| 【発明の名称】 |
義歯用磁性アタッチメント |
| 【発明者】 |
【氏名】遠藤 一彦
【氏名】大野 弘機
【氏名】関口 敏弘
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| 【要約】 |
【課題】義歯用磁性アタッチメントの磁気特性等の機能を損なうことなく優れた耐食性を示し、アレルギー反応を起こすことのない義歯用磁性アタッチメントを提供する。
【解決手段】義歯床の顎堤側に固設される外殻の内部に永久磁石4を配置した永久磁石構造体1と、該永久磁石構造体1と対向するように口腔内の顎堤上に固設される軟磁性材料から成るキーパー5とから成る義歯用磁性アタッチメントにおいて、永久磁石4を覆うスペーサー3を、C:0.02〜0.3重量%,Mn:2〜26重量%,Cr:11〜24重量%,Mo:2.5〜10重量%,N:0.55〜1.2重量%,残部がFe及び最大0.5重量%のNi及び最大2重量%のSiを含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼から成る義歯用磁性アッタチメントとする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 義歯床の顎堤側に固設される外殻の内部に永久磁石を配置した永久磁石構造体と、該永久磁石構造体と対向するように口腔内の顎堤上に固設される軟磁性材料から成るキーパーとから成る義歯用磁性アタッチメントにおいて、前記永久磁石を覆うスペーサーが、C:0.02〜0.3重量%,Mn:2〜26重量%,Cr:11〜24重量%,Mo:2.5〜10重量%,N:0.55〜1.2重量%,残部がFe及び最大0.5重量%のNi及び最大2重量%のSiを含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼から成ることを特徴とする義歯用磁性アッタチメント。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、永久磁石構造体を覆うスペーサーにNiアレルギーを起こす原因であるNiを含まない耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を用いた義歯用アタッチメントに関するものである。 【0002】 【従来の技術】口腔内に部分床や全部床の義歯を固定する方法として、義歯の義歯床の顎堤側に固設された永久磁石構造体とこの永久磁石構造体と対向するように口腔内の顎堤上に固設された軟磁性材料から成るキーパーとの間に作用する磁気吸引力を利用する試みが従来から種々行われている。この永久磁石構造体とキーパーとから成る義歯用磁性アタッチメントを使用する方法は、義歯の機能を損なわない力で義歯を口腔内に固定できることに加えて着脱が簡単なことからその適用例は急速に増加してきている。 【0003】このような義歯用磁性アタッチメントを使用した一般的な義歯の固定方法は、残存歯の歯根内又は人工歯根内に埋設固定した縦断面形状が略T字型に形成されている根面部材の上端面に軟磁性金属材料から成るキーパーと呼ばれる平板を固設し、また義歯床内の顎堤側に永久磁石構造体をキーパーと対向するよう埋設固設し、永久磁石とキーパーとの磁気的吸引力を利用して義歯を固定する方法である。永久磁石構造体は、内部に永久磁石を収納し、その周りを軟磁性体や非磁性体の耐食性金属から成る外殻で覆われているものが一般的であり、必要に応じて更にレジン樹脂などでコーティングされる場合もある。 【0004】義歯用磁性アタツチメントの永久磁石構造体の外殻に使用される金属材料には、義歯を安定して固定するため高い磁気特性は勿論、口腔内環境の腐食に耐える優れた耐食性が要求される。一般的には耐食性の軟磁性体金属として16〜18Cr−balFe(SUS430)、17〜20Cr−1.75〜2.5Mo−balFe(SUS444)、28.5〜32.0Cr−1.5〜2.5Mo―balFe(SUS447J1)等のフエライト系ステンレス鋼が用いられている。また、より耐食性に優れたSUS316Lに代表されるようなオーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性金属を永久磁石構造体の外殻のキーパーと接する面全体に永久磁石構造体とキーパーとの間の磁気吸引力に影響を与えない厚さで使用したり、永久磁石構造体の外殻のキーパーと接する面を除いた部分に使用する場合もある。 【0005】特開平1−303145号公報,特開平6−209956号公報,WO93/25159号公報には、永久磁石構造体の外殻のキーパーと接する面の一部に非磁性材料を使用することにより永久磁石構造体とキーパーとの間に磁気回路を作り出し、義歯用磁性アタッチメントの磁気的吸引力を高める方法が開示されている。この方法は現在一般的に広く利用されており、この場合の耐食性非磁性金属材料としてもオーステナイト系ステンレス鋼が広く使用されている。 