| 【発明の名称】 |
水晶体実質の置換方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】西信 元嗣
【氏名】塚本 光雄
【氏名】山内 愛造
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| 【要約】 |
【課題】水晶体本来の屈折力調整能を維持しつつ、侵襲が少ない水晶体実質の置換方法を提供する。
【解決手段】(1)水晶体嚢に細孔を穿孔し、(2)該細孔から水晶体実質の少なくとも一部を排出し、(3)親水性ポリマーを含有してなる水晶体嚢直接注入剤を前記細孔から充填し、及び(4)前記細孔を封止する工程を含む、水晶体実質を置換するための方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水晶体実質を置換するための方法であって、以下の工程すなわち、(1)水晶体嚢に細孔を穿孔し、(2)該細孔から水晶体実質の少なくとも一部を排出し、(3)親水性ポリマーを含有してなる水晶体嚢直接注入剤を前記細孔から充填し、及び(4)前記細孔を封止する、工程を含む方法。 【請求項2】 前記細孔の封止が、ゲル状物質又は軟質プラスチックからなる棒状体であり、棒状体の先端部には膨大部を、中間部には周縁突起片を有し、棒状体の軸中心には閉塞管部を有する細孔封止体を用いて行われる請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記細孔封止体が、閉塞管部が棒状体の膨大部先端から棒状体の後端部まで貫通している請求項2記載の方法。 【請求項4】 前記閉塞管部が棒状体の膨大部内から棒状体の後端部まで連通しており、閉塞管部前端から膨大部先端までは易貫通性である請求項2記載の方法。 【請求項5】 前記閉塞管部内を前後スライド自在で、且つ該閉塞管部に着脱自在の剛性管体を備えている請求項2乃至4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 前記工程(4)が、細孔封止体の閉塞管部に剛性管体を挿入し、封止体先端の膨大部を前記細孔から水晶体内に挿入し、膨大部の後縁面と周縁突起片の前縁面とによって細孔周囲の外郭面を挟持した後、剛性管体を抜き取り、残留した封止体によって細孔を封止することによって行われる請求項2乃至5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 水晶体実質を置換するための方法であって、以下の工程すなわち、(1)水晶体嚢に細孔を穿孔し、(2)ゲル状物質又は軟質プラスチックからなる棒状体であって、棒状体の先端部には膨大部を、中間部には周縁突起片を有し、棒状体の軸中心には閉塞管部を有し、閉塞管部は棒状体の膨大部先端から棒状体の後端部まで貫通している細孔封止体の該閉塞管部に、閉塞管部内を前後スライド自在で且つ該閉塞管部に着脱自在の剛性管体を挿入して、封止体先端の膨大部を前記細孔から水晶体内に挿入し、(3)剛性管体の先端を膨大部先端より突出させ、この剛性管体を介して水晶体実質の少なくとも一部を排出し、(4)該剛性管体を介して、親水性ポリマーを含有してなる水晶体嚢直接注入剤を水晶体内に充填し、及び(5)前記膨大部の後縁面と周縁突起片の前縁面とによって細孔周囲の外郭面を挟持した後、剛性管体を抜き取り、残留した封止体によって細孔を封止する、工程を含む方法。 【請求項8】 前記周縁突起片が別体として着脱自在のリング体である請求項2乃至7のいずれかに記載の方法。 【請求項9】 前記ゲル状物質が、架橋されたポリビニルアルコールを含むゲル状物質である請求項2乃至8のいずれかに記載の方法。 【請求項10】 前記軟質プラスチックが、シリコンラバーである請求項2乃至8のいずれかに記載の方法。 【請求項11】 前記親水性ポリマーの含有量が1〜90重量%である請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。 【請求項12】 前記水晶体嚢直接注入剤の粘度が50,000cp以下である請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。 【請求項13】 前記水晶体嚢直接注入剤の屈折率が1.340以上、可視光線透過率が50%以上である請求項12記載の方法。 【請求項14】 前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体及びポリエチレングリコール系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。 【請求項15】 前記親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコール系重合体及びポリビニルピロリドン系重合体を含有してなる請求項14記載の方法。 【請求項16】 ヒトを除く動物に対して実施される請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。 【請求項17】 ヒトを除く動物である白内障患者に対して実施され、工程(2)において、失透した水晶体実質が除去される請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。 【請求項18】 前記工程(1)における穿孔が、レーザー光照射によって行われる請求項1乃至17記載の方法。 【請求項19】 前記レーザー光照射が、1〜500mmの焦点距離を有する集光レンズを先端に備えたライトガイドを用いて行われる請求項18記載の方法。 【請求項20】 前記工程(1)における穿孔が、穿孔用ハンドピースを用いて行われる請求項1乃至17記載の方法。 【請求項21】 前記穿孔用ハンドピースが、回転軸と、該回転軸を回転するための第1のモータと、該第1のモータと前記回転軸とを一体的に前後動させるための第2のモータと、前記回転軸の先端に着脱自在に装着されるトレバンパーと、該トレバンパーが挿通される固定外筒と、前記トレバンパー内及び/又は該トレバンパーと前記固定外筒との間の間隔に陰圧を付加するための陰圧付加手段とを有し、穿孔作業の際は前記第2のモータにより前記第1のモータと一体の回転軸を前進させて前記トレバンパーの先端を前記外筒より突出させ、常時は前記第2のモータにより前記第1のモータと一体の回転軸を後退させて前記トレバンパーの先端を前記外筒内に収容していることを特徴とする穿孔用ハンドピースである請求項20記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、水晶体実質を置換する方法に関する。さらに詳細には、白内障等の疾患による矢透などの障害がもたらされた水晶体を、毛様体の緊張−弛緩による水晶体の形状変化に基づく水晶体本来の屈折力調整能を保持したままで、好ましい透明度、屈折率等の性質を備えた状態とするために水晶体実質を置換する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】白内障は、眼球内の水晶体が混濁化、失透し、そのために視力が著しく低下して最終的には失明の原因ともなる疾患である。この白内障は先天性のものと後天性のものとに分けられるが、後天性の白内障としては、老人性、糖尿病性、外傷性、或いは紫外線や放射線等のエネルギー照射によるものなどが知られている。なかでも老人性白内障は、近年の生活環境や栄養条件の向上、医療体制の整備等による高齢化社会の進展によって、50歳以上の中高年層に多くの患者を有する体表的な老人性疾患である。 【0003】このような白内障の治療法としては、水晶体の外郭である水晶体嚢を残存させたまま混濁化した水晶体細胞のみを眼球内から外科的に除去する水晶体摘出術が行われている。また、水晶体摘出後の視力矯正のためには、眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ(ここでいう眼内レンズとはあらかじめ重合、成形されたポリマー材料に支持部を取り付け、又は該ポリマー材料の含水ゲルに支持部を取り付け、虹彩、水晶体嚢等で支持させるタイプのもの)が利用されている。人工水晶体の範疇に入る眼内レンズは、術後、眼鏡やコンタクトレンズよりもよい視機能が得られること、超音波吸引手術等の術式が確立され後嚢が残せるようになったこと、術後成績もよく合併症などが減少してきたことなどにより急速に普及している。眼内レンズの素材として硬質のポリメチルメタクリレート(PMMA)が、軟質の含水性素材としてポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)等が、また、軟質の非含水性素材としてシリコンラバー、アクリルラバー等が考案されている。 【0004】ところが、健常水晶体は本来、その変形によって屈折力を調整し、遠近視の焦点調節を行っているが、上記眼内レンズはいずれも予め形状が定まったプラスチック製固形レンズであるため、かかる焦点調節が行えないという欠点を有している。