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【発明の名称】 口腔用組成物
【発明者】 【氏名】佐野 浩史

【氏名】西永 英司

【要約】 【課題】酵素と界面活性剤を含有する口腔用組成物において、使用性や他成分の安定性を損なうことなく、十分な酵素安定性を有する組成物を提供する。

【解決手段】酵素とアニオン性界面活性剤とを含有する口腔用組成物において、0.001〜0.1%のヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩を配合することにより、アニオン性界面活性剤による酵素の失活を防止することを特徴とする口腔用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酵素とアニオン性界面活性剤とを含有する口腔用組成物において、0.001〜0.1%のヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩を配合することにより、アニオン性界面活性剤による酵素の失活を防止することを特徴とする口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵素を含有する口腔用組成物に関するものである。本発明により、う蝕予防を目的とする高機能の歯磨、洗口剤等の口腔用品の提供が可能となる。
【0002】
【従来の技術】従来、アルキル硫酸エステル金属塩等のアニオン性界面活性剤は、優れた発泡性を有するために口腔用品用の界面活性剤として広く使用されてきた。しかしながら、これらのアニオン性界面活性剤は蛋白質に対する変性作用があるためにう蝕及び歯周病等の予防の目的で配合される酵素を変性させ、失活させてしまうという欠点があった。そこで、口腔用組成物中での酵素の安定性を維持するため、種々の提案がなされており、酵素の安定化の為に種々の安定化方法が提案されている。例えば、ノニオン性界面活性剤を配合することにより、アニオン性界面活性剤と混合ミセルを形成し、酵素の蛋白変性を抑制する方法や、製剤のpHを高アルカリ性領域にすることにより、酵素の失活を抑制する方法などが提案されている。しかしながら、これらの安定化方法では、■新たに添加した成分による異味、異臭や、発泡性の著しい低下といった使用性の問題、■高pHに調整することによる、香料成分等の分解、などの問題があり、より有効な酵素の安定化技術の開発が望まれる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、酵素と界面活性剤を含有する口腔用組成物において、その使用性や他成分の安定性を損なうことなく、十分な酵素安定性を有する組成物を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、酵素とアニオン性界面活性剤を有する組成物において、ごく微量のヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩を添加することにより、満足すべき一般安定性と十分な酵素安定性を示す組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。即ち、本発明によれば、酵素とアニオン性界面活性剤とを含有する口腔用組成物において、0.001〜0.1%のヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩を配合することにより、アニオン性界面活性剤による酵素の失活を防止することを特徴とする口腔用組成物が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の口腔用組成物は、酵素とアニオン性界面活性剤とヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩とを含有する。本発明で使用される酵素としては、口腔用組成物に慣用のもの、一般的には、多糖類の加水分解酵素が用いられるが、その内でも特にデキストラナーゼ及びムタナーゼが使用される。これらは単独でも複数の組合せでも使用可能である。前記デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生成菌により公知の方法により得られるデキストラナーゼはもちろん、他の微生物により生産されるデキストラナーゼも使用することができる。その配合量は、通常口腔用組成物1g当たり0.5〜500単位(ここで、単位とはデキストランを基質として反応を行った場合、1分当たりグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じる酵素量といい、この単位を新単位とすると、旧単位との単位換算は、旧2000u/g=新17.49u/gである)、特に1.5〜200単位が好適である。配合量が0.5単位に満たないと満足な歯垢形成抑制効果が得られない場合があり、500単位を超えると歯垢形成抑制効果は殆んど変化がなくなる。
【0006】前記ムタナーゼとしては、例えば、シュードモナス・エス・ピー、トリコデルマ・ハルジアヌム、ストレプトマイセス・ヴェレンシス、アスペルギルス・ニードランス、フラボバクテリウム・エス・ピー、バシラス・エス・ピー等の公知のムタナーゼ生成菌より公知の方法により得られるムタナーゼはもちろん、他の微生物により生産されるムタナーゼも使用することができる。その配合量は、口腔用組成物1g当たり10〜10000単位であり、より好ましくは20〜5000単位である。ここで、ムタナーゼ1単位とは、ムタンを基質として反応を行った場合に、35℃、1分間当たりグルコース1μgに相当する遊離還元糖を生じる酵素量をいう。但し、ここでいうムタンは次のようにして調製したものである。即ち、ストレプトコッカス・ミュータンス菌の産出する不溶性グルカンに高単位のデキストラン分解酵素(市販品)を加え、40℃で不溶性グルカン中のα−1,6−グルコシド結合を切断させる。反応液中の還元力の増加がなくなるまで反応させた後、反応液中の沈殿物を水洗し、上清中に還元力がなくなるまで水洗と遠心分離とを繰り返し行い、還元力のなくなった時点で沈殿物を遠心分離して回収し、これを上述のムタンとする。
