|
|
【発明の名称】 |
鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯 |
| 【発明者】 |
【氏名】大本 興和 【氏名】水野 武信 【氏名】米田 正司 【氏名】山崎 英二 【氏名】小西 信夫 【氏名】小野 賢太郎 |
【課題】受歯内に複数の受歯作用部を設けて交換使用すると共に、水冷構造改良とスライム防止による水冷強化で破砕部の硬度低下を防止し、耐熱耐磨耗性小片の分散効果による衝撃荷重破壊に対する抵抗性を向上させるという複合効果による鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯を提供する。
【解決手段】焼結鉱破砕用のシングルロール式熱間破砕機の受歯10であって、受歯10の上下及び左右部分に受歯作用部11、12、13、14が設けられ、受歯作用部11、12、13、14が、耐磨耗性鋳鉄19中に耐熱耐磨耗性小片20が鋳ぐるみ鑞付けされた受歯破砕部15と、受歯破砕部15を水冷する銅製の水冷フィン18が設けられた水冷室16と、水冷室16内のスライム防止用に極部電池を水冷室16内に形成する磁石17とを有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼結鉱破砕用のシングルロール式熱間破砕機の受歯であって、前記受歯の上下及び左右部分に受歯作用部が設けられ、該受歯作用部が、耐磨耗性鋳鉄中に耐熱耐磨耗性小片が鋳ぐるみ鑞付けされた受歯破砕部と、該受歯破砕部を水冷する銅製の水冷フィンが設けられた水冷室と、該水冷室内のスライム防止用に極部電池を該水冷室内に形成する磁石とを有していることを特徴とする鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯。 【請求項2】 請求項1記載の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯において、前記耐熱耐磨耗性小片の表面には、前記耐磨耗性鋳鉄と前記耐熱耐磨耗性小片との間の界面接合力を向上させる鑞付けの鑞がコーティング層として施されていることを特徴とする鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯。 【請求項3】 請求項2記載の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯において、前記受歯破砕部の前記耐熱耐磨耗性小片として、超硬合金チップとサーメットチップを使用し、該超硬合金チップと該サーメットチップを前記受歯破砕部の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、しかも前記受歯破砕部の厚さ方向に複数層設けることを特徴とする鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、焼結鉱のシングルロール式熱間破砕機の受歯の長寿命化に関する。 【0002】 【従来の技術】製鉄所で採用されている鉄鉱石の焼結による塊状化は、高炉装入原料としての強度と気孔率を鉄鉱石に保持させて、高炉中での酸素還元作用を安定化させることを目的としている。鉄鉱石の焼結過程では、鉄鉱石、コークス及び石灰石の混合原料をパレット台車上に搭載して、パレット台車を1〜5m/分の移動速度で点火炉中を移動させる間に、混合原料に点火すると同時にパレット台車の下側より吸気させて、混合原料を高温化して焼結させる方法が採られている。点火炉を通過して出てきたパレット台車は、シングルロール式熱間破砕機の上で、ガイドレールにより反転させられ、このときパレット台車上で焼結して固まった焼結鉱は、1000〜1100℃の高温のまま、シングルロール式熱間破砕機の回転歯(鬼歯)の上に落下する。 【0003】シングルロール式熱間破砕機中に落下した焼結鉱は、回転する鬼歯と受歯(固定歯)との間に挟まれて粉砕される。高炉の大型化に伴い、焼結鉱の粉砕処理量は、10000〜15000t/日と多量の粉砕が要求され、このような多量の焼結鉱の粉砕処理を可能とするためには、高温での受歯と鬼歯の損耗量を低下させることが必要となる。