| 【発明の名称】 |
卵子または胚のガラス化用具及び方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】冨永 敬一郎
【氏名】▲はま▼田 由佳子
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| 【要約】 |
【課題】哺乳動物の卵子または胚を超急速にガラス化し、安定して高い生存率を達成するための簡便な方法、及び用具を提供する。
【解決手段】卵子または胚をガラス化するためのガラス化用具であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具と、これを用いた方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 卵子または胚をガラス化するためのガラス化用具であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具。 【請求項2】 卵子をガラス化するためのガラス化用具であって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分が、内径100〜200μmの円形であり、極細管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求項1記載のガラス化用具。 【請求項3】 胚をガラス化するためのガラス化用具であって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分が、内径150〜250μmの円形であり、極細管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求項1記載のガラス化用具。 【請求項4】 卵子または胚のガラス化方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化するガラス化方法。 【請求項5】 前記極細管部が、液体窒素への浸漬により低温に曝される請求項4記載のガラス化方法。 【請求項6】 卵子または胚の保存方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化し、前記ガラス化用具を保存用外筒内に挿入嵌合して卵子または胚が入れられた極細管部を保護し、−190〜200℃の低温下に保つことを特徴とする保存方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、哺乳動物の卵子、または受精卵を含めた胚をガラス化するための器具及び方法に関し、更に詳細には、卵子または胚を良好な生存状態で保存し、体外受精、胚移植や哺乳動物クローン作出に利する器具及び方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に胚移植を行う場合、胚を採取後、直ちに新鮮な状態で仮親体内へ移植し、着床させることが望ましい。しかし、動物の種類やその他種々の因子によっては、仮親の性周期、健康状態が好ましい時期に卵管あるいは子宮に移植しなければ成功裡に着床、妊娠することが極めて困難となる。このような好時期を見計らって移植しようとすると、受精後から移植までにかなりの時間を要する場合が頻発するので、受精卵や胚を長期間保存する必要がある。 【0003】また、哺乳動物クローン作出に際してもやはり、受精卵を適切な時期に除核して核移植した後、移植することが多いので、受精卵あるいは胚を保存する必要が生じる。 【0004】このように卵子や胚を保存するに当たり、損傷を与えることなく、より生物活性を維持した安定な状態でガラス化できる方法が希求されてきた。 【0005】そのため、超急速冷却できるよう、プラスチックストローを引き延ばして内径を800μm〜1mm程度としたものの中に毛細血管現象を利用して卵子または胚を含むガラス化液を吸い上げ、これを液体窒素に浸漬してガラス化する方法(オープン・プルド・ストロー(OPS)法)が採用されてきた。しかし、この方法によってもやはり融解後の生存率が低く、また吸入液量も一定しないので保存する卵子または胚を安定的にガラス化保存することは困難であった。 