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【発明の名称】 模型用石膏組成物
【発明者】 【氏名】高梨 知宏

【氏名】伊藤 龍人

【氏名】藤原 稔久

【要約】 【課題】レーザー光が照射された石膏模型面でのハレーションと二次反射の発生を抑え、計測装置がレーザー光の正確な反射位置を特定でき、しかも石膏模型の寸法測定精度を向上できる模型用石膏組成物を提供することである。

【解決手段】石膏の基本材に遮光性向上剤を配合したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 石膏の基本材に遮光性向上剤を配合したことを特徴とする模型用石膏組成物。
【請求項2】 石膏の基本材に遮光性向上剤と反射調節剤とを配合したことを特徴とする模型用石膏組成物。
【請求項3】 前記遮光性向上剤は、ハレーションが抑制される比率で配合されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の模型用石膏組成物。
【請求項4】 前記反射調節剤は、二次反射が抑制される比率で配合されたことを特徴とする請求項3に記載の模型用石膏組成物。
【請求項5】 膨張抑制剤を入れたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の模型用石膏組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石膏模型がレーザー光照射による非接触型三次元形状の計測装置において適正に形状を計測できるようにした模型用石膏組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、製作物を設計製作するに当たり石膏にて模型を作り、CAD/CAMシステムを用いて、その石膏にて形成された模型にレーザー光を照射し実物を設計製作することが行われている。
【0003】例えば、歯科の分野において、CAD/CAMシステムを利用した歯冠補綴物の設計や製作が実用化され臨床に応用されつつある。図3は支台歯石膏模型の説明図である。図3(a)に示すように、支台歯1は円錐形に形成され、図3(b)に示すように、その上部に歯冠補綴物(製作物)2が取り付けられる。この場合の歯冠補綴物2の製作に当たって、支台歯1の模型を石膏により作り、その模型に対しCAD/CAMシステムを用いて、歯冠補綴物2を設計製作する。
【0004】すなわち、その模型にレーザー光を照射し、その反射位置を特定することにより模型の正確な形状を得るようにしている。レーザー光の反射位置の検出は、2個の位置検知センサーを有したレーザー変位計による非接触型三次元形状の計測装置を用いて行われており、レーザーの反射光が最も強い部分を計測するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、石膏には光を透過する性質と反射する性質との両方の性質があるため、石膏にて形成された模型にレーザー光を照射すると、ハレーションや二次反射を起こし、レーザー光の正確な反射位置の特定が困難となる場合がある。レーザー光の正確な反射位置が特定できない場合には、その模型の形状が正確に特定できないことになる。
【0006】図4に示すように、照射されたレーザー光Lが模型面で乱反射し、ハレーションを起こしてしまうことがある。これは、石膏表面層の結晶粒子間でレーザー光が乱反射することにより発生し、その場合には、反射光が照射点周辺に滲み出たように現れる。その結果、計測装置3は滲みの中のどの位置がレーザー光の正確な反射位置であるかを特定することが困難になる。なお、図4中の反射光のうち太線はレーザー光の最も強い反射光L1を示している。
【0007】また、図5に示すように、石膏模型の凸面の頂点付近で、石膏表面層の結晶粒子間で乱反射が起きると、レーザー光が頂点の反対側に逃げてしまい、その結果反射光が弱くなってしまう。そうすると、どの位置がレーザー光の正確な反射位置であるかを特定することが困難になることがある。なお、図5中の反射光のうち太線はレーザー光の最も強い反射光L1を示している。
【0008】一方、単に石膏表面層の結晶粒子間での乱反射を抑えハレーションを防いだとしても、二次反射の計測が起こることがある。例えば、図6に示すように石膏模型に立壁形状がある場合には、立壁に向かってレーザー光が反射し、その立壁に反射した反射光L2を計測装置3が読み取ってしまうという二次反射の計測が起きる。この二次反射による反射光L2を計測しないようにするには、計測装置3の感度に合わせて石膏のレーザー光に対する光の反射効率を調節する必要がある。なお、図6中の反射光のうち太線はレーザー光の最も強い反射光L1を示している。
【0009】このように、ハレーションや二次反射が発生すると、レーザー光の正確な反射位置の特定が困難になる。そこで、これらの対応策として、石膏模型の表面に遮光性の高い塗料等の吹き付を行うようにしているが、そうると、塗膜に厚みがあるため、特に支台歯石膏模型のような精度が要求される場合では寸法精度に問題が生じる。また、石膏模型に大きな膨張が生じていると形状を正確に計測したとしても寸法精度に問題が生じる。
