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【発明の名称】 デンタルフロス
【発明者】 【氏名】伊藤 龍

【要約】 【課題】フロスを歯間に挿入して清掃を行なう際、歯間部の食物残渣や歯垢を物理的に除去すると同時に、隣接歯面への歯垢の付着を抑制し、優れたう蝕予防効果を発揮することができるデンタルフロスを提供すること。

【解決手段】デキストナラーゼ酵素をフロスに付着、含浸させる。また、デキストナラーゼ酵素に加え、フッ化物塩も付着、含浸させる。歯間清掃時、歯間部における隣接歯面へのフロスの摩擦よってフロスからデキストナラーゼ酵素やフッ化物塩が離脱して歯垢や歯面に付着し、歯垢の抑制、う蝕の抑制効果を発揮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 デキストナラーゼ酵素をフロスに付着、含浸させたことを特徴とするデンタルフロス。
【請求項2】 デキストナラーゼ酵素に加え、フッ化物塩も付着、含浸させたことを特徴とする請求項1記載のデンタルフロス。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デンタルフロスに関し、さらに詳しくは、う蝕予防効果を有するデンタルフロスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】う蝕予防効果を与えるためにデンタルフロスに薬剤処理を施したものとして、例えば、特公平3−52980号、特開平3−68354号では、フッ素のう蝕抑制効果を応用して、フロスにフッ化物塩を塗布加工したものが開示されている。
【0003】また、特開平3−146054号、特開平3−228758号には、カテキン類化合物においてう蝕防止効果があるとされるポリフェノール化合物をフロス表面に塗布加工したものが開示されている。
【0004】また、特公平4−22095号では、デンタルフロスに歯の表面の強化やう蝕予防効果の機能を付与するために、ハイドロキシアパタイトを含浸させることが開示されている。
【0005】しかし、上記薬剤処理した従来のデンタルフロスのう蝕予防効果については、フッ化物塩を塗布加工した場合、安全性の制約により限られた添加量のため、この範囲では十分なう蝕予防効果は期待できない。また、ポリフェノール化合物やハイドロキシアパタイトをフロスに塗布加工した場合でも、う蝕予防効果は弱く、不十分なものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、フロスを歯間に挿入して清掃を行なう際、歯間部の食物残渣や歯垢を物理的に除去すると同時に、隣接歯面への歯垢の付着を抑制し、優れたう蝕予防効果を発揮することができるデンタルフロスを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のデンタルフロスは、上記目的を達成するため、デキストナラーゼ酵素をフロスに付着、含浸させ、さらには、デキストナラーゼ酵素に加え、フッ化物塩も付着、含浸させたものである。
【0008】う蝕の原因については、次のような過程で形成されることが判明している。すなわち、唾液や歯垢の中に、う蝕原性連鎖球菌であるストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutance)により、ショ糖から非水溶性の粘着性のデキストランが生成され、歯牙表面に密着して歯垢のマトリックス(母体)を形成する。ここに他の細菌が凝集してさらに歯垢の厚みを増す。この歯垢の中には多種類の酸産生菌が生息しており、歯垢の中に糖分が浸透してくると、有機酸を作る。このようにして、歯垢内で産生された酸により歯牙表面が溶け始め、う蝕病巣形成へと進行する。
【0009】他方、本発明で使用するデキストナラーゼ酵素は、口腔内のストレプトコッカスミュータンスによりショ糖から生成された粘着性のデキストランに接触すると、酵素化学的にこれを無作為に切断し、最終的にイソマルトース、グルコースまで分解する作用を有している。したがって、歯垢は分解され、粘着性を失ってしまうため、歯牙表面から分離し、除去される。
【0010】このような効果は、歯垢に直接的に作用するだけでなく、う蝕に対しても抑制する作用を有することがインビボ(invivo)、インビトロ(invitro) の実験により既に確認されている。さらに、臨床実験でも、デキストナラーゼを口腔製剤(歯磨、洗口剤)に配合して使用した場合に上述の効果があることが、多くの報告で証明されている。また、安全性については、急性毒性、慢性毒性、その他種々の試験が行なわれ、いずれも安全性の高いことが報告されている。
