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【発明の名称】 牽引装置
【発明者】 【氏名】吉澤 貞夫

【氏名】古守 康直

【要約】 【課題】仙腸関節まで含め、腰椎の全体を治療することができる牽引装置を提供する。

【解決手段】牽引装置は、仰向けになった患者が横たわるベッド12と、このベッド12に対して垂直方向に患者の膝を持ち上げる昇降機構13とを備え、患者の骨盤を浮かせて腰椎の前湾を軽減する。患者の骨盤を浮かせると、患者の体重によって、腰椎がその全長にわたって前湾と反対方向に湾曲するので、腰椎の椎間関節の後方が開き、椎間関節の圧迫が改善される。また、膝を持ち上げているので、仙腸関節がフリーになり、骨盤の重みと筋肉の力によって、仙腸関節が矯正される。したがって、仙腸関節まで含め、腰椎の全体を治療することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 仰向けになった患者が横たわるベッドと、このベッドに対して上方に患者の膝を持ち上げる昇降機構とを備え、患者の骨盤を浮かせて腰椎の前湾を軽減することを特徴とする牽引装置。
【請求項2】 前記ベッド及び前記昇降機構が取り付けられるベースを備え、前記ベッドが前記ベースに対して患者の長軸方向にスライドすることを特徴とする請求項1に記載の牽引装置。
【請求項3】 前記ベッド又は前記昇降機構のいずれか一方が、水平方向に且つ患者の長軸に対して直交する方向に揺れ動くことを特徴とする請求項1又は2に記載の牽引装置。
【請求項4】 前記昇降機構が、水平方向に延びて患者の膝の後側を支持する膝支持部と、この膝支持部と平行に延びて患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部と、前記膝支持部と前記足首保持部とが略同じ高さになるように前記膝支持部と前記足首保持部とを連結する連結バーと、前記膝支持部および前記足首保持部を昇降する昇降部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の牽引装置。
【請求項5】 前記連結バーが、前記膝支持部と前記足首保持部との間に患者の足を入れ易いように回動することを特徴とする請求項4に記載の牽引装置。
【請求項6】 前記昇降機構が、水平方向に延びて患者の膝の後側を支持する膝支持部と、この膝支持部と平行に延び、患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部と、前記膝支持部と前記足首保持部とを連結する連結バーと、前記連結バーを回動して前記膝支持部を昇降する昇降部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の牽引装置。
【請求項7】 前記膝支持部の一部を凹ませ、患者の膝を位置決めすることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の牽引装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腰痛の患者に牽引療法を行なうための牽引装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ぎっくり腰等の急性の腰痛あるいは慢性的な腰痛には、牽引療法が行われる。従来、牽引療法を行うための牽引装置として、図9に示すような骨盤牽引装置が知られている。この骨盤牽引装置は、ベット1の上に横たわった患者の肩を支持し、患者の腰に巻いたベルト2を、患者の足の方に向けて牽引するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記骨盤牽引装置にあっては、単に患者を長軸方に牽引するだけなので、患者の腰椎の椎間関節を開くのに大きな牽引力が必要になり、椎間関節の圧迫を充分に改善することができない。また、骨盤にベルト2を巻いて引っ張っているので、外側大腿皮神経を圧迫し、患者の腰痛を悪化させることもあった。
【0004】また、他の牽引装置として、図10に示すような牽引装置も知られている(米国特許4,362,151号参照)。この牽引装置では、仰向けになった患者の骨盤にベルト3を巻き、患者自らがロープ4を引っ張ることで患者の骨盤を浮かせるものである。患者の骨盤を浮かせることで、図11に示すように、患者の体重によって腰椎6が前湾と反対方向に曲がり、椎間関節の後方5を開くことができる。
【0005】しかしながら、この牽引装置にあっては、患者の骨盤にベルト3を巻いて牽引しているので、骨盤についている仙腸関節がフリーにならず、仙骨7と第5腰椎8との間の関節9を充分に開くことができない。仙腸関節を治療することは、腰痛の患者を治療するうえで極めて重要であるにもかかわらず、この牽引装置では仙腸関節を治療することができなかった。
