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【発明の名称】 椎弓スペーサー
【発明者】 【氏名】大畑 建治

【要約】 【課題】骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を確実に再固定することができる椎弓スペーサーを提供すること。

【解決手段】椎弓スペーサー1Aは、椎弓の切断部に介挿される介挿部2Aと、かかる介挿部2Aに一体的に形成されたフランジ状の第1突出部4および第2突出部5と、介挿部2Aに形成された貫通孔6Aとを有している。椎弓スペーサー1Aでは、第1突出部4の頂部と第2突出部5の頂部とを結ぶ線L1は、第1当接面21の法線L2に対して傾斜している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 椎弓の切断により形成された切断部に設置して使用される椎弓スペーサーであって、前記椎弓の切断部に介挿される介挿部と、該介挿部に隣接して形成され、介挿部より幅広で、椎弓に係合する拡幅部とを有し、前記介挿部の平面形状は、略四角形状をなしており、椎弓スペーサーを患部に設置したときに椎弓の外面側に位置することとなる面は、椎骨側の椎弓の切断面に当接する面の法線に対して傾斜していることを特徴とする椎弓スペーサー。
【請求項2】 前記拡幅部は、椎骨側の椎弓または棘突起側の椎弓の少なくとも一方に係合する突出部を有する請求項1に記載の椎弓スペーサー。
【請求項3】 椎弓の切断により形成された切断部に設置して使用される椎弓スペーサーであって、前記椎弓の切断部に介挿される介挿部と、椎骨側の椎弓に係合する第1の突出部と、椎骨から切断、分離された棘突起側の椎弓に係合する第2の突出部とを有し、前記介挿部の平面形状は、略四角形状をなしており、四角形の対向する一対の辺に対応した側面が、それぞれ、前記椎骨側の椎弓の切断面に当接する第1の当接面、および、前記椎骨から切断、分離された椎弓の切断面に当接する第2の当接面を構成しており、前記第1の突出部の頂部と前記第2の突出部の頂部とを結ぶ線は、前記第1の当接面の法線に対して傾斜していることを特徴とする椎弓スペーサー。
【請求項4】 前記第1の突出部は、前記第1の当接面の端部に、前記第1の当接面と連続して突出形成され、前記第2の突出部は、前記第2の当接面の端部に、前記第2の当接面と連続して突出形成されている請求項3に記載の椎弓スペーサー。
【請求項5】 前記第1の当接面と第2の当接面とは、略平行をなしている請求項3または4に記載の椎弓スペーサー。
【請求項6】 前記介挿部には、椎弓スペーサーを患部に固定するための固定手段が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の椎弓スペーサー。
【請求項7】 前記固定手段は、貫通孔である請求項6に記載の椎弓スペーサー。
【請求項8】 セラミックス材料を構成材料としてなる請求項1ないし7のいずれかに記載の椎弓スペーサー。
【請求項9】 前記セラミックス材料はリン酸カルシウム系化合物からなる請求項8に記載の椎弓スペーサー。
【請求項10】 前記リン酸カルシウム系化合物はCa/P比が1.0〜2.0である請求項9に記載の椎弓スペーサー。
【請求項11】 前記リン酸カルシウム系化合物はハイドロキシアパタイトである請求項9または10に記載の椎弓スペーサー。
【請求項12】 前記セラミックスの気孔率が0〜70%である請求項8ないし11のいずれかに記載の椎弓スペーサー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、椎弓スペーサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症等の脊椎疾患に対する外科的手術の手技の1つとして骨形成的脊柱管拡大術と呼ばれるものがある。これは椎骨の一部を分割した後、スペーサー等の骨補填材を用いて椎骨を再形成することにより狭窄または変形した脊柱管を拡大する方法である。
【0003】図7は、従来のスペーサーを用いて椎骨を再形成した状態を示す図である。同図に示すように、スペーサー100は、ビーズ状をなしている。このスペーサー100は、椎弓91の切断部に介挿されて使用される。
