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【発明の名称】 補綴部材のコーティング装置と方法
【発明者】 【氏名】マイケル.ジェー.パッパス

【要約】 【課題】先行技術による真空室では補綴部材の片側のコーティングが高品質でありながら他側のコーティングが劣質であるというむらのある表面を限定し優れた摩耗性を有する支承面を提供するコーティング装置とその方法。

【解決手段】物理蒸着装置と方法が極めて円滑にして光沢のあるコーティングを下地に供給する。本装置はコーティングされる部材の取付け用の取付具を備えた室を備える。前記取付具はコーティングされる表面によりイオン衝撃源から離間して面する“ダークサイド(dark side)”が決まるように配置される。この配置により重い多イオンがコーティングされる表面を過ぎて走行することになる。比較的軽いイオンはコーティングされる反対荷電面にさらに容易に引き出されるので非線状走行を経て部材に蒸着が施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 室と、前記室の壁部に形成されて前記室内でイオン衝撃を生成する電荷を受ける金属合金蒸発器と、そして、前記室内に配置され、前記蒸発器に負荷された電荷に反対の電荷を負荷され、そしてコーティングされる部材の少なくとも1つを、コーティングされる表面が前記蒸発器から離間して面するように収容する構成になった取付具装置と、を備えるコーティング装置。
【請求項2】前記装置が前記取付具装置を回転させる手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項3】前記取付具装置が複数の部材を収容するに要するU字型部分を備えることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項4】前記部材が補綴部材であり、またコーティングされる前記補綴部材の表面が凸形関節支承面であることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項5】前記室が窒素ガスで充満され、前記イオン衝撃がチタンイオンのものであってそれにより窒素ガスが前記チタンイオンと反応して高被着性TiNコーティングのイオン蒸着を生成することを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項6】補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法であって、少なくとも1つの金属合金蒸発器を中に配置させた室を配設する工程と、コーティングされる前記部材を前記コーティングされる裏面が前記金属合金蒸発器から離間して面するように前記室内に取付ける工程と、そして、反対電荷を前記金属合金蒸発器に、またコーティングされる前記部材に負荷させて前記部材を前記室内でイオンで衝撃を与える工程と、から成る補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法。
【請求項7】前記方法が窒素ガスを前記部材がコーティングされている間に前記室中に導入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6記載の補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法。
【請求項8】前記補綴部材が前記室内で円形路を移動させられる一方、コーティングされる表面を前記金属合金蒸発器から離間して面するよう維持することを特徴とする請求項7記載の補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法。
【請求項9】前記イオン衝撃は、チタンイオンのものであることを特徴とする請求項8記載の補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法。
