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【発明の名称】 超音波照射装置
【発明者】 【氏名】藤本 克彦

【氏名】野村 哲

【氏名】迫 陽一

【氏名】石橋 義治

【氏名】小作 秀樹

【要約】 【課題】超音波プローブの発熱による破損・破壊等を抑制することができ、治療用ヘッド全体の耐久性が向上された超音波照射装置を提供する。

【解決手段】本発明の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子2から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための画像診断用超音波プローブ3とを備えた治療用ヘッド1を有するものであって、前記プローブ3の側面に筒状反射保護体を設けたり、またプローブ3前面が前記超音波振動子の配設面に対して後方に位置するよう設置されたり、さらにはプローブ3前面に遮蔽膜10が設けられたりする形態となる。これらのうち、図は、遮蔽膜10が前記プローブ3前面に対して斜めに設けられているものについて示す。この遮蔽膜10は反射超音波がプローブ3前面に直接入射することを防止し、当該プローブ3の発熱・破壊を未然に防ぐ効果を発揮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの側面に筒状反射保護体を設けることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項2】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記超音波発生源は前記超音波振動子を配設する配設面を有し、前記画像診断用超音波プローブは、その前面が前記配設面に対して後方に位置するよう構成されていることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項3】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの前面に遮蔽膜を設けることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項4】 前記遮蔽膜は、その膜面が、前記画像診断用超音波プローブの前面に対して斜めに設置構成されていることを特徴とする請求項3記載の超音波照射装置。
【請求項5】 前記遮蔽膜は、前記画像診断用超音波プローブの前面に対して、着脱可能又は移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の超音波照射装置。
【請求項6】 前記遮蔽膜は、その膜厚さが、前記超音波振動子から発生する強力超音波の当該遮蔽膜内における波長に1/4を乗じ、さらに奇数倍した近傍の厚さであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の超音波照射装置。
【請求項7】 前記遮蔽膜は、その膜厚さが、前記画像診断用超音波プローブから発生する画像用超音波の当該遮蔽膜内における波長に1/2を乗じ、さらに整数倍した近傍の厚さであることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の超音波照射装置。
【請求項8】 前記遮蔽膜は、その材質がTPXとされ、その膜厚さが0.3〜0.4mmとされていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の超音波照射装置。
【請求項9】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記超音波発生源は前記超音波振動子を配設する球殻状の面を有し、前記画像診断用超音波プローブは、当該超音波発生源とは別途の場所に設けられ、かつ前記球殻状の面の中心軸に対して偏心して設けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項10】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの周囲若しくは内部に導水路を設置することを特徴とする超音波照射装置。
【請求項11】 前記導水路は前記画像診断用超音波プローブの側面に設けられ、該導水路を通過してきた水は該プローブの前面に沿って噴出されるようになっていることを特徴とする請求項10記載の超音波照射装置。
【請求項12】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの周囲に高熱伝導率となる被覆材を設置することを特徴とする超音波照射装置。
