| 【発明の名称】 |
白血球選択除去フィルター材の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】福田 達也
【氏名】稲摩 徳生
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| 【要約】 |
【課題】赤血球、血小板、血漿成分及び白血球を含む全血製剤から、赤血球、血小板及び血漿成分の損失を極めて少なく抑えつつ、白血球を選択的に、かつ効率よく除去するため白血球除去フィルター材の製造方法の提供。
【解決手段】表面に非イオン性親水基と塩基性官能基を有するフィルター材を20℃以上120℃未満の水溶液で処理することを特徴とする白血球選択除去フィルター材の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】表面に非イオン性親水基と塩基性官能基とを有するフィルター材を20℃以上120℃未満の水溶液で処理することを特徴とする白血球選択除去フィルター材の製造方法。 【請求項2】請求項1記載の方法で製造された白血球選択除去フィルター材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、血液に代表される細胞浮遊液から白血球を選択的に除去する白血球選択除去フィルター材の製造方法、及び該方法によって製造された白血球選択除去フィルター材に関する。特に、赤血球、血小板、血漿成分及び白血球を含む全血製剤から、赤血球、血小板及び血漿成分の損失を極めて少なく抑えつつ、白血球を選択的に、かつ効率よく除去するための白血球選択除去フィルター材の製造方法及び該方法によって製造されたフィルター材に関する。 【0002】 【従来の技術】近年の輸血医学の進歩により、受血者が必要とする成分のみを輸血する、いわゆる成分輸血が一般的に行われている。成分輸血には、受血者が必要とする血液成分の種類により、赤血球輸血、血小板輸血、血漿輪血などがあり、これらの輸血に用いられる血液成分製剤には、濃厚赤血球製剤、濃厚血小板製剤、血漿製剤などがある。また、血液製剤中に含まれている混入白血球を除去してから血液製剤を輸血する、いわゆる白血球除去輸血が普及してきている。これは、輸血に伴う頭痛、吐き気、悪寒、非溶血性発熱反応、アロ抗原感作、ウィルス感染、輸血後GVHDなどの副作用が、主として輸血に用いられた血液製剤中に混入している白血球が原因で引き起こされることが明らかにされたためである。 【0003】血液製剤から白血球を除去する方法として、繊維素材や連続気孔を有する多孔質体などのろ材を用いて白血球を除去するフィルター法がある。フィルター法は、白血球除去能に優れ、操作が簡便であり、またコストが安いことなどの利点を有するため現在最も普及した方法となっている。 【0004】白血球除去フィルターの中でも、血小板を通過させ、白血球のみを選択的に除去するフィルター材が、WO87/05812号、特開平1−249063号公報に開示されている。WO87/05812号には、非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基を有するポリマーを溶解した溶液中に不織布を浸し、乾燥空気で乾燥させる方法が記載されており、特開平1−249063号では、(メタ)アクリル酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを放射線グラフト法により、不織布の表面に導入する方法が記載されている。上述した方法によって製造されたフィルター材は、フィルター材表面への血小板の粘着を抑制する効果を有しているが、高価な血小板のロスをさらに低減させるフィルター材の開発が強く望まれていた。 【0005】また、特開2000−51346号公報には、血液凝固の抑制、血栓の形成抑制、補体活性化抑制などの血液適合性を付与した塩化ビニルチューブや血液バッグ等の医療用高分子材料を製造する方法が開示されている。この方法は、ヘパリン等の血液適合性材料を塩化ビニルチューブ等の高分子材料に塗布した後、20℃から135℃の温度範囲で洗浄する方法である。特開2000−51346号公報における洗浄の目的は、高分子材料やこれに含まれている溶出性添加剤によって血液適合性材料を塗布した高分子材料の表面が覆われないようにすることであり、血小板を通過させ、白血球のみを除去するという白血球選択除去の選択性を向上させる目的でははなく、かかる効果を示唆するような記載も全くない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、血液に代表される細胞浮遊液から白血球のみを選択的に除去する白血球選択除去フィルター材の製造方法及びその方法によって製造されたフィルター材を提供することにある。特に、赤血球、血小板、血漿成分及び白血球を含む全血製剤から、赤血球、血小板及び血漿成分の損失を極めて少なく抑えつつ、白血球を選択的に、かつ効率よく除去するための白血球選択除去フィルター材の製造方法及びその方法によって製造されたフィルター材を提供することにある。