【0006】そこで、本発明は、仙腸関節まで含め、腰椎の全体を治療することができる牽引装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、本発明について説明する。上記課題を解決するために、本発明者は、患者の骨盤を持ち上げるのではなく、患者の足を持ち上げて骨盤を浮かせれば、仙腸関節をフリーにし、腰椎の全体にわたって椎間関節の後方を開くことができることを知見した。具体的には、請求項1の発明は、仰向けになった患者が横たわるベッドと、このベッドに対して上方に患者の膝を持ち上げる昇降機構とを備え、患者の骨盤を浮かせて腰椎の前湾を軽減することを特徴とする牽引装置により、上述した課題を解決した。
【0008】この発明によれば、患者の骨盤を浮かせると、患者の体重によって、腰椎がその全長にわたって前湾と反対方向に湾曲するので、腰椎の椎間関節の後方が開く。したがって、椎間関節の圧迫が改善され、筋肉や靭帯の緊張がとれ、血液の循環が良くなり、患者が腰痛を感じることが少なくなる。また、膝を持ち上げているので、仙腸関節がフリーになり、骨盤の重みと筋肉の力によって、フリーになった仙腸関節が矯正される。仙骨と第5腰椎との間の圧迫が強まると、痛みに敏感な組織が刺激され、特に腰痛が起こり易い。仙腸関節を矯正することで、仙骨と第5腰椎と間の圧迫が改善される。
【0009】請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ベッドおよび前記昇降機構が取り付けられるベースを備え、前記ベッドが前記ベースに対して患者の長軸方向にスライドすることを特徴とする。
【0010】この発明によれば、膝を持ち上げるときに患者と共にベッドがスライドするので、膝の真下にお尻がくるような楽な姿勢で患者を牽引することができる。
【0011】請求項3の発明は、請求項1または2に記載の牽引装置において、前記ベッド又は前記昇降機構のいずれか一方が、水平方向に且つ患者の長軸に対して直交する方向に揺れ動くことを特徴とする。
【0012】この発明によれば、筋肉や靭帯の緊張をより一層解きほぐすことができる。また、腰椎の側湾を矯正することもできる。
【0013】また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかに記載の牽引装置において、前記昇降機構が、水平方向に延びて患者の膝の後側を支持する膝支持部と、この膝支持部と平行に延びて患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部と、前記膝支持部と前記足首保持部とが略同じ高さになるように前記膝支持部と前記足首保持部とを連結する連結バーと、前記膝支持部および前記足首保持部を昇降する昇降部とを備えることを特徴とする。
【0014】腰痛の患者にとって、膝を曲げた姿勢は、神経組織を刺激しない楽な姿勢となる。このため、膝を曲げたまま牽引するのが望ましい。本発明によれば、膝支持部が患者の膝の後側を支持し、患者の足首の前側が足首保持部に引っ掛かかった状態で、前記膝支持部および前記足首保持部を昇降するので、膝を曲げたままの楽な姿勢で患者を牽引することができる。また、持ち上げた膝が膝支持部から抜けることも防止される。
【0015】また、請求項5の発明は、請求項4に記載の牽引装置において、前記連結バーが、前記膝支持部と前記足首保持部との間に患者の足を入れ易いように回動することを特徴とする。
【0016】この発明によれば、前記連結バーが患者の足を入れ易いように回動するので、使い易い牽引装置が得られる。
【0017】また、請求項6の発明は、請求項1乃至3いずれかに記載の牽引装置において、前記昇降機構が、水平方向に延びて患者の膝の後側を支持する膝支持部と、この膝支持部と平行に延び、患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部と、前記膝支持部と前記足首保持部とを連結する連結バーと、前記連結バーを回動して前記膝支持部を昇降する昇降部とを備えることを特徴とする。
【0018】この発明によれば、膝を曲げた楽な姿勢で患者を牽引できる。また、膝を持ち上げる際に患者の膝が膝支持部から抜けるのが防止される。さらに、連結バーが回動するので、患者の足が入れやすくなる。
【0019】さらに、請求項7の発明は、請求項4乃至6いずれかに記載の牽引装置において、前記膝支持部の一部を凹ませ、患者の膝を位置決めすることを特徴とする。
