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【発明の名称】 車椅子の補助動力装置
【発明者】 【氏名】高田 宜裕

【要約】 【課題】外付けの補助動力装置を、使い慣れた車椅子に自動的にかつ確実に着脱可能にすることにより、使用者の利便性の向上を図ることである。

【解決手段】車椅子1に着脱可能であり、車椅子1の動力アシストを行う補助動力装置3において、車椅子1の所定のフレーム2a,2bの位置を検出する光電センサと、フレーム2a,2bと係合可能な形状を有するハンドルが先端に取り付けられたハンドル7a,7bと、ハンドル7a,7bを変位させるハンドル駆動モータと、光電センサからの情報に基づいて、フレーム2a,2bが所定の位置にあると判断した場合、ハンドル駆動モータによってハンドル7a,7bを変位させて、ハンドル7a,7bをフレーム2a,2bに係合させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車椅子に着脱可能であり、車椅子の動力アシストを行う補助動力装置において、前記車椅子の所定のフレームの位置を検出する位置検出手段と、前記フレームと係合可能な形状を有するハンドルが先端に取り付けられた係合手段と、前記係合手段を変位させる駆動手段と、前記位置検出手段からの情報に基づいて、前記フレームが所定の位置にあると判断した場合、前記駆動手段によって前記係合手段を変位させて、前記ハンドルを前記フレームに係合させる制御手段とを有することを特徴とする車椅子の補助動力装置。
【請求項2】前記位置検出手段は、前記車椅子の左右のフレームを検出し、前記係合手段は、前記車椅子の左フレーム側へ変位可能な第1のアームと、前記車椅子の右フレーム側へ変位可能な第2のアームとを有し、前記制御手段は、前記左右のフレームが所定の位置にあると判断した場合、前記駆動手段によって前記アームのそれぞれを変位させて、前記第1のアームと前記第2のアームとによって、前記左右のフレームを把持することを特徴とする請求項1に記載された車椅子の補助動力装置。
【請求項3】前記ハンドルは、前記アームに回転可能な状態で取り付けられており、前記アームに対する前記ハンドルの回転角を検出する回転角検出手段と、前記ハンドルが前記フレームと係合した状態において、前記回転角検出手段によって検出された前記ハンドルの回転角に基づいて、走行路の傾斜を算出する算出手段とをさらに有することを特徴とする請求項2に記載された車椅子の動力補助装置。
【請求項4】前記駆動手段は、電動モータであって、前記電動モータの負荷状態を検出する負荷検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記係合手段の変位を開始した後に前記電動モータの負荷が所定値よりも大きくなった場合、前記電動モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された車椅子の補助動力装置。
【請求項5】前記制御手段は、前記フレームが所定の位置にないと判断した場合、当該所定の位置に前記フレームが位置するように、前記補助動力装置を走行させることを特徴とする請求項1または2に記載された車椅子の補助動力装置。
【請求項6】前記制御手段は、前記左右のフレームの一方が所定の位置にあると判断した場合、当該フレームに係合する側の前記アームを変位させるとともに、前記左右のフレームの他方が所定の位置にくるように、前記補助動力装置を走行させることを特徴とする請求項2に記載された車椅子の補助動力装置。
【請求項7】走行路の傾斜に応じた動力アシストを行う、車椅子の補助動力装置において、前記車椅子のフレームを把持するアームと、前記アームの先端に回転可能な状態で取り付けられており、前記車椅子のフレームと係合可能な形状を有するハンドルと、前記アームに対する前記ハンドルの回転角を検出する検出手段と、前記アームによって前記フレームが把持された状態において、前記検出手段によって検出された前記ハンドルの回転角に基づいて、走行路の傾斜状態を特定する特定手段とを有することを特徴とする車椅子の補助動力装置。