【請求項13】 被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの前面、側面、又は内部の少なくとも1箇所に温度センサが設けられていることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項14】 前記温度センサにより計測される検出温度に基づいて、前記超音波振動子を駆動する駆動手段の制御を行うことを特徴とする請求項13記載の超音波照射装置。
【請求項15】 前記駆動手段の制御は、前記検出温度が第一の閾値よりも上昇したときには前記超音波振動子からの超音波照射を停止し、かつ当該停止を経験した後であって同検出温度が第二の閾値を下回ったときには前記超音波照射を再開するように制御することを特徴とする請求項14記載の超音波照射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波を利用して生体内の腫瘍等を治療する超音波照射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、MIT(Minimally Invasive Treatment) とよばれる最少侵襲治療の流れが医療の各分野で注目を集めている。一例としては、結石症の治療に体外から強力超音波を照射し、無侵襲的に結石を破砕治療する結石破砕装置の実用化が挙げられ、泌尿器結石の治療法を大きく様変わりさせた。またこのMITの適用対象を、結石破砕治療に限ることなく、悪性新生物(いわゆる癌)の治療に対して適用しようとする試みもなされている。現状における癌治療は、その多くが外科的手法等に頼っているため、その臓器が本来もつ機能や外見上の形態を大きく損なう場合が極めて多く、生命を長らえたとしても患者にとって大きな負担が残ることとなっているが、このような状況の下、MITの適用がなれば、QOL(Quality Of Life) を考慮した低侵襲な治療法(装置)が実現されることになるのである。
【0003】このような流れの中で、新しい癌治療技術の一つとして、熱を利用した治療法が注目を浴びるようになってきた。その著名な例がハイパーサーミア療法である。これは、腫瘍組織と正常組織の熱感受性の違いを利用して、患部を42.5〜43度以上に加熱・維持することで癌細胞のみを選択的に死滅させる治療法である。
【0004】加熱の方法としては、マイクロ波等の電磁波を用いる方法が先行しているが、この方法では、生体の電気的特性により深部の腫瘍を選択的に加熱することは困難であり、深さ5cm以上の腫瘍に対しては、良好な治療成績は望めない。また近年、電磁波エネルギの深達度の悪さを改善するためにマイクロ波/RF波アンテナを術中、腹腔鏡下若しくは経皮的に患部に刺入し、アンテナ周辺の温度を60度以上に加熱することで局所的な治療効果を向上させた新しい治療法が脚光を浴びている(磯田他;J.Microwave Surgery)。しかし、この治療法も臓器への穿刺を要するため、従来の手術療法よりは低侵襲であるが、穿刺に伴う出血や播種(転移)等の副作用があるといった問題点もある。
【0005】そこで、上記問題点を回避するため、癌治療の場面においても、冒頭に述べた「超音波」エネルギを利用する装置ないし方法が提案されている。これによれば、例えば特開昭61−13955号公報に開示されているように、超音波エネルギの優れた集束性・高い深達度等が有効に生かされ、深部腫瘍を体外から加熱することが可能となる。また、上記加熱治療法をさらに進めて、ピエゾ素子より発生した超音波を患部に鋭く集束させ、腫瘍部分を80度以上に加熱し、腫瘍組織を瞬時に熱変性壊死させるような治療法も考えられている(米国特許第5150711号公報)。
【0006】本治療法では、従来のハイパーサーミアとは異なり、焦点近傍の限局した領域に非常に強い強度(数百〜数千W/cm)の超音波が投入されるため、焦点近傍の狭い領域のみが瞬時に熱変性壊死させられる。かつ、その小さな焦点をスキャンしながら患部領域全体を焼灼する必要があるために焦点の正確な位置決めが非常に重要となると考えられる。これに関する一つの解決方法として、我々は既に特開平5−253192号公報に示されているように、MRIの化学シフトを利用した体内非侵襲温度分布画像化により術中の発熱点を計測する技術に関して開示している。
【0007】ところで、上記のような治療法を実現するための、一般に、「超音波治療装置」ないしは「超音波照射装置」と呼び得るものとしては、次に示すような構成が採られる。