【0004】しかし、骨形成的脊柱管拡大術後に再固定された棘突起側の椎弓911は、安定性に欠けるものであった。これは、図7に示すような形状のスペーサー100を用いると、固定は糸92によるのみであり、固定プレートを使用した固定ができないからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を確実に再固定することができる椎弓スペーサーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0007】(1) 椎弓の切断により形成された切断部に設置して使用される椎弓スペーサーであって、前記椎弓の切断部に介挿される介挿部と、該介挿部に隣接して形成され、介挿部より幅広で、椎弓に係合する拡幅部とを有し、前記介挿部の平面形状は、略四角形状をなしており、椎弓スペーサーを患部に設置したときに椎弓の外面側に位置することとなる面は、椎骨側の椎弓の切断面に当接する面の法線に対して傾斜していることを特徴とする椎弓スペーサー。これにより、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を、椎骨に、確実に再固定することができるようになる。
【0008】(2) 前記拡幅部は、椎骨側の椎弓または棘突起側の椎弓の少なくとも一方に係合する突出部を有する上記(1)に記載の椎弓スペーサー。これにより、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を、椎骨に、安定、確実に再固定することができるようになる。
【0009】(3) 椎弓の切断により形成された切断部に設置して使用される椎弓スペーサーであって、前記椎弓の切断部に介挿される介挿部と、椎骨側の椎弓に係合する第1の突出部と、椎骨から切断、分離された棘突起側の椎弓に係合する第2の突出部とを有し、前記介挿部の平面形状は、略四角形状をなしており、四角形の対向する一対の辺に対応した側面が、それぞれ、前記椎骨側の椎弓の切断面に当接する第1の当接面、および、前記椎骨から切断、分離された椎弓の切断面に当接する第2の当接面を構成しており、前記第1の突出部の頂部と前記第2の突出部の頂部とを結ぶ線は、前記第1の当接面の法線に対して傾斜していることを特徴とする椎弓スペーサー。これにより、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を、椎骨に、安定・確実に再固定することができるようになる。
【0010】(4) 前記第1の突出部は、前記第1の当接面の端部に、前記第1の当接面と連続して突出形成され、前記第2の突出部は、前記第2の当接面の端部に、前記第2の当接面と連続して突出形成されている上記(3)に記載の椎弓スペーサー。これにより、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を、椎骨に、さらに安定、確実に再固定することができるようになる。
【0011】(5) 前記第1の当接面と第2の当接面とは、略平行をなしている上記(3)または(4)に記載の椎弓スペーサー。これにより、椎弓や椎弓スペーサーに局所的な負荷が加わることを防止でき、椎弓や椎弓スペーサーの損傷を好適に防止できるようになる。
【0012】(6) 前記介挿部には、椎弓スペーサーを患部に固定するための固定手段が設けられている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の椎弓スペーサー。これにより、椎弓の切断部に椎弓スペーサーを固定することが容易となる。
【0013】(7) 前記固定手段は、貫通孔である上記(6)に記載の椎弓スペーサー。これにより、椎弓の切断部に椎弓スペーサーを固定することがさらに容易となる。
【0014】(8) セラミックス材料を構成材料としてなる上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の椎弓スペーサー。これにより、加工性に優れた椎弓スペーサーを得ることができる。
【0015】(9) 前記セラミックス材料はリン酸カルシウム系化合物からなる上記(8)に記載の椎弓スペーサー。これにより、優れた生体親和性を有する椎弓スペーサーを得ることができる。