【0011】本発明の請求項1記載のデンタルフロスは、上記知見に基づいて発明されたものであって、歯垢を分解する作用を有する前記デキストナラーゼ酵素をフロスに付着、含浸させたもので、本発明のデンタルフロスを使用することにより、歯間部における隣接歯面へのフロスの摩擦よってフロスからデキストナラーゼが離脱し、歯垢に付着して前記作用を発揮することにより、歯垢の抑制、う蝕の抑制効果が得られるものである。
【0012】フッ素の効果については、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物塩が配合された口腔製剤を使用すると、フッ素イオンが歯牙表面から取り込まれ、耐酸性の向上と再石灰化効果により、う蝕予防効果が得られることはよく知られている。そして、前記従来技術で述べたように、これをデンタルフロスに適用したものは公知である。
【0013】他方、フッ素の過剰な取り込みは歯牙を損傷したり、その他の為害作用の原因となるおそれを伴うため、医薬品製造指針では、口腔製剤における配合量(含浸量)が規定されている。したがって、安全な範囲でのフッ素の使用量でなければならない。
【0014】しかし、デンタルフロスに付着、含浸させる安全範囲での限られたフッ素量では、う蝕予防効果が十分でない。そこで、本発明の請求項2記載のデンタルフロスは、前記デキストナラーゼとフッ素の異なる効果を組み合わせることにより、両者の相乗効果が得られるようにしたものである。すなわち、請求項2記載のデンタルフロスは、デキストナラーゼ酵素に加え、フッ化物塩を付着、含浸させることにより、デキストナラーゼの有する歯垢抑制作用と、フッ素の有する歯質の耐酸性および再石灰化作用の相乗作用により、さらに効果的にう蝕予防効果を発揮できるようにしたものである。
【0015】請求項2記載のデンタルフロスを使用すると、歯間に挿入したフロスが歯間部の隣接歯面を摩擦することによって、フロスからデキストナラーゼとフッ化物塩が離脱して歯垢や歯面に付着し、前記薬理作用を発揮することによって、歯垢の抑制と、優れたう蝕予防効果が得られるものである。
【0016】本発明で使用するデキストナラーゼ(化学名:α-1,6-gulcan6-glucanohydrolase)は、土壌、穀物、木片など、自然界に広く分布する糸状菌ケトミウム・グラシレ(Caetomium gracile)に由来する酵素であり、生成したものは白色〜微黄白色で、わずかに特異臭がある粉末状である。水分散液の最適pHは5〜6であるが、40℃でpH6〜11でも安定性を保つ。基質として少量のDLアラニンを加えると、さらに安定性を増す。フロスへの含浸量は1〜1,000単位/cm、好ましくは10〜50単位/cmである。
【0017】併用するフッ素は、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫などの口腔製剤で通常配合されるフッ化塩が使用できる。これらフッ化物塩を溶解した時のフッ素イオン濃度は、安全で、かつ、う蝕抑制効果のある濃度でなければならない。このためには、フッ素濃度として、フロスの重量割合で0.001〜0.1mg/cm、好ましくは0.01〜0.1mg/cmの含浸量となるようにするのがよい。
【0018】上記デキストナラーゼやフッ素などの薬剤をフロスに付着、含浸させるには、水溶性高分子剤に溶解して用いる。水溶性高分子剤は、唾液に溶解し、前記薬剤および必要に応じて添加される香料などを口腔内に放出させるもので、安全性が高く、フロスへの接着性、被覆性の良好なものが好ましい。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カラゲナン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(苦味の少ない高分子量のもの:PEG2000以上)など、天然および合成水溶性高分子を用いることができる。これら水溶性高分子は、上記薬剤を安定にフロス繊維束に付着固定し、長時間安定に保持させることができる。
【0019】フロスに用いる繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどの通常使用されている、安全で、使用に耐え得る強度を備えた素材であればよい。フロスはこの繊維を複数本束ねることにより構成されているが、この繊維束としては、0.5〜1テックスのモノフィラメントを集合させて30〜120テックスとし、軽く撚った(0.2〜1.0回/cm)ものが、フロスとして歯間に挿入しやすいので好ましい。また、薬剤を含浸しやすくするために、巻縮加工された繊維束を用いてもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に、本発明のデンタルフロスを用いて構成した歯間清掃具の第1の実施の形態を示す。この第1の実施の形態は、フロスにデキストナラーゼ酵素を付着、含浸させた本発明のデンタルフロス1を用い、このデンタルフロス1を巻取りリール2に巻き取り、取り出し口部3にカッター4を備えたボックス5内に収納したものである。
