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【発明の名称】 ワックススパチュラー装置
【発明者】 【氏名】臼井 正樹

【要約】 【課題】歯科補綴の分野及び鋳造による金属細工の分野において、精密鋳造用のワックス模型の成形と調製に使用される電熱型のワックススパチュラーであって、特に、ワックスの成形のためのへら部の加熱温度を使用中に即時切替えできるワックススパチュラー装置を提供する。

【解決手段】ワックススパチュラー装置は、握持部の先側に電熱体及び温度センサーを内装した加熱部と該加熱部に装着されるワックス成形用のへら部とを具備したスパチュラー本体と、該発熱部の温度センサーからの温度信号により該へら部の温度制御を行う温度制御装置と、から成るものであって、上記温度制御装置が、別個に複数水準の温度に設定の可能な温度設定手段と、該温度設定手段による設定温度を切り換える設定温度選択手段と、を備えて、該温度設定手段が、握持部の先側に指操作可能に配置して温度設定スイッチであって、ワックス作業中に指先でスイッチ操作することにより、上記へら部の温度を即時に変更調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 握持部の先側に電熱体及び温度センサーを内装した加熱部と該加熱部に装着されるワックス成形用のへら部とを具備したスパチュラー本体と、該発熱部の温度センサーからの温度信号により電熱体に電力を供給して該へら部の温度制御を行う温度制御装置と、から成るワックススパチュラー装置において、上記温度制御装置が、別個に複数水準の温度に設定の可能な温度設定手段と、該温度設定手段による設定温度水準を切り換える設定温度選択手段と、を備え、該設定温度選択手段の選択操作により、上記へら部の温度を複数水準温度に即時切換え可能とし、上記の温度設定手段が、温度制御装置に設定温度を設定させるための温度設定スイッチを含み、該温度設定スイッチが、スパチュラー本体の握持部に指先操作可能に固定されたことを特徴とするワックススパチュラー装置。
【請求項2】 温度設定スイッチには、設定温度を昇温する昇温スイッチと設定温度を降温する降温スイッチとを含むことを特徴とする請求項1に記載のワックススパチュラー装置。
【請求項3】 設定温度選択手段が、温度制御装置の操作面に選択スイッチを含み、選択スイッチの操作によって上記設定温度水準を即時切り換えるようにした請求項1記載のワックススパチュラー装置。
【請求項4】 上記加熱部が、握持部に一端が固定されて先端外面に別体のへら部の受口が着脱可能に嵌合される金属套管と、該套管の先端内側に嵌挿されて複数の細孔を有するセラミック絶縁体とを含み、セラミック絶縁体の何れか一の細孔に電熱線を挿通固定し、他の細孔に温度センサーを挿通固定して成り、上記の電熱線の導線及びセンサーの導線を、握持部内部に挿通して、温度制御装置に接続するようにした請求項1ないし3のいずれかに記載のワックススパチュラー装置。
【請求項5】 上記線条の温度センサーが熱電対であり、その測温点が、上記一の細孔内の電熱線の近傍でセラミック絶縁体内の位置に配置された請求項4記載のワックススパチュラー装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科補綴の分野及び精密鋳造による金属細工の分野において、精密鋳造用のワックス模型の成形と調製に使用される電熱型のワックススパチュラーであって、特に、ワックスの成形のためのへら部の加熱温度を使用中に即時調節できるワックススパチュラー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科用のワックススパチュラーは、歯科用合金材料から歯冠部や義歯床をロストワックス法などの精密鋳造法により同時に形成する工程において、ワックスで義歯床や歯冠部等の鋳造用模型を成形したり、調整したりするのに使用されるワックス成形用の治具である。ワックススパチュラーは、金属細工品の遠心鋳造のためのワックス模型の成形にも、しばしば使用されている。
