓋が液槽52の開口部に載せられる。
【0032】また、図6において、前記の洗浄装置48は、ディップ・コータ46によって液槽52内のラッカー溶液42内に出し入れされる前記のフィルタ54を洗浄するためのものである。洗浄装置48は、水や溶剤等の洗浄液が蓄えられた洗浄槽90と、フィルタ54の開口端とは反対側の底部を掴んで紙面に垂直な回転軸92回りに回転する洗浄アーム94と、洗浄済みのフィルタ54を保管するための保管棚96と、洗浄槽90からフィルタ54を引き上げて保管棚96に移動するためのフィルタ引上装置98とを備えている。フィルタ引上装置98の下端にはフィルタ54を掴むためのチャック100が備えられており、洗浄アーム94の保持するフィルタ54はチャック100で掴まれて保管棚96に移動させられる。
【0033】以上のように構成されたディップ・コータ・ユニット44を用いたラッカー溶液42の塗布は、例えば図10に示される各工程に従って行われる。以下、その工程の各段階における液槽52、フィルタ54および基板ホルダ70等の位置関係を模式的に示す図11を参照して塗布方法を説明する。先ず、図10の下降工程SF421においては、支持板64、66の係合状態でねじ軸62を回転させることにより、基板ホルダ70をフィルタ54と共に液槽52に向かって下降させる。このとき、基板ホルダ70はフィルタ54内にその全体が入れられている。図11(a) は、この下降中の状態を示しており、(b) は、下降終了時点を示している。
【0034】上記の下降終了時においては、基板ホルダ70はその全体がラッカー溶液42に浸漬されているが、フィルタ54はその上端部が液面42aよりも上に露出させられている。下降過程においてフィルタ54の下端がラッカー溶液42内に入ると、直ちにメッシュで構成されたフィルタ54の底部および側壁を通ってラッカー溶液42がそれによって濾過されつつその内側に入り込むが、下降終了時においてもフィルタ54の上端はラッカー溶液42から露出しているため、箱型のフィルタ54の内側にはそれによって濾過されたラッカー溶液42だけが入り、開口端から直にラッカー溶液42が入ることはない。そのため、たとえ液槽52内にごみ等の異物が混入していても、フィルタ54内には入り込まないことから、その内側には異物を含まない清浄なラッカー溶液42だけの領域が形成される。フィルタ54の目開きは、このように異物が内部に入り込まず且つラッカー溶液42は内部に入るような大きさに設定されている。本実施例においては、この下降工程SF421が容器を薬液槽内に入れる工程に対応し、フィルタ54の底部および側壁が外壁に相当する。
【0035】次いで、ホルダ上昇工程SF422においては、支持板64、66の係合を解除してねじ軸62を下降工程SF421における方向とは反対方向に回転させる。これにより、基板ホルダ70は上昇させられてラッカー溶液42内から引き上げられるが、支持板64との係合が解除された支持板66は下端位置に留まるため、フィルタ54はラッカー溶液42内に入ったままである。図11(c) は、基板ホルダ70の上昇中の状態を示している。続く基板保持工程SF423においては、支持板64が上端位置まで上昇させられることによって液槽52外に位置させられた基板ホルダ70に、ウェッティング処理を施した前面板16をその側方(図における紙面に垂直な方向)から差し入れて保持させる。図11(d) は、この状態を示している。なお、このとき、前面板16の抜き差しに伴って、その下方に位置するフィルタ54内に異物が入り得る場合には、前記の防塵シャッタ84を閉めた上で基板保持工程SF423を実施すれば良い。基板ホルダ70およびフィルタ54のラッカー溶液42への浸漬および引上げは、例えばこれらを比較的遅い10(mm/s)程度の一定速度で下降或いは上昇させて行われるため、液面42aの揺れは殆ど生じないが、このように前面板16を保持させている間に浸漬および引上げに伴うラッカー溶液42の動きが緩和され、その液面42aは一層穏やかになる。
