| 【発明の名称】 |
義歯アタッチメント用キーパ,その製造方法及び製造用治具 |
| 【発明者】 |
【氏名】本蔵 義信
【氏名】荒井 一生
【氏名】青山 均
【氏名】長尾 知彦
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| 【要約】 |
【課題】義歯アタッチメントによる磁気吸引力を低下させることなく耐食性を向上させることができる義歯アタッチメント用キーパ,その製造方法及び製造治具を提供すること。
【解決手段】磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパ1において,キーパ1は,軟磁性材料からなる本体部11と,少なくともその側面にNi下地皮膜を設けることなく形成された金皮膜2とを有してなり,金皮膜2は,PVD処理により形成されていると共に厚みが4μm以下であり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していない。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパにおいて,上記キーパは,軟磁性材料からなる本体部と,少なくともその側面にNi下地皮膜を設けることなく形成された金皮膜とを有してなり,該金皮膜は,PVD処理により形成されていると共に厚みが4μm以下であり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していないことを特徴とする義歯アタッチメント用キーパ。 【請求項2】 請求項1において,上記PVD処理はスパッタリングであることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパ。 【請求項3】 請求項1又は2において,上記本体部の少なくともその側面にはCr拡散層が形成されており,該Cr拡散層の表面に上記金皮膜が形成されていることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパ。 【請求項4】 磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパを製造する方法において,軟磁性材料からなる本体部を準備し,次いで,該本体部に棒状のホルダー部を接合し,その後,上記本体部の表面を不活性ガスにより活性化する活性化工程を経て,その後,PVD処理を行うことにより,少なくとも上記本体部の側面に,厚みが4μm以下であり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していない金皮膜を形成することを特徴とする義歯アタッチメント用キーパの製造方法。 【請求項5】 本体部と,該本体部に接合された棒状のホルダー部とよりなる義歯アタッチメント用キーパにPVD処理を行う際の製造用治具であって,該製造用治具は,PVD処理装置に取り付けられる治具基板と,該治具基板に対して上記ホルダー部を略垂直に配置して保持するホルダー保持部とを有してなり,上記本体部を上記治具基板から離して固定できるよう構成されていることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパの製造治具。 【請求項6】 請求項5において,上記治具基板はゴム板であり,上記ホルダー保持部は上記ゴム板に形成した上記ホルダー部の径よりも小さい穴であることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパの製造治具。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【技術分野】本発明は,磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパに関する。 【0002】 【従来技術】従来,義歯アタッチメントを装着するための根面装置としては,例えば図16に示すものがある(特開平4−227253号公報)。この従来の根面装置9は,同図に示すごとく,人体の歯根部96に根面板95が埋設され,該根面板95の中にキーパ90が埋め込まれて構成されている。 【0003】一方,義歯80は,キーパ90と対向するように設けた義歯アタッチメント8と,これを包むレジン床93及びホウロウ質の人工歯94からなる。そして,上記義歯アタッチメント8は,磁石材料を内蔵しており,その磁気吸引力により上記根面装置9におけるキーパ90に吸着するよう構成されている。 【0004】また,根面装置9は,義歯アタッチメント8を吸着させやすいように,内蔵するキーパ90として軟磁性材料を用いている。また,根面板95とキーパ90とは,鋳接してある。ここで,鋳接とは,根面板95を形成するための鋳型内にキーパ90を配置し,その鋳型内に根面板用溶湯を注湯して鋳造することにより,キーパと根面板とを接合するという接合方法である。 