そこで、遠近両方の視覚を可能とするための多焦点眼内レンズも利用されているが、光学系の開口絞りに相当する瞳孔を同時使用するため、常に遠近二つの像が見えることとなり、必ずしも快適な視覚経験をもたらすものではない。特に高齢者等では、このような新環境に慣れるのは困難であり、適用例は少ない。また、以上説明したような術式では、水晶体実質の摘出及び眼内レンズ装着のための切開口が未だ大きいこと等の問題点も残されていた。 【0005】そこで、健常水晶体と同じように、焦点調節のための変形が可能な柔軟な人工水晶体の挿入が試みられている。例えば、J.Kesslerは動物の水晶体嚢に透明な液状シリコーンを注入して、正常な水晶体の形状を復元できることを報告している(Experiments in Refilling the Lens; ARCHIVES OF OPHTHALMOLOGY,71,[3],412-417(1964))。しかしながら、かかる方法によると注入した液状シリコーンが経時的に漏出してしまい、比較的早期に水晶体の形状が損なわれて適性な視力をもたらすことが困難になるという問題があり、従って実際の白内障治療への適用は不可能であった。 【0006】さらに上記問題点を解決する目的で開発された従来技術として、■水晶体実質を抜き出した後の水晶体嚢内に、光重合性のモノマー、光開始剤を含む眼内レンズ組成物を直接注入することにより、又は該水晶体嚢内に挿入したバルーン(薄膜状のカプセル)内に前記眼内レンズ組成物を注入することにより、水晶体嚢内で眼内レンズを形成させる方法(特開平2−255151号公報); ■水晶体実質を抜き出した後にバルーン(薄膜状のカプセル)を挿入し、該バルーン内にポリマー溶液、架橋ゲル等を注入する方法(特開平1一227753号公報)などを挙げることができる。 【0007】上記■の従来技術に関しては、水晶体内に固形物である眼内レンズが形成されるため、屈折力調整能がないこと、また、目的とする形状の眼内レンズを形成させることが困難なため、充分な視力が得られないこと、モノマー、光開始剤が生体に吸収されて悪影響を及ぼしうること、さらに滅菌処理が困難であること、といった問題がある。 【0008】また、上記■の従来技術に関しては、バルーンにポリマー溶液等を注入する方法では、たとえバルーンの素材としてエラストマーを用いても、バルーンを水晶体嚢にフィットした形状に膨らませることは困難であり、安定した視機能を得ることができないおそれがある。また、バルーンを挿入するために強膜、角膜、水晶体嚢等を大きく切開する必要があることから生体に対する侵襲が大きくなるという欠点がある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかして、本発明の目的は、白内障等で混濁化、失透した水晶体を、健常水晶体が本来有する屈折力調整能等の機能及び基本構造を保持したまま、好ましい透明度、屈折率等の性質を備えた状態に復元すべく、水晶体及びその他周辺組織に対する侵襲を最小限に抑制しつつ水晶体実質を置換することによって、予後が良好な白内障等の疾患治療を実現することができる方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは以上の現状に鑑みて、(1)混濁化、失透した水晶体細胞を除去し、次いで水晶体嚢注入剤を充填するための細孔を可能な限り小さく、且つ円滑端部となるように穿孔する; (2)細孔を損傷することなく、失透した水晶体実質を除去する; (3)細孔を損傷することなく容易に注入でき、且つ好適な屈折力をもたらすことのできる、生体に対して安全な水晶体実質置換剤を充填する;及び(4)水晶体実質置換剤の充填後に細孔を確実に封止する手法を確立し、本発明を完成するに至った。 【0011】すなわち本願第一発明により、水晶体実質を置換するための方法であって、以下の工程、すなわち、(1)水晶体嚢に細孔を穿孔し、(2)該細孔から水晶体実質の少なくとも一部を排出し、(3)親水性ポリマーを含有してなる水晶体嚢直接注入剤を前記細孔から充填し、及び(4)前記細孔を封止する、工程を含む方法を提供する。 【0012】かかる本願第一発明において、前記細孔の封止が、ゲル状物質又は軟質プラスチックからなる棒状体であり、棒状体の先端部には膨大部を、中間部には周縁突起片を有し、棒状体の軸中心には閉塞管部を有する細孔封止体を用いて行われることを好ましい実施態様としている。 【0013】そして、この細孔封止体が、閉塞管部が棒状体の膨大部先端から棒状体の後端部まで貫通しているか、又は閉塞管部が棒状体の膨大部内から棒状体の後端部まで連通しており、閉塞管部前端から膨大部先端までは易貫通性であることを好ましい実施態様としている。 【0014】また、この細孔封止体は、閉塞管部内を前後スライド自在で且つ閉塞管部に着脱自在の剛性管体を備えていることを別の好ましい実施態様としている。 【0015】さらに、前記工程(4)が、細孔封止体の閉塞管部に剛性管体を挿入し、封止体先端の膨大部を前記細孔から水晶体内に挿入し、膨大部の後縁面と周縁突起片の前縁面とによって細孔周囲の外郭面を挟持した後、剛性管体を抜き取り、残留した封止体によって細孔を封止することによって行われることを好ましい実施態様としている。 【0016】次に、本願第二発明により、水晶体実質を置換するための方法であって、以下の工程すなわち、(1)水晶体嚢に細孔を穿孔し、(2)ゲル状物質又は軟質プラスチックからなる棒状体であって、棒状体の先端部には膨大部を、中間部には周縁突起片を有し、棒状体の軸中心には閉塞管部を有し、閉塞管部は棒状体の膨大部先端から棒状体の後端部まで貫通している細孔封止体の該閉塞管部に、閉塞管部内を前後スライド自在で且つ該閉塞管部に着脱自在の剛性管体を挿入して、封止体先端の膨大部を前記細孔から水晶体内に挿入し、(3)剛性管体の先端を膨大部先端より突出させ、この剛性管体を介して水晶体実質のを排出し、(4)該剛性管体を介して、親水性ポリマーを含有してなる水晶体嚢直接注入剤を水晶体内に充填し、及び(5)前記膨大部の後縁面と周縁突起片の前縁面とによって細孔周囲の外郭面を挟持した後、剛性管体を抜き取り、残留した封止体によって細孔を封止する、工程を含む方法が提供される。 【0017】以上の本願第一及び第二発明において使用される細孔封止体は、周縁突起片が別体として着脱自在のリング体であること、閉塞管部内を前後スライド自在で且つ閉塞管部に着脱自在の剛性管体を備えていること、ゲル状物質が架橋されたポリビニルアルコールを含むゲル状物質であること、及び軟質プラスチックがシリコンラバーであることをそれぞれ別の好ましい実施態様としている。 【0018】また、以上の本願発明において、水晶体内に充填される水晶体嚢直接注入剤に含まれる前記親水性ポリマーの含有量が1〜90重量%であることを好ましい実施態様としている。 【0019】さらには、前記水晶体嚢直接注入剤は、その粘度が50,000cp以下であること、屈折率が1.340以上、可視光線透過率が50%以上であることを好ましい実施態様としており、また、前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体及びポリエチレングリコール系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーであることと、前記親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコール系重合体及びポリビニルピロリドン系重合体を含有してなることを好ましい実施態様としている。このような水晶体嚢直接注入剤を充填して封止すれば、摘出前の水晶体に実質的に対応する形状を与え、且つ、水晶体が本来有している毛様体の緊張−弛緩による水晶体の形状変化に基づく屈折力調整能をも注入後の水晶体実質置換物に付与することができる。 【0020】また、以上の本願発明は、ヒトを除く動物に対して実施されること、ならびに白内障患者に対して実施され、工程(2)において失透した水晶体実質が除去されることを好ましい実施態様としている。 【0021】さらに上記本願発明において、前記工程(1)における穿孔が、レーザー光照射によって行われるか、又は穿孔用ハンドピースを用いて行われることをそれぞれ好ましい実施態様としている。レーザー光照射によって穿孔を行う場合、1〜500mmの焦点距離を有する集光レンズを先端に備えたライトガイドを用いることが好ましく、また穿孔用ハンドピースとしては、回転軸と、該回転軸を回転するための第1のモータと、該第1のモータと前記回転軸とを一体的に前後動させるための第2のモータと、前記回転軸の先端に着脱自在に装着されるトレバンパーと、該トレバンパーが挿通される固定外筒と、前記トレバンパー内及び/又は該トレバンパーと前記固定外筒との間の間隔に陰圧を付加するための陰圧付加手段とを有し、穿孔作業の際は前記第2のモータにより前記第1のモータと一体の回転軸を前進させて前記トレバンパーの先端を前記外筒より突出させ、常時は前記第2のモータにより前記第1のモータと一体の回転軸を後退させて前記トレバンパーの先端を前記外筒内に収容したものであることが好ましい。 【0022】以下、これらの発明及び好ましい実施態様について、実施の形態を詳説する。 