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【発明の名称】 膝義肢大腿骨部及びこれを用いた膝義肢
【発明者】 【氏名】ジャン−フランソワ・ビーギュン

【氏名】パスカル・マルソー

【要約】 【課題】膝義肢において、後部交差靱帯がない場合でも、過度のマイナス屈伸角度への膝の曲げを防止する。

【解決手段】少くとも1つの関節丘(7,8)と1つのトロクレア部(20)を有する膝義肢大腿骨部(6)と脛骨インサート(3)を備えた膝義肢において、前記関節丘(7,8)の各々は、少くとも通常の屈伸範囲の部分において、脛骨インサート(3)の上面(12)と相補形状をなしてこれに係合する外面を有する。こゝにおいて、トロクレア部(20)には少くとも1つの凹部(14,15)が形成され、この凹部(14,15)の各々と脛骨インサート(3)の前縁(18)上部の相対配置と形状は、大腿骨部(6)がマイナス角度で回転し曲げられる場合に、所定のマイナス角度限度を超えて、脛骨インサート(3)の前縁(18)上部に当接し停止することを防止するように設定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少くとも1つの関節丘と1つのトロクレア部を有する膝義肢大腿骨部において、前記トロクレア部には少くとも1つの凹部が形成されてなることを特徴とする膝義肢大腿骨部。
【請求項2】 前記関節丘の各々は、矢状面において、中間部円形部分をなす第一円形部分と端部円形部分をなす第二円形部分の2つの円形部分を有し、前記第一円形部分の曲率は前記第二円形部分の曲率よりも大きくされてなることを特徴とする請求項1記載の膝義肢大腿骨部。
【請求項3】 前記凹部は、矢状面において、前記トロクレア部の膨らみに相当する円形部分に沿って前記関節丘の端から角度10°〜30°の範囲において前記トロクレア部内に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の膝義肢大腿骨部。
【請求項4】 少くとも1つの関節丘と1つのトロクレア部を有する請求項1記載の膝義肢大腿骨部と脛骨インサートを備えた膝義肢であって、前記関節丘の各々は、少くとも通常の屈伸範囲の部分において、前記脛骨インサートの上面と相補形状をなしてこれに係合する外面を有するものにおいて、前記トロクレア部には少くとも1つの凹部が形成され、かつ、前記凹部の各々と前記脛骨インサートの前縁上部の相対位置と形状は、前記大腿骨部がマイナス角度で回転し曲げられる場合に、所定のマイナス角度限度を超えて、前記脛骨インサートの前縁上部に当接し停止することを防止するように設定されてなることを特徴とする膝義肢。
【請求項5】 前記所定のマイナス角度限度は、角度0°〜マイナス10°の間、好ましくはマイナス5°にあることを特徴とする請求項4記載の膝義肢。
【請求項6】 前記脛骨インサートの前縁上部は、少くとも1つの突出部を有し、前記突出部の各々は、前記凹部に当接し停止するように、矢状面において、前記凹部と相補形状に形成されてなることを特徴とする請求項4記載の膝義肢。
【請求項7】 前記突出部の各々は、前記脛骨インサートの平らな底面からの高さにおいて、前記脛骨インサートの後縁上部の高さよりも高く形成されてなることを特徴とする請求項6記載の膝義肢。
【請求項8】 前記関節丘の各々は、球状に形成されてなることを特徴とする請求項4記載の膝義肢。
【請求項9】 前記関節丘の各々は、矢状面において、中間部円形部分をなす第一円形部分と端部円形部分をなす第二円形部分の2つの円形部分を有し、前記第一円形部分の曲率は前記第二円形部分の曲率よりも大きくされてなることを特徴とする請求項4記載の膝義肢。
【請求項10】 前記凹部は、矢状面において、前記トロクレア部の膨らみに相当する円形部分に沿って前記関節丘の端から角度10°〜30°の範囲において前記トロクレア部内に形成されてなることを特徴とする請求項4記載の膝義肢。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、整形された脛骨に固定手段を介して固定された水平な支持用脛骨板を含む脛骨部と、通常プラスチック材で作られて脛骨板上に固定又は可動にセットされる脛骨インサート又は半月板部分、及び1つ又は2つの関節丘と1つの解剖学的にいうトロクレア部(trochlea part、滑車形関節部)を含む大腿骨部を備えた型式の膝義肢に関する。本発明はまた、このような膝義肢の大腿骨部に関する。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】大腿骨部に設けられる1以上の関節丘は通常球状の外面を有する。矢状面(sagittal perspective)、即ち、膝が曲げられた時の脛骨の軸線及び/又は大腿骨の軸線に平行な、従ってまたソケット前後方向軸線(pre−posterior axis)にも平行な、面から見た場合、関節丘の形状は円弧をなし、その角度は通常的な膝の屈伸範囲、即ち、0°から120°又は130°の間、である。関節丘の球状面は、これと相補形状をなす脛骨インサートの上面と係合し、これらの両面の間には摺動する動きが行われる。