【0007】アニオン性界面活性剤としては、従来公知の各種のもの、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル又はヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシル化タウリン、N−アシル化メチルタウリン、N−アシル化グリシン、N−アシル化アスパラギン酸塩、N−アシル化ザルコシン、N−アシル化グルタミン酸塩、モノアルキル燐酸エステル塩、アルキルアミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル(ポリ)グリセリルエーテルスルホン酸塩、アルキル(ポリ)グリセリルエーテルカルボン酸塩、アルキルイミノジカルボン酸塩、二級アミド型N−アシルアミノ酸塩、酒石酸アルキルアミド、リンゴ酸アルキルアミド、クエン酸アルキルアミド、アルキル(ポリ)グリセリルスルホン酸塩、モノグリエリドコハク酸エステル塩等があげられるが、これらの中ではアルキル硫酸エステル塩が好ましい。アニオン性界面活性剤の配合量は、通常、組成物全体の0.1〜5%、好ましくは0.5〜3%、特には0.8%〜2%とするのが良い。
【0008】本発明においては、カチオン性ポリマーの一種であるヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩が選択的に使用される。ここに云うヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩とは、ヒドロキシエチルセルロースにジメチルジアリルアンモニウム塩をグラフト重合して得られるカチオン性ポリマーである。対イオンは、塩素イオン等のハロゲンイオンや、メトサルフェートイオンなどである。本カチオン性ポリマーの平均分子量は、特に限定されないが、数平均分子量で、好ましくは1,000〜1,000,000である。窒素含有量としては0.1〜3%であり、より好ましくは0.5〜2.5%である。このようなヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩としては日本エヌエスシー(株)から市販されているセルコートL−200などがあげられる。これらは、対イオンが塩素イオンである。
【0009】本カチオン性ポリマーの含有量は、通常、組成物全体の0.001〜0.1%、好ましくは0.007〜0.07%である。0.001%未満では十分な酵素安定性が得られず、0.1%を越えても、それ以上の効果は発現しない。
【0010】本発明の組成物は、本発明の効果を著しく阻害しない限り、通常、歯磨組成物で配合する研磨剤、粘結剤、粘稠剤、保湿剤、甘味料、香料、着色剤、防腐剤、保存安定化剤、pH調整剤、薬効成分等の適宜の成分を配合しうる。
【0011】研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、アルミナ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、チタニウム結合ケイ酸塩等の無機系研磨剤、ポリメタクリル酸メチル、結晶性セルロース等の有機系研磨剤が挙げられる。研磨剤の配合量は、通常、組成物全体の5〜60%好ましくは8〜50%である。
【0012】粘結剤としては、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム等のカルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの有機系粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機系粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、組成物全体の0.2〜2%である。
【0013】粘稠剤や保湿剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール等の多価アルコール、糖アルコールなどが配合される。甘味料としてはサッカリンナトリウム、ステビオサイト、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、P−メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム、キシリトール等が配合できる。香料としては、1−メントール、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類又はその誘導体等が挙げられる。
【0014】着色剤としては、青色1号、黄色4号、緑色3号、二酸化チタン等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、ソルビン酸カリウム等を挙げることができる。保存安定化剤としては、ビタミンC、ビタミンE、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩、ならびに水酸化ナトリウムを挙げることができる。本発明の口腔用組成物のpHは5〜9、好ましくは6〜8の範囲になるように調整される。薬効成分としては、例えば、クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、ヒノキチオールなどの抗菌剤、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素化合物、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントインなどの抗プラスミン剤、ポリリン酸類などの歯石予防剤、塩化ナトリウムなどの歯茎引き締め剤、酢酸トコフェロールなどの各種ビタミンなどが挙げられる。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、う蝕予防に有効な酵素を、歯磨、洗口剤等の口腔用組成物に対し、味、使用感に影響を与えることなく、安定に配合することができる。