しかし、1000〜1100℃の高温焼結鉱の粉砕を継続して行うと、定常状態(入熱と放熱で釣り合う状態)での受歯と鬼歯の温度は、熱量計算より770℃程度となる。この温度は、金属の体力及び硬度が急激に低下するとされる温度である550℃よりはるかに高い温度であり、高温下で受歯と鬼歯の損耗量を低下させることは困難である。このため、従来より受歯と鬼歯の長寿命化を図るために、受歯と鬼歯の破砕部には耐熱、耐磨耗の溶接材料を肉盛りして破砕部を形成し、かつ、水による強制冷却で受歯と鬼歯の温度が550℃以下となるような冷却構造を採用していた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の受歯と鬼歯の長寿命化対策の成果では、鬼歯の寿命が2年であるのに対して、受歯の寿命は6カ月と非常に短期間になっている。これは、冷却水の通る冷却室にスライムが付着して冷却効果を低下させるため、6カ月毎に反転交換する必要があることから生じた、工程の予防保全処置の結果である。受歯と鬼歯は同じ冷却方式なのに、スライムの付着に差が生じるのは、受歯と鬼歯では冷却水の流れ方に違いが生じているためである。すなわち、鬼歯は回転するため、自己振動と水の一時的な脈流のため、スライムが付着しにくくなっているが、受歯は上下に振動して水は乱流となるが、固有振動であるため受歯一体で考えると水は滞留している状態と等価となり、スライムが付着し易いことになる。 【0005】このため、熱間破砕機としての機械的寿命は、受歯寿命が律速となり、定期補修を6カ月毎に実施しなければならないという問題が生じていた。また、頻繁に定期補修を行うことは、焼結鉱粉砕工程が頻繁に停止するという工程的な問題以外に、定期補修を行う作業環境が高温で粉塵が多いという悪環境のために、作業者の確保が難しく、そのため作業工賃の上昇につながるという経済的な問題も含んでいた。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、受歯内に複数の受歯作用部を設けて交換使用すると共に、水冷構造改良とスライム防止による水冷強化で受歯破砕部の硬度低下を防止し、耐熱耐磨耗性小片の分散効果による衝撃荷重破壊に対する抵抗性を向上させるという複合効果による鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】前記目的に沿う本発明に係る鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯は、焼結鉱破砕用のシングルロール式熱間破砕機の受歯であって、前記受歯の上下及び左右部分に受歯作用部が設けられ、該受歯作用部が、耐磨耗性鋳鉄中に耐熱耐磨耗性小片が鋳ぐるみ鑞付けされた受歯破砕部と、該受歯破砕部を水冷する銅製の水冷フィンが設けられた水冷室と、該水冷室内のスライム防止用に極部電池を該水冷室内に形成する磁石とを有している。受歯の上下及び左右部分に受歯作用部を設けることで、1個の受歯の使用位置を変更して、繰り返し4回使用することができる。また、銅製の水冷フィン、スライム防止により水冷効果が強化され、1000〜1100℃の高温下でも受歯破砕部の耐磨耗性鋳鉄の硬度低下が防止できると共に、耐熱耐磨耗性小片が鋳ぐるみ鑞付けされたことより耐磨耗性鋳鉄の衝撃荷重に対する破壊抵抗性を向上させることが可能となる。 【0007】本発明の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯において、前記耐熱耐磨耗性小片の表面には、前記耐磨耗性鋳鉄と前記耐熱耐磨耗性小片との間の界面接合力を向上させる鑞付けの鑞がコーティング層として施されることが好ましい。鑞材コーティング層が存在することで、耐磨耗性鋳鉄と耐熱耐磨耗性小片が鋳ぐるみ鑞付けされて、耐熱耐磨耗性小片を耐磨耗性鋳鉄中に分散させることができる。 【0008】また、本発明の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯において、前記受歯破砕部の前記耐熱耐磨耗性小片として、超硬合金チップとサーメットチップを使用し、該超硬合金チップと該サーメットチップを前記受歯破砕部の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、しかも前記受歯破砕部の厚さ方向に複数層設けることが好ましい。