【0036】そして、浸漬工程SF424においては、基板ホルダ70を図11(d) に矢印で示されるようにフィルタ54の内側位置で下降させて液槽52内に入れる。すなわち、フィルタ54に濾過されることにより異物を除去された清浄なラッカー溶液42内に基板ホルダ70を浸漬する。このとき、基板ホルダ70の下降速度は例えば10(mm/s)程度の比較的遅い一定速度であり、その面方向が鉛直方向に略沿った向きで滑らかにラッカー溶液42内に入れられる。基板ホルダ70は、支持板64が支持板66に当接させられる下端位置まで下降させられ、これにより、それに保持された前面板16が完全にラッカー溶液42内に浸漬されることとなる。図11(e) は、この状態を示している。このとき、前面板16が一定速度で液面42aに対して垂直な向きを保ったままラッカー溶液42内に入れられることから、液面42aの揺れは殆ど生じない。引上工程SF425においては、下降が終了してから液面42aの僅かな揺れが静まるまで待機した後、基板ホルダ70を例えば10(mm/s)程度の一定速度で上昇させる。この引上げの際にも、上昇速度が比較的低速且つ一定速度であるため、液面42aは振動せず、略平坦に保たれたままである。図11(f) は、この引上中の状態を示している。
【0037】これにより、前面板16の表面(一面12およびその裏面)にはラッカー溶液42が付着させられるが、液槽52内のラッカー溶液42内から引き上げられる過程で過剰分が液槽52内に滴り落ちて除去されるため、その粘度によって定められる薄い膜厚のラッカー溶液膜が表面に形成される。このとき、前面板16が浸漬されたフィルタ54の内側の領域ではラッカー溶液42に異物が含まれていないことから、その引上過程においても前面板16の表面には異物が何ら付着しない。しかも、前面板16の引き上げ時には液面42aが揺れず略平坦に保たれることから、その揺れに起因するラッカー溶液42の付着むらは生じない。更に、フィルミング処理はアルカリ性水溶液40によって一面12が濡れている状態で為されることから、その一面12ではそのアルカリ性水溶液40の存在によってラッカー溶液42の付着厚みが一様になる。したがって、前面板16の一面12には、異物を含まず且つ一様な厚みの滑らかなラッカー溶液膜が形成されることとなる。なお、ラッカー溶液42は、前面板16の裏面にも付着し、その裏面にはアルカリ水溶液40が塗布されていないことから付着厚みにむらが生じるが、この裏面にはアルミニウム薄膜30等を何ら膜形成しないことから、そのことは何ら問題とならない。
【0038】上記のようにして基板ホルダ70を液槽52内から引き上げた後、基板取り外し工程SF426では、前面板16を基板ホルダ70から取り外し、乾燥工程SF428において、例えば室温で自然乾燥させる。これにより、ラッカー溶液42中の溶剤成分(トルエン等)が揮発させられて厚さ5(μm)程度のアクリル樹脂等から成る樹脂膜100が形成されると同時にアルカリ性水溶液40の液分(水)が除去され、実質的に蛍光体層26およびブラック・マスク28上に直接的にその樹脂膜100が設けられる。図4(d) は、この状態を示している。前述したように前面板16は異物を含まないラッカー溶液42中に浸されることから、この樹脂膜100にはごみや異物は付着していない。なお、上記の乾燥過程で、アルカリ性水溶液40に含まれていた微量の陽イオンにより、蛍光体層26中の蛍光体粒子相互の固着強度が高められる。
【0039】図5に戻って、アルミニウム蒸着工程SF43では、上記のように樹脂膜100が設けられた前面板16の一面12上に、100 〜200(nm) 程度の厚さでアルミニウム薄膜30を蒸着する。図4(e) は、この状態を示している。この後、焼成工程SF44において、ラッカー溶液42中に含まれている樹脂の分解温度等に応じて定められる所定の処理温度で加熱処理を施すことにより、樹脂膜100が分解除去され、結果としてアルミニウム薄膜30が蛍光体層26およびブラック・マスク28上に直接位置させられる。図4(f) は、この状態を示している。このとき、アルミニウム薄膜30の下地層として形成された樹脂膜100には何ら異物が含まれていないことから、そのアルミニウム薄膜30はむらなく一様な厚みで滑らかな表面を以て形成されている。なお、前述したようにアルミニウム薄膜30は多孔質であるため、樹脂膜100の分解除去の妨げとはならない。
