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【発明の名称】 白血病治療用カラム及びそれに用いる医療材料
【発明者】 【氏名】中村 修

【氏名】大庭 英樹

【氏名】シャライ・イムレ

【氏名】八木 史郎

【氏名】森脇 佐和子

【氏名】安田 誠二

【要約】 【課題】血液を体外で環流することによって白血病細胞に直接白血病細胞凝集剤を接触させ、白血病患者の治療を迅速かつ効率よく行うための手段を提供する。

【解決手段】生理的に不活性な担体とそれに担持された白血病細胞凝集剤からなる白血病細胞除去用医療材料及びそれを不溶性材料筒状体に充填した白血病治療用カラムを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生理的に不活性な担体に担持された白血病細胞凝集剤を充填した不溶性材料筒状体からなる白血病治療用カラム。
【請求項2】 白血病細胞凝集剤が、キノコ由来又はトウアズキ種子由来のレクチンタンパク質である請求項1記載の白血病治療用カラム。
【請求項3】 生理的に不活性な担体が、多糖類系ゲル濾過剤粒状体である請求項1又は2記載の白血病治療用カラム。
【請求項4】 生理的に不活性な担体とそれに担持された白血病細胞凝集剤からなる白血病細胞除去用医療材料。
【請求項5】 白血病細胞凝集剤が、キノコ由来又はトウアズキ種子由来のレクチンタンパク質である請求項4記載の白血病細胞除去用医療材料。
【請求項6】 生理的に不活性な担体が、多糖類系ゲル濾過剤粒状体である請求項4又は5記載の白血病細胞除去用医療材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、白血病患者の血液を通過させて、血液中の白血病細胞を除去し、白血病を治療するためのカラム及びそれに用いる白血病細胞除去用医療材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の白血病患者の治療は、骨髄移植と再発防止のための抗ガン剤の投与が基本になっている。この際の抗ガン剤の投与は、白血病患者の血液中から白血病細胞が完全に消失するまで行われるが、通常の抗ガン剤は、強い副作用を有するため、この間過酷な闘病生活に耐えなければならないし、この抗ガン剤の投与によってガンの再発が完全に防止されるとは限らない。
【0003】一方、最近、白血病細胞を選択的に認識して凝集させることができる白血病細胞凝集剤として、ある種の植物又は動物由来のレクチンタンパク質や化合物が見出され、白血病患者の治療剤として注目を浴びている(特開平9−206096号公報、特願平10−376914号)。これらの白血病細胞凝集剤は、正常細胞よりも血液中の白血病細胞を選択的に認識することができるので、白血病細胞除去剤として非常に実用性の高いものということができる。
【0004】ところで、一般に抗ガン剤を用いてガン患者の治療を行う場合には、抗ガン剤を経口的又は非経口的にガン患者に投与し、循環系器官を経由して患部に到達させ、ガン細胞と接触させる手法がとられる。
【0005】しかしながら、このような手法では、抗ガン剤が患部以外の組織までも供給され、希釈されるため、有効量を確保するには、治療に必要とされる量よりもかなり多量に投与しなければならないし、また患部以外の組織に予想外の作用をもたらすリスクもある。
【0006】したがって、このような抗ガン剤を実用に供する場合には、投与された抗ガン剤ができるだけ患部に集中し、ガン細胞に効果的に作用するような工夫がしばしば行われているが、まだ十分満足できるものは知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、血液を体外で環流することによって白血病細胞に直接白血病細胞凝集剤を接触させ、白血病患者の治療を迅速かつ効率よく行うための手段を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、白血病細胞に直接白血病細胞凝集剤を接触させ、白血病細胞を選択的に除去して、白血病患者を効率よく治療する方法について鋭意研究を重ねた結果、白血病細胞は、もっぱら血液中に存在することから、白血病患者の血液をいったん体外に取り出し、特定の器具及び材料を用いて白血病細胞凝集剤と接触させる処理を行い、白血病細胞のみを選択的にこれと反応させて除去したのち、処理した血液を再び体内に戻すことにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】すなわち、本発明は、生理的に不活性な担体とそれに担持された白血病細胞凝集剤からなる白血病細胞除去用医療材料及びそれを不溶性材料筒状体に充填した白血病治療用カラムを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の白血病治療用カラムは、担体に担持された白血病細胞凝集剤とそれに充填するための不溶性材料筒状体から構成される。