【0008】まず、強力超音波発生の方式(発生源)としては、水中放電方式、電磁誘導方式、微小爆発方式、ピエゾ方式等がある。これらのうちでも特に、ピエゾ方式を採用した超音波治療装置では、発生する強力超音波の圧力が比較的小さいという短所があるものの、■小焦点であり、消耗品がない、■強力超音波圧力を任意にコントロールできる、■複数のピエゾ素子にかかる駆動電圧を位相制御することで焦点位置を任意にコントロールできる、等優れた長所がある。このようなものとしては、例えば特開昭61−145131号公報等により広く知られている。
【0009】また、これらの強力超音波を利用した治療装置では、超音波画像・プレーンX線画像・X線CT・MRI等の様々な画像を利用した患部モニタリングをも同時に可能とする装置ないし方式が提案されている。その中でも特に、例えば特開昭51−24092号公報において開示されているように、球殻状の治療用超音波源の中央に超音波診断用のプローブ(モニタリング用)を挿入したインナープローブ方式は、その簡便さから、結石破砕装置においてもよく知られている方式の一つである。
【0010】具体的には、図9に示すように、球殻状に形成された本体部分を有し、当該球殻1aの内面側に強力超音波を発生する複数のピエゾ素子(超音波振動子)群2が配設され、前記球殻1a面の中心部に超音波プローブ3が設置されて治療用ヘッド1を構成するような形態となる。また、この治療用ヘッド1にはカップリング膜4が備えられており、これを生体に当接することによって、音響インピーダンスの整合が図られるようになっている。なお、超音波プローブ3について、図9におけるそれは、治療用ヘッド1の球殻1a面を貫くように配置され、その前面(球殻1a内面)側から突出した形態となっているが、図10に示すように、超音波プローブ3と治療用ヘッド1前面とがほぼ同一の位置に配置するような装置も提案されている。
【0011】なお、このような超音波照射装置では、治療と診断とを同じ超音波エネルギを利用して実施することができることから、特許第1851304号公報、特許第1821772号公報、特許第1765452号公報に記載されているように、治療超音波の焦点領域からの反射波を検出して、超音波画像上に表示する手法についても提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記したような超音波照射装置において、特に集束超音波、あるいは連続照射タイプの強力超音波を利用し、その生体での吸収による発熱現象を利用して深部の癌等を治療する超音波治療装置では、結石破砕装置よりも連続的により多くのエネルギを投入する必要がある。このため、例えば、カップリング膜4と臓器表面との間に気泡等の強い反射体を噛んでしまった場合や、変性が表面近傍まで拡大した場合に、超音波プローブ3と前記反射面との位置関係によっては、図11に示すように、強力なエネルギが超音波プローブ3に戻ってきてしまい、その結果、当該超音波プローブ3が発熱により破損する恐れがあった。特に、この現象は、超音波プローブ3面と反射面が鏡像の位置関係となったときに最も影響が大きくなる。というのも、このような場合、超音波プローブ3表面に疑似焦点が結ばれることになるため、反射が大きいときには、瞬時に超音波プローブ3表面の音響レンズが熱的に破損・破壊される虞があるためである。また、ピエゾ素子群2に短時間に大きなエネルギが投入されるため当該ピエゾ素子群2自体が発熱し、該素子群2からの直接の熱伝導や超音波エネルギの伝搬によっても超音波プローブ3は加熱され、これにより破損・破壊に至る虞もあった。
【0013】これを防止するため、図9の治療用ヘッド1においては、例えば図12に示すように、超音波プローブ3側面を、音響インピーダンスが大きく超音波エネルギを効果的に反射する金属筒5で覆ったり、図13に示すように、超音波プローブ3の突端部3aによって遮蔽される球殻内面部分xには、直接の熱伝導を防止するため、ピエゾ素子2を配置しないようにする等の措置が考えられる。また、図10に示すような治療用ヘッド1については、図14に示すように、超音波プローブ3側面に断熱材6を設けるような措置を採ることが考えられる。しかしながら、これらの措置のいずれについても、図11に示すような、エネルギ反射による超音波プローブ3「前面」に関する発熱・故障を効果的に防止するための措置としては、十分とはいえないものであった。
【0014】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、超音波プローブの発熱による破損・破壊等を抑制することができ、治療ヘッド全体の耐久性が向上された超音波照射装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために以下の手段をとった。