【0016】(10) 前記リン酸カルシウム系化合物はCa/P比が1.0〜2.0である上記(9)に記載の椎弓スペーサー。これにより、より優れた生体親和性を有する椎弓スペーサーを得ることができる。
【0017】(11) 前記リン酸カルシウム系化合物はハイドロキシアパタイトである上記(9)または(10)に記載の椎弓スペーサー。これにより、特に優れた生体親和性を有する椎弓スペーサーを得ることができる。
【0018】(12) 前記セラミックスの気孔率が0〜70%である上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の椎弓スペーサー。これにより、椎弓スペーサーの骨組織への癒合が促進される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の椎弓スペーサーの第1実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す椎弓スペーサーの平面図である。
【0020】これらの図に示すように、椎弓スペーサー1Aは、椎弓の切断部に介挿される介挿部2Aと、かかる介挿部2Aに隣接して形成され、介挿部2Aより幅広の拡幅部(フランジ部)7と、介挿部2Aに形成された貫通孔6Aとを有している。また、拡幅部7は、第1突出部4および第2突出部5を有している。
【0021】かかる椎弓スペーサー1Aは、骨形成的脊柱管拡大術等で、椎弓11の切断により形成された椎弓11の切断部(患部)115に介挿、設置される(図3、図4参照)。以下、説明の便宜上、切断された椎弓11のうち、椎骨10(椎体)側の椎弓11を椎骨側椎弓111と、椎骨10から分離された棘突起12側の椎弓11を棘突起側椎弓112という。また、椎骨側椎弓111の切断面を椎骨側切断面116と、棘突起側椎弓112の切断面を棘突起側切断面117という。
【0022】介挿部2Aは、椎弓スペーサー1Aの主要部をなす部分である。かかる介挿部2Aは、平面視にて略台形(四角形)をなし、一定長さLを有している。介挿部2Aでは、平面視にて台形の一対の平行な辺を構成する端面が、それぞれ、椎骨側切断面116、棘突起側切断面117に当接する。かかる介挿部2Aの端面のうち、椎骨側切断面116に当接する端面を第1当接面21と、棘突起側切断面117に当接する端面を第2当接面22という。
【0023】以下、説明の便宜上、椎弓スペーサー1Aを椎弓11の切断部115に設置したときに、脊柱管13側(椎弓11の内面側すなわち人体の中心部側)に位置する介挿部2Aの端面を先端面24と、脊柱管13と反対側(椎弓11の外面側すなわち体表側)に位置する介挿部2Aの端面を基端面23と呼ぶ。先端面24および基端面23は、第1当接面21の法線L2に対して所定角度傾斜しており(非平行であり)、先端面24と基端面23との距離は、第1当接面21側から第2当接面22側に向かって漸減している。これにより、椎弓スペーサー1Aを切断部115に設置したときに、椎骨側椎弓111の内側面、先端面24、および棘突起側椎弓112の内側面は、連続面(連続した形状)に近いものとなる。介挿部2Aの基端面23側端部には、拡幅部7が介挿部2Aと一体的に形成されている。かかる拡幅部7には、第1突出部4と第2突出部5とが形成されている。
【0024】第1突出部4は、第1当接面21の基端面23側端部に隣接して突出形成されており、椎骨側椎弓111と係合することができる。この第1突出部4は、凸曲面を有しており、第1突出部4の先端部付近における第1突出部4の横断面面積は、その先端に向かって漸減している。
【0025】この第1突出部4は、第1当接面21と連続した形状をなしている。すなわち、第1突出部4の側面41は、第1当接面21と連続した面をなしている。このため、側面41と第1当接面21との境界部42は、丸みを帯びたもの(R付け)となっている。この側面41の先端側側面411は、椎骨側切断面116近傍で、椎骨側椎弓111の角部または外側面に当接する。また、第1突出部4の側面41は、基端面23と連続した面をなしている。これにより、椎弓スペーサー1Aの強度が向上し、また、欠け等も好適に防止される。
【0026】また、第1突出部4の長さ(図2中紙面の垂直方向の長さ)と介挿部2Aの長さLとは、ほぼ同じものとなっている。このため、介挿部2Aの上面25と第1突出部4の上面43とは、同一平面上に位置している。同様に、介挿部2Aの底面26と第1突出部4の底面44とは、同一平面上に位置している。
