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【発明の名称】 複合微生物系によるダイオキシン分解方法およびダイオキシン処理剤
【発明者】 【氏名】佐藤 輝

【氏名】渡邉 恒雄

【氏名】近藤 隆一郎

【氏名】坂井 克己

【氏名】渡辺 吉雄

【氏名】倉根 隆一郎

【要約】 【課題】微生物の複合系を用いるダイオキシン分解方法およびダイオキシン処理剤を提供する。

【解決手段】白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを用いてダイオキシンを処理することを特徴とするダイオキシン分解方法、ダイオキシン処理剤、およびダイオキシン分解性微生物の活性を増強する糸状菌。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを用いてダイオキシンを処理することを特徴とするダイオキシン分解方法。
【請求項2】 ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、ペリコニア(Periconia)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニグロスポラ(Nigrospora)属またはフザリウム(Fusarium)属に属する菌である請求項1記載のダイオキシン分解方法。
【請求項3】 ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)またはフザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)である請求項1または2記載のダイオキシン分解方法。
【請求項4】 培養ろ液のダイオキシン類の吸着能を指標に選抜されたダイオキシン分解性を増強する糸状菌を使用する請求項1記載のダイオキシン分解方法。
【請求項5】 ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ(Torula)属またはスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌である請求項1または4記載のダイオキシン分解方法。
【請求項6】 前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、または糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)である請求項1記載のダイオキシン分解方法。
【請求項7】 白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを含むことを特徴とするダイオキシン処理剤。
【請求項8】 ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、ペリコニア(Periconia)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニグロスポラ(Nigrospora)属またはフザリウム(Fusarium)属に属する菌である請求項7記載のダイオキシン処理剤。
【請求項9】 ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)またはフザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)である請求項8記載のダイオキシン処理剤。
【請求項10】 培養ろ液のダイオキシン類の吸着能を指標に選抜されたダイオキシン分解性を増強する糸状菌を使用する請求項7記載のダイオキシン処理剤。
【請求項11】 ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ(Torula)属またはスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌である請求項7または10記載のダイオキシン処理剤。
【請求項12】 前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、または糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)である請求項11記載のダイオキシン処理剤。
【請求項13】 トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)および糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)からなる群より選ばれるダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合微生物系によるダイオキシンの分解方法およびダイオキシン処理剤に関する。さらに詳しく言えば、白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを併用するダイオキシンの分解方法、ダイオキシン処理剤およびダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】酸素で架橋された2個のベンゼン核の1乃至8個の水素が塩素により置換されたクロロジベンゾジオキシンには75個の異性体が存在する。これらは毒性が高く、例えば人体に対しては、皮膚の色素沈着、脱毛、多毛、肝機能異常などを引き起こすことが知られ、環境汚染との関わりでダイオキシンと呼ばれている。中でも2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシンは最も毒性が高く、この化合物自体をダイオキシンと呼ぶ場合もあるが、本発明は前記クロロジベンゾジオキシン類を分解の対象とする。
【0003】ダイオキシン類は、近年、ごみ焼却施設の焼却灰や集塵灰からも検出されており、焼却によりダイオキシン類を生ずる可能性のある物質の使用を規制する等の対策が採られつつあるが、一旦生成したダイオキシン類についてはこれをいち早く分解して無毒化する必要がある。
【0004】ダイオキシンを分解する方法としては、従来、Pseudomonas等の細菌を用いた方法(例えば、中宮邦近ら、第10回廃棄物学会研究発表会講演論文集、p.880,1999)や白色腐朽菌を用いた方法(例えば、近藤隆一郎ら、第10回廃棄物学会研究発表会講演論文集、p.877,1999)等の微生物学的な方法が報告されているが、ダイオキシン分解活性は十分満足できるものではない。本発明の課題は、ダイオキシンを効率よく分解出来る微生物系を見出し、微生物を利用したダイオキシンの分解方法及び分解処理剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ダイオキシン分解活性を有する微生物に着目し、これら微生物を用いたダイオキシンの分解能を向上させるべく鋭意検討を行なった。その結果、ダイオキシン分解性微生物としての白色腐朽菌と併用したときにそのダイオキシン分解活性を増強させる糸状菌が存在することを見出した。ダイオキシン分解性の微生物としては白色腐朽菌以外にも糸状菌類等があることを本出願人は報告しており(特願2000-058915)、ダイオキシン分解活性を増強させる糸状菌は、ダイオキシン分解性の白色腐朽菌以外の糸状菌等の分解活性をも増強することが期待される。