【0020】この発明によれば、患者の膝を所定箇所に位置決めするので、患者を安定した姿勢で治療することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】図1乃至図3は、本発明の第1実施形態の牽引装置を示すものである。図1は牽引装置の斜視図を示し、図2は患者を牽引している牽引装置の斜視図を示し、図3は牽引装置の構成を示す側面図を示す。この牽引装置は、ベース11と、このベース11にスライド自在に取り付けられ、仰向けになった患者が横たわるベッド12と、ベース11に取り付けられ、ベッド12に対して垂直方向に患者の膝を持ち上げる昇降機構13とを備え、患者の骨盤を浮かせて腰椎を治療するものである。
【0022】ベース11は、直方体形状をなし、ベッド12を安定して支持する。ベース11の上部フレーム11aには、ベッド12をスライドさせる複数のローラ14が転がり自在に取り付けられる(図3参照)。ベース11の高さは、患者が載りこみやすい高さに設定される。また、ベース11の下端の四隅には、支持脚15が取り付けられる。
【0023】ベッド12は、略矩形状をなし、患者が横たわることができるように細長く形成される。ベッド12の上部には、寝心地がいいようにクッション材が張られる。ベッド12の下部周囲には、フレーム12aが取り付けられ、このフレーム12aが前記ローラ14に載っている。ベッド12はベース11に対して患者の長軸方向にスライドするが、昇降機構13と干渉しないように、クッション及びフレーム12aに凹部12bが形成されている。なお、図2に二点鎖線で示したように、凹部12bを深く形成することによって両側を長く伸ばし、患者がベッド12に横たわる時の足載せ部12cとしてもよい。患者がベッド12に載る際、ベッド12がスライドしないように、ベッド12にはストッパ(図示せず)が設けられる。
【0024】この実施形態では、ベッド12は患者の長軸方向(図1において矢印■の方向)のみにスライド自在であるが、ベッド12を水平方向に且つ患者の長軸に対して直行する方向(図1において矢印■の方向)に周期的に揺れ動くようにしてもよい。このような構造とすることで、牽引して腰を浮かせた患者に横揺れ運動、すなわちヨーイングを与えることができ、筋肉、靭帯の緊張をより一層解きほぐすことができる。この横揺れ運動の回数は、30〜60回/分程度に設定される。なお、ベッド12を揺り動かす代わりに、昇降機構13を水平方向に且つ患者の長軸に対して直行する方向に周期的に揺れ動くようにしてもよい。
【0025】昇降機構13は、水平方向に延び、患者の膝の後側を支持する膝支持部16と、この膝支持部16と平行に延び、患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部17と、膝支持部16と足首保持部17とが略同じ高さになるように、それぞれを連結する連結バー18と、膝支持部16および足首保持部17を昇降する昇降部19とを備える。
【0026】膝支持部16は、略円筒状でその外周にクッション材が巻かれている。患者は、連結バー18を挟んで両側の膝支持部16に膝の後方を載せる。足首保持部17も略円筒状でその外周にクッション材が巻かれている。患者は、膝支持部16に膝の後側を載せた後、足首保持部17に足首の前側を引っ掛ける。膝支持部16と足首保持部17とは同じ高さに位置するので、患者の膝が曲がった状態になる。この患者の足の組み込み作業は、膝支持部16と足首保持部17とを最も降下させたときに行われる。
【0027】また、図3に示すように、連結バー18は、膝支持部16と足首保持部17との間に患者が足を入れ易いように回動してもよい。膝支持部16がベッド12の上面まで下るように連結バー18が回動する。患者が足を組み入れたら、膝支持部16と足首保持部17とが同じ高さになるように連結バー18が再び逆方向に回動する。そして、昇降部19によって膝支持部16と足首保持部17とを同時に上昇し、牽引し始める。
【0028】昇降部19は、図3に示したように、駆動モータ20と、駆動モータ20の回転を伝達するベルト伝達部21と、ベルト伝達部21によって回転駆動されるボールねじ24と、ボールねじ24の回転によって上下運動するナット22と、ナット22に結合する昇降パイプ23とを備える。昇降パイプ23は、その上端が膝支持部16および足首保持部17に結合される。駆動モータ20を回転駆動し、ボールねじ機構によってナット22を所定のストロークSまで上昇する。昇降部19は箱型のカバー25によって覆われると共に、カバー25の上端は面取りされる。また、患者を安定した姿勢で治療することができるように、膝支持部16の一部を凹ませ、患者の膝を位置決めしてもよい。なお、昇降部19は、上述の機構に限られず、油圧シリンダ、電動シリンダ、エアーシリンダ等のアクチュエータを用いて構成してもよい。