【0006】また、卵子または胚を含む液体を直接液体窒素中へ投入する法も提案されているが、この方法では液体窒素から卵子または胚をすべて再現性よく回収することが困難であり、さらに卵子または胚の個別認識ができなくなるという不都合もあった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる現状に鑑みて、卵子または胚を良好な生存状態で安定にガラス化して保存することができる器具及び方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、卵子または胚が、長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上並存しえない極細管部を有するガラス化用具によって、個々の卵子または胚を超急速にガラス化することにより安定な保存を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】すなわち本発明は、下記本願第一発明から第八発明をその要旨とする。 【0010】先ず本願第一発明は、卵子または胚をガラス化するためのガラス化用具であって、筒状の極細管部と、当該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具である。このような構造を有するガラス化用具によれば、極細管部で卵子または胚が長手方向に略一列に並ぶように導入されるので、液体窒素に浸漬するなどして低温に曝した場合に即座に卵子または胚がその温度に平衡化され、速やかにガラス化に至る。また融解時にも同様に速やかに融解温度に平衡化されるので緩徐に温度が変化する際に細胞組織が受ける損傷が最低限に抑えられる。よって、保存期間を経て融解した後の卵子または胚の生存率が高くなり、細胞の変性も低減できる。しかも、該ガラス化用具は吸引及び吐出用器具に装填して用いることにより一定量の卵子または胚を正確に導入できるので、保存個数の制御も容易である。また、ガラス化した後、卵子または胚を封入してガラス化用具ごと保存できるので、各ガラス化用具に導入した卵子または胚の由来を記入しておき、個々に識別しておくことが容易である。 【0011】さらに本願第二発明は、卵子をガラス化するためのガラス化用具であって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分が、内径100〜200μmの円形であり、極細管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求項1記載のガラス化用具である。通常、ヒトを初めとして、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウサギ、マウス等の哺乳動物の卵子は、外径70〜140μm程度の球状を有している。このようなサイズの卵子が極細管部内で長手方向に略一列に並ぶよう、且つ、温度変化が一気によりムラなく及ぶよう、極細管部の断面は円形であり、その内径が上記範囲に定められる。当然ながら、かかる内径範囲以下では卵子を極細管部内に導入できないし、このような内径範囲を超えれば極細管部内の長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上の卵子が並存することとなるので、OPS法におけるごとく卵子がガラス化時/融解時に温度変化を急速に万遍なく受けることができなくなり、その結果卵子への損傷が大きく生存率に劣る結果を引き起こすこととなる。 【0012】本願第三発明は、胚をガラス化するためのガラス化用具であって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分が、内径150〜250μmの円形であり、極細管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求項1記載のガラス化用具である。前述のごとき哺乳動物の受精卵は、実質的に卵子と形状及び寸法は同じであるが、その後経時的にサイズが大きくなり、胚盤胞期に至っては外径125〜200μm程度となる。従って、胚のガラス化用具にあっては、極細管部の断面が前記範囲を有する円形となるように設計し、卵子について本願第二発明の説明で記載したと同様に極細管部内の長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上の胚が並存しないようにしたものが好ましい。 【0013】本願第四発明は、卵子または胚のガラス化方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化するガラス化方法である。