トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 医療または衛生用品
【発明者】 【氏名】倉内 雅彦

【氏名】古田 清敬

【氏名】佐藤 弘之

【要約】 【課題】抗菌性、安全性に優れた医療または衛生用品を提供する。

【解決手段】塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする医療または衛生用品を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする医療または衛生用品。
【請求項2】セルロースが綿である塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする請求項1記載の医療または衛生用品。
【請求項3】塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩の形態が布あるいは不織布である請求項1または2記載の医療または衛生用品。
【請求項4】紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、生理用タンポン、パンティシート、汗取りパッド、母乳パッド、医療用タンポン、綿棒、救急絆創膏、ウエットティッシュー、サージカルドレッシング、医療用マスク、ガーゼ、包帯、医療用シーツ、医療用タオル、医療用ドレープ、術者用ガウン、患者衣、医療用キャップ、医療用エプロン、医療用カバーからなる群から選択される医療または衛生用品である請求項1乃至3記載の医療または衛生用品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性、安全性に優れた医療または衛生用品に関する。より詳細には、本発明は塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする医療または衛生用品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や病原性大腸菌O−157による感染の社会問題化を背景に様々な分野で新規な抗菌製品が数多く市場に出されてきた。紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、生理用タンポン、パンティシート、汗取りパッド、母乳パッド、医療用タンポン、綿棒、救急絆創膏、ウエットティッシュー、サージカルドレッシング、医療用マスク、ガーゼ、包帯、医療用シーツ、医療用タオル、医療用ドレープ、術者用ガウン、患者衣、医療用キャップ、医療用エプロン、医療用カバーといった医療または衛生用品に於いても、これらの製品が直接皮膚、粘膜または傷口に接触し、使用時には生体から分泌、滲出あるいは排出された液体を吸収することで微生物の繁殖し易い環境となるものであったり、また、手術等の細菌汚染を極度に嫌う医療現場で使用されるものであることを考えると、感染症予防の観点から抗菌性は重要な機能の一つと考えられる。
【0003】医療または衛生用品に抗菌性を付与する試みとして、特開平4−2345号広報には抗菌剤として塩化ベンザルコニウムを含有する紙おむつが開示されている。特開平5−212094号広報には抗菌剤としてスルホン酸基を導入したポリスチレン樹脂からなる強カチオン交換樹脂に銀を担持させた衛生用品が開示されている。特開平9−10296号広報には抗菌剤として塩酸クロルヘキシジンまたは臭化ドミフェンを含有させた体液吸収用品が開示されている。特開平9−108261号広報には抗菌剤としてシクロデキストリンに包摂したフィトンチッドを含有させた衛生生理用品が開示されている。特開平11−1895号広報には抗菌剤としてカルボキシメチルセルロースに銀を担持させた衛生用品が開示されている。特開平11−200245号広報にはロジンアミン化物を含む植物由来水溶性抽出物を含有する抗菌シートとそれを構成成分とする衛生用品が開示されている。
【0004】しかしながら、開示されたこれらの方法に共通する問題点として、これらが何れも製品の一部に抗菌性を有する薬剤または金属を含有させたものであり、またこれらの抗菌成分の含有の様態が混合、付着あるいはイオン性の結合であるため、生体から分泌、滲出あるいは排出された液体による溶出、あるいは皮膚、粘膜または傷口との摩擦による脱落により、アレルギー等の原因となる可能性が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点を有さない抗菌性、安全性に優れた医療または衛生用品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、医療または衛生用品またはそれらの一部を、それ自体が抗菌性を持つ塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩で構成することにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。