【請求項10】補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法であって、少なくとも1つの金属合金蒸発器をその側壁に配置されて備える細長い円筒状室を配設する工程と、複数の部材を前記室内に配置された取付具装置上に前記部材のコーティングされる表面が前記金属合金蒸発器から離間して面するように取付ける工程と、窒素ガスを前記室中に導入する工程と、前記取付具装置を、前記補綴部材が前記室の軸線の回りを回転させられるように回転させる工程と、そして、反対の電荷を前記金属合金蒸発器に、またコーティングされる部材に負荷させて前記室内の部材に複数の単一TiNイオンと複数のTiNイオンの組合せを含むチタンイオンのものであるイオン衝撃を与える工程とから成り、前記複数のTiNイオンが比較的大きい質量と比較的小さい運動量を有し、そのため前記複数の単一イオンがおそらく誘引力により導入されて前記部材の表面に前記金属合金蒸発器から離間して面するよう蒸着させられ、それにより補綴部材のすぐれた摩耗特性を生成するより平滑にして光沢のあるコーティングが結果として得られることを特徴とする補綴部材の少なくとも1つの選択された表面上に円滑なコーティングを施す方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、補綴部材をコーティングしてそれがもう1つ別の補綴部材との関節支承もしくは摺動支承係合に置かれた時に、ひときわすぐれた磨耗量を示す均質にして光沢のある平滑なコーティングを達成できる方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】整形外科学的補綴関節は患者の少なくとも2つの骨の間の病気にかかったかあるいは損傷をうけた正常関節の少なくとも複数の部分の取替えに用いられる。全関節の取替えは典型的例として病気にかかったかあるいは損傷を受けた関節への到達と、関節を形成するその骨の両端の1部切除を必要とする。そこで金属部材が前記骨の1部切除した両端にくっつけられる。
【0003】金属摺動接点もしくは関節接点上の金属は摩耗屑を発生させ、また補綴関節の性能を低下させる分子または化学反応を生成させることが周知である。その結果として、代表的先行技術の補綴関節は先行技術の補綴関節の金属製部材を非金属部材に接してつなげるかあるいは摺動させるように設計されている。たとえば、プラスチック製支承が、関節内に組込まれて関節の金属部材と摺動および/または関節支承係合させることができる。前記プラスチック支承は生物学的液体が共存する時、硬質で耐摩耗性があり、かつ化学的に不活性である必要がある。多数の先行技術による補綴関節は超高分子量ポリエチレン(UHMWPe)製の支承を使用している。前記UHMWe支承は金属製部材が互いに接して摺動する時に起こる化学反応の原因にはならない。しかしながら、UHMWPe支承は支承に接して摺動する金属製部分が粗面である場合、摩耗が起こり得る。上記を考えると、極めて平滑な表面を提供してUHMWPe支承に接しての関節の役目もしくは摺動させることが重要である。
【0004】多くの補綴関節ではチタンもしくはコバルト・クロムの合金で形成された金属性部材を使用する。コバルトクロム合金は極めて硬質で強くかつ適当な曲げ特性を示す。しかしながら、コバルトクロムは極めて高価であるので、多数の患者はこのコバルトクロム合金に対しては敏感に反応する。またチタン合金たとえばチタンアルミニウムバナジウム合金は適当な強度と曲げ特性を有する。そのうえ、患者はチタン合金にはそれほど敏感に反応を示さないようだし、チタン合金はコバルトクロム合金に比べてそれほど高価でない。しかしながら、チタン合金は総体的にはコバルトクロム合金ほど硬質ではない。その結果、チタン合金で形成された補綴部材の関節としてつながっている表面には典型的例として薄いセラミックのコーティングが施されている。たとえば、チタン合金補綴部材の関節面に窒化チタン(TiN)コーティングを施すこともできる。
【0005】セラミックコーティングは典型的例として金属合金下地に周知の物理蒸着法により施されてきた。この技術は広範囲に亘り、たとえば工作機械技術に用いられてバイトの耐用年数を増大させてきた。先行技術による物理蒸着技術は典型的例として下地の真空コーティング室におけるコーティングに適用する。電荷が前記コーティング室でコーティングされる下地に負荷される一方、反対電荷が下地の上にコーティングされる材料に負荷される。アークが前記コーティング室に打込まれると、コーティングされる下地は高エネルギーイオン衝撃にさらされる。そこでガスがコーティング室に導入される。前記ガスは陰極のイオンと反応して高度の被着性セラミックコーティングのイオン蒸着を下地に生成させる。
【0006】図1は、本明細書では先行技術によるTiNコーティングをチタン合金補綴部材に施す真空コーティング室を略図的に示す。詳述すれば、図1は複数の表面取付自在の取替え股関節部の大腿骨部材12を入れた真空室10を示す。大腿骨部材12のそれぞれは大腿骨の切除近位端に形成された取付開口部に取付けられることになる取付ステム14を備える。前記大腿骨部材12は凸形支承面18と対向する凹形面(図示せず)を備え、大腿骨の前記切除ずみ近位端の真上にしっかりと嵌めるヘッド16をさらに備える。前記大腿骨部材12の凸形支承面18は股関節補綴の寛骨臼部材のプラスチック支承ライナーと関節支承係合に入ることになる。前記プラスチック支承ライナーは典型的例としてUHMWPeで形成されることになる。先行技術による真空室10はTiNコーティングを先行技術による大腿骨部材12の凸形関節支承面18に施すのに用いられる。上記のように、コーティングは硬質であってコーティングの摩耗を防ぐものでなければならず、また平滑であって、大腿骨部材12が接して関節の役目をする前記UHMWPeの摩耗を防ぐ必要がある。
