トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 手術用顕微鏡
【発明者】 【氏名】高木 和俊

【氏名】加藤 健行

【要約】 【課題】被検眼に対する照明光量を状況に応じて自動的に調整し、光障害発生のおそれを低減することができる手術用顕微鏡を提供する。

【解決手段】光源17から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する光電変換素子14と、光電変換素子14の検出信号を基に被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段33と、被検眼に対する照明光の許容瞬時値データを記憶する瞬時値光量テーブル35と、前記瞬時値演算手段33の演算結果と、前記瞬時値光量テーブル35に記憶している許容瞬時値データとを比較し、被検眼に対する照明光の照射光量と許容瞬時値データとの差に応じて、光源17からの照明光の出射量を調整し被検眼に対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段37とを有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段と、被検眼に対する照明光の許容瞬時値データを記憶する許容瞬時値光量記憶手段と、前記瞬時値演算手段の演算結果と、前記許容瞬時値光量記憶手段に記憶している許容瞬時値データとを比較し、被検眼に対する照明光の照射光量と許容瞬時値データとの差に応じて、前記光源からの照明光の被検眼に対する照射光量を調整する光量調整手段と、を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
【請求項2】 光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に被検眼に対する照明光の照射光量の積分値を演算する積分値演算手段と、被検眼に対する照明光の許容積分値データを記憶する許容積分値光量記憶手段と、前記積分値演算手段の演算結果と、前記許容積分値光量記憶手段に記憶している許容積分値データとを比較し、被検眼に対する照明光の照射光量が許容積分値データを越える場合には、前記光源からの照明光を減光させる光量調整手段と、を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
【請求項3】 光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼を形成する瞳孔における照明光の反射率の相違を検出するセンサと、このセンサの検出信号を基に被検眼の瞳孔に対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段と、被検眼の瞳孔に対する照明光の許容瞬時値データを記憶する許容瞬時値光量記憶手段と、前記瞬時値演算手段の演算結果と、前記許容瞬時値光量記憶手段に記憶している許容瞬時値データとを比較し、被検眼の瞳孔に対する照明光の照射光量と許容瞬時値データとの差に応じて、前記光源からの照明光の被検眼の瞳孔に対する照射光量を調整する光量調整手段と、を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
【請求項4】 前記反射光検出手段は、被検眼からの反射光の光量分布を検出する2次元エリアセンサ又は反射光位置センサからなり、前記光量調整手段は、2次元エリアセンサにて検出する被検眼からの反射光の光量分布を基に被検眼に対する照明光の照射光量を調整することを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかに記載の手術用顕微鏡。
【請求項5】 前記光量調整手段は、被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値又は積分値の演算結果が許容光量と同等又は許容光量を越えた場合に、警報発生手段に警報情報を送り警報を発生させることを特徴とする請求項1又は2記載の手術用顕微鏡。
【請求項6】 光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、前記観察光学系は、被検眼の前眼部像を観察するとともに被検眼に対する手術用の手術器具を観察する観察手段を具備し、この観察手段により観察される手術器具の有無を判定する判定手段と、判定手段の手術器具の無しの判定結果に基づき、前記光源からの被検眼に対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段と、を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