【0023】 【発明の実施の形態】(1)水晶体嚢の穿孔工程本発明の、水晶体実質を置換するための方法において先ず実施されるのは、水晶体嚢に細孔を形成する穿孔工程である。この細孔は、続く水晶体実質の排出と水晶体嚢直接注入剤の充填を円滑に行い、且つ侵襲をできるだけ抑制するために、7mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下の直径のものとするとよい。また、水晶体嚢直接注入剤充填後に細孔を封止した後、長期にわたり水晶体嚢直接注入剤が封止部から漏出しないようにする必要があるので、縁部に凹凸や鋸歯形状等を含まない、滑らかな曲線を有する真円柱形の細孔を形成することが望ましい。 【0024】そこで本発明においては、レーザー光の照射、又は穿孔用ハンドピースを用いた穿孔を実施して、所望サイズ及び形状を有する細孔を形成するとよい。 【0025】レーザー光照射によって穿孔を行う場合、集光レンズ2を先端部に配設したライトガイド1(一部概略を示す図1参照)を使用することによって実施するとよい。このライトガイド1は、内部に多数のファイバー束を備え、当該ファイバー束の直径は通常、目的とする細孔の直径に近似した数値に設定される。すなわち、本発明においては、7mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下の直径を有するファイバー束からレーザー光が照射されるライトガイド1を用いるとよい。 【0026】レーザー光照射に際し、水晶体を通過して後方に位置する種々の組織、例えば硝子体、網膜、脈絡膜、毛様体、視神経、血管等にまで到達してこれら組織を損傷する可能性がある、単位面積当たりのエネルギー照射量をでき得る限り低値とするため、集光レンズ2の焦点距離Lは、好ましくは1〜2000mm、より好ましくは、1〜50mmとして、集光後に光線が広角に散乱するようにするとよい。この焦点距離Lが長すぎると、水晶体穿孔後に光線が比較的集中したままで放射され、上記後方組織への単位面積当たりのエネルギー照射量が高くなりすぎて組織損傷を免れないことがある。かかる焦点距離は、集光レンズ2の曲率半径と、レンズ材料の屈折率とを適宜に選択することによって調整可能であり、高屈折率或いは屈折率分布型のレンズが好適に使用できる。 【0027】また、レーザー光源の種類や出力、ライトガイドの設計を適宜に選択するなどして、あるいは別異の集光デバイスを用いることによって、さらには、レーザーエネルギーを水晶体嚢に特異的に集中させる手段、例えば水晶体嚢に吸収能を高めることができる、補色関係にある色素液、例えば赤色光に対するインドシアニングリーンを塗布するなどして、上記のような集光レンズを使用せずに成功裡に穿孔を行うことも可能である。 【0028】レーザー光源としては従来より知られている種々の固体レーザー、液体レーザー、気体レーザーや半導体レーザーが利用可能であるが、例えばエルビュームレーザー、Nd:YAGレーザー、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー等、細孔の直径と孔縁の強度を制御する上で有利な波長及び強度を提供できるものを使用することが望ましい。 【0029】レーザー光の波長は、紫外から可視域を経て近赤外、すなわち、200〜1500nm、より好ましくは400〜800nmとすることが、エイミング光使用の誤差を回避し得る点で望ましい。 【0030】なお、前記の通り端部が滑らかな真円柱状の細孔形成を実現することが重要であるものの、後方組織への損傷を抑制するためには、かかる後方組織へのレーザー露光量を国際電気標準会議(ICE)の最大許容露光量MPE(maximum permissible exposure)(レーザ応用技術ハンドブック、レーザ協会編集、(1989年4月1日 初版第4冊、朝倉書店)、第8章、表8.2参照)を下回る数値に抑制するよう、レーザー光の出力を調整すべきである。 【0031】また、穿孔される水晶体嚢面とライトガイド先端との距離を可能な限り短くすることで、被穿孔面に熱エネルギ ーを最大限に集中させつつ細孔の直径を制御し、周辺組織への損傷は回避するようにすることが好ましい。 【0032】なお、レーザー光の代わりに、加工エネルギーを水晶体嚢の被穿孔面に集中的に作用させるように走査することが可能な加工手段を用い、例えば高周波電流刺激などによって、水晶体後方ではエネルギーが散乱されるようにして後方組織に対する損傷を妨げ、且つ周辺組織にも悪影響を及ぼさない条件下に穿孔を行ってもよい。 【0033】別の穿孔手段として挙げられる穿孔用ハンドピースは、例えば特開平10−212号公報、特開平10−328225号公報等に記載された、図2(A)に10にて示す、円筒状(パイプ状)の刃物で、その先端部にテーパ部10aをつけ、先端10bを刃とした、通常トレパンバー(trepan bar)を備えたものが利用される。 【0034】特開平10−212号公報に開示されているのは、ヘッド部に着脱自在にトレパンバーが装着されているハンドピースであり、トレパンバーの先端の刃を水晶体嚢の皮膜に押し当てて回転して穿孔するに際し、外筒11又はトレパンバーに吸気チューブを接続し、穿孔前又は穿孔中にバキューム装置を作動させてヘッド外筒内又はトレパンバー10内の圧力を負圧にし、水晶体嚢の皮膜110をトレパンバーの先端に吸い付け、その状態でトレパンバーを回転して穿孔するものである(図2(B)参照)。 【0035】また特開平10−328225号公報に開示されているのは、図説は省略するが、トレパンバーの回転速度が十分に上がってから穿孔作業を開始するように、トレパンバーが直接或いは中継回転軸を通して連結される軸方向に移動可能な可動回転軸と、モータ等の動力源によって回転され前記可動回転軸を軸方向可動可能に連結する回転軸と、トレパンバーを内筒とする外筒と、前記可動回転軸を軸方向に移動させるためのアクチュエータ(作動桿)とを有する構成として、トレパンバーの先端を外筒内に後退させておき、動力源が駆動されて所定時間経過後にアクチュエータが駆動されてトレパンバーの先端が外筒の先端から所定量突出されて初めて穿孔作業ができるようにしたものである。この装置によれば、トレパンバーが外筒より突出する量を所定量(例えば、水晶体の厚みが約4mmであるので、3mm位)に制御できるため、必要以上にトレパンバーが水晶体に入り込むことがなく安全性が高い上、穿孔作業時にトレパンバー及び外筒を通して吸気されるため、水晶体表面の皮膜がトレパンバーの刃部に吸い寄せられて刃部を密着するため、よりきれいな細孔とすることができるのである。 【0036】より好ましくは、図3に示される、回転軸219と、該回転軸219を回転するための第1のモータ(トレパンバー回転用モータ)216と、該第1のモータ216と前記回転軸219とを一体的に前後動させるための第2のモータ(トレパンバー移動用モータ)211と、前記回転軸219の先端に着脱自在に装着されるトレバンパー10と、該トレバンパー10が挿通される固定外筒22と、前記トレバンパー10内及び/又は該トレバンパー10と前記固定外筒22との間の間隔に陰圧を付加するための陰圧付加手段とを有し、穿孔作業の際は前記第2のモータ211により前記第1のモータ216と一体の回転軸219を前進させて前記トレバンパー10の先端を前記外筒22より突出させ、常時は前記第2のモータ211により前記第1のモータ216と一体の回転軸219を後退させて前記トレバンパー10の先端を前記外筒23内に収容しているハンドピース210が用いられる。 【0037】ここで先ず、上記のように本発明の穿孔工程で好適に利用することができる穿孔用ハンドピース210に適用されるトレパンバー10の実施態様について詳説する。 【0038】図2(B)に示す態様では、外筒11の先端を水晶体嚢皮膜110に当接させ、トレパンバー10内及び/又は該トレパンバー10と外筒11との間隙(すなわち、外筒11内部)を通して矢印A方向に吸気し、それによって皮膜110を矢印B方向に吸引して該皮膜110を突出させてその表面に張力を付与した後、トレパンバー10を回転しながら矢印C方向に前進させて皮膜110を切開するものである。 【0039】また、図4(A)〜図4(C)において、やはり10はトレパンバーを示し、22は外筒、23は外筒22の外側に該外筒22に対して所定の間隙Gをもって同軸的に配設された外筒であり、該外筒22と23により二重管を構成している。そして、図4(C)に示す24はトレパンバー10内に配設された内筒(センターパイプ)であって、トレパンバー10は、矢印A及びB方向に移動可能であり、外筒22、23及び内筒24は固定されている。 【0040】図4(A)に示した態様は、外筒22と23の間の間隙Gを通して吸引するようにしたもので、このようにすると、皮膜110は間隙G部で吸引され、外筒22の前面では平らに引張され、この平らに引張された皮膜110にトレパンバー10の先端部(刃部)が当たるので、すなわち、トレパンバー10の刃先が同時にしかも平らな面に当たるので、より好ましい形状となるよう確実に穿孔することができる。 