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【発明の名称】 電子冷却素子を用いた水枕装置の構造
【発明者】 【氏名】河村 正己

【要約】 【課題】冷却装置を伴った水枕装置を構成する際に、冷却手段として広く知られている電子冷却素子を利用した水冷装置を用いる場合、騒音、放熱効率、断熱、水の循環、空気抜き、水の取り入れ等、様々な問題があり、実用化のために、大きな障害となっていた。

【解決手段】空冷ファンを実装する際に、空気の吸入・放出を分離する構造にし、また、冷却装置の外箱の前面、及び、上面に防音材を用いながらも空気の流れを確保する構造にする等、冷却装置の構造を工夫し、また、水を循環させるためのポンプの設置方向や、水の取り入れ口、水枕の構造を工夫する等した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱電現象として広く知られているペルチェ効果を実現する電子冷却素子(10)を用いて、水を冷却し、その水を水枕・氷嚢・マットに循環させることにより構成される、連続使用可能な水枕装置において、電子冷却素子の放熱面に接触した放熱板(8)に設置する空冷ファン(5)の周りに(4)の境界を設け、放熱板(8)から空冷ファン(5)を通して排出される空気と、放熱板(8)に吸い込まれる空気を分離する構造。
【請求項2】 請求項1の空冷ファン(5)のために生じる騒音を抑えつつ、放熱効率を保つために、放熱用の放熱板として、正面・両側面・背面の4方向から空気を吸い込むことのできる放熱板を採用し、冷却装置の外箱の、利用者の側にくる前面、及び、上面に防音壁(1)を設け、底面を除く他の面には、網(6)を設置し、かつ、放熱板(8)と前面防音壁(1)との間に十分な隙間(21)を設けた構造。
【請求項3】 請求項1の水枕装置において、ポンプの水の注入口に向けて、(14)の水の取り入れ口を設け、ポンプの水の排出口は、冷却のための密封水槽(13)の水の取り入れ口と接続し、さらに、水枕の上面に空気抜き口(17)を設け、水の注入、及び空気の排出を容易にした構造。
【請求項4】 請求項1の水枕装置の断熱性能を高めるため、水枕の底面、及び、側面に断熱材(20)を設置し、さらに、水枕の内部の水の冷却効率を高めるために、水枕への水の吸入口(18)と水の排出口(19)を対面配置した構造を持った、水枕装置に利用する水枕。
【請求項5】 請求項3、及び、請求項4の水枕の替わりに、氷嚢・マットにも同様の構造を持たせること。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、病院や一般家庭において、発熱時の頭部冷却や患部冷却、あるいは暑熱を避ける安眠枕として利用するために、冷却技術として一般に広く知られているペルチェ効果による電子冷却素子を用いて水枕装置を構成し、実用化する際に必要となる、非常に効果的で、現実的な構造に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】水枕・氷嚢等の冷却装置として、従来からコンプレッサーを用いた方法等が考えられてきた(例えば、実用新案登録番号第2574563号参照)。この冷却装置の冷却方式として、熱電現象として一般に広く知られているペルチェ効果を用いた電子冷却素子を利用することは、容易に考えられるが、電子冷却素子の扱いの難しさ、特に、放熱面からの放熱効率の向上についての困難や、枕元に置くことが多い装置であるが故に要求される空冷ファンの静音性、冷水の循環に伴う放熱対策等、実際に、病院や一般家庭において利用できる電子冷却素子を用いた水枕装置を構成し、実用化するためには、さまざまな問題があった。
【0003】さらに、冷却方式として、コンプレッサー等の替わりに電子冷却素子を用いることの大きな長所である可搬性を確保するためには、内部の水は、長期の未使用時には排出し、利用するときに注入できるような構造であることが好ましいが、そのためには、水の注入時における水枕装置内部の空気の排出が重要である。何故ならば、水を注入した際に、水枕装置内部に空気が残留していると、水の循環が悪化したり、冷却装置内での冷却効率が低下するからである。
【0004】本発明は、電子冷却素子を用いて水枕・氷嚢・マット等を冷却する装置(以下、これを電子水枕装置という)を構成し、実用化する際に問題となる放熱効率の向上、静音性、断熱、水の注入・排出等を解決することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】冷却の法則によれば、電子水枕装置内の水温(外1)は、外気温T、経過時間t、水の体積V、また、断熱の度合いによって定まる定数k、及び、電子冷却素子の冷却能力に比例する定数nを用いて、(数1)より得られる(数2)により、ほぼ決定される。ここで、(外2)は初期水温である。
