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【発明の名称】 ステム及びステム打込器
【発明者】 【氏名】飯田 寛和

【氏名】土居 憲司

【氏名】古賀 博樹

【氏名】前原 克彦

【要約】 【課題】ステム打込器によるステムの確実な把持を可能とし、ステム打込器・ステム間の係脱操作の容易性及び迅速性を図る。

【解決手段】打込時にステム打込器4の先端部7,10を嵌合するステムピン穴2が回転非対称で奥広がり形であるステム1。回転非対称で奥広がり形のステムピン穴2にステム打込時に嵌合させる先端部7,10が、後部側の握り部8,11での操作によって相互に接近・離間し得る開閉動可能な縦割り形の分割構造に形成され、かつ、ステムピン穴2に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されるステム打込器4。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 人工関節のステムにおいて、ステム打込時にステム打込器の先端部を嵌合するステムピン穴が回転非対称の奥広がり形に形成されてなることを特徴とするステム。
【請求項2】 ステムを大腿骨に打込むためのステム打込器において、回転非対称の奥広がり形に形成された前記ステムのステムピン穴にステム打込時に嵌合させる先端部が、後部側の握り部での操作によって相互に接近・離間し得る開閉動可能な縦割り形の分割構造に形成され、かつ、前記ステムピン穴に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されてなることを特徴とするステム打込器。
【請求項3】 先端部がピン穴嵌合部に、後部が後端面を打込面とする握り部に形成される本体部材と、先端部がピン穴嵌合部に、後部が操作用握り部に形成されるレバー部材とが、中間部においてヒンジ結合されて、対向させた握り部と操作用握り部が接近・離間するのに対応して、対向させた両ピン穴嵌合部が離間・接近し得る開閉動可能に組付けられてなり、両ピン穴嵌合部の綜合形状が回転非対称の奥広がり形に形成されたステムの前記ステムピン穴に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されてなることを特徴とするステム打込器。
【請求項4】 前記両ピン穴嵌合部に対し相接近する方向の弾機力を常時作用させるバネ部材が本体部材・レバー部材間に亘り設けられてなる請求項3記載のステム打込器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、整形外科医療域において大腿骨等の髄腔内に挿着する人工関節のステム及び該ステムを髄腔内に打込むためのステム打込器に関する。
【0002】
【従来の技術】人工関節のステム及び該ステムを髄腔内に打込むためのステム打込器に関する典型的な先行技術が特開平 8−191848号公報により挙げられるように公知である。この先行技術は図4及び図5に示されるように、ステム打込器24の本体先端部をステム21に設けられるピン穴22に嵌合して一体した状態で、施術者がステム打込器24の握り部28を握り、図示しないハンマーで打込面29を叩打し、ステム21を大腿骨25の髄腔26内に打込ませる。
【0003】ステム21は、上端側の先端に骨頭支持部23があり、肩部にはピン穴22が穿設されていて、このピン穴22は図6に示すように、穴軸に直交差する断面の形状が非円形、すなわち回転非対称形となっている。一方、ステム打込器24の本体先端部はピン穴22と遊びを存しなく嵌合するように、断面形状がピン穴22の断面形状に対応した回転非対称形となっている(図6参照)。
【0004】上述するようなステム打込器24とステム21を使用して大腿骨25の髄腔26内にステム21を挿着するには、ステム21を所定の深さまで押し込み、これに先行して注入されている骨セメント27が硬化するまでの1分程度の短時間に、ステム21の内反位、外反位あるいは回旋位置等を素早くコントロールして、骨セメント27が硬化するのを待つようにするのが普通である。
【0005】この場合、上記先行技術では、下記の点の特徴があることから、現在、専ら使用されている。■本体先端部とピン穴22の雌雄の関係は、ワンタッチ操作による単純な挿脱だけで済むので、取扱いが簡便である、■穴形状が回転非対称形であるから、ステムの回旋制御が簡単、確実に行える、■ステム打込器24が必要でなくなったタイミングで瞬時的に外すことができる、■機構が単純で、しかも故障などが発生する恐れが殆ど無い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような多くの利点を備える先行技術でもステム打込器でステムを確実に把持できない問題点がある。すなわち、施術中、左右両手を使って片方でステムを、もう一方でステム打込器をそれぞれ持って挿入位置まで持ち運ばなければならないのである。この種の手術は無菌の厳密な清潔状況下で行う関係上、万一、ステムがステム打込器から外れて落下するなどの事態が生じると、正に術中パニック状態となって大事に至ることから、慎重に取り扱う必要がある。
【0007】かかる点に鑑みて、簡単に両者の連結が行えて、しかもステム打込器によるステムの確実な把持を可能とすることは、ステムの位置・姿勢制御の確実性を果たす上で有効であり、加えて、必要な時にステム打込器を簡単、迅速に外すことができるものであれば施術者にとって頗る利便であることは言を俟たないところであるが、従来のこの種の手術器具はこのような要望に十分応え得るものとは言い難いのが現状である。