【請求項7】 光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に前記被検眼領域における被検眼以外の物の存在の有無を判定する判定手段と、この判定手段の被検眼以外の物の存在の有無の判定結果に基づき、前記光源からの被検眼に対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段と、を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば眼科等において、被検眼の観察や手術に用いて好適な手術用顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の手術用顕微鏡においては、この手術用顕微鏡における照明光学系により被検眼に照明光を照射し、被検眼からの反射光を観察光学系に導いて結像させ、被検眼の状態を観察したり、又は被検眼に対しメス等の手術器具を使用した眼科手術を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の手術用顕微鏡においては、被検眼の網膜障害等の光障害防止対策としては、被検眼に照射する照明光の光量を手動操作にて弱くしたり、照射時間を手術者の感で短くしたり、強膜縫合の時など同軸照明が必要ない場合には、斜照明に切換えて、中心窩へのダメージを少なくしたり、あるいは瞳孔部のみを遮光したりしていた。
【0004】また、白内障手術等のような場合には被検眼を観察しながら術者がメスや吸引用のプローブ等の手術器具を被検眼に当てるが、このような場合、手術器具の有無に応じて被検眼に対する照明光の光量を高低に調整することが要請される。
【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被検眼に対する照明光量を被検眼の観察や手術の状況に応じて自動的に調整し、網膜障害等の光障害の発生を低減し、かつ、眼科手術の能率向上を図ることができる手術用顕微鏡を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段と、被検眼に対する照明光の許容瞬時値データを記憶する許容瞬時値光量記憶手段と、前記瞬時値演算手段の演算結果と、前記許容瞬時値光量記憶手段に記憶している瞬時値データとを比較し、被検眼に対する照明光の照射光量と瞬時値データの許容光量との差に応じて、前記光源からの照明光の被検眼に対する照射光量を調整する光量調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】この発明によれば、被検眼からの反射光を検出し、被検眼に対する照射光量の瞬時値を演算し、この瞬時値と許容瞬時値データとを比較して、その差に応じて、光源からの照明光の出射光量を調整し、被検眼に対する照明光の適切化を図るものであるから、被検眼に対する照明光を常時許容光量範囲内で調整した状態でこの被検眼の観察を行うことができ、被検眼における網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減できる。
【0008】請求項2記載の発明は、光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に被検眼に対する照明光の照射光量の積分値を演算する積分値演算手段と、被検眼に対する照明光の許容積分値データを記憶する許容積分値光量記憶手段と、前記積分値演算手段の演算結果と、前記許容積分値光量記憶手段に記憶している許容積分値データとを比較し、被検眼に対する照明光の照射光量が許容積分値データを越える場合には、前記光源からの照明光を減光させる光量調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0009】この発明によれば、被検眼からの反射光を検出し、被検眼に対する照射光量の積分値を演算し、この積分値と許容積分値データとを比較して、その比較結果が、被検眼に対する照明光の照射光量が許容積分値データを越える場合には、前記光源からの照明光を減光させるものであるから、被検眼に対して許容される積分値(時間的に合計した光量)以上の照明光が照射されることを自動的に阻止し、被検眼における網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減することができる。
【0010】請求項3記載の発明は、光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼を形成する瞳孔における照明光の反射率の相違を検出する反射光検出手段と、この反射光検出手段の検出信号を基に被検眼の瞳孔に対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段と、被検眼の瞳孔に対する照明光の許容瞬時値データを記憶する許容瞬時値光量記憶手段と、前記瞬時値演算手段の演算結果と、前記許容瞬時値光量記憶手段に記憶している許容瞬時値データとを比較し、被検眼の瞳孔に対する照明光の照射光量と許容瞬時値データとの差に応じて、前記光源からの照明光の被検眼の瞳孔に対する照射光量を調整する光量調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0011】この発明によれば、前記反射光検出手段により被検眼を形成する瞳孔における照明光の反射率の相違を検出し、被検眼の瞳孔に対する照明光の照射光量と許容瞬時値データとの差に応じて、被検眼の瞳孔に対する照明光を常時許容光量範囲内で調整した状態でこの被検眼の観察を行うことができ、被検眼の瞳孔における網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減できる。