【0005】 【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の根面装置9におけるキーパ90には,次の問題がある。即ち,従来の根面装置9は,上記のごとく鋳接により根面板95とキーパ90とを鋳接する。この場合に,キーパ90の根面板95との境界部分において酸化膜が形成され耐食性が低下するという問題が生じる場合があった。 【0006】この対策として,キーパ90の材料として,Crを30%ほど添加した合金を用い,キーパ90自身の耐食性を向上させることが提案されている。しかしながら,このキーパ90の高Cr化は,酸化膜形成の抑制には効果的である反面,その軟磁性特性を低下させる。即ち,義歯アタッチメント8の磁石材料による磁気吸引力が大幅に低下する。 【0007】一方,耐食性向上のために,キーパ90の表面に金皮膜を形成することが考えられ,その方法としては,湿式の金メッキ法があるが,実際には実施されていない。 【0008】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,義歯アタッチメントによる磁気吸引力を低下させることなく耐食性を向上させることができる義歯アタッチメント用キーパ,その製造方法及び製造治具を提供しようとするものである。 【0009】 【課題の解決手段】請求項1の発明は,磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパにおいて,上記キーパは,軟磁性材料からなる本体部と,少なくともその側面にNi下地皮膜を設けることなく形成された金皮膜とを有してなり,該金皮膜は,PVD処理により形成されていると共に厚みが4μm以下であり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していないことを特徴とする義歯アタッチメント用キーパにある。 【0010】本発明において最も注目すべきことは,上記キーパは,上記本体部の少なくとも側面に,上記特定の方法により形成した有害な成分を含有していない金皮膜を4μm以下の厚みで形成してあることである。 【0011】上記金皮膜の厚みが4μmを超える場合には,金皮膜の剥離強度が低下するという問題がある。また,コストが高くなるという問題もある。一方,金皮膜による防食効果を十分に発揮するためには,0.1μm以上とすることが好ましい。 【0012】上記有害成分としては,上記金皮膜を湿式めっき法などにより形成する場合に使用される成分がある。例えば,シアン,砒素等がある。本発明では,これらの有害物質を一切使用することなく,上記金皮膜を形成してある。そして,その金皮膜形成方法として,本発明では上記PVD処理を採用した。 【0013】上記PVD処理(physical vapor deposition)は,物理蒸着法であって,被処理材の表面に,蒸発させた被膜成分を接触させて物理的に被膜を形成する方法である。そして,被膜成分の蒸発方法に種々の方法がある。例えば,加熱による方法,電子ビームの照射による方法,レーザーの照射による方法,イオンビームの照射による方法などがある。 【0014】また,上記本体部として用いる軟磁性材料としては,例えば,30%Cr−1%Mo−Fe鋼,19%Cr−2%Mo−0.2%Ti−Fe鋼,17%Cr−2%Mo−Fe鋼等のフェライト系のステンレス鋼,純鉄,パーメンジュール等がある。 【0015】次に,本発明の作用につき説明する。本発明の義歯アタッチメント用キーパは,上記のごとくPVD処理により金皮膜を本体部の側面に形成してある。そのため,金皮膜を湿式メッキ法により形成した場合よりも,鋳接時における酸化膜形成の抑制効果を向上させることができる。 【0016】即ち,金皮膜を湿式メッキ法により形成する場合には,金皮膜の密着性を向上させるために,その下地にNiを介在させる必要がある。このNiは本体部の軟磁性材料よりも酸化しやすいため,金皮膜による耐食性向上効果を十分に得るには,Niの防食の分だけさらに金皮膜を厚めに設定する必要がある。 【0017】これに対し,本発明では,金皮膜の形成をPVD処理により行っているので,Niを含有する成分を下地として介在させることなく,直接的に本体部の側面に金皮膜を形成することができる。そのため,腐食しやすいNiを介在させる必要がないので,金皮膜の厚みを本体部の防食機能に十分な厚みだけに抑制することができる。その結果,金皮膜の厚みを4μm以下とすることができる。そして,本発明では,金皮膜の形成により,キーパへの鋳接時の酸化膜形成抑制効果を従来よりも大幅に向上させることができる。 【0018】また,本発明では,従来の湿式メッキ法などの場合に必要なシアン,砒素等の有害成分を一切使用することなく,上記PVD処理により上記金皮膜を形成してある。そのため,口腔内において使用する義歯アタッチメント用キーパの安全性を確実に保証することができる。 【0019】また,本発明では,本体部の材質としては優れた磁気的特性を有する軟磁性材料をそのまま用いることができるので,義歯アタッチメントによる磁気的吸引力の低下を防止することができる。