この方法により、卵子または胚に対する損傷を最小限として安定な生存率で細胞の変性を起こすことなくガラス化を成し遂げることができる。 【0014】この本願第四発明のガラス化方法において、前記極細管部を低温に曝すには、液体窒素への浸漬が最も好適に行われ得る(本願第五発明)。 【0015】そして本願第六発明は、卵子または胚の保存方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化し、前記ガラス化用具を保存用外筒内に挿入嵌合して卵子または胚が入れられた極細管部を保護し、−190〜200℃の低温下に保つことを特徴とする保存方法である。この保存方法によって、卵子または胚を長期間、安定に保存することが可能となる。 【0016】 【発明の実施の形態】哺乳動物には、ヒトを初めとする、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、マウスなどの種々の哺乳動物が含まれる。 【0017】本明細書において卵子は、哺乳動物の雌性配偶子であり、いわゆる卵、卵細胞を総称することとする。また胚は、いわゆる「受精卵」を含めて受精後の個体発生初期、卵割後の胚盤胞期に至るまでを総称することとする。 【0018】従来のOPS法によると、図5(a)に示す先細ストロー20の卵子5の導入部の長手方向に対する垂直面の内径L20が800μm内外であるので、毛細管現象によって導入された卵子5は、図5(b)に拡大して示すように卵が当該垂直上に複数個、すなわち最大8個程度も並列することとなる。かくして、液体窒素に投入しても卵子5に対する温度の伝導が不均一になってしまい、その結果超急速冷却がなされやすい卵子と緩徐に温度が低下してガラス化の際に損傷を受ける卵子が多発すると考えられる。これが、従来のOPS法で高い生存率が達成できなかった原因の一つである可能性が考えられる。そこで、本願第一発明にかかるガラス化用具を開発し、卵子をガラス化した場合の生存度を観察したところ、従来法に比して格段に好ましい結果が得られた。 【0019】以下、本発明のガラス化用具に関し図面を参照してさらに詳説する。 【0020】図1(a)には、本発明のガラス化用具10の斜視図を、図1(b)にはその断面図を示す。このガラス化用具10は、卵子が導入される筒状の極細管部1とそれに続く接続部2、及び接続部2に続く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部3を含んでいる。このガラス化用具10は、例えば、ガラス、プラスチック、テフロン(登録商標)等の耐低温性を備えた素材で製造されても構わないが、好ましくは、耐低温性と適度な可撓性と剛性を有し、内部のすべり抵抗が低いため取扱上、破損の可能性が低いポリエチレン等のプラスチックが素材として用いられる。吸引及び吐出用器具への装填も、プラスチック素材を用いる方が良好な係合関係が得られるので好ましい。 【0021】極細管部1の垂直断面図を図2(b)に示すが、ここで極細管部1の長手方向に対する垂直断面の内空部分の対向する2点間の最短距離Lすなわち、この内空部分の円の内径は、卵子5の最小外径L5の2倍よりも短く且つ最大外径L5よりも長いため、極細管部1の中に入った卵子5は、極細管部1の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえない。従って、極細管部1で卵子5が長手方向に略一列に並ぶように導入され(図2(a))、極細管部1を液体窒素に浸漬するなどして低温に曝した場合に、即座にガラス化液6中に懸濁されている卵子5がその低温に到達して速やかにガラス化に至る。そして融解時にも、同様に速やかに卵子5とガラス化液6が融解温度に到達するので、緩徐に温度が変化する際に細胞組織が受ける損傷が最低限に抑えられる。よって、保存期間を経て融解した後の卵子5の生存率が高くなり、細胞の変性も低減できる。L5はウシの卵子または胚に適用される場合、100〜250μm、より好ましくは180〜220μmとなるようにするとよい。 【0022】極細管部1の管壁の厚みは、50〜150μm、好ましくは90〜100μmとされる。この範囲よりも厚すぎると熱伝導性に劣る場合が多いためガラス化、低温保存後の生存率の低下を招き、薄すぎると製造時の作業性や製品としての強度、使用性に劣ることになる。