【0006】オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼にオーステナイト組織を安定化させる作用を持つ元素を添加し、摂氏約1100℃まで加熱した後に急冷することにより含有する炭化物をオーステナイト組織に溶け込ませることで製造され、これによりオーステナイト系ステンレス鋼は耐食性に優れ且つ磁性を持たないという特殊な性質を持つようになる。即ち、オーステナイト系ステンレス鋼は高い耐食性を示す非磁性金属材料として優れているため義歯用磁性アタッチメントに用いられている。しかし、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼は製造する際にオーステナイト組織を安定化させる元素としてNiを約4〜20%使用しており、口腔内で長時間装着される義歯の場合には微量溶出するNiが原因となってアレルギー反応を起こす可能性が大きな問題とされていた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、義歯用磁性アタッチメントの磁気特性等の機能を損なうことなく優れた耐食性を示し、アレルギー反応を起こすことのない義歯用磁性アタッチメントを提供することを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、現在、非磁性の低アレルギーステンレス鋼として医療分野等に使われ始めている、オーステナイト組織を安定化させる元素のNiに換えてNを使用したオーステナイト系ステンレス鋼を義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体のスペーサーとして用いると、義歯用磁性アタッチメントの磁気特性等を損なうことなくより優れた耐食性を示し、Niを実質的に含まないためNiによるアレルギー反応の恐れの無い義歯用磁性アタッチメントを得ることが可能であることを見出したものである。 【0009】 【発明の実施の形態】即ち本発明に係る義歯用磁性アタッチメントは、義歯床の顎堤側に固設される外殻の内部に永久磁石を配置した永久磁石構造体と、該永久磁石構造体と対向するように口腔内の顎堤上に固設される軟磁性材料から成るキーパーとから成る義歯用磁性アタッチメントにおいて、前記永久磁石を覆うスペーサーが、C:0.02〜0.3重量%,Mn:2〜26重量%,Cr:11〜24重量%,Mo:2.5〜10重量%,N:0.55〜1.2重量%,残部がFe及び最大0.5重量%のNi及び最大2重量%のSiを含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼から成ることを特徴とする義歯用磁性アッタチメントである。 【0010】以下に、本発明に係る義歯用磁性アタッチメントに使用されるオーステナイト系ステンレス鋼の組成限定理由について述べる。本発明に係る義歯用磁性アタッチメントに使用するオーステナイト系ステンレス鋼に含まれるC(炭素)量は0.02〜0.3重量%であり、より好ましくは0.02〜0.1重量%である。0.02重量%より少ないとオーステナイト組織を安定化することができず、0.3重量%より多いと腐食や応力腐食割れを起こし易くなる。 【0011】Mn(マンガン)の配合量は2〜26重量%である。2重量%より少ないと窒素質析出物の生成を抑制することができず、26重量%より多いと強度が低下する。 【0012】Cr(クロム)の配合量は11〜24重量%である。11重量%より少ないとオーステナイト系ステンレス鋼に耐食性を与えることができず、24重量%より多いと磁性を示すデルタフェライトが生成されてしまう。 【0013】Mo(モリブデン)の配合量は2.5〜10重量%である。2.5重量%より少ないとオーステナイト系ステンレス鋼に耐食性を与えることができず、10重量%より多いと磁性を示すデルタフェライトが生成されてしまう。 【0014】N(窒素)の配合量は0.55〜1.2重量%である。0.55重量%より少ないとNiを含まずにオーステナイト結晶構造を安定させることができない。しかし、1.2重量%より多いとオーステナイト系ステンレス鋼の靱性が著しく低下する。 【0015】Ni(ニッケル)は意図的に配合されることはなく含有量は少ない程良い。従ってオーステナイト系ステンレス鋼中に不純物として含まれる量は最大0.5重量%とする。 【0016】Si(けい素)は加圧エレクトロスラグ再溶解法を用いた時などに含まれ、その時の窒化けい素の添加量により増加する。しかし、Siは磁性を示すデルタフェライトの生成を促進する作用があるので不純物として最大2重量%とする。 【0017】本発明において義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体を覆うスペーサーとは、従来の義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体を覆う部分の中で従来のNiを含むオーステナイト系ステンレス鋼が用いられていた部分であってキーパーとで磁気回路を作り出すために義歯用磁性アタッチメント構造体の永久磁石構造体の口腔内に露出する箇所である。 