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【発明の名称】 体液吸収材
【発明者】 【氏名】中島 史暁

【氏名】菊地 真太郎

【要約】 【課題】消臭・殺菌が安価に実施出来、焼却処理時のダイオキシン生成を抑制可能な体液吸収材を提供する。

【解決手段】固体アルカリ性物質や固体酸性物質を消臭剤7に用いることで、消臭効果を有し、菌類の繁殖を抑制し、かつダイオキシンの発生を抑制出来る。消臭剤7はバックシート1に面する部分に配設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 液体非透過性のバックシートと、該バックシートの所定部に周端部が固着され、内側に袋部を形成する袋形成部材と、該袋部に収納され、体液を吸収可能な吸収体とを備える体液吸収材であって、前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部には、固体アルカリ性物質及び固体酸性物質からなる群から選ばれる少なくとも一つが配設されたことを特徴とする体液吸収材。
【請求項2】 おむつ又は体液吸収パッドである請求項1記載の体液吸収材。
【請求項3】 前記固体アルカリ性物質が0.1〜10g含まれる請求項1又は請求項2記載の体液吸収材。
【請求項4】 前記固体酸性物質が0.1〜10g含まれる請求項1、2又は3記載の体液吸収材。
【請求項5】 前記固体アルカリ性物質及び前記固体酸性物質の粒子径は20〜400μmである請求項1、2、3又は4記載の体液吸収材。
【請求項6】 前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部には炭酸水素ナトリウムが配設された請求項1、2、3、4又は5記載の体液吸収材。
【請求項7】 前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部にはミョウバンが配設された請求項1、2、3、4、5又は6記載の体液吸収材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は体液吸収材に関わり、特に消臭・殺菌が安価に実施出来、焼却処理時のダイオキシン生成を抑制可能な体液吸収材に関する。
【0002】
【従来の技術】人体から発生する体液(汗、尿)は食塩、尿素、乳酸(汗)、尿酸(尿)、アンモニアを主成分としている。これらの体液は、発汗、放尿時にはアンモニアが乳酸、尿酸と結合しているため臭気は殆ど無いが、時間の経過とともに乳酸、尿酸の分解によりアンモニアガスが発生し臭気となる。また、尿の臭気物質としては、アンモニアの他に硫化水素、メチルメルカプタンの硫黄化合物等がある。
【0003】これらの臭気対策として、従来、二酸化塩素ガスを吸着した吸着剤(特許第2669871号公報)や、銀含有ガラス粉の吸着剤(特公平6−51045号公報)が開示されており、また最近では特開平9−208787号記載の抗菌性を有した高分子吸収剤などが実際に利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの製品での消臭効果はまだ十分なものでは無く、幼児おむつや特に老人の介護用分野において、さらに安価で高い消臭効果を持った製品が求められている。
【0005】また、糞便から発生する大腸菌などの菌類は、使用者本人ばかりでなく、介護者や一般ゴミに紛れた場合の取扱い者の健康にまで影響を与える恐れを有しているが、その対策は上記抗菌性を有した高分子吸収剤が一部使用されているにすぎない。
【0006】一方、近年問題視されているダイオキシン問題についても、1990年の国内下水汚泥の焼却によるダイオキシンの発生量は5g−TEQ/年と推定され、これら人体からの排出物による影響も無視出来ない。
【0007】平成8年度の全国の65歳以上の人口は約1,900万人、総人口の15.1%であり、2015年には25%を超えると言われている。尿の中の塩素濃度は0.6〜1.2質量%であり、成人の1日の尿の量を1000mlとすると年間約4万t〜8万tもの塩素が排出されることとなる。老人用おむつの焼却時に発生するダイオキシンについてもこの人口の増加とともに増えてくることが考えられるが、その対策を行った製品は未だ開発されていない。
