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【発明の名称】 作業用車いす
【発明者】 【氏名】八木 栄一

【氏名】久保田 哲也

【氏名】志子田 繁一

【氏名】松井 繁朋

【氏名】三隅 隆也

【氏名】中嶋 勝己

【氏名】桂川 敬史

【要約】 【課題】作業性を向上した作業用電動車いす1を提供する。

【解決手段】前後方向に操舵して走行する台車部2の上に、作業者が着座する座席部3を、左右方向に変位駆動可能に設ける。着座部3はまた、前後移動および旋回が可能であり、さらにパンタグラフ15などのリンク機構によって、昇降駆動可能である。重錘27,28;31,32を、座席部の左右移動または前後移動に対応して、逆方向に変位駆動し、転倒を防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも前進走行可能な台車部2と、台車部に搭載され、作業者が着座する座席部3と、台車部と座席部との間に介在され、座席部を左右方向に変位駆動する駆動手段4とを含むことを特徴とする作業用車いす。
【請求項2】 駆動手段はさらに、座席部を、台車部上で前後移動および旋回の少なくともいずれか一方の駆動を行うことを特徴とする請求項1記載の作業用車いす。
【請求項3】 駆動手段はさらに、座席部を、台車部上で、昇降駆動することを特徴とする請求項1または2記載の作業用車いす。
【請求項4】 台車部または座席部には、重錘27,28;31,32と、重錘を、座席部が左右移動または前後移動するとき、座席部の移動方向とは逆方向に、変位駆動する重錘駆動手段47,48;51,52とを含むことを特徴とする請求項1〜3のうちの1つに記載の作業用車いす。
【請求項5】 重錘駆動手段は、作業者が着座している座席部の重心が、台車部の接地点6aを結ぶ領域34以内に存在するように、重錘の変位量を制御することを特徴とする請求項4記載の作業用車いす。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、足などの身体の一部分が不自由な人が、たとえば温室内で野菜などの植物を栽培する農作業などの作業を行うために好適に実施することができる作業用車いすに関する。
【0002】
【従来の技術】高齢化社会の進展に伴い、農業従事者も高齢化の一途をたどっており、高齢の農業従事者が楽に農業作業に従事できる環境整備が求められている。農業作業の機械化は長年行われてきており、トラクタ等の力仕事の機械化や田植機等の苦渋作業の機械化は行われている。しかし、歩行が困難になってきた高齢者を補助するための機械化はなされていない。
【0003】従来から、いす部分が上下に動き、高所の物を取ったり、立っている人と同じ視線の高さで話をしたりするために用いられることができる車いすは存在する(たとえば特公平7−79830)。
【0004】ところが、農作業を考えてみると、次のような機能が必要になる。ハウス栽培での作物の摘果や世話を想定すると、作業者は作物が列になって植えられている複数の列の間の通路から作業をする。作業者が電動車いすを必要とすれば、車いすは、この通路を移動する。作物を世話する作業者は車上から世話をすることになるが、手を伸ばすだけでは作業個所に手が届かないこともある。車いすを作物にもっと近付けるのは、制約が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、作業性が向上された作業用車いすを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも前進走行可能な台車部2と、台車部に搭載され、作業者が着座する座席部3と、台車部と座席部との間に介在され、座席部を左右方向に変位駆動する駆動手段4とを含むことを特徴とする作業用車いすである。
【0007】本発明に従えば、台車部は、少なくとも前進走行することができ、この台車部には、作業者が着座する座席部が搭載されており、駆動手段は、この座席部を、台車部の左右方向に変位駆動することができる。したがって台車部の前進走行方向に対して左方または右方の少なくともいずれか一方に座席部をせり出して、座席部に着座している作業者が、台車部の側方で、作業を行うことができるようになる。こうして台車部を左方または右方に移動する必要がなく、台車部の走行が容易になり、操作性が向上される。
【0008】また本発明は、駆動手段はさらに、座席部を、台車部上で前後移動および旋回の少なくともいずれか一方の駆動を行うことを特徴とする。
【0009】本発明に従えば、座席部を、上述の左右方向に変位駆動するだけでなく、さらに前後移動を行い、または旋回することができるように構成し、これによって座席部に着座している作業者の作業性がさらに向上される。
【0010】また本発明は、駆動手段はさらに、座席部を、台車部上で、昇降駆動することを特徴とする。
【0011】本発明に従えば、座席部を昇降駆動して、作業性をさらに向上することができる。駆動手段は、座席部を昇降駆動ためにたとえばパンタグラフなどのリンク機構を用いた構成を備え、これによって構成の小形化と単純化を図ることができる。
