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【発明の名称】 有床義歯用アタッチメント
【発明者】 【氏名】マイケル オサム ハマダ

【氏名】高橋 正史

【氏名】高山 正行

【要約】 【課題】維持歯となる天然歯又は顎骨に埋入された人工歯根の歯根の上部構造として固着される構成要素と有床義歯の義歯床側に配備されて固着される構成要素とを互いに嵌合させて用い、着脱自在な部品交換で容易に初期の機能を回復させることができる長期使用可能な有床義歯用アタッチメントを提供する。

【解決手段】一方の構成要素を固着部1cに立設されているネック部1bと球状部1aとで構成されるメール1とし、他方の構成要素を球状部1aの直径より大径の開口部2aに連通する中空部2bを備えた略円筒形状のハウジング部材2と、球状部1aの直径より小径の開口部3aに連通しその空間内面で球状部1aを保持する保持空間3bと開口部3aに連接されて成るスリット3cとを備え中空部2b内に着脱自在で且つ中空部2bに係合して装着される弾性を有し且つ球状部1aより軟質のプラスチック製のライダー3とから成るフィメールとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 維持歯となる天然歯又は歯科用インプラントフィクスチャーの歯根の上部構造として固着される構成要素と歯科用補綴物の該構成要素と対応する位置に固定される構成要素とから成る有床義歯用アタッチメントであって、前記構成要素の一方が、歯根又は歯科用補綴物に固着される固着部(1c)と該固着部(1c)に立設されているネック部(1b)と該ネック部(1b)の該固着部(1c)と反対側に連設されており該ネック部(1b)の太さより大きな直径を有する球状部(1a)とで構成されるメール(1)であり、前記構成要素の他方が、歯科用補綴物又は歯根に固着される大きさの略円筒形状をなし該メール(1)と対向する側に該メール(1)の球状部(1a)の直径より大きな直径の開口部(2a)と該開口部(2a)に連通する中空部(2b)とを備えたハウジング部材(2)と、該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内に収納された際に該開口部(2a)と対応する位置に位置する前記メール(1)の球状部(1a)の直径より小さな口径の開口部(3a)と該開口部(3a)に連通しその空間内面で前記メール(1)の球状部(1a)を保持する保持空間(3b)と該開口部(3a)を前記メール(1)の球状部(1a)が通過できるようにするために側面に形成されており該開口部(3a)に連接されて成るスリット(3c)とを備えており該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内に着脱自在で且つ該ハウジング部材(2)の中空部(2b)に係合して装着される弾性を有し且つ前記メール(1)の球状部(1a)より軟質のプラスチック製のライダー(3)とから成るフィメールであることを特徴とする有床義歯用アタッチメント。
【請求項2】 ライダー(3)の外周面が、開口部(3a)側に向け先細りとなる截頭円錐形状をなしている請求項1に記載の有床義歯用アタッチメント。
【請求項3】 ハウジング部材(2)の中空部(2b)とライダー(3)との係合構造が、該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内周面に形成された該ハウジング部材(2)の軸線(X)に略直角な凸条又は凹溝と、該ライダー(3)の外周面であって該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成された該ライダー(3)の軸線(Y)に略直角な凹溝又は凸条とから成る抜け止め構造である請求項1又は2に記載の有床義歯用アタッチメント。
【請求項4】 ハウジング部材(2)の中空部(2b)とライダー(3)との係合構造に、該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内周面に形成された該ハウジング部材(2)の軸線(X)に略平行な凸条又は凹溝と、該ライダー(3)の外周面であって該ハウジング部材(2)の中空部(2b)内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成された該ライダー(3)の軸線(Y)に略平行な凹溝又は凸条とから成る回転止め構造が付加されている請求項3に記載の有床義歯用アタッチメント。