【0040】図3に戻って、接合工程S5においては、上記のようにしてそれぞれ処理された背面板18および前面板16を、別途用意したスペーサ22を介して一面12、14が向かい合うように積み重ね、加熱処理を施すことにより、例えばスペーサ22の上下端面等に予め塗布された鉛ガラスから成る図示しないシール・ガラス等の封着剤で気密に接合する。なお、加熱処理温度はその封着剤の種類等に応じて定められ、例えば470 〜500(℃) 程度である。この後、排気工程S6において、図示しない排気穴から排気して気密空間20内を例えば5 ×10-7(Torr)程度の真空度とすることにより、前記図1に示されるFED10が得られる。本実施例においては、このようにしてFED10の製造過程においてアルミニウム薄膜30がむらなく形成されていることから、前述のようにそれに起因する輝度むらが生じないのである。
【0041】なお、前述したように、フィルタ54内には液槽52内に蓄えられているラッカー溶液42内の異物は殆ど混入しないが、液槽52内と同様に空気中の異物は混入する。また、フィルタ54によって濾過しても異物を完全に除去するのは困難であり、フィルタ54内の異物量は徐々に増加する。したがって、ディップ・コータ46を用いたフィルミング処理においては、一面12の許容異物量に応じて、一回或いは複数回のディッピング処理毎に、フィルタ54を清浄なものに取り替え、或いはその内側の異物を例えば洗浄装置48を用いて除去する必要がある。
【0042】すなわち、前記の図10に示される基板取り外し工程SF426に続いて、フィルタ54の異物除去が不要な場合には、直ちに基板保持工程SF423に戻って次の前面板16のフィルミング処理を実施するが、異物除去が必要な場合には、フィルタ取替工程SF428において、フィルタ54を清浄な状態で保管棚96に用意されている別のフィルタ54に取り替える。この取替処理は、例えば、以下のような手順で行う。先ず、基板ホルダ70を空の状態で下端位置まで下降させ、次いで、支持板64、66を係合させた状態で上昇させることによってそれらを完全に液槽52外に出す。続いて、支持板66を適当な挟持具やねじ等を用いてガイド・レール60に固定することで、フィルタ54をその位置に保持する。そして、基板ホルダ70を更に上昇させることにより、その全体をフィルタ54外へ出す。その後、フィルタ54をフィルタ支持部材76から取り外すことにより、これを清浄なものに取り替える。取替頻度は、例えば異物混入量の経時変化を予め調べてこれに基づいて決定すればよい。このように定期的或いは不定期にフィルタ54を清浄なものに取り替えることにより、前面板16が浸漬されるラッカー溶液42を常に十分に異物量が少ない状態に維持できる。
【0043】一方、取り外された使用済みフィルタ54の洗浄は、例えば以下のようにして実施する。先ず、取り外したフィルタ54を、洗浄装置48の保管棚96上まで搬送する。次いで、そのフィルタ54を洗浄アーム94で把持する。把持位置は、例えばフィルタ54の底部近傍である。図6は、このように洗浄すべきフィルタ54を洗浄アーム94が掴んだ状態を示している。洗浄アーム94を図における右回りに回動させると、図12に模式的に示すように洗浄液102中をフィルタ54がa→b→c→dの経路で移動させられる。この移動過程で、フィルタ54内にはその移動方向の前方に位置する底面および側面を通って洗浄液102が内側に連続的に流入し、後方に位置する開放端から排出されることから、フィルタ54の内側に付着していた異物は、その洗浄液102の流れによって同時に排出される。フィルタ54は、開口部が常に後方に位置するように移動させられ且つ開口部を下向きにして洗浄液102から取り出されるため、排出された異物が再びフィルタ54内に入ることはない。そのため、このように洗浄槽90内でフィルタ54を移動させるだけで容易に異物を除去することができる。異物を除去されたフィルタ54は、フィルタ引上装置98によって保管棚96上に移動させられ、開口部が下向きになるようにそこに載置される。なお、フィルタ54の保存中は、個々に或いは全体にまとめて覆いを掛け、異物が内部に入ることを防止する。前記のフィルタ取替工程SF428では、このようにして清浄にされたフィルタ54が用いられる。すなわち、フィルタ54は、破損等によって異物除去機能が失われるまでは、何度も繰り返し用い得る。
