| 【発明の名称】 |
人工歯根 |
| 【発明者】 |
【氏名】森川 訓行
【氏名】森田 真一郎
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| 【要約】 |
【課題】人工歯根の歯肉接触部周辺における歯肉の感染を防止する。
【解決手段】表面が金属製の人工歯根の歯肉接触部に歯肉組織親和性材料を含む被覆層を形成してなる人工歯根。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】表面が金属製の人工歯根の歯肉接触部に歯肉組織親和性材料を含む被覆層を形成してなる人工歯根。 【請求項2】人工歯根表面に金属薄膜を形成してなる請求項1に記載の人工歯根。 【請求項3】人工歯根内部の材料が純チタン(Ti)またはチタン合金(Ti-6Al-4V)であり、人工歯根表面材料が金(Au)又は銀(Ag)である請求項2に記載の人工歯根。 【請求項4】歯肉組織親和性材料が細胞接着分子を構成成分として含む請求項1に記載の人工歯根。 【請求項5】歯肉組織親和性材料をチオール化合物を介して金属製の人工歯根の歯肉接触部に被覆固定してなる請求項1に記載の人工歯根。 【請求項6】歯肉組織親和性材料が、細胞接着分子とチオール化合物が共有結合した材料である請求項4に記載の人工歯根。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は臨床における移植用の人工歯根に関わる。 【0002】 【従来の技術】現在、歯科領域においては、抜歯後の歯槽骨内に人工材料を打ち込み、その上部に人工の歯冠をかぶせて、歯の役目をもたせようとする治療法が盛んに行われている。この打ち込まれる人工材料が人工歯根(デンタルインプラント)である。自分の歯や他人の歯を移植すると、時間とともに歯根が吸収されて脱落してしまうため、天然歯は利用できない。そのため、19世紀の初頭から金属、セラミックス、高分子という三大素材のすべてが人工歯根として検討された。現在、国内における永久歯の抜歯本数は年間2,500〜3,000万本といわれている。今後、老齢人口が急増することを考えると、義歯ではなく長期間にわたって生着率の高い人工歯根の開発が急務である。 【0003】人工歯根が満たすべき条件としては、1.顎骨に強固に結合すること2.歯肉に強固に結合すること3.大きな咬合圧に耐えること4.歯根膜機能(衝撃吸収性)をもつこととされている(生体材料学−基礎生体工学講座、産業図書、1994)。 【0004】現在、人工歯根の材質として広く用いられているのは、金属[純チタン(Ti)、チタン合金(Ti-6Al-4V)]やセラミックス(アルミナ、水酸アパタイト)である。これらは、上記1.および3.の条件に適合する優れた人工歯根材料であるが、歯肉との親和性は低いため、上記2.の条件を満たしていない。 【0005】上記条件のうち1.について、すなわち人工歯根と顎骨との接着性に関する研究は多い(上田 実ほか:インプラント治療後の歯槽骨の経時的変化、補綴誌、35: 556-560、1991および山森徹雄ほか:生体活性ガラスを用いたインプラントの組織学的研究、補綴誌、36: 669-676、1992)。これに対し、上記条件のうち2.の歯肉との接着性についてはほとんど研究されていない。この条件が不充分であるとプラークの付着により炎症性細胞の浸潤を誘発し、歯槽骨の皿状吸収が生じることが示されている。その結果、移植した人工歯根と歯槽骨との間に緩みが生じ、やがて脱落してしまう。このように、歯肉との結合が不満足ならば、人工歯根は絶えず、外部からの感染に脅かされることになる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、金属製の人工歯根と歯肉組織との接着性を向上し、歯肉接触部周辺における細菌の感染を防止し、人工歯根の生着率を向上させることを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者は、歯肉接着能を高める歯肉組織親和性材料で人工歯根の歯肉接触部を被覆することにより、人工歯根の移植初期の段階から歯肉結合組織との高い接着能を有し、炎症性細胞の浸潤を抑制することで、生着率を高めることが可能となることを見出した。 【0008】本発明は、下記の項1〜項6を提供するものである。 項1. 表面が金属製の人工歯根の歯肉接触部に歯肉組織親和性材料を含む被覆層を形成してなる人工歯根。 項2. 人工歯根表面に金属薄膜を形成してなる項1に記載の人工歯根。 項3. 人工歯根内部の材料が純チタン(Ti)またはチタン合金(Ti-6Al-4V)であり、人工歯根表面材料が金(Au)又は銀(Ag)である項2に記載の人工歯根。 項4. 歯肉組織親和性材料が細胞接着分子を構成成分として含む項1に記載の人工歯根。 項5. 歯肉組織親和性材料をチオール化合物を介して金属製の人工歯根の歯肉接触部に被覆固定してなる項1に記載の人工歯根。 項6. 歯肉組織親和性材料が、細胞接着分子とチオール化合物が共有結合した材料である項4に記載の人工歯根。 【0009】 【発明の実施の形態】人工歯根表面の金属としては、歯肉組織親和性材料を固定できればよく、特に限定されないが、例えば生体埋入材料であることを考慮すると、金(Au)や銀(Ag)を用いるのが望ましい。