したがって,本発明によれば,義歯アタッチメントによる磁気吸引力を低下させることな耐食性を向上させることができる義歯アタッチメント用キーパを得ることができる。 【0020】次に,請求項2の発明のように,上記PVD処理はスパッタリングであることが好ましい。ここで,スパッタリングとは,一般的にはアルゴンなどの希ガスを10-2Torr程度の真空中でグロー放電させてそのときにできるイオンを衝突物質として電解中を加速し,ターゲットに衝突させる。そして,ターゲットからはじき飛ばされた原子を基板に成膜する方法である。この場合には,通常下地となる基材との密着性が強く,広い面積にわたって均一な厚さの膜を形成することができ,かつ,不純物の混入を防止できるという効果が得られる。 【0021】また,請求項3の発明のように,上記本体部の少なくともその側面にはCr拡散層が形成されており,該Cr拡散層の表面に上記金皮膜が形成されていることが好ましい。ここで,Cr拡散層とは,上記本体部の側面の表面にCrを拡散させて形成した層であり,Crリッチな表面層をいう。この場合には,Cr拡散層の存在によって,上記本体部自体の耐食性を大きく向上させることができ,金皮膜による防食効果をさらに高めることができる。そして,この場合には,金皮膜の厚みをさらに薄くすることができる。 【0022】次に,請求項4の発明は,磁気吸引力を有する義歯アタッチメントを吸着させるためのキーパを製造する方法において,軟磁性材料からなる本体部を準備し,次いで,該本体部に棒状のホルダー部を接合し,その後,上記本体部の表面を不活性ガスにより活性化する活性化工程を経て,その後,PVD処理を行うことにより,少なくとも上記本体部の側面に,厚みが4μm以下であり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していない金皮膜を形成することを特徴とする義歯アタッチメント用キーパの製造方法にある。 【0023】本発明の製造方法において注目すべき点は,上記のごとく,本体部に上記ホルダー部を接合した後,上記活性化工程を経てから上記PVD処理を行うことにより上記金皮膜を形成することである。 【0024】上記活性化工程においては,上記本体部の表面に不活性ガスをスパッタさせることにより,その表面に付着した不純物を原子レベルで洗浄することにより純粋な面を露出させることにより活性化させる。そして,その後上記PVD処理を行う。 【0025】この製造方法によれば,PVD処理時において,上記上記本体部の側面部に形成する金皮膜を均一化することができる。そして得られたキーパは,上記のごとく,金皮膜の存在によって優れた耐食性を発揮する。 【0026】次に,請求項5の発明は,本体部と,該本体部に接合された棒状のホルダー部とよりなる義歯アタッチメント用キーパにPVD処理を行う際の製造用治具であって,該製造用治具は,PVD処理装置に取り付けられる治具基板と,該治具基板に対して上記ホルダー部を略垂直に配置して保持するホルダー保持部とを有してなり,上記本体部を上記治具基板から離して固定できるよう構成されていることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパの製造治具にある。 【0027】本発明の製造用治具を用いれば,上記キーパの本体部を製造用治具から離して空中に配置した状態を容易に作り出すことができる。それ故,この製造用治具に上記キーパを保持した状態でPVD処理を行うことにより,キーパの本体部に均一な皮膜を容易に形成することができる。 【0028】また,請求項6の発明のように,上記治具基板はゴム板であり,上記ホルダー保持部は上記ゴム板に形成した上記ホルダー部の径よりも小さい穴である構成とすることができる。この場合には,非常に容易に製造用治具を作製することができる。また,この場合には,上記ホルダー部を上記ゴム板の穴に挿入するだけで非常に容易にキーパを保持することができる。 【0029】 【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態例にかかる義歯アタッチメント用キーパ,その製造方法及び製造用治具につき,図1〜図13を用いて説明する。本例の義歯アタッチメント用キーパ1は,図1に示すごとく,磁気吸引力を有する義歯アタッチメント8(図16参照)を吸着させるためのキーパである。上記キーパ1は,軟磁性材料からなる本体部11と,少なくともその側面にNi下地皮膜を設けることなく形成された金皮膜2とを有してなる。この金皮膜2は,PVD処理により形成されていると共に厚みが2.5μmであり,かつ,その組成比中に有害な成分を含有していない。 【0030】上記キーパ1を製造するにあたっては,図2(a)に示すごとく,まず軟磁性材料からなる本体部11を準備した。本例では,19%Cr−0.2%Ti−Feステンレス鋼からなる円盤状のものを用いた。次に,図2(b)に示すごとく,本体部11に棒状のホルダー部13を接合した。ホルダー部13としては,SUS316L材料よりなる直径0.4mmの線材を用いた。