【0044】なお、上記のような洗浄ではフィルタ54に付着しているラッカー溶液42の完全な除去が困難な場合には、それが硬化して目詰まりさせることを防止するため、溶剤中に浸漬して保存すればよい。また、異物を一層確実に除去すると共にラッカー溶液42の残留を防止するためには、洗浄前にフィルタ54の外側からエアブロー等を施しておくことが望ましい。
【0045】ここで、本実施例によれば、下降工程SF421において液槽52内に入れられたフィルタ54内にはその外壁を透過してラッカー溶液42が入ることから、そのラッカー溶液42中に異物が含まれていてもその外壁に濾過されることとなるため、その外壁を透過し得ない一定の大きさ以上の異物はフィルタ54内に入り込まない。そのため、浸漬工程SF424においては、そのフィルタ54内に入った実質的に異物を含まないラッカー溶液42、すなわち、フィルタ54の外壁で隔離されることで異物の侵入が抑制されている領域に前面板16が浸されることから、引上工程SF425において前面板16をラッカー溶液42から引き上げることによってその一面12にラッカー溶液膜が形成される際には、その一面12には異物が付着し得ない。したがって、前面板16の一面12にラッカー溶液膜を形成するに際して、その一面12への異物の付着を好適に抑制できる。
【0046】また、本実施例においては、フィルタ取替工程SF428において、フィルタ54が一定の周期で取り替えられるため、液槽52内に入れられている間にそのフィルタ54内に混入した異物が前面板16の一面12に付着することが一層抑制される。
【0047】また、本実施例においては、フィルタ取替工程SF428において液槽52から取り出されたフィルタ54は、フィルタ洗浄工程において洗浄液102内で洗浄されることにより、その内部に混入した異物が除去される。そのため、フィルタ54はその内部に混入した異物が除去されて清浄化されることから、フィルミング処理に繰り返し用いることが可能となる。
【0048】また、本実施例においては、ラッカー溶液42の透過可能なフィルタ54はフィルタ移動装置によって液槽52内の位置と液槽外の位置との間で移動させられ、その槽内位置においては液槽52内に蓄えられたラッカー溶液42が外壁を透過してその内側に入るため、前面板移動装置によって浸漬位置と槽外位置との間で移動させられる前面板16は、その浸漬位置においてフィルタ54内に外壁を透過して入ったラッカー溶液42に浸される。そのため、ラッカー溶液42中に異物が含まれていてもラッカー溶液42はその外壁に濾過されることになるため、その外壁を透過し得ない一定の大きさ以上の異物はフィルタ54内に入り込まない。したがって、前面板16が浸されるラッカー溶液42には実質的に異物が含まれないことから、その一面12に樹脂膜100を形成するに際して、その一面12に異物が付着することが好適に抑制される。
【0049】また、本実施例においては、ディップ・コータ・ユニット44には、洗浄装置48が備えられており、内部に異物が入ったフィルタ54は、開口部が後端に位置する向きで洗浄液102内で移動させられる間に、外壁を通ってフィルタ54内に入る洗浄液102の流れによってその開口部からその異物が排出させられ、その開口部が後端に位置する向きのまま洗浄液102から取り出されることにより、フィルタ54内に入っていた異物が好適に除去される。そのため、洗浄後のフィルタ54をフィルタ移動装置に戻して繰り返し用いることができる。
【0050】なお、上述した実施例においては、予め液槽52内にフィルタ54を入れ、その後、前面板16をその内側に入れていたが、フィルタ54内に前面板16を入れた状態で同時に液槽52内に入れるように装置を構成しても差し支えない。図13は、そのように構成する場合の前面板16およびフィルタ54の動きを説明する図である。図13(a) において、液槽52内にはラッカー溶液42が蓄えられており、その上方には内側に前面板16が入れられたフィルタ54が位置させられている。前面板16は、その全体がフィルタ54内に入っており、その上端はフィルタ54の開口端よりも下側に位置する。浸漬工程を兼ねるフィルタを液槽52内に入れる工程においては、そのままフィルタ54を下降させて液槽52に入れ、ラッカー溶液42に浸す。図13(b) は、下降中の状態を、図13(c)は下降終了時の状態をそれぞれ示す。この下降中にはフィルタ54と前面板16との相対位置が維持される。図に示されるように、本実施例においても、下降終了時には前面板16がラッカー溶液42内に完全に沈んでいる一方、フィルタ54はその上端部が液面42aよりも上に位置させられている。そして、液面42が静まった後、前面板16だけを静かに一定速度で引き上げることにより、前述の実施例と同様にしてその一面12にラッカー溶液膜が形成される。図13(d)は、前面板16を引き上げた状態を示す。このように、フィルタ54と前面板16は、順次にラッカー溶液42中に入れても、同時に入れてもよい。