【0003】ワックススパチュラーによるワックス模型の成形段階には、原料ワックスに加熱したへら部を差し入れて溶融し一定量を切り取って後所定の基台に盛り付ける操作があり、盛り付けたワックスを軟化させて部分的に削除したり、移動させたり、これに付け加えたりして所要の形状に作り上げる操作がある。さらに、成形したワックスの表面を平滑にしたり、あるいは表面の微細な模様を刻む操作があり、これらの操作ごとにへら部に最適な温度があって、ワックスの溶融温度から軟化温度までの温度範囲を微妙に変更調節する必要がある。
【0004】電熱型ワックススパチュラーは公知であるが、温度制御には必ずしも十分に満足できるものではなかった。また、ワックススパチュラーはこれらの操作毎に適した形状のへら部を備えたものに取り替える必要があるが、ワックススパチュラーの交換によって温度調節のやり直しが困難であった。
【0005】従来の電熱型ワックススパチュラーとして、金属導電性のへら部には、へら部を幅方向に二分する絶縁ギャップを形成し、そのへら部先端のギャップ間を発熱抵抗体で短絡したへら部に通電して、抵抗体を発熱させる方式のものが知られている(例えば、特開平7−15006公報)。この方式のものは、発熱部がスパチュラー先端に設けた短絡部であるので、発熱応答が早い利点があるが、他方では、正確な温度検出が困難で、使用の都度、電流なり通電時間なりを手動調整し、ワックス成形に適当な温度に大体合わせていた。
【0006】改善された電熱型スパチュラーは、本出願人による特開平10−108872号において開示しており、これは、握持用軸の先端部にへら状、ナイフ状、槍状、針状などの形状の金属製のへら部を設け、へら部を固定する握持部の先側に小さな発熱用の電熱体と温度検出用のセンサーとをセラミックス成形体を介して固定し、2水準以上の設定温度に温度制御された電熱体から伝熱によりへら部を所望の温度に加熱して、この加熱制御されたへら部を用いてワックス成形するものである。
【0007】このスパチュラー装置は、センサーでへら部温度を測定しながら電熱体への供給電力を制御して、へら部の加熱温度を少なくとも2水準以上に設定可能とする温度制御装置と、温度を設定する別体の温度選択手段、例えば、フットスイッチ又はハンドスイッチを備えていた。
【0008】この従来の装置は、温度選択手段により多段的に温度設定をすることにより、ワックス作業を容易にすることができる利点があった。2つ以上の温度水準を設定できることは、上記のようにスパチュラー操作ごとにへら部に最適な温度に調整できる利点がある。例えば、へら部をワックスの溶融温度以上の高温に設定して、ワックス塊から、順次、少量のワックスを掬い取り、対象のワックス模型に盛り付ける作業に利用したり、他方では、ワックスの溶融温度以下でその軟化温度より高い低温に設定して、ワックス模型の表面を精密に造形仕上げを行なうように利用されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、従来のものは、へら部の温度設定のための操作を、フットスイッチやハンドスイッチを利用するものであった。上記のワックスアップ作業では、設定温度を変更する必要があり、その都度、これらのフットスイッチやハンドスイッチを操作していたのでは、温度設定の対応が遅くなり、必ずしもワックスアップ作業能率には充分でないところがあり、使い勝手には不満があった。さらに、技工士の作業環境は、フットスイッチが多用されるので、他の機械との誤操作の惧れもあった。
【0010】さらに、義歯用のワックス原型作業には、コーンテクニックと称する技術が利用されているが、これは、前歯の成形や臼歯の咬頭部の成形の際に、溶融したワックスに息を微妙に吹きかけて冷却しながら固化させて、角のように立ちあがらせる技術である。このための操作には、従来のバーナ式のスパチュラーが、使用中に自然に冷却されるので、適しているが、電熱式のスパチュラーでは、意図的に温度を低下させるために、作業者が、その作業中に、手や足を動かして、装置のパネルや上記のフットスイッチにより電熱線の供給電力を切るほかなく、微妙な作業しているときだけに、この動作は煩わしかった。