【0007】均質なコーティングを達成するため、先行技術による真空室は先行技術による真空室10に伸入する取付具20を備える。この先行技術による取付具20は先行技術による真空室10内の概ね中心部にあり、大腿骨部材12がその上に取付けられて大腿骨部材12の凸形関節支承面18が取付具20の外側方向にかつそれから離間して面することができるように構成されている。先行技術による取付具20は先行技術による真空室10の外側に配置された電源22に取付けられている。前記電源22は電荷を前記先行技術真空室10にある前記取付具と大腿骨部材12に付与する。さらに、前記電源22は前記先行技術による真空室10内で先行技術による取付具20を回転させる機能を備えて、大腿骨部材12の凸形支承面18上に均質コーティングを形成させようとするものである。
【0008】先行技術による真空室10は前記室10の壁部に、前記大腿骨部材12に面して取付けられたチタン蒸発器24をさらに備える。前記取付具20に負荷された電荷に反対の電荷が前記蒸発器24に負荷される。その後、アークが前記真空室に打込まれると、前記大腿骨部材12の凸形関節支承面18はイオン衝撃にさらされる。窒素ガスが前記真空室10に導入される。このガスはイオンと反応して高度に被着されたセラミックTiNコーティングのイオン蒸着を大腿骨部材12の関節支承面18上に生成させる。
【0009】先行技術で実施された従来の知識が先行技術の取付具20を最適コーティングが達成できるため大腿骨部材12の関節支承面18を前記蒸発器に面するようにして使用することになる。
【0010】上述の先行技術による真空室10によりつくられた部分が、特定の場所では僅かに曇りがあり、他の場所では光沢のあることが、最近本発明の出願者により観察された。大腿骨部材12の支承面18上の異なる場所で異なる外観を呈する理由の観察のための分析が行われた。誤ってコーティングされた補綴部材が先行技術による真空室10内で不適切に回転させられたため、片方がイオン衝撃に直接に暴露されなかったことが観察された。誤ってコーティングされた大腿骨部材12上の曇りのある領域は大腿骨部材12上に形成された極めて小さい液滴によると断定された。前記液滴が支承面18上に粗さを形成し、それがUHMWPe支承に接する摩耗を増大させたものと考えられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は粗面を限定し、それによって優れた耐摩耗性を有する支承面を提供するコーティング装置と方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の性能を低下させる装置が、先行技術による真空室において性能を低下させる取付具を施した補綴部材の片側のコーティングが高品質でありながら、他方の側のコーティングが劣質であったことを具体的に示した。補綴部材のいずれの側がより良質のコーティングを達成させたかの判断を導くために、平滑かつ硬質コーティングを必要とする表面により前記室の“ダークサイド(dark side)”が決まるように補綴部材を取付具で取付けた室が開発された。このようにして、取付具を補綴部材の凸形関節支承面が前記蒸発器から離間して面するように配列した。在来の知識に反し、また先行技術の実施に反して、コーティングされ蒸発器から離間して面するよう、また従って前記“ダークサイド”が決まるようコーティングされる面に取付具を施された補綴部材が均質に光沢のあるコーティングされた面を達成できることが本発明の出願者により断定された。そのうえ、本発明の方法によりまた本真空室で達成されたコーティングが先行技術によるコーティング法と真空室で提供される小液滴が事実上無く、とりわけUHMWPeに対する優れた摩耗特性を示すものと断定された。