【請求項5】 ライダー(3)の保持空間(3b)が、該保持空間(3b)内に保持されたメール(1)の球状部(1a)が該保持空間(3b)内で僅かに該ライダー(3)の軸線(Y)に直角又は平行な方向に移動できるようにその断面形状が両側が半球状でその間が円筒状である請求項1から4までのいずれか1項に記載の有床義歯用アタッチメント。
【請求項6】 ライダー(3)の開口部(3a)及びハウジング部材(2)の開口部(2a)から所定の位置まで該ライダー(3)及び該ハウジング部材(2)の側面の各々対応合致する位置にスリット(3c)及び切り溝(2f)が形成されており、少なくとも該ライダー(3)に形成されているスリット(3c)の幅がメール(1)の球状部(1a)の直径より小さくネック部(1b)の太さより大きな幅である請求項1から5までのいずれか1項に記載の有床義歯用アタッチメント。
【請求項7】 メール(1)の固着部(1c)が、ネック部(1b)に連設された基底部(1d)と、該基底部(1d)の該ネック部(1b)側と反対側に連設されている該基底部(1d)より細い棒状連結部(1e)と、該棒状連結部(1e)の該基底部(1d)側と反対側に連設されている該棒状連結部(1e)より大きな突起状板(1f)とで構成されており、該基底部(1d)の該ネック部(1b)側が該ネック部(1b)に向けて厚板状になだらかに隆起している請求項1から6までのいずれか1項に記載の有床義歯用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、維持歯となる天然歯又は顎骨に埋入されている歯科用インプラントフィクスチャー(以下、単に人工歯根と称することがある)の歯根の上部構造として固着される構成要素と口腔内に装着される歯科用補綴物である有床義歯の義歯床側に配備されて固着される構成要素とを互いに嵌合させて用い、着脱自在にされていながらも咀嚼時等においては抜け落ちたりすることがないばかりか、着脱自在な部品交換で容易に初期の機能を回復させることができる長期使用可能な有床義歯用アタッチメントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】抜歯などにより欠落した歯牙の代用として、咀嚼力や美観(歯並びの審美性)を回復するために歯科補綴治物(以下、単に補綴物と称することがある)を用いた治療が行われ、この歯牙の欠落が複数で連続している場合や多数である場合には、補綴物として有床義歯が多用されている。
【0003】このような有床義歯は、一般的には、顎堤(上顎又は下顎)に全く歯牙が無い場合(無歯顎)には全部床義歯(総義歯)と呼称され、部分的に充当させる場合には部分床義歯と呼称されている。そして、この床と称される部分を形成する材料としては、歯科用合成樹脂として市販されている歯科用床用レジン(以下、単にレジンと称することがある)又はレジンと歯科用チタン合金などのような歯科用合金との組合せが使用されている。
【0004】これら有床義歯が咀嚼時等においては抜け落ちたりしないようにする維持装置は、形態と機構上の違いで2種類に大別することができる。
【0005】その一つは、鉤(クラスプと呼称されることもある)である。この鉤は、部分床義歯の場合に欠如歯牙の両側の天然歯を切削して支台歯(鉤歯と呼称されることもある)とし、金属の弾性を利用してこの支台歯を把握させるものであり、臨床において用いられる頻度が高いものと言える。
【0006】他の一つは、有床義歯用アッタチメント(以下、単にアタッチメントと称することがある)である。このアタッチメントはその構成要素としてメールとフィメールとの組合せから成り、主に総義歯に使用されるが、場合(症例)により部分床義歯に使用されることもある。
【0007】このアタッチメントの固着方法は、維持歯として天然歯(歯根)が存在する場合には残存する天然歯が支台歯として形成され、また無歯顎の場合には顎骨に埋入された人工歯根が維持歯としての役目を果たし、その上部構造としてアタッチメントを構成する一方の構成要素(例えばメール)が固着される。そして、アタッチメントを構成する残りの構成要素(例えばフィメール)が補綴物である有床義歯の床部分の相対する位置に固着されるのである。しかして、この両者の緊密な嵌合により有床義歯の支持と維持とがなされるのである。通常の場合、天然歯又は人工歯根側にメールが固着され、有床義歯側にフィメールが固着される。