【0018】以下、図面により本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの実施例について詳細に説明する。図1は一般的にサンドイッチ型と呼ばれているタイプの本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体の1実施例を示す斜視図、図2は本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体とキーパーとの断面説明図であって永久磁石構造体は図1のA−A’線断面で示してある。この図1及び図2で示す本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体1(実施例1)は、永久磁石4は図2中での左右方向にN・S極を持つ永久磁石(NdFeB)であって、その外側を軟磁性ステンレス鋼(SUS444)であるヨーク2で挟み、永久磁石4のヨーク2に接触しない部分を表1に示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼より成るスペーサー3により被覆することで磁気回路を形成することにより吸着力を高め、更に永久磁石4が口腔内に露出することを防いでいる。 【0019】図3は本発明に係る義歯用磁性アタッチメントのサンドイッチ型の永久磁石構造体の他の実施例の構造を示す斜視図、図4は図3に示した義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体の断面説明図である。この図3及び図4で示す本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体1(実施例2)は、永久磁石4は図4中での左右方向にN・S極を持つ永久磁石(NdFeB)であり、その外側を軟磁性ステンレス鋼(SUS444)であるヨーク2に挟み、永久磁石4の下に表1に示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼より成るスペーサー3を置き磁気回路を形成することにより吸着力を高めている。更に、これら永久磁石4,ヨーク2,スペーサー3のキーパーと接する面を除いた外周面は従来から義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体の永久磁石を覆う外殻として使用されている軟磁性ステンレス鋼や本発明で規定するNiを含まないか又は最大0.5重量%のNiを含むオーステナイト系ステンレス鋼により有底円筒状に形成されたカバー6によって被冠されている。 【0020】図5は本発明に係る義歯用磁性アタッチメントのスプリットポール型と呼ばれているタイプの永久磁石構造体の1実施例の構造を示す断面説明図である。この図5で示す本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体1(実施例3)は、永久磁石4は上下方向にN・S極を持つ永久磁石(NdFeB)であって隣接する2個の極性が逆になっており、その上側には軟磁性ステンレス鋼(SUS444)である円板状のヨーク2が、また下側には軟磁性ステンレス鋼(SUS444)である両側のヨーク2で囲まれた中央に表1に示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼より成るスペーサー3を置き磁気回路を形成することにより吸着力を高めている。更に。これら永久磁石4及びヨーク2のキーパーと接する面を除いた外周面は従来から義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体の永久磁石を覆う外殻として使用されている軟磁性ステンレス鋼や本発明で規定するNiを含まないか又は最大0.5重量%のNiを含むオーステナイト系ステンレス鋼により有底円筒状に形成されたカバー6によって被冠されている。 【0021】図6は本発明に係る義歯用磁性アタッチメントのカップヨーク型と呼ばれるタイプの永久磁石構造体の1実施例の構造を示す斜視図、図7は図6に示した義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体の断面説明図である。この図6及び図7で示す本発明に係る義歯用磁性アタッチメントの永久磁石構造体1(実施例4)は、永久磁石4は上下方向にN・S極を持つ永久磁石(NdFeB)であり、その下側には中央の軟磁性ステンレス鋼(SUS444)である円板状のヨーク2を囲むリング状に磁気回路を形成するための表1の実施例3で示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼より成るスペーサー3を置き磁気回路を形成することにより吸着力を高めている。更に。これら永久磁石4及びリング状のスペーサー3のキーパーと接する面を除いた外周面は軟磁性ステンレス鋼(SUS444)であるカップ状のヨーク2で被冠されている。 【0022】 【表1】