【0006】以上の知見に基づいて本発明は、以下の複合微生物系によるダイオキシン分解方法、ダイオキシン処理剤および他の微生物の分解活性を増強する新規な糸状菌を提供するものである。
【0007】1.白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを用いてダイオキシンを処理することを特徴とするダイオキシン分解方法。
2.ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、ペリコニア(Periconia)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニグロスポラ(Nigrospora)属またはフザリウム(Fusarium)属に属する菌である前記1記載のダイオキシン分解方法。
3.ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)またはフザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)である前記1または2記載のダイオキシン分解方法。
4.培養ろ液のダイオキシン類の吸着能を指標に選抜されたダイオキシン分解性を増強する糸状菌を使用する前記1記載のダイオキシン分解方法。
5.ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ(Torula)属またはスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌である前記1または4記載のダイオキシン分解方法。
6.前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、または糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)である前記1記載のダイオキシン分解方法。
7.白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物と、前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを含むことを特徴とするダイオキシン処理剤。
8.ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、ペリコニア(Periconia)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニグロスポラ(Nigrospora)属またはフザリウム(Fusarium)属に属する菌である前記7記載のダイオキシン処理剤。
9.ダイオキシン分解性微生物が、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)またはフザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)である前記8記載のダイオキシン処理剤。
10.培養ろ液のダイオキシン類の吸着能を指標に選抜されたダイオキシン分解性を増強する糸状菌を使用する前記7記載のダイオキシン処理剤。
11.ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ(Torula)属またはスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌である前記7または10記載のダイオキシン処理剤。
12.前記ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌が、トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、または糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)である前記11記載のダイオキシン処理剤。
13.トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)および糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)からなる群より選ばれるダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌。
【0008】以下、本発明について詳述する。
(1)ダイオキシン分解性微生物本発明のダイオキシン分解方法で使用するダイオキシン分解性微生物は、ダイオキシン分解活性を有するものであれば良く、特に限定されるものではないが、具体例として、白色腐朽菌類および糸状菌類が挙げられる。白色腐朽菌類としては、例えばファネロカエテ(Phanerochaete)属等に属する菌類が挙げられ、糸状菌類としては、例えばペリコニア(Periconia)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニグロスポラ(Nigrospora)属またはフザリウム(Fusarium)属等に属する菌類が挙げられる。
【0009】好ましくは、白色腐朽菌の一種であるファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)である。ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株(ATCC 90872)は、九州大学林産学科木材化学研究室により屋久島(Yakushima)で採取され単離された一連の菌株の一つであり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手可能である(寄託番号:ATCC 90872)。
【0010】また、本発明者らが土壌より分離した糸状菌の一種であるフザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)も使用可能である。フザリウム・エスピー(Fusarium sp.)No.f6099株(FERM P-17746)は、本発明者らによって、平成12年2月25日付で経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託されている。本発明ではこれらの菌を1種を単独で、または2種以上同時に用いることができる。
【0011】(2)ダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌本発明者らは、ダイオキシン分解活性を有する微生物と、それ自体ではダイオキシン分解活性を有しないか、その活性が非常に弱い糸状菌とを同時に用いる複合系について、ダイオキシンモデル化合物である2,7−ジクロロジベンゾジオキシンの分解活性を測定した。その結果、ダイオキシン分解活性を有する微生物を単独で用いた場合よりも強い分解活性を示す特定の系が存在することを見出した。
【0012】本発明者らは、特に分解活性増強作用の強い3株(No.00-290株、No.00-297株およびNo.99-389株)について、後述の実施例2に示すようにトルラ(Torula)、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)等に属する糸状菌類であることを確認した。