また,本体部11とホルダー部13との接合はレーザ溶接により行った。 【0031】次に,本例では,図10に示すごとき一連の工程を行ってキーパ1を製品として完成させた。まず,図10に示すごとく,ステップS101〜S103において試料洗浄工程を行った。具体的には超純水での超音波洗浄(S101),アセトンでの超音波洗浄(S102),超純水での超音波洗浄(S103)をそれぞれ5分ずつ行った。 【0032】次に,ステップS104〜S105において,後述する製造治具5によりホルダー部13を保持して本体部11を製造治具5から浮かせた状態で,PVD装置にセットした。ここで上記のスパッタリングを行うスパッタ装置6について簡単に説明すると,これは,図7〜図13に示すごとく,チャンバー60と,この中に設けられた下部テーブル61と基板62とを有してなる。基板62は,モータ63に連結され回転可能に設けられている。そして上部ターンテーブルの下面620には,図7,図8に示すごとく,後述する製造用治具5をセットする。 【0033】また,図7,図13に示すごとく,上記下部テーブル61の上面610には,ターゲット20を載置するための載置台611が設けたれていると共に,その上方にアースシールド613が配置されている。さらにその上方にはシャッター64を回動可能に配置されている。 【0034】次に,本例で用いた製造用治具(チャック治具)5の構造を図4〜図6を用いて説明する。製造用治具5は,図4〜図6に示すごとく,PVD処理装置に取り付けられる治具基板51と,該治具基板51に対して上記ホルダー部13を略垂直に配置して保持するホルダー保持部52とを有してなり,上記本体部11を治具基板51から離して固定できるよう構成されている。 【0035】具体的には,図5に示すごとく,上記ホルダー保持部52は,複数のキーパ1のホルダー部13を挟持するための左右一対の挟持板53,54よりなると共に断面形状が略T字状の係合部55を有している。この係合部は一方の挟持板53の全長に設けてある。なお,両方の挟持板53,54の間には,後述するごとく,ゴムシート58,59を介在させる。そして,挟持板53,54及びゴムシート58,59の両端には,これらを固定するためのねじ71を挿入するための貫通穴530,540,580,590を設けてある。 【0036】一方,図4に示すごとく,上記治具基板51は,ホルダー保持部52を挿入配置するためのスリット510を複数有し,該スリット510にホルダー保持部52を挿入すると共に上記係合部55により係合できるよう構成してある。本例では,11本のスリット510を設けた。また,治具基板51には,これをスパッタ装置6の基板62に固定するための固定穴512を3カ所設けた。 【0037】上記治具基板51およびホルダー保持部52を用いてキーパ1をセットするにあたっては,まず,上記係合部55を有する挟持板53にゴムシート58を介して多数のキーパ1のホルダー部13を載置する。このとき,ホルダー部13は挟持板53に対して垂直となるようにし,かつ本体部11が挟持板53に接触しないように配置する。また,各ホルダー部13は,所定間隔を設けて載置する。 【0038】次いで,挟持板53と共にホルダー部13を挟持するように,ゴムシート59及び挟持板54を載置する。そして,貫通穴530,540,580,590にねじ71を通すと共にナット72をその先端にねじ込む。この作業を11組のホルダー保持部52を用いて同様に行う。これにより,ホルダー保持部52への多数のキーパの固定が完了する。 【0039】次に,図6に示すごとく,上記治具基板51を水平状に配置した状態で,上記スリット510にそれぞれ上記ホルダー保持部52を挿入する。このとき,ホルダー保持部52は,その係合部が上方,キーパ1の本体部11が下方を向いた状態で挿入する。これにより,ホルダー保持部52は,その自重によって上記係合部55が各スリット510の両側上面に係合し,保持される。次に,図7に示すごとく,ホルダー保持部52をセットした治具基板51をスパッタ装置6の基板62にセットすることにより,キーパ1のスパッタ装置6へのセットが完了する。また,本例では,上記ターゲット20として,純度99.99%の金を用い,これを上記載置台611にセットした。 【0040】次に,本例では,ステップS106においてチャンバー60内を真空引きした後,活性化処理工程としてのエッチングを行った。具体的には,活性化ガスとしてアルゴンを用い,これをチャンバー内に導入し,放電電力の出力を0.1kWとする条件で処理した。 【0041】次に,スパッタリング工程としては,ステップS108のプレスパッタ工程とステップS109のメインスパッタ工程を組み合わせて行った。いずれも放電電力の出力は0.3kWとした。また,処理時間はプレスパッタ(S108)が5分,メインスパッタ(S109)が20分とした。なお,メインスパッタ時には,上記基板62を回転させ,かつその回転方向を所定時間ごとに逆転させるスイングを行った。 