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【発明の名称】 強靭な義歯床および製造法
【発明者】 【氏名】玄 丞烋

【氏名】堤 定美

【氏名】喜多 敏夫

【要約】 【課題】

【解決手段】射出成形用ポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする固体状の重合体にポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、及びフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合し、射出成型方法によって型枠に製造される義歯床。その特性は引張り破断強度が75.0MPa以上、アイゾット衝撃強度が1.62kg・cm/cm以上、抗折たわみ(5.0kgf)が3.00mm以下、さらに、PMMAからの残留モノマー溶出量が3.00%以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリメチルアクリレートを主成分とする固体状の重合体にポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合し、射出成型方法によって型枠に製造されることを特徴とする強靭な義歯床。
【請求項2】重合体がシンジオタクティックとアイソタクティックポリメチルアクリレートとのブレンドからなり、ステレオコンプレックスが形成されていることを特徴とする請求項1に記載されている義歯床。
【請求項3】重合体の重量平均分子量が10万〜30万の範囲であることを特徴とする請求項1に記載されている義歯床。
【請求項4】ポリアクリレートゴム系共重合体が、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルと架橋性ビニルモノマーを共重合させた共重合体である請求項1に記載された義歯床。
【請求項5】重合体に赤色染色繊維が混入されていることを特徴とする請求項1に記載されている義歯床。
【請求項6】 請求項1から5に記載されたポリメチルアクリレートを重合してペレット化する工程と、ペレットを精製する工程と、ペレットにポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合する工程と、任意に赤色染色繊維を混入する工程と、得られた混合物を60℃〜120℃の温度範囲で4時間以上乾燥して水分率を2%以下にする工程および乾燥したペレットを220℃から270℃の温度範囲で義歯床型枠に射出成形する工程よりなる義歯床を製造する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は射出成形用ポリメチルメタクリレート(以下PMMAと略)義歯床とその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、臨床で広く使用されている義歯床として、加熱重合タイプのPMMAと、射出成形タイプのポリサルホン(以下PSと略)やポリカーボネート(以下PCと略)が知られている。加熱重合タイプのPMMAは、PMMAの粉末の存在下でモノマーを義歯床の型であるフラスコの中で加熱重合して製造される。このため、重合に伴う収縮率が高く、耐衝撃性等の力学的特性に劣るうえ、特に残留モノマーが多いため、使用時に残留モノマーの溶出によるアレルギー反応が惹起されることが指摘されており、生体に対する安全性に問題が残っている。そのため、これに替わる材料としてPSやPCが射出成形用義歯床として使用されるようになってきた。ところが、PSは耐衝撃性が劣り、またPCについても、残留モノマーであるビスフェノールが、最近環境ホルモンとしての毒性が大きく取り上げられている。さらに、PMMA補修部材との接着性が悪いため、その改良が求められているが困難な状態にある。
【0003】歯科領域では、生体にとってより安全で、しかも耐衝撃性等の力学的特性に優れ、残留モノマーの少ない義歯床が切望されてきた。しかし、これまでこのような条件を満たすPMMA義歯床は開発されなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ビスフェノールや残留モノマーなどの口中への溶出が少なく、耐衝撃性等の力学的特性に優れ、素材としてPMMAを使用した強靭な義歯床及びその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、PMMAを主成分とする固体状の重合体にポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合し、射出成型方法によって型枠に製造されることを特徴とする強靭な義歯床を提供する。
【0006】本願の義歯床において、強靭ということは引張り破断強度が75.0MPa以上、アイゾット衝撃強度が1.62kg・cm/cm以上、抗折たわみ(5.0kgf)が3.00mm以下である。さらに本発明の義歯床は、PMMAからの残留モノマー溶出量が3.00%以下の義歯床である。
【0007】本発明で用いるPMMAは一般に工業用として用いられているシンジオタクチックPMMAのみでもよいが、更に力学的性質や熱的性質を向上させるためアイソタクチックPMMAとのブレンドを使用することができる。
【0008】このシンジオタクチックとアイソタクチックスPMMAのタクティシティーは、各々高ければ高いほど良いが60%以上、さらに80%以上が好ましく、また、ブレンドの際、そのブレンド比は任意に変えられるが、40〜60%あるいは60〜40%の範囲がステレオコンプレックス形成上好ましい。
【0009】本発明で用いるPMMAは、シンジオタクチックおよびアイソタクチックPMMAとも、それらの重量平均分子量が10万以上30万以下であることが好ましく、特に12万以上25万以下が好ましい。重量平均分子量が10万以下のPMMAでは、射出成形性に優れるものの、成形物の力学的特性に劣るため、10万以上のPMMAが好ましい。
【0010】力学的特性の見地からすると重量平均分子量の高いものが望まれるものの、一方、重量平均分子量が30万以上になると、溶融粘度が高くなるため、射出成形性に劣り、均一な義歯床が得られなくなる。
【0011】本願発明においては強靭性を向上させるため、PMMAにポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合する。これは、シンジオタクチックPMMAのみでなく、アイソタクチックPMMAとのステレオコンプレックス形成のためのブレンドにも使用できる。
