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【発明の名称】 人工歯
【発明者】 【氏名】佐野 裕子

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯において、第1大臼歯部用人工歯または第2小臼歯部用人工歯を他の人工歯より硬質に形成したことを特徴とする人工歯。
【請求項2】歯列に応じ前歯部用人工歯と臼歯部用人工歯を備えた人工歯において、前記臼歯部用人工歯を前記前歯部用人工歯より硬質に形成したことを特徴とする人工歯。
【請求項3】歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯において、硬度の異なる複数の歯列セットを備えたことを特徴とする人工歯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は人工歯に関し、特に歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、歯牙欠損の患者に対し、義歯によって、損なわれた顎口腔機能の回復を図ることが行われているが、近年の高齢化社会においては高齢者の必要を十分考慮した義歯が望まれる。大脳生理学においては大脳皮質の中心前回下部に咀嚼運動の中枢が体の他の部分の運動領より広い面積を占めて存在し、大脳辺縁系には摂食に関する中枢があることが知られ、舌運動を調整する高位中枢には顎と顔面との皮質の運動領と感覚領において体の他の部分の運動領よりも大きい面積を占めて存在していることが明らかにされており、脳細胞の刺激にとっても咀嚼運動などの顎口腔機能の果たす役割が大きい。このように高齢者にとって顎口腔機能の回復が大切でありその中で咀嚼運動を考慮することが求められる。そして咀嚼力つまり咀嚼中に筋によって加えられる力は一般的に20才位で最大となり、以下増令的に低下すること、また義歯装着者は末梢の感覚器官である歯根膜の喪失によって感覚受容器である床下粘膜などが代償的に働いて咀嚼運動を行うものであるため、例えば全部床義歯を装着すると、そうでない人に比べ咀嚼力が1/3以下に低下すること、つまり、顎の筋力の使用が極端に少ない状態での咀嚼運動が習慣化してしまうことが知られている。したがって高齢者は咀嚼運動の回復のために咀嚼筋などの顎の筋力を強化することが求められる。そこで発明者は、顎口腔機能の回復を図る義歯に、摂食時に有効な筋力強化訓練が行われる機能を具備させることを検討した結果、咀嚼運動の力点となる咬合部が支点となる顎関節部に近く咀嚼筋が強く働く部位が大切であるとの考えに至った。ところで、義歯の中で咬合力が直接加わる部分を構成する人工歯は、一般に歯列に応じた複数の人工歯をパネルに並べてセットで市販されており、これらの複数の人工歯は同一の材質で製造され、その硬度や耐磨耗性は同じである。従って、人工歯製造においては、実際に人工歯に加わる咬合力がそれぞれの部位、例えば前歯部と臼歯部、また臼歯部の中でも大臼歯部と小臼歯部などでそれぞれ違うが、この点の考慮がなく、格別に筋力強化につては考慮されていなかった。一方、人工歯に要求される硬度は性別、年令、歯牙欠損状態あるいは修復状態によっても異なるとともに、全部床と局部床などによっても異なるものであるが、前述のように人工歯は同一の材質で製造され、その硬度や耐磨耗性は同じであるため、個々の患者に適応した硬度を持つ人工歯を選択して使用できないのが実情である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように高齢者にとって顎口腔機能の回復が大切でありそのために咀嚼筋などの顎の筋力を強化することが求められるが、これを考慮した人工歯は提案されていなかった。また患者に適応した硬度を考慮した人工歯も提案されていなかった。
【0004】本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、摂食により有効な筋力強化訓練を行うことができる人工歯を提供することを第1の目的とし、患者に適応した硬度を考慮した人工歯を提供することを第2の目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成するための本発明の人工歯は、歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯において、第1大臼歯部用人工歯または第2小臼歯部用人工歯を他の人工歯より硬質に形成したものである。また第1の目的を達成するための本発明の人工歯は、歯列に応じ前歯部用人工歯と臼歯部用人工歯を備えた人工歯において、前記臼歯部用人工歯を前記前歯部用人工歯より硬質に形成したものである。また前記第2の目的を達成するための本発明の人工歯は、歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯において、硬度の異なる複数の歯列セットを備えたものである。
【0006】