【0042】その後,ステップS110の製造用治具(チャック治具)5の取り外し,ステップS111の製造用治具5からのキーパ(試料)1の取り外し,ステップS112の製品検査の各工程を行った後,ステップS113において真空デジケータ内に製品(キーパ)を保管した。 【0043】次に,上記金皮膜2を備えたキーパ1を用いて,根面装置10を作製した。まず,鋳型に上記キーパ1をセットした。次に,図3(a)に示すごとく,根面板15用の溶融金属を鋳型内に注湯して,キーパ1と根面板15とを鋳接した。なお,本例の根面板15としては,Au−Ag−Pd合金を用いた。次に,キーパ1を鋳接させた根面板15に表面処理を施した。具体的には表面を酸洗した後,サンドブラスト処理を施した。 【0044】次いで,図3(b)に示すごとく,根面板15及びキーパ1の上面,即ちキーパ1の吸着面18を25μm研磨した。これにより,同図及び図1に示すごとく,キーパ1の吸着面18の金皮膜2は除去され,磁気特性に優れた軟磁性材料が露出した状態に仕上がった。 【0045】次に,本例の作用効果につき説明する。まず,上記キーパ1は,上記のごとくPVD処理により金皮膜2を本体部11の側面に形成してある。そのため,この金皮膜の存在により,鋳接時における酸化膜形成の抑制効果を向上させることができる。さらに,本例の場合には,湿式メッキ法の場合のようにシアン,砒素等の有害成分を一切使用しないのでキーパ1の安全性を確実に保証することができる。 【0046】また,本例では,本体部11の材質としては優れた磁気的特性を有する軟磁性材料をそのまま用いることができるので,義歯アタッチメントによる磁気的吸引力の低下を防止することができる。したがって,本例のキーパは,義歯アタッチメントによる磁気吸引力を低下させることなく耐食性を向上させることができる。 【0047】また,本例の製造方法においては,上記のごとく,本体部11にホルダー部13を接合し,該ホルダー部13を製造治具5により保持して本体部11を浮かせた状態でPVD処理を行う。そのため,本体部11の側面部に対して接触する金の蒸気の均一化を容易に図ることができる。。 【0048】また,本例で用いた製造用治具5を用いれば,上記キーパ1の本体部11を製造用治具5から離して空中に配置した状態を容易に作り出すことができるので,上記のPVD処理を確実に実行することができる。また本例の製造用治具5は,上記のごとき構成を有しているので,キーパ1の保持作業をホルダー保持部52ごとに行った後ホルダー保持部52を治具基板51にセットすることができ,作業性を向上することができる。なお,上記製造用治具5に代えて,例えば治具基板としてゴム板を用い,ホルダー保持部としてはゴム板に形成したホルダー部の径よりも小さい穴とすることもできる。 【0049】実施形態例2本例では,図11に示すごとく,実施形態例1における金皮膜2を形成する前に,本体部11の表面にCr拡散を形成した。具体的には,図11(b)に示すごとく,まず,17Cr−2Moステンレス鋼よりなる本体部11の表面にCrメッキを施して厚さ15μmのCr層12を形成した。次に,同図(c)に示すごとく,拡散熱処理を行った。この条件は,Arガス雰囲気において,温度950℃に3時間保持する条件とした。 【0050】この拡散熱処理を行った結果,キーパ1の表面には,Crを30重量%以上含有するCr拡散層120が形成された。次に,同図(d)に示すごとく,キーパ1の側面に直径0.5mmのTi線材よりなるホルダ部13をレーザ溶接により接続した。 【0051】ここで,本例においては,得られたCr拡散層120の表面からの深さとCr含有量Pと関係を調べ,図14に示した。同図は,横軸にキーパ1の最表面からの距離(μm)を,縦軸にCrの含有量(重量%)をとった。同図より知られるごとく,Cr拡散層120の領域Sは,キーパ1の表面から約30μm付近までにおいてCrがリッチな状態で形成されていた。また,Cr含有量は最表面において80重量%に達しており,表面からの距離が増加するにしたがって本体部11自身のCr含有量(19重量%)に近づくように分布していた。 【0052】次に,図11(e)に示すごとく,上記Cr拡散層120を有するキーパ1の表面に,厚み2.5μmの金皮膜2を形成した。本例では,実施形態例1と異なり,PVD処理法として,電子ビームを用いた蒸着法を採用した。 【0053】具体的には,図12に示すごとく,ステップS201〜S216の16の工程により処理した。まず,同図に示すごとく,ステップS201〜S203において試料洗浄工程を行った。具体的には超純水での超音波洗浄(S101),アセトンでの超音波洗浄(S102),超純水での超音波洗浄(S103)をそれぞれ5分ずつ行った。 【0054】次に,ステップS204〜S205において,実施形態例1と同様の製造治具5にキーパ1を保持させた状態で,これを基板に配置し,さらにこの基板を図示しない蒸着装置のチャンバー内にセットした。次に,ステップS206において蒸着装置のチャンバー内を真空引きし,次いで,ステップS207において基板を回転させながらステップS208において基板を温度300℃まで加熱した。