【0016】すなわち、請求項1記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの側面に筒状反射保護体を設けることを特徴とするものである。
【0017】請求項2記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記超音波発生源は前記超音波振動子を配設する配設面を有し、前記画像診断用超音波プローブは、その前面が前記配設面に対して後方に位置するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0018】請求項3記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの前面に遮蔽膜を設けることを特徴とするものである。
【0019】請求項4記載の超音波照射装置は、請求項3記載の同装置において、前記遮蔽膜は、その膜面が、前記画像診断用超音波プローブの前面に対して斜めに設置構成されていることを特徴とする。
【0020】請求項5記載の超音波照射装置は、請求項3又は4記載の同装置において、前記遮蔽膜は、前記画像診断用超音波プローブの前面に対して、着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】請求項6記載の超音波照射装置は、請求項3から5のいずれかに記載の同装置において、前記遮蔽膜は、その膜厚さが、前記超音波振動子から発生する強力超音波の当該遮蔽膜内における波長に1/4を乗じ、さらに奇数倍した近傍の厚さであることを特徴とする。
【0022】請求項7記載の超音波照射装置は、請求項3から6のいずれかに記載の同装置において、前記遮蔽膜は、その膜厚さが、前記画像診断用超音波プローブから発生する画像用超音波の当該遮蔽膜内における波長に1/2を乗じ、さらに整数倍した近傍の厚さであることを特徴とする。
【0023】請求項8記載の超音波照射装置は、請求項3から5のいずれかに記載の同装置において、前記遮蔽膜は、その材質がTPXとされ、その膜厚さが0.3〜0.4mmとされていることを特徴とする。
【0024】また、請求項9記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記超音波発生源は前記超音波振動子を配設する球殻状の面を有し、前記画像診断用超音波プローブは、当該超音波発生源とは別途の場所に設けられ、かつ前記球殻状の面の中心軸に対して偏心して設けられることを特徴とするものである。
【0025】さらに、請求項10記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの周囲若しくは内部に導水路を設置することを特徴とするものである。
【0026】請求項11記載の超音波照射装置は、請求項10記載の同装置において、前記導水路は前記画像診断用超音波プローブの側面に設けられ、該導水路を通過してきた水は該プローブの前面に沿って噴出されるようになっていることを特徴とする。
【0027】また、請求項12記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの周囲に高熱伝導率となる被覆材を設置することを特徴とするものである。
【0028】請求項13記載の超音波照射装置は、被検体内の所望の部位に超音波を照射する複数の超音波振動子から構成された超音波発生源と、被検体内の断層像を得るための超音波を送受信する画像診断用超音波プローブとを備えた治療用ヘッドを有する超音波照射装置において、前記画像診断用超音波プローブの前面、側面、又は内部の少なくとも1箇所に温度センサが設けられていることを特徴とするものである。
【0029】請求項14記載の超音波照射装置は、請求項13記載の同装置において、前記温度センサにより計測される検出温度に基づいて、前記超音波振動子を駆動する駆動手段の制御を行うことを特徴とする。
【0030】請求項15記載の超音波照射装置は、請求項14記載の同装置において、前記駆動手段の制御は、前記検出温度が第一の閾値よりも上昇したときには前記超音波振動子からの超音波照射を停止し、かつ当該停止を経験した後であって同検出温度が第二の閾値を下回ったときには前記超音波照射を再開するように制御することを特徴とする。
【0031】
【発明の実施の形態】以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