そして極細管部1の長さは10〜15mmが好ましく、長すぎると使用性に劣り、短すぎると卵子または胚の導入量が制限されてしまう。 【0023】極細管部1の垂直断面図を図2(b)に示すように真円であることが均一に熱伝導が行われるという点で好ましいが、楕円その他、種々変形した形状でも許容される。但し、極細管部垂直断面において対向する2点間の最短距離は、卵子5の最小外径L5の2倍よりも短く、且つ卵子5の最大外径L5よりも長く、従って極細管部1の中に入った卵子5が、極細管部1の長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上並存しえないようにする必要がある。 【0024】接続部2は、極細管部1と連結部3との間に位置して、内径2.0〜3.0mm、好ましくは2.1〜2.8mmであって、長さ2.0〜2.5cm、好ましくは2.3〜2.5cmを有する。管壁の厚みは400〜600μmとして、極細管部1よりも強度、剛性を高めるとよい。この接続部2を設けることで、本発明のガラス化用具10を把持したり、保存用外筒7への装填が容易になる。 【0025】連結部3は、吸引及び吐出用器具8に適応する形状に開口しており、市販のオートピペットを吸引及び吐出器具8として使用する際には、2.5〜5.7mm、好ましくは2.8〜5.4mmの内径とするとよい。 【0026】また、卵子5をガラス化するためのガラス化用具10としては、前記極細管部1の断面が、100〜200μm、好ましくは180μmの内径L5を有する円形であり、極細管部1と、連結部3との間に接続部2が設けられていることが望ましい。なお、卵子5でなく胚をガラス化するためのガラス化用具では、前記極細管部の断面が、150〜250μm、好ましくは200μmの内径L5を有する円形であるとよい。 【0027】本発明のガラス化用具10は吸引及び吐出用器具8に装填して用いる(図3参照)ことにより一定量の卵子または胚を正確に導入できるので、ガラス化用具10にて保存される卵子の個数の制御も容易である。この吸引及び吐出用器具8としては、市販のオートピペットが好適に利用されうる。 【0028】また、図4に示すように、ガラス化した後に卵子5をガラス化用具10ごと保存用外筒7(図4(a))に封入した状態として(図4(b))そのまま保存できるので、各ガラス化用具に導入した卵子5の由来をガラス化用具10または保存用外筒7に表記しておけば、個々に識別することが可能である。保存用外筒7としては、例えば精液プラスチックストロー(IMV社製)などが好適に利用できるが、内径2.6〜2.8mm、長さ9〜10cmを有する強度に優れたプラスチック性等の筒であればとくに限定されることはない。 【0029】本発明にかかる、卵子または胚のガラス化方法は、ガラス化用具10を、吸引及び吐出用器具8に装填して、ガラス化液6に懸濁された卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃、好ましくは約−196℃(液体窒素中など)の低温下に1〜4秒間、好ましくは2〜3秒間曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化するガラス化方法である。この方法により、卵子または胚に対する損傷を最小限として安定な生存率で細胞の変性を起こすことなくガラス化を成し遂げることができる。 【0030】ガラス化液としては、例えば、0.6Mスクロース、20%エチレングリコール、20%DMSO(ジメチルスルホキシド)及び20%子ウシ血清(CS)を含むTCM199(Gibco−BRL社製)液が挙げられ、pH7.2〜7.4のものを用いるとよいが、適宜の変更を加えてもよい。また、ガラス化液として、0.6Mスクロース及び40%エチレングリコールを含む液を用いることもできる。 【0031】なお、ガラス化に先駆けた卵子または胚の培養時に、リノール酸アルブミンなどの既知の安定化用試薬を25〜30mg/ml濃度で添加した培養液を用いることで、融解後の生存性を向上させ得ることが知られているが、本発明のガラス化用具10を用いると卵子または胚の生存率が格段に向上されるので、かかる安定化用試薬を使用する必要がまったくないか、または従前の方法よりも低減することができるようになる。 