【0008】本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、消臭・殺菌が安価に実施出来、焼却処理時のダイオキシン生成を抑制可能な体液吸収材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため本発明(請求項1)は、液体非透過性のバックシートと、該バックシートの所定部に周端部が固着され、内側に袋部を形成する袋形成部材と、該袋部に収納され、体液を吸収可能な吸収体とを備える体液吸収材であって、前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部には、固体アルカリ性物質及び固体酸性物質からなる群から選ばれる少なくとも一つが配設されたことを特徴とする。
【0010】バックシートは液体非透過性である。袋形成部材は、バックシートの所定部に周端部が固着されている。この袋形成部材とバックシートにより内側には袋部が形成されている。袋形成部材は、例えば内側に吸収剤、外側に不織布の2層構造のような多層構造とするのが望ましい。
【0011】吸収体はこの袋部に収納され、体液を吸収可能である。バックシートと吸収体の間又は吸収体の内部には、固体アルカリ性物質及び固体酸性物質からなる群から選ばれる少なくとも一つを配設する。固体アルカリ性物質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類水酸化物が挙げられる。
【0012】具体的には炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セスキ炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムが好ましい。
【0013】一方、固体酸性物質としては、ミョウバン、コハク酸、酒石酸、クエン酸が適用可能である。ミョウバンは、RSO・R’(SO24HOで表される複塩の総称であり、RとしてNa、NH、Cs、Rb、Tl、R’としてAl、Cr、Fe、Ce、In、V、Co、Ti、Mnからなる物質である。
【0014】固体アルカリ性物質は、酸性のイオウ化合物を中和し、固体酸性物質はアルカリ性のアンモニアを中和する働きがある。また、かかるアルカリ性物質や酸性物質には大腸菌や病原性大腸菌などの菌類の繁殖を抑制する効果が認められている。人の皮膚への刺激を考慮すると弱酸性であることが好ましいので、固体アルカリ性物質と固体酸性物質の両方が使用されることが好ましい。
【0015】このため、体液吸収材に付着及び吸収された体液等から発生する硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄化合物、アンモニアの発生源となる乳酸、尿酸を中和消臭し、また大腸菌などの菌類の繁殖を抑制する体液が作り出す悪臭及び大腸菌などの細菌類の繁殖を抑制出来る。
【0016】また、上述の固体アルカリ性物質によれば、この体液吸収材が使用後焼却処理される場合において、これらの製品及び体液中に含まれる塩素によって発生する塩化水素ガスを中和し、ダイオキシン発生を抑制することが出来る。
【0017】また、本発明(請求項2)は、体液吸収材がおむつ又は体液吸収パッドであることを特徴とする。
【0018】更に、本発明(請求項3)は、前記固体アルカリ性物質が0.1〜10g含まれることを特徴とする。
【0019】通常紙おむつでは成人用で300g程度の尿の吸収能力があり、例えばこの尿中の塩素と等モル量の炭酸水素ナトリウムは4.2〜8.4gである。従って、これに相当する量の固体アルカリ性物質を体液吸収材中に配設することで、燃焼時にダイオキシン生成に寄与する塩素が無害な無機塩素化合物となり、ダイオキシンの生成を抑制する。また、おむつの素材が塩素化された有機物を含有するときも同様にダイオキシンの生成抑制効果を有する。
【0020】固体アルカリ性物質の添加量は、ダイオキシンを防止し、消臭効果を得るためには0.1〜10gが好ましい。0.1g未満では効果が非常に少なく、10gを超えた場合には製造価格が高くなり、また吸収体の吸水性を阻害するおそれがあるため好ましくない。
【0021】更に、本発明(請求項4)は、前記固体酸性物質が0.1〜10g含まれることを特徴とする。
【0022】消臭効果においては、固体酸性物質の添加量も固体アルカリ性物質の添加量と同様の理由により0.1〜10gであることが好ましい。