【0041】図4(B)に示した態様は、図4(A)に示した態様に加えて、更に、トレパンバー10内を通しても吸引するようにしたもので、このようにすると、トレパンバー10の先端部の皮膜110は、図4(A)に示した場合よりも更に強い力で外筒22の前面に引張されるので(ただし、外筒22内に多少突出する)、皮膜110の表面がより滑らかになり、より好ましい形状となるように穿孔することが可能となる。 【0042】図4(C)に示した態様は、トレパンバー10内に、内筒24を設け、この内筒24内及び外筒22と23の間の間隙Gを通して吸引するようにしたもので、このようにすると、皮膜110は、図示のように、外筒22と内筒24との間で平らに引張され、この平らに引張された部分にトレパンバー10の刃先が当たるので、皮膜110により好ましい形状となるよう、且つ確実に穿孔することができる。 【0043】図4(A)に示した構造のトレパンバー10及び外筒22、23を具備したハンドピース(A1)或いは図4(B)に示したトレパンバー10及び外筒22を具備したハンドピース(A2)の要部構成を説明するための断面図を図3に示すが、ここで210はハンドピースであって(バキュームホース、電源コードは省略してある)、該ハンドピース210内には、トレパンバー10を前進/後退動させるためのトレパンバー移動用モータ211及び該トレパンバー10を回転させるためのトレパンバー回転用モータ216が収納されており、外筒22と23の間を吸引して外筒22及び23の先端に皮膜を密着させ、その状態で、これらモータ211及び216により、トレパンバー10を前進及び回転させ、皮膜に穿孔するようにしている。 【0044】次に、モータ211によってトレパンバー10を前進/後退させ、モータ216によって回転させる機構について説明する。モータ211の回転は、該モータ211の回転軸に連結されたボルト213(送りネジ)に伝達されるが、このボルト213はモータ216に取り付けられているナット214と螺合している。また、モータ211からは回転止め用のバー212が突出しており、このバー212の先端部がモータ216側に設けられた凹部215に係合するようになっており、従って、モータ211を回転してボルト213を回転させると、モータ216に取付けられているナット214が、モータ211の回転方向によって前進或いは後退する。一方、モータ216の回転はベアリング218によって、該モータ216と一体構成の可動体217に対して回転自在に支持された回転軸219に伝達され、該回転軸219の先端部に設けられたOリング220にトレパンバー10の端部が挿通、固定されるようになっている。 【0045】従って、モータ211を回転させると、該モータ211の回転方向によって、モータ216及び回転軸219が可動体217と共に前進又は後退し、従って、トレパンバー10も前進又は後退し、モータ216を回転させることにより、トレパンバー10が回転し、それによって、該トレパンバー10を回転及び前進させることにより水晶体嚢皮膜に穿孔することができる。 【0046】このトレパンバー10は、図4(A)に示すように外筒22内に回転自在に挿通されており、外筒22と23の間には間隙Gが設けられ、この間隙Gを通して皮膜110に陰圧が加えられるようになっている。図3において、A部は前記間隙Gに陰圧をかける機構を示すが、該A部の構造をより詳細に示すために、図3のA1にて拡大して示してある。 【0047】図3において、221は前記外筒22と23の間の間隙Gに陰圧を供給するための陰圧供給口で、該陰圧供給口221に、図示しないバキューム装置からのバキュームチューブが接続されるようになっている。バキューム供給口221から供給された陰圧は、外筒23に設けられた開口23aを通して該外筒23と外筒22との間の間隙Gに伝達される。外筒23と22との間の間隙Gは、開口221より後方(回転軸219側)では盲リング25により支持され、バキューム供給口221より前方(先端側)では通孔を有するリング26によって支持され、これにより、外筒23と22とが同軸に支持され、バキューム供給口221より印加された陰圧が外筒23と22の先端部間隙に加わり、図4(A)に示したように水晶体の皮膜110を間隙G方向に吸引する。 【0048】なお、図3には、図4(A)に示した水晶体皮膜吸引機能を有する水晶体嚢皮膜の穿孔用ハンドピースについて説明したが、該ハンドピースは、図2(B)にした水晶体皮膜吸引機能を有するハンドピースにも適用可能であり、その場合には、前述の外筒23は不要であって、図3中にA2にて拡大して示すように、外筒22に開口22aを設け、該開口22aを通して外筒22内に陰圧を印加することにより、外筒22とトレパンバー10との間の間隙に陰圧を与えることができ、更に、該外筒22の前記開口22aに対向した位置において、トレパンバー10の周囲に多数の小孔を設けることによって、該トレパンバー10内にも陰圧を印加することができる。 【0049】以上説明したような穿孔用ハンドピース210、或いは適宜の改良を加えたハンドピースを用いることで、図2(B)及び図4(A)〜(C)に示すような種々の陰圧供給機能に対応させることが可能となり、所望の穿孔を実施することができる。 【0050】(2)水晶体実質の排出工程本発明の水晶体実質の置換方法において次に実施されるのは、前工程で形成した細孔から水晶体実質の少なくとも一部を排出する工程である。この工程は特定手段に限定されることなく、中空筒体の先端を細孔から挿入し、もう一方の先端から適当な負圧印加手段により水晶体実質を吸引、排出すればよい。当然ながら、中空筒体の外径は、細孔の直径よりも小さくするとよく、挿入側の先端は水晶体嚢を傷つけることのないような形状に処理しておくことが望ましい。 【0051】水晶体実質は、置換後に、より高い透明度とすることができるという観点からは可能な限り全量を排出除去することが好ましいが、混濁の程度や水晶体嚢、水晶体実質等の状態に応じて、適宜の量すなわち、少なくとも一部を排出するようにすればよい。 【0052】なお、水晶体実質の状態によっては、この水晶体実質の排出工程において、先ずガイドファイバーを刺入して超音波破砕震動子や破砕用レーザを水晶体内に導入し、混濁、失透した水晶体内部実質を細かく砕いて流動化させておき、次いで破砕、流動化した水晶体実質を吸引除去することが望ましい場合がある。 【0053】また、この工程で本発明にかかる封止体を利用して排出作業を行ってもよく、その実施形態については後述する封止体についての詳説を参照されたい。 【0054】(3)水晶体嚢直接注入剤の充填工程本発明の方法における次なる工程で、水晶体嚢内に水晶体実質置換物とすべく充填される水晶体嚢直接注入剤の主要成分として含有せしめられる親水性ポリマーとしては、親水性を示すもの、すなわち、水に溶解するか又は水により膨潤するという性質を示すものであれば特に限定されるものではなく、ホモポリマーでもよく、水溶性、粘度等を調整する目的で親水性モノマーと各種疎水性モノマーとを共重合させたコポリマーでもよく、これらのホモポリマー及びコポリマーにイソシアネート化合物、エポキシ化合物、エンドキャップ剤(末端封止剤)等を反応させることにより得られるポリマーや上記のホモポリマー及びコポリマーにグラフト重合を行って得られるポリマ一等の変性ポリマーでもよい。さらに、ホモポリマー、コポリマー、変性ポリマーにかかわらず、互いに相溶性を示すポリマ一同士であれば、それらポリマーの2種以上がブレンドされたものを親水性ポリマーとしてもよい。所定の粘度が保持できる範囲内において、親水性ポリマーは架橋されていてもよい。 【0055】かかる親水性ポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キチン、アルギン酸等の多糖類、ポリ(メタ)アクリル系重合体、ポリビニルアルコール(PVA)系重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)系重合体、ポリエチレングリコール(PEG)系重合体等の合成高分子類などが挙げられる。 【0056】ポリ(メタ)アクリル系重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メ夕)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ{N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド}、ポリ{N−メチル(メタ)アクリルアミド}、ポリ{N−エチル(メタ)アクリルアミド}、ポリ{N−プロピル(メタ)アクリルアミド}、ポリ{N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド}、ポリ{N一ブチル(メタ)アクリルアミド}、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}、ポリ{3一ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート}、ポリ{4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート}などが挙げられる。 