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項1乃至3記載のいずれかに記載の手術用顕微鏡における前記反射光検出手段は、被検眼からの反射光の光量分布を検出する2次元エリアセンサ又は反射光位置センサからなり、前記光量調整手段は、2次元エリアセンサ又は反射光位置センサにて検出する被検眼からの反射光の光量分布を基に被検眼に対する照明光の照射光量を調整することを特徴とするものである。
【0013】この発明によれば、2次元エリアセンサ又は反射光位置センサにより被検眼からの反射光の光量分布を検出し、光量調整手段により検出した光量分布を基に被検眼に対する照明光の照射光量を調整するものであるから、被検眼からの反射光の光量分布を利用し、被検眼の瞳孔部分の白内障の程度に応じて被検眼に対する照明光を調整することができる。
【0014】請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の手術用顕微鏡において、前記光量調整手段は、被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値又は積分値の演算結果が許容光量と同等又は許容光量を越えた場合に、警報発生手段に警報情報を送り警報を発生させることを特徴とするものである。
【0015】この発明によれば、前記光量調整手段により、被検眼に対する照明光の照射光量の瞬時値又は積分値の演算結果が許容光量(許容値)を越えた場合に、警報発生手段に警報情報を送り警報を発生させるものであるから、請求項1又は2記載の手術用顕微鏡の作用に加え、被検眼に対する照明光の照射が限界であること又は限界を過ぎたことを認識することができ、これにより、被検眼の光障害の発生防止に関する安全性が向上する。
【0016】請求項6記載の発明は、光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、前記観察光学系は、被検眼の前眼部像を観察するとともに被検眼に対する手術用の手術器具を観察する観察手段を具備し、この観察手段により観察される手術器具の有無を判定する判定手段と、判定手段の手術器具の無しの判定結果に基づき、前記光源からの被検眼に対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0017】この発明によれば、前記観察手段により観察される手術器具の有無を判定手段により判定し、手術器具の無しの判定結果に基づき、前記光源からの照明光の出射量を調整し被検眼に対する照明光の照射光量を低減するものであるから、手術器具を使用する手術の際には被検眼に対して明るい照明光を照射し、手術器具を使用しない場合には自動的に被検眼に対する照明光の照射光量を低減する等の調整を行うことができ、これにより、被検眼における網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減できる。
【0018】請求項7記載の発明は、光源から被検眼に照明光を照射する照明光学系と、被検眼を観察する観察光学系とを有する手術用顕微鏡において、被検眼からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検出信号を基に前記被検眼領域における被検眼以外の物の存在の有無を判定する判定手段と、この判定手段の被検眼以外の物の存在の有無の判定結果に基づき、前記光源からの被検眼に対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0019】この発明によれば、被検眼からの反射光に応じた検出信号を基に前記被検眼領域における被検眼以外の物の存在の有無を判定し、被検眼以外の物がある場合には被検眼に対する照明光の照射光量を大きく、調整する被検眼以外の物がない場合には被検眼に対する照明光の照射光量を小さくというように調整するものであるから、手術用のメス等の手術器具が被検眼領域に存在する術者の作業中と、作業中でないときを区別し各々被検眼に対し適切な光量の照明光の照射を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】図1、図2は、本発明の実施の形態の手術用顕微鏡1を示すものであり、この手術用顕微鏡1は、床面2上を走行可能な支持体3と、この支持体3に取付けた支柱4により支持された第1アーム5と、この第1アーム5に取付けた第2アーム6と、第2アーム6に取付けたX−Y駆動部7と、このX−Y駆動部7によりX,Y方向(床面2と平行な方向及びこれと直交する方向)に駆動されるズーム系及び照明系を具備した顕微鏡本体8と、顕微鏡本体8の鏡筒9に取付けられ警報発生手段としても機能する液晶ディスプレスのような表示手段28とを具備している。
