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【発明の名称】 遺体処置用具
【発明者】 【氏名】稲垣 卓三

【要約】 【課題】取り扱いやすく常温で長期間保管できるとともに、遺体の腐敗・変色を防止でき、さらに遺体感染防止および火葬場でのダイオキシン発生抑制を達成できる遺体処置用具を提供すること。

【解決手段】持ち運び可能なケース10を有し、このケース10に、常温使用の殺菌・消臭液が入れられた容器(21,22)と遺体処置用の複数枚のシーツ(31,32,33,34,35)と処置用手袋41とピンセット42とを取出し可能に収容した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 持ち運び可能なケースを有し、このケースに、常温使用の殺菌・消臭液が入れられた容器と遺体処置用の複数枚のシーツと処置用手袋とピンセットとを取出し可能に収容した遺体処置用具。
【請求項2】 前記ケースに、殺菌液が含浸されたコットンをも取出し可能に収容した請求項1記載の遺体処置用具。
【請求項3】 前記ケースに、使用済みの容器等を分別廃棄するための袋をも取出し可能に収容した請求項1又は2記載の遺体処置用具。
【請求項4】 前記ケースに収容される容器等の各物品が有害物質を発生させずに廃棄処分可能な材料から形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺体処置用具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺体処置用具に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、病院で患者が死亡した場合、所定の死体処置がなされた後、故人宅に搬送される。故人宅では、湯灌して故人の体が清められた後、死に化粧が施こされ死に装束が着せられる。そして、通夜の挙行に備えて納棺の儀が執り行われる。
【0003】ここにおいて、棺内で遺体が腐敗しないように、当該棺には大量のドライアイスが入れられ遺体は低温状態に保持されるのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記したようなドライアイスで遺体を冷却して腐敗を防止する方法は、次のような欠点を有する。
■.ドライアイスには殺菌消臭効果がないので、遺体から発せられる悪臭が遺体を取り扱う者を悩ませることになる。また、遺体に付着している細菌等に感染(遺体感染)するおそれがある。特に、遺体感染は、遺体を日常的に取り扱う葬儀社のスタッフにとっては看過できない重要問題である。
■.ドライアイスは氷の約2倍の速さで冷気を放出するので短時間で消失してしまう。そのため、遺体を長時間保存する場合には、ドライアイスを何回も補充する必要があるが、その都度業者に発注しなければならず煩雑である。また、ドライアイスは重いので運搬作業に従事する者に過大な負担をかけることになる。
■.ドライアイスによって棺内の水分が結露し外部に漏れ出すことがある。
■.ドライアイスによって遺体が冷却されているとともに棺も結露などで湿りがちであるので、火葬場での焼却時間が長びく傾向にある。また、焼却炉内の酸欠を生じ、不完全燃焼によって有害なダイオキシンが発生しやすい。
■.ドライアイスによって遺体が凍傷で薄黒く変色してしまうことがある。
【0005】本発明の目的は、常温で長期間保管可能で遺体処置を容易に行えるとともに、遺体の腐敗・変色を防止でき、さらに遺体感染防止および火葬場でのダイオキシン発生抑制を達成できる遺体処置用具を提供することにある。また、使用後の廃棄処分も環境を汚染することなく安全かつ簡単に行える遺体処置用具を提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、持ち運び可能なケースを有し、このケースに、常温使用の殺菌・消臭液が入れられた容器と遺体処置用の複数枚のシーツと処置用手袋とピンセットとを取出し可能に収容した遺体処置用具である。