【0006】(数2)によれば、電子水枕装置の冷却能力は、外気温との差により表すのが適当であり、かつ、その冷却能力は、電子冷却素子の冷却能力nにほぼ比例し、断熱の度合いにより定まる定数kにほぼ反比例する。よって、電子水枕装置の冷却能力を高めるためには、定数nの値を大きくし、定数kの値を小さくすることが求められる。
【0007】定数nの値を大きくするためには、電子冷却素子の個数を増加させ、かつ十分な電流を流すことが効果的であるが、電子冷却素子は、その個数が増え、また、電流量が増加し、放熱面の温度が高まると冷却能力が低下する性質を持っているため、電子冷却素子の放熱面に十分な表面積を持った高性能な放熱板(8)を設け、さらに、空冷ファン(5)を取り付ける必要がある。
【0008】しかし、単に空冷ファン(5)を設置するだけでは、放熱板(8)から空冷ファン(5)により排出される暖められた空気が、再び放熱板(8)に吸い込まれ、放熱板の放熱効率が悪化し、電子冷却素子の性質に基づく結果として、定数nの値を小さくする。そこで、空冷ファン(5)の周りに境界(4)を設けた構造を用いることで、電子冷却素子の放熱面の放熱板(8)へ吸い込まれる空気と、放熱板(8)から空冷ファン(5)を通して排出される空気の流れを分離した。
【0009】さらに、空冷ファン(5)の設置により、騒音が発生する。この騒音は、高性能の比較的静かな空冷ファンを用いたとしても、空冷ファン(5)の空気の吸い込み口付近に、放熱板(8)があるため、それが障害物となって、無視できない程の大きな音となる。この騒音を減少させるためには、防音材を用いた防音壁を設ける必要があるが、安易に防音壁を設けると、今度は空冷ファン(5)に吸い込まれる空気の量や、空冷ファン(5)から排出される空気の量が減少し、放熱板(8)の放熱効率が悪化する。このジレンマを解決するためには、放熱用の放熱板(8)として、前面・両側面・背面の4方向から空気を吸い込むことのできる、丁度、生け花の剣山の様な形状をした、ピンタイプの放熱板を採用し、かつ本発明による電子水枕装置の外箱において、利用者の側にくる前面、及び、上面にのみ防音壁(1)を設け、底面を除く他の面には、網(6)を設置する構造が最もバランスが取れた構造であることが実験により解明された。この際、放熱板と前面防音壁との間に十分な隙間(21)が必要である。この構造により、(図2)に示す様に、放熱板(8)への空気の吸い込みが(21)の無いときに比べて30%程度増加する。
【0010】定数kの値は、断熱構造が十分整備されると小さくなり、電子水枕装置の性能が向上する(数2)。そこで、本発明による電子水枕装置においては、水を冷却する冷却部分の水槽の周囲(12)のみならず、水を枕や氷嚢・マット等へ運搬するホースにも断熱ホース(15)を用いた。このようにして、本発明による電子水枕装置の冷却部分、及び、ホースに断熱構造を整備することで、定数kの値は比較的小さく抑えることが可能となった。
【0011】ただし、水枕・氷嚢・マット部分に関しては、本来、患者の体温等、外部から熱を奪う構造が必要とされるため、完全な断熱構造にすることはできない。そこで、水枕においては、頭部に接触する上面以外の面、すなわち、底面、側面に断熱材(20)を配置し、それ以外の上面には断熱を施さないことで、断熱効率を高めた。氷嚢・マットに関しても同様に接触面以外を断熱構造とした。この際、水枕や氷嚢・マットへの水の吸入口(18)と水の排出口(19)を対面配置することで、水枕や氷嚢・マット内部の水の冷却を効率良く行えるようにした。
【0012】ところで、電子冷却素子を水枕装置に用いることの最大の長所は、可搬性にある。つまり、コンプレッサー等を用いた装置の場合、重量が重く、比較的大型になることに加え、移動後、しばらくの間使用できない等、可搬性に問題があった。しかし、冷却方式として、電子冷却素子を用いることで、小型化でき、かつ、移動に関しても全く問題が無くなった。電源さえ確保できれば、移動しながらの利用も可能な程である。この可搬性のためには、水を出し入れできる構造の方が望ましい。
【0013】さらに、可搬性の問題に加えて、特に一般家庭においては、夏季等の安眠用の利用を除いては、インフルエンザでの発熱時等の臨時の利用が中心になるため、長期に使用しない期間が生じることもある。この際、電子水枕装置の内部に水を入れたまま保管することは、重量的に不便であるだけでなく、水枕・氷嚢・マット部分の破損、ホースの破損等による水漏れ等の事故の危険があり、やはり、電子水枕装置の中の水は、出し入れが可能な方が望ましい。