【0027】第2突出部5は、第2当接面22の基端面23側端部に隣接して突出形成されており、棘突起側椎弓112と係合することができる。この第2突出部5は、凸曲面を有しており、第2突出部5の先端部付近における第2突出部5の横断面面積は、その先端に向かって漸減している。
【0028】この第2突出部5は、第2当接面22と連続した形状をなしている。すなわち、第2突出部5の側面51は、第2当接面22と連続した面をなしている。このため、側面51と第2当接面22との境界部52は、丸みを帯びたもの(R付け)となっている。この側面51の先端側側面511は、棘突起側切断面117近傍で、棘突起側椎弓112の角部または外側面に当接する。また、第2突出部5の側面51は、基端面23と連続した面をなしている。これにより、椎弓スペーサー1Aの強度が向上し、また、欠け等も好適に防止される。
【0029】また、第2突出部5の長さ(図2中紙面の垂直方向の長さ)と介挿部2Aの長さLとは、ほぼ同じものとなっている。このため、介挿部2Aの上面25と第2突出部5の上面53とは、同一平面上に位置している。同様に、介挿部2Aの底面26と第2突出部5の底面54とは、同一平面上に位置している。
【0030】なお、第1突出部4の平面形状(平面視形状)と第2突出部5の平面形状は、異なっていることが好ましい。これにより、第1突出部4および第2突出部5の形状を椎骨側椎弓111および棘突起側椎弓112の係合に、それぞれ適したものとすることができる。
【0031】このような椎弓スペーサー1Aでは、第1突出部4の頂部と第2突出部5の頂部とを結ぶ線L1は、第1当接面21の法線L2に対して所定角度傾斜している(当然基端面23も法線L2に対して所定角度傾斜している)。このような椎弓スペーサー1Aを椎弓11の切断部115に設置した場合、例えば、線L1(および基端面23)は、椎弓11の長手方向とほぼ一致し(椎弓11の外面とほぼ平行となり)、第1当接面21および第2当接面22は、椎弓11の横断面より所定角度傾斜することとなる。
【0032】かかる線L1と法線L2とのなす角α(もしくは基端面23と法線L2とのなす角)は、1〜80°程度が好ましく、10〜45°程度が好ましい。これにより、後述する効果をより効果的に得られるようになる。
【0033】介挿部2Aには、第1当接面21と第2当接面22との中間部付近で基端面23寄りの位置に、介挿部2Aの上面25から底面26に貫通する貫通孔(固定手段)6Aが形成されている。この貫通孔6Aの横断面形状は、例えば円形をなしている。この貫通孔6Aに糸(線状体)等を挿通することにより、例えば、図3、4に示すように、椎弓スペーサー1Aを固定プレート19に固定することができる。これにより、椎弓スペーサー1Aは、椎弓11の切断部(術部)115に確実に設置、固定される。なお、貫通孔6Aは、複数設けられていてもよい。この場合、各孔は、線L1と平行な方向に沿って形成されていることが好ましい。これにより、椎弓スペーサー1Aをより安定に固定することが可能となる。
【0034】また、介挿部2Aでは、先端面24側の2つの角部は、面取りされている。すなわち、第1当接面21と先端面24とは連続面をなしており、また、第2当接面22と先端面24とは連続面をなしている。これにより、椎弓スペーサー1Aでは、角部の欠けが好適に防止される。
【0035】椎弓スペーサー1Aの幅(第1当接面21と第2当接面22との距離)W、厚さ(基端面23から先端面25までの平均距離)T、長さL、および第1突出部4、第2突出部5の大きさ(高さ)は、患者の症例等に応じて適宜決定される。例えば、患者が後縦靭帯骨化症等を罹患し、脊柱管を大きく拡大する必要があるときは、椎弓スペーサー1Aの幅Wを比較的大きなものとする。また、例えば、脊髄腫瘍の治療等の場合には、椎弓スペーサー1Aの幅Wは比較的小さなものでよい。
【0036】このような椎弓スペーサー1Aは、セラミックス材料を構成材料としてなることが好ましい。セラミックス材料は加工性に優れているため、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整することが容易である。