該表面金属は金属薄膜として形成するのが好ましい。人工歯根の表面金属は、チオール化合物と反応できるものが特に好ましく、金及び銀はこれに適する。人工歯根表面上への金属薄膜形成には、スパッタリングによる蒸着を利用した成膜装置などを使用することができる。金属薄膜の厚みは、特に限定されないが、例えば20〜5,000Å程度が例示される。 【0010】人工歯根の内部は、その表面に金属薄膜を形成させられるものであればよい。具体的にはチタン(純チタン)ないしチタン合金(Ti-6Al-4V等)などの金属が好ましい。 【0011】人工歯根の少なくとも歯肉接触部は、歯肉組織親和性材料を含む被覆層で覆われているが、歯肉組織と接触しない、顎骨への埋入部及び歯冠を固定する部位についても必要に応じて歯肉組織親和性材料を含む被覆層を形成してもよい。歯肉組織親和性材料としては、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンなどのような天然材料、細胞接着活性をもつアミノ酸配列(Arg-Gly-Asp)を有する合成ペプチドなどのような合成材料が選択できる。特に、コラーゲンやラミニンは、歯肉結合組織中に元来存在していることから、人工歯根の表面改質には有効である。歯肉組織親和性材料は、直接金属製の人工歯根上に吸着させることも可能であるが、金や銀などの金属はチオール基(-SH)と結合しやすいので、チオール基含有化合物を介して金属製の人工歯根に固定することが好ましい。尚、歯肉組織親和性材料とチオール含有化合物との結合は共有結合によることが好ましい。この目的のために、金属表面にチオール基を有する化合物が共有結合し、安定な単分子層を形成する反応(J. K. Whitesell and H. K. Chang: Directionally aligned helical peptides on surfaces, Science, 261: 73-76, 1993、およびT. Obata, et al.: Synthesis of molecular assemble of peptides on theelectrode surface using mercaptophenylalanine, Pept. Chem., 33: 489-492, 1996)を利用することができる。すなわち、人工歯根表面上に金属薄膜を形成させた後、金属とチオール基との反応を利用して、チオール化合物を共有結合させる。このチオール化合物がタンパク質と共有結合できる反応基を有しているならば、細胞接着分子などをさらに結合させることが可能となる。その結果、人工歯根材料表面に、金属薄膜−チオール化合物を介することで、細胞接着分子などの歯肉組織親和性材料を固定化することが可能となる。尚、歯肉組織親和性材料にチオール基を導入した化合物を金属表面に結合させる方法をとってもよいが、安定な歯肉組織親和性材料を含む被覆層を形成させるためには前者の方法が好ましい。 【0012】本願発明に供するチオール化合物は、金属薄膜上で安定な単分子層を形成し、かつその末端に細胞接着分子と共有結合させうる反応基(アミノ基、カルボキシル基など)を有しているものであればよく、特に限定はされないが、具体的にはシステイン、2-アミノエタンチオール(システアミン)、2-メルカプトプロピオン酸、4-アミノチオフェノールなどが例示できる。特に、システインは元来生体内に存在するアミノ酸であることから、安全性の点からも有効である。 【0013】 【発明の効果】本発明によれば、特にチタン製人工歯根の表面に、細胞接着能を高める細胞接着分子を固定化することによって、歯肉組織中の細胞との接着能を高め、最終的に歯肉との封鎖性を高めることができ、歯肉接触部周辺における細菌の感染がほとんどあるいは全くなく、生着率の高い人工歯根が提供できる。 【0014】 【実施例】実施例1 細胞接着分子を固定した表面での細胞接着強度の評価(1)人工歯根表面への細胞接着分子の固定純チタンの丸棒より切り出した円盤状試料(直径30mm、厚さ2mm)を0.1μmのバフ研磨により鏡面仕上げした。これをエタノール中で超音波洗浄した後、表面にイオンクラスタービーム法による成膜装置((株)イオン工学センター保有)を利用して、金を1,000Åの厚さに蒸着した。 【0015】次いで、エタノール中で超音波洗浄した後、20mM濃度のシステイン塩酸塩(和光純薬社製)水溶液に浸漬した。20℃下にて2hr放置後、蒸留水中で洗浄した。次いで、コラーゲン(新田ゼラチン社製)13mgと水溶性カルボジイミド(WSC、同仁社製)8.72mgを溶解させた0.1M酢酸水溶液50ml中に浸漬し、20℃下にて24hr撹拌反応させてコラーゲンを被覆・固定した。反応後、試料を0.1M酢酸水溶液、次いで蒸留水中で洗浄した。 (2)細胞接着強度の評価コラーゲンを固定した金蒸着チタンディスクを70%エタノール水溶液中に一昼夜浸漬することで滅菌した後、PBS(和光純薬社製)中で洗浄した。細胞はヒト繊維芽細胞(クロネティックス社製)を3〜4継代したものを用いた。