この加熱により試料をクリーニングし,金皮膜の剥離向上を向上させる。 【0055】次に,ステップS209において,EB電圧(電子ビーム電圧)を10kV,EV電流(電子ビーム電流)を0.7Aとして電子ビームを金ターゲットに照射することにより金ターゲットのクリーニングを行,これにより脱ガスした。このとき,試料(キーパ)はマスクにしておき,試料への金の付着はまだ行われないようにしておく。次いで,ステップS210においてはチャンバー内の真空度を高めるための真空引き行った。 【0056】その後ステップS211において,再びEB電圧(電子ビーム電圧)を10kV,EV電流(電子ビーム電流)を0.7Aとして,電子ビームを金ターゲットに照射する。このとき,試料からマスクを外し,試料を露出させておくことにより,蒸着工程が行われる。その後,ステップS212において温度80℃以下となるまでキーパを冷却した。 【0057】その後,ステップS213におけるチャンバーからの基板の取り外し,ステップS214における基板からのキーパ(試料)の取り外し,ステップS215の製品検査の各工程を行った後,ステップS216において真空デジケータ内に製品(キーパ)を保管した。 【0058】次に,得られたキーパ1を用いて,実施形態例1と同様にして根面装置を作製した。この場合,図13(a)に示すごとく,鋳接直後のキーパ1は,本体部11の全表面をCr拡散層120で覆い,さらにその上を金皮膜2により覆った状態となっている。その後,図13(b)に示すごとく,実施形態例1と同様の研磨等により,キーパ1の吸着面18の金皮膜2は除去され,磁気特性に優れた軟磁性材料が露出した状態に仕上がった。このようにして得られた本例のキーパ1は,実施形態例1の場合以上に優れた耐食性を示した。その他は実施形態例1と同様の作用効果が得られた。 【0059】実施形態例3本例では,図15に示すごとく,実施形態例1,2(本発明品E1,E2とする)により得られた根面装置におけるキーパと根面板との間の境界部断面を観察し,酸化膜厚みTを測定することにより耐食性を評価すると共に,金皮膜の剥離強度試験を行った。また,比較のために,4種類の比較品を準備して同様に観察した。 【0060】比較品C1は,実施形態例1(本発明品E1)と同様の本体部11の表面に厚み1μmのNi下地を形成し,その上に,湿式の酸性メッキ法により金皮膜を10μmの厚みで形成した例である。比較品C2は,実施形態例1(本発明品E1)と同様の本体部11の表面に厚み1μmのNi下地を形成し,その上に,湿式のアルカリメッキ法により金皮膜を4μmの厚みで形成した例である。 【0061】比較品C3は,実施形態例2(本発明品E2)と同様の本体部11を用い,その表面に実施形態例1と同様の方法により厚み5μmの金皮膜を形成した例である。比較品C4は,実施形態例2(本発明品E2)と同様の本体部11を用い,その表面に,実施形態例1と同様の方法におけるステップS107の活性化処理(エッチング)を省略して厚み1.5μmの金皮膜を形成した例である。 【0062】そして,各根面装置におけるキーパと根面板との間の境界部断面をSEM(5000倍)で観察して酸化膜厚みTを測定した。また,金皮膜の剥離試験として,JIS規格K500のXカットテープ法に準拠した試験を行った。その結果を表1に示す。 【0063】 【表1】
【0064】表1より知られるごとく,本発明品E1,E2は,金皮膜中に有害成分が無く,かつ,耐食性,剥離強度ともに優れることがわかる。なお,比較品C1の有害成分は,砒素であり,比較品C2の有害成分は,シアンであった。 【0065】 【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,義歯アタッチメントによる磁気吸引力を低下させることなく耐食性を向上させることができる義歯アタッチメント用キーパ,その製造方法及び製造治具を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000116655 【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年3月10日(2000.3.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100079142 【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 祥泰 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−252290(P2001−252290A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月18日(2001.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2000−67250(P2000−67250) |
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