耐磨耗性鋳鉄中に耐熱耐磨耗性小片を鋳ぐるんだ場合、耐熱耐磨耗性小片には、耐磨耗性鋳鉄の凝固収縮により大きな圧縮応力が負荷され、耐熱耐磨耗性小片は破壊される可能性が高い。このとき、超硬合金チップとサーメットチップを受歯破砕部の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、受歯破砕部の厚さ方向にも複数層設ける構造をとると、圧縮応力に対して強い超硬合金チップが大きな圧縮応力を分担するため、圧縮応力に対して弱いサーメットチップの圧縮破壊を防止できる。このため、耐磨耗性鋳鉄の冷却速度が耐熱耐磨耗性小片の近傍と遠方とで異なり、冷却速度差に依存した複雑な組織が形成されて、耐磨耗性鋳鉄の衝撃荷重に対する破壊抵抗性が向上する。 【0009】 【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯の断面図、図2は図1のA−A矢視断面図、図3は超硬合金チップとサーメットチップを高クロム鋳鉄中に鋳ぐるむ場合の砂型の断面図、図4は水冷室内のスライム防止用磁石の配設図である。図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯(以下、受歯という)10は、鬼歯41と組み合わせて使用する焼結鉱破砕用のシングルロール式熱間破砕機の受歯であって、受歯10の上下及び左右部分に各受歯作用部11、12、13、14を有し上下、及び左右がそれぞれ対称の構造となっている。一つの受歯作用部が磨耗すると別の受歯作用部に交換して、例えば、受歯作用部11が磨耗すると上下を入れ換えて受歯作用部12を使用し、受歯作用部12が磨耗すると左右を入れ換えて受歯作用部13を使用し、受歯作用部13が磨耗すると上下を入れ換えて受歯作用部14を使用するという方法で、1個の受歯を繰り返し4回使用することが可能である。 【0010】各受歯作用部11、12、13、14は、耐磨耗性鋳鉄の一例である高クロム鋳鉄19中に耐熱耐磨耗性小片20が鋳ぐみ鑞付けされた鋳ぐるみ部21を受歯長さ方向に5個接合した受歯破砕部15と、受歯破砕部15を水冷する銅製の水冷フィンの一例である銅フィンボルト18が設けられた水冷室16と、水冷室16内のスライム防止用に極部電池を水冷室16内に形成するための磁石の一例であるネオジウム磁石17とを有している。以下、これらについて詳細に説明するが、受歯10は、図1に示すように、上下、及び左右がそれぞれ実質的に対称の構造となっているので、右側の受歯作用部11、12の部分に関して詳細に説明を行う。 【0011】受歯破砕部15を構成する鋳ぐるみ部21は、水冷フィン用の固定具の一例である内部にネジ加工が施されたSS400製のボルト22が取付けられた、例えばSS400製の受歯底板23上に高クロム鋳鉄19を鋳込んで一体化したもので、しかも、高クロム鋳鉄19の上部位には、耐熱耐磨耗性小片20が鋳ぐるまれている構造を有している。上下に配置された受歯作用部11、12の受歯破砕部15は、例えばSS400製の2枚の対向する受歯側面板24によって、その受歯底板23の両側部同士が連結されており、受歯作用部11、12の水冷室16は、それぞれの受歯底板23と2枚の受歯側面板24とによって囲まれた空間部を、2枚の受歯側面板24の中央部分間に受歯底板23に平行に設けられた例えばSS400製の中板27で仕切ることによって、中板27の上下にそれぞれ形成されている。また、各水冷室16には、2枚の受歯側面板24の間にあって、受歯底板23と実質的に平行に配置され、両端が2枚の受歯側面板24のそれぞれの表面に接合されている、SS400製の側面補強用丸棒26が取付けられている。更に、各水冷室16内には、一端が水冷室16内に突出するように各鋳ぐるみ部21のボルト22に取付けられた銅フィンボルト18と、中板27と実質的に平行に配置され、両端が受歯側面板24に固定された水冷室16内を貫通している側面冷却用銅丸棒25とが設けられている。なお、銅フィンボルト18は、ボルト22を介して、鋳ぐるみ部21の鋳込み表面近くまで達している構造となっている。 