【請求項8】前記特定手段は、前記ハンドルの回転角の変化に基づいて、走行路の傾斜が変化した位置を検出することを特徴とする請求項7に記載された車椅子の補助動力装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車椅子に着脱可能な補助動力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高齢化や少子化の進行、或いは介護保険制度の導入等に伴い、福祉関連の機器開発の必要性や期待が高まっている。移動補助機器である車椅子は、怪我、病気または障害のために歩行が困難な人にとって有用なものである。ところが、手動式の車椅子を使用する場合、スロープ等の坂道または段差といった状況での走行には労力を要する。特に、上り坂では、使用者(搭乗者)が疲れて手を休めると車椅子が後退してしまうことがあり、下り坂では、使用者の意思に反して速度が過大になってしまうことがある。一方、このような問題を解消するために商品化されている電動式の車椅子は、高価であるとともに、車種が少ないため選択の余地が少なく、使用者にフィットするものを必ずしも選択できないという問題がある。
【0003】そこで、使い慣れた手動式の車椅子に着脱可能な、車椅子の動力アシストを行う補助動力装置が提案されている。例えば、特開平11−178859号公報には、機械的なトグル機構によって着脱可能な、外付けの補助動力装置が開示されている。具体的には、この補助動力装置の左右両端には、車椅子の下部フレームと嵌合可能な開放溝が形成されている。補助動力装置を取り付ける場合、この開放溝に車椅子の下部フレームを嵌合した上で、ハンドルを操作してクランプを締め付ける。これにより、補助動力装置は、車椅子の下部フレームに固定される。逆に、補助動力装置を取り外す場合は、ハンドル操作でクランプを開放すればよい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した外付けの補助動力装置においては、その着脱毎に機械的機構を手動で操作しなければならない。そのため、補助動力装置の着脱を頻繁に行う場合、利用者によっては、このような作業が不便であると感じる。また、クランプの締め付けが緩いと、装着された補助動力装置が走行中に外れてしまうおそれがあるという問題もある。
【0005】そこで、本発明の目的は、外付けの補助動力装置を、使い慣れた車椅子に自動的にかつ確実に着脱可能にすることにより、使用者の利便性の向上を図ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するために、第1の発明は、車椅子に着脱可能であり、車椅子の動力アシストを行う補助動力装置において、車椅子の所定のフレームの位置を検出する位置検出手段と、フレームと係合可能な形状を有するハンドルが先端に取り付けられた係合手段と、係合手段を変位させる駆動手段と、位置検出手段からの情報に基づいて、フレームが所定の位置にあると判断した場合、駆動手段によって係合手段を変位させて、ハンドルをフレームに係合させる制御手段とを有する車椅子の補助動力装置を提供する。
【0007】ここで、上記の位置検出手段は、車椅子の左右のフレームを検出し、係合手段は、車椅子の左フレーム側へ変位可能な第1のアームと、車椅子の右フレーム側へ変位可能な第2のアームとを有することが好ましい。この場合、制御手段は、左右のフレームが所定の位置にあると判断したならば、駆動手段によってアームのそれぞれを変位させて、第1のアームと第2のアームとによって、左右のフレームを把持する。
【0008】また、上記のハンドルは、アームに回転可能な状態で取り付けられており、アームに対するハンドルの回転角を検出する回転角検出手段と、ハンドルがフレームと係合した状態において、回転角検出手段によって検出されたハンドルの回転角に基づいて、走行路の傾斜を算出する算出手段とをさらに有することが望ましい。
【0009】また、上記の駆動手段は、電動モータであり、電動モータの負荷状態を検出する負荷検出手段をさらに設けてもよい。この場合、制御手段は、係合手段の変位を開始した後に電動モータの負荷が所定値よりも大きくなったならば、電動モータの駆動を停止する。
【0010】また、上記の制御手段は、フレームが所定の位置にないと判断した場合、当該所定の位置にフレームが位置するように、補助動力装置を走行させることが好ましい。