【0016】
【実施例】以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。
【0017】実施例1〜2、比較例1〜2表1に示す成分組成(質量%)の歯磨組成物を調製し、40℃で1ヶ月保存後、酵素の残存率を測定した。
【0018】
【表1】

【0019】前記残存率の測定結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】表2の結果から、微量のヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩(セルコートL−200)を配合することにより、アニオン界面活性剤による酵素の蛋白変性が抑制され、長期間にわたって酵素残存率を維持でき、酵素活性が安定に保たれることが確認された。
【0022】本発明の口腔用組成物の具体的拠方例を以下に示す。
実施例3(歯磨)
無水ケイ酸 10(%)
ソルビット 40 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 アルギン酸ナトリウム 0.6 カラギーナン 0.7 サッカリンナトリウム 0.2 ゼラチン 1.0 ミリスチン酸ジエタノールアミド 1.0 プロピレングリコール 3.0 香料 1.2 フッ化ナトリウム 0.2 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 セルコートL−200 0.02 水 残【0023】
実施例4(歯磨)
炭酸カルシウム 45(%)
ソルビツト 20 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 カルボキシメチルセルロース(CMC) 1.2 サッカリンナトリウム 0.2 モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7 プロピレングリコール 3.0 香料 1.2 デキストラナーゼ 50単位/g歯磨 セルコートL−200 0.07 水 残【0024】
実施例5(歯磨)
第二リン酸カルシウム 50(%)
グリセリン 25 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 CMC 0.6 カラギーナン 0.7 サッカリンナトリウム 0.2 ゼラチン 1.0 プロピレングリコール 3.0 香料 0.8 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 ムタナーゼ 500単位/g歯磨 セルコートL−200 0.02 水 残【0025】
実施例6(歯磨)
水酸化アルミニウム 40(%)
ソルビツト 25 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 ポリアクリル酸ナトリウム 0.6 カラギーナン 0.7 サッカリンナトリウム 0.2 プロピレングリコール 3.0 香料 0.8 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 セルコートL−200 0.1 水 残【0026】
実施例7(歯磨)
第二リン酸カルシウム 45(%)
ソルビット 30 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 キサンタンガム 0.8 カラギーナン 0.2 サッカリンナトリウム 0.2 プロピレングリコール 3.0 香料 0.8 ビタミンE 0.5 グリチルレチン酸 0.05 トラネキサム酸 0.05 オオバクエキス 0.05 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 セルコートL−200 0.007 水 残【0027】
実施例8(歯磨)
炭酸カルシウム 30(%)
CMC 1.5 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 ポリアクリル酸ナトリウム 0.6 無水ケイ酸 5 サッカリンナトリウム 0.2 プロピレングリコール 3.0 香料 1.2 塩化ナトリウム 10 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 セルコートL−200 0.05 水 残【0028】
実施例9(洗口剤)
変性エタノール 8(%)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2 グリセリン 3 クエン酸 0.01 クエン酸3ナトリウム 0.3 香料 0.3 サッカリンナトリウム 0.1 デキストラナーゼ 20単位/g歯磨 セルコートL−200 0.05 0.1%緑色3号 0.1 水 残
【出願人】 【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
【出願日】 平成12年6月2日(2000.6.2)
【代理人】 【識別番号】100074505
【弁理士】
【氏名又は名称】池浦 敏明
【公開番号】 特開2001−342123(P2001−342123A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−166301(P2000−166301)