【0012】受歯10の左側端部に設けられた冷却水入口28から流入した冷却水は、受歯作用部13の水冷室16に流入し、次いで受歯作用部12の水冷室16に流入し、右側端部の冷却水止水栓30、31が取付けられている取付け板33により反転して、受歯作用部11の水冷室16に流入し、次に受歯作用部14の水冷室16に流入して、冷却水入口28の上位置に設けた冷却水出口29から排出される。受歯10の左右を入れ換えて使用する場合は、例えば、冷却水入口及び出口28、29に止水栓を取付け、冷却水止水栓30、31を取り除いて冷却水の入口、出口として使用し、冷却水の水流経路は、受歯作用部12の水冷室16から受歯作用部13の水冷室16に流入し、反転して受歯作用部14の水冷室16から受歯作用部11の水冷室16に流入して、排出される。水冷室16内のスライム防止用に極部電池を水冷室16内に形成するためのネオジウム磁石17は、各銅フィンボルト18の水冷室16内に突出した部分を中空にして、この部分に挿入しマグネット止め32により固定する。また、冷却水入口28と冷却水出口29に高度差があるため、水冷室16内に空気溜まりが生じない。このため運転途中に冷却水中に電磁弁を通して、例えば、6時間おきに、1回当たり2〜3秒間、2〜3分の間隔で、5〜6回繰り返して、圧縮空気を入れることにより、ウオーターハンマーを発生させ、このウオーターハンマーによる強振動で水冷室16内の清掃を行うことで、更に、長期運転に耐えられることになる。 【0013】続いて、本発明の一実施の形態に係る焼結鉱破砕用長寿命受歯10の製造方法について詳細に説明する。高クロム鋳鉄19中には、受歯破砕部15の硬度向上を図るために、耐熱耐磨耗性小片20を構成する超硬合金チップ、サーメットチップが鋳ぐみ鑞付けされており、超硬合金チップ、サーメットチップとしてはスローアウェイチップの回収品も使用できる。超硬合金チップ、サーメットチップを本発明の目的が達成されるように使用するには、(1)高クロム鋳鉄の鋳ぐるみ処理において、サーメットチップの破壊を防止することが必要で、更に、パレット台車上で焼結して固まった焼結鉱が、シングルロール式熱間破砕機の受歯上に落下したとき、受歯は衝撃のため、0.5〜1mm程度の撓みで、上下振動を起こすので、(2)この上下振動下でも、超硬合金チップ、サーメットチップが割れないこと、(3)上下振動を起こしても超硬合金チップ、サーメットチップが高クロム鋳鉄に強固に接着していること、も必要となる。上記の必要条件(1)〜(3)を具備させる方法について、次に説明する。 【0014】(1)高クロム鋳鉄の鋳ぐるみ処理中のサーメットチップの破壊防止金属が凝固する場合、凝固により体積が大きく減少し、続いて温度低下により発生していた熱膨張も徐々に減少してくる。このため、高クロム鋳鉄中に鋳ぐるみ鑞付けされた超硬合金チップ、サーメットチップには、高クロム鋳鉄の凝固収縮・冷却時に非常に大きな圧縮応力が発生する。このため、超硬合金チップと比較して、サーメットチップは圧縮応力下で破壊し易いため、高クロム鋳鉄の凝固冷却時にサーメットチップは大半が破壊してしまう可能性が高い。そこで、超硬合金チップ、サーメットチップを高クロム鋳鉄19中に鋳ぐるむ場合に、超硬合金チップとサーメットチップを受歯破砕部15の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、受歯破砕部15の厚さ方向にも複数層設ける構造をとると、圧縮応力に対して強い超硬合金チップが、発生した大きな圧縮応力を分担するため、圧縮応力に対して弱いサーメットチップの圧縮破壊を防止することが可能となる。 【0015】(2)受歯使用時の超硬合金チップ、サーメットチップの割れ防止超硬合金チップとサーメットチップを受歯破砕部15の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、受歯破砕部15の厚さ方向にも複数層設ける構造をとると、焼結鉱が受歯上に落下したときに生ずる衝撃荷重により発生した圧縮応力に対しても、圧縮応力に対して強い超硬合金チップが大きな圧縮応力を分担するため、圧縮応力に対して弱いサーメットチップの圧縮破壊を防止することが可能となる。 【0016】(3)超硬合金チップ、サーメットチップと高クロム鋳鉄との接着強度改善超硬合金チップの表面には、アルミナ(融点2050℃、ヴィッカース硬度2300〜2700)、TiN(融点2900〜3220℃、ヴィッカース硬度1800〜2100)、TiC(融点2900℃、ヴィッカース硬度3000)等の高融点・高硬度材質のコーティング薄膜が、CVD、PVD、又はAIP等による真空薄膜処理により形成されている。