【0008】本発明は、このような問題点の解消を図るために成されたものであり、従って、本発明の目的は、ステム打込器によるステムの確実な把持を可能とするとともに、ステム打込器・ステム間の係脱操作の容易性及び迅速性を図ることができるステム及びステム打込器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するため以下に述べる構成としたものである。即ち、本発明に係る請求項1の発明は、人工関節のステムにおいて、ステム打込時にステム打込器の先端部を嵌合するステムピン穴が回転非対称の奥広がり形に形成されてなることを特徴とするステムである。
【0010】また、本発明に係る請求項2の発明は、ステムを大腿骨に打込むためのステム打込器において、回転非対称の奥広がり形に形成された前記ステムのステムピン穴にステム打込時に嵌合させる先端部が、後部側の握り部での操作によって相互に接近・離間し得る開閉動可能な縦割り形の分割構造に形成され、かつ、前記ステムピン穴に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されてなることを特徴とするステム打込器である。
【0011】また、本発明に係る請求項3の発明は、先端部がピン穴嵌合部に、後部が後端面を打込面とする握り部に形成される本体部材と、先端部がピン穴嵌合部に、後部が操作用握り部に形成されるレバー部材とが、中間部においてヒンジ結合されて、対向させた握り部と操作用握り部が接近・離間するのに対応して、対向させた両ピン穴嵌合部が離間・接近し得る開閉動可能に組付けられてなり、両ピン穴嵌合部の綜合形状が回転非対称の奥広がり形に形成されたステムの前記ステムピン穴に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されてなることを特徴とするステム打込器である。
【0012】また、本発明に係る請求項4の発明は、前記請求項3記載のステム打込器に関して、前記両ピン穴嵌合部に対し相接近する方向の弾機力を常時作用させるバネ部材が本体部材・レバー部材間に亘り設けられてなる構成としたことを特徴とする。
【0013】ステム挿着の手術中における操作時間はかなり拘束されるので、ステム打込器の係脱に要する時間は従来通りの短時間でのワンタッチ動作による操作でなければならなく、その点に関しては、本発明によれば上述のワンタッチ操作の条件を守りつつ、従来の制御内容を行わせることができ、解決課題であった”ステムの確実把持と係脱操作の容易・迅速性”を実現することが可能となったものである。
【0014】また、本発明によれば、施術中においてステムの落下を気にすることなく、自然的かつ単純な操作に基づいて従来と同様の作業が的確に達成できる特徴がある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】図1には、本発明の実施の形態に係るステムが示され、(イ)は平面図、(ロ)は正面図である。また、図2には、本発明の実施の形態に係るステム打込器が示され、(イ)は正面図、(ロ)は先端面図である。
【0017】図示のステム1は、骨頭(図示しない)を有しない骨頭と分離型のステムであって、上端先端部には前記骨頭が装着される骨頭支持部3があり、肩部にはステム打込器4の後述する先端部が嵌合されるステムピン穴2が穿孔されている。このステムピン穴2は、その穴軸に直交差する方向の断面形状が楕円形等の回転非対称形であって、更に、穴軸に平行な方向の断面形状が「あり(dovetail)」形等の奥広がり形を成す縦穴になっている。なお、回転非対称形としては、楕円形に限らなく図3に例示されるように達磨形(図3(a)参照)、三角おむすび形(図3(b)参照)、矩形(図3(c)参照)であっても良く、また、奥広がり形としては「ばち形」、「蛸壺形」等の「あり形」であっても良い。
【0018】ステム打込器4は、本体部材5とレバー部材6との2部材からなり、両部材5、6を中間部の例えば先端部寄りの個所の結合部12において相対回動が可能にヒンジ結合されている。本体部材5は、先端部にピン穴嵌合部7を、後部に後端面を打込面9とする握り部8を備える「たがね」状の部材であり、レバー部材6は、先端部にピン穴嵌合部10を、後部に操作用握り部11を備える「く」の字状の細長片の部材であり、それらの両部材5、6は、前述するようにヒンジ結合12されることによって、先端側では両ピン穴嵌合部7,10が対向し、後部側では握り部8と操作用握り部11が対向し、握り部8と操作用握り部11が接近・離間するのに対応して、両ピン穴嵌合部7,10が離間・接近し得るように、開閉動可能に組付けられる。
【0019】このように組付けられてなるステム打込器4は、先端側で開閉動可能に対向して設けられる両ピン穴嵌合部7,10がステム1の前記ステムピン穴2に嵌合させる部分となっていて、その両者を綜合した形状が、回転非対称の奥広がり形に形成されたステムピン穴2に対応して例えば断面が楕円形の回転非対称形で、かつ、例えば「あり(dovetail)」形の先広がり形の外形に形成されている。