本発明はまた、溶出物が少ない、安全性に優れた白血球選択除去フィルター材の製造方法及びその方法によって製造されたフィルター材を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、表面に非イオン性親水基と塩基性官能基とを有するフィルター材を20℃以上120℃未満の水溶液で処理することで、かかる課題が解決できることを見出した。本発明者らは、上述した、極めて簡便な水溶液処理を施すことのみによって、驚くべきことに良好な白血球除去能を維持しつつ、血小板通過率を格段に向上させることに成功し、本発明を完成するに至ったものである。 【0008】即ち、本発明は適切な温度の水溶液の中に、非イオン性親水基と塩基性官能基を表面に有するフィルター材を浸漬する工程を経て製造することを特徴とする白血球選択除去フィルター材の製造方法、及びかかる方法によって製造された白血球選択除去フィルター材に関するものである。 【0009】水溶液処理による血小板通過率向上の詳細メカニズムは不明であるが、フィルター材表面の分子配向の変化や、ポリマーコーティングでフィルター材表面を改質した場合には、ポリマーによる基材の被覆率向上が考えられる。分子配向説を支持する実験事実として、例えば、非イオン性親水基を有する2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略する)と塩基性官能基を有するジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、DMと略する)からなるランダムコポリマー(以下、HM−3と略す。ポリマー中のDM含量は3モル%)でコーティングした不織布に、表面張力が90dyn/cmの水酸化ナトリウム水溶液を滴下すると、その液体の湿潤時間は約3分であったのに対し、水溶液処理を施した後に同様の操作を行うと、わずか30秒で湿潤したことが挙げられる。 【0010】また、基材としてポリエチレンテレフタレート製不織布を用い、これに上述のHM−3でコーティングしたフィルター材についてTOF−SIMS(Timeof Flight Secondary Ion Mass Spectroscopy)測定を行ったところ、水溶液処理していない場合には、基材不織布由来のフラグメントイオンのピーク(質量(m)と電荷(z)の比(m/z)=104)が観測されたのに対し、水溶液処理した場合には、基材不織布由来のフラグメントイオンのピークが観測されなかった。このことは、水溶液処理によって、ポリマーの被覆率向上の可能性を示唆していると考えられる。このようなフィルター材表面の分子配向変化及び/またはポリマー被覆率の向上によって、血小板通過率が著しく向上したと考えられる。 【0011】また、本発明の水溶液処理によって、溶出物が極めて少なく、安全性を高める効果が奏されることも見出した。特に、この効果は、ポリマーをコーティング等でフィルター材の基材表面に物理的に導入した場合に顕著に認められた。おそらく該ポリマーに含まれている比較的溶出性の高い低分子ポリマーや未反応の残存モノマーが水溶液処理によって、除去されたためと考えられる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下に、本発明についてさらに詳細に記述する。本発明でいう水溶液による処理とは、フィルター材を水溶液に浸漬することをいう。水溶液処理を行う際の温度は20℃以上120℃未満、より好ましくは40℃以上110℃未満、更に好ましくは50℃以上95℃未満で行うことが相応しい。水溶液の温度が20℃未満であると血小板通過率の向上が小さくなるため好ましくなく、120℃以上であると熱収縮によってフィルター材の構造が変化し、血小板通過率を低下させ、また水溶液による処理の危険性が高まるため好ましくない。 【0013】水溶液による処理時間は10秒以上60分未満、好ましくは1分以上40分未満、更に3分以上30分未満であることが望ましい。処理時間が10秒未満であると血小板回収率の向上が見られず、60分を超えると生産性が低下してしまうばかりか、ポリマーコーティングでフィルター材表面を改質した場合には、ポリマーの脱落が起こりやすくなり、その結果、血小板回収率が低下するため好ましくない。 【0014】本発明の水溶液としては、水、あるいは水に無機塩やフィルター材を収縮させる等の悪影響を及ぼさず水と任意に混和しうる適切な有機溶媒を加えた水溶液を使うことができる。この中でも経済性、取扱い性及び安全性に優れる等の理由により、水単独であることが望ましい。添加しうる無機塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウムであり、混和しうる有機溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類である。 【0015】また、水溶液のpHは4以上9未満であることが良い。pHが4未満であると塩基性官能基を含むポリマーは水溶液中に溶出しやすくなるため相応しくなく、pHが9以上であると、ポリエステル等の基材を用いた場合に加水分解を起こしやすくなるため相応しくない。より好ましくは5以上8未満、更には6以上7.5未満のpHである。また、その水溶液による処理は大気圧から3気圧の気圧下で行うことが望ましい。 