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【発明の名称】 移乗装置
【発明者】 【氏名】高橋 充

【要約】 【課題】本体に対して移動可能な移動体に対して身体を乗せたり降りたりするときには、この移動体が本体に対して移動しないように保持することにより、この移動体に対する乗り降りを容易とし、かつ身体の移動にあたっては移動体の円滑な移動を可能とする。

【解決手段】本体10に対して往復移動可能に設けられた移動体30に身体を乗せて移動させるための移乗装置であって、この本体10の両端部付近における移動体30の位置をそれぞれ乗降位置とし、これらの乗降位置では本体10に対して移動体30がその移動時の姿勢から傾いた状態への作動可能に構成され、この傾いた状態では本体10に対する移動体30の移動がストッパー手段(例えば凹部22と第3ローラ44)によって阻止されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体に対して往復移動可能に設けられた移動体に身体を乗せて移動させるための移乗装置であって、この本体の両端部付近における移動体の位置をそれぞれ乗降位置とし、これらの乗降位置では本体に対して移動体がその移動時の姿勢から傾いた状態への作動可能に構成され、この傾いた状態では本体に対する移動体の移動がストッパー手段によって阻止されるように構成されている移乗装置。
【請求項2】 請求項1記載の移乗装置であって、前記の乗降位置での移動体の傾き方向が、この移動体における本体の端部と対応する側が低くなるように設定されている移乗装置。
【請求項3】 請求項1記載の移乗装置であって、前記のストッパー手段が、本体上面の両端部付近に設けられた凹部と、移動体の移動時には本体の上面に接して転がるように移動体に設けられているローラとによって構成され、移動体が乗降位置に移動したときのローラが凹部に入り込み可能に位置するように設定されている移乗装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、障害や負傷などで自力歩行が困難な人の身体を例えば車両の隣り合うシート間で移動させるような場合に使用する移乗装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の移乗装置としては例えばつぎのA,Bの技術が公知である。
A.車両のシートの間などに配置して使用するボード部材(トランスファーボード)。
B.摺動抵抗の小さい材質で構成された本体に対してディスクがスライドできるように組み付けられている装置(ビージートランス)。前記Aの技術は、基本的にシートの間の隙間をボード部材によって埋めるだけのものであり、身体を移動させる本人が自力あるいは介護者の力を借りて身体を持ち上げながらボード部材の上を移動しなければならない。これに対して前記Bの技術では、ディスクの上に身体を乗せた状態で、このディスクを本体に対してスライドさせることにより、身体を持ち上げるための力を必要とすることなく、身体の移動が可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし前記Bの技術においても、前記ディスクの上に身体を乗せようとするとき、このディスクが本体に対して摺動し易いことから簡単に動いてしまい、身体をうまく乗せることができない場合がある。この対策として本体に対するディスクの摺動抵抗を大きくすることはできるが、そうするとディスクのスライドによる身体の移動が円滑でなくなる。
【0004】本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、本体に対して移動可能な移動体に対して身体を乗せたり降りたりするときには、この移動体が本体に対して移動しないように保持することにより、この移動体に対する乗り降りを容易とし、かつ身体の移動にあたっては移動体の円滑な移動を可能とすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1記載の発明は、本体に対して往復移動可能に設けられた移動体に身体を乗せて移動させるための移乗装置であって、この本体の両端部付近における移動体の位置をそれぞれ乗降位置とし、これらの乗降位置では本体に対して移動体がその移動時の姿勢から傾いた状態への作動可能に構成され、この傾いた状態では本体に対する移動体の移動がストッパー手段によって阻止されるように構成されている。