【0022】手術用顕微鏡1は、更にこの手術用顕微鏡1の各電気系、即ち、前記X−Y駆動部7,顕微鏡本体8のズーム系及び照明系を各々操作するための操作手段としてのフットスイッチ50を具備している。
【0023】前記顕微鏡本体8は、図2に拡大して示すように、全体として筒状に形成され下端部に対物レンズ10を組込んだ鏡筒9と、この鏡筒9の上部に取付けた接眼鏡筒11と、鏡筒9に組込んだ照明光学系12と、同じく鏡筒9に組込んだ観察光学系15とを有している。
【0024】前記照明光学系12は、鏡筒9の側壁に取付けたランプハウス16と、このランプハウス16内に配置したハロゲンランプ等の光源17と、この光源17からの光を集光する集光レンズ18と、鏡筒9内に配置され前記集光レンズ18からの光を対物レンズ10側に反射するプリズム19とを具備し、これら各光学要素と対物レンズ10とにより光源17から被検眼Eに至る照明用の光路C1 を形成するようになっている。この照明光学系12としては、図2に示す斜め照明の構成の他、観察用の光路C2 と同軸照明とすることももちろん可能である。
【0025】前記観察光学系15は、前記対物レンズ10の上方に配置したアフォーカル変倍を行う変倍光学系20と、この変倍光学系20の上方に配置した結像レンズ21と、この結像レンズ21の更に上方に配置した正立プリズム22と、前記接眼鏡筒11に配置したプリズム23、プリズム24及び接眼レンズ系25とを具備している。これら各光学要素により観察用の光路C2 を形成するようになっている。
【0026】前記反射光検出手段は、観察用の光路C2 における正立プリズム22の上方に配置した光電変換素子14により構成され反射光の光量レベル、光量分布を検出するようになっている。光電変換素子14は、例えばデジタルカメラ又はCCDカメラのような撮像装置14Aに組み込まれ、正立プリズム22からの光をレンズ52を介して入射するようにしている。
【0027】光電変換素子14としては、2次元エリアセンサ、反射光位置センサ(ポジションセンサ)を用いることができる。
【0028】また、前記光路C2 に配置したハーフミラー13及びリレーレンズ39を介して反射光の一部を取り込み、被検眼Eの前眼部像を動画として観察する観察手段であるCCDカメラ27を具備している。
【0029】次に、図3を参照して、本実施の形態の手術用顕微鏡1の制御系について説明する。
【0030】本実施の形態の手術用顕微鏡1は、プログラムメモリ31に格納された動作プログラムに基づき全体の制御を行う制御部30を具備している。
【0031】この制御部30により、前記表示手段28と、光電変換素子14からの電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路32と、A/D変換された光電変換素子14からの信号を被検眼像として記憶するフレームメモリ41と、前記デジタル信号を基に被検眼Eに対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する瞬時値演算手段33と、前記デジタル信号を基に被検眼Eに対する照明光の照射光量の積分値を演算する積分値演算手段34と、被検眼Eに対する照明光の許容瞬時値データを記憶する許容瞬時値光量記憶手段である瞬時値光量テーブル35と、被検眼Eに対する照明光の許容積分値データを記憶する許容積分値光量記憶手段である積分値光量テーブル36と、前記CCDカメラ27により観察する画像から手術器具の像である例えばメスの画像(以下「メス像」という)40の有無を判定する判定手段29と、CCDカメラ27からの画像データを記憶する画像レコーダ42との動作を各々制御するようになっている。
【0032】さらに、本実施の形態の手術用顕微鏡1は、前記瞬時値演算手段33、積分値演算手段34の演算結果と、前記瞬時値光量テーブル35、積分値光量テーブル36に記憶している許容瞬時値データ又は許容積分値瞬時値データとを比較し、被検眼Eに対する照明光の照射光量と許容瞬時値データ、許容積分値データとの差に応じて、光源17からの照明光の出射量を調整し、被検眼Eに対する照明光の照射光量を調整する光量調整手段37を具備し、前記制御部30によりこの光量調整手段37を制御するようになっている。
【0033】前記瞬時値光量テーブル35には、被検眼Eの瞳孔径(例えば7mm)を基準とする照明光の許容瞬時値データを記憶している。
【0034】さらに、本実施の形態の手術用顕微鏡1は、前記照明光学系12による被検眼Eに対する照明光の光軸を同軸照明、斜め照明の状態に切り換える照明切換手段43を具備している。
【0035】次に、本実施の形態の手術用顕微鏡1の動作を図4、図5を参照して説明する。
【0036】図4は、光電変換素子14により検出される被検眼Eから反射光の光量分布を示す図である。
【0037】光電変換素子14により検出される被検眼Eからの反射光量は、被検眼Eの瞳孔(水晶体)Ep、瞳孔Epの範囲内に生じる白内障部K、虹彩Esによって図5に示すように光量分布が異なるので、瞬時値演算手段33により、光電変換素子14により検出する被検眼Eからの反射光量に基づきこの被検眼Eに対する照明光の照射光量の瞬時値を演算することができる。