【0023】更に、本発明(請求項5)は、前記固体アルカリ性物質及び前記固体酸性物質の粒子径は20〜400μmであることを特徴とする。。
【0024】固体アルカリ性物質、固体酸性物質の粒子径は、取扱いや配置のし易さから20〜400μmが好ましい。20μm未満であると、取扱い時の粉塵の発生や、綿状パルプ吸収体の内部を通過してしまい、配置が困難となるなどの問題が生じ好ましくなく、400μmを超えた場合には表面積の減少から消臭効果が低減するため、より多くの量を配置する必要が出てくるため好ましくない。
【0025】更に、本発明(請求項6)は、前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部には炭酸水素ナトリウムが配設されたことを特徴とする。
【0026】更に、本発明(請求項7)は、前記バックシートと前記吸収体の間又は前記吸収体の内部にはミョウバンが配設されたことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態である紙おむつの断面図を図1に示す。図1において、紙おむつ10のバックシート1は液体非透過性を有している。このバックシート1の上面所定部には、吸収剤である吸収紙2の周端部2aが固着され、この吸収紙2は内側かつ上方に膨出されている。この吸収紙2の膨出部2bとバックシート1の間には、袋部3が形成されている。
【0028】また、吸収紙2の周端部2a上面には、不織布4の周端部4aが重ねて固着されている。不織布4の膨出部4bも、吸収紙2の膨出部2bと形状を合わせるように上方に膨出されている。袋部3の内部には、吸収紙2の形状に沿うように吸収体5が均一に詰められている。
【0029】吸収体5は綿状パルプで構成されている。吸収体5の下層には高分子吸収剤6が、また更に下層のバックシート1に面する部分には消臭剤7が配設されている。消臭剤7は、固体アルカリ性物質である炭酸水素ナトリウム及び固体酸性物質であるミョウバンを混合して用いている。
【0030】かかる構成において、固体アルカリ性物質や固体酸性物質を消臭剤7に用いることで、消臭効果を得ることが出来る。消臭剤7をバックシート1に面する部分に配設したのは、仮に高分子吸収剤6よりも上面の不織布4側に配置すると、高分子吸収剤6の吸収能力に影響を与えてしまうためである。また、その消臭効果も落ちてしまうためである。
【0031】固体アルカリ性物質の添加量は、ダイオキシンを防止するためには0.1〜10gが好ましい。0.1g未満では効果が非常に少なく、10gを超えた場合には製造価格が高くなるため好ましくない。また、上記尿中の塩素との等モル量に近い4〜9gが更に一層好ましい。固体アルカリ性物質は、単独の固体アルカリ性物質からなってもよいが、複数の固体アルカリ性物質の混合物でもよい。
【0032】一方、消臭効果においては、固体アルカリ性物質の添加量は0.1〜10gであることが好ましく、0.1g未満では消臭効果が非常に小さく、10gを超えた場合には製造価格が高くなるため好ましくない。また、固体アルカリ性物質の添加量は、後述する実施例の結果から、1〜3gであることが更に一層好ましい。
【0033】消臭効果においては、固体酸性物質の添加量も固体アルカリ性物質の添加量と同様の理由により0.1〜10gであることが好ましい。また、後述する実施例の結果から、1〜3gであることが更に一層好ましい。
【0034】固体アルカリ性物質、固体酸性物質の粒子径は、取扱いや配置のし易さから20〜400μmが好ましい。20μm未満であると、取扱い時の粉塵の発生や、綿状パルプ吸収体の内部を通過してしまい、配置が困難となるなどの問題が生じ好ましくなく、400μmを超えた場合には表面積の減少から消臭効果が低減するため、より多くの量を配置する必要が出てくるため好ましくない。これらの配置をし易くし、かつ表面積を大きくするためには、好ましくは100〜300μmであることが望ましい。
【0035】なお、固体アルカリ性物質としては炭酸水素ナトリウムを用いることが望ましい。炭酸水素ナトリウムは、乳酸や尿酸の分解を防止することによると推測されるアンモニアガスの発生抑制効果が見られ、これらの働きにより高い消臭効果を示す。
【0036】また、この固体アルカリ性物質や固体酸性物質には、大腸菌や病原性大腸菌などの菌類の繁殖を抑制する効果が認められている。表1に、炭酸水素ナトリウムの砂の中における大腸菌と病原性大腸菌の増殖抑制効果試験結果を示す。