【0032】卵子または胚は、ガラス化液中、好ましくは1〜10個/μl、より好ましくは2〜8個/μlとなるように調製した後、ガラス化用具10の極細管部1内へ、吸引及び吐出用器具8で量を調節して、例えば0.5〜1μl、好ましくは0.6〜0.7μl程度の量が導入されるがこの量は適宜変更してよいことはもちろんである。 【0033】ガラス化に先駆けて、ガラス化平衡液(例えば、10%エチレングリコール及び10%DMSOを含む20%子ウシ血清を添加したTCM199液)を用いて、1〜2分間、好ましくは約2分間、37℃にて卵子または胚を平衡化しておくことが、ガラス化液への投入時の毒性を低減させることができるという点で望ましい。 【0034】また、ガラス化平衡液での処理の後ガラス化のために冷却する前に、前記ガラス化液に卵子または胚を懸濁して25〜40秒間、好ましくは約30秒間、ガラス化液への平衡化を行うことが、ガラス化を容易にする点で望ましい。 【0035】本発明の一の実施形態にかかる卵子または胚の保存方法は、如上のガラス化方法により卵子または胚をガラス化した後、ガラス化用具10を低温下、例えば液体窒素中で保存用外筒7内に挿入嵌合して卵子または胚が入れられた極細管部1を保護して、−190〜200℃、好ましくは−194〜196℃、より好ましくは−196℃の低温下に保つことを特徴としている。細胞損傷を抑制してガラス化を行ってから、長期保存が可能な温度下に維持することで、卵子または胚を安定に保存することが可能となる。実際、受精卵を上記ガラス化用具10に導入してガラス化後、液体窒素中で保存した結果、365日以上、高い生存率で保存可能であることが明らかになっている。 【0036】液体窒素を用いる場合、図6に示すように、繁用されている液体窒素保存容器9の中に保存用外筒7に挿入嵌合して浸漬しておくことで、卵子または胚を保存する。 【0037】保存後の融解に際しては、深型3穴ホローグラス(コーニング社製)に0.25Mスクロースを含む30%子ウシ血清添加TCM199液約1mlを入れて37℃に加温しておき、ガラス化用具10の卵子または胚が導入された極細管部1を3〜5秒間浸漬して融解し、直ちに連結部3の開口部側を指で覆うことによってホローグラス内へガラス化液ごと内容物を移動させる。1分間浸漬後、次にやはり37℃に加温した0.13Mスクロースを含む25%子ウシ血清添加TCM199液約1mlへ卵子または胚を移して5分間保持し、次いで20%子ウシ血清添加TCM199液約1mlへ移し変えるという三段階にて、ガラス化液を除去することが望ましい。このような多段階操作でスクロース濃度を変化させつつガラス化液中のDMSO及びエチレングリコールを除くことが、高い生存率を得るという点で好ましい。しかし、この工程で使用する液体も適宜の変更が可能であり、細胞への損傷を保護できる環境下におくよう留意さえすれば、例えば培養液としてTCM199液の他に、ダルベッコリン酸緩衝液(D−PBS)などが利用でき、また、スクロースの配合量を例えば0.6Mから段階的に、0.3M、0.15M、最後に0Mに変化させて用い、多段階にガラス化液を除去してもよい。 【0038】このようにしてガラス化、保存後に融解された卵子または胚は、新鮮卵または胚と同等の生物学的活性を保持しているので、効率のよい胚移植やクローン作出のために適用することが可能である。 【0039】 【実施例】以下、本発明のガラス化用具を利用したガラス化方法及び保存方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はもとよりこれら実施例に限定されるものではない。 【0040】[実施例1]体外受精後、種々の発生段階にあるウシ初期胚を、本発明のガラス化用具を用いてガラス化し、所定時間液体窒素中で保存した後の発生能について検討した。 【0041】体外受精及び体外培養は、Ullah(1997、Theriogenology,47巻、357頁)の方法に準じて行った。すなわち、屠殺雌ウシの卵巣から2〜5mmの卵胞を5mlシリンジを用いて吸引採取し、D−PBSで洗浄処理してCOC(卵丘細胞−卵母細胞複合体)を得た。 【0042】COCは、FCS(胎児ウシ血清)5%、FSH(卵胞刺激ホルモン)0.002AU/ml、エストラジオール1μg/mlを含有するTCM199液を入れた4ウェルのマルチディッシュ(ヌンク社製、カタログ番号176740)に1ウェル当たり30〜50個を投入し、38.5℃にて5%CO2を含む空気中で22時間培養して成熟させた。 