【0006】これにより、前記の乗降位置ではストッパー手段の働きによって移動体が本体に対して移動しないように保持されるので、この移動体に対する乗り降りが容易となる。そして乗降位置以外では移動体を本体に対して円滑に移動させる構成とすればよいので、身体の移動をスムースに行うことができる。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載の移乗装置であって、前記の乗降位置での移動体の傾き方向が、この移動体における本体の端部と対応する側が低くなるように設定されている。この場合には乗降位置での移動体の傾きにより、この移動体への乗り降りが一層容易となる。
【0008】請求項3記載の発明は、請求項1記載の移乗装置であって、前記のストッパー手段が、本体上面の両端部付近に設けられた凹部と、移動体の移動時には本体の上面に接して転がるように移動体に設けられているローラとによって構成され、移動体が乗降位置に移動したときのローラが凹部に入り込み可能に位置するように設定されている。この構成によれば、乗降位置における移動体の傾きを可能とし、かつそれに伴って移動体の移動を阻止するといった一連の機能がストッパー手段によって行われるので、移乗装置の構造を簡素化できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は移乗装置全体を一部断面によって表した平面図、図2は図1の一部分を拡大して表した平面図、図3は図2と対応する部分を一部断面で表した正面図である。これらの図面で示すように本実施の形態の移乗装置は、大別してベースとなる本体10と、自力歩行が困難な人などの身体を乗せるための移動体30とによって構成されている。
【0010】まず本体10の構成は、2本の枠部材12と1本の枠部材13とによってほぼコ字形状に枠組みされた二組の構造体を、それぞれにおける両枠部材12の端部に構成されたヒンジ部14によって組み合わせたもので、全体としては矩形の枠構造となっている。このヒンジ部14においては、相互の枠部材12を連結軸16の軸線まわりに相対的に回転させることができ、これによって図4で示すように本体10をその長手方向の中間部で折り曲げた格好にすることができる。
【0011】図5は図2のV−V矢視方向からみた拡大断面図、図6は同じく図2のVI−VI矢視方向からみた拡大断面図である。図5で明らかなように前記ヒンジ部14の連結軸16は、枠部材12の重ね合わせた部分を貫通した鍔付きのスリーブ部材16aと、このスリーブ部材16aの中に鍔の反対側から挿入して締め付けられたボルト16bとによって構成されている。
【0012】本体10における枠構造の長辺となっている各枠部材12の外側面には、その長さ方向に沿ってガイド溝18がそれぞれ形成されている。またこれらの各枠部材12の内側には、それぞれの上面よりも一段低くなった受け面20がガイド溝18と同様に長さ方向に沿って形成されている(図5,6)。これらのガイド溝18および受け面20は、本体10の両端部側、つまり枠構造の短辺である両枠部材13の側に至る手前の所定位置まで形成されているだけである。これにより、後で説明するようにガイド溝18および受け面20に沿って個別に案内される移動体30の第1ローラ40および第2ローラ42の移動位置が規制されることになる。なお本体10における上面の四隅、つまり各枠部材12の端部上面には凹部22がそれぞれ形成されている。しかも本体10の左右両側には、各枠部材12,13に固定されたプレート24がそれぞれ設けられている。
【0013】前記移動体30は身体を乗せる(座る)ことができる矩形状の天板32を備えており、この天板32はその表面(座面)が滑らかな曲面の膨らみをもつように僅かに湾曲している(図3あるいは後出の図7,8)。また、この天板32の裏面が本体10に対して移動体30を移動させるための構造となっている。そこで天板32の裏面の構造について説明する。
【0014】図1,2においては移動体30の天板32を取り除いた状態が示されている。これらの図面でよくわかるように、天板32の前面および背面には、本体10における枠部材12の外側に位置する側壁部34が設けられている。これらの両側壁部34の間には一対の結合リブ36が、互いの間に所定の間隔をもって配置されている。そしてこれらの結合リブ36の間には、両側壁部34に対して枠部材12を挟んで対向する位置においてリブ38がそれぞれ設けられている。なお両結合リブ36の間のほぼ中間位置には補強リブ39が設けられている。