【0032】図1は、本発明に係る第一の実施形態における治療用ヘッド1の構成を示す図である。これは、球殻1a状の本体部分を有するとともに、当該球殻1aの内面(前面)側に強力超音波を発生するピエゾ素子(超音波振動子)群2が配設された超音波アプリケータ(超音波発生源)と、同球殻1a中心部に患部の断層像を取得するための超音波プローブ(画像診断用超音波プローブ)3とから構成されている。これらの構成のうち、ピエゾ素子群2からは治療用の強力超音波が、超音波プローブ3からは診断用(断層像作成用)のイメージング用超音波が、それぞれ発生することになる。ちなみに、前者では例えば周波数1.5MHz近傍の、後者ではより大きい4MHz近傍の、超音波を発生させる。また、ピエゾ素子群2が球殻1a内面に配設されるのは、図1に示すように、ここから発せられた強力超音波が、生体内のある一点で焦点を結ぶようにするためである。なお、上記した超音波プローブ3は、メカニカルスキャン型でも電子スキャン型でも使用可能である。
【0033】上記治療用ヘッド1にはまた、上記構成の他、カップリング膜4が設置されている。このカップリング膜4内には例えば脱気された水等が封入される。このカップリング膜4は、外部と生体内との音響インピーダンスの整合をとる作用を発揮することになる。すなわち、実際の診察又は診療時には、このカップリング膜4が生体表面との当接部位となり、ピエゾ素子群2あるいは超音波プローブ3から発生した超音波を、無用な反射等を招くことなく、生体内部に有効に届かせるのである。
【0034】図1において、本第一実施形態における特徴的な構成は、超音波プローブ3の前面を、球殻1a内面、すなわちピエゾ素子群2が配設されている面(配設面)より後方に引いた構造にしているところにある。この際、球殻1aの外面から突出するような筒状部7が新たに設けられ、超音波プローブ3はこの筒状部7内に設置されるような形態となる。また、筒状部7と球殻1aとの接合部には角部8が形成されることになる。
【0035】また、超音波プローブ3前面を後方に引く距離は、例えばBモードプローブでは、その超音波スキャン角度が前記角部8にかからないように定められることが望ましい。すなわち、この場合において、超音波プローブ3前面の設置位置は、超音波プローブ3から発生したイメージング用超音波が、筒状部7の内面で遮られることのないようなものとして決まることになる。このようにすることで、その部分での超音波の反射によるアーチファクトを抑えることが可能となる。ただし、超音波プローブ3を後方に引く距離の実際の決定は、いま述べたような診断画像の劣化を防止するという観点のほか、超音波プローブ3前面を反射超音波から防護するという本発明の目的からも当然に吟味されるべきであり、これらのことを総合的に勘案した上で「距離」は決定されるものである。つまり、多少の画像劣化を厭わないのであれば、超音波プローブ3をより後方に引くほうが望ましい場合もあり得る。
【0036】以上述べた構成により、ピエゾ素子群2からの直接の熱伝導による超音波プローブ3自身の昇温、これに継ぐ破損・破壊を未然に防止することができる。また、カップリング膜4内表面等から反射されて戻ってきた超音波は、球殻1a内面に新たに形成された前記角部8により、その全部ではないが、一部が遮蔽されることとなるから、当該超音波反射による超音波プローブ3の破損・破壊も防止することができる。結局、本第一実施形態における治療用ヘッド1は、その全体からみて耐久性(寿命)が向上することになる。
【0037】なお、図1と同様な思想の下、これとは別の実施形態として、図2に示すような構成をとってもよい。これによれば、超音波プローブ3の設置位置は、従来におけるそれと特に変更することはないが(図9又は図10参照)、その先端が球殻1a内面から突出するとともに、超音波プローブ3前面からも突出するような筒状反射保護体9を、当該超音波プローブ3全側面に覆うように設けた構成となるものである。この材質としては、超音波を効果的に反射する金属材料をあてるとよい。また、筒状反射保護体9の材質として、セラミックス等をあててもよく、この場合、超音波を効果的に反射する筒状断熱体として作用することとなり、ピエゾ素子群2からの直接の熱伝導は阻止される。
【0038】そして、このような筒状反射保護体9を設けられば、上述したのと同様な角部8が形成されるから、超音波プローブ3は反射超音波から防護されることになり、結果、治療用ヘッド1の耐久性は向上することになる。
【0039】次に、本発明に係る第二の実施形態について説明する。本第二実施形態においては、図3に示すように、超音波プローブ3の前面に遮蔽膜10を設けた構成となるものである。この遮蔽膜10が設けられる目的は、図3からも読み取れ得る通り、超音波プローブ3前面が反射超音波に直接曝されることを防止することにある。