【0003】この型式の膝義肢は、例えばブリティッシュ・テクノロジー・グループ社の国際特許出願WO92/03108に開示されている。この型式の従来の膝義肢は、後部交差靱帯(PCL)を保全した状態でこの膝義肢を用いることが好ましいという不具合がある。従来の膝義肢においては、大腿骨部は、角度0°、即ち、脛骨と大腿骨が垂直で互いに平行をなす位置、を超えて、即ち、回転のマイナス角度範囲において、摺動することができる。このマイナス角度は、通常は膝を曲げた時に脛骨が足の後方から大腿骨方向に閉じることゝは反対に、脛骨が足の前方から大腿骨方向に閉じる状態に相当する。この状態は、後部交差靱帯が保全されていない状態で膝義肢を用いる場合に、脛骨インサート又は大腿骨部の脱臼を引起す結果となる。
【0004】上記の型式の膝義肢はまた、PCT特許出願WO94/26212によるウォーカー社の欧州特許第0,653,927号に記載されている。関節丘には凹部が設けられており、これが膝の屈伸角度0°(膝が伸長された状態)において完全に一致する係合をなす。この膝義肢においても、前述の例と同様に、後部交差靱帯が保全された状態でこの膝義肢を用いることが好ましいとされている。
【0005】本発明は、回転の角度がマイナス5°又はマイナス10°を超えることを許容せず、後部交差靱帯の保全の有無を問わず、特に後部交差靱帯が欠落した場合に、用いることのできる膝義肢を提供することにより、上述の不具合を解消することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による膝義肢は次のような手段により構成される。即ち、本発明の膝義肢は、少くとも1つの関節丘と1つのトロクレア部を有する膝義肢大腿骨部と脛骨インサートを備えた膝義肢であって、前記関節丘の各々は、少くとも通常の屈伸範囲の部分において、脛骨インサートの上面と相補形状をなしてこれに係合する外面を有するものに関する。こゝにおいて、トロクレア部には少くとも1つの凹部が形成され、この凹部の各々と脛骨インサートの前縁上部の相対配置と形状は、大腿骨部がマイナス角度で回転し曲げられる場合に、所定のマイナス角度限度を超えて、脛骨インサートの前縁上部に当接し停止することを防止するように設定される。
【0007】大腿骨部のトロクレア部に形成された凹部は、膝の前方側において、脛骨インサートの前縁上部に当接し、これにより大腿骨部は、例えば屈伸角度マイナス5°において停止することができる。即ち、大腿骨部は、脛骨インサートとトロクレア部に形成された凹部との当接により停止し、これ以上のマイナス角度に回転し曲げられることが防止される。これにより、膝義肢は、後部交差靱帯が欠落している場合でも過度にマイナス角度に曲げられることがなくなる。
【0008】従来の技術では、後部交差靱帯の働きにより過度のマイナス角度への曲げが防止されていたが、本発明によれば、後部交差靱帯がない場合でもマイナス角度への過度の曲げが防止される。
【0009】本発明の実施の形態によれば、上記の所定のマイナス角度限度は、角度0°〜マイナス10°の間、好ましくはマイナス5°、である。
【0010】同じく本発明の実施の形態によれば、脛骨インサートの前縁上部は少くとも1つの突出部を有し、この突出部の各々は、前記凹部に当接し停止するように、矢状面において、この凹部と相補形状に形成される。
【0011】同じく本発明の実施の形態によれば、上記の突出部の各々は、脛骨インサートの平らな底面からの高さにおいて、脛骨インサートの後縁上部の高さよりも高く形成される。
【0012】同じく本発明の実施の形態によれば、上記の関節丘の各々は、球状に形成される。
【0013】同じく本発明の実施の形態によれば、上記の関節丘の各々は、矢状面において、中間部円形部分をなす第一円形部分と端部円形部分をなす第二円形部分の2つの円形部分を有し、前記第一円形部分の曲率は前記第二円形部分の曲率よりも大きくされる。
【0014】同じく本発明の実施の形態によれば、上記の凹部は、矢状面において、前記トロクレア部の膨らみに相当する円形部分に沿って前記関節丘の端から角度10°〜30°の範囲において前記トロクレア部内に形成される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下において、本発明を添付の図面を参照して実施の形態により説明する。
【0016】図1において、膝の屈伸角度は、大腿骨部ピン11の軸線と脛骨部1の取付けの軸線とがなす角度である。図1において、この屈伸角度は0°である。大腿骨が定置状態の脛骨に関して反時計方向に回転した時、屈伸角度はプラスである。例えば、図3において、屈伸角度はプラス60°である。大腿骨が定置状態の脛骨に関して時計方向に回転した時、屈伸角度はマイナスである。例えば、図2において、屈伸角度はマイナス5°である。