【0012】また本発明は、台車部または座席部には、重錘27,28;31,32と、重錘を、座席部が左右移動または前後移動するとき、座席部の移動方向とは逆方向に、変位駆動する重錘駆動手段47,48;51,52とを含むことを特徴とする。
【0013】本発明に従えば、台車部または座席部には、重錘駆動手段によって重錘を座席部の移動方向とは逆方向に変位駆動する。これによって座席部が台車部から左右移動または前後移動して大きくせり出したとき、台車部が転倒することを防止することができる。
【0014】また本発明は、重錘駆動手段は、作業者が着座している座席部の重心が、台車部の接地点6aを結ぶ領域34以内に存在するように、重錘の変位量を制御することを特徴とする。
【0015】本発明に従えば、作業者が着座している座席部の重心が、図4のように、台車部の接地点6aを結ぶ領域以内に存在するように、重錘の変位量が制御され、これによって台車部の転倒を確実に防ぐことができる。台車部は、3以上の複数(たとえば4)の車輪が備えられ、これらの各車輪が地表面または床などの接地点で固定位置と接触し、これらの各接地点を結んで閉じた領域を形成し、この閉じた領域以外に、重心の地表面または床への投影位置が存在する。こうして台車部の転倒を抑制することができる。したがって作業者は、台車部の転倒の危険をおそれることなく、安心して作業を行うことができる。
【0016】またこのような重心は上述のように領域以内に存在するように、重錘の変位量を制御するので、重錘を、座席部の移動に応じて長距離にわたって変位させる必要がなく、重錘の変位量を抑制することができ、構成の小形化を図ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の作業用電動車いす1の全体の構成を示す斜視図である。この作業用車いす1は基本的に台車部2と、作業者が着座する座席部3と、台車部2と座席部3との間に介在される駆動手段4とを含む。台車部2は、台車部本体5と、この台車部本体5の下部に備えられる二組の対を成す合計4個の車輪6とを含む。座席部3は、作業者が着座する着座部7と、この着座部7につながって立上がる背もたれ部8とを含む。背もたれ部8は省略されてもよい。
【0018】図2は、駆動手段4による座席部3の駆動状態を示す図である。台車部2の台車部本体5上におけるXYZ直交座標系において、前後方向Xと左右方向Yと昇降方向Zとに、座席部3が変位駆動され、さらに参照符9で示されるように、昇降方向Zの軸線まわりに旋回駆動される。
【0019】図3は、図1および図2に示される作業用車いす1の簡略化した断面図である。台車部2の台車部本体5上には、前後方向Xに延びる一対のレール11が固定され、このレール11に沿って前後移動体12は、後述の図5の前後駆動手段43によって変位自在である。前後移動体12上には、左右方向Yに延びる一対のレール13が固定され、このレール13に沿って左右移動体14が図5の左右駆動手段44によって移動自在である。
【0020】昇降方向Zに、座席部3を昇降駆動するための昇降手段15が備えられる。この昇降手段15は、左右方向Yに間隔をあけて配置された一対のパンタグラフ16を備える。各パンタグラフ16は、合計4つのリンク17〜20を含み、これらのリンク17〜20がピン結合されて、左右移動体14と昇降移動体21とに、ピン結合される。少なくとも一方のパンタグラフ16には、伸縮駆動源22はピン結合される。伸縮駆動源22は、ねじ駆動するモータを含み、リンク17,18;19,20の図3における左右方向、すなわち前後方向Xの伸縮が可能である。
【0021】昇降移動体21上には、着座部7の上面に垂直な縦の軸線24まわりに旋回する旋回駆動手段25が取付けられる。着座部7の上面は、台車部2の合計4つの接地点6aを含む一仮想平面と平行である。これらの駆動手段15,25,43,44は、駆動手段4を構成する。
【0022】座席部3の前後方向Xに変位したとき、座席部3に着座している作業者および座席部3を含む全体の重心Gが大きく変位して台車部2が転倒することを防ぐために、着座部7の前後方向Xの両側には、重錘27,28が配置されるとともに、この着座部7の左右方向Yの両側にもまた、転倒を防ぐ重錘31,32が配置される。
【0023】図4は、重錘27,28;31,32の働きを説明するための簡略化した平面図である。座席部3が前後方向Xおよび左右方向Yに移動したとき、作業者と座席部3と重錘27,28;31,32などを含む合成した重心Gが、4つの車輪6の接地点6aを結ぶ閉じた領域34内に存在するように、重錘27,28;31,32が、前後方向Xおよび左右方向Yに変位駆動される。たとえば図4に示されるように、座席部3が図4の右方である後退方向に変位し、しかも図4の下方である左方に変位した状態で、重錘27を、その前後方向Xの座席部3とは逆方向である前進方向に、重錘27を伸長するとともに、左方(図4の下方)に変位した座席部3とは左右方向Yの逆方向(図4の上方である右方)に重錘32を変位する。これによって重心Gの領域34への投影した位置が、その領域34以外に存在することができる。これによって台車部2の転倒を抑制することができる。