【0012】ポリアクリレートゴム系共重合体はアクリル酸アルキルエステルと架橋性ビニルモノマーの共重合体よりなる。ここで、アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどが挙げられる。このうち、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが、そのホモポリマーのTgが−22、−54、−85℃と低く、エラスト性が高いので好ましい。
【0013】架橋性ビニルモノマーとしては、2−クロロエチルビニルエーテル、アクリロニトリル、グリシジルメタアクリレート、アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、このモノマー5〜20%を前記アクリル酸エステルと共重合させる。
【0014】メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体におけるアクリル酸アルキルは、前記アクリル酸アルキルエステルにおいて記載したアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルのいずれもが使用できる。
【0015】フッ素系ゴムとしては、VDF−HFP,VDF−CTFE,PTFE−P,VDF−PFVE,TFE−PFVE,FVMQ,VNF(いずれもプラスチック事典p509朝倉書店参照)などが挙げられる。
【0016】このPMMAとポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーとの混合比は、広い範囲で任意に変えられるが、PMMAに対して2〜30重量%が好ましく、特に5〜15%がより好ましい。混合比が2重量%以下であると強靭性の向上が十分ではなく、30重量%を超えるとPMMAの性質を発揮する上で好ましくない。
【0017】本発明で用いる射出成形用PMMA義歯床は、赤色染色した繊維を混入することにより、口腔粘膜の毛細血管に類似の色調を附与することができる。この赤色染色繊維は耐熱性のある天然繊維、化学繊維または合成繊維が用いられる。繊維は220℃から270℃の射出成型温度に安定で、染色し易く、かつPMMAと容易に接着するものが良い。具体的には、綿、レーヨン、アクリロニトリル、ナイロン66、ポリイミド、PVAなどが挙げられる。この繊維は射出成形前のPMMAペレット成形時に混入し、ペレット中に一定量混入させることもできるが、PMMAペレット成形後にペレット表面に付着させるだけでも充分である。赤色繊維を付着させたPMMAペレットを射出成形することにより、得られる義歯床は、赤色繊維が成形物全般に均一に分散し、あたかも口腔粘膜の毛細血管類似の形状、色調となる。
【0018】この赤色繊維のPMMAペレットに対する混入割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。混入割合が0.01重量%以下であると赤色発色の程度が十分でなく、また10重量%以上であるとPMMAに悪影響をもたらす。また、用いる赤色繊維の直径は1〜30μmが好ましく、長さは0.5〜3mmが好ましく、この形状、サイズの繊維では、射出成形後の義歯床にその繊維形状を保つとともに分散性が良く、毛細血管のある口腔粘膜の外観を呈することができる。
【0019】また、義歯床を製造する方法は、■PMMAを重合してペレット化する工程と、■ペレットを精製する工程と、■ペレットにポリアクリレートゴム系共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸アルキル/スチレンの3元共重合体、およびフッ素系ゴムからなる群より選ばれた極性を有するエラストマーを混合する工程と、■任意に赤色染色繊維を混入する工程と、■得られた混合物を60℃〜120℃の温度範囲で4時間以上乾燥して水分率を2%以下にする工程と、■乾燥したペレットを220℃から270℃の温度範囲で義歯床型枠に射出成形する工程よりなる。
【0020】PMMAの製造方法は通常の方法、例えば特開平5−139925に記載された方法が用いられる。通常の方法に従って、■〜■に記載された工程を経るが、■の射出成型においては、270℃以上に射出温度をあげてPMMAの変質を避けねばならない。
【0021】
【作用】本発明で用いる射出成形用PMMA義歯床は、無機系抗菌剤などを混入させることにより、義歯床に抗菌性を附与することができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
実施例1重量平均分子量約22万のシンジオタクチックPMMAと重量平均分子量約28万のアイソタクチックPMMAペレットを50:50重量%の混合比で射出成形機により、石膏型に充填し成形物を得た。
【0023】実施例2重量平均分子量約12万のシンジオタクチックPMMAにメタクリル酸n−ブチルアクリレート共重合体を10重量%ブレンドしたペレットを射出成形機により、石膏型に充填し成形物を得た。
【0024】実施例3重量平均分子量約12万のシンジオタクチックPMMAペレットに赤色染色したセルロース系繊維を0.2重量%附着させた後、射出成形機により石膏型に充填し、成形物を得た。
【0025】比較例1メチルメタクリレート50重量%と重量平均分子量約46万のPMMA50重量%の粉末を混合し、餅状レジンを石膏型に充填した後、加熱重合することにより、成形物を得た。
【0026】実施例1〜3.および比較例1の力学的特性をASTMに準拠して測定した。また、射出成形機により得られた成形物からの残留モノマー溶出試験は、50℃のメタノール中にて3日間、撹拌下で浸漬した後、重量変化により、溶出量を求めた。得られた成形物の引張り破断強度、アイゾット衝撃強度、抗折たわみ測定結果を表1に示す。加温抽出法による得られた成形物からの残留モノマー溶出結果を表2に示す。
【0027】

【0028】

【0029】
【発明の効果】以上の結果から、本発明の射出成形用PMMA義歯床は、従来の加熱重合型PMMA義歯床に比べて、力学的特性と残留モノマーの溶出量が顕著に少ないため、生体に対する安全性に優れているのみでなく成形性に優れている。また、口腔内での適合性が良く、経済性であるため、広く臨床使用することができる。
【出願人】 【識別番号】596036256
【氏名又は名称】株式会社ビーエムジー
【出願日】 平成12年3月22日(2000.3.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−258908(P2001−258908A)
【公開日】 平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願番号】 特願2000−126660(P2000−126660)