【0037】セラミックス材料としては、各種のセラミックス材料が挙げられるが、特にアルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、椎弓スペーサー1Aの構成材料として特に好ましい。
【0038】リン酸カルシウム系化合物としては、例えばハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0039】このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、椎弓スペーサー1Aを製造する際、原料のハイドロキシアパタイト粒子は、500〜1000℃で仮焼成されたものがより好ましい。かかる温度で仮焼成されたハイドロキシアパタイト粒子は、ある程度活性が抑えられるため、焼結が急激に進行すること等による焼結ムラが抑制され、強度にムラのない焼結体を得ることができる。
【0040】本発明では、セラミックスの気孔率は0〜70%であることが好ましく、30〜50%がより好ましい。気孔率をこの範囲とすることにより、強度を維持しつつ、良好な生体親和性を発揮し、骨伝導による骨新生を促進することができる。
【0041】本発明の椎弓スペーサー1Aの構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0042】このような椎弓スペーサー1Aは、一般的な術式である骨形成的脊柱管拡大術などに適用される。骨形成的脊柱管拡大術の一例を図3、4に沿って詳述すると、以下のようになる。以下の操作は、2つの椎弓11で、それぞれ行う(図3参照)。
【0043】まず、椎弓11を椎骨10寄りの位置で切断し、棘突起12側の椎弓11、すなわち、棘突起側椎弓112を分離する。このとき、必要に応じて、椎骨側切断面116、棘突起側切断面117を整形する。次に、椎弓11の切断部115に椎弓スペーサー1Aを設置する。このとき、第1当接面21を椎骨側切断面116に当接させ、第1突出部4を椎骨側椎弓111に係合させる。また、このとき、先端面25が脊柱管17側(体の中心部側)に位置するように椎弓スペーサー1Aを設置する。
【0044】次に、棘突起側切断面117を第2当接面22に当接させ、また、第2突出部5を棘突起側椎弓112に係合させて、分離した棘突起側椎弓112を再び体内に設置する。これにより、椎弓11の切断部115に、すなわち、椎骨側椎弓111と棘突起側椎弓112との間に椎弓スペーサー1Aが介挿、設置された状態となる。
【0045】次に、椎弓11の切断部115に固定プレート19を体表側からあてがい、ねじ191で、固定プレート19を椎弓11にネジ止めをする。さらに、貫通孔6Aに糸(線状体)17を通し、椎弓スペーサー1Aを固定プレート19に縛り付け、固定する。これにより、椎弓スペーサー1Aは、患部に確実に設置、固定される。
【0046】図3、4に示すように、第1当接面21と椎骨側切断面116、および第2当接面22と棘突起側切断面117とは、それぞれ面接触する。しかも、第1突出部4は椎骨側椎弓111に、第2突出部5は棘突起側椎弓112に、それぞれ係合する。このため、本発明によれば、椎弓スペーサー1Aを介して棘突起側椎弓112を、椎骨10に確実に固定できる。しかも、第1突出部4は椎骨側椎弓111に、第2突出部5は棘突起側椎弓112に、それぞれ係合しているため、椎骨側椎弓111と棘突起側椎弓112との位置関係がずれることも好適に防止される。
【0047】さらには、椎弓スペーサー1Aでは、第1当接面21および第2当接面22は、椎弓11の横断面より所定角度傾斜している。このため、第1当接面21と椎骨側切断面116との接触面積、および、第2当接面22と棘突起側切断面117との接触面積は増大し、棘突起側椎弓112の固定はさらに確実なものとなる。
【0048】また、本発明の椎弓スペーサー1Aによれば、第1当接面21と椎骨側切断面116との接触面積、および第2当接面22と棘突起側切断面117との接触面積が増大し、椎弓スペーサー1Aが患部でずれにくいので、固定プレート19を使用することが可能となる。これにより、棘突起側椎弓112は、より確実に椎骨10に固定される。しかもこれと相まって、本発明によれば、椎弓スペーサー1Aを固定プレート19に確実に固定することができる。このため、椎弓スペーサー1Aの固定の安定性が増大し、これに伴い棘突起側椎弓112の固定の安定性も増大する。