塩基性アミノ酸セルロース部分エステルは塩基性アミノ酸のカルボキシル基とセルロースの水酸基が共有結合(エステル結合)した構造になっており、生体から分泌、滲出あるいは排出された液体による溶出、あるいは皮膚、粘膜または傷口との摩擦による脱落の可能性は低い。また、エステル結合が切断された場合にも脱落する成分は生体に対して無害のアミノ酸であるため、その安全性は極めて高い。すなわち、本発明は、塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする医療または衛生用品である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に用いる塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩は、塩基性アミノ酸部分がリジン、アルギニン、オルニチンまたはヒスチジン残基であって、それぞれリジンセルロース部分エステル、アルギニンセルロース部分エステル、オルニチンセルロース部分エステルおよびヒスチジンセルロース部分エステルとなる。この場合、塩基性アミノ酸は混合アミノ酸であっても良い。塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩のエステル化置換度は、好ましくは0.0001以上3未満である。また、塩の種類としては、例えば酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、ピロリドンカルボン酸塩のような有機酸塩、または塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩のような無機酸塩、またはルイス酸塩が挙げられる。
【0008】塩基性アミノ酸セルロース部分エステルは例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、先ず、セルロースを塩基性アミノ酸エステルを含有する処理剤液と接触させ、適宜脱液、乾燥する。次いで加熱処理を行い、その後、未反応の塩基性アミノ酸エステル等を除くため、洗浄等の後処理を行う。ここで使用されるセルロースは通常の方法でアルカリ等で前処理されていても差し支えない。さらに、加熱処理後の工程に於いて、任意の酸を用いることにより、塩基性アミノ酸セルロース部分エステルを任意の酸の塩とすることができる。
【0009】処理剤液としては塩基性アミノ酸エステル、好ましくはメチルエステルに代表される炭素数1乃至6の低級アルキルエステルを水、アルコールまたはこれらの混合物に溶解したものを使用する。塩基性アミノ酸エステルが塩酸、硫酸等の塩である場合には、必要に応じて塩基性アミノ酸エステルの10乃至200mol%の水酸化アルカリ等で中和してもよい。処理剤液中の含有割合は溶解、分散する範囲であれば任意である。この処理剤液にセルロースを浸漬し、必要に応じて適宜脱液した後、1乃至数時間風乾または加熱乾燥する。これを100乃至200℃、好ましくは120乃至180℃で1乃至100分間、好ましくは5乃至60分間加熱加工した後、洗浄、乾燥工程を経て生成物を得る。洗浄は初めに水、次いで重曹等のアルカリ水溶液およびクエン酸等の有機酸水溶液、最後に水の順で行うが、一部を適宜省略することもできる。有機酸水溶液での洗浄時に、セルロースにエステル結合した塩基性アミノ酸は塩を形成するため、有機酸水溶液での洗浄を行った場合、製品は塩基性アミノ酸セルロース部分エステル有機酸塩として得られる。
【0010】本発明はかかる塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とした医療または衛生用品である。具体的には、その形態が布あるいは不織布である塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を、少なくとも製品の一部、特に皮膚、粘膜または傷口への接触面に配してなるものであればよく、他の部分は従来公知の構造を採用することもできる。紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、生理用タンポン、パンティシート、汗取りパッド、母乳パッド、医療用タンポン、綿棒、救急絆創膏、サージカルドレッシングのように生体から分泌、滲出あるいは排出された液体を吸収する目的を持つ医療または衛生用品の場合は、塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩に加えて吸収体またはその吸収体の一部に塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を配したものを用いてもよい。この場合、その形態は必ずしも布あるいは不織布である必要はなく、繊維状または粉末状であってもよい。