【0011】さらに、制御手段は、左右のフレームの一方が所定の位置にあると判断した場合、当該フレームに係合する側のアームを変位させるとともに、左右のフレームの他方が所定の位置にくるように、補助動力装置を走行させることが望ましい。
【0012】一方、第2の発明は、走行路の傾斜に応じた動力アシストを行う、車椅子の補助動力装置において、車椅子のフレームを把持するアームと、アームの先端に回転可能な状態で取り付けられており、車椅子のフレームと係合可能な形状を有するハンドルと、アームに対するハンドルの回転角を検出する検出手段と、アームによってフレームが把持された状態において、検出手段によって検出されたハンドルの回転角に基づいて、走行路の傾斜状態を特定する特定手段とを有する車椅子の補助動力装置を提供する。
【0013】ここで、上記の特定手段は、ハンドルの回転角の変化に基づいて、走行路の傾斜が変化した位置を検出することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本実施形態に係る補助動力装置の取り付け説明図である。この車椅子1は、使用者が車輪16の側面に取り付けられたハンドリム17を回転操作する一般的な手動式の車椅子であって、車椅子1自体は動力機構を有していない。この車椅子1の前下側には、補助前輪18が左右に取り付けられている。また、車椅子1の後下側には、車椅子1の動力アシストを行う外付けの補助動力装置3が、着脱自在に取り付けられる。この補助動力装置3は、左右独立に回転駆動する駆動輪5a,5bと従輪6とを有するとともに、横方向(車幅方向)に延在する一対のアーム4a,4bを含む着脱機構を有している。なお、これらのアーム4a,4bの伸び幅は任意にコントロールできる。したがって、車幅が異なる車椅子1に対しても取り付けが可能であり、一般的なタイプの手動式車椅子のほぼ全車種に適合可能である。
【0015】図2に示したように、車椅子1の両サイドにおいて縦方向(車高方向)に延在するフレーム2a,2bの間に、伸縮自在なアーム4a,4bを配置した状態で、アーム4a,4bを外側へ変位させる。フレーム2a,2bを、アーム4a,4bで把持することによって、補助動力装置3は車椅子1に固定される。具体的には、アーム4a,4bは、横方向(車幅方向)に変位可能な状態で補助動力装置3に取り付けられており、ハンドル駆動モータ8を駆動させることにより外側または内側へシフトする。また、アーム4a,4bの先端にはハンドル7a,7bが取り付けられており、これらのハンドル7a,7bは、円柱状のフレーム2a,2b(パイプ)と係合可能な形状を有している。左右のハンドル7a,7bがフレーム2a,2bと係合していない状態(解放状態)でハンドル駆動モータ8を正転させると、後述する機構によって、右アーム4aが右方向へシフトするとともに、左アーム4bが左方向へシフトする。そして、左右のハンドル7a,7bがフレーム2a,2bと係合すると、ハンドル駆動モータ8が停止する。この状態におけるアーム4a,4bの把持力によって、補助動力装置3は車椅子1に固定される。逆に、補助動力装置3を取り外す場合は、ハンドル駆動モータ8を逆転させて、左右のハンドル7a,7bを内側へシフトさせればよい。
【0016】図3は着脱機構の上面図であり、図4はその正面図である。また、図5は図3に示したA−A断面図である。柱状のアーム4a,4bは、図5に示したように、矩形断面を有している。各アーム4a,4bの外側端部には、上述したハンドル7a,7bが取り付けられている。ハンドル7a,7bのうち、フレーム2a,2bと当接する部分(フレームを挟み込む部分)は、フレーム2a,2bを傷つけないような材料(例えば、ジュラコン樹脂)で形成されている。また、各アーム4a,4bの内側端部には、その中心軸に沿って形成されたネジ穴10a,10bが形成されている。これらのアーム4a,4bは、同一軸線上に配置された状態で、アーム保持部9a,9bの内部に形成されたスペースにそれぞれ収納されている(図5参照)。したがって、アーム4a,4bは、補助動力装置3の本体に固定されたアーム保持部9a,9bによって、その軸方向(車幅方向)にのみ変位可能な状態で保持される。