【0013】本物理蒸着法が前記真空室内で単一イオンと二重イオンまたは多イオンの両方を生成するものと考えられている。この多イオンは比較的大きい質量を有することはもちろんのこと、上述の小液滴と、それに相当するむらがコーティングされる補綴部材の表面上に生成させることになる。コーティングされる側面により“ダークサイド”が決まり、またこのコーティング側面がイオン源から離間して面する時、比較的大きい質量の多イオンに帰せられる運動量がそのような比較的重いイオンをしてコーティングされる“ダークサイド”面を通って事実上線状に走行させる。しかしながら、比較的質量の低い単一イオンはおそらく湾曲路を通って走行し、またチタン陽極から離れて面する反対負荷された補綴部材により誘引されるものと考えられる。この“ダークサイド”コーティング法は比較的時間を要するが、結果は先行技術で存在していた液滴が事実上無く極めて円滑なコーティングができ、優れていると立証された。その結果掲題の装置によりまた本明細書に述べられた方法により形成された補綴部材はUHMWPe支承との関節支承係合にある時、広範囲に亘る研磨を必要とすることなく優れた摩耗性を達成できる。
【0014】
【発明の実施の形態】掲題発明に係る物理蒸着装置は図2の数字30で総体的に同定されている。装置30は取付具34をその中に備えた室32を備える。前記取付具34は複数の補綴部材36がそれに取付けられるように構成されている。補綴部材36のそれぞれは前記室32内の中心位置に対し内側に面する凸形関節支承面38を備える。前記取付具34は室32の外部に配置された電源40まで伸びる。前記電源は電荷を前記取付具34に、また補綴部材36にも負荷するよう機能的に作用して前記取付具34を前記室32に回転させる。
【0015】本物理蒸着装置30は室32内に向けられた複数の蒸発器42をさらに備える。しかしながら、図2に最も明白に示されているようにコーティングされる補綴部材36の表面38は蒸発器42から離間して面している【0016】本装置30は先行技術による装置と事実上同一の方法で運転できる。詳述すれば、補綴部材36に負荷された電荷と反対の電荷が蒸発器42に負荷され、そしてアークが室に打込まれてチタンイオン衝撃を発生させる。そのうえ、窒素ガスが室に導入される。窒素ガスはチタンイオンと反応して、高被着TiNコーティングのイオン蒸着を生成させる。図3に示されているように蒸発器42により生成された複数のイオンは複数の単一TiNイオンと複数のTiNイオンの組合せを含む。複数のイオンの組合せ、たとえば二重イオンは比較的大きい質量を有し、それ故に前記の比較的大きい質量に帰せられる運動量のため一層直線に近い線で走行することになる。しかしながら前記複数の単一イオンは比較的小さい質量と小さい運動量とをもつ。これらの複数の単一イオンは補綴部材36と反対負荷された複数の単一TiNイオンの間の誘引力のため湾曲路を通って走行するこになるである。従って、図3に示されたように、前記複数の単一イオンは湾曲路を通って走行し補綴部材36の蒸発器42から離間して面するダークサイド上に蒸着されることになる。この方法は多数のイオンがその要素を完全に失うので蒸着速度を低下させる。従って、本蒸着法は図1に略図で示された先行技術の直接コーティング法よりもいくぶん高価につく。しかしながら、本蒸着法は先行技術による方法より円滑かつ光沢のある表面を生成し、さらにUHMWPe 支承部材に接する補綴部材の優れた摩耗特性を生成する。
【0017】
【発明の効果】本発明は特定の好ましい実施例に関して述べられたが、請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱することなく様々の変更を行うことができることは明白である。たとえば示された実施例は大腿骨の物理蒸着室での取付具への取付けを示している。しかしながらコーティングを必要とするどのような他の補綴部材も掲題の方法と装置によりコーティングできる。そのうえ、取付具と、蒸発器の特定場所は図2と3に示された配列から変更できる。これらのまた他の変更も掲題の開示を精読すれば、当業者には明白になることであろう。しかしながら、前節で述べたように本蒸着装置と方法は先行技術によるよりも極めて良質の表面を生成し、さらにUHMWPe支承部材に接する補綴部材の優れた摩耗特性を提供できる効果があることは明白である。
【出願人】 【識別番号】598004262
【氏名又は名称】ビュッシェル−パパス.トラスト
【出願日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【代理人】 【識別番号】100046719
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良輝
【公開番号】 特開2001−314430(P2001−314430A)
【公開日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願番号】 特願2001−80142(P2001−80142)