【0021】その使用に際しては、デンタルフロス1を取り出し口部3から必要な長さだけ引き出した後、カッター4で切断し、この切断したデンタルフロス1の両端部を左右の手の指にそれぞれ巻きつけ、両手で強く張った状態でデンタルフロス1を歯間部に挿入し、前後に往復動させて歯間部の清掃を行なう。このようにすると、隣接歯面へのフロスの摩擦よってデンタルフロス1からデキストナラーゼが離脱して歯面に付着し、歯垢とう蝕を効果的に抑制することができる。
【0022】図2に、本発明のデンタルフロスを用いて構成した歯間清掃具の第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態は、フロスにデキストナラーゼ酵素とフッ化物塩の両方を付着、含浸させた本発明のデンタルフロス1を用い、このデンタルフロス1を把持部6の先端の糸張部7,7間に張設し、インサート成形によって一体成形したものである。
【0023】その使用に際しては、把持部6を手で持ち、糸張部7,7間に張設されたデンタルフロス1を目的とする歯間部に挿入し、前後・上下に往復動させて歯間部の清掃を行なう。このようにすると、隣接歯面へのフロスの摩擦よってフロスからデキストナラーゼとフッ化物塩が離脱して歯垢や歯面に付着し、デキストナラーゼの有する歯垢抑制作用と、フッ素の有する耐酸性および再石灰化作用の相乗作用により、さらに効果的に歯垢とう蝕を抑制することができる。
【0024】
【実施例】(実施例−1)この実施例−1は、前記第1の実施の形態(図1)に対応するもので、水溶性高分子剤1〜3%を溶解させた水溶液にデキストナラーゼを500単位/mlとなるように攪拌して分散させる。また、必要に応じて、酵素の安定化剤としてDLアラニンを添加し、さらに香料、保香剤などを添加する。そして、この液中に90テックスの巻縮加工した繊維束からなるフロスを通して液を付着、含浸させた後引き上げ、40℃以下で乾燥させ、本発明のデンタルフロスとする。
【0025】上記のようにして得られた本発明のデンタルフロス1を、図1に示すように、巻取りリール2に巻き取ってボックス5内に収容し、完成品としての歯間清掃具とした。この歯間清掃具に用いたデンタルフロス1の酵素活性を測定したところ、約20単位/cmであり、十分な歯垢とう蝕の抑制効果を上げ得ることが確認された。
【0026】(実施例−2)この実施例−2は、前記第2の実施の形態(図2)に対応するもので、モノフルオロリン酸ナトリウムをフッ素イオン濃度として1mg/mlとなるように水に溶解させた後、1〜3%の水溶性高分子を溶解させた。この水溶液に、デキストナラーゼを1,000単位/mlとなるように攪拌して分散させる。そして、この液中に90テックスの巻縮加工した繊維束からなるフロスを通して液を付着、含浸させた後引き上げ、40℃以下で乾燥させ、本発明のデンタルフロスとする。
【0027】上記のようにして得られた本発明のデンタルフロス1を、図2に示すように、把持部6の先端の糸張部7,7間に張設してインサート成形によって一体成形し、完成品としての歯間清掃具とした。この歯間清掃具に用いたデンタルフロス1の酵素力価を測定したところ、1個当たり約40単位/個、フッ素イオン濃度は約0.05mg/個となり、実施例−1に比べてさらに高い歯垢とう蝕の抑制効果を上げ得ることが確認された。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載のデンタルフロスによれば、デキストナラーゼ酵素をフロスに付着、含浸させたので、含浸されているデキストナラーゼ酵素が歯間部の隣接歯面に付着して歯垢を抑制し、う蝕の発生を防止することができる。
【0029】また、請求項2記載のデンタルフロスによれば、デキストナラーゼ酵素に加え、フッ化物塩も付着、含浸させたので、デキストナラーゼの有する歯垢抑制作用と、フッ化物塩の有する耐酸性および再石灰化作用の相乗作用により、さらに高いう蝕予防効果を発揮することができる。
【出願人】 【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
【出願日】 平成12年5月8日(2000.5.8)
【代理人】 【識別番号】100097021
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 紘一 (外1名)
【公開番号】 特開2001−314427(P2001−314427A)
【公開日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願番号】 特願2000−134472(P2000−134472)