3.0×105cellsの繊維芽細胞を5%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製)3mlに分散させ、6ウェルプレート中に設置した試料上に播種した。37℃、5%CO2下にて所定期間培養後、以下の方法により細胞接着強度を評価した。 【0016】繊維芽細胞を接着させた試料をPBS中で洗浄した後、1mM濃度のEDTA(和光純薬社製)を含むPBSで満たした300mlビーカーの壁面に設置した。スラーラーディスクによって一定速度で溶液を10分間撹拌し、細胞−材料界面に剪断力を負荷した。その後、剥離せずに材料表面に接着して残存している細胞数をMTT法により測定した。なお、比較例として、チタンおよび金蒸着チタン表面上で同様の方法にて繊維芽細胞を培養した試料を作製し、細胞接着強度を評価した。 実験例1 細胞接着強度の評価実施例1で得られた結果を図2に示す。試験結果は、MTT発色後570nmの吸光度を測定し、それぞれの試料で細胞剥離処理を行わなかった場合の吸光度を100%として、それに対する比を細胞残存率(%)とした。図2から明らかなように、コラーゲンを固定した金蒸着チタン表面では、培養7日後においても高い細胞接着性を有していた。これに対し、比較として行ったチタンおよび金蒸着チタン表面では、細胞剥離処理によりほとんどの細胞が剥離してしまい、細胞接着性が低いことが分かる。 実施例2 細胞接着分子を固定した人工歯根のイヌへの移植実験(1)人工歯根表面への細胞接着分子の固定人工歯根として、市販のチタン製人工歯根(IMZインプラント、フリアテック社製)を用いた。このIMZインプラントは、歯槽骨に打ち込まれるインプラント本体と歯肉接触部(TIE)が分離する方式のもので、歯肉組織と接する部分のみの表面改質を行うのに適している。このTIEの周囲のみに実施例1の方法に準じて、金を蒸着し、コラーゲンの固定を行った。次いで、エチレンオキシドガスによる滅菌を行った。 (2)イヌへの移植実験静脈麻酔下にて、ビーグル犬8頭(体重10〜14kg)の左右下顎臼歯2本づつを抜歯し、3ヶ月間放置し、歯槽骨を治癒させた。次いで、静脈麻酔下にて、抜歯部の穴開けを行い、インプラント本体を埋入した。その後、IMEと呼ばれる専用のスクリューを用いて、TIEをインプラント上部に固定した。イヌ1頭につき、コラーゲンを固定した金蒸着TIEを3個、比較例として未処理のTIEを1個の割合で移植した。術後は軟食を与え、口腔清掃は行わなかった。術後、2週および4週にそれぞれ4頭づつ、埋入サンプルを肉眼的に観察した後、犠牲死させ、下顎骨を取り出し、10%ホルマリン中性緩衝液中で浸漬固定した。次いで、樹脂包埋後、薄切研磨標本を作製し、トルイジンブルー染色を施し、埋入した人工歯根と歯肉組織との接着状態を光学顕微鏡にて観察した。 実験例2 動物実験後の人工歯根の組織学的観察実施例2で作製した、人工歯根−歯肉組織との界面の接着状態を観察した。埋入2週後では、未処理の人工歯根では、歯肉組織との接合状態は不良で、歯肉上皮のdown growthが起こっているものが多く認められた。また、歯肉組織は肉芽組織のままで、多くの炎症性細胞の浸潤が認められた。これに対し、コラーゲン固定した人工歯根では、歯肉組織との接合状態はおおむね良好で、歯肉上皮のdown growthの程度も低かった。また、炎症の度合いも軽度で肉芽組織から結合組織への変化を示すコラーゲン繊維も確認できた。埋入4週後では、未処理の人工歯根では、依然として歯肉との接合状態は不良で、歯槽骨に打ち込まれたインプラント本体にまで歯肉上皮のdown growthが起こっており、インプラントと歯肉組織が剥離してしまっているものも認められた(図3参照)。また、歯肉組織は依然として肉芽組織のままのものが多く、コラーゲン繊維も人工歯根面に対して平行に走行しており、接着性が低いことを示していた。これに対し、コラーゲン固定した人工歯根では、歯肉との接合状態はおおむね良好であった。また、歯肉組織は結合組織で構成されており、そのコラーゲン繊維も人工歯根面に対して垂直に走行しているものが認められ、高い接着性を有していることが確認できた(図4参照)。
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| 【出願人】 |
【識別番号】500119695 【氏名又は名称】科学技術庁長官官房会計課長
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| 【出願日】 |
平成12年1月14日(2000.1.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100065215 【弁理士】 【氏名又は名称】三枝 英二
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| 【公開番号】 |
特開2001−190570(P2001−190570A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月17日(2001.7.17) |
| 【出願番号】 |
特願2000−5361(P2000−5361) |
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