【0007】かかる発明の場合、例えば病院から搬送されてきた遺体を処置するに当たっては、遺体感染を防止するためにケースから手袋を取出して手にはめる。そして、ピンセットを使用して遺体の鼻・口に詰められている綿花を一旦取出し、殺菌・消臭液を鼻・口に流し入れて綿花をつめ直す。これにより、遺体感染することなく遺体の腐敗を防止できるとともに消臭できる。また、殺菌・消臭液をシーツに染み込ませ、しかる後に当該シーツで遺体を清めることにより、遺体表面を殺菌・消臭できる。また、殺菌・消臭液を染み込ませたシーツを遺体の下に敷くとともに、腹部の上にかけたり、口の上に載せたり、さらには遺体をシーツで覆ったりすることにより、仮に遺体から体液などが外部へ漏れ出した場合でも当該体液中の菌を殺菌・消臭できる。したがって、遺体感染を完全防止できる。
【0008】ここで、殺菌・消臭液は常温で使用するので、遺体が凍傷で薄黒く変色するようなことはない。また結露も発生せず、水分が棺の外へ漏れ出すようなこともない。また、遺体を冷却しないので、火葬場での焼却時間を短縮できるとともに、完全燃焼するので有害なダイオキシンの発生を防止できる。
【0009】また、遺体処置に必要な物品(殺菌、消臭液、各シーツ、処置用手袋、ピンセット)が、全て1つのケースに収容されているので、遺体処置を簡単に行えるとともに保管や運搬も容易で急を要する葬儀にも対処できる。さらに、ドライアイスを使用する従来例よりも低コストである。
【0010】請求項2の発明は、前記ケースに、殺菌液が含浸されたコットンをも取出し可能に収容した遺体処置用具である。
【0011】かかる発明の場合、遺族・親族等が、遺体感染することなくコットンで遺体の顔などを清めることができる。これにより、請求項1の発明の場合と同様な作用効果を奏し得る他、故人と最後のスキンシップをしてお別れをすることができる。
【0012】請求項3の発明は、前記ケースに、使用済みの容器等を分別廃棄するための袋をも取出し可能に収容した遺体処置用具である。
【0013】かかる発明の場合、請求項1又は2の発明の場合と同様な作用・効果を奏し得る他、袋を用いて使用済みの物品(容器、手袋、ピンセット、ケース、コットン)を可燃ゴミと不燃ゴミごとに分けて廃棄処分できる。
【0014】請求項4の発明は、前記ケースに収容される容器等の各物品が有害物質を発生させずに廃棄処分可能な材料から形成されている遺体処置用具である。
【0015】かかる発明の場合、請求項1,2又は3の発明の場合と同様な作用・効果を奏し得る他、使用後の廃棄処分も環境を汚染することなく行える。
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】本発明に係る遺体処置用具は、図1および図2に示すように、持ち運び可能なケース10を有し、このケース10に、常温使用の殺菌・消臭液が入れられた容器(21,22)と遺体処置用の複数枚のシーツ(31,32,33,34,35)と処置用手袋41とピンセット42とが取出し可能に収容された構成とされている。
【0017】具体的には、ケース10は、軽量化・低コスト化等を図るために紙製とされている。このケース10は、開閉部15を有しており、当該開閉部15を介して開閉可能とされている。なお、ケース10は紙製であるので、焼却可能であり焼却してもダイオキシン等の有害物質は発生しない。そのため、廃棄処分を安全かつ容易に行える。
【0018】この実施形態では、常温使用の殺菌・消臭液として、強酸性イオン水が使用されている。この強酸性イオン水は、例えば水道水に塩を溶かして当該水道水の導電性を高めて電解することより生成されている。なお、上記殺菌・消臭液は、強酸性イオン水に限定されるものではなく、常温で殺菌・消臭効果を発揮するものであれば、どのような組成のものであってもよい。例えば、二酸化塩素をアルカリ性水溶液に溶解したいわゆる安定化二酸化塩素でもよい。