【0008】このような構成要素としてメールとフィメールとの組合せから成るアタッチメントにおいて、構成要素であるメールとフィメールとの嵌合(ジョイントと呼称されることもある)方式として、例えば、シリンダーとピストンの組合せのように一方向の往復運動(垂直方向の上下動)のみが許されるように規制される構造と、一方(メール側)の形状が球状体を成してこれと嵌合する側(フィメール側)が前記球状体を抜け落ちないようにして保持する構成にして定点におけるフィメール側の傾斜を可能にする構造のものとがある。
【0009】しかしながら、有床義歯を装着した状態で咀嚼を行うと、咀嚼時の咬合圧力により有床義歯の粘膜面側が粘膜を圧迫して粘膜に被圧変位(圧迫による沈み込みなどの意)を生じさせることになるが、メールとフィメールとの嵌合方式がシリンダーとピストンの組合せのように一方向の往復運動のみしか許されないような構造であると、咀嚼部位が臼歯部である場合には臼歯部に、また前歯部である場合は前歯部に集中的に粘膜に被圧変位を生じさせることになる。そして、この咬合圧力にメールとフィメールとの嵌合部と咬合部位との距離を乗じたモーメントがメールとフィメールとの嵌合部のみに作用することになるため、例えばアタッチメントの構成要素の一方が人工歯根に固着されている場合には、その人工歯根の固定用のねじの緩みやねじの破折などの現象が生じるばかりか、このような大きなモーメントが人工歯根に長期に亘って繰り返し加えられると人工歯根が埋入されている顎骨の周囲骨の吸収に至る恐れが出てくる。そこで、近年ではメールとフィメールとの嵌合方式としては、定点におけるフィメール側の傾斜を可能にするようにメール側の形状が球状体とし、フィメール側をこの球状体が抜け落ちないように保持するメールとフィメールとの嵌合方式が採用されるようになってきた。
【0010】しかるに、このようなメール側の形状を球状体とし、フィメール側をこの球状体が抜け落ちないように保持するメールとフィメールとの嵌合方式においても、従来はメールとフィメールとは共に金属によって作成されていたため、長期間使用しているとメールとフィメールの接触部分の摩滅から来る両者の適合不全に対処することができず、その結果メールやフィメールが固着されている維持歯となる天然歯又は人工歯根や歯科用補綴物全体を作り替えなければならなくなるという欠点があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述したように有床義歯は着脱が毎日繰り返されるものであり且つ咀嚼時などには咬合圧力の大きな力を常に受けるものでもあるため、有床義歯に変形圧力や予想外の大きな力が加えられてもその構成部材が破損したり摩滅が異常に進んだりしないようにそれら外力を歯肉に負担させたり分散させたりすることが可能で、結果的に有床義歯を維持する維持歯となる天然歯や人工歯根への負担を軽減する構成であり、しかも長期に亘る使用がなされてもメールやフィメールが固着されている維持歯となる天然歯又は人工歯根や歯科用補綴物全体を作り替える必要がないように磨滅する部品を或る特定の部品に限る構造にしてこの部品の交換で容易に初期の性能の回復が可能な有床義歯用アタッチメントを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、維持歯となる天然歯又は歯科用インプラントフィクスチャーの歯根の上部構造として固着される構成要素と歯科用補綴物の該構成要素と対応する位置に固定される構成要素とから成る有床義歯用アタッチメントを、前記構成要素の一方が、歯根又は歯科用補綴物に固着される固着部と該固着部に立設されているネック部と該ネック部の該固着部と反対側に連設されており該ネック部の太さより大きな直径を有する球状部とで構成されるメールであり、前記構成要素の他方が、歯科用補綴物又は歯根に固着される大きさの略円筒形状をなし該メールと対向する側に該メールの球状部の直径より大きな直径の開口部と該開口部に連通する中空部とを備えたハウジング部材と、該ハウジング部材の中空部内に収納された際に該開口部と対応する位置に位置する前記メールの球状部の直径より小さな口径の開口部と該開口部に連通しその空間内面で前記メールの球状部を保持する保持空間と該開口部を前記メールの球状部が通過できるようにするために側面に形成されており該開口部に連接されて成るスリットとを備えており該ハウジング部材の中空部内に着脱自在で且つ該ハウジング部材の中空部に係合して装着される弾性を有し且つ前記メールの球状部より軟質のプラスチック製のライダーとから成るフィメールである構成にすれば良いことを究明して本発明を完成したのである。