これらの表面薄膜は、超硬合金チップと高クロム鋳鉄の間の相互拡散を抑制するため、超硬合金チップと高クロム鋳鉄の間には相互拡散層に基づく強固な接合は生じないことになり、超硬合金チップを単純に鋳ぐるんだだけでは、超硬合金チップは高クロム鋳鉄の凝固収縮時の収縮応力で機械的に保持されるだけとなる。 【0017】超硬合金チップ、サーメットチップと高クロム鋳鉄19との間の結合強度(界面接合力)を向上させるためには、例えば、超硬合金チップ、サーメットチップと高クロム鋳鉄19との間で鋳込み鑞付けを行うことが好ましい。このためには、超硬合金チップ、サーメットチップの表面に鑞付け層を形成する材質を、例えばメッキ等の方法で存在させる必要がある。鑞付け層を形成する材質をメッキにより形成させる場合の一例として、無電解Ni−P鍍金を採用することができる。無電解鍍金を採用した理由は、メッキ膜厚さを超硬合金チップ、サーメットチップ表面上でどこでも均一にすることが可能となるからで、メッキ層としてNi−Pを選定したのは、400℃付近において、ヴィッカース硬度が1000程度の鋳ぐるみ鑞付け時の下地鑞付け層を形成させることができるからである。 【0018】次に、超硬合金チップ、サーメットチップを、高クロム鋳鉄19中に鋳ぐるむ場合について、更に詳しく述べる。超硬合金チップの表面に形成させている薄膜は、セラミックであるため、またサーメットチップ表面の一部はセラミックスであるため、通常の無電解Ni−P鍍金では鍍金が不可能である。そのため、次に示す前処理工程を行い、無電解Ni−P鍍金を施した。無電解Ni−P鍍金の前処理工程は、超硬合金チップ、サーメットチップ表面に対する下記の10工程からなる処理を行うことである。 1)塩化メチレン溶剤による浸漬洗浄2)塩化メチレン溶剤蒸気による浸漬3)低温の水酸化ナトリウム溶液中への浸漬によるアルカリ脱脂4)水酸化ナトリウム中での逆極処理によるアルカリ電解脱脂5)塩化パラジウム触媒処理6)通電液の中での電撃処理(波形とパルスで電圧と電流を変える)による活性化7)超硬合金チップ、サーメットチップ側を−、ニッケル側を+として、超硬合金チップ、サーメットチップ表面に電解ニッケル鍍金(ストライクニッケル鍍金) 8)90〜95℃の無電解Ni−P溶液(ニッケル91%、リン9%)中に攪拌浸漬9)冷却槽(54〜65℃水溶液)中での攪拌浸漬10)水洗以上の処理により、無電解Ni−Pを超硬合金チップ、サーメットチップ表面に、5/100〜8/100mmのコーティング層を形成する。なお、メッキ厚みは、浸漬時間により調節する。 【0019】受歯底板23の高クロム鋳鉄19が鋳込まれる面は研削し、受歯底板23に取付けられたボルト22と共に、受歯底板23の表面に無電解Ni−P鍍金を施しコーティング層を形成する。使用する高クロム鋳鉄19の化学成分は、炭素:2〜3重量%、Si:1.5〜2重量%、Mn:2〜3重量%、Cr:27〜30重量%、Mo:1〜2重量%、W:1〜2重量%、Ti:0.5〜1重量%、Ni:1〜2重量%、Fe:残部であり、400℃中でショア硬さ63〜68を保持する成分である。 【0020】無電解Ni−Pメッキした超硬合金チップ、サーメットチップを、例えばタングステン針金又はモリブデン針金等の難融点針金を用いて、受歯破砕部15の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、受歯破砕部15の厚さ方向に3層となるように受歯底板23の上に浮かし、受歯底板23、ボルト22及び受歯底板23の上にある超硬合金チップ、サーメットチップ全面にフラックスを塗布する。このフラックスは、硼酸と硼砂とフッ化物と金属硼素1〜2%を含有するもので、サーメットチップの酸化防止と、鋳ぐるみの際の湯の流動性と接合力を向上させる作用がある。フラックス塗布後、受歯底板23は砂型内に鋳込まれて、全面密閉されて、珪酸ソーダで固められる。湯口より炭酸ガスにて砂型全体を固めて、高クロム鋳鉄19の鋳込み骨となる受歯底板23と共にこの砂型を700〜800℃にて1時間焼成することにより、砂型中の水分を完全に除去し、受歯底板23の内面及び超硬合金チップ、サーメットチップに塗布したフラックスを焼き付ける。