【0023】このような各種構造の永久磁石構造体1は義歯床の顎堤側に固設され、永久磁石構造体1と対向するように口腔内の顎堤上には、即ち残存歯が存在する場合にはその歯根内に、また残存歯が存在しない場合には顎骨内に埋設された人工歯根内に、埋設された縦断面形状が略T字型に形成されている根面部材の上端面に軟磁性ステンレス鋼(例えば、SUS444)から成る平板状のキーパー5が固設され、このキーパー5とスペーサー3を介した永久磁石構造体1との磁気吸引力により永久磁石構造体1が固設されている義歯床を口腔内に固定するのに使用されるのである。従って、このような使用法で使用された際の性能を評価するために以下の実験を行った。尚、比較例として従来から使用されていたNiを含むオーステナイト系ステンレス鋼としてSUS316Lを使用した。 【0024】<Niの溶出量>表1に示した各種組成のオーステナイト系ステンレス鋼を約15×15×2mmの大きさに切り出し、表面を3μmのアルミナ懸濁液を用いて鏡面研磨した。その後0.9%NaCl溶液に7日間浸漬し、Niの溶出量を原子吸光法を用いて測定した。結果を表1に示す。実施例1〜3に使用したオーステナイト系ステンレス鋼はNiを実質的に含まないことから溶出するNi量は従来のオーステナイト系ステンレス鋼(比較例)と比較して極めて少ないことが確認できた。 【0025】<すきま腐食試験>表1に示した各種組成のオーステナイト系ステンレス鋼をスペーサーとして用い、図1及び図2に示した形状の義歯用アタッチメントを作製しすきま腐食を評価した。すきま腐食の評価は、JISG0578によるステンレス鋼の塩化第2鉄腐食試験法を用い、35℃でのすきま腐食を時間を変えて観察した。試料は、各3試料づつ準備し、それぞれ20時間,50時間,80時間と試験溶液(6%FeCl3溶液)への浸漬時間を変えて、試験終了後の試料を顕微鏡観察し、すきま腐食の有無を調べた。80時間経過後の結果を表1に示す。全ての実施例1〜3は、80時間経過後もすきま腐食が認められなかった。これに対し、比較例は50時間経過後に1ヶ所、80時間経過後に更に2ヶ所のすきま腐食が認められた。このことから本発明に係る義歯用磁性アタッチメントにスペーサーとして使用するオーステナイト系ステンレス鋼は従来から使用されているオーステナイト系ステンレス鋼より高い耐食性能を持っていることが確認できた。 【0026】<吸引力の測定>表1に示した各種組成のオーステナイト系ステンレス鋼をスペーサーとして用いて、図1及び図2に示した形状の義歯用磁性アタッチメントを作製し、義歯用磁性アタッチメントの吸引力を測定した。義歯用磁性アタツチメントの吸引力は、キーパーを永久磁石構造体に吸着させて、これらを垂直に引き離す力を吸引力と定義して測定した。結果を表1に示す。全ての実施例1〜3のオーステナイト系ステンレス鋼を用いた場合は、吸引力は610gf前後であり、従来のオーステナイト系ステンレス鋼を用いた場合と同等の優れた吸引力を有する義歯用磁性アタッチメントが得られたことが確認できた。 【0027】 【発明の効果】以上に詳述した如く、本発明に係る義歯用磁性アタッチメントは、義歯床の顎堤側に固設される外殻の内部に永久磁石を配置した永久磁石構造体と、該永久磁石構造体と対向するように口腔内の顎堤上に固設される軟磁性材料から成るキーパーとから成る義歯用磁性アタッチメントにおいて、前記永久磁石を覆うスペーサーが、C:0.02〜0.3重量%,Mn:2〜26重量%,Cr:11〜24重量%,Mo:2.5〜10重量%,N:0.55〜1.2重量%,残部がFe及び最大0.5重量%のNi及び最大2重量%のSiを含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼から成るものであるから、アレルギーの原因物質となるNiを実質的に含まず耐食性に優れていて、且つ従来と同等の磁気特性を持つものであり、サンドイッチ型,カップヨーク型,スプリットポール型等の従来から使用されている各種構造の永久磁石構造体であっても良い。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000181217 【氏名又は名称】株式会社ジーシー
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| 【出願日】 |
平成12年3月9日(2000.3.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070105 【弁理士】 【氏名又は名称】野間 忠之
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| 【公開番号】 |
特開2001−252289(P2001−252289A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月18日(2001.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2000−65349(P2000−65349) |
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