【0040】また、遮蔽膜10は、図3中に示しているように、超音波プローブ3表面に対して斜めに配置する。このことにより、最も良質に画像を取得したい焦点を含む中心軸の、多重反射による断層像画質の劣化を抑制することが可能となる。これは以下の理由による。すなわち、超音波プローブ3の中心軸に沿って発生したイメージング用超音波は、図に示すように、カップリング膜4内面により一部反射されてくるが、このとき遮蔽膜10が超音波プローブ3前面に対して平行に配置されていると、当該超音波プローブ3は、それを正規の信号として読み取ってしまうことになる。したがって、断層像上には、実際には何も存在しない場所に、何らかが存在するような像(いわゆるアーチファクト)が描出される。このような現象は、上記の反射を遮蔽膜10・カップリング膜4内面で繰り返した多重反射超音波についても、また遮蔽膜10の図中上面で反射した超音波についても、同様である。そこで、遮蔽膜10を、図3に示すように斜めに設置すれば、中心軸上でのこのような多重反射ないしは遮蔽膜10面で反射したイメージング用超音波が、超音波プローブ3前面に到達することがなくなる。よって、関心領域での断層像画質の劣化が抑制されることになるのである。
【0041】また、上記のような事情から、遮蔽膜10を「斜め」とするときのその「斜め方向」は、超音波プローブ3前面から発生するイメージング用超音波のスキャンによって空間上に規定される扇形面に対して、遮蔽膜10面が傾くような方向とすると好ましい。つまり、この場合を図3の例で説明すると、図中示されている遮蔽膜10の「斜め方向」に対しては、イメージング用超音波のスキャン方向が紙面に対して垂直なものとして想定されることになる。このようにすれば、遮蔽膜10に対するイメージング用超音波の入射方向はすべて「斜め」となるから、上記した多重反射による画質劣化防止にとって最も効果的な配置となる。
【0042】ところで、このような遮蔽膜10については、超音波プローブ3を反射超音波から防護する機能を十分に発揮させるために、次に記すような性質を有するものを利用するとよい。
【0043】一般に、膜材での超音波エネルギの反射の理論では、使用する膜材の音速をVm(m/s)、治療用強力超音波の周波数をft(MHz)とすると、膜厚tが、t=(2n+1)・(λ/4)
の近辺で、透過率が極小となる厚さが存在する。ここにλは、λ=Vm/ftとして表現される波長であり、また、n=0,1,2,…である。
【0044】この式により、例えば膜の材質をTPXとして選択し、Vm=1990(m/s)、超音波周波数ft=1.5(MHz)と仮定すると、(λ/4)=(1990×10)/(4×1.5×10)=0.33mmとなる。したがって、ft=1.5MHz近辺の周波数であれば、0.3〜0.35mm程度の厚さのTPX膜を使用すれば、超音波プローブ3に返ってくる反射された治療用超音波エネルギを、完全にではないが、相当程度、遮蔽することができる。実際に本願発明者らが行った実験では、TPX膜を使用して、治療用超音波周波数ft=1.6(MHz)なる条件の下、当該TPX膜の厚さを約0.34mm前後としたときに、遮蔽膜10の透過率は30%以下となり、非常に大きな反射効果(7割以上の反射超音波を「再」反射)を発揮することを確認している。
【0045】また、この膜材の超音波透過率は、その膜厚tが1/2波長の整数倍(t=0,λ/2,2λ/2,3λ/2,…)のとき最大となり、例えばイメージング用の超音波周波数が3.7MHzのときには、図4中破線で示されるように、0.27mmの整数倍の膜厚で透過率が極大となる。
【0046】したがって、図4中に示すA位置のように、イメージング用超音波の透過率が大きく、治療超音波の透過率が小さい(反射率が大きい)膜厚さを選べば、イメージング用超音波の正確な感受が可能であることにより、モニタリング時の画質の劣化を少なくすることができるとともに、治療用超音波も有効に反射(再反射)されるから、それによる超音波プローブ3の故障をも低減することができる。
【0047】ちなみに、ここにいう「TPX」とは、オレフィン系炭化水素を原料とする合成樹脂材料の一種であって、TPXという名称の他、「ポリメチルペンテン」と呼称されることでも一般に知られている。また、その用途としては、包装材料やメスシリンダーの材料として使用される材料である。なお、本発明においては、この他の高分子樹脂材料を遮蔽膜10として使用しても勿論よいのではあるが、その際においては、上述したような条件に該当する材料であれば、好ましいことは言うまでもない。より言えば、本発明は、遮蔽膜10を形成する材料として、それを高分子樹脂材料に限定するものでもない。