【0017】左右のアーム4a,4bは、送りネジ機構を介して回転ロッド11とリンクしている。図6は、回転ロッド11の説明図である。この回転ロッド11の両端部には、ネジ穴10a,10bと螺合可能な外ネジ、すなわちネジ部12a,12bが形成されており、ここで、ネジ部12a,12bは互いに逆ネジの関係になるように形成されている。また、回転ロッド11の中央には、ホィール13が取り付けられている。回転ロッド11は、アーム側のネジ穴10a,10bにネジ部12a,12bを螺合した状態で、回転可能な状態で取り付けられている。
【0018】また、ハンドル駆動モータ8は、モータ保持部14によって補助動力装置3に固定されており、その回転軸にはウォーム15が取り付けられている。このウォーム15は、回転ロッド11側のホィール13と噛合しており、両部材によってウォームギヤ機構が構成されている。
【0019】このような構成を有する着脱機構において、ハンドル駆動モータ8が駆動すると、ウォームギヤ機構(13,15)を介して、回転ロッド11が回転する。回転ロッド11の回転動作は、送りネジ機構10a,12a(10b,12b)を介して、左右のアーム4a,4bの軸方向へのスライド動作へと変換される。その際、左右のネジ部12a,12bは逆ネジの関係にあるから、ハンドル7a,7bは、ハンドル駆動モータ8が正転した場合は外側(アーム4a,4bを把持する方向)へとスライドし、反転した場合は内側へとスライドする。このように、ハンドル駆動モータ8を正転または反転させることによって、アーム4a,4bを伸縮させることができる。
【0020】図13は、補助動力装置3の制御系ブロック図である。制御ユニット20は、センサ、スイッチ類24〜31からの入力情報に基づいて、駆動モータ8,21,22の制御を行う。なお、駆動モータ8,21,22等のアクチュエータの電力は、補助動力装置3に搭載されたバッテリー23から供給される。
【0021】車椅子1の動力アシストは、使用者による特別なスイッチ操作を必要とせず、センサ24〜26の出力情報に基づいて、自動的に行われる。ここで、右エンコーダ24は、補助動力装置3の右駆動輪5a側に取り付けられており、この右駆動輪5aの回転状態を検出するセンサである。左エンコーダ25は、左駆動輪5b側に取り付けられており、左駆動輪の回転状態を検出するセンサである。また、ヨーレートセンサ26は、従輪6の近傍に設けられており、車椅子1の操舵に応じたヨーレートを検出するセンサである。一方、右駆動モータ21は、右駆動輪5aを駆動する電動モータであり、左駆動モータ22は、左駆動輪5bを駆動する電動モータである。制御ユニット20は、車椅子1の走行状態(車速、速度変化、操舵角等)を、エンコーダ24,25とヨーレートセンサ26とに基づいて推定する。そして、制御ユニット20は、推定した現在の走行状態に応じた駆動力が生じるように、駆動モータ21,22を制御する。このようにして、補助動力装置3は、利用者の意志に応じた適切な動力アシストを行う。
【0022】また、上述した着脱機構の制御は、センサ27〜31の出力情報に基づいて行われる。ここで、着脱スイッチ27は、補助動力装置3の操作パネルに設けられた、オペレータ自身で切り換えを行うスイッチである。オペレータは、補助動力装置3を取り付ける場合は着脱スイッチ27をオンに設定し、取り外す場合はオフに設定する。一対の光電センサ27は、図2に示したように、アーム4a,4bの軸方向の外側を向くように、着脱機構の左右それぞれに取り付けられている。光電センサ27としては、例えば赤外線センサを用いることができ、車椅子のフレーム2a,2bの位置、具体的には、アーム4a,4bの軸線上にフレーム2a,2bが位置しているか否かを検出するセンサである。また、リミットスイッチ29は、着脱機構に取り付けられており(図2参照)、アーム4a,4bが最も内側へスライドした場合、すなわち、アーム4a,4bが最も縮んだ状態にオンする。さらに、電流センサ31は、ハンドル駆動モータ8を流れる電流を検出して、このモータ8の負荷状態をモニタリングするためのセンサである。アーム4a,4bの外側へのスライドを阻止する作用がアーム4a,4bに働き、ハンドル駆動モータ8の負荷が大きくなるほど、ハンドル駆動モータ8には大電流が流れる。そこで、電流センサ31により検出された電流をモニタリングすることにより、アーム4a,4bがフレーム2a,2bを適切に把持したか否かを判断することができる。なお、傾斜センサ30については後述する。