【0016】本発明の水溶液処理は、所定の長さに切断したフィルター材を水溶液が入っている槽の中に含浸させて所定時間処理する、いわゆるバッチ方式でも良いし、水溶液槽の中に反物状のフィルター材を連続的に入れて処理する、いわゆる連続方式でも良い。このような処理を行っている際に、水溶液の槽を攪拌し、処理効率を高める工夫を施しても良い。 【0017】水処理後のフィルター材の乾燥は、真空乾燥、熱風乾燥、あるいはドラム乾燥等の様々な方法によって行うことができる。この中でも、生産性に優れ、かつ取扱い性と安全性が高い熱風乾燥が好ましく、5m/秒以上30m/秒未満、好ましくは10m/秒以上20m/秒未満の風速で30℃以上90℃未満の熱風を1分以上360分未満、好ましくは3分以上20分未満、フィルター材に当てて乾燥させるのが良い。また、水溶液で処理した後に、フィルター材をアルコール等の適切な揮発性有機溶剤に入れ、低い乾燥温度で短時間乾燥しても良い。上述したことからも明らかなように、本発明の水溶液処理は極めて簡便で、大量にフィルター材を製造することも可能な、優れた方法である。 【0018】次に、本発明のフィルター材について、詳細に説明する。本発明の非イオン性親水基とは、極めてイオン化し難く、親水性の高い形態の構造を有する官能基を言う。非イオン性親水基をフィルター材表面に導入するとフィルター材が血液と接触したときに濡れ易くなるため、血液の片流れを防止する効果があり、この結果、フィルター材における血液の流れ面積が増加し、白血球除去能向上にも寄与することができる。また、本発明の塩基性官能基とは、正の荷電を有する官能基を言う。塩基性官能基は正の荷電を有しているため、生理的条件下で負に荷電している白血球を静電的な相互作用によって吸着する効果がある。 【0019】本発明の非イオン性親水基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキシド鎖、アミド基などを挙げることができ、塩基性官能基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、4級アンモニウム基、およびピリジル基、イミダゾール基などの含窒素芳香族等を挙げることができる。 【0020】また、フィルター材表面積あたりの塩基性官能基密度は、0.1μeq/m2以上100μeq/m2未満、好ましくは1μeq/m2以上50μeq/m2未満、更に15μeq/m2以上40μeq/m2未満であることが望ましい。塩基性官能基の密度が0.1μeq/m2未満であると血小板とともに白血球も粘着しにくくなる傾向にあるため相応しくなく、100μeq/m2を超えると血小板が粘着しやすくなる傾向にあるため相応しくない。 【0021】なお、フィルター材表面における塩基性官能基の密度の測定は、公知の測定技術、即ち、オージエ電子分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、多重全反射赤外線分光計を用いる赤外線吸光光度法(ATR−IR)などの表面分析技術によって測定することができる。ポリマーコーティング等によってフィルター材の表面に塩基性官能基を導入した場合には、フィルター材の表面部分を適切な溶剤で抽出し、その抽出成分に含まれる塩基性官能基の密度を核磁気共鳴スペクトル(NMR)で求めるのが良い。フィルター材の表面積当たりの塩基性官能基密度は、上述した何れかの方法でフィルター材の単位重量当たりの塩基性官能基密度(μeq/g)を求め、BET法で測定したフィルター材の比表面積(m2/g)で除することによって求めることができる。 【0022】フィルター材表面への非イオン性親水基及び塩基性官能基の導入方法として、放射線グラフトやプラズマグラフト等のグラフト法、あるいはポリマーによるコーティング法が挙げられる。この中でも、操作が簡便で、製造性に優れることから、コーティング法が好ましい。コーティング法に用いることのできるポリマーは、ビニル基等の重合性官能基を有するモノマーより通常のラジカル重合、アニオン重合等によって合成することができる。また、2種またはそれ以上の複数種の異種モノマーをランダム共重合、ブロック共重合させて合成することもできる。 【0023】コーティング用ポリマーを合成しうるモノマーとして、例えば、非イオン性親水基を有するヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、塩基性官能基を有するジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体等を挙げることができる。 【0024】本発明に用いることのできるフィルター材の形態として、織布、網布、不織布等の繊維状媒体、連続開放気孔を有するスポンジ状多孔質体や多孔膜等が挙げられる。この中でも製造性に優れることから不織布であることが好ましい。 【0025】さらに、バブルポイント法によって測定して得られる平均孔径は2μm以上20μm未満のフィルター材であることが好ましい。平均孔径とは、例えばコールターエレクトロニクス社製コールターRポロメーターを使用し、約50mgの試料を用いて測定した値(ミーン・フロー・ポアサイズ:MFP)である。