【0013】そして、前述した構成において、ライダーの外周面が開口部側に向け先細りとなる截頭円錐形状をなしていたり、ハウジング部材の中空部とライダーとの係合構造が該ハウジング部材の中空部内周面に形成された該ハウジング部材の軸線に略直角な凸条又は凹溝と該ライダーの外周面であって該ハウジング部材の中空部内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成された該ライダーの軸線に略直角な凹溝又は凸条とから成る抜け止め構造であったり、このハウジング部材の中空部とライダーとの係合構造に該ハウジング部材の中空部内周面に形成された該ハウジング部材の軸線に略平行な凸条又は凹溝と該ライダーの外周面であって該ハウジング部材の中空部内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成された該ライダーの軸線に略平行な凹溝又は凸条とから成る回転止め構造が付加されていたり、ライダーの保持空間が該保持空間内に保持されたメールの球状部が該保持空間内で僅かに該ライダーの軸線に直角又は平行な方向に移動できるようにその断面形状が両側が半球状でその間が円筒状であったり、ライダーの開口部及びハウジング部材の開口部から所定の位置まで該ライダー及び該ハウジング部材の側面の各々対応合致する位置にスリット及び切り溝が形成されており少なくとも該ライダーに形成されているスリットの幅がメールの球状部の直径より小さくネック部の太さより大きな幅であったり、メールの固着部がネック部に連設された基底部と該基底部の該ネック部側と反対側に連設されている該基底部より細い棒状連結部と該棒状連結部の該基底部側と反対側に連設されている該棒状連結部より大きな突起状板とで構成されており該基底部の該ネック部側が該ネック部に向けて厚板状になだらかに隆起していたりするような構成にすればより好ましいことも究明したのである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面により本発明に係る有床義歯用アタッチメントの実施例について詳細に説明する。図1は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する一方の構成要素であるメールの1実施例の拡大正面説明図、図2は図1に示したメールの拡大平面説明図、図3は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する他方の構成要素であるフィメールを構成する一方の部材であるハウジング部材の1実施例の右側を断面で示す拡大正面説明図、図4は図3に示したハウジング部材の拡大底面説明図、図5は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する他方の構成要素であるフィメールを構成する一方の部材であるハウジング部材の他の実施例の右側を断面で示す拡大正面説明図、図6は図5に示したハウジング部材の拡大底面説明図、図7は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する他方の構成要素であるフィメールを構成するもう一方の部材であるライダーの1実施例の一部を断面で示した拡大正面説明図、図8は図7に示したライダーの拡大底面説明図、図9は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する他方の構成要素であるフィメールを構成するもう一方の部材であるライダーの他の実施例の拡大斜視図、図10は本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する構成要素であるメールとフィメールとが組み合わされた状態の1実施例を説明するフィメールを断面で示した拡大説明図、図11は図10に示した本発明に係る有床義歯用アタッチメントを構成する構成要素であるメールとフィメールとが組み合わされた状態の1実施例を説明する斜視拡大説明図、図12は顎骨に埋入された人工歯根に固定されている人工歯の内側にフィメールが配備された状態の1実施例を示す拡大斜視説明図、図13は歯根(天然歯又は人工歯根)に固着されたメールの向きが顎堤と並行となるように配備された状態の1実施例を示す拡大斜視説明図、図14は歯根(天然歯又は人工歯根)に固着された2個のメールの向きが顎堤と直角となるように配備された状態の1実施例を示す拡大斜視説明図、図15は上顎全部床義歯に2個のフィメールが配備された状態の1実施例を義歯床側から見た拡大斜視説明図である。
【0015】図面中、1は本発明に係る有床義歯用アタッチメントの一方の構成要素であるメールであり、歯根又は歯科用補綴物に固着される固着部1cと、この固着部1cに立設されているネック部1bと、このネック部1bの固着部1cと反対側に連設されておりネック部1bの太さより大きな直径を有する球状部1aとで構成されている。球状部1aとしてはその直径が1.5〜2.5mm程度の大きさで、ネック部1bとしてはその直径が0.8〜1.5mm程度が好ましい。また、固着部1cは固着されるものの材質によってその構成を変えることができ、残存する天然歯を支台歯として形成する場合には図示しないが支台歯に穿設された孔に埋設されるようにネック部1bに連設された截頭円錐形状等のポスト部であり、鋳接によって固着される場合及びレジン等の合成樹脂に埋設されて固着される場合には図示した実施例のようにネック部1bに連設された基底部1dとこの基底部1dのネック部1b側と反対側に連設されている基底部1dより細い棒状連結部1eと棒状連結部1eの基底部1d側と反対側に連設されている棒状連結部1eより大きな突起状板1fとで構成されていることが好ましく、この場合には基底部1dのネック部1b側がネック部1bに向けて厚板状になだらかに隆起していると後述するフィメールと面当たりすることがなくなるので有床義歯5の着脱がより容易に行えるようになるので好ましい。
【0016】このメール1は、口腔内において使用されるものであり且つ半永久的に使用することを意図したものであるから、化学的に安定していて比較的強度のあるステンレス鋼やチタン合金などの歯科用合金や歯科用金合金やこれと同等の金合金や強化プラスチックなどで製作されている。
【0017】2は本発明に係る有床義歯用アタッチメントの他方の構成要素であるフィメールを構成する一方の部材である金属製のハウジング部材であり、歯科用補綴物又は歯根に固着される大きさである直径が4.0〜6.0mmで高さが3.5〜5.5mm程度の略円筒形状をなし前記メール1と対向する側にメール1の球状部1aの直径より大きな口径の開口部2aとこの開口部2aに連通する中空部2bとを備えている。そしてこのハウジング部材2は、図15に示すような有床義歯5(図示した例は上顎の全部床義歯である)の義歯床5cのレジンや図12に示すように天然歯4aに並んで顎骨に埋入された人工歯根に固定されている人工歯5aの内側(舌側)等に固着される部材であるから、これらのレジンや人工歯から容易に離脱することが無いようにその外側面に全周に亘って溝2cが形成されていることが好ましい。この溝2cが形成されているハウジング部材2を図15に示すような有床義歯5の義歯床5cのレジンに固着するには、予め準備されている人工歯5aが所定位置に保持されている有床義歯作製用石膏鋳型内の所定位置にハウジング部材2を位置させておいて、この石膏鋳型内に義歯床5c用素材である柔らかいレジンを流し込んで固化させることによって行えば良いが、義歯床5cにハウジング部材2挿入用の孔を確保し、この孔内にハウジング部材2を挿入して接着剤を使用して固定しても良い。
【0018】このハウジング部材2は、開口部2aからこの開口部2aに連通する中空部2b内に後述するライダー3を挿入し格納することでフィメールを形成するものであるから、挿入格納されたライダー3が係合する部分が設けられていることが必要であり、この係合する部分としてはライダー3が中空部2b内から抜け出ることがないようにハウジング部材2の中空部2b内周面に形成されたハウジング部材2の軸線Xに略直角な凸条又は凹溝(図示した実施例は抜け止め用凹溝2d)であることが好ましい。更にライダー3が中空部2b内で回転することがないようにハウジング部材2の中空部2b内周面にハウジング部材2の軸線Xに略平行な凸条又は凹溝(図示した実施例は回転止め用凹溝2e)が形成されいることがより好ましい。