【0057】ポリビニルアルコール系重合体としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、パーサティック酸ビニル等のビニルエステルの単独重合体又はこれらの共重合体のケン化物、前記したビニルエステルと他の共重合可能なモノマーとの共重合体のケン化物などが挙げられる。該共重合可能なモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ヘキサン等のオレフイン類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、これらの塩又はエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩等のアクリルアミド類;スチレン;メチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、アリルスルホン酸及びその塩、8−ヒドロキシ−1−オクテン等のアリル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;ビニルトリメトキシシラン等のシラン化合物などが挙げられる。これらの共重合可能なモノマーの共重合量は、20モル%以下であるのが好ましい。 【0058】また、本発明においては、上記したポリビニルアルコール系重合体に、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸イソブチル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸トリル、イソシアン酸ナフチル等のイソシアネート化合物、エポキシプロパン、エポキシブタン、エポキシシクロヘキサン、エポキシエチルベンゼン等のエポキシ化合物を反応させて得られるポリマ−や上記したポリビニルアルコール系重合体にセリウムイオンによるグラフト重合を行って得られるポリマーを用いることもできる。 【0059】ポリビニルピロリドン系重合体としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体又はこれらの共重合体、前記したビニルピロリドンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが挙げられる。該共重合可能なモノマーとしては、上記したポリビニルアルコール系重合体の場合におけるビニルエステル及び共重合可能なモノマーとして例示したものと同様のものを使用することができる。共重合可能なモノマーの共重合量は、20モル%以下であるのが好ましい。 【0060】ポリエチレングリコール系重合体としては、エチレンオキシドの単独重合体(ポリエチレングリコール)、エチレンオキシドとエボキシプロパン、エポキシブタン、エボキシシクロヘキサン、エポキシエチルベンゼン等の共重合可能なモノマーとの共重合体などが挙げられる。共重合可能なモノマーの共重合量は、20モル%以下であるのが好ましい。 【0061】また、本発明においては、上記したポリエチレングリコール系重合体にエンドキャップ剤(末端封止剤)を反応させて得られるものを使用することもできる。エンドキャップ剤としては、酢酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、安息香酸等のカルボン酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、フェノール等のアルコールなどが挙げられる。 【0062】本発明において、親水性ポリマーの含有量が高い水晶体嚢直接注入剤を調製した場合であっても、細い注射針を通過可能な程度の粘度を示し、長期にわたって生体に対して親和性があり、代謝されにくいポリマーが好ましい。細い注射針で注入可能な親水性ポリマーは、水晶体嚢の細孔を小さくする可能性を付与する上で好ましい。かかる好適な親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体及びポリエチレングリコール系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーが挙げられ、とりわけ、ポリビニルアルコール系重合体とポリビニルピロリドン系重合体のブレンドがより好ましい。 【0063】また、ポリビニルアルコール系重合体としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ビバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステルの単独重合休又はこれらの共重合体のケン化物が好ましく、酢酸ビニルの単独重合体のケン化物がより好ましい。ポリビニルピロリドン系重合体としては、N−ビニル−2−ピロリドンの単独重合体が好ましく、ポリエチレングリコール系重合体としては、エチレンオキシドの単独重合体(ポリエチレングリコール)が好ましい。 【0064】親水性ポリマーの粘度としては、50,000cp以下であるのが好ましく、30,000cp以下であるのがより好ましく、10,000cp以下であるのがさらに好ましい。 【0065】ポリビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、生体に吸収されるのを防ぐ観点から、30以上が好ましく、50以上がより好ましく、70以上が特に好ましい。また、その含有量が高い注入剤においても低粘度化を図り、所望の粘度を得る観点から、その粘度平均重合度は10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、2,000以下が特に好ましい。また、体温付近の環境温度で透明性を長期にわたって維持する必要があるため、ポリビニルアルコール系重合体のけん化度としては、透明性の低下が生じる相分離を防止する観点から、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。また、結晶化度の上昇による不透明化を抑える観点から、99.8モル%以下が好ましく、99.5モル%以下がより好ましく、99モル%以下が特に好ましい。 【0066】ポリビニルピロリドン系重合体の数平均分子量は、生体に吸収されるのを防ぐ観点から、3,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。また、その含有量が高い注入剤においても低粘度化を図り、所望の粘度を得る観点から、その数平均分子量は3,000,000以下が好ましく、2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下が特に好ましい。 【0067】ポリエチレングリコール系重合体の数平均分子量は、生体に吸収されるのを防ぐ観点から、200以上が好ましく、400以上がより好ましい。また、その含有量が高い注入剤においても低粘度化を図り、所望の粘度を得る観点から、その数平均分子量は1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、500,000以下が特に好ましい。 【0068】ポリビニルアルコール系重合体とポリビニルピロリドン系重合体のブレンドは、高含有量溶液として調製した場合のポリビニルアルコール系重合体の粘度の経時変化、ポリビニルピロリドン系重合体の透明性の低下を相補的に改善することが可能となるため好適である。ブレンドによる効果を発揮させる観点から、ブレンド比率(重量比)は、例えば、ポリビニルアルコール系重合体/ポリビニルピロリドン系重合体=1/99〜99/1が好ましく、3/97〜97/3がより好ましく、5/95〜95/5が特に好ましい。 【0069】本発明にて使用される水晶体嚢直接注入剤の屈折率としては、毛様体の緊張−弛緩に伴う水晶体の変形により、所望の屈折率の変化を生じさせる観点から、1.340以上が好ましく、1.345以上がより好ましく、1.350以上が特に好ましい。さらに計算された屈折率分布型レンズの注入置換が可能となれば一層望ましい。 【0070】本発明にて使用される水晶体嚢直接注入剤は、親水性ポリマーの含有量が高くても粘度が低いものが水晶体嚢の細孔を小さくする上で好ましい。より直径の小さい注射針の使用を可能とする観点から、水晶体嚢直接注入剤の粘度は50,000cp以下が好ましく、30,000cp以下がより好ましく、10,000cp以下が特に好ましい。かかる程度の粘度を示す注入剤を水晶体嚢に充填した場合、それにより形成される水晶体実質置換物が毛様体の緊張−弛緩により形状変化できる。したがって、本発明の注入剤はかかる水晶体実質置換物に屈折力調整能を付与することができる好適な組成物である。 【0071】本発明にて使用される水晶体嚢直接注入剤は、透明性の観点から可視光線の透過率が50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが特に好ましい。