【0043】次に、雄ウシから採取した精子を凍結保存後、37℃で融解し、2.5mMのテオフィリン及び15μg/mlのヘパリン、1%のBSA(ウシ血清アルブミン)及び0.25%のグルコースを含むBO液に5×106個/mlとなるように懸濁して、この精子懸濁液100μlに20〜30個のCOCを添加し、38.5℃にて5%CO2を含む空気中で6時間培養することにより媒精を行った。 【0044】以上のとおりに受精させた後、卵丘細胞を除去するために0.025%のヒアルロニダーゼを含有するPBS(−)液(カルシウム、マグネシウム不含)中で受精卵をボルテックスミキサーを用いて洗浄した。次いで、受精卵をミネラルオイルを被覆した4ウェルのディッシュにて、0.75mlの培養液中で培養した。この際、受精後72時間までは25mg/mlのリノール酸アルブミン(LAA)と3mg/mlの脂肪酸不含BSAを添加したCRlaa培養液中で培養し、以後5日目までBSAの代わりにCSを5%の割合で添加し、さらに7日目まで0.1mMβ−メルカプトエタノールを含む20%CS添加TCM199液で培養して胚を発生させた。培養は、38.5℃にて、5%CO2を含む空気(受精から5日目までは、空気でなく5%O2及び90%N2となるように調整)中で行った。 【0045】以下の実験の供試胚には、受精日を0日として、その後1日目(2細胞期)、2日目(4〜8細胞期)、3日目(6〜12細胞期)、4日目(8〜12細胞期)、5日目(16細胞期〜桑実期)及び7日目(胚盤胞期)の発育段階にあるものを用いた。 【0046】次いで、Vajtaら(1998、Molecular of Reproduction and Development, 51巻、53〜58頁)の方法を一部修正してガラス化保存を行った。すなわち、ガラス化平衡液(10%エチレングリコール及び10%DMSOを含む20%CSを添加したTCM199液)0.05mlに3〜4個の上記供試胚を移した。2分間、37℃にて平衡化した後、ガラス化液(0.6Mスクロース、20%エチレングリコール、20%DMSO及び20%CSを含むTCM199液)7μlに上記胚を移して37℃で保持した。次いで、本発明にかかるガラス化用具(内径200μmのGL Tipの先端を約10mm切断して、極細管部の長さを12mm、内径0.2mm、接続部の長さを23mm、内径最小2.1〜最大2.8mm、そして連結部の長さを15mm、内径最小2.8〜最大5.4mmとしたもの)の中に、吸引及び吐出用器具であるオートピペット(ピペットマンP−2)を用いて、0.6〜0.7μlのガラス化液ごと胚を吸引し、オートピペットにガラス化用具を取り付けたまま、30秒後に液体窒素中へ胚が導入された極細管部を浸漬し、3秒間保持した。そして、液体窒素中で長さ10.5cm、内径2mmの保存用外筒(精液プラスチックストロー、IMV社製)にガラス化用具の極細管部を保護するように挿入、固定して、保存用外筒ごと液体窒素保存容器に投入し、1〜30日間保存した。 【0047】保存後の胚を含むガラス化液は、深型3穴ホローグラス(コーニング社製)内で、37℃に加温した0.25Mスクロースを及び30%CSを添加したTCM199液約1mlに極細管部を3秒間浸漬することによって融解した。融解後直ちに、ガラス化用具の連結部の開口部側を指で覆うことによってホローグラス内へガラス化液ごと内容物を移動させた。 【0048】1分間胚を浸漬させた後、次にやはり37℃に加温した0.13Mスクロースを含む25%子ウシ血清添加TCM199液約1mlへ胚を移して5分間保持し、次いで20%子ウシ血清添加TCM199液約1mlへ移し変えるという三段階にて、ガラス化液を除去した。 【0049】対照として受精後それぞれの日数培養して各段階にまで発生を遂げ、ガラス化を行わなかった新鮮胚と、上記ガラス化、保存、融解の各工程を経た後の胚について、以下、発生能の評価を行った。 【0050】新鮮区、ガラス化区とも受精7日目に胚盤胞期胚にまで発生した胚数を計測した。また、新鮮区、ガラス化区のうち受精7日目に胚盤胞期胚にまで発生した胚のいくつかを免疫蛍光2重染色法で染色し、内部細胞塊細胞(ICM)と栄養膜細胞(TE)とを別々に計測し、総細胞数及び内部細胞塊細胞比率(内部細胞塊細胞/総細胞数)を算出した。すなわち、0.25%プロナーゼ(Sigma社製)を添加した3mg/mlのBSA(Sigma社製)を含むm−PBS(Gibco一BRL社製)のドロップに胚を3〜5分間入れ、透明帯を除去した。