【0013】ダイオキシン分解性の糸状菌類等の微生物と、それ自体では活性がないか、活性の弱い特定の糸状菌との複合系によりダイオキシン分解能が向上することは、本発明者らが今回初めて見出したことである。本発明で使用するダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌は、白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌類であればよく、特に限定されない。
【0014】例えば、トルラ(Torula)、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)、ペニシリウム(Penicillium)、ディプロディア(Diplodia)、フザリウム(Fusarium)またはパエシロマイセス(Paecilomyces)等に属する菌が挙げられる。好ましくは、トルラ(Torula)属またはスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌であり、トルラ(Torula)属に属する菌としてトルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する菌としてスタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、または糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)などが挙げられる。
【0015】本発明者らは、上記3種類の菌株をそれぞれトルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERM P-18232)、糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)と命名して、平成13年2月23日付で経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託している。
【0016】本発明で使用するダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌を選抜する方法としては、その培養ろ液がダイオキシンモデル化合物としての2,7−ジクロロジベンゾジオキシン(以下、2,7−DCDDと略記する。)を吸着する能力を指標として行なうことができる。ダイオキシン類が前記培養ろ液中の成分に吸着されることによりその分解率が向上する理由は明らかではないが、本来は疎水性であるダイオキシン類が吸着により親水性となり、ダイオキシン分解性微生物による微生物分解を受けやすくなることによるものと考えられる。以上のことから、優れた分解増強効果を示す糸状菌は、吸着能を指標とする方法によって粗選抜した後、選抜された糸状菌とダイオキシン分解性微生物とを用いてダイオキシン分解活性を測定する方法により、容易に選抜することが可能である。
【0017】(2)培養条件本発明においては、白色腐朽菌類や糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物とダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを好気的または嫌気的条件、好ましくは好気的条件下で培養し増殖することができる。好気培養は、通常の中温菌の培養に準じ、静置培養でも振盪培養でも良い。培養液のpHは2〜8、好ましくは5〜8である。
【0018】培養温度は10〜40℃、好ましくは20〜30℃である。培養を継続する時間は、目的とするダイオキシン含有物質中のダイオキシンを分解するのに十分な時間であればよく、通常は1〜20日間、好ましくは2週間程度である。嫌気培養は、上記の好気培養に準じるが、静置培養を行なう。培地は、通常の微生物、好ましくは白色腐朽菌や糸状菌の培養に用いるものであれば特に制限されない。例えば、ポテト澱粉−デキストロース培地、コーンミール培地、オートミール培地または後述のKirk基本培地等を用いてもよい。好ましくは、Kirk基本培地である。
【0019】培地には、セルロースやリグニン等の木質性成分等を添加することができる。さらに必要に応じて各種の炭素源あるいは窒素源を添加することができる。炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、サッカロース、上白糖、黒糖、糖蜜、廃糖蜜、マルツエキス等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、グルテンミール、大豆粉、乾燥酵母、酵母エキス、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム塩、尿素等が挙げられる。その他、必要に応じて、ナトリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、カルシウム塩、リン酸塩、亜鉛塩等の無機塩類や、イノシトール、ビタミンB1塩酸塩、L−アスパラギン、ビオチン等のビタミン類を添加してもよい。
【0020】(3)ダイオキシン分解方法本発明のダイオキシン分解方法は、上記の白色腐朽菌類および糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物とダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌とを複合した培養物またはその処理物でダイオキシンを処理することにより行なわれる。例えば、上記の培養液にダイオキシン含有物質を添加するか、逆にダイオキシン含有物質に上記の培養液またはその抽出成分を添加して処理する。
【0021】反応は、バッチ法、連続法、半連続法等のいずれでも行なうことができる。また、ダイオキシン分解活性を有する白色腐朽菌または糸状菌とダイオキシン分解活性を増強する糸状菌とを含有するものであれば、他のダイオキシン分解菌と共に用いてもよい。培養液にダイオキシン含有物質を添加して処理する場合は、上述の培養条件に準じて行なうことが出来る。
【0022】(4)ダイオキシン処理剤本発明によるダイオキシン処理剤は、前記した白色腐朽菌類または糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物とダイオキシン分解性微生物の分解活性を増強する糸状菌を含むものであり、液状であると固形化物であるとを問わない。すなわち、上記のダイオキシン分解活性菌と分解活性増強菌とを有する培養液自体をダイオキシン処理剤として用いることができる。また培養液を乾燥し製造助剤を加えて固形剤としたものを、処理するダイオキシン含有物質自体に、または処理媒体中に添加して使用することもできる。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0024】実施例1:ダイオキシン分解活性増強糸状菌の単離(1)菌の採取と培養日本全国の土壌、腐朽材、植物遺体サンプルより微生物を採取した菌株(供試菌数800以上)を、滅菌したKirk基本培地(Tien, M. and T. K. Kirk (1988) Lignin peroxidase of Phanerochaete chrysosporium. Methods Enzymol.,161, 238-249)50mlに接種し、暗所25℃で1週間、静置培養し、培養液をガラスフィルターで濾過した。