フラックスは1400℃の耐熱性があり、金属硼素は2300℃にて溶解するが、炉中700〜800℃と1時間の保持の間に、酸化されての酸化硼素に変化して硼酸ガラスを形成し、超硬合金チップ、サーメットチップの全体に強力に焼き付く。 【0021】フラックスを焼き付けた後、1400〜1450℃に溶解した高クロム鋳鉄19を流し込んだとき、超硬合金チップ、サーメットチップ表面にはフラックスが存在するため、高クロム鋳鉄19の表面張力を破り、安定して無電解Ni−Pメッキ面と接合することが可能となり、無電解Ni−Pメッキ表面に焼き付いたフラックスによって、無電解Ni−Pメッキが鑞となって超硬合金チップ、サーメットチップと高クロム鋳鉄19の間で、鋳ぐるみ鋳造熱(1400〜1450℃)により、鑞付けが施工される。このとき、高クロム鋳鉄19は、押し湯を入れると60kgの一体構造物であるため、鑞付け熱エネルギーは十分に保証される。また、フラックス中のフッ化物は鑞付け接合面の清浄作用をするため、安定した超硬合金チップ、サーメットチップの鋳ぐるみが完成する。また、使用済みの超硬合金チップでは、高融点・高硬度材質のコーティング薄膜の存在しない部分が存在するが、この部分では超硬合金チップ側よりW、Ti、Co、Cが拡散し、高クロム鋳鉄19側よりFe、Crが拡散して、W6 Cの共晶合金を形成する。この合金層は、鋳込み溶解温度1400〜1450℃では100μm程度の厚さであり、温度の差による変化は見られないことから、超硬合金チップと高クロム鋳鉄19とのあいだの鑞付け接合に及ぼす影響は小さい。 【0022】無電解Ni−Pメッキ層(コーティング層)を存在させることで、高クロム鋳鉄19とサーメットチップとの間には鑞付け接合面が形成され接合強度が向上し、サーメットチップの断熱効果が顕著となる。高クロム鋳鉄19の冷却速度がサーメットチップの近傍と遠方とで異なることにより、サーメットチップ鋳ぐるみ近辺は、高クロム鋳鉄19のマルテンサイト組織が温度差のため、デンドライト組織(樹枝状晶)と通常の網状組織の混合した組織となる。また、サーメットチップの穴部とサーメットチップ同士の断熱効果のため、高クロム鋳鉄19の冷却速度に差が出て、冷却速度差に依存した複雑な組織が形成され、一部にはショア硬度で硬度差が5〜10となる、柔らかい組織が形成される。この柔らかい組織は、クッションの役目となり、高クロム鋳鉄19の衝撃荷重に対する破壊抵抗性を向上させる働きを有する。そのため、よく磨耗する受歯破砕部15の両側近辺50mmの部分では、高クロム鋳鉄19中にサーメットチップを鋳ぐるむことで、高クロム鋳鉄19の寿命を従来の3〜4倍の長さにすることが可能となった。 【0023】次に、超硬合金チップとサーメットチップを、高クロム鋳鉄19中に鋳ぐるむ方法について、図3に基づいて詳細に説明する。なお、超硬合金チップとサーメットチップは受歯破砕部15の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置しているので、受歯長さ方向に垂直な面で示す断面図では、超硬合金チップあるいはとサーメットチップのみの面が交互に現れる。したがって、受歯長さ方向に垂直な面で示す断面図である図3では、超硬合金チップあるいはサーメットチップのいずれか一方だけが現れている。 【0024】超硬合金チップ(サーメットチップ)34は、タングステンワイヤー35により、下砂型36と受歯底板23で構成された鋳込み空間内で、受歯底板23の上空に保持されて中空に存在する。超硬合金チップ(サーメットチップ)34、タングステンワイヤー35、受歯底板23及びボルト22の全面にフラックスを塗布した後、更に、超硬合金チップ(サーメットチップ)34の位置決めを確実なものとするため、タングステンワイヤーの芯線が入ったロストワックス製棒40を、タングステンワイヤー35で保持されて配置された各超硬合金チップ(サーメットチップ)34の各穴を貫通させて、ロストワックス製棒40の一端を下砂型36内に固定する。ロストワックス製棒40を構成するロストワックスは、パラフィン系の樹脂であり、300〜400℃で消失するものである。したがって、高クロム鋳鉄19を流し込むと、その熱でロストワックス製棒40は消失し、芯線のタングステンワイヤーのみが残る。