【作用】上記構成により、摂食時には第1大臼歯部用人工歯または第2小臼歯部用人工歯あるいは臼歯部用人工歯により十分に噛み締められ顎の筋に強く作用する。また硬度の異なる複数の歯列セットから患者に合わせて選択して使用できる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面により説明する。第1実施例の図1に示すように歯列に応じた複数の人工歯は、中切歯部用人工歯1、側切歯部用人工歯2および犬歯部用人工歯3からなる前歯部用人工歯と、第1小臼歯部用人工歯4、第2小臼歯部用人工歯5、第1大臼歯部用人工歯6および第2大臼歯部用人工歯7からなる臼歯部用人工歯から構成されている。この中で咀嚼運動の力点となる咬合部が支点となる顎関節部に近く咀嚼筋が強く働く部位である第1大臼歯部用人工歯6を他の人工歯1〜5,7より硬質に形成したものである。第2実施例は義歯における咬合圧が大きい第2小臼歯部用人工歯5を他の人工歯1〜4,6〜7より硬質に形成したものである。第3実施例は第1大臼歯部用人工歯6と第2小臼歯部用人工歯5を他の人工歯1〜4,7より硬質に形成したものである。第4実施例は第1大臼歯部用人工歯6と第2大臼歯部用人工歯7を他の人工歯1〜5より硬質に形成したものである。第5実施例は第2大臼歯部用人工歯7を他の人工歯1〜4より硬質に形成するとともに、第2小臼歯部用人工歯5を第2大臼歯部用人工歯7より硬質に形成し、第2小臼歯部用人工歯5より第1大臼歯部用人工歯6を硬質に形成することにより、基本的に咬合力が大きい箇所程硬質な人工歯としたものである。そしてこの構成によれば実施例上の効果として歯列の各部位に応じて生体力学的応力に耐えるに必要な適度な硬さを備えることができ、従って従来のように全て同じ硬さを有し部位によっては必要以上に硬過ぎることによって床下粘膜に過度の負担をかけやすいといった問題を解消できる。さらにいえば、硬い義歯床による無理な圧が歯槽堤に加わるほど歯槽堤が吸収されやすいということが知られており、本実施例によれば歯槽堤の吸収を抑制することもできる。第6実施例はこの考えに従い第1小臼歯部用人工歯4を前歯部用人工歯1〜3より硬質に形成し、さらに第2小臼歯部用人工歯5、第2大臼歯部用人工歯7、第1大臼歯部用人工歯6の順に硬質に形成したものである。第7実施例は臼歯部用人工歯4〜7を前歯部用人工歯1〜3より硬質に形成したものである。第8実施例は歯列に応じ複数の人工歯を備えた人工歯において、硬度の異なる複数の歯列セットを備えたものである。これは人工歯に要求される硬度は性別、年令、歯牙欠損状態あるいは修復状態によって異なるとともに、全部床と局部床などによっても異なるものであるため、歯科医師や歯科技工士が個々の患者に適応した硬度を持つ人工歯を選択できるようにしたものである。この場合、歯列セットとは例えば前歯部用人工歯セット、あるいは臼歯部用人工歯セットなどをいい、要するに複数の人工歯で歯列の一部あるいは全部を構成するものをいう。人工歯の硬度を変える方法は種々考えられるが、例えば硬度の異なる合成樹脂を選定して例えば第1大臼歯部用人工歯6とその他の人工歯1〜5,7を必要な硬度に適する異なる合成樹脂で形成すればよい。また他の方法としては同じ合成樹脂を用いてこれに混入される強化材の種類あるいは含有量を変えることによっても硬さを変えることができる。またポリマーアロイ化された2種以上の樹脂の種類あるいは配合割合を変化することによっても可能であり、あるいは放射線照射によることもでき、その手法は適宜選定すればよい。また実施例上の説明として第1大臼歯部用人工歯部用人工歯6または第2小臼歯部用人工歯5が他の人工歯に比べ3%以上硬度が高いことが望ましい。そして、上記各実施例によれば、少なくとも第1大臼歯部用人工歯6または第2小臼歯部用人工歯5が他に比べて硬質であることにより摂食時に咬合力が少なくとも第1大臼歯6または第2小臼歯部用人工歯5に集中し、これによってじっくりと十分に噛み締めることができ、咀嚼筋などの顎の筋が強く働き、これが繰り返されることにより顎の筋を強化する訓練が可能になり、格別な努力を要せずに筋力が強められる。また硬度の異なる複数の歯列セットから患者に合わせて選択して使用できるから必要以上に硬い人工歯を使用して歯槽堤に無理な負荷を加えてしまう等の不具合を解消することができ、これにより、高齢化社会に有効な義歯を提供できる。なお、人工歯の材質,形態などは各種のものに適用可能である。またこの人工歯を各種の義歯床に適用することができ、弾性裏装材を有する義歯床に適用することもできる。
【0008】
【発明の効果】本発明は摂食により有効な筋力強化訓練を行うことが可能な人工歯を提供できる。また患者に合った硬度の人工歯を選択的に使用可能な人工歯を提供できる。
【0009】
【出願人】 【識別番号】596036898
【氏名又は名称】財団法人歯友会
【出願日】 平成11年12月25日(1999.12.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−178749(P2001−178749A)
【公開日】 平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願番号】 特願平11−377066