【0048】なお、このような遮蔽膜10については、より一般には次のようなことがいえる。すなわち、生体内のインピーダンスをZbとすると、その密度をρb、音速をVbとすれば、Zb=ρb・Vbとして表すことができる。この生体内音響インピーダンスは、カップリング膜4内に封入されている水等の音響インピーダンスに略等しいと仮定できる。一方、遮蔽膜10の音響インピーダンスZmも同様に、Zm=ρm・Vmである。そしていま、遮蔽膜10に対して求められているのは、「超音波を反射すること」であるから、これを実現するにはZm≠Zbとすればよいことがわかる。したがって、遮蔽膜10の材質の選択に当たっては、上記Zbを前提として、ρmないしはVmを参考に、Zm≠Zbとなるように注意すればよい。
【0049】ちなみに、このような遮蔽膜10は、超音波プローブ3に対して着脱可能若しくは移動可能に構成されている。このようにされていることは、例えば、本第二実施形態に係る超音波照射装置を診断用のみに使用したいという場合であって、イメージング用超音波の発生を確実に確保しようとするとき等に有効となる。また単に、遮蔽膜10の交換が必要となることが一般に考えられることからすれば、着脱可能に構成されている利点は生かされる。
【0050】次に、本発明に係る第三の実施形態について説明する。図5は、本第三実施形態についての治療用ヘッド1の構成を示すものである。これによれば、超音波アプリケータにおけるピエゾ素子群2の設置箇所と超音波プローブ3のそれとを分離して各々別途の場所とし、かつ球殻1aの中心軸上から偏心した位置に超音波プローブ3を配置する。このことにより、ピエゾ素子群2から超音波プローブ3に、熱が直接に伝導するようなことはなく、また、強い反射超音波が超音波プローブ3に直接到達するようなこともない。よって、超音波プローブ3の発熱による破壊は未然に防止され、結果、治療用ヘッド1の耐久性が向上することになる。
【0051】なお、この場合においては、超音波プローブ3から発生するイメージング用超音波のスキャン方向が斜めとなることに伴い、図5(b)に併せて示すように、得られる断層像画像も斜めとなるが、この点については、治療対象が像として得られることに変わりはないのであるから、斜めのままで使用しても問題は特に生じないと考えられるし、また場合によっては、図5(c)(d)に示すように、適当な画像処理方法等を当該断層像に適用することにより、その断層像位置を従来と同様なものとすることは、一般に不可能ではないと考えられる。
【0052】次に、本発明に係る第四の実施形態について説明する。図6は、本第四実施形態についての治療用ヘッド1の構成を示すものである。
【0053】これは、超音波プローブ3周囲を冷却水導水路11aで覆って、周囲からの熱伝導により発熱する当該超音波プローブ3を強制的に冷却する措置をとったものである。導水路11aの経路は、図6(a)に示すように、超音波プローブ3周囲に螺旋状に巡らす構造とすればよい。またこれとは別に、図6(b)に示すように、超音波プローブ3周囲に複数列の短冊状の導水路11bを配置した構成としてもよいし、さらには、図6(c)に示すように、超音波プローブ3周囲全体をカーテン状に水を通過させる方法としてもよい。なお、図6(c)の場合においては、超音波プローブ3側面の一部のみに導水路11cを設け、これを通過してきた水がプローブ3前面に沿ってジェット式に噴出され、当該前面においていわば「ウォーターカーテン」様の水流が形成されるような形態となる。このことにより、特に温度の上昇が生じやすい超音波プローブ3前面に水流が形成されるからその冷却能力が向上するとともに、当該プローブ3からのイメージング用超音波照射も確実に確保されることになる。
【0054】また、水を流通させる配管の位置は、上述したような導水路11のように超音波プローブ3周辺に設けるのではなく、超音波プローブ3内部に巡らすようにして、当該内部から冷却するような手段を採ってもよい。
【0055】さらに、導水路11を配置し水の流れで以て超音波プローブ3を冷却する上記実施形態とは別に、当該超音波プローブ3周囲に熱伝導率の高い金属材料(例えば、アルミニウムや銅等)により形成された被覆材を設けるような構成(不図示)としてもよい。すなわち、この場合においては、当該被覆材がヒートシンクとしての作用を発揮することとなり、これによって超音波プローブ3が冷却されるのである。
【0056】いずれにしても、以上のような構成を採ることにより、超音波プローブ3は、ピエゾ素子群2からの熱伝導ないしは反射超音波による温度上昇から有効に保護されることになるから、その破損・破壊が生じにくい状況となり、もって治療用ヘッド1全体の耐久性は向上することになる。