このため、高クロム鋳鉄19を流し込んだとき、各超硬合金チップ(サーメットチップ)34は、タングステンワイヤー35とロストワックス製棒40の芯線として使用したタングステンワイヤーにより保持されていることになる。 【0025】次に、上砂型37を下砂型36にかぶせて、700〜800℃で1時間空焼きして、塗布したフラックスを焼き付ける。このときボルト22に黄銅ボルト38を締めて鋳造応力による縮みを防止する。下及び上砂型36、37の空焼きが完了したら、上砂型37の湯口39より高クロム鋳鉄19を流し込む。湯口39は押し湯を兼用している。高クロム鋳鉄19と超硬合金チップ(サーメットチップ)34との間の鋳ぐるみ鑞付けが完了したら、下及び上砂型36、37を除去して、湯口39の凝固部分を切断し、黄銅ボルト38を取り、銅フィンボルト18をボルト22にネジ込む。 【0026】また、ボルト22の表面には無電解Ni−P鍍金がされているため、ボルト22と高クロム鋳鉄19の間にも鑞付けが形成されるため、高クロム鋳鉄19からボルト22への熱伝導率が向上する。このため、銅フィンボルト18による冷却効果が大きくなり、従来より100〜150℃更に温度を下げることが可能となった。このため、高クロム鋳鉄19の表面温度は350〜400℃に下がるため、1000〜1100℃と高温中でありながら、ショア硬度を60〜65に保持することが可能となった。 【0027】続いて、冷却室16のスライム防止技術について説明する。受歯10の冷却は循環水方式のため、冷却水は1次給水プールに集められ、そこからポンプアップされて、受歯10に供給される。焼結工場近辺は、炭酸カルシウム粉、鉱石粉(Fe2 O3 、SiO2 、MgO、Al2 O3 、CaCO3 、CaF)等の粉塵ダストが多く、冷却水中に混入し易い。冷却水中に混入した粉塵ダストは、冷却水沈殿プール中に発生する鉄バクテリア(嫌悪菌の一種である磁線菌等)により合体してスライムとなり、これが冷却水と共に水冷室16に流入して水冷室16の側壁に付着する。図4に示すように、銅フィンボルト18の中に4000Gの高磁力線を発生するネオジウム磁石17を互いに反磁場となるように、また隣り合う銅フィンボルト18内に装入したネオジウム磁石17との間では互いに引き合うように配列して装入する。このような、ネオジウム磁石17の配列を行うと、ネオジウム磁石17の反磁場と循環磁場の作用により、確実にフレミングの左手の法則で回転磁場が生まれて、水冷室16がマイナスとなり、銅フィンボルト18がプラスとなり、水冷室16の壁に沿って電流が流れて、スライムが付着しにくくなる(ガルバニー電池作用)。 【0028】また、銅フィンボルト18(プラス)と水冷室16(マイナス)の間に発生する微弱電流により、鉄イオンが循環水中に溶け込んだ溶解酸素と結合して、赤錆となり(Fe2 O3 )、次いで冷却水中の水酸基イオンと結合して黒錆(Fe3 O4 )となることで、鉄の腐食が停止する効果も生ずる。この効果により、スライムや水垢の付着力が弱まって、銅フィンボルト18中のネオジウム磁石17の配列と磁場に引かれて水流に沿って流れるため、付着し難くなる。 【0029】更に、水分子は磁力線によって活性化するため、CaO、MgO、SiO、FeO、Fe2 O3 、Al2 O3 、Na2 O、K2 O等の酸化物に対して再結合するが、各酸化物はイオン化しているため、電気的な引力と反発力とにより振動エネルギーが発生して、自己振動する。自己振動により、分子結合が大きく成長すると、表面張力のため形状が丸くなり、水冷室16側壁に付着しにくくなる。以上のような、ガルバニー電池作用を主体に、派生的に生じる鉄の腐食停止効果及び磁力線による水分子の活性化の効果により、受歯破砕部15の長寿命化にともなう使用時間の増加に対しても、水冷室16の側壁へのスライム防止が可能となる。 【0030】以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の適用は焼結鉱破砕用受歯に限定されるものではない。本発明では、超硬合金チップとサーメットチップ等の耐熱耐磨耗性小片を、接合界面部に強固な鑞付け接合層が形成される鋳ぐるみ鑞付け法により耐磨耗性鋳鉄中に分散させているので、従来の耐熱耐磨耗性小片が鋳造応力(圧縮応力)による機械的な結合力だけで耐磨耗性鋳鉄中に分散している場合とは異なり、繰り返し衝撃、振動が負荷されても、耐熱耐磨耗性小片と耐磨耗性鋳鉄との間に緩みが生じて接合強度が低下することはない。