この白血病細胞凝集剤としては、キノコ由来のレクチンタンパク質、例えばヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)の果肉から抽出されるレクチンタンパク質やマメ科植物種子由来のレクチンタンパク質、例えばトウアズキ(Abrus precatorius)の種子から抽出されるレクチンタンパク質などを用いることができる。
【0011】次に、これらの白血病細胞凝集剤を担持させる担体としては、生理的に不活性なもので、白血病細胞凝集剤と親和性を有するものであれば特に制限はなく、無機質、有機質のいずれでもよい。ここで、生理的に不活性とは、血液、リンパ液などの生理液と接触したときに、有害な物質の溶出や変質を生じ、それらの体内での生理液としての働きに悪影響をもたらすことがないという意味である。
【0012】この担体として好適なのは、多糖類系ゲル濾過剤粒状体、例えばガラクタン又はその誘導体のゲル顆粒で、これは市販品[セファロース(商品名,アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)]として入手することができる。この担体は、粒径250〜350μmの粒状体として用いられる。
【0013】本発明においては、白血病細胞凝集剤を、この担体に化学的に結合させることにより担持したものを医療材料として用いる。すなわち、この医療材料は、両者を共有結合により化学的に結合したものである。
【0014】このものは、例えば、多糖類系ゲル濾過剤粒状体を塩酸水溶液で膨潤させたのち、レクチンタンパク質を加え、室温下、1〜5時間かきまぜながら反応させることによって製造することができる。この際の反応は、多糖類系ゲル濾過剤中に存在する官能基、例えばイミドカーボネート基やシアネートエステル基とレクチンタンパク質中のアミノ基との間で進行し、イソウレア結合を形成し、これを介してレクチンタンパク質が多糖類に導入される。この反応において未反応のまま残った官能基は、例えばグリシンのようなアミノ酸を反応させてブロックされる。
【0015】次に、本発明の白血病治療用カラムは、前記の担体と白血病細胞凝集剤との結合体を不溶性材料で作られた筒状体に充填することにより構成される。ここで、不溶性材料というのは、血液やリンパ液のような生理液と接触した場合に、これらの機能を妨げるような物質、例えば有害な物質を溶出することがない材料の意味であり、一般に人工臓器の材料として慣用されている材料、ガラス、プラスチック、金属などの中から任意に選ぶことができる。この筒状体の形状は、円筒体、角筒体、長円筒体のいずれでもよいが、通常は円筒体が用いられる。このカラムの大きさとしては、直径10〜20mm、好ましくは10〜15mm、長さ50〜200mm、好ましくは60〜80mmの範囲が実用的である。
【0016】本発明の白血病治療用カラムは、このような不活性材料筒状体の底面付近に網状板や多孔板を配置し、その上に少なくとも20mmの厚さまで白血病細胞凝集剤を担持した担体を充填することによって得ることができる。
【0017】次に、添付図面に従って、本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の白血病治療用カラムの構造の1例を説明するための断面略解図であり、カラム本体1は、ガラス製円筒体で構成され、頂部に細胞導入管2、底部に細胞排出管3が備えられている。この内部には、フィルター4上に、白血病細胞凝集剤を担持した担体の充填部5が形成されている。
【0018】白血病患者の血管から抜き出された細胞は、細胞導入管2よりカラム中の充填部5に供給され、ここで白血病細胞凝集剤と接触し、白血病細胞のみが除去され、正常細胞を含んだ細胞懸濁液は細胞排出管3から取り出され、患者の体内へ戻される。このようにして、患者の血液の正常な機能をそこなうことなく、白血病細胞を除去することができるので、安全かつ確実に白血病患者の治療を行うことができる。