【0011】本発明は、上記従来の課題に対応すべく、ワックス成形操作に必要な微妙なへら部温度の調節と共に同時に冷却昇温を迅速に、正確に且つ簡単な動作で実施できるワックススパチュラー装置を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、へら部の温度の設定とそのための電熱体への電力の制御を、スパチュラーを握持している手の指先だけでの操作により実現して、上記のような手や足動作による操作の煩わしさを解消しようとするものである。即ち、スパチュラー本体の握持部に温度設定手段の温度設定スイッチを配置し、設定温度の昇温又は下降を、指先で上記のスイッチ操作で行なうのである。
【0013】本発明のスパチュラー装置は、スパチュラー本体に、握持部の先側に電熱体及び温度センサーを内装した加熱部と該加熱部に装着されるワックス成形用のへら部とを具備しており、温度制御装置が、発熱部の温度センサーからの温度信号により電熱体に制御電力を供給制御してへら部の温度制御を行うものである。そして、上記温度制御装置は、別個に複数水準の温度に切り替え可能な設定温度選択手段と、選択された温度水準においてへら部温度を設定の可能な温度設定手段と、を備えている。該温度設定手段は、上記温度設定スイッチを含んでおり、スイッチ操作により、上記へら部の設定温度を上昇又は下降させて設定し直し、温度制御装置は、新たに設定された温度にへら部の加熱又は放冷して、迅速に調節する。本発明においては、温度設定スイッチが、スパチュラー本体の握持部に指先操作可能に固定されており、これにより、ワックス作業中に簡単に即座に操作して、へら部の温度を変更することができる。
【0014】そして、設定温度選択手段は、2水準ないし3水準以上の温度水準の何れかを選択するのであるが、設定温度選択手段には、温度制御装置に選択スイッチを設けるのがよい。これにより、選択スイッチで設定温度の切替え操作を行い、へら部温度をある水準温度から他の水準温度へ即時に切替えるのを実現し、さらに、上記の握持部に固定した温度設定スイッチによりその選択されている水準温度での設定温度を設定し直して、へら部の温度を調整するのである。これにより、術者は、スイッチの切り換え操作だけでへら部を所要範囲の温度調整ができ、作業能率が上がるのである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のワックススパチュラー装置は、基本的には、スパチュラー本体と温度制御装置とから成っており、ワックススパチュラー本体は、握持部と、該握持部の先側に電熱体と温度検出用センサーとを内装した加熱部と、該加熱部に着脱可能に装着されるワックス成形用のへら部とから成っている。
【0016】先ず、ワックススパチュラー本体については、加熱部は、先端が突出するように握持部に固定された金属套管と、該套管の先端内側に嵌挿されたセラミック絶縁体とから成り、セラミック絶縁体は、電熱体と温度センサとを支持するために、貫通した複数の細孔を有し、何れかの細孔には、電熱体を、好ましくは電熱線を挿通し、他の細孔には線条の温度センサーを挿通して構成するのがよい。電熱線のリード線及び温度センサーのリード線は、金属套管内を通してワックススパチュラー本体内を後部側に挿通し、後述のように、温度制御装置に接続する。
【0017】セラミック絶縁体は、熱伝導度が高い電気絶縁性のセラミック、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ等の成形体が使用される。好ましくは、予めセラミック絶縁体を柱状に、特に、円柱状に、成形され、上記貫通細孔が、長手方向に平行に開設されている。セラミック絶縁体は、金属套管の先端の内部に内挿固定されている。
【0018】電熱体については、ワックススパチュラーとして昇温時の発熱量は、10〜15W程度でよく、また、通常、ワックスの溶融温度が150℃程度であるので、発熱温度は200℃以下とされるので、従って、ニクロム線その他の線状ないしリボン状の抵抗線で良い。
【0019】温度センサーは、線条の熱電対、例えば、アルメル−クロメル熱電対(K熱電対)が使用でき、白金抵抗線を利用することもできる。
【0020】加熱部の金属套管先端にはへら部が着脱可能に取着されるが、このへら部は、金属製であって、筒状の受口と該受口の先側に一体に形成した所望形状のワックス成形部とを有している。筒状の受口を、上記のスパチュラー本体の先端の金属套管に差し込んで、へら部をスパチュラー本体に接続する。そして、へら部は、ワックス成形部の形状や作業に合わせて、針状、棒状、鏝状、へら状、ナイフ状など種々のものが準備され、これらのへら部は、ワックス作業に際して、へら部の受口を金属套管に抜き差しして交換することができる。