【0020】そして、両嵌合部7,10を接触する程度に接近させた閉動状態では、ステムピン穴2に対して挿脱自在の縮小した形状をなし、逆に離間させた開動状態では、抜脱不能の拡張した形状をなしていて、両ピン穴嵌合部7,10を接近・離間させるための操作は、後部側の握り部8と操作用握り部11とを掌部によって離間・接近させることによって簡単に行うことができる。なお、両ピン穴嵌合部7,10の綜合形状は、ステムピン穴2に対応した達磨形、三角おむすび形或いは矩形であっても良く、また、「ばち形」、「蛸壺形」等であっても良い。
【0021】このように構成される本発明に係るステム打込器4は、回転非対称の奥広がり形に形成された前記ステム1のステムピン穴2にステム打込時に嵌合させる先端部が、後部側の握り部8と操作用握り部11での操作によって相互に接近・離間し得る開閉動可能な縦割り形の分割構造に形成され、かつ、前記ステムピン穴2に対して閉動状態では挿脱自在、開動状態では抜脱不能な回転非対称の先広がり形に形成されてなる構造であれば、上述する構造に限るものではなく、他の変形になるものであっても勿論差し支えないものである。
【0022】図2に示される実施の形態に係るステム打込器4は、本体部材5とレバー部材6との間に亘らせ、例えば握り部8と操作用握り部11との間に亘らせてバネ部材13が介設されていて、このバネ部材13が両ピン穴嵌合部7、10に対し相接近する方向の弾機力を常時作用させるようになっている。かかる機能を有するバネ部材13としては、各様の構造が考慮されるが、本実施の形態においては「く」の字状を成す板バネを使用して、その一端部を止めビス14により握り部8に固定し自由側端部を操作用握り部11に接当させ、バネ力が操作用握り部11に対し握り部8から遠去ける方向に常時作用し得る配置にして取付けている。
【0023】本発明の実施の形態に係るステム1とステム打込器4とを使用して大腿骨の髄腔内にステム1を挿着する場合は、以下のようにして行う。ステム打込器4を図2に示す状態、すなわち、レバー部材6がピン穴嵌合部10を閉じ、操作用握り部11を開かせている非握締の状態にして把持し、先端部の閉動状態にある両ピン穴嵌合部7、10をステム1のピン穴2に嵌合して、一杯に入ったところでステム打込器4を把持している掌部で握り部8と操作用握り部11をバネ力に抗し握締する。
【0024】このようにすることで、両ピン穴嵌合部7、10は開動状態になりピン穴2内で限度まで拡がるために、該ピン穴2に密嵌合する結果、ステム1とステム打込器4とは抜脱不能、かつ、軸回りの相対回動不能の状態で一体化される。そして、これまでの組付けの手順は簡単・確実にしかも瞬時的な短時間の下で行うことができる。
【0025】一体にされた状態で片方の手(例えば左手)でステム打込器4の握り部8と操作用握り部11を握り、ステム1の先端部を大腿骨の上方に持って行き、他方の手(例えば右手)で持った図示しないハンマーにより打込面9を叩打して、ステム1を大腿骨の髄腔内に打ち込む。
【0026】ステム1とステム打込器4とは前述する如く抜脱・相対回動不能に一体にされているため、ステム1を髄腔内に埋入する際の前後・左右の姿勢制御並びに大腿骨に対するステム1の骨頭支持部3の方向制御は、ステム打込器4側で対応した調節の実施により簡単、確実に行うことができる。
【0027】ステム1の挿着が終了し骨セメントが硬化すると、ステム打込器4の握り部8と操作用握り部11の握締を解くことによって、レバー部材6はバネ部材13のバネ力により初めの状態に復元し、かくして、両ピン穴嵌合部7、10が閉動状態となることから、ステム打込器4をワンタッチで容易にステム1から取り外すことができる。
【0028】本発明の別の実施の形態に係るステム打込器4として、図示を省略するが、前記止めビス14を利用して小リング等からなる掛止用部材を握り部8に揺動自在に取付けて、レバー部材6を握って閉じた際、その操作用握り部11の端部分を前記掛止用部材に単指の先部でのワンタッチ操作によって掛止して、両ピン穴嵌合部7、10の開動状態をロックさせたり、また、逆にロック状態をワンタッチ操作で解除させたりすることができるようにしたロック機構を付設することは、手術作業の簡便化を図らせる点からも好ましい態様である。また、レバー部材6に対する最初のグリップ動作でロック機能し、更に2回目の付加グリップ動作でロック機能が解除される如き形態のロック機構にしても良い。
【0029】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。すなわち、術中のステム保持及び打込みの操作時間はかなり拘束されるところから、本発明では従来通りの短時間でのワンタッチ動作による操作の条件を維持しながら従来の制御内容を遜色なく行うことが可能であって、しかも、課題とされていた“ステムの確実な把持並びに把持解除の容易性”を実現することができる。また、本発明の実施により術中のステムの落下を全然心配することなく、単純操作によって的確な打ち込み、姿勢・方向制御が行えるステムとステム打込器を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成12年2月28日(2000.2.28)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
【公開番号】 特開2001−238901(P2001−238901A)
【公開日】 平成13年9月4日(2001.9.4)
【出願番号】 特願2000−51191(P2000−51191)