【0019】このように構成されているハウジング部材2には、図3及び4に示す実施例のような円筒形状を有する外周面のものと、図5及び6に示す実施例のような円筒形状の外周面の一部が平面状に切り落とされてU字状の所定大きさの切り溝2fが形成されているものとの2種類が存在しており、この中で後者のものは後述するようにその使用状態の制限が少ないので好ましい。
【0020】3は本発明に係る有床義歯用アタッチメントの他方の構成要素であるフィメールを構成する他方の部材である弾性を有し且つ前記メール1の球状部1aより軟質のプラスチック製のライダーであり、ハウジング部材2の中空部2b内に収納された際にその開口部2aと対応する位置に位置する前記メール1の球状部1aの直径より小さな口径の開口部3aとこの開口部3aに連通しその空間内面でメール1の球状部1aを保持する保持空間3bと開口部3aをメール1の球状部1aが通過できるようにするために側面に形成されており開口部3aに連接されて成るスリット3cとを備えている。このスリット3cによる開口部3aの拡径効果を有効に発揮させるには、ライダー3の外形状は開口部3a側に向け先細りとなる截頭円錐形状を成していることが好ましい。
【0021】このライダー3は、ハウジング部材2の中空部2b内に着脱自在で且つハウジング部材2の中空部2bに係合して装着されるものであるから、この係合する部分としてはライダー3が中空部2b内から抜け出ることがないように、ライダー3の外周面であってハウジング部材2の中空部2b内周面に形成された凸条又は凹溝(図示した実施例は抜け止め用凹溝2d)に対応する位置に形成されたライダー3の軸線Yに略直角な凹溝又は凸条(図示した実施例は抜け止め用凸条3d)から成る抜け止め構造であることが好ましい。更に、ライダー3がハウジング部材2の中空部2b内で回転することがないように、ハウジング部材2の中空部2b内周面にハウジング部材2の軸線Xに略平行な凸条又は凹溝(図示した実施例は回転止め用凹溝2e)が形成されいる場合には、ライダー3の外周面であってハウジング部材2の中空部2b内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成されたライダー3の軸線Yに略平行な凹溝又は凸条(図示した実施例は回転止め用凸条3e)から成る回転止め構造が付加されているとより好ましい。
【0022】そして、この回転止め構造における回転止め用凹溝2eと回転止め用凸条3eとには、図3,4及び図5,6に示した実施例のように、その中間近傍に幅を異ならせる段差が設けられていても、更には深さを異ならせる段差が設けられていても良い。
【0023】また、ハウジング部材2が図5及び6に示す実施例のような円筒形状の外周面の一部が平面状に切り落とされてU字状の所定大きさの切り溝2fが形成されている場合にこのハウジング部材2の中空部2b内に収納されるライダー3には、回転止め用凸条3eの反対側に位置する側面であってハウジング部材2に形成されている切り溝2fと対応する位置にU字状の切り通し溝の役目を果たすようにしてスリット3cが形成されていると、このスリット3cの部分にメール1のネック部1bが位置する状態にして開口部3aから球状部1aをフィメール内、即ちライダー3の収納空間3b内に挿入格納することができる。従って、このライダー3に形成されているスリット3cの幅の制限は、メール1の球状部1aの外形寸法より小さくネック部1bの太さより大きいことである。このような制限は、図10及び11に示すようにメール1のネック部1bをライダー3に形成されているスリット3cを通過させて、メール1の球状部1aをフィメール内即ちライダー3の収納空間3b内に収納した状態で、メール1の球状部1aがライダー3に形成されているスリット3cを通過して抜け落ちることを防止すると同時に被圧変位に伴う僅かな動きに対応して動くことを可能にするためである。
【0024】このようなハウジング部材2に切り溝2fがまたライダー3にスリット3cが形成されているフィメールとメール1と組合せを部分床義歯に使用する場合には