【0021】握持部は、術者の手で握持して操作するのに容易な程度の外径と長さを備えておれば、棒状、軸状ないしはパイプ状何れでもよく、好ましくは、断熱性の点からプラスチックないしゴムにより形成される。握持部には、上述の如く、先端に突出するように先端に加熱部を備えた金属套管が固定されており、さらに、後述の如く、握持部の先端側には、温度設定手段に使用する温度設定スイッチが指先操作可能に配置される。
【0022】さらに、握持部は、加熱部の金属套管からの電熱線の導線と温度センサーの導線、及び温度設定用スイッチ用導線が、握持部内部を挿通して、その後端部で、コードに接続されて、温度制御装置に接続される。
【0023】温度制御装置は、加熱部の温度を予め又は操作中に設定し、電熱体に電力供給して加熱部を加熱すると共に、上記温度センサーからの検出温度信号により電力を調節して上記発熱体の発熱温度を設定温度に制御するためのものである。
【0024】温度制御装置は、加熱部の温度を複数温度水準ごとに設定するための温度設定手段と、該温度設定手段からの設定温度信号を切り換える設定温度選択手段とを含み、さらに、該選択手段からの選択温度データと上記温度センサーからの実測温度データとを対比して比較信号を出力する比較手段と、該比較手段により上記電熱線に供給する電力を制御する電力制御部と、から成るものが利用される。
【0025】この装置は、スパチュラー先端(へら部)温度を少なくとも2水準、好ましくは、3水準ないし4水準に設定することができる。設定温度選択手段は、いずれかの温度水準を選択し、温度制御装置が、選定した温度水準の設定された温度にへら部温度を調整する。こうして、ワックス操作に通常必要な温度のいくつかの水準に区分して、随時、設定温度選択手段を操作することにより、その水準の設定温度を温度センサにより実測されたへら部温度と比較して、へら部温度をその水準の温度に変更することができる。
【0026】温度設定手段は、上記の設定温度選択手段によって選択された温度水準における設定温度を再設定するもので、温度設定手段により設定温度が変更されて、再設定されるたびに、実測されたへら部温度と比較して、その再設定された設定温度に達するように温度制御され、へら部温度は、設定された任意の温度に制御することができる。
【0027】このような温度制御装置は、アナログ回路を利用するもの、デジタル回路を利用するもの、マイクロコンピュータを利用して数値制御の可能なものなど種々のものが構成できる。
【0028】マイクロコンピュータを利用した制御装置は、比較手段としマイクロコンピュータを利用して、温度設定手段としては、マイクロコンピュータに設定温度の数値入力できるデジタル入力装置を使用し、選択された設定温度データは、メモリーに記憶させ、温度センサーから実測温度出力信号は、A/D変換後にマイクロコンピュータに入力して随時設定温度データと対比し、その比較出力信号でもって電力制御部に出力し、電力制御部により電熱線に供給する電力を制御して、加熱部の温度を、選択した設定温度の近傍に保持するのである。
【0029】コンピュータ制御では、複数の温度水準がメモリーに設定記録され、各水準ごとに設定温度が予め適当に決めてある。設定温度選択手段がいずれかの温度水準を選択すると、コンピュータの中央処理部(CPU)では、選択された水準の設定温度を参照して、実測温度のデータと比較して、比較データから、電力制御部を制御する。設定温度選択手段は、通常は温度制御装置の操作面の選択スイッチ(パネルスイッチ)が利用される。
【0030】温度設定手段は、温度設定スイッチを含み、選択された各温度水準の設定温度を温度設定スイッチで再設定するごとに、設定温度のデータを、コンピューターに入力されてメモリーに記憶される。同時に、上記のように参照されて、温度センサーから実測温度電圧出力のデータと比較して、加熱部への電力制御がなされ、即座に、加熱部、即ちへら部の温度を設定温度に近づけることができる。これによって、術者は、微妙な温度制御を自在に行なうことができる。従って、術者は、設定温度選択手段により異なる温度水準を選択すれば、加熱部を、その水準の設定温度に変更することができ、さらに、温度設定手段によりその水準の設定温度を任意に随時設定することもでき、これによって、その水準の設定温度を微調整することもできる。このようにして、ワックス操作に必要な又は最適の微妙な温度に、逐次変更することができるのである。温度設定手段による設定温度は連続的に設定可能としてもよく、或いは、1℃単位でもよく、3℃〜5℃単位で設定するようにすることもできる。