その後、5%血清(三菱化成社製)を含むTCM199液(Gibco一BRL社製)のドロップで5回洗浄し、10mMトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(ナカライテスク社製)を4mg/mlのポリビニルピロリドン(PVP、Sigma社製)を含むPBS(日水社製)(pH7.4に調整)に融解した液でドロップを作って胚を入れ、氷上で10分間保持した。5%血清を含むTCM199液のドロップで3回洗浄し、90μlのウサギ抗ジニトロフェノール(DNP)−BSA抗体(ICN社製)を210μlのTCM199液で希釈し、ドロップを作って胚を入れ、38〜39℃で30分間保温した。次に5%血清を含むTCM199液のドロップで胚を5回洗浄し、100μlのモルモット補体(Sigma社製)を10%ヨウ化プロピディウム(Sigma社製)と10%ヘキスト33342(Sigma社製)を含む400μlのTCM199液で希釈し、38〜39℃で15〜30分間保温した。次に3mg/mlのBSAを加えたm−PBS中に胚を入れて1回洗浄し、少量のm−PBSとともに胚をスライドグラス上に置き、胚の細胞が重ならず、一層になるように拡げた。胚が完全に乾かないうちに、マウンティングメディウム(K&P社製)をかけ、カバーガラスをのせ、蛍光顕微鏡のUV励起下で鏡検した。内部細胞塊細胞数は青く染まり、栄養膜細胞はピンクに染まるため、両者の識別は可能である。 【0051】こうして得られた結果を、図7及び表1に示す。表1にはガラス化処理した実験区とガラス化処理しない対照区の細胞数、内部細胞塊細胞数、栄養膜細胞数及び内部細胞塊細胞比率を示し、図7には胚盤胞への発生率を示した。 【0052】 【表1】
【0053】これらの結果から、本発明のガラス化用具を用いてウシ体外受精由来の初期胚をガラス化、保存後融解しても、新鮮胚と有意差のない、高い発生能が保持されていることが明らかになり、従って、本発明の方法により、損傷を与えることなく安定にガラス化を成し遂げることができることが判った。 【0054】細胞内脂肪が多く、細胞結合の弱いウシ体外受精由来初期胚に対して、このような高い生存率が得られたのは、本発明のガラス用具によって、従来にはない著しく速い冷却速度が得られ、全ての胚が同様な速度で冷却されるため、安定したガラス化が確実に行われ、極めて細胞損傷の少ないガラス化保存を可能にしたためである考えられる。 【0055】[実施例2]従来のガラス化方法の中で最も高い評価を得ているOPS法と、本発明のガラス化方法についての比較を行った。 【0056】体外受精4日目胚を用い、OPSを用いてガラス化を行った。不飽和脂肪酸であるリノール酸アルブミン(LAA)を培養液へ添加することにより、融解後の生存性が向上するが、同時に添加する血清が、胚の安定なガラス化を困難にしているといわれている。そこで、OPSを用いた体外受精4日目胚のガラス化において、培養液への血清の添加時期がLAA添加に及ぼす影響と、OPSの代わりに本発明のガラス化用具を用いたガラス化でのLAA添加の影響とを調べた。 【0057】体外受精及び体外培養は、実施例1と同様に行った。受精後の卵子をLAA添加区と無添加区に区分して培養を行った。血清の添加時期については、受精後3日(72時間)から添加する区を基準とし、精子除去後(0時間)から添加する区と、受精後1日(24時間)から添加する区を設けた。各区の受精4日目胚をOPSでガラス化保存した。 【0058】ガラス化保存法は実施例1と同様に行い、ガラス化液から胚を吸引し、液体窒素へ浸漬する容器としてOPSを用いた。すなわち、ガラス化平衡液に胚を2分間浸漬し、次にガラス化液へ胚を移し、OPSに約1〜2μlのガラス化液とともに胚を吸引し、30秒後に液体窒素に浸漬した。 【0059】ガラス化保存後の胚を含むガラス化液は深型3穴ホローグラス(コーニング社製)内で、37℃に加温した0.25Mスクロースを含む30%血清を添加したTCM199液約1mlにOPS先端を3秒間浸漬することによって融解した。融解後直ちに、OPSの反対側の開口部から1mlシリンジで徐々に空気を送ることでホローグラス内へガラス化液とともに胚を移動させた。その後のガラス化液の除去については実施例1と同様に行った。 【0060】対照として受精4日目にガラス化を行わず、培養を継続する新鮮胚と、上記のガラス化保存、融解の各工程を経た後の胚とについて、以下の発生能の評価を行った。 