【0051】以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施できる。
【0052】例えば、実施例においては、本発明が画像表示装置であるFED10の製造過程およびその製造過程に用いられる装置に適用された場合について説明したが、基板等の被膜形成体の表面に樹脂溶液等の薬液から成る膜を形成するものであれば、例えば、LCD等のレジスト膜形成、レジねーと(金属有機化合物)ペーストを用いたITO膜、SnO 膜、SiO2膜等の他の膜形成にも同様に適用される。なお、ITO膜およびSnO 膜は、表示装置等において透明電極を構成するものであり、SiO2膜は、被膜形成時にアルカリ成分との直接接触を避ける目的で設けられるものである。
【0053】また、実施例においては、ラッカー溶液42から前面板16を引き上げる際には、フィルタ54を液層52内に残したまま、その前面板16だけを引き上げていたが、同時にフィルタ54を引き上げることもできる。ただし、液面42aの揺れに起因する樹脂膜100の膜厚むらを発生させないためには、前面板16だけを引き上げる方が好ましい。
【0054】また、実施例においては、有底容器としてメッシュから成るフィルタ54が用いられていたが、その目開きは除去しようとする異物の大きさやラッカー溶液42の透過の容易さ等に応じて適宜設定されるものであり、また、ラッカー溶液42等の薬液を濾過しつつその内側に導き入れるものであれば、濾過機能を有する素材で構成された外壁を有する種々の有底容器が用いられ得る。なお、実施例においては有底容器がメッシュから成るフィルタ54で構成されていたことから、開口端を除くその全面がラッカー溶液42を濾過する外壁として機能させられていたが、一部の外壁だけが濾過機能を有し、他の部分は薬液も一切透過させない壁で構成されていてもよい。
【0055】また、実施例においては、フィルタ54は上端面が開放された箱状に構成されていたが、その形状は用途に応じて適宜変更される。例えば、一面を開閉可能に構成してその全面がメッシュで閉じられた空間を有するフィルタ等を用いてもよい。
【0056】また、実施例においては、フィルタ取替工程SF428においてフィルタ54を取り替えた後、洗浄装置48で洗浄処理を施していたが、異物が許容量以上になったフィルタ54を直ちに洗浄して清浄化した後、直ちに使用しても差し支えない。
【0057】また、実施例においては、アルミニウム薄膜30を形成するに際して、一時的に下地層を構成して後の工程で焼失させられる樹脂膜100を一面12に形成する場合に本発明が適用された場合について説明したが、形成された被着面にそのまま残存させられる薬液膜を形成する場合にも本発明は同様に適用される。
【0058】また、実施例においては、被膜形成体である前面板16をラッカー溶液42内に完全に沈める場合について説明したが、被膜形成体の表面の一部に薬液膜を形成する場合には、その膜形成をすべき部分だけを薬液に浸せばよく、その全体を浸す必要はない。
【0059】その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【出願人】 【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
【識別番号】599042717
【氏名又は名称】ノリタケ電子工業株式会社
【出願日】 平成11年7月9日(1999.7.9)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
【公開番号】 特開2001−17899(P2001−17899A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−196300