【0031】本発明においては、温度設定手段は、温度設定スイッチを握持部に指先で操作可能に配置される。指先で温度設定スイッチを操作により、温度設定手段の温度設定データを変更して、逐次設定温度として記録される。これにより、術者は、握持部を握持したままでその手の指先で、例えば、人差し指で、温度設定スイッチを切り替え操作して、上記の如く、微調整することができる。
【0032】本発明において、複数水準の温度に設定することができるが、例として、2水準とする場合、2水準温度には、例えば、スパチュラー使用時におけるワックス盛りつけ時のへら部の高い水準の温度(通常は、ワックス融点より僅かに高い温度)と、ワックス表面成形時の低い水準の温度(通常は、ワックス融点より低い軟化温度)に定めることができる。これにより、使用中に、設定温度選択手段の操作によりワックス成形に都合のよい温度調整をすることができる。さらに、温度設定手段を利用して、高温水準の設定温度を逐次細かく設定し直すことにより、微妙な温度に調整することができる。
【0033】さらに、ワックス原型作業に使用されるコーンテクニックは、本発明のスパチュラー装置によって、極めて簡単に実現することができる。立ちあがらせたワックスホーンに接触成型するへら部は、ひとさし指による温度設定スイッチの操作だけで、簡単に降温させて冷やすことができ、この技術には本発明の装置が適している。
【0034】
【実施例】図4は、本発明の実施例に係るワックススパチュラー装置の外観図であるが、この装置は、握持部1の先端部13の先側に固定した加熱部12の外周にへら部3の受口30が外嵌めされたスパチュラー本体10と、温度制御装置70とから構成してある。この例は、温度制御装置70には、2個のスパチュラー本体10a、10bが接続されて、利用可能にされている。
【0035】図1(A)は、スパチュラー本体10の外観であるが、本体の握持部1が、軸状であり、その先端には、金属套管2がほぼ同軸状に突出し、後端側には、リード専用のコード15が接続され、握持部1の先端側に、温度設定スイッチ8の押圧操作部80(810、820、830)が配列されている。この配列位置は、握持した手によってその握持のまま、温度設定スイッチ8の押圧操作が可能な位置である。
【0036】このようなスパチュラー本体10は、図1(C、D)に示すように、中心位置には先端20を封止し後端21開口の金属套管2が貫通配置され、加熱部12が金属套管2の先端位置に挿入されている。加熱部12には、電熱体と温度センサーとを内包した含むセラミック絶縁体4を含み、それらのリード線が、剛直な可撓性の保護チューブ44に内挿されて、保護されている。保護チューブ44は、耐熱性合成樹脂、例えばフッ素樹脂が利用できる。
【0037】金属套管2は、図1(B)に示すように、握持部1の本体11に嵌挿されて固定されており、握持部本体11は、円柱状をなして、外周には、温度設定スイッチ8が配置され、先端部に拡径部13を有する。本体11の外周は、図1(A)に示すように、管状の軟質ゴム製の保護カバー14に拡径部13より後方が覆われている。
【0038】図1(B)において、温度設定スイッチ8は、軟質可撓性の狭幅の配線基板85に、小型スイッチ88を、この例では3個装着し、印刷された配線により、図3に後述するスイッチ回路が構成されており、このように基板化された温度設定スイッチ8は、握持部本体11の外周の一部が平面状に形成されて成る外相平面部11cに固定されている。温度設定スイッチ8からのリード印刷線は、配線基板85の導出部851上を経て、基板接合部852において、コード15のリード線に接続されている。
【0039】握持部の本体11は、温度設定スイッチ8を含めて被せるように、上記の軟質ゴム製の保護カバー14に覆われているが、温度設定スイッチ8の各小型スイッチ(81、82、83)の直上の保護カバーの操作部80(810、820、830)を押圧することにより、小型スイッチ88を押圧して作動させることができる。保護カバーの押圧部操作部80(810、820、830)には、小型スイッチ88の機能に対応してマークを施すのが便利である。