【0019】上記した常温使用の殺菌・消臭液はボトル状の容器(21,22)に収容されており、当該容器(21,22)は焼却してもダイオキシン等の有害物質が発生しない非塩素系合成樹脂から形成されている。ここで、非塩素系合成樹脂は、プロピレンおよびエチレン等の重合反応により製造されるもので、この実施形態ではポリオレフィンが選定されている(以下、同様)。なお、容器21には、より強い殺菌消臭効果を有する殺菌・消臭液が収容されている。また、図1中、21a,21bは、容器(21,22)のキャップである。
【0020】また、遺体処置用のシーツとしては、柩用シーツ31が1枚、カバー32が1枚、お清めシーツ33が1枚、バイオシーツ(34,35)が2枚が選定されている。この実施形態では、全てのシーツ(31,32,33,34,35)は、衛生管理の徹底を図るために、袋(31a,32a,33a,34a,35a)に入れられ密封されている。なお、各シーツ(31〜35)のうちお清めシーツ33およびバイオシーツ(34,35)は殺菌・消臭液が含浸された状態で袋(33a,34a,35a)に密封されている。
【0021】柩用シーツ31は、納棺の際に遺体の下に敷くものであり、棺の底面相当の面積を有するものとされている。カバー32は、納棺された遺体の上にかけるものであり、遺体全体を覆えるような面積を有するものとされている。お清めシーツ33は、湯灌の際に遺体の体を拭くものである。バイオシーツ(34,35)は、1枚は遺体の腹部の上にかけるものであり、1枚は口の上にのせるものである。
【0022】また、図3(A)に示す処置用手袋41は、焼却処理してもダイオキシン等の有害物質が発生しない非塩素系合成樹脂から形成されている。また、図3(B)に示すピンセット42は、焼却処理してもダイオキシン等の有害物質が発生しないように、竹製とされている。
【0023】なお、この実施形態では、殺菌・消臭液が含浸されたコットン43と芳香剤として2つのフラノボイド(図示省略)もケース10に取出し可能に収容されている。図3(B)に示すコットン43は袋(図示省略)に収容されて密閉されている。さらに、容器21に装着可能なノズル51もケース10に取出し可能に収容されている。ノズル51は、図5に示すように、柔軟性を有しかつ鼻の穴および口腔に深く挿入可能な長さを有するものとされている。容器21にノズル51を装着し、当該ノズル51を鼻および口腔に深く挿入して殺菌・消臭液を注ぎ込めば、脳や内臓(胃腸等)に効率よく殺菌・消臭液を供給できる。なお、ノズル51は、焼却処理してもダイオキシン等の有害物質が発生しない非塩素系合成樹脂から形成されている。もとより、コットン43も焼却処理してもダイオキシン等の有害物質が発生しない。
【0024】さらにまた、ケース10には、図4に示す廃棄処分用袋45が複数枚取り出し可能に収容されている。この袋45は、透明とされており、焼却してもダイオキシン等の有害物質が発生しない非塩素系合成樹脂から形成されている。
【0025】次に、この実施形態の作用について説明する。
【0026】故人宅で遺体を納棺するに当たっては、本遺体処置用具のケースから処置用手袋41を取出し、当該手袋41を手にはめる。そして、本遺体処置用具のうちの柩シーツ31に殺菌・消臭液を染み込ませ、当該シーツ31を棺の底面上に敷く。
【0027】その状態で、遺体を柩シーツ31上に安置する。次に、棺内に安置された遺体の鼻・口に詰められた綿花をピンセット42を利用して一旦取出す。そして、ノズル51が装着された容器21内の殺菌・消臭液を当該ノズル51を介して鼻・口から脳や胃腸などに流し入れ、しかる後に綿花をつめ直す。これにより、遺体の腐敗を完全防止できるとともに消臭できる。
【0028】次に、殺菌・消臭液が含浸されたお清めシーツ33をケース10から取出し、当該シーツ33で遺体の顔および首筋を丁寧に拭き清める。お清めシーツ33は、使用後は遺体の足の上にのせる。お清め後、殺菌・消臭液が含浸された2枚のバイオシーツ(34,35)のうちの1枚を遺体の腹部にのせる。もう1枚は口の上にのせる。最後に、遺体はカバー32で覆われる。また、遺体の両肩に2つのフラノボイドが添えられる。これにより、遺体を殺菌・消臭できるとともに、仮に遺体から体液などが外部へ漏れ出した場合でも当該体液中の菌を殺菌・消臭できる。したがって、遺体感染を防止できる。