【0025】(2)ダイオキシン吸着能を有する糸状菌の選抜ダイオキシンモデル化合物として2,7−DCDDを使用し、これを前記ろ液5mlに20μMとなるように添加し、暗所25℃で2日間、静置した。2,7−DCDDをn−ヘキサン5mlで3回抽出し、減圧・濃縮後、GC−MSで定量した。このときn−ヘキサンで回収できなかった2,7−DCDD量を吸着量とした。その結果、供試菌数800以上の糸状菌の中で、16株の培養液に15〜25%の2,7−DCDD吸着率が認められた。
【0026】(3)ダイオキシン分解活性増強糸状菌の選抜2,7−DCDD吸着率の高かった前記16株の培養ろ液(2.5ml)を、白色腐朽菌ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株が蔓延したKirk培地(2.5ml)に添加した。これに2,7−DCDDが10μMの濃度となるように添加し、30℃で3週間、静置した後、2,7−DCDD減少率を測定した。2,7−DCDD減少率の測定は、菌体に吸着されている未分解の2,7−DCDDをも回収測定するために、n−ヘキサンで抽出処理する直前に濃硫酸5mlを添加して行なった(Takada, S., M. Nakamura, T. Matsueda, R. Kondo andK. Sakai (1996), Degradation of polychlorinated dibenzo-p-dioxins and polychlorinated dibenzofurans by the white rot fungus Phanerochaete sordida YK-624, Appl. Environ. Microbiol., 62, 4323-4328)。なお、YK-624株のダイオキシン分解能を発現させるために、酸素供給とグルコース添加(最終濃度1%)を3週間に4回行なった。対照として、糸状菌の培養ろ液を用いずにYK-624株のみで処理したものを使用した。その結果、複合することによってファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)YK-624株単独でのダイオキシン分解活性よりも特に優れた分解活性を示した糸状菌3株、すなわち、No.00-290株、No.00-297株およびNo.99-389株を選抜した。
【0027】ダイオキシン分解活性の結果(2,7−DCDD回収率)を表1に示す。糸状菌の培養ろ液を用いずにYK-624株のみにて処理したもの、およびYK-624株をオートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した後、各菌株の培養ろ液を添加したものについて、同様に測定した結果も併せて表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】表1から明らかなように、YK-624株単独の場合のダイオキシンの分解率は15%であり、糸状菌培養ろ液単独の場合はダイオキシンを全く分解しないが、これらを複合使用することによりダイオキシン分解率が25〜31%と約2倍程度に向上している。このことから、これら糸状菌培養ろ液はそれ自身がダイオキシンの分解に寄与するものではないが、ダイオキシン分解活性を有する微生物と組み合わせて使用することにより、ダイオキシン分解活性が大きく向上することがわかる。
【0030】実施例2:ダイオキシン分解活性増強糸状菌の形態実施例1で強い分解増強効果を示したNo.00-290株、No.00-297株およびNo.99-389株について性状を調べ、以下の結果を得た。
【0031】(1) No.00-290株:本菌株は小笠原母島の乳房山の土壌から爪楊枝捕捉法により採取したものである。この菌株のPDA培地上での培養菌叢は、黒色、気中菌糸を欠きビロード状、均一でわずかに放射状を呈する。裏面は黒色である。はっきりした分生子柄を欠き、菌糸の側壁または先端に出芽型の分生胞子を連鎖、単純または分岐する。分生胞子は無色、淡褐色または暗褐色、楕円形または亜球形で、長さ8〜15μm、幅6〜8μmである。従って、本菌株はトルラ(Torula)に属する糸状菌であると同定された。
【0032】(2) No.00-297株:本菌株は、小笠原母島の南岬の土壌から爪楊枝捕捉法により採取したものである。この本菌株のPDA培地上での培養菌叢は、淡黄褐色、ビロード状、均一でわずかに気中菌糸が全体を覆う。分生子柄は未発達で、アレウロ型胞子をフミコーラ(Humicola)状に形成する。胞子は淡褐色、単細胞、亜球形または卵形、ときには2〜3個を連鎖する。従って、本菌株はスタフィロトリクム(Staphylotrichum )に属する糸状菌であると同定された。
【0033】(3) No.99-389株:本菌株は、塩尻市片丘で採取したコウヤクタケ科の担子菌組織から分離したものである。この菌株のPDA培地上での培養菌叢は、白色、気中菌糸を欠きビロード状、均一で中央部がもりあがり2〜3個の欠刻が入っている。周辺部は淡黄褐色であり、裏面は淡黄褐色である。なお、本菌株は胞子が形成されなかったので属種の同定はできなかった。
【0034】これら菌株は、トルラ・エスピー(Torula sp.)No.00-290株(FERM P-18231)、スタフィロトリクム・エスピー(Staphylotrichum sp.)No.00-297株(FERMP-18232)、および糸状菌No.99-389株(Strain No.99-389)(FERM P-18230)として経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0035】
【発明の効果】本発明は、白色腐朽菌類または糸状菌類から選抜されるダイオキシン分解性微生物とダイオキシン分解活性を増強する糸状菌とを複合した培養物またはその処理物を用いてダイオキシンを分解するダイオキシンの分解方法およびダイオキシン処理剤を提供したものである。特に本発明者らが見出したダイオキシン分解性増強糸状菌は、ダイオキシン分解性微生物の分解活性を大幅に増強する効果を有し、本菌株とダイオキシン分解性微生物とを複合して用いることによりダイオキシンを効果的に分解することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000001915
【氏名又は名称】メルシャン株式会社
【識別番号】597031070
【氏名又は名称】財団法人 バイオインダストリー協会
【識別番号】301000011
【氏名又は名称】経済産業省産業技術総合研究所長
【出願日】 平成13年3月1日(2001.3.1)
【代理人】 【識別番号】100081086
【弁理士】
【氏名又は名称】大家 邦久 (外1名)
【公開番号】 特開2001−314526(P2001−314526A)
【公開日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願番号】 特願2001−56232(P2001−56232)