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【発明の名称】 車椅子
【発明者】 【氏名】北川 太洋

【要約】 【課題】比較的小さい段差を容易に乗り越えることができ、しかも良好な小回り性を有することもできる車椅子を提供することを課題とし、又、足載せ板を足で容易に回動させて足下に出退できる車椅子を提供することを課題とする。

【解決手段】前輪2及び後輪3を介して走行面11を進行させることができる車椅子に於いて、前記車椅子の進行方向に直交する第一回動軸5周りに第一支持部材6aを介して回動自在に設けられた段差解消部材6と、前記段差解消部材6を、前記第一回動軸5より前方下側の位置であって且つ前記前輪2より前方に於いて走行面11と接触しないような第一定常位置に復帰させる復帰手段7とが設けられ、さらに、前記段差解消部材6が、前記前輪2の車軸である前輪車軸2aよりも前方下側における前記前輪2の外周縁2cに交差し且つ前記交差位置が前記第一定常位置より下側となる回動軌跡6cを有するよう設けられてなることを特徴とする車椅子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪(2)および後輪(3)を介して走行面(11)を進行させることができる車椅子に於いて、前記車椅子の進行方向に直交する第一回動軸(5)周りに第一支持部材(6a)を介して回動自在に設けられた段差解消部材(6)と、前記段差解消部材(6)を、前記第一回動軸(5)より前方下側の位置であって且つ前記前輪(2)より前方に於いて走行面(11)と接触しないような第一定常位置に復帰させる復帰手段(7)とが設けられ、さらに、前記段差解消部材(6)が、前記前輪(2)の車軸である前輪車軸(2a)よりも前方下側における前記前輪(2)の外周縁(2c)に交差し且つ前記交差位置が前記第一定常位置より下側となる回動軌跡(6c)を有するよう設けられてなることを特徴とする車椅子。
【請求項2】 前記段差解消部材(6)は、前記回動軌跡(6c)と略同曲率の曲面部(6b)を有する部材からなり、その曲面部(6b)が前記回動軌跡(6c)の最大半径軌跡に沿って回動するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】 使用者が座る座部(4)と、前記座部(4)に座った使用者の足下に設けられた足載せ部材(8)とを有する車椅子に於いて、前記足載せ部材(8)が、車椅子の進行方向に直交する第二回動軸(9)周りに回動自在に設けられていることを特徴とする車椅子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車椅子に関し、特に高齢者、身体障害者、交通事故等によって下肢が不自由な人等に使用される車椅子に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】下肢が不自由な人等は、車椅子を使用して生活を営む必要が生じるが、これは生活上様々な不自由をもたらす。例えば、車椅子に乗って移動する際に於いては、小さな段差ですら乗り越え難く、又、自ら車椅子から立ち上がる際に於いては、足下に設けられた足載せ板が邪魔になることもある。
【0003】このような点に鑑みて、従来、下記のような車椅子が知られている。すなわち、車椅子本体に設けられた前後一組の車輪のうち進行方向に設けられた前輪として、極めて大径の車輪が取り付けられていると共に、足載せ板が、足下に出退できるようにするために、進行方向と略平行な軸回りに回動自在に設けられた車椅子が知られている。かかる車椅子によれば、前輪に大径の車輪が使用されているので、進行時に於いては比較的小さな段差を容易に乗り越えることができ、又、立ち上がり時に於いては足載せ板を軸回りに回動させることによって足載せ板を車椅子本体の内側面に沿わせて収納することによって、足底と地面との間が開放され、そのまま地面に足をつけて立ち上がることができる。
【0004】このように従来の車椅子は、段差を比較的容易に乗り越えることができるという利点を有するものの、他方、前輪の半径が大きいため、進行時に車椅子を操作し辛い、つまり、小回り性が悪いという問題点を有する。また、足載せ板にあっては、進行方向と略平行な軸周りにのみ回動自在であるので、これを回動させて車椅子本体の内側面に沿わせて収納する場合には、足載せ板の裏面側に足を入れ、その足の甲で足載せ板を車椅子本体の内側面へと起こしながら回動させなければならず、このような手順は、下肢が不自由な人などにとっては、思いのほか困難なものである。