【0024】図5は、図1〜図4に示される本発明の実施の一形態の作業用電動車いす1の電気的構成を示すブロック図である。座席部3の着座部7の一側方には、操作手段36が設けられる。台車部2の台車部本体5と、座席部3の着座部7との前後方向Xおよび左右方向Yの位置は、前後位置検出手段37および左右位置検出手段38によってそれぞれ検出される。操作手段36と検出手段37,38との各出力は、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路39に与えられる。処理回路39は、車輪6の前後方向Xに昇降駆動する駆動源41を駆動するとともに、これらの車輪6の操舵を行う操舵手段42を制御する。
【0025】さらに台車部2の台車部本体5上でレール11に沿って前後移動体12を前後駆動する前後駆動手段43と、この前後移動手段12上でレール13に沿って左右移動体14を左右方向Yに駆動する左右駆動手段44と、昇降駆動のための昇降駆動手段15と、昇降移動体21上で縦の軸線24まわりに前述のように座席部7を旋回する旋回駆動手段25が、操作手段36の操作によって、制御される。
【0026】さらに重錘27,28;31,32を前後方向Xおよび左右方向Yにそれぞれ伸縮駆動する重錘駆動手段47,48,51,52が備えられる。これらの重錘駆動手段47,48;51,52は、着座部7の前後位置検出手段37および左右位置検出手段38の各出力に応答し、重心Gが、図4に示される領域34以内に存在するように、座席部3の前後および左右の移動方向X,Yとは逆方向に変位駆動する。重心Gが領域34内の予め定める位置に保たれるように重錘駆動手段47,48;51,52を制御してもよい。
【0027】図6は、作業用電動車いす1によって、温室53内において、農作業を行うときの状態を示す簡略化した平面図である。温室53内で、植物である野菜などの複数の列54,54の間の通路に本発明の作業用電動車いす1が移動される。その作業者が着座している座席部3が、仮想線55,56で示されるように、前後方向Xおよび左右方向Yにせり出して移動される。これによって座席部3に着座している作業者は、野菜の列54に近付いて農作業を行うことができ、作業性が良好である。
【0028】車いす1の台車部2を、植物の列54に近付けることが困難であっても、座席部3をこれらの列54に近付け、または列54に沿って変位することは容易である。こうして本発明によれば、農作業の作業性が向上されることになる。
【0029】台車部2は、前進または後退のいずれか一方だけの動作を行う構成であってもよい。左右駆動源44は、座席部3を台車部2の左方または右方のいずれか一方にのみせり出して駆動する構成とされてもよい。
【0030】
【発明の効果】請求項1の本発明によれば、少なくとも前進走行する台車部の左右方向に座席部が移動して変位することができるように構成されるので、座席部を台車部の左方または右方にせり出させて、作業を行うことができ、台車部を前進方向に対して左方または右方に変位させる必要がなく、操作性が向上される。
【0031】請求項2の本発明によれば、座席部を、左右方向に変位駆動するだけでなく、さらに前後移動および旋回の少なくともいずれか一方を行うようにし、このことによってもまた、作業性の向上を図ることができる。
【0032】請求項3の本発明によれば、座席部は台車上で昇降駆動されるので、作業者は高いところの物を取扱うことができ、あるいはまた立っている人との視線の高さをほぼ同一にして話をすることができるなど、作業性が向上される。
【0033】請求項4の本発明によれば、重錘が、座席部の左右移動または前後移動に対応して逆方向に変位駆動されるようにしたので、台車部、したがって本件作業用車いすの転倒を防止し、安全性を向上することができる。
【0034】請求項5の本発明によれば、重錘を、作業者が着座している座席部の重心が、台車部の接地点を結ぶ領域以内に存在するように変位し、これによって台車部の転倒を確実に抑制するとともに、その重錘の変位量をできるだけ小さくして小形化を図ることができるとともに、本件作業用車いすが占めるスペースを小さくすることができる。
【出願人】 【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
【識別番号】597167748
【氏名又は名称】財団法人新産業創造研究機構
【出願日】 平成12年6月14日(2000.6.14)
【代理人】 【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎 (外3名)
【公開番号】 特開2001−353188(P2001−353188A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2000−178563(P2000−178563)