【0040】図2(A)は、スパチュラー本体10前半部分の断面図を示すが、スパチュラー本体10の合成樹脂製の筒状の握持部1の先端には、上述のように金属套管2が突設されて加熱部12を形成するが、金属套管2は、例えば、銅、黄銅、アルミニウム、又はステンレス鋼の管から形成され、套管2の先端内部には、円柱状のセラミックスの絶縁体4が嵌挿されている。
【0041】このセラミック絶縁体4には両端部に貫通する4つの細孔41・・・が形成されている。セラミック絶縁体4は、アルミナ焼結体で形成され、このセラミック絶縁体4の4つの細孔41・・・のなかの2つの細孔41、41に電熱線5としての螺旋コイル状のニクロム線が挿通されて、残り2つの細孔41、41には、温度センサーの熱電対6としてのアルメル−クロメル線が挿通されている。
【0042】図2(B)は、この円柱状セラミック絶縁体4の外観図を示し、図2(C)は、2つの細孔41、41の中心軸を含む平面で切断した縦断面図とを示す。電熱線5は、握持部1側から絶縁体4の2つの細孔41、41に挿通されて絶縁体4の先端の端面40で折り返されている。他の2つの細孔41、41に挿通された上記熱電対6も、同様に、絶縁体4の先端の端部40で折り返えされている。この例では、熱電対の接合点60(即ち、測温点)が、細孔41内のほぼ中央部に位置するように、配置されている。
【0043】加熱部12の金属製の套管2には、へら部3が接続されるが、へら部3は、套管2を受け入れて係合する筒状の受口30とへら状のその他の形状のワックス形成部32とから、金属、例えば、黄銅から一体に形成されている。受口30には、縦方向にスロット31が切欠き形成されて、受口30は套管2の外面に対し拡張可能で弾性付勢をするようにして挿入と係合とを確保している。
【0044】そして、電熱線5及び熱電対6の各導線51、61は、握持部1の中空部に挿通されて握持部1の後端部よりコード15内を通り、温度制御装置7に接続されている(図2(A)と図4)。
【0045】図4は、温度制御装置7のコンピュータ温度制御方式のブロックダイヤグラムを示すが、温度制御装置は、2本のスパチュラー本体を制御する例であり、各スパチュラー本体10a、10bの加熱部12の電熱体5は、直流電源V1と電流制御装置77(この例は、トランジスター77)とに直列接続され、CPUが電流制御装置77を制御する。
【0046】温度制御装置7は、図4に示すように、その操作面に、設定温度選択手段のための選択スイッチ74と、設定温度を表示する制定温度表示部75を含み、それぞれ、CPUと接続されている。温度設定手段は、複数水準の設定温度を設定することができるが、この実施例は、加熱部12の温度制御を4水準で行なう温度制御装置を示している。図4において、設定温度選択手段のための選択スイッチ74は、温度水準を切りかえるためであり、一方のスパチュラー本体10aについて、各水準に対応する4つの水準選択スイッチ741a、742a、743a、744aを設けている。同様にして、他方のスパチュラー本体10bについて、各水準に対応する水準選択スイッチ741a、742a、743a、744aを設けている。
【0047】さらに、各スパチュラー本体10a、10bについて、設定温度表示部75a、75bを配置して、設定温度を表示する。設定温度は、温度を直接表示してもよく、常温と最高温度とを100等分して相対温度で表示してもよい。
【0048】加熱部12の温度センサー6(この例は、熱電対)が増幅器76を介して、中央制御部CPU71に接続され、握持部1に固定された温度設定スイッチ8が、CPU内部の温度設定部に接続されるが、温度センサー6の増幅器76の出力側と温度設定スイッチ8とは、マルチプレクサ72とAD変換器73とを介して、CPU71に接続されている。