【0015】移動体30は本体10に対してその長手方向へ往復移動するのであるが、この移動方向に関する移動体30の中間位置には、合計2個の第1ローラ40と第2ローラ42とがそれぞれ設けられている。両第1ローラ40は本体10における前面および背面の外側から前記ガイド溝18に入り込んでおり、かつこれらの軸40aは前記の両側壁部34に対してそれぞれ支持されている。両第2ローラ42は両第1ローラ40の真上において前記受け面20に乗っているとともに、これらの軸42aは前記の両リブ38にそれぞれ支持されている。
【0016】第1ローラ40および第2ローラ42からその両側へ所定の距離を隔てた位置には、合計4個の第3ローラ44がそれぞれ設けられている。これらの第3ローラ44は枠部材12の上面に乗っているとともに、個々の軸44aは側壁部34とリブ38とによってそれぞれ支持されている。また各第3ローラ44の位置には、枠部材12の外側面に接触した摺動部材46がそれぞれ設けられている。これらの摺動部材46は、側壁部34の内側面に接着などによってそれぞれ固定されている。さらに図3で示されているように、第3ローラ44から結合リブ36を隔てた個所(合計4個所)にはクッション材48が天板32の裏面に対する接着などによってそれぞれ設けられている。
【0017】図3では移動体30の前面側の側壁部34を取り除いた状態が示されている。この図3および図5から明らかなように、第1ローラ40と第2ローラ42とは本体10の枠部材12をその上下および前後から挟み込んだ状態に配置されている。結果として本体10に対する移動体30の取り付け状態が保たれ、移動体30が思いがけず本体10から外れるようなことがない。なお本体10に対して移動体30を取り付けるには、本体10を図4で示すようにヒンジ部14において折り曲げた状態にしてガイド溝18を本体10の中間部で開放する。この開放部からガイド溝18の中に第1ローラ40を入れ、そのままで本体10を元の状態に戻してガイド溝18の開放部を閉ざす。
【0018】つづいて移乗装置の使用について説明する。まず移動体30を本体10に対してその長手方向へ往復移動させる場合をみてみると、すでに説明したように第1ローラ40はガイド溝18に沿って転がりながら移動し、第2ローラ42および第3ローラ44は受け面20および枠部材12の上面に乗って転がりながら移動する。また前記の各摺動部材46は、本体10に対する移動体30の摺動抵抗を小さく抑えるように機能している。そして移動体30が本体10のいずれか一方の端部付近まで移動すると、第1ローラ40はガイド溝18の終端に達し、かつ第2ローラ42は受け面20の終端に達するので、それ以上の移動体30の移動が規制される。このように移動体30が本体10の両端部付近においてそれぞれ規制される位置を、移動体30に対する身体の「乗降位置」とする。
【0019】図7は移動体30を「乗降位置」に移動させた状態の正面図、図8は図7において移動体30の前面側の側壁部34を取り除いた状態を表した正面図である。これらの図面で示すように移動体30がいずれかの「乗降位置」に達すると、このときの移動において先行側になっていた第3ローラ44および結合リブ36が本体10の凹部22と対応する位置にくる。そこで図8で示すように凹部22に第3ローラ44および結合リブ36を入れることにより、移動体30を第1ローラ40および第2ローラ42を回転支点として傾けることができる。
【0020】なお移動体30を傾けるためには、第1ローラ40および第2ローラ42と、これらによって挟み込んでいる本体10の枠部材12との間に、設計上において適度の隙間を設けることが必要となる。しかし基本的に枠部材12と第1ローラ40および第2ローラ42との関係は、本体10に対して移動体30がスムースに移動できるように設計されているので、それだけで移動体30を容易に傾けることができる。
【0021】前記のように移動体30を「乗降位置」において傾けた状態では、移動体30の第3ローラ44および結合リブ36が本体10の凹部22に入っているので、このままの状態では移動体30は左右いずれの方向へも移動できない。つまり移動体30が傾いた状態では、凹部22と主として第3ローラ44とが移動体30の移動を阻止する「ストッパー手段」として機能している。しかもこの「ストッパー手段」は、移動体30を傾けることと、それによって移動体30の移動を阻止するといった一連の機能を果たす。また移動体30が傾いたとき、図8で示すように移動体30の天板32は本体10の枠部材13に対し、前記クッション材48の部分で当たって受け止められるので、このときの衝撃や衝突音が緩和される。