【0038】即ち、瞳孔Epからの反射光量は極端に少なく、瞳孔Epの両側の虹彩Esからの反射光量は多く、さらに白内障による混濁部Kからの反射光量は瞳孔Epの部分よりも多くなる。
【0039】このような反射光の光量分布を基に瞬時値演算手段33は、被検眼Eに対する照明光の照射光量の瞬時値を演算する。
【0040】光量調整手段37は、図6に示すように、瞬時値演算手段33の演算結果と、前記瞬時値光量テーブル35に記憶している瞬時値データとを比較し、被検眼Eに対する照明光の照射光量の瞬時値I1 と、瞬時値データの許容光量(許容値)I0 との差に応じて光源17からの照明光の出射量を調整し、瞬時値I1 が許容光量I0 よりも大きい場合には、光源17を制御して被検眼Eに対する照明光の照射光量を減らすように調整する。
【0041】これにより、被検眼Eに対する照明光を常時許容光量範囲内で調整した状態でこの被検眼Eの観察を行うことができ、被検眼Eにおける網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減することができる。
【0042】また、光量調整手段37は、瞬時値I1 が許容光量I0 よりも大きい場合には警報発生手段である前記表示手段28に瞬時値I1 が許容光量I0 を越えている旨の警報情報を送り警報を表示させる。これにより、被検眼Eに対する照明光の照射が限界又は限界を越えていることを術者等に認識させ、被検眼Eの光障害発生のおそれを低減することができる。
【0043】被検眼Eに対する照明光の照射光量の低減は例えば以下のようにして行う。
【0044】例えば、被検眼Eに対する「手術作業」の意味を、切開、乳化吸引、眼内レンズ挿入、縫合等の作業を意味するものと定義すると、切開、縫合の場合には大きい光量であるAレベルとし、乳化吸引の場合にはさほど光量を必要としないのでBレベルとする。換言すれば、例えばAレベルを相対値で1.0、Bレベルを相対値で0.75として、前記光量調整手段37により光量切り換えを行う。
【0045】さらに、眼内レンズ挿入時には、Cレベルとして相対値で0.5の段階迄光量調整手段37により照射光量を低減させる。このCレベルの光量は、CCDカメラ27による被検眼Eの撮影が可能なレベルまで低減することができる。
【0046】また、前記プログラムメモリ31に格納された動作プログラムに基づき制御部30により前記光電変換素子14を構成する多数のCCD素子の出力信号に応じて被検眼Eからの反射光の光量分布を求め、光量調整手段37により被検眼Eからの反射光の光量分をパラメータとして被検眼に対する照明光の照射光量を調整するようにすることも可能である。
【0047】これにより、被検眼Eからの反射光の光量分布を利用し、例えば被検眼Eの瞳孔Ep部分における白内障の程度に応じて被検眼Eに対する照明光を調整することができる。
【0048】さらに、前記動作プログラムに基づき制御部30により図5に示す瞳孔Epからの反射光量分布の幅Wや高さHを求めることにより、被検眼Eの瞳孔Epの寸法や被検眼Eの水晶体内部に対する照明光の到達程度を判定し、その量を表示したり、光量調整手段37にその値をフィードバックすることもできる。
【0049】これにより、被検眼Eの混濁した水晶体が存在しない場合に、自動的に被検眼Eに対する照射光量を自動的に落とすことも可能となる。
【0050】次に、本実施の形態の手術用顕微鏡1の動作を、被検眼Eに対して所定の積分値(時間的に合計した光量)以上の照明光の照射を防止する場合について図7を参照して説明する。
【0051】前記積分値演算手段34は、上述した瞬時値演算手段33の演算結果を積分し被検眼Eに対する照射光量の積分値Iint を演算する。
【0052】光量調整手段37は、積分値演算手段34の演算結果である積分値Iint と、積分値光量テーブル36に記憶した許容光量の積分値Ixとを比較して、積分値Iint が積分値データIxを越える場合には、光源17を制御して照明光の出射を停止させる。これにより、被検眼Eに対して許容される積分値Ix以上の照明光が照射されることを自動的に阻止し、被検眼における網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減することができる。
【0053】この場合にも、前記表示手段28に積分値Iint が許容される積分値Ixを越えている旨の警報情報を送り警報を表示させることで、被検眼Eに対する照明光の照射の合計が限界又は限界を越えていることを術者等に認識させ、被検眼Eの光障害発生のおそれを低減することができる。
【0054】次に、本実施の形態の手術用顕微鏡1の他の実施態様について図8を参照して説明する。
【0055】例えば白内障手術等の場合には、術者はメス等の手術器具を使用して角膜等の切開を行う。
【0056】この場合、前記観察光学系15のCCDカメラ27により観察され、画像レコーダ42に記憶される画像は、図8に示すように、被検眼Eの前眼部像とメス像40とが重なったものとなる。