【0014】このように、水の出し入れを可能にすることは、大きな問題を含んでいる。水の排出はどのような方法を用いても容易に行えるが、水の注入には、注意を要する。つまり、電子水枕装置内部に水が入っていない段階では、冷却部分の密封された水槽(13)、及び、ホース(15)、水枕・氷嚢・マットの内部に空気が入っている。電子水枕装置の一カ所から水を注入しようとした場合、この空気が排出されなければ、水は注入できない。仮に、電子水枕装置内部の水の流れるどこか一カ所に水の注入口を設けたとしても、水枕部分の弾性構造、及び、電子水枕装置内部の密封構造のため、電子水枕装置内部に空気が残留し、特に、電子冷却素子の冷却面に設置された放熱板(9)がある側の密封された水槽(13)内部に空気が残留すると、放熱板(9)と、水の接触が不完全になり、冷却能力が低下するばかりでなく、水を循環させるためのポンプ(16)が空回りし、騒音を発生させるなど、実用上大きな問題となる。
【0015】そこで、(14)の構造を持った水の注入口を、密封水槽(13)より高い位置に設け、水を循環させるためのポンプ(16)の水の注入口に向けて接続し、さらに、ポンプ(16)の水の排出口を密封水槽(13)側に向けることで、強制的に密封水槽(13)内部の空気を排出し、ホース(15)を経て、水枕・氷嚢・マット部分に送り出し、そこに設けた空気抜き口(17)から空気を排出するような構造とした。この際、水枕・氷嚢・マットの空気抜き口(17)は上面に設けており、水枕・氷嚢・マットからの水の排出口(19)より高い位置にあるため、水は水枕・氷嚢・マットの水の排出口(19)から、ホース、ポンプを経て、密封水槽(13)に戻るが、空気は、水枕・氷嚢・マットの上面に溜まる。この空気を空気抜き口(17)から排出するのである。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明による構造を持った電子水枕装置に、請求項3、請求項4の水枕を2本の断熱ホース(15)で連結し(図1)、請求項3の水の注入口(14)より、水をおよそ2000cc注入して実施した。
【0017】
【実施例】実施によると、本発明による構造を持った電子水枕装置は、請求項2の構造のために、十分静かであるし、請求項3の構造のために、水の取り入れも容易であった。そして、本発明による電子水枕装置を、上記の状態で、外気温25度、湿度60%の条件で稼動させた。その結果を(図4)に示す。この装置では、最終的に外気温に対して、およそマイナス18度の冷却効果があり、水温は7度程度まで下がった。請求項1、及び、請求項4の構造の効果で、十分な冷却能力が得られた。
【0018】また、温度調節の機構を設けることで最適の温度を保つこともできる。上記の実施例で用いた装置では、使用する電子冷却素子の個数を変化させることにより温度調節を行えるようにしてあるが、電流の調整によっても可能である。なお、水は循環しているため、凍り付く心配はほとんど無い。
【0019】さらに、従来からあるゴム製氷枕や、冷却材入り枕、冷却シート等では、使用開始時には十分冷たく、冷却のために効果的ではあるが、時間の経過につれて、温度が上昇し、長いものでも数時間で効果がなくなってしまう。これに対して、本発明による水枕装置は、(数2)及び(図4)に見られるように、電源投入時から30分程度で十分な冷却温度に達し、その後、電気を通電している間は、何時間でも、何日間でも水枕は冷たいままである。
【0020】
【発明の効果】本発明による構造を持った電子水枕装置は、電子冷却素子の性能を十分に発揮し、冷却能力が強力であるだけでなく、静かであり、冷却装置の移動も容易であり、かつ、小型である。また、地球環境の観点からもフロン類を一切使わないため有効である。これまで、実用化が困難であった連続使用可能な電子水枕装置が、本発明により、病院や一般家庭用において、十分、実用的に利用できる。
【0021】これまで、発熱患者に対して、数時間毎の定期的な交換が必要であった氷枕等の代わりに、本発明による構造を持った電子水枕装置を用いることにより、患者の苦痛が緩和できるだけでなく、看病人の労力も激減する。特に、単身者の発熱時には、是非とも必要なものである。
【0022】また、本発明による構造をもった電子水枕装置の使用法は簡単であるため、暑熱のための不眠対策としても十分利用できる。
【外1】 Θ【外2】 Θ【数1】

【数2】

【出願人】 【識別番号】599048672
【氏名又は名称】河村 正己
【識別番号】599052613
【氏名又は名称】足立 カチ子
【識別番号】592021342
【氏名又は名称】大西 規照
【識別番号】599143955
【氏名又は名称】野村 良雄
【出願日】 平成11年9月7日(1999.9.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−70335(P2001−70335A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−291393