また、充分な視機能を確保する観点から、50%以上であるのが好ましい。 【0072】本発明にて使用される水晶体嚢直接注入剤における親水性ポリマーの含有量は、所望の性能が発揮される限り特に限定されない。例えば、水晶体嚢直接注入後の水晶体実質置換物に所望の屈折力を発揮させる観点から、前記含有量は水晶体嚢直接注入剤の1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が特に好ましい。また、注入の容易さの観点や経時的な粘度変化や透明性の変化を抑制する観点から、前記含有量は水晶体嚢直接注入剤の90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下が特に好ましい。 【0073】本発明にて使用される水晶体嚢直接注入剤は、前記のような親水性ポリマーの水溶液又はゲル状のものが好ましい。親水性ポリマーを溶解又は膨潤させて水溶液又はゲルを調製するための溶媒としては、例えば、水、生理食塩水、眼内灌流液、眼内洗浄液等が挙げられる。 【0074】本発明にて好適に使用される水晶体嚢直接注入剤には、その性能を損なわない範囲で所望により親水性ポリマー以外の添加剤が含有されていてもよい。例えば、染料等の着色剤、UV吸収剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、金属封鎖剤、脱泡剤、ブドウ糖等の栄養分、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸等の無機化合物、オキシグルタチオン等の眼組織保護剤等が挙げられる。上記物質の配合は、例えば、親水性ポリマーを原料として水晶体嚢直接注入剤を調製する際に、あらかじめ上記物質を含んだ製剤を用いることにより実施できる。この場合の製剤としては、例えば、生理食塩水、眼内灌流液、眼内洗浄液等が挙げられる。なかでも一般的に生体に対して等張緩衝作用をもつ生理食塩水及び限内灌流液が好ましく、房水組成に近い組成で等張緩衝作用をもち、白内障手術、緑内障手術、硝子体等の眼内手術時に灌流させ、眼組織の保護や洗浄等を行う製剤である眼内灌流液がより好ましい。 【0075】水晶体嚢直接注入剤の調製法としては特に限定されるものではなく、親水性ポリマーを所望により添加剤とともに水に溶解する方法、あらかじめ親水性ポリマーが溶解している水溶液に所望により添加剤を溶解する方法、あらかじめ所望により添加剤が溶解している水溶液に親水性ポリマーを溶解する方法、あらかじめ所望の効果を有する製剤中に親水性ポリマーを溶解する方法等いずれでもよいが、親水性ポリマー及び添加剤が変性しない条件で調製することが好ましい。また調製された水晶体嚢直接注入剤は、水晶体嚢に直接注入することを考慮して無菌的に調製されるか、水晶体嚢注入前に所定の滅菌操作を行って使用される。調製後に変性を起こしてはならないこと、無菌的な調製又は使用前の滅菌操作を考慮すると、水晶体嚢直接注入剤はバイアル瓶に封入された状態で供されることが好ましく、注射用カートリッジに封入された状態で供されることがより好ましい。 【0076】本発明の水晶体嚢直接注入剤における「直接」とは、水晶体嚢内に挿入されたバルーン内に注入するのではなく、水晶体嚢内に直接注入することを意味する。 【0077】水晶体嚢直接注入剤を前記細孔から水晶体嚢に注入するには、水晶体実質の排出工程にて使用したと同様の中空筒体を用いればよいが、注射針を用いて注入してもよい。用いる注射針が細いほど水晶体嚢の細孔を小さくできることとなるため好ましく、例えば、注射針としては、16Gよりも細いことが好ましく、18Gよりも細いことがより好ましく、20Gよりも細いことが特に好ましい。水晶体嚢直接注入剤の注入剤を上記のごとく低粘度としているので、かかる細い直径の注射針を用いて容易に注入操作を行うことができる。 【0078】(4)水晶体嚢細孔の封止工程水晶体嚢直接注入剤を充填後、細孔を封止する工程を実施する。この際、生体適合性のバッチ、栓、接着剤等で細孔を塞ぎ、水晶体実質置換物が長期にわたり漏出しない限りにおいて、封止手段は特に限定されるものではない。 【0079】好ましくは、安定性が高く、化学的変成や分解作用を受けにくい柔軟な素材であり、しかも毒性がなく生体組織との適合性に優れ、周辺組織に障害を起こさないような物理的、機械的性質を有するゲル状物質又は軟質プラスチックを材料とした細孔封止体を用いるとよい。これらの材料としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等の含水ゲル状体、シリコンラバー、軟質アクリル樹脂などの軟性プラスチック等を例示することができる。また、PVAゲル状体等の場合には架橋して硬度を高めることが好ましい。架橋方法としては、凍結法や照射線照射法等を用いることができる。 【0080】この細孔封止体は、前記のゲル状物質又は軟質プラスチックを鋳型等に注入し、固化することによって成型することができる。細孔封止体として、棒状体であり、棒状体の先端部には膨大部を、中間部には周縁突起片を有し、棒状体の軸中心には閉塞管部を有するものが好ましいが、かかる封止体の注型成型に際して、棒状体は、円柱型、楕円柱型又は多角柱型等とすることができるが、多角柱型の場合には角部に曲面を持たせることが好ましい。 【0081】棒状体先端の膨大部は、棒状体と一体成型され、その形状は例えば、円錐型、角錐型、半球型等とすることができる。或いは、これら円錐型、角錐型、半球型等の後端部周縁に突起片を有する形状であってもよい。 【0082】棒状体中間部の周縁突起片は、棒状体周縁の立設片であり、棒状体と一体成型することができる。或いは、棒状体に着脱自在のリング体とすることもできる。リング体は前記ゲル状物質又は軟質プラスチックの他、金属、硬質ゴム、硬質プラスチック等からなる成型品を用いることができる。なおリング体の内径は、棒状体の外径より小さくすることが好ましい。また、周縁突起片を棒状体と一体成型する場合には、棒状体先端の膨大部後縁面とこの周縁突起片の前縁面との間隔が、生体器官の外郭の厚みと略同一となる位置に周縁突起片を成型する。 【0083】棒状体軸中心の閉塞管部は、例えば注射針等の剛性管体を挿入するためのガイド部として機能し、通常は閉塞状態となるように成型される。この閉塞管部は、棒状体の膨大部先端から棒状体の後端部まで貫通していてもよく、或いは閉塞管部が棒状体の膨大部内から棒状体の後端部まで連通するように成型されていてもよい。後者の場合には、閉塞管部前端から膨大部先端までが、剛性管体によって易貫通性となるようにする。 【0084】図5は、本発明の方法において好適に使用される細孔封止体の一例を示した側面図である。この細孔封止体51は、略円柱状の棒状部52の先端に円錐型の膨大部53を有しており、棒状体52の軸中心の閉塞管部54には注射針55が装着されている。また、周縁突起片として、別体のリング体56が着脱自在に装着されるようにもなっている。図6は、別の細孔封止体例を示した側面図である。この例の場合には、円錐型の膨大部53の周縁に突起片531が形成されている。 【0085】図5に例示した細孔封止体51は、例えば図7に示したような3つのパーツからなる成型型71、72、73を作成し、これら成型型の中空部58にゲル状物質又は軟質プラスチックを注入し、固化させることによって作成することができる。また、ゲル状物質又は軟質プラスチックを注入する際に、中空部58の軸中心部に直線状の芯材を配設しておくことによって、注射針55を挿嵌するガイドとしての閉塞管部54を成型することができる。芯材は注射針55と同等もしくはより細い径のものを使用する。 【0086】本発明で好適に用いられる細孔封止体は、そのサイズについては特段の制限はなく、対象とする生体器官の種類等に応じて適宜とすることができる。例えば、図5に例示した細孔封止体を水晶体に用いる場合には、棒状体52の外径を0.5〜2.0 mm、好ましくは0・8〜1・2mm程度、膨大部53の最大径は1.0〜3.0mm、好ましくは1.2〜2.0 mm程度、膨大部53の先端から棒状体52の後端までは5.0〜15.0mm、好ましくは6.0〜8.0mm程度とすることができる。また、注射針55は20〜32G程度のものを使用することができる。 【0087】次に、如上の細孔封止体を用いて水晶体嚢の細孔を封止する工程(4)を実施する手順について説明する。 【0088】先ず、前記封止体の閉塞管部に注射針等の剛性管体を挿入する。これによって軟性物質からなる封止体に硬度を付与することができる。次いで、水晶体嚢の細孔から封止体先端の膨大部を水晶体嚢内に挿入し、膨大部の後縁面と周縁突起片の前縁面とによって細孔周囲の外郭面を挟持する。周縁突起片としてリング体を用いる場合には、予めリング体を棒状体の後方に装着しておき、これを前方にスライドさせればよい。そして、剛性管体を抜き取ることによって、細孔を封止する。余分な棒状体部分は切断除去すればよい。 【0089】なお、このように単に細孔を封止するのみの場合にあっては、剛性管体は中空状の注射針ではなく、中実芯材であってもよい。