【0010】本発明の目的は、レーザー光が照射された石膏模型面でのハレーションと二次反射の発生を抑え、計測装置がレーザー光の正確な反射位置を特定でき、しかも石膏模型の寸法測定精度を向上できる模型用石膏組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係わる模型用石膏組成物は、石膏の基本材に遮光性向上剤を配合したことを特徴とする。
【0012】請求項2の発明に係わる模型用石膏組成物は、石膏の基本材に遮光性向上剤と反射調節剤とを配合したことを特徴とする。
【0013】請求項3の発明に係わる模型用石膏組成物は、請求項1または請求項2の発明において、前記遮光性向上剤は、ハレーションが抑制される比率で配合されたことを特徴とする。
【0014】請求項4の発明に係わる模型用石膏組成物は、請求項3の発明において、前記反射調節剤は、二次反射が抑制される比率で配合されたことを特徴とする。
【0015】請求項5の発明に係わる模型用石膏組成物は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の発明において、膨張抑制剤を入れたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明者等は鋭意試験研究を重ねた結果、石膏の遮光性を上げる遮光性向上剤として、白色顔料であるチタン酸化物を石膏基本材に配合することにより、所期の目的を達成できることを見出すと共に、レーザー光の出力が強い場合には遮光性向上剤に加え、レーザー光に対する反射調節剤を石膏に配合して調整することにより、所期の目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0017】すなわち、本発明は模型用石膏組成物において、石膏基本材に遮光性向上剤が含有されていることを特徴とし、また、用いられるレーザー光の出力またはレーザー反射光の計測装置の感度により、反射調節剤を含有させ反射効率を調整することを特徴とする。さらに、石膏模型の寸法精度を向上させるために、膨張抑制剤を入れたことを特徴とする。
【0018】本発明の模型用石膏組成物にて製作された石膏模型にレーザー光を照射し、その反射光を計測する際には、照射されるレーザー光が石膏模型面、すなわち石膏表面層の結晶粒子間の遮光性が高められていることによりハレーションが抑えられる。また、レーザー光の出力や計測装置の感度に合うように反射効率が調整されることにより二次反射も抑えられる。また、膨張抑制剤により石膏模型の膨張を抑えられる。これにより、計測装置がレーザー光の反射位置を正確に特定ができるようになり、高精度な測定ができる。
【0019】本発明の模型用石膏組成物における遮光性向上剤の含有量は、0.5〜10重量%の範囲として石膏の基本材に配合する。これは、以下の理由による。遮光性向上剤の含有量を0.5重量%より小さくすると、レーザー光に対する遮光性が低下し乱反射つまりハレーションが発生する。一方、10重量%を超えると、石膏模型の圧縮強度および操作性が悪くなるという問題が発生する。従って、遮光性向上剤の含有量は、ハレーションが抑制される比率の0.5〜10重量%の範囲とする。
【0020】また、反射調節剤の含有量は、0〜5重量%の範囲として石膏の基本材に配合する。つまり、レーザー光の出力やレーザー反射光の計測装置の感度に応じて、光を吸収できる色の顔料を配合する。黒系の顔料が比較的少量で効果があり使いやすい。これにより、二次反射を抑制する。
【0021】遮光性向上剤としては、チタンホワイト、チタンイエロー等のチタン酸化物、ベンガラ、黄鉛、酸化クロム等を用いる。また、反射調節剤としては、鉄黒(FeO・Fe23)、カーボン黒等を用いる。なお、遮光性向上剤としてチタン酸化物を用いた場合には、反射調節剤としてベンガラ、黄鉛、酸化クロム等を用いることができる。
【0022】また、膨張抑制剤としては、硫酸カリウムを0〜2重量%、酒石酸カリウム(または、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム・酒石酸ナトリウム混合)を0〜1重量%、硼砂を0〜1重量%の比率で石膏の基本材に含有させる。
【0023】以下、本発明の第1の実施の形態について、実施例及び比較例により具体的に説明する。まず、石膏の基本材に遮光性向上剤を含有させた場合の実施例1、2及び比較例1、2を説明する。石膏の基本材と遮光性向上剤とを以下の含有比率で均一に混合することにより試料を作成した。
【0024】〔実施例1〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を99.2重量%(2)遮光性向上剤白色顔料であるチタンホワイトを0.8重量%【0025】〔実施例2〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を98.5重量%(2)遮光性向上剤白色顔料であるチタンホワイトを1.5重量%【0026】〔比較例1〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を100重量%【0027】〔比較例2〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を99.7重量%(2)遮光性向上剤白色顔料であるチタンホワイトを0.3重量%【0028】実施例1、2及び比較例1、2、の試料を、混水比0.24の割合で水で練和して印象中に注入して硬化させ、図6に示すような立壁形状のある石膏模型を作成し、以下の試験方法により比較を行った。