【0049】温度設定スイッチ8の回路例を図3に示しているが、温度設定スイッチ8の各小型スイッチ81、82、83は、一端が接地線にアースされ、小型スイッチの各他端は、抵抗R1、R2を介して接続されて、さらに接地されたR3と電源V2に接続された抵抗R4との接合点に接続されて、マルチプレクサ72を介してA/D変換器に接続される。小型スイッチ81、82、83いずれかを閉じれば、V2が、R4と他の抵抗のスイッチに依存した組み合わせ抵抗とにより分割された電位が、A/D変換器に入力され、デジタル化した信号が、CPU に入力され、閉じたスイッチが識別される。この回路は、リード線が2本でよいので、この例のようにスパチュラー本体内に内装すへき細長の基板上に抵抗とともにスイッチを搭載して組み込むのに便利である。この例では、小型スイッチ81は、昇温用に、小型スイッチ82は、電熱遮断用に、小型スイッチ83は、降温用に設定されており、従って、小型スイッチ81又は小型スイッチ83の操作により、今よりも高温又は低温の温度に温度設定をしなおすことができる。
【0050】1水準から4水準のうちいずれかの選択スイッチ74を入れると、その水準の設定温度に到達するように、CPUが、電流制御装置77を制御して(電流制御用のトランジスタ77を導通させて)加熱部12の電熱体5を通電して昇温する。加熱部12内の電熱体5近傍に配置した温度センサー6からの出力(サーモカップルの起電力)が、増幅器76で増幅され、デジタル化されて、CPUに入力されて、温度信号に変換され、次いで、CPU内で、予め設定された温度のうちの選択した特定の水準の温度の値と、比較し、比較信号により電流制御装置77を制御して、設定数値温度近傍に保持する。選択スイッチ74をを別の設定温度の選択スイッチを押せば、加熱部12は、その選択スイッチの制定温度に調整される。
【0051】ある水準の設定温度を設定しなおすには、その水準の選択スイッチを保持したままで、スパチュラー本体の握持部に設けた温度設定スイッチ8を昇温スイッチ81又は降温スイッチ83を押すことにより、設定温度を上昇又は下降させ、その設定温度は、上記の表示部75に表示させる。表示部の温度表示を見ながら、術者は、温度設定スイッチ8の昇温用スイッチ81又は高温用スイッチ83を押圧操作して、所望の温度に昇温又は降温するように設定し、このように設定温度を設定しなおせば、CPUは、加熱部12の実際の温度を温度センサー6によって実測した温度と比較して、直ちに変更された設定温度に向うように電流制御装置77を制御して温度制御を行なう。設定温度の調整可能な間隔は1℃単位とすることも、また、3℃ないし5℃の間隔で行なうように適宜調整することが好ましい。
【0052】温度設定スイッチ8の操作は、術者がワックス作業中においても、スパチュラーを握っている手の指先で温度設定スイッチ8の昇温用スイッチ81又は高温用スイッチ83の操作だけで簡単に行なうことができ、設定完了後、加熱部12の実際の温度は、直ちにその設定温度に保持されるので、スパチュラーの作業をほとんど休めることなく継続し、前述のような微妙な操作を続けながら、次の操作に好適な温度に速やかに微調整することができる。
【0053】温度水準の現状がどの水準にあるかを表示するために、各選択スイッには、表示ランプを備えるものがよい。
【0054】
【発明の効果】本発明は、ワックススパチュラー本体のへら部の設定加熱温度を2以上の水準温度に即時変更可能としたので、ワックス成形時の温度調整が容易で、ワックス成形各工程で必要な複数水準温度に即時に変更することが容易となり、特に、各温度水準における設定温度を温度設定手段により自由に設定することができ。また使用時温度と不使用時温度の変更と保持調整が容易となり、ワックス成形作業の効率化を図ることができる。
【0055】本発明は、設定温度の設定においては、スパチュラー本体の握持部に温度設定スイッチを配置したので、緻密なワックス成形作業中での即時切り換えが容易となり、作業の成形効率を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】390038999
【氏名又は名称】株式会社デンケン
【出願日】 平成12年5月12日(2000.5.12)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2001−314421(P2001−314421A)
【公開日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願番号】 特願2000−140082(P2000−140082)