しかし、注射針等の中空筒体を用いることにより、装着した封止体をガイドとして利用して、水晶体実質の排出、及び/又は水晶体嚢内への水晶体嚢直接注入剤の充填操作を、この剛性管体を介して行うことができる。また、水晶体嚢内へ物質を注入した後に剛性管体を引き抜いても、閉塞管部は棒状体構成素材のゲル状物質の膨潤や軟質プラスチックの変形などによって閉じた状態となり、水晶体実質置換物が長期にわたり漏出することが回避できるので好ましい。 【0090】以下、図8に示した柔構造人工水晶体による白内障手術の例に沿って、本発明の好ましい一実施形態である水晶体実質の置換方法を説明する。 A:先ず、水晶体109の外郭組織である水晶体嚢皮膜110に、(1)に記載した方法に従ってレーザー光照射又は穿孔用ハンドピース等により細孔111を形成する。次いで、細孔111にガイドファイバーを刺入して超音波破砕震動子や破砕用レーザを水晶体109内に導入し、混濁した水晶体内部実質を細かく砕いて流動化させ、この破砕処理後の流動化実質の少なくとも一部を吸引管512を介して吸引除去する。 B:水晶体嚢は、その細孔111部分を除き、完全なカプセル状態が保持されており、毛様体及び細胞組織も健常である。 C:その後、細孔封止体51に注射針55を挿入し、その膨大部53を細孔111に挿入する。そして、この注射針55から、水晶体実質置換物の材料である水晶体嚢直接注入剤113を注入する。 D:水晶体嚢直接注入剤113を充填して水晶体109の形状を復元したのち、リング体56を水晶体嚢の皮膜110に押し当て、注射針55を抜き、棒状体52の余分な部分を切断除去する。 【0091】なお、術後の経過に応じて、この封止体51に再度注射針55を挿入し、薬剤や透明粘性物質の追加投与等を適宜に行うこともできるので、万一水晶体実質置換物が経時的に漏出しても患者に対する侵襲なく適切に対処することが可能である。 【0092】以上説明した本発明にかかる水晶体実質の置換方法は、特に白内障の治療において好適に採用されうるが、これに限らず、その他の水晶体嚢の障害に関わる水晶体乱視等の疾患に適用可能である。 【0093】また、本発明で水晶体実質が置換される水晶体は生体内、生体外のいずれの存在状態におかれていてもよいが、侵襲が少なく短時間で処置できるので、生体内での施術において特に有用であると考えられる。 【0094】なお、本発明の方法は広く様々な動物に対して適用可能であるが、特に、サル、イヌ、ウサギ、ネコ、ハムスター等の愛玩動物やウマ、ウシ等の家畜を含む種々の哺乳動物に対して好適に実施される。 【0095】 【実施例】以下、実施例を示して本発明をさらに詳細且つ具体的に説明するが、この発明は以下の実施例によって限定されるものではない。 1.封止体製造例[製造例1]完全けん化、重合度2000のPVA20gをジメチルスルホキサイド(DMSO)と精製水の混合溶媒(重量比80:20)100gにて加熱溶融し、得られた高粘度溶液を図6に示す成型型(樹脂製)に注入し、マイナス20℃の冷凍庫で3時間冷却固化させ、常温に戻す操作を3度繰り返した。成型型から細孔封止体を取り出し、エタノール50%水溶液中で攪拌しながら数日間放置したのち、生理食塩水中に移して、攪拌しながら、数日間放置し、生理食塩水で置換されたPVA含水ゲルの封止体(棒状部の直径1.0 mm、長さ10.0 mm)を作成した。 【0096】[製造例2]製造例1と同様のPVAゲルを用い、厚さ0.2mm、外径2.0mm、内径1.0mmのリング体作成し、このリング体を製造例1で作成した細孔封止体に装着した。 【0097】[製造例3]NCL(シリコン基剤、信越化学)5.0 gとC−NCL(触媒、信越化学)0.5gとをガラス容器中で攪拌し、脱泡処理後、図6に示す成型型に注入し、1.5kgf/cm2のプレス機にセットし、ホットプレートを用いて100℃にて30分間加熱したのち、成型型から離型後、プラズマ処理を行って、製造例1と同サイズの無色透明なシリコンラバー製細孔封止体を作成した。 【0098】[製造例4]X−32−159−6(シリコン基剤、信越化学)5.0gとCX−32−159−6(シリコン基剤、信越化学)0.5gとをガラス容器中で攪拌し、脱泡処理後、図6に示す成型型に注入し、1.5kgf/cm2のプレス磯にセットし、ホットプレートを用いて100℃、30分加熱したのち、成型型から離型後、プラズマ処理を行って、製造例1と同サイズの無色透明なシリコンラバー製細孔封止体を作成した。 【0099】[製造例5]製造例1と同様にして、棒状部の直径が2.0mmのPVAゲル封止体を作成し、また製造例2と同様にして、内径2.0 mmのPVAゲルリング体を作成した。 2.水晶体実質置換の実施例以下の実施例及び比較例における水晶体嚢直接注入剤の粘度、屈折率、可視光線透過率は、下記のようにして測定又は評価した。 【0100】[水晶体嚢直接注入剤の粘度]水晶体嚢直接注入剤及び水晶体嚢への充填後6ケ月後を経て摘出された水晶体実質置換物の粘度は、35℃の恒温装置付属のE型粘度計(TOKIMEC製VISCONIC EHD)により測定し、以下の計算式により、家兎水晶体嚢への充填前及び摘出後の粘度の変化率を求めた。 【0101】 【数1】
【0102】[水晶体嚢直接注入剤の屈折率]水晶体嚢直接注入剤及び水晶体嚢への充填後6ケ月後を経て摘出された水晶体実質置換物の屈折率は、35℃の恒温装置付属の屈折率計(アタゴ製 アッベ屈折計1型)により測定し、以下の計算式により、家兎水晶体嚢への充填前及び摘出後の屈折率の変化率を求めた。 【0103】 【数2】
【0104】[水晶体嚢直接注入剤の可視光線透過率]水晶体嚢直接注入剤及び水晶体嚢への充填後6ケ月後を経て摘出された水晶体実質置換物の可視光線透過率を35℃の恒温槽内にしばらく放置した後、取り出して直ちにヘイズメーター(TOKYO DENSHOKU製 TC−H/CL:測定波長380〜780nm)により測定し、以下の計算式により、家兎水晶体嚢への充填前及び摘出後の可視光線透過率の変化率を求めた。 【0105】 【数3】
【0106】[実施例1]親水性ポリマーとしてポリビニルアルコール(PVA405:クラレ製/粘度平均重合度500、けん化度82モル%)15重量部を生理食塩水(大塚製薬製)85重量部に溶解し、溶液状の水晶体嚢直接注入剤を作製した。この注入剤の粘度は200cp、屈折率は1.358、可視光線透過率は99%であった。この注入剤を注射用カートリッジに封入後、オートクレーブ滅菌を行った。 【0107】家兎の水晶体嚢に、図3に示す穿孔用ハンドピースを用いて、約1mmの直径の細孔を形成した。次いで、この細孔から超音波破砕吸引により水晶体実質をほぼ完全に除去した。水晶体嚢内に、製造例2で作成した封止体に27G注射針を装着して、封止体先端を細孔に挿入し、注射針を介して上記注入剤を充填した。充填後、ピンセットを用いてリング体を前方に押しつけ膨大部との間で嚢を挟持して封止体を固定し、注射針を抜いて余部の棒状部部分を切り取って細孔に栓をした。 【0108】6ヶ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、注入剤の漏出、水晶体嚢のしわ、破れ及び炎症、癒着等組織的な異常は全く観られず、また水晶体実質置換物の物性は注入前の水晶体嚢直接注入剤とほぼ同一であった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表1に示す。 【0109】[実施例2]親水性ポリマーとしてポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(K−15:五協産業製/平均分子量10,000)40重量部をオペガードMA(千寿製薬製)60重量部に溶解し、溶液状の水晶体嚢直接注入剤を作製した。この注入剤の粘度は370cp、屈折率は1.410、可視光線透過率は87%であった。この注入剤を注射用カートリッジに封入後、オートクレーブ滅菌を行った。 【0110】家兎の水晶体嚢に、内部ファイバー束径1mmライトガイドを用い、半導体レーザーを光源として600〜1200nmの波長、出力2Wで、予めレーザーエネルギー吸収能を高めるインドシアニングリーン水溶液(ジアノグリーン注、第一製薬株式会社製)を塗布しておいた水晶体嚢とライトガイド先端を離間させずにレーザー光照射を行い、直径約1mmの細孔を形成した。次いで、この細孔から超音波破砕吸引により水晶体実質をほぼ完全に除去した。水晶体嚢内に、上記注入剤を細孔から24Gの注射針で術前の水晶体と同様の形状に復元するまで充填し、その後、製造例4の細孔封止体を用いて細孔に栓をした。 【0111】6ケ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、注入剤の漏出、水晶体嚢のしわ、破れ及び炎症、定着等組織的な異常は全く見られず、また注入剤の物性は注入前とほぼ同一であった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表1に示す。なお、オぺガードMAは眼内灌流液であり、その組成は次の通りである。1mL当たり、ブドウ糖1.5mg、NaCl 6.6mg、KCl 0.36mg、CaCl2 0.18mg、MgS04 0.3mg、NaHC03 2.1mgを含む水溶液。 