平均孔径が2μm未満であると全血製剤が流れ難くなるので好ましくなく、20μmを超えると白血球除去能が低下する傾向にあるため好ましくない。より好ましい平均孔径の範囲は3μm以上15μm未満であり、5μm以上12μm未満が更に好ましい。 【0026】また、フィルター材の形態が繊維状媒体である場合、その平均繊維径は、0.3μm以上3.0μm未満であることが好ましく、更に0.5μm以上1.8μm未満であることが好ましい。平均繊維径が0.3μm未満の場合には、全血製剤をろ過する際の圧力損失が高すぎて実用的でない恐れがあり、3.0μm以上であると白血球除去能が低下する恐れがあるため好ましくない。なお、フィルター材の平均繊維径は、次の方法によって測定する。即ち、フィルター材そのものから実質的に均一と認められる部分をサンプリングし、走査型電子顕微鏡などを用いて写真に撮り、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅を50点以上、好ましくは100点以上測定し、得られた個々の繊維径の値の総和を測定数で除することによって平均繊維径を求めることとする。 【0027】フィルター材の基材の素材は、血液や血球細胞成分にダメージを与えにくいものであれば如何なる材質のものも使用できる。具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース、セルロースアセテートなどを挙げることができる。この中でも、ポリウレタンまたはポリエステルであることがより好ましい。 【0028】本発明で言う全血製剤とは、ACD(アシッドサイトレートデキストローズ)やCPD(サイトレート・フォスフェート・デキストローズ)等の抗凝固剤を含む、採血後3日以内、好ましくは1日以内の血液製剤である。また、血小板の通過率をより高めるために、採血後の全血製剤は室温で保存されるのが好ましい。通常、このような全血製剤の保存は軟質ポリ塩化ビニルバッグ等が好適に用いられている。 【0029】本発明で好適に用いられるフィルター材は、0.1g/cm3以上0.3g/cm3未満、好ましくは0.17g/cm3以上0.25g/cm3未満の嵩密度である。ここで言う嵩密度とは、フィルター材の重量をその体積(フィルター材の面積×ろ材厚み)で除した値である。嵩密度が0.1g/cm3未満であると、白血球除去能が低下する恐れがあり、0.3g/cm3を超えると血液の流れが極端に低下する恐れがあるため好ましくない。 【0030】本発明の製造方法によって得た白血球選択除去フィルター材を用いて白血球のみを選択的に除去した全血製剤を得た後、公知の遠心法によって、白血球が除去された赤血球製剤、血小板製剤、及び血漿製剤の3成分を調整することができる。 【0031】以下実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。 【実施例】 【実施例1】平均繊維径が1.2μmのポリエチレンテレフタレート製不織布(40g/m2目付、厚み0.24mm、幅150mm)を15mの長さで切り出した。HM−3をエタノールに溶解させて得た5g/dl濃度のポリマー液を用い、下記の方法により連続的にコーティングした。まず、不織布を40℃に加温したポリマー液に入れ、さらに0.13mmの隙間のロール間に導布することでニップし、さらに長さ140mm×幅3mmのスリット状の穴を有するサクション装置で吸引後、巻き取った。この時のライン速度は3m/分とした。巻き取ったコーティング後の不織布を帯状に広げ、室温下で16時間、自然乾燥させた。 【0032】帯状のコーティング後の不織布を1m間隔で折り曲げ、その間にポリプロピレン製のメッシュを入れることで不織布同士が接着するのを防止した後、pHが6.9で60℃の熱水を蓄えた槽の中に20分間漬けた。このような水溶液処理が終わった不織布を、40℃の熱風乾燥機の中に入れ、15m/秒の風速で3時間乾燥させた。かくして得られたフィルター材を切り出し、直径30mmのホルダーに4枚重ねて充填することで全血製剤をろ過するフィルターを作成した。なお、フィルター材の平均孔径は8μmであり、フィルター材表面の塩基性官能基蜜度は17μeq/m2であった。作製したフィルターの、全血製剤が流れ得る有効ろ過面積は4.9cm2であり、フィルター材の充填密度は0.18g/cm3であった。 【0033】HM−3ポリマーは通常のラジカル重合によって合成した。即ち、エタノール中のモノマー濃度を1モル/Lとし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1/200モル/Lの存在下、60℃で8時間重合反応を行った。抗凝固剤としてCPDを用い、採血後室温で5時間保存した全血製剤(6mL)を、上記のフィルターで、2.7mL/分の一定流速でろ過した。なお、全血製剤の量(mL)とは、天秤等で全血製剤の重量(g)を測定した後に、その値を1.05(全血製剤の比重)で除して求めた。 【0034】白血球除去能の測定は、次の方法により行った。ろ過前の全血製剤中の白血球濃度は、チュルク液で白血球を染色後、光学顕微鏡を用いて測定した。