【0057】被検眼Eの前眼部像とメス像40とは明らかに照明光の反射光量が相違し、また、静止像と動画像との相違を有するので前記判定手段29はこの反射光量の相違を利用してメス像40の有無、即ち、被検眼Eに対して手術中か否かを自動的に判定する。
【0058】即ち、被検眼Eの前眼部像とメス像40に関する反射光量の相違を判定する閾値を予め定めておき、前記判定手段29により閾値を使用してメス像40の有無を判定することができる。
【0059】光量調整手段37は、判定手段29によるメス像40が無い状態、即ち手術器具であるメスが無い状態の判定結果に基づき、前記光源17からの照明光の出射量を調整し、被検眼Eに対する照明光の照射光量をメス像40が存在する場合よりも低減する。
【0060】これにより、メス等の手術器具を使用する手術の際には、被検眼Eに対して明るい照明光を照射し、手術器具を使用しない場合には自動的に被検眼Eに対する照明光の照射光量を低減することができ、これにより、手術の便宜を図り、また、被検眼Eにおける網膜障害等の光障害の発生のおそれを低減することが可能となる。
【0061】また、CCDカメラ27に搭載した画像レコーダ42に、このCCDカメラ27により相次いで撮影した複数枚の被検眼Eの前眼部像を動画像として記憶し、複数枚の前眼部像の画像比較によりメス像40の有無を判定するようにすることも可能である。
【0062】さらに、前記光電変換素子14からの被検眼Eからの反射光に応じた検出信号を前記フレームメモリ41に記憶し、制御部30の制御の基に被検眼Eの領域における各部の光の反射率を求め、反射率の相違から被検眼Eの瞳孔と手術器具の形状との相違により前記判定手段29において手術器具の存在の有無、即ち、術者による手術中か否かの判定を行い、この判定結果により既述した手術作業中においては光量調整手段37により前記光源17からの照明光の出射量を調整し、被検眼Eに対する照明光の照射光量を手術作業中以外の場合よりも大きくするような動作も可能である。
【0063】さらに、前記照明切換手段43により、被検眼Eに対する照明光の光軸を同軸照明の状態として既述したような動作を実行したり、斜め照明の状態に切り換えて既述したような動作を実行させることもできる。
【0064】尚、既述した被検眼Eに対する照明光の調整は、光源17からの照明光の出射量を切り換える場合の他、図示していないが対物レンズ10の被検眼E側にND(ノーマルデンシィ)フィルタを挿脱する構成でも実施可能である。
【0065】また、図2に示すように、接眼レンズ系25に例えば複数の赤色LED素子52を配置し、被検眼Eに対する照明光の照射量が所定瞬時値光量を越えた場合、赤色LED素子52を点灯させて、図9に示すように、そのLED像52aを接眼レンズ系25により視認するようにすることもできる。尚、図9において点線で示す丸の部分は、赤色LED素子52の不点灯状態を意味するものである。
【0066】また、被検眼Eに対する照明光の基準照射光量を1.00とし、基準照射光量が、1.00以上で赤色LED素子52を1個点灯させ、1.25以上で赤色LED素子52を2個点灯させ、1.50以上で赤色LED素子52を3個点灯させることもできる。
【0067】逆に、図示していないが緑色LED素子を複数個用意し、1.00未満で緑色LED素子を1個点灯させ、0.75未満で緑色LED素子を2個点灯させ、0.50未満で緑色LED素子を3個点灯させることもできる。
【0068】さらに、基準照射光量1.00では赤色LED素子52も緑色LED素子も不点灯とし、わずかでも基準照射光量1.00からずれた場合に赤色LED素子52又は緑色LED素子を点灯させることも可能である。
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、被検眼に対する照明光を常時許容光量範囲内で調整した状態でこの被検眼の観察を行うことができ、被検眼における網膜障害等の光障害発生のおそれを低減することができる手術用顕微鏡を提供できる。
【0070】また、本発明によれば、被検眼に対して許容される積分値以上の照明光が照射されることを自動的に阻止し、被検眼における網膜障害等の光障害発生のおそれを低減することができる手術用顕微鏡を提供できる。
【0071】さらに、本発明によれば、被検眼の瞳孔部分の白内障の程度等に応じて被検眼に対する照明光を調整することができる手術用顕微鏡を提供できる。
【0072】また、本発明によれば、手術器具を使用する手術の際には被検眼に対して明るい照明光を照射し、手術器具を使用しない場合には自動的に被検眼に対する照明光の照射光量を調整することができ、これにより、被検眼における網膜障害等の光障害発生のおそれを低減することができる手術用顕微鏡を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
【出願日】 平成11年7月2日(1999.7.2)
【代理人】 【識別番号】100081411
【弁理士】
【氏名又は名称】三澤 正義
【公開番号】 特開2001−17459(P2001−17459A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−189673