【0023】補助動力装置3の取り付けは、以下のような手順で行われる。まず、オペレータは、着脱スイッチ27をオフからオンに切り換える。これにより、縮んだアーム4a、4bは外側へスライド可能なスタンバイ状態となる。スタンバイ状態において、光電センサ28により検出された両フレーム2a,2bがアーム4a,4bの軸線上に位置している場合、制御ユニット20は、補助動力装置3の取り付けが可能である判断する。この場合、制御ユニット20は、ハンドル駆動モータ8を正転させて、一対のアーム4a,4bを外側へスライドさせ始めるとともに、電流センサ31の検出電流値をモニタリングする。上述したように、アーム4a,4bがフレーム2a,2bを把持すると、ハンドル駆動モータ8の負荷が大きくなるので、検出電流値が大きくなる。そこで、補助動力装置3を車椅子1に適切に固定する力(すなわち、アーム4a,4bの把持力)が確保された時点における、ハンドル駆動モータ8を流れる電流を予め求め、この電流値をしきい値としてセットしておく。制御ユニット20は、電流センサ31の検出電流値が、このようにして予めセットされたしきい値に到達した場合、アーム4a,4bがフレーム2a,2bを把持したと判断して、ハンドル駆動モータ8の回転を停止する。これにより、補助動力装置3は、適切な固定力で車椅子1に固定される。
【0024】なお、アーム4a,4bが外側へスライドしている最中に、車椅子1または補助動力装置3が移動してしまい、補助動力装置3を取り付けできない位置的関係になった場合には、アーム4a,4bのスライド動作は中断される。この場合、アーム4a,4bは縮み側へと変位してスタンバイ状態にリセットされる。
【0025】両フレーム2a,2bがアーム4a,4bの軸線上に位置しているが、補助動力装置3に対して車椅子1が左右のどちらかにオフセットしている場合でも、補助動力装置3の取り付けを適切に行うことができる。例えば、補助動力装置3が右側にオフセットしている場合、左ハンドル7bよりも先に右ハンドル7aが右フレーム2aを把持する。この右ハンドル7aのスライドにより、車椅子1自体は右側へずれていくため、車椅子1のオフセットが解消される。その後、左ハンドル7bが左フレーム2bを把持することで、補助動力装置3は車椅子1に固定される。
【0026】また、スタンバイ状態において、左右の光電センサ28により検出されたフレーム2a,2bがアーム4a,4bの軸線上に位置していない場合、制御ユニット20は、補助動力装置2の取り付けが可能でないと判断する。したがって、制御ユニット20は、アーム4a,4bをスライドさせない。この場合、オペレータは、車椅子1または補助動力装置3を動かして、両者の相対位置を調整する。この調整を通じて、アーム4a,4bの軸線上にフレーム2a,2bが位置したならば、制御ユニット20はアーム4a,4bをスライドさせる。
【0027】一方、補助動力装置3の取り外す場合、利用者は着脱スイッチ27をオンからオフに切り換える。これにより、ハンドル駆動モータ8は逆転して、伸びたアーム4a,4bは縮み方向にスライドするため、補助動力装置3が車椅子1から解放される。そして、リミットスイッチ29からの信号によって、アーム4a,4bが最も縮んだ状態が検出されると、制御ユニット20は、アーム4a,4bのスライド動作を停止する。
【0028】このように本実施形態に係る補助動力装置3では、車種毎の取り付け用インターフェースやアダプタを個別に設けたり、車椅子1を改造することなく、使い慣れた車椅子1への着脱を自動的にかつ簡単に行うことができる。したがって、補助動力装置3の着脱に関する使用者の利便性を向上させることができる。
【0029】また、この補助動力装置3は、左右のフレーム2a,2bの間隔が異なるような車椅子1に対しても広く取り付けることが可能である。通常、車椅子1は使用者の体型等を考慮した仕様で製造されているため、車椅子1の車幅(左右のフレーム2a,2bの間隔)には、ばらつきがある。したがって、左右のフレーム2a,2bを把持するのに必要なアーム4a,4bのスライド量も、車椅子1毎に異なる。そこで、ハンドル駆動モータ8の負荷状態をモニタリングしながら、アーム4a,4bを外側にスライドさせ、所定の高負荷状態になった時点でアーム4a,4bのスライドを停止している。したがって、車幅が異なる様々な車椅子1に対しても、補助動力装置3を適切に取り付けることができるため、補助動力装置3の汎用性の向上を図ることができる。