【0112】[実施例3]親水性ポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG#1000:和光製/平均分子量1,000)60重量部を精製水(大塚製薬製)40重量部に溶解し、溶液状の水晶体嚢直接注入剤を作製した。この注入剤の粘度は440cp、屈折率は1.442、可視光線透過率は97%であった。この注入剤を注射用力ートリッジに封入後、オートクレーブ滅菌を行った。 【0113】実施例1におけると同様にして家兎の水晶体嚢に細孔を形成し、製造例5で作成した細孔封止体に21G注射針を装着して、封止体先端を細孔に挿入し、注射針を介して家兎の硝子体の大部分を吸引除去した。次いで、この注射針を介して上記注入剤を術前の水晶体と同様の形状に復元するまで充填し、リング体によって封止体を固定した後、注射針を抜き取り、余分な封止体端部を切断除去して細孔に栓をした。水晶体嚢の細孔は1mm以下であった。6ヶ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、注入剤の漏出、水晶体嚢のしわ、破れ及び炎症、癒着等組織的な異常は全く観られず、また水晶体実質置換物の物性は注入前の水晶体嚢直接注入剤とほぼ同一であった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表lに示す。 【0114】 【表1】
【0115】[実施例4]親水性ポリマーとしてポリビニルアルコール(PVA205:クラレ製/粘度平均重合度500、けん化度88モル%)20重量部、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(KT30:五協産業製/平均分子量10,000)20重量部をオペガードMA(千寿製薬製)60重量部に溶解し、水晶体嚢直接注入剤を作製した。この注入剤の粘度は700cp、屈折率は1.411、可視光線透過率は93%であった。この注入剤を注射用カートリッジに封入後、オートクレーブ滅菌を行った。 【0116】図1に一部概略にて示すような焦点距離50mmの集光レンズ(セルフォック、日本板ガラス製、屈折率分布型ロッド状レンズ)を先端部に配設した、内部ファイバー束径1mmライトガイドを用いて直径約1mmの細孔を形成したことを除いては実施例2におけると同様にして、水晶体実質をほぼ完全に除去した家兎の水晶体嚢内に、この注入剤を24Gの注射針で術前の水晶体と同様の形状に復元するまで充填し、そして細孔に栓をした。水晶体嚢の細孔は1mm以下であった。6ヶ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、注入剤の漏出、水晶体嚢のしわ、破れ及び炎症、癒着等組織的な異常は全く観られず、また水晶体実質置換物の物性は注入前の水晶体嚢直接注入剤とほぼ同一であった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表2に示す。 【0117】[実施例5]親水性ポリマーとしてイタコン酸ナトリウム共重合ポリビニルアルコール(KL−504:クラレ製/粘度平均重合度400、イタコン酸共重合率1モル%、けん化度75モル%)35重量部を生理食塩水(大塚製薬製)65重量部に溶解し、ゲル状の水晶体嚢直接注入剤を作製した。この注入剤の粘度は8800cp、屈折率は1.403、可視光線透過率は82%であった。この注入剤を注射用カートリッジに封入後、オートクレーブ滅菌を行った。 【0118】実施例2におけると同様に水晶体実質をほぼ完全に除去した家兎の水晶体嚢内に、この注入剤を22Gの注射針で術前の水晶体と同様の形状に復元するまで充填し、そして細孔に栓をした。水晶体嚢の細孔は1mm以下であった。6ケ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、注入剤の漏出、水晶体嚢のしわ、破れ及び炎症、癒着等組織的な異常は全く観られず、また水晶体実質置換物の物性は注入前の水晶体嚢直接注入剤とほぼ同一であった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表2に示す。 【0119】 【表2】
【0120】[比較例1]光重合性モノマーとしてのポリジメチルシロキサン(ジメチルシロキサンの繰り返し数の平均値60)を有するメタクリル酸エステル(X−22−174DX:信越化学製)100重量部と、光開始剤としてのアセトフェノン(和光製)1重量部を混合し、注入材料を作製した。この注入材料を注射用カートリッジに封入した。 【0121】実施例1におけると同様に水晶体実質をほぼ完全に除去した家兎の水晶体嚢内に22Gの注射針で上記注入材料を充填して術前の水晶体と同様の形状に復元させ、そして製造例4の細孔封止体を用いて細孔に栓をした。 【0122】その後ハロゲン光で光照射し、前記モノマーを硬化させた。水晶体嚢の細孔は1mm以下であった。6ケ月後、家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、モノマーが硬化しているため水晶体としての流動性がなくなっており、本比較例において形成された水晶体は毛様体の緊張−弛緩で形状を変えられるものではないことが明らかであった。また、未重合モノマー又は光開始剤が原因であると考えられる炎症が水晶体内上皮に観察された。なお、本比較例では、注入前の注入材料は重合性モノマー組成物であり、注入後は重合してポリマーとなることから、粘度、屈折率、可視光線透過率の測定は行わなかった。観察所見を下記表3に示す。 【0123】[比較例2]従来の白内障施術法に従い、家兎の水晶体前嚢に円形破嚢術で円孔を開け、乳化吸引法により水晶体実質の大部分を除去した。次いで、シリコーンバルーンにシリコーンチューブを取り付けたものを、水晶体嚢内に挿入し、一方からカテーテルを用いてHEALON(ファルマシア製:1mL当たり、ヒアルロン酸ナトリウム10mg、NaC1 8.5mg、Na2HP04・2H20 0.28mg、NaH2P04・H20 0.04mgを含む含水ゲル状物;粒度8700cp、屈折率1.336、可視光線透過率95%)を充填した。眼内へのバルーンの挿入時の強膜及び水晶体嚢の細孔は5mm以上とならざるを得なかった。また、6ヶ月後家兎水晶体を摘出し、肉眼にて観察したところ、水晶体嚢内に隙間が観察され、充分な視機能が得られていないことは明らかであった。上記した方法によりその粘度、屈折率、可視光線透過率の測定を行い、変化率で評価を行った。その結果を観察所見とともに下記の表3に示す。 【0124】 【表3】
【0125】以上、表1及び2に示す結果から、実施例1〜5の水晶体嚢直接注入剤は、粘度が充分に小さいため、充填後は毛様体の緊張−弛緩による該水晶体嚢の形状の変化に対応して変形することが可能であることが明らかになった。しかも使用した水晶体嚢直接注入剤は高屈折率であることから、充填後に形成される水晶体実質置換物は水晶体が本来有する屈折力調節能を有することが明らかとなった。さらに生体内での代謝等による組成変化、物性変化もなく、長期にわたって透明性を維持し、生体との親和性を有するため、水晶体嚢に直接注入される水晶体実質の代替物として有用であることが分かった。さらに、本発明の水晶体嚢直接注入剤は、細い直後の注射針から注入可能であるため、充填操作が容易であり、しかも水晶体嚢の細孔を小さくすることができた。 【0126】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の水晶体実質の置換方法は、安定性、安全性が高く、比較的短時間にて処置可能であり、しかも侵襲性が極めて低い。処置後には水晶体本来のの屈折力調製能が維持され、長期にわたって望ましい透明度を保ち、例えば白内障患者に対して快適な予後が実現される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】500118311 【氏名又は名称】西信 元嗣 【識別番号】598134569 【氏名又は名称】塚本 光雄
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| 【出願日】 |
平成12年3月14日(2000.3.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100065868 【弁理士】 【氏名又は名称】角田 嘉宏 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−252300(P2001−252300A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月18日(2001.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2000−70189(P2000−70189) |
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