【0011】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0012】製造例1<L−リジンセルロース部分エステルクエン酸塩の製造>L−リジンメチルエステル2塩酸塩2.33g(10mmol)、をメタノール15mlに溶解し、これに2規定水酸化ナトリウム水溶液5mlを加え処理剤液とした。綿不織布(ハニロン株式会社製CX32)5.0gをこの処理剤液に浸漬し、1時間風乾した後、140℃で20分間加熱処理した。これを水洗し、さらに5重量%の重曹水による洗浄および水による濯ぎを3回、10重量%のクエン酸水溶液による洗浄および水による濯ぎを3回繰り返した後、脱水、風乾し試料とした。この試料の一部を50℃で一夜真空乾燥した後、約0.5gを正確に秤量し、0.5N水酸化ナトリウム50ml中、室温で18時間攪拌しアルカリ加水分解した。繊維を濾別した後、アミノ酸分析機(日立製作所L−8500)を用いてL−リジンの定量を行った。その結果から試料1g当たりのL-リジンの結合量を算出したところ、0.105mmol(エステル化置換度0.017)であった。また、同じ検液中のクエン酸の定量をHPLCを用いて行った結果から試料1g当たりのクエン酸の結合量を算出したところ、0.190mmolであった。
【0013】製造例2 <L−アルギニンセルロース部分エステルクエン酸塩の製造>製造例1のL−リジンメチルエステル2塩酸塩に代えてL−アルギニンメチルエステル2塩酸塩2.61g(10mmol)を使用して同様の実験を行った。製造例1と同様の方法で試料1g当たりのL−アルギニンの結合量を算出したところ、0.109mmol(エステル化置換度0.018)であった。また同様に、クエン酸の結合量は0.162mmolであった。
【0014】実施例1製造例1のL−リジンセルロース部分エステルクエン酸塩の不織布、製造例2のL−アルギニンセルロース部分エステルクエン酸塩の不織布を用いて医療用マスクを作成した。また、比較品として未加工の不織布を用いて同様に医療用マスクを作成した。
【0015】試験例1専門パネル5名による官能評価により、これらの医療用マスクの着装時の使用感を、(1)使用感が非常に悪い、(2)使用感が悪い、(3)ふつう、(4)使用感がよい、(5)使用感が非常によい、の5段階にて評価した。L−リジンおよびL−アルギニンセルロース部分エステルクエン酸塩の不織布を用いて作成した医療用マスクと未加工の不織布を用いて作成した医療用マスクとの間に、評価点の差はなかった。
【0016】試験例2これらの医療用マスクから一辺約18mmの正方形の切片を作り、「JISL 1902:1998「繊維製品の抗菌力試験方法」8.定量試験」に記載された手順に準じて、抗菌力試験を実施した。試験菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538P)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae ATCC 4352)を使用した。各検体を高圧蒸気滅菌した後、Nutrient Broth培地に懸濁した一定量(約2.5×10)の菌を接種し、37℃にて18時間培養を行った後、それぞれの生菌数を測定した。結果を表1、表2に示す。
【0017】また、JIS L 1902:1998記載の式、F=M−M、S=M−M、L=M−M(但し、F:増殖値、S:静菌活性値、L:殺菌活性値、M:無加工試料の接種直後の生菌数(3試料の平均)の常用対数、M:無加工試料の18時間培養後の生菌数(3試料の平均)の常用対数値、M:加工試料の18時間培養後の生菌数(3試料の平均)の常用対数)から増殖値、静菌活性値および殺菌活性値を算出した。結果を表1、表2にあわせて示す。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】これらの試験により、L−リジンおよびL−アルギニンセルロース部分エステルクエン酸塩不織布を用いて作成した医療用マスクが充分な抗菌性を示すことが確認された。
【0021】試験例3実施例1で作成したL−リジンセルロース部分エステルクエン酸塩の不織布を用いた医療用マスクの切片0.422gを10mlの水中、室温にて震盪することにより、溶出試験を行った。HPLCを用いて溶出された成分を分析した結果、切片1gに付いて1時間後に0.0098mmol、5時間後に0.0130mmolのL−リジンの溶出が認められた。L−リジン以外の溶出物は認められなかった。
【0022】
【発明の効果】本発明により、塩基性アミノ酸セルロース部分エステル及び/またはその塩を構成成分とする、抗菌性、安全性に優れた医療または衛生用品を提供することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【出願日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−340378(P2001−340378A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−159774(P2000−159774)