【0030】また、アーム4a,4bの把持力によって、補助動力装置3を車椅子1に確実に固定できる。そのため、従来の技術と比較して、車椅子1の走行中に補助動力装置3が外れてしまうといった事態を有効に防止することができる。
【0031】さらに、光電センサ28により車椅子1側のフレーム2a,2bの位置を検出し、フレーム位置が適切な場合のみ、アーム4a,4bのスライド動作を行う。これにより、取り付けミス等を生じることなく、車椅子1に補助動力装置3を適切に取り付けることができる。
【0032】なお、本実施形態に係る着脱制御では、車椅子1側のフレーム2a,2bの両方がアーム4a,4bの軸線上にない場合には、補助動力装置3の取り付け動作を行わない。しかしながら、本発明に係る着脱制御はこれに限定されるものではなく、以下のようなケースを含めて広く適用することができる。
【0033】(1)ハンドル駆動モータ8を左右のアーム4a、4b毎に設け、両アーム4a,4bを独立してスライド可能にする。これにより、フレーム2a,2bの一方だけがアーム4a,4bの軸線上に位置している場合であっても、補助動力装置3の取り付けを行うことができる。例えば、補助動力装置3の進行方向が車椅子1の進行方向に対して左を向いており、右フレーム2aのみが上記の軸線上に位置しているケースを考える。この場合、まず、右アーム4aのスライド動作を行い、右アーム4aを右フレーム2aに係合させる。そして、右側の係合状態を維持しながら補助動力装置3を手動で前進させる(自走させてもよい)。これにより、補助動力装置3によって車椅子1の右側のみが押されて、車椅子1がずれながら回転方向に移動する。このような車椅子1の移動を通じて、左フレーム2bが左アーム4bの軸線上に位置した時点で、左アーム4bのスライド動作を開始する。これにより、左右のアーム4a,4bで両フレーム2a,2bを把持することができる。
【0034】(2)左右の光電センサ28としてCCDカメラを用いる。左右のCCDカメラの撮像範囲内にフレーム2a,2bが検出されているが、それらの位置がアーム4a,4bの軸線上にない場合には、補助動力装置3は自走して、前後または回転移動する。そして、両フレーム2a,2bが適切な位置になった時点で、補助動力装置3は停止して、左右のアーム4a,4bのスライド動作を行う。これにより、左右のアーム4a,4bで両フレーム2a,2bを把持することができる。
【0035】(3)一方のアーム側(例えば左アーム4b)はスライドしない固定式としてもよい。この場合、オペレータはまず固定側アーム4bのハンドル7bを左フレーム2bに係合させる。そして、この係合状態を維持しながら、右アーム4aの軸線上に右フレーム2aが位置するように、車椅子1と補助動力装置3との相対位置を調整する。そして、右側の光電センサ28が右フレーム2aを検出すると、右フレーム2aがスライドし、右ハンドル7aが右フレーム2aと係合する。これにより、左右のアーム4a,4bで両フレーム2a,2bを把持することができる。
【0036】つぎに、上述した着脱機構の構成を変形して、走行路の傾斜状態を推定する手法について説明する。図7は、右アーム4aの先端の拡大図であり、図8は、アーム4aの軸方向の回転状態の説明図である。また、図9は、右アーム4a先端の正面図である。なお、左アーム4b側を同様の構成としてもよい。アーム4aの先端には、アーム4aの軸心に対して回転可能な状態でハンドル7aがビス40によって取り付けられている。この点を詳述すると、アーム4aの先端面の中央部には、ビス40を螺合可能なネジ部を有する有底の取付孔42が軸方向に沿って形成されている。また、ハンドル7aの中央には、皿状の頭部を有するビス40が突出することなく収納できるような形状の取付孔43が形成されている。ただし、この取付孔43にはネジ部は形成されていない。ハンドル7aを取付ける場合、ハンドル7a側の取付孔43、ワッシャ41、アーム4a側の取付孔42の順でビス40を挿通し、アーム4a側の取付孔42の底部に到達するまでビス40を螺合する。ビス40は、二つの取付孔42,43の深さとワッシャ41の厚さの総和よりも若干大きな長さを有する。したがって、ハンドル7aがアーム4a先端に取付けられた状態において、両部材の間にクリアランスが生じるため、ハンドル7aはアーム4aに対して回動自在となる。なお、車椅子フレームとの着脱を支障なく行うことできるように、ハンドル7aの回動範囲は、ワッシャ41に取付けられた一対の突起状のストッパー32により規制されている。また、このハンドル7aに装着された傾斜センサ30は、重力方向を基準とした絶対的な傾斜角度を求めるICチップで構成された既存の傾斜センサを用いることができる。