【0017】図1は、膝が伸長した状態にある完成された膝義肢を示している。この完成された膝義肢において、脛骨部1は脛骨部1の軸線から横方向に伸びるように取付けられた脛骨板2を有し、この脛骨板2が脛骨の上端に乗るように固定される。ポリエチレン材で作られた脛骨インサート又は半月板部分3が、脛骨板2上に乗せられる。脛骨インサート3は、脛骨板2に固定されたほぞ部4(図6)と脛骨インサート3内に設けられた空所5の組合せを介して脛骨板2と係合する。脛骨インサート3は、この組合せの許容範囲内において、ほぞ部4の軸線に関して回転することができ、かつ、ソケット左右方向(medio−lateral)及びソケット前後方向(antero−posterior)に並進的な(translatory)動きをすることができる。本出願人の1999年2月2日付仏特許出願第9,901,158号同じく1999年7月5日付仏特許出願第9,908,632号には、この完成された膝義肢についてより詳細な説明がなされているが、これらは本発明の部分とは直接関係しない。完成された膝義肢にはまた、大腿骨部6が含まれる。
【0018】大腿骨部6は、2つの球状の関節丘7,8と解剖学的にいうトロクレア部20を有し、これら2つの関節丘7,8の間には中間間隙部が設けられている。矢状面において、即ち、膝が曲げられた時に脛骨の軸線と大腿骨の軸線の双方に平行をなす面において、関節丘7,8はそれぞれ円形であり、これらの円形の各々は、互いに並び合う第一及び第二の2つの円形部分、即ち、第一の主部円形部分9及び第二の端部円形部分10を有する。端部円形部分10は角度30°〜40°の間に、また、主部円形部分9は角度80°〜90°の間に延在する。端部円形部分10の曲率は、主部円形部分9の曲率よりも小さい。主部円形部分9の曲率は、端部円形部分10の曲率の1.25倍である。
【0019】大腿骨部ピン11は2つあり(図6には1つのみが示されている)、これらのピン11が大腿骨内にはめ込まれて、大腿骨部6が大腿骨に固定される。図1において、膝は伸長された状態にあり、この時大腿骨部ピン11は角度0°であり、脛骨部1の軸線に平行をなしている。
【0020】通常的な膝の屈伸範囲、即ち、0°〜120°又は130°の範囲、において、関節丘7,8の各々は、脛骨インサート3の上面12と係合する。矢状面において、上面12も円形であり、こうして上面12は関節丘7,8の球形状と相補形状をなしている。上面12の曲率は、主部円形部分9の曲率と同じである。これにより、屈伸角度約80°までは完全に一致する係合が得られる。
【0021】トロクレア部20の当接する外面は、関節丘7,8及びその中間の間隙部を超えて設けられ、こゝに、図7に見られるように、水路形状のトロクレア部軌道13が形成されている。矢状面において、このトロクレア部軌道13の形状も円形であり、その曲率は主部円形部分9の曲率よりも大きい。
【0022】トロクレア部20の外面には2つの凹部14,15が設けられる。これらの凹部14,15は、例えば、切削加工により形成される。
【0023】脛骨インサート3は、2つの後縁部16,17を有する。後縁部16,17はそれぞれ、脛骨インサート3の後部側において球状の上面12を形成する。脛骨インサート3はその前方側を前縁部18で区切られている。前縁部18は2つの突出部19を有し、これらの突出部19は脛骨インサート3の平らな底面21からの高さが後縁部16,17の高さよりも大きく作られている。矢状面において、突出部19は円状に丸味をつけられており、その形状は凹部14,15の形状と相補形状になっている。これにより、膝の屈伸角度が所定のマイナス角度、即ち、図2に示されたようにマイナス5°に曲げられた時、大腿骨部6は前縁部18に当接する。即ち、凹部14,15が背の高い突出部19に当接し、動きが止まる。こうして、所定の最大マイナス角度、例えばマイナス5°、を超える回転は防止される。これにより、過度のマイナス角度への曲げを回避するために、後部交差靱帯を使用することが不要となる。凹部14,15の形状は円状に限らず、凹部14,15の形状が脛骨インサート3の矢状面における突出部19の形状と相補形状をなし、凹所14,15が突出部19に当接して動きが止まるものである限り、どんな形状であってもよい。
【0024】図2に示した完成された膝義肢は、脛骨と大腿骨とがなす角度がマイナス5°である状態で曲げが停止された様子を示している。
【0025】図4は、矢状面における大腿骨部の断面を示している。関節丘7,8における円9,10は、屈伸角度がプラス方向において、全体として130°、大腿骨部ピン11から120°において延在している。この角度は通常的な屈伸範囲に相当し、この範囲において関節丘は、大腿骨の脛骨に関する屈伸に応じて、脛骨インサート、即ち、半月板部分、上を摺動する。
【0026】図4において、凹部14は、関節丘7の端(OP軸線)からトロクレア部20にかけて、矢状面におけるトロクレア部20の膨らみに相当する円形に沿って角度10°〜30°の範囲において形成される。前縁部18の突出部19の高さは、突出部19が凹部14に当接し動きを止めた時に屈伸角度がマイナス5°になるように設定される。
【出願人】 【識別番号】599051502
【氏名又は名称】エスキュラップ
【氏名又は名称原語表記】AESCULAP
【出願日】 平成13年2月22日(2001.2.22)
【代理人】 【識別番号】100069246
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 新 (外1名)
【公開番号】 特開2001−252296(P2001−252296A)
【公開日】 平成13年9月18日(2001.9.18)
【出願番号】 特願2001−46493(P2001−46493)