【0029】こうして、遺体処置が完了したら、複数枚の廃棄処分用袋45をケース10から取り出し、使用済みの物品〔容器(21,22)、シーツ(31,32,33,34,35)、処置用手袋41、ピンセット42、コットン43、ケース10、ノズル51等〕を燃えるゴミ(可燃ゴミ)と燃えないゴミ(不燃ゴミ)とに分別して廃棄処分する。この際、廃棄処分用袋45の口をしっかり結んでおけば、遺体を清めたシーツ33等に触れることなく、例えばゴミ出し場まで持って行くことができるので、遺体感染問題も生じない。また、可燃ゴミと不燃ゴミとに分別することにより、環境汚染を最小限に抑えて廃棄処分できる。
【0030】ここで、殺菌・消臭液は常温で使用するので、遺体が凍傷で薄黒く変色するようなことはない。また結露も発生せず、水分が棺の外へ漏れ出すようなこともない。また、遺体を冷却しないので、火葬場での焼却時間を短縮できるとともに、完全燃焼するので有害なダイオキシンの発生を防止できる。
【0031】また、遺体処置に必要な殺菌・消臭液や各シーツ(31,32,33,34,35)等が、全て1つのケース10に収容されており、小型・軽量であるので、保管や運搬も容易で急を要する葬儀にも対処できる。さらに、ドライアイスを使用する従来例よりも低コストである。
【0032】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、持ち運び可能なケースを有し、このケースに、常温使用の殺菌・消臭液が入れられた容器と遺体処置用の複数枚のシーツと処置用手袋とピンセットとを取出し可能に収容したので、次のような顕著な効果を奏する。
【0033】■.遺体の腐敗を防止できるとともに消臭できる。また、殺菌・消臭液を染み込ませたシーツで遺体を覆うなどすることができ遺体感染を防止できる。
【0034】■.遺体処置に必要な物品(殺菌・消臭液、各シーツ、処置用手袋、ピンセット)が、全て1つのケースに収容されているので、遺体処置を簡単に行える。また、保管や運搬も容易で急を要する葬儀にも対処できる。
【0035】■.殺菌・消臭液は常温で使用するので、棺内で結露するようなことはなく水分の漏洩もない。
【0036】■.遺体を冷却しないので、火葬場での焼却時間を短縮できるとともに、完全燃焼するので有害なダイオキシンの発生を防止できる。
【0037】■.また、殺菌・消臭液は常温で使用するので、遺体が凍傷で薄黒く変色するようなことはない。また結露も発生せず、水分が棺の外へ漏れ出すようなこともない。
【0038】請求項2の発明によれば、ケースに、殺菌液が含浸されたコットンをも取出し可能に収容したので、請求項1の発明の場合と同様な効果を奏し得る他、故人と最後のスキンシップをしてお別れをすることができる。
【0039】請求項3の発明によれば、ケースに、使用済みの容器等を分別廃棄するための袋をも取出し可能に収容したので、請求項1又は2の発明の場合と同様な効果を奏し得る他、袋を用いて使用済みの物品(容器、手袋、ピンセット、ケース、コットン等)を可燃ゴミと不燃ゴミごとに分けて廃棄処分できる。
【0040】請求項4の発明によれば、ケースに収容される容器等の各物品が有害物質を発生させずに焼却処理可能な材料から形成されているので、請求項1,2又は3の発明の場合と同様な効果を奏し得る他、使用後の廃棄処分も環境を汚染することなく行える。
【出願人】 【識別番号】500225158
【氏名又は名称】有限会社健広社
【出願日】 平成12年5月18日(2000.5.18)
【代理人】 【識別番号】100093827
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 正義
【公開番号】 特開2001−327560(P2001−327560A)
【公開日】 平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願番号】 特願2000−146914(P2000−146914)