【0022】移動体30の傾き方向は本体10の端部側が低くなっているので、自力歩行が困難な人であっても図7,8の左側から身体をずらすようにして移動体30の座面に乗ることができる。このとき、座面の左側に体重がかかっているので、移動体30は傾いた状態に維持され、結果として移動体30は移動が阻止されたままに保たれる。したがって移動体30の移動を気にすることなく、座面に身体を乗せる(座る)ことができる。そして座面に乗った状態で体重をやや右にかけることで移動体30を元のほぼ水平な姿勢に戻すと、凹部22から第3ローラ44および結合リブ36が浮き上がり、移動体30は移動可能となる。
【0023】そこで移動体30を本体10に対して図7,8の反対側の端部に向けて移動させると、この反対側の「乗降位置」において移動体30を前記の場合と同様に傾けることができる。この傾きによって本体10に対する移動体30の移動が阻止され、その傾き方向も本体10の端部側で低くなっているため、身体を座面から容易に降ろすことができる。このように「乗降位置」では移動体30の移動を積極的に阻止して、この移動体に対する乗り降りを容易にしているので、移動体30の各ローラ40,42,44と本体10との関係は移動体30の円滑な移動を優先した構成にすることができる。
【0024】移乗装置を車両の隣り合うシート間で使用する場合に、シートが柔らかいと枠形状の本体10がシートに埋まった格好になり、移動体30がシートと干渉してその円滑な移動の妨げになることがある。しかし本実施の形態では本体10の両端部にプレート24が設けられているので、本体10がシートに沈み込むのを抑えて移動体30の円滑な移動を確保することができる。また前記のように本体10の中間部をヒンジ部14で折り曲げてガイド溝18を開放すれば(図4)、この本体10に対して移動体30を簡単に脱着できるので、用途によって移動体30を交換することが可能である。例えば本実施の形態における移動体30の座面は腰が乗る程度の広さであるが、身体を横たえたまま移動したい場合には、それに応じた広さをもつ移動体と交換して使用する。
【0025】移動体30の表面(座面)は、滑りやすくした方がよいという考え方と、滑りにくくした方がよいという考え方とがある。滑りやすくした場合には、移動体30から降りるときに移動体30を傾けるだけで滑り台のように簡単に降りることができる。しかしその反面、移動体30に乗る場合に体重を常に支えながら乗るか、あるいは一気に移動体30の座面中央に座るなどしなければ、途中まで乗っても滑り落ちてしまうことがある。逆に滑りにくくした場合には、乗るときに少しずつ身体をずらしながら乗っても途中で滑り落ちる心配はないが、降りるときには滑りやすくした場合と比べ簡単に滑り降りることができない。したがって、座面の滑りやすいものと滑りにくい移動体30を用意し、あるいは移動体30の表面にいずれかのシートを貼り付けるようにしておき、使用者の好みに応じて使い分けるようにするとよい。
【0026】移乗装置を収納する場合には、本体10をヒンジ部14で折り畳むことによってコンパクトにできる。このときに移動体30は本体10から取り外してもよいし、取り付けたままとしてもよい。ただし、取り付けたまま収納する場合には、折り畳んだ状態の本体10から移動体30が外れ易いため、図9,10で示すようにヒンジ部14に工夫を加えることが望ましい。これらの図9,10では本体10のヒンジ部14における片方の枠部材12に突出片50が一体に形成されている。
【0027】前記突出片50は、本体10を移動体30の脱着のために折り曲げた図9の状態ではガイド溝18から外れた位置にあり、ガイド溝18は移動体30の脱着可能に開放されている。これに対して本体10を収納のために折り畳んだ図10の状態では、突出片50がガイド溝18に位置している。したがって本体10に移動体30を取り付けたまま収納した場合に、移動体30の第1ローラ40がガイド溝18から抜け出ようとしても、それが突出片50によって規制される。なお本体10を使用状態にしたときには、当然のことながら突出片50はガイド溝18から外れた位置にあり、このガイド溝18に案内されて転がる第1ローラ40の移動が妨げられることはない。
【出願人】 【識別番号】000225577
【氏名又は名称】内浜化成株式会社
【出願日】 平成11年9月21日(1999.9.21)
【代理人】 【識別番号】100064344
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 英彦 (外3名)
【公開番号】 特開2001−87323(P2001−87323A)
【公開日】 平成13年4月3日(2001.4.3)
【出願番号】 特願平11−267482