【0029】まず、計測用の石膏模型上にレーザー光を照射し、PSD式レーザーセンサ(計測装置)にて反射光の計測を行った。
【0030】図1は、そのときの計測装置による反射光の特性図である。図1において、基準点は模型の実際の寸法である。縦軸および横軸共に単位はmmである。遮光性向上剤を含まない比較例1においては、模型自体に光の透過性があるため全体に信号が弱く、計測値も低めになる。比較例2は、0.3重量%の遮光性向上剤を含んているので、多少の遮光性が与えられ比較例1より多少改善されるが充分ではない。実施例1では、0.8重量%の遮光性向上剤を含んでいるので、比較例2よりさらに改善される。実施例2では、石膏模型の角部の計測も可能になる。
【0031】このように、遮光性向上剤を0.8重量%を含んだものでは、石膏模型の形状がほぼ特定でき、さらに1.5重量%を含んだものでは、石膏模型の角部の計測も可能になるので、本発明では、遮光性向上剤は0.5重量%以上を含む範囲とする。
【0032】次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態は、レーザー光の出力を強くした場合に対応させるべく、石膏の基本材に遮光性向上剤を含有させると共に反射調節剤を含有させた場合のものであり、実施例3及び比較例3、4により説明する。石膏の基本材に遮光性向上剤及び反射調節剤を以下の含有比率で均一に混合することにより試料を作成した。
【0033】〔実施例3〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を97.5重量%(2)遮光性向上剤白色顔料であるチタンホワイトを2重量%(3)反射調節剤黒色顔料酸化鉄(鉄黒)を0.5重量%【0034】〔比較例3〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を98.0重量%(2)遮光性向上剤白色顔料であるチタンホワイトを2重量%【0035】〔比較例4〕
(1)石膏の基本材下村石膏株式会社製、商品名ニューゾーストーン、色調白(無着色のもの)を99.5重量%(2)反射調節剤黒色顔料酸化鉄(鉄黒)を0.5重量%【0036】石膏の基本材に遮光性向上剤を含有させた実施例1及び実施例2の場合と同様に、実施例3及び比較例3、4の試料を、混水比0.24の割合で水で練和して印象中に注入して硬化させ、図6に示すような立壁形状のある石膏模型を作成し、以下の試験方法により比較を行った。
【0037】まず、計測用の石膏模型上にレーザー光を照射し、PSD式レーザーセンサ(計測装置)にて反射光の計測を行った。図2は、そのときの計測装置による反射光の特性図である。図2において、基準点は模型の実際の寸法である。縦軸および横軸共に単位はmmである。
【0038】比較例1においては、上述したように、遮光性向上剤の含有がなく石膏模型自体に光の透過性があるため、全体に信号が弱く計測値も低めになる。比較例3においては、遮光性向上剤が含有され遮光性が与えられたため、反射が強くなり信号がはっきり現れたが、レーザー光の出力が強く反射調節剤が含有されていないので、2次反射が発生し立壁近傍にZ値の膨らみが発生する。つまり、平坦のはずの部分が盛り上がって計測されてしている。比較例4においては、透光性向上剤の含有がなく反射調節剤を含有しているので、反射が弱くS/N比が悪くなり、ノイズの影響を受け計測値が変動している。
【0039】一方、実施例3では遮光性向上剤により遮光性を上げ、反射調節剤により反射を調整することにより、石膏模型の角部の計測も可能になり、しかも立壁近傍においても二次反射が発生せずレーザーの計測装置に対し、理想的な特性を備えている。
【0040】このように、比較例3に示すように遮光性向上剤を2重量%を含んだものでは、レーザー光の出力が大きくなった場合には、二次反射が発生するので、反射調整剤を含有させて反射を調整する。すなわち、遮光性向上剤の含有量を0.5〜10重量%とし、レーザー光の出力に応じて反射調節剤により調節する。
【0041】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、照射されたレーザー光が石膏にて形成された石膏模型面での遮光性が高まり、結晶粒子間での乱反射を抑え、計測装置がレーザー光の反射位置を正確に特定することができる。従って、石膏模型の形態を高精度に測定できる。その結果、計測装置を用いたCAD/CAMシステム等を利用したモデルの設計、製作をより高い精度で行うことができる。
【0042】また、膨張抑制剤を含有しているので、石膏模型の寸法精度を向上させることができ、例えば、寸法制度が要求される支台歯石膏模型にも適正に適用できる。
【出願人】 【識別番号】398065520
【氏名又は名称】メディア株式会社
【識別番号】500004944
【氏名又は名称】下村石膏株式会社
【識別番号】595095803
【氏名又は名称】日産デジタルプロセス株式会社
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
【公開番号】 特開2001−178751(P2001−178751A)
【公開日】 平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願番号】 特願平11−366844