ろ過後の全血製剤中の白血球濃度は、アクリジンオレンジ液で漏れてきた白血球を染色し、蛍光顕微鏡を用いて測定した。かくして得られたろ過前及びろ過後の白血球濃度より、次式により、白血球除去能を求めた。 白血球除去能=−Log(ろ過後の白血球濃度/ろ過前の白血球濃度) 【0035】血小板通過率は、ろ過前及びろ過後の血小板濃度を多項目自動血球計数装置(Sysmex社製、K−4500)を用いて測定し、次式により求めた。 血小板通過率=(ろ過後血小板濃度/ろ過前血小板濃度)×100(%) 以上の結果、白血球除去能は2.1、血小板通過率は84%であった。また、ろ過前後の赤血球濃度及び血漿蛋白濃度に有意差は見られなかった。 【0036】次に、基材不織布由来のオリゴマー等の溶出する有機物を定量するために、下記に示す溶出物試験(過マンガン酸消費量の測定)を行った。まず、フィルター材を1cm×1cm程度の大きさに切断し、1.5g計量した。このフィルター材を150mLの水の入った三角フラスコに入れ、30分間煮沸した。冷却後、抽出液をろ紙でろ過してコニカルビーカーに移し、全量が150mLになるようにろ液に水を加え、試験液とした。フィルター材から抽出を行わない、いわゆるブランク液を同様の操作で作成した。試験液及びブランク液から10mLずつ三角フラスコに採取し、これに0.01Nの過マンガン酸カリウム(20mL)と希硫酸(1mL)を加え、3分間煮沸した。冷却後の液にヨウ化カリウム(0.1g)を加えて密栓し、振り混ぜて10分間放置した。さらに0.01Nのチオ硫酸ナトリウム(10mL)とデンプン試薬(5滴)を加え、その後、液の色が無色になるまでチオ硫酸ナトリウムを滴下した。試験液及びブランク液それぞれについて上記の滴定を行い、下記の式より過マンガン酸消費量を求めた。 過マンガン酸消費量=(ブランク液での滴定量−試験液での滴定量)(mL) このような試験を行った結果、過マンガン酸消費量は0.1mLであった。 【0037】 【実施例2〜7、比較例1〜2】実施例1と同様の方法でコーティングした不織布を、表1に示す条件で水溶液処理した後、実施例1と同様の血液ろ過試験及び過マンガン酸諸費量の測定を行った。結果を表1に示す。 【0038】 【比較例3】水溶液処理を行わなかった以外は、実施例1と同様のコーティングした不織布を用いて血液ろ過試験及び過マンガン酸消費量の測定を行った。結果を表1にまとめる。実施例1〜7,及び比較例1〜3の結果を表1に示す。 【0039】 【表1】
【実施例8】HM−3の代わりに、HEMAとジエチルアミノエチルメタクリレート(以下、DEと略す)からなるポリマー(ポリマー中のDE含量は5モル%)を用い、実施例1と同様のコーティング、水溶液処理及び乾燥を行った。得られたフィルター材の平均孔径は8μm、塩基性官能基密度は28μeq/m2であった。次に、このフィルター材4枚を実施例1と同様のホルダーに、0.19g/cm3の充填密度で充填し、血液ろ過試験を行った。その結果、白血球除去能(−Log)は1.8、血小板回収率は76%であった。また、過マンガン酸消費量は0.3mLであった。 【実施例9】基材として平均繊維径が1.9μmのポリブチレンテレフタレート製不織布(40g/m2目付、厚み0.22mm、幅150mm)を用いた以外は実施例1と同様の材料と操作でフィルター材を作成した。作成したフィルター材の平均孔径は10μm、塩基性官能基密度は27μeq/m2であり、このフィルター材の充填密度は0.20g/cm3であった。血液ろ過試験を行った結果、白血球除去能(−Log)は1.4、血小板回収率は90%であった。また、過マンガン酸消費量は0.5mLであった。 【0040】 【発明の効果】水溶液処理という極めて簡便な製造方法によって、全血製剤から白血球除去能を低下させることなく、血小板通過率を格段に向上することができる白血球選択除去フィルター材を提供することができる。本発明の白血球除去フィルター材は、赤血球、血小板、血漿成分及び白血球を含む全血製剤から、赤血球、血小板及び血漿成分の損失を極めて少なく抑えつつ、白血球を選択的に、かつ効率よく除去することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000116806 【氏名又は名称】旭メディカル株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年4月7日(2000.4.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090941 【弁理士】 【氏名又は名称】藤野 清也 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−286551(P2001−286551A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月16日(2001.10.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−106890(P2000−106890) |
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