【0029】次に、本発明の牽引装置の使用方法について説明する。まず、図1に示した状態で患者がベッド12に横たわり、膝支持部16に膝の後側を載せ、次いで足首保持部17に足首の前側を引っ掛ける。膝が曲がった状態で昇降機構13のスイッチを入れると、図2に示したように、膝支持部16および足首保持部17が上昇し患者の膝を持ち上げると同時に、それに引っ張られるようにしてベッド12が昇降機構13側にスライドし、患者の骨盤が無理なく浮き上がって、患者の腰椎の前湾が軽減される。適当な高さの所でスイッチを切ってその状態をしばらく保持する。なお、スイッチ操作は手動・自動を問わない。
【0030】図4は、牽引したときの腰椎の湾曲を示したものである。図中(A)は牽引する前の腰椎を示し、図中(B)は牽引後の腰椎を示す。図中(A)に示すように、患者の前湾26が強まると、仙骨27と第5腰椎28との間の圧迫が強まり、痛みに敏感な組織が刺激されて腰痛が起こる。図中(B)に示すように、患者の骨盤を浮かせると、患者の体重によって腰椎29がその全長にわたって前湾26と反対方向に湾曲するので、腰椎29の椎間関節の後方30が開く。したがって、椎間関節の圧迫が改善され、筋肉や靭帯の緊張がとれ、血液の循環が良くなり、患者が腰痛を感じることが少なくなる。また、膝を持ち上げているので、仙腸関節がフリーになり、骨盤の重みと筋肉の力によって仙腸関節が矯正される。仙腸関節を矯正することで、仙骨27と第5腰椎28と間の圧迫も改善されることになる。
【0031】図5および図6は、本発明の第2実施形態における牽引装置を示したものである。ベース11およびベッド12は上記第1実施形態の牽引装置と同様の構成なので同一の符号を付してその説明を省略する。この実施形態において、昇降機構31は、水平方向に延びて患者の膝の後側を支持する膝支持部32と、この膝支持部32と平行に延びて患者の足首の前側が引っ掛かる足首保持部33と、膝支持部32と足首保持部33とを連結する連結バー34と、連結バー34を上下動させて膝支持部32を回動させる駆動杆35とを備える。膝支持部32は、連結バー34の先端に取り付けられ、連結バー34が連結軸36を支点として上下動することによって上下方向に回動する。前記駆動杆35は連結バー34の他端38に軸着され、昇降パイプ37の内部を上下動する。したがって、この実施形態においても膝支持部32を下げた状態で患者が膝を掛け、膝支持部32を次第に上昇させて患者の膝を持ち上げ、膝支持部32が足首保持部33と略同じ高さとなったところで昇降パイプ37を上昇させることで、患者の骨盤を無理なく浮かせることができる。
【0032】図7は昇降機構の他の例を示したものである。この昇降機構41は上記第2実施形態の牽引装置の昇降機構31と略同様、駆動杆35を上下動させることで連結軸36を支点として膝支持部32が上下方向に回動する。なお、駆動杆35が昇降パイプ37の外側に出ている点が上記昇降機構31と相違している。
【0033】図8は、昇降機構のさらに他の例を示したものである。この昇降機構42では昇降パイプ37の上端にプレート43が設けられ、このプレート43の左右両側に固定されたL形部材44に足首保持部33が取り付けられると共に、連結バー34の後端が連結軸40によって回動可能に軸着される。連結バー34の先端には膝支持部32が取り付けられ、また連結バー34の中間には駆動杆35の上端が溶接された連結棒39が一対のL形部材44に掛け渡されている。駆動杆35を上下動させることで連結バー34は連結軸40を支点として回動し、膝支持部32が上下動する。なお、この実施形態では駆動杆35のストロークに対し、約2倍の距離幅で膝支持部32を上下動することができる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る牽引装置によれば、仰向けになった患者が横たわるベッドと、このベッドに対して垂直方向に患者の膝を持ち上げる昇降機構とを備え、患者の骨盤を浮かせて腰椎の前湾を軽減する。患者の骨盤を浮かせると、患者の体重によって、腰椎がその全長にわたって前湾と反対方向に湾曲するので、腰椎の椎間関節の後方が開き、椎間関節の圧迫が改善される。また、膝を持ち上げているので、仙腸関節がフリーになり、骨盤の重みと筋肉の力によって、仙腸関節が矯正される。したがって、仙腸関節まで含め、腰椎の全体を治療することができる。
【出願人】 【識別番号】500012879
【氏名又は名称】吉澤 貞夫
【識別番号】393012574
【氏名又は名称】古守工業株式会社
【出願日】 平成11年12月27日(1999.12.27)
【代理人】 【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
【公開番号】 特開2001−178756(P2001−178756A)
【公開日】 平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願番号】 特願平11−369451