【0061】新鮮区、ガラス化区とも受精7日目に胚盤胞期胚まで発生した胚数を計測した。受精後24時間から血清を添加した実験結果を図8に示す。対照である新鮮胚の発生率には血清の添加時期、LAAの添加の有無に関わらず差がなかった。OPSによるガラス化保存融解後の胚の発生率は血清の添加時期による差はなく、どちらもLAA添加区の発生率が高かった。また、精子除去後直ちに(0時間)血清を添加した実験結果を図9に示す。対照である新鮮胚の発生率に血清の添加時期、LAAの添加の有無による差はなかった。ガラス化融解後の胚の発生率には血清の添加時期による差が無く、どちらもLAAを添加した区で発生率が高かった。 【0062】実施例1と同様にして細胞数を計測した結果を図10及び図11に示す。新鮮区で血清の添加時期の違いによる細胞数の変化は見られなかった。ガラス化区においては、特にLAA無添加区で細胞数が少なく、ガラス化による胚の傷害が大きいと思われた。 【0063】OPSを用いた体外受精4日目胚のガラス化ではLAAの添加によって生存性が高まるが、LAA無添加では高い生存性を得られず、細胞数も新鮮胚に比べて少ないことが分かった。ここで、OPSの代わりに、ガラス化する際の液量を一定にできる本発明のガラス化用具を用いてガラス化を行い、その際のLAA添加の影響を調査した。 【0064】培養液へのLAA添加の有無で区を設け、受精4日目胚を本発明のガラス化用具を用いてガラス化を行った。実施例1の体外受精法、体外培養法を用いて作成した胚について、ガラス化液から胚を吸引する際に本発明にかかるガラス化用具を用いて、実施例1と同じガラス化及び融解を行った。 【0065】対照として体外受精4日目にガラス化を行わず培養を継続する新鮮胚と、ガラス化保存融解後の胚について、7日目の胚盤胞への発生率を比較した。 【0066】このようにして得られた実験結果を図12に示す。 LAA添加の有無は新鮮胚の発生率には差が無く、本発明のガラス化用具を用いたガラス化区でも差は見られなかった。 【0067】OPSを用いて体外受精4日目胚をガラス化した場合は、LAA添加の効果が見られたが、本発明のガラス化用具を用いたガラス化ではLAA無添加区でも高い生存率が得られることが明らかとなった。これらの結果から、内径の細い本ガラス化用具を用いることで、ガラス化時の胚に対する条件がより良好になり、培養液へのLAAを添加せずとも高い生存性を得る事が可能になると思われた。 【0068】以上の結果より図12に示すように、本発明によると培養液へのリノール酸アルブミンの添加の有無に関わらず、新鮮胚と遜色のない発生能が達成されることが明らかになった。 【0069】従って、本発明では細胞に対する損傷が格段に抑制されるためにOPS法で要求されるガラス化安定剤を添加する必要も回避されることが判った。 【0070】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によって、卵子または胚を安定に長期間、高い生存率をもって保存することを可能とするためのガラス化用具及び方法が提供される。 【0071】このガラス化方法を採用することで、体外受精、胚移植、哺乳動物クローン作出等の効率を高めることが可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592216384 【氏名又は名称】兵庫県
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| 【出願日】 |
平成12年3月14日(2000.3.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100065868 【弁理士】 【氏名又は名称】角田 嘉宏
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| 【公開番号】 |
特開2001−252293(P2001−252293A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月18日(2001.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2000−69862(P2000−69862) |
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