【0037】また、傾斜センサ30として、アーム4aに対するハンドル7aの回転角を検出するロータリエンコーダ等を用いてもよい。この場合、傾斜センサ30から検出されたハンドル7aの回転角に基づいて、走行路の傾斜状態を算出することができる。フラットな路面上に車椅子1が置かれている場合、図12(a)に示したように、車椅子1のフレーム2aは路面と垂直になっている。この状態において、フレーム2aを把持したハンドル7aの回転角をθ1(本実施例では0°)とする。車椅子1が走行して、スロープ、段差、起伏等の上り傾斜に差し掛かると、車椅子1のピッチングが生じる。この状態では、車椅子1の補助前輪18は傾斜路上に位置しているが、補助動力装置3は未だ傾斜路に差し掛かっていない。したがって、図12(b)に示したように、フレーム2aの傾きに伴って、フレーム2aを把持したハンドル7aが時計方向に回転するため、同図に示したように、ハンドル7aの回転角は一時的にθ2(θ1<θ2)となる。このことから、ハンドル7aの回転角が所定値以上変化した場合、車椅子1の現在位置は走行路の傾斜が変化する位置(例えば、上り傾斜路の差し掛かり)であると判断することができる。
【0038】図13に示したように、制御ユニット20は、傾斜センサ30からのセンサ情報をモニタリングし、現在の位置で走行路の傾斜が変化していると判断した場合は、左右の駆動モータ21,22の駆動力を増大/低下させる制御を行う。これにより、使用者に違和感を感じさせることなく、自然なフィーリングの動力アシストを行うことができる。また、車椅子1のピッチングを車椅子1のフレーム2aからダイレクトに検出しているので、正確かつ応答性に優れたピッチング検出を行うことが可能となる。
【0039】なお、上述した実施形態では、矩形断面の角柱状のアーム4a,4bを用いた場合について説明したが、変形例として、円断面のアームを用いても同様の着脱機構を実現することができる。図10は、この変形例に係る着脱機構の正面図であり、図11は、この変形例に係るアーム先端の説明図である。なお、上述した実施形態において説明した部材と同一部材については、同一の符号を付してここでの説明を省略する。
【0040】円柱状のアーム4a,4bを用いる場合、上述した送りネジ機構の動作によりアーム4a,4b自体が回動してしまうことを規制する必要がある。そこで、この変形例では、このような回動を規制する手段として、アーム4a,4bのそれぞれに図示したようなガイド部50を設ける。右アーム4aを一例として説明すると、アーム4aの頂部には、軸方向に沿って延在するガイド溝52が形成されている。ガイドピン51を、アーム保持部9aに形成されたネジ穴に挿通し、その先端がガイド溝52と係合するまでガイドピン51を螺合する。ガイドピン51がガイド溝52に係合することによって、アーム4aの回動が規制されるとともに、ガイド溝52の軸方向長によって、アーム4aの軸方向の伸縮範囲も規制される。なお、この構造においても、一対の突起状のストッパー32によりハンドル7aの回動範囲が規制されてため、車椅子フレームとの着脱を支障なく行うことできる。
【0039】
【発明の効果】このように、本発明によれば、外付けの補助動力装置を、使い慣れた車椅子に自動的に、かつ確実に着脱可能にすることができるため、使用者の利便性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成13年3月9日(2001.3.9)
【代理人】 【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
【公開番号】 特開2001−327544(P2001−327544A)
【公開日】 平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願番号】 特願2001−67493(P2001−67493)