【0049】加えて、第1当接面21と第2当接面22とは略平行であるので、棘突起12側から椎骨10側に外力が加わったときに、かかる外力は、椎弓スペーサー1Aの第2当接面22および第1当接面21全体に均一に加わるようになる。このため、椎骨11や椎弓スペーサー1Aの一部に局所的に高い負荷がかかることが防止される。
【0050】以上のような利点を本発明の椎弓スペーサー1Aは有しているので、本発明の椎弓スペーサー1Aを用いて骨形成的脊柱管拡大術を行えば、切断して再固定した椎弓は、術後も固定が確実に維持され、安定性も高い。したがって、本発明によれば、術後、患者の椎弓は、長期間にわたって確実に固定される。
【0051】図5は、本発明の椎弓スペーサーの第2実施形態を示す斜視図である。図6は、図5に示す椎弓スペーサーの平面図である。以下、椎弓スペーサー1Bについて、椎弓スペーサー1Aと相違する事項を中心に述べる。
【0052】椎弓スペーサー1Bの介挿部2Bは、平面視にて略平行四辺形(四角形)をなしており、先端面24および基端面23は、第1当接面21の法線に対して所定角度傾斜している。介挿部2Bの中央部付近には、介挿部2Bの上面25から底面26に貫通する貫通孔(固定手段)6Bが形成されている。この貫通孔6Bの横断面形状は、例えば楕円形をなしている。
【0053】
【実施例】水酸化カルシウムスラリーとリン酸水溶液から公知の湿式合成法によりハイドロキシアパタイトスラリー(Ca/P比=1.67)とした。これを噴霧熱乾燥法により乾燥した後、大気炉において700℃で仮焼成を行うことにより球状粉体を得た。次に、得られたハイドロキシアパタイトの球状粉体と高分子化合物水溶液とを混合・撹拌した後、この混合物を乾燥させることによりハイドロキシアパタイトのブロック体を得た。
【0054】このブロック体から焼結後の収縮を計算し、旋盤、ドリル等を用いて、所望の椎弓スペーサー形状の成形体を作製した。この成形体を電気炉に入れ、1200℃で4時間焼結することにより、図1、2、5、6に示す各形状の椎弓スペーサーを作製した。
【0055】本実施例で作製された椎弓スペーサーは、幅W:2.6mm、長さL:6mm、厚さT:4.5mm、第1突出部の高さ:1.3mm、第2突出部の高さ:1.3mm、角度α(および基端面と法線L2とのなす角):30°であった。また、ハイドロキシアパタイトの気孔率は40%であった。
【0056】これらの椎弓スペーサーを用いて、脊柱管狭窄症の患者数例に対し、前述したような方法で、骨形成的脊柱管拡大術を施した。
【0057】その結果、全ての患者で狭窄していた脊柱管を、正常な脊柱管に近似した形状に拡大することができた。また、手術中、切断、分離した椎弓を再固定する作業を容易に行うことができ、手術時間を大幅に短縮することができた。術後の経過も良好で、術後長期間経過しても、椎弓や椎弓スペーサーのずれは確認されず、脊柱管は拡大状態を良好に維持していた。また、椎弓スペーサーは、椎弓と速やかに骨癒合し、生理的再建が極めて良好に行われ、神経根麻痺や後彎変形等は確認されなかった。
【0058】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、骨形成的脊柱管拡大術等を円滑に行うことができるようになる。また、本発明によれば、骨形成的脊柱管拡大術等で切断、分離された椎弓を、椎骨に、安定、確実に再固定することができるようになる。
【0059】このため、骨形成的脊柱管拡大術等を確実に行え、脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症等の脊椎疾患患者をより確実に治療できるようになる。また、手術後も、患者は良好な状態を維持することができ、椎弓や椎弓スペーサーのずれが原因の合併症も好適に抑制される。
【出願人】 【識別番号】599129672
【氏名又は名称】大畑 建治
【出願日】 平成11年9月13日(1999.9.13)
【代理人】 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉 (外1名)
【公開番号】 特開2001−79024(P2001−79024A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−259476