【0037】
【表1】

【0038】この試験方法は、大腸菌や病原性大腸菌などを含む砂1kgに対して、臨床検体より分離同定した大腸菌(E.coli)の菌液(菌液濃度はMcfarland6程度)10mlを添加し混合したもの、及び臨床検体より分離同定した病原性大腸菌O−157:H7の菌液を濃度Mcfarland6に調整したもの10mlを添加し混合したもの、これらを100g採取してポリエチレン製透明袋に入れたものを複数作製する。
【0039】このうち1つの袋には何も加えず、比較用の基礎試料とし、他の袋には表1に示す各添加物を表1に示す各濃度(砂の質量に対する添加物の質量の割合)で添加し、袋をよく振って添加物を砂中に均一となるように混合した。このようにして得られたサンプルについて、混合直後(混合後30分〜1時間)と48時間放置後における、試料1gあたりの大腸菌数及び病原性大腸菌数を測定した。
【0040】なお、混合後の試料は菌数測定実施までポリエチレン袋にいれて室温(25℃)にて暗所に保存し、菌数は2回測定したときの平均値で示している。大腸菌の菌数はDHL寒天培地において測定し、病原性大腸菌の測定はソルビットMC平板寒天培地上の透明集落を計数し、血清抗体法による確認を実施した。表1には砂1gあたりの菌数を示した。
【0041】また、固体アルカリ性物質が配置されることで、燃焼時にダイオキシン生成に寄与する塩素が無害な無機塩素化合物となり、ダイオキシンの生成を抑制する。また、おむつの素材が塩素化された有機物を含有するときも同様にダイオキシンの生成抑制効果を有する。
【0042】
【実施例】(例1)本発明による消臭試験結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】試験方法は、平均粒径250μmの炭酸水素ナトリウムを1g、2g、3gそれぞれ添加したおむつと、無添加のおむつに同じ尿100gをそれぞれ掛け、掛けた直後、2時間後、10時間後に臭気の測定を行う。尿添加後のおむつの保存はフリージングパックを使用、臭気測定は厚生省により設定された6段階法による臭気強度測定と、コスモス電気社製ポータブル型ニオイセンサーXP−329(基板型厚膜半導体式センサー)によるアンモニア臭気測定を行った。
【0045】6段階法による臭気強度測定の判定基準は次の通りである。
0:無臭1:やっと感知出来る臭い2:何の臭いであるかわかる弱い臭い3:楽に感知出来る臭い4:強い臭い5:強烈な臭い【0046】6段階法による臭気強度測定結果においても十分な臭気低減効果が認められ、また、コスモス電気社製ポータブル型ニオイセンサーによるアンモニア臭気測定結果でもアンモニアの低減が認められた。炭酸水素ナトリウムの添加量としては、1gにおいても十分な効果が得られるが、添加量を増加することにより、より高い効果を得ることが出来る。
【0047】(例2)平均粒径250μmの炭酸水素ナトリウム1gと同量の平均粒径110μmのミョウバンを加えたおむつ、及び平均粒径110μmのミョウバンを単独で3g添加したおむつ、平均粒径200μmの炭酸カルシウムを単独で3g添加したおむつをそれぞれ作製し、尿の量を200gとした以外は例1と同様にして試験した結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】ミョウバン、炭酸カルシウムによる消臭効果が認められた。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、バックシートと吸収体の間又は吸収体の内部には、固体アルカリ性物質及び固体酸性物質からなる群から選ばれる少なくとも一つを配設したので、消臭効果を有し、菌類の繁殖を抑制し、かつダイオキシンの発生を抑制出来る。
【出願人】 【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【出願日】 平成12年4月6日(2000.4.6)
【代理人】 【識別番号】100105201
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 正利
【公開番号】 特開2001−286503(P2001−286503A)
【公開日】 平成13年10月16日(2001.10.16)
【出願番号】 特願2000−105444(P2000−105444)