従って、セメントのクリンカーハンマー、電力会社の石炭粉砕機のミルローラー、ジョークラッシャー、焼結鉱2次粉砕のダブルロール式歯、コークス粉砕カッター刃、粉鉱用バドルミキサー羽根、ゴミ焼却場大型ハンマー、攪拌機磨耗羽根刃、各種の磨耗防止ライナー、加熱炉ボタンビット、加熱炉シュート等と広く応用が可能である。 【0031】 【発明の効果】請求項1〜3記載の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯においては、焼結鉱破砕用のシングルロール式熱間破砕機の受歯であって、受歯の上下及び左右部分に受歯作用部が設けられ、受歯作用部が、耐磨耗性鋳鉄中に耐熱耐磨耗性小片が鋳ぐるみ鑞付けされた受歯破砕部と、受歯破砕部を水冷する銅製の水冷フィンが設けられた水冷室と、水冷室内のスライム防止用に極部電池を水冷室内に形成する磁石とを有しているので、水冷効果の強化が図られて、耐磨耗性鋳鉄の硬度低下が防止でき、受歯の長寿命化が可能とる。更に、長寿命化しても冷却室内にスライムが付着しないため、1回/年の頻度でスライム付着の点検を行うだけで済むため、定期補修回数の減少から経費の節約が可能となる。 【0032】また、銅製の水冷フィンは、極部電池を形成した際に正極となるため、一部銅イオンが溶け出す。溶出した銅イオンは、殺菌効果を有するため、バクテリアの成長を止める働きが加わり、スライム付着を防止することになる。更に、大がかりの設備を必要とすることなく、自己磁界振動による洗浄作用を発生させることができるため、スライムの付着防止に寄与する。受歯作用部を4面設けることにより水冷室の大型化が可能となり、側面の硬化部の肉盛りも薄くすることができるので、全体の重量を約20%下げ、軽量化できる。このことと、スライムの付着防止の効果により、受歯作用部が上下交換、反転交換できるという構造上の利点が最大限に生かせ、交換も半日で可能なため、少ない要員での補修が可能となった。 【0033】請求項2記載の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯においては、耐熱耐磨耗性小片の表面には、耐磨耗性鋳鉄と耐熱耐磨耗性小片との間の界面接合力を向上させる鑞付けの鑞がコーティング層として施されているので、耐磨耗性鋳鉄と耐熱耐磨耗性小片の界面接合力を強固にして、耐熱耐磨耗性小片を耐磨耗性鋳鉄中に分散効果させることができ、耐熱耐磨耗性小片の分散効果で、受歯破砕部の硬度向上が図れ、受歯の長寿命化を可能にすることができる。 【0034】請求項3記載の鋳ぐるみ鑞付け法による焼結鉱破砕用長寿命受歯においては、受歯破砕部の耐熱耐磨耗性小片として、超硬合金チップとサーメットチップを使用し、超硬合金チップとサーメットチップを受歯破砕部の受歯長さ方向全体にわたって交互に配置し、しかも受歯破砕部の厚さ方向に複数層設けているので、サーメットチップの圧縮破壊を防止して、サーメットチップを耐磨耗性鋳鉄中に分散効果させることができ、サーメットチップの断熱効果により、冷却速度差に依存した複雑な組織の形成が可能となり、耐磨耗性鋳鉄の衝撃荷重に対する破壊抵抗性が向上し、受歯の長寿命化を可能にすることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004581 【氏名又は名称】日新製鋼株式会社 【識別番号】591056569 【氏名又は名称】ナイス株式会社 【識別番号】599079470 【氏名又は名称】株式会社小西鋳造 【識別番号】599139659 【氏名又は名称】株式会社東洋硬化
|
| 【出願日】 |
平成11年10月1日(1999.10.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090697 【弁理士】 【氏名又は名称】中前 富士男
|
| 【公開番号】 |
特開2001−96182(P2001−96182A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月10日(2001.4.10) |
| 【出願番号】 |
特願平11−281619 |
|