【0057】次に、本発明に係る第五の実施形態について説明する。図7は、本第五実施形態についての治療用ヘッド1の構成を示すものである。
【0058】これによれば、超音波プローブ3の前面、側面、若しくは内部のいずれか、あるいはこれらのうちの複数の場所に、温度センサ12が設けられている。そして、温度検出回路13が、この温度センサ12からの信号に基づいて、超音波プローブ3に関する上述したような該当箇所についての温度データを検出する。
【0059】図7の回路の例では、超音波プローブ3前面と前面近傍の側面に設けられた二つの温度センサ12のうち、温度の高い方をコンパレータ14及び15に出力する。そして、コンパレータ14にて、この出力された検出温度と温度閾値I(第一の閾値)とを比較する。この温度閾値Iとは、これを超えると超音波プローブ3が過昇温により破壊に至ると考えられる温度であって、予め設定されているものである。この比較の結果、検出温度が閾値Iより高くなった場合には、駆動制御回路15からの指令でドライバ(駆動手段)16の出力を停止させ、マッチング回路17を介してピエゾ素子群2からの超音波照射を停止させる。またこれと同時に、超音波プローブ3の温度上昇を起因とする当該超音波照射の停止を、表示・鳴音等により操作者に提示する。
【0060】また、図7回路例では、コンパレータ15にて、検出温度と温度閾値II(第二の閾値)とが比較される。この温度閾値IIは、もはや超音波プローブ3の破壊する虞のない温度として予め設定されているものである。この比較の結果、検出温度が温度閾値II以下となることを確認した場合であって、当該確認が上述した超音波照射が一旦停止された以降になされたものであるときには、超音波が照射可能な状態になった旨を操作者に表示・鳴音等により提示し、その照射を再開する。なお、超音波照射の停止を経ていない場合、つまり超音波プローブ3の検出温度が未だ温度閾値Iに達していない場合には、検出温度が温度閾値IIとどのような関係にあろうとも、超音波照射は継続されることになる。
【0061】以上述べたような運転態様をまとめると例えば図8のようになる。図8では、超音波の照射開始とともに超音波プローブ3の温度が時間とともに上昇し始め、やがて温度閾値IIを越えるが、この時点の前後ではピエゾ素子群2からの超音波発生は停止されず、当該温度は結局、温度閾値Iに到達する。ここで、超音波照射は停止されて、超音波プローブ3の過昇温が未然に防止される。このことにより、温度は当然に下降し始めるが、やがて温度閾値IIに到達すると、再び超音波照射が再開されることになる。
【0062】以上説明したような構成により、超音波プローブ3の過度な温度上昇は未然に防がれるから、安全な超音波照射が可能となるとともに、当該プローブ3の破損・破壊は生じにくい状況となるから、治療用ヘッド1全体にかかる耐久性を向上させることが可能となる。また、本第五実施形態によれば、温度閾値IIが存在することにより、超音波照射の停止が長時間にわたって無用に継続するような事態は避けられるから、その運転の態様は、より適切なものとして実施することができる。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の超音波照射装置によれば、超音波プローブが発熱により容易に破壊されるようなことがなく、治療用ヘッド全体の耐久性を向上することができる。
【0064】すなわち、超音波プローブを超音波振動子の配設面より後方に位置させる手段、超音波プローブ周囲に筒状反射保護体を設ける手段、遮蔽膜を設ける手段、超音波プローブと超音波振動子を別位置に配置する手段、冷却用導水路あるいは被覆材を設ける手段、温度センサを設ける手段の各々により、当該超音波プローブの、超音波振動子からの熱伝導による発熱又は反射超音波による発熱が、防止ないしは抑制され、結果、超音波プローブが破壊されにくくなり、治療用ヘッドの寿命が向上するのである。また、この結果当然に超音波照射装置の耐久性ないしその寿命は向上し、これに伴ってその信頼性も高まることになる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年9月1日(1999.9.1)
【代理人】 【識別番号】100081411
【弁理士】
【氏名又は名称】三澤 正義
【公開番号】 特開2001−70333(P2001−70333A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−248020