【0019】図2は、本発明のカラムを用いて白血病患者の血液中から、白血病細胞が選択的に除去される状態を模式的に示したもので、白血病患者の血液由来の細胞をカラムに通すと、白血病細胞凝集剤、例えばレクチンタンパク質6を担持した担体7と接触し、白血病細胞8のみがレクチンタンパク質6と結合して除去され、正常細胞9のみを含んだ細胞懸濁液として排出される。
【0020】このようにして、白血病患者の血液中の白血病細胞は、レクチンタンパク質と結合して除去されるが、処理終了後、これに使用したレクチンを認識する糖、例えばラクトースの溶液を通すことにより、白血病細胞を溶出させることができるので、これによってレクチンを再生、カラムを繰り返し利用することができる。
【0021】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明は限定されるものではない。
【0022】実施例1セファロース6MB(商品名,アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)1gを1mM塩酸水溶液100ml中で15分間膨潤後、1mM塩酸水溶液200mlでよく洗浄し、さらにカップリング緩衝液(0.5N NaClを含む0.1M NaHCO3水溶液、pH8.5)200mlで洗浄した。次に、同じカップリング緩衝液5ml中に、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)の果肉から抽出されたレクチンタンパク質3mgを溶解後、これに前記のセファロース6MBを加え、室温(20℃)において、かきまぜながら2時間反応させることによりレクチンタンパク質とセファロース6MBとの複合体2.5mlを調製した。次いで、この複合体を0.5N NaClを含む0.1N酢酸緩衝液(pH4.5)各100mlとカップリング緩衝液各100mlで交互に3回洗浄したのち、0.2Nグリシンを含む0.1N NaHCO3水溶液(pH8.5)中で、室温でかきまぜながら2時間反応させることにより未反応の官能基をブロックした。最後に、細胞懸濁用の緩衝液で十分に洗浄することにより、白血病細胞凝集用医療材料2.5mlを得た。
【0023】実施例2実施例1で得たレクチンタンパク質とセファロース6MBとの複合体を、下部に80μmのメッシュシートを配置した径12mm、長さ60mmのガラス製円筒状カラムに、20mmの高さまで充填し(充填層体積2.5ml)、白血病治療用カラムを製造した。次に、急性リンパ性白血病由来のT細胞系ジャーカット(Jurkat)細胞を、リン酸塩緩衝生理的食塩水に懸濁し、細胞数を1.5×107個/mlに調整した。この細胞懸濁液0.6mlを25℃において上記の白血病治療用カラムに通し、白血病細胞をレクチンタンパク質に結合させた後にリン酸塩緩衝生理的食塩水でカラムをよく洗浄した。次いで、このようにして白血病細胞を結合したカラムに、リン酸塩緩衝生理的食塩水に溶かした100mMのラクトース溶液を流し、流出液を1.5mlごとに分画捕集した。各画分について、光学計により濁度(A600)を測定し、その結果をグラフとして図3に示す。以上の事実により、血液中の白血病細胞がカラム中のレクチンタンパク質に結合して除去され、次いでラクトースにより溶離されることが分かる。
【0024】
【発明の効果】本発明の白血病治療用カラム及び医療材料を用いれば、白血病患者の血液中から白血病細胞のみを選択的に除去できるので、安全かつ確実に白血病患者の治療を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】301000011
【氏名又は名称】経済産業省産業技術総合研究所長
【識別番号】599168154
【氏名又は名称】中村 修
【識別番号】599168165
【氏名又は名称】大庭 英樹
【識別番号】599168176
【氏名又は名称】八木 史郎
【識別番号】599168187
【氏名又は名称】安田 誠二
【出願日】 平成11年11月30日(1999.11.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−158744(P2001−158744A)
【公開日】 平成13年6月12日(2001.6.12)
【出願番号】 特願平11−341164