【0005】そこで、本発明は、比較的小さい段差を容易に乗り越えることができ、しかも良好な小回り性を有することもできる車椅子を提供することを課題とし、又、足載せ板を足で容易に回動させて足下に出退できる車椅子を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究した結果、下記の手段によって課題を解決することを見出した。すなわち、課題を解決するために本発明は、前輪2及び後輪3を介して走行面11を進行させることができる車椅子に於いて、前記車椅子の進行方向に直交する第一回動軸5周りに第一支持部材6aを介して回動自在に設けられた段差解消部材6と、前記段差解消部材6を、前記第一回動軸5より前方下側の位置であって且つ前記前輪2より前方に於いて走行面11と接触しないような第一定常位置に復帰させる復帰手段7とが設けられ、さらに、前記段差解消部材6が、前記前輪の車軸である前輪車軸2aよりも前方下側における前記前輪2の外周縁2cに交差し且つ前記交差位置が前記第一定常位置より下側となる回動軌跡6cを有するよう設けられてなる車椅子を提供する。
【0007】さらに、本発明は、前記段差解消部材6は、前記回動軌跡6cと略同曲率の曲面部6bを有する部材からなり、その曲面部6bが前記回動軌跡6cの最大半径軌跡に沿って回動するように設けられている車椅子を提供する。
【0008】また、本発明は、使用者が座る座部4と、前記座部4に座った使用者の足下に設けられた足載せ部材8とを有する車椅子に於いて、前記足載せ部材8が、車椅子の進行方向に直交する第二回動軸9周りに回動自在に設けられている車椅子を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る車椅子の好ましい実施形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態にかかる車椅子の側面図、図2は本実施形態にかかる車椅子の足載せ部材の拡大図を含む前面図、図3(a)から(d)は本実施形態にかかる車椅子の前輪部分の側面図、図4(a)から(d)は本実施形態にかかる足載せ部材を車椅子の内側からみた側面図である。尚、説明の便宜上、前方とは使用者が車椅子に座った際の顔を向ける方向であって、車椅子の通常の進行方向を、後方とはかかる前方の反対方向をさす。
【0010】本発明に係る車椅子は、車輪や座部等が支持される左右一対のフレーム1aを主要部とする車椅子本体1と、各々のフレーム1aの前方部に軸支された左右一対の小径の前輪2と、各々のフレーム1aの後方部に軸支された左右一対の大径の後輪3と、このフレーム1aに設けられた座部4と、各々のフレーム1aの内側で且つ使用者が前記座部4に座った際の足下に設けられた左右一対の足載せ部材8とを有する。
【0011】この後輪3が軸支される後輪車軸3aは、車椅子の進行方向に対して直交する方向に設けられており、さらに各々のフレーム1aの外側には、前記前輪2が軸支される前輪車軸2aの近傍且つ上方の位置に、この後輪車軸3aと平行な第一回動軸5が左右一対として設けられている。
【0012】この第一回動軸5には、車椅子が段差12を容易に乗り越えることを可能とする左右一対の段差解消部材6が、棒状の第一支持部材6aを介して回動自在に軸支されている。
【0013】この段差解消部材6は、曲面部6bを有する円弧状部材からなり、その曲面部6bの内側に於いて前記第一支持部材6aに連結されている。
【0014】この段差解消部材6の外面を構成する曲面部6bは、段差解消部材6が回動した際に円状に描かれる回動軌跡6cのうちで最も外側の軌跡である最大半径軌跡と略同曲率であり、さらにこの最大半径軌跡に沿って回動するように設けられている。すなわち、曲面部6bは、前記最大半径軌跡の一部分をなすような形状に設けられている。
【0015】かかる形状を有する段差解消部材6は、その第一回動軸5より前方下側の位置であって、段差解消部材6の最下端である曲面部6bの下端部が走行面11より上方となる位置(走行面11と接触しない位置)を第一定常位置(車椅子本体1の前方斜め下の位置)とする。そして、通常、段差解消部材6は、その第一定常位置に、重力によって第一回動軸5の直下方向迄回動しないように、復帰手段7によって支持されている。
【0016】この復帰手段7としてはコイルバネ7bが用いられ、コイルバネ7bのそれぞれの端部が、固定側であるフレーム1aと移動側である第一支持部材6aにそれぞれ設けられた2個のホック7aに連結されている。
【0017】尚、第一回動軸5の位置や、第一支持部材6aの長さ等は、段差解消部材6が、回動しても走行面11に接触することないように、且つ前記第一定常位置より下側で、前輪2と、前輪車軸2aより前方下側の外周縁2cで交差するように調整されている。
【0018】また、この段差解消部材6及び第一支持部材6aは、車椅子の重量を支えることが可能な強度を有する材料を用いて形成されている。
【0019】一方、図2の拡大図にも示すように、使用者が車椅子に座った際に足13を置く前記足載せ部材8は、長方形の板状に形成された金属製の足載せ板8aと、この足載せ板8aをフレーム1aに連結するための、棒状に形成された金属製の第二支持部材8bとを有し、足載せ板8aは第二支持部材8bの長手方向の一端部に設けられた進行方向と略平行な第三回動軸8c回りに回動自在に軸支されている。
【0020】そして、この足載せ部材8は、フレーム1aの前方部で且つ車椅子の進行方向に直交する方向に設けられた左右一対の第二回動軸9(後輪車軸3aと平行な軸)周りに、第二支持部材8bを介して、回動自在に軸支されている。すなわち、足載せ部材8は、座部4に座った使用者の前方下側で、後輪3と同方向に回動するように設けられている。
【0021】また、回動自在な足載せ部材8の不用意な回動を防止するため、足載せ板8a又は第二支持部材8bの少なくとも何れか一方と車椅子本体1との間には、係脱可能な係止手段が設けられ、それにより、通常、足載せ部材8は第二回動軸9の直下方向である第二定常位置に係止されている。この係止手段としては、例えば、車椅子本体1のフレーム1aの内側に設けられた凸部10aと、第二支持部材8bの外側に設けられた凹部10bとの凹凸嵌合によって係脱させる手段などが好ましい。
【0022】本発明に係る車椅子は、車椅子本体1と前輪2と後輪3と座部4とを有しており、且つ段差解消部材6の最下端、すなわち曲面部6bの下端部が、走行面11より上方である位置を第一定常位置として支持されているので、平坦な走行面11(例えば床面)に於いて段差解消部材6が走行面11に接することがない。従って、車椅子の使用者は、座部4に座った状態で、何らの支障なく走行面11を進行し、目的地点まで移動することが可能である。
【0023】次に、車椅子の前方に段差12がある場合には、まず前輪2の前方である第一定常位置に支持された段差解消部材6の曲面部6bが段差12に当たる(図3(a)参照)。そして、段差解消部材6は、車椅子の進行方向に直交する第一回動軸5の周りに回動自在であり、且つ第一回動軸5より前方且つその下側の位置を第一定常位置とするので、段差解消部材6は、車椅子を進行させる推進力によって、段差12に押し下げられる形で、復帰手段7に抗して、定常位置から後ろ方向且つ下向きに回動する。この段差解消部材6の下向きの回動によって、前輪2は逆に押し上げられるように走行面11から徐々に浮き上がり(図3(b)参照)、車椅子は段差解消部材6と後輪3とのみで走行面11と接しながら進行する。
【0024】さらに車椅子が進行すると、段差解消部材6は前輪2と前輪車軸2aより前方下側の外周縁2cで交差する回動軌跡6cを有するので、段差解消部材6に接触した状態の段差12は、段差解消部材6が前輪2と交差する時点に於いて前輪2に接触する。次いで、前輪2が段差12に乗り上げ、段差12が段差解消部材6から前輪2に受け渡されると、段差解消部材6は段差12から離れ、車椅子は前輪2と後輪3のみで走行面11と接する(図3(c)参照)。そして、さらに車椅子が進行すると、前輪2は完全に段差12を乗り越える(図3(d)参照)。
【0025】このとき、段差解消部材6がその第一定常位置より下方の位置で前輪2の外周縁2cと交差するように設けられているので、前輪2が段差12と接触する際の実質的な段差12の高さは、略実際の段差12の高さから段差解消部材6が回動した垂直方向の距離(略前輪2が浮き上がった高さ)を差し引いたものとなる。
【0026】このように、本発明に係る車椅子は、段差解消部材6が設けられているので、段差12を容易に乗り越えることができるとの利点を有する。また、本発明に係る車椅子は、段差解消部材6によって段差12を容易に乗り越えることが可能であるので、前輪2の半径を大きくする必要がなく、従って車椅子の小回り性が悪くなることも少ないとの利点を有する。
【0027】一方、前輪2が段差12に乗り上げることによって段差12から離れた段差解消部材6は、復帰手段7に抗して段差解消部材6を回動させる力(段差12が段差解消部材6を押さえる力)が消失し、且つ段差解消部材6が回動しても走行面11に接触することがないように設けられているので、復帰手段7のコイルバネ7b弾性力によって再び第一定常位置へ復帰させられる。これによって、段差解消部材6は特段の手段が施されることなく、次の段差12に対しても同様の段差解消作用を奏することができる(図3(d)参照)。
【0028】さらに、この車椅子に於いては、段差解消部材6が曲面部6bを有する円弧状部材からなるので、段差解消部材6が段差12と接触できる部分(曲面部6bを構成する面)の形状は長状となる。従って、この長状形状を有する面(曲面部6bを構成する面)の長手方向全域で段差12との接触が可能となり、この車椅子は、容易に乗り越えることができる段差12の高さ範囲が広がるとの利点を有する。
【0029】また、曲面部6bが段差12と接触した状態で段差解消部材6が回動する際に、その接触した部分に滑りやずれ等が生じ、曲面部6bと段差12とが接触した点である接触点が移動しても、その移動範囲が曲面部6bの全域範囲内では、曲面部6bと段差12は離れることがない。従って、段差12が滑り易い形状を有している場合又は/及び滑り易い材質からなる場合等でも、段差解消部材6は、前記と同様に、その段差12を乗り越えることを容易にすることができるとの利点を有する。
【0030】また、段差解消部材6の曲面部6bが、段差解消部材6の回動軌跡6cと略同曲率であり、且つ回動軌跡6cの最大半径軌跡に沿って回動するように設けられているので、段差解消部材7の曲面部6bの長さにかかわらず、回動軌跡6cが変化することが少ない。従って、曲面部6bの長さにかかわらず、段差解消部材6は、前記と変わらぬ段差解消作用を奏するとの利点を有する。
【0031】前記のようにして使用者が段差12を解消しながら車椅子で進行し目的地点に到達した後、使用者には、車椅子から立ち上がる必要が生じうる。その際、使用者は、足を走行面に降ろすための空間を確保する必要があるが、一般には、その位置に足載せ板がある(図4(c))ので、その足載せ板を退避させなくてはならない。そこで、従来、使用者は足載せ板の裏面側に足を入れ、その足の甲で足載せ板を車椅子本体の内側へと起こしながら回動させることで足載せ板を退避させ、前記空間を確保していた。これに対し、本発明に係る車椅子は、足載せ部材8が車椅子の進行方向に直交する第二回動軸9周りに回動自在に設けられているので(図4(a)及び(b)参照)、使用者は、足載せ部材8を進行方向に対して後方に回動させることによって足載せ板8aを退避させることがでる。従って、本発明に係る車椅子は、使用者が足を降ろすための空間を容易に確保することができるとの利点を有する(図4(d)参照)。
【0032】一方、使用者が座部4に座っているときは、足載せ板8aが第二回動軸9の直下の位置である第二定常位置に支持されるように、足載せ部材8が設けられているので、使用者は、従来の車椅子を使用する場合と同様に、容易に足載せ板8aに足13を載せることができる(図4(c)参照)。
【0033】尚、前記実施形態に於いては、段差解消部材6に、曲面部6bを有する部材として円弧状部材を用いたが、かかる部材の形状は特に限定されず、例えば三日月状、扇状、ブーメラン状とすることも可能である。
【0034】また、段差解消部材6にかかる復帰手段7としては、前記実施形態に例示したものに限定されず、重力で段差解消部材6が下方向に回動するのに抗して段差解消部材6を第一定常位置に支持する作用と、段差解消部材6が回動できるような作用と、段差解消部材6を第一定常位置に復帰させるような作用とを有するものであれば良く、例えば板バネ等他の種類のバネや、ゴムやオイルダンパーやエアダンパー等の弾性を有する部材や伸縮自在な部材等を用いることも可能である。
【0035】さらに、第二支持部材8bが第二回動軸9の直下方向で静止し易くする機構としては、前記実施形態に例示したものに限定されず、例えば第二回動軸9内部の対応する位置に凹凸を設け回動が止まり易くする機構等が挙げられる。
【0036】
【発明の効果】以上の様に、本発明に係る車椅子は、段差解消部材が備えられているので、比較的小さい段差を容易に乗り越えることができ、しかも良好な小回り性を有する車椅子を構成することも可能となる。また、本発明に係る車椅子は、段差解消部材が曲面部を有する部材からなるので、広い範囲の高さを有する段差(多様な高さの段差)を容易に乗り越えることができ、しかも滑り易い形状を有している又は/及び滑り易い材質からなる段差も、容易に乗り越えることができる。さらに、本発明に係る車椅子には、進行方向に直交する方向の軸回りに回動可能な足載せ部材が備えられているので、使用者は足載せ板を足で容易に回動させて足下に出退させることができる。
【出願人】 【識別番号】599099065
【氏名又は名称】北川 太洋
【出願日】 平成12年5月29日(2000.5.29)
【代理人】 【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇 (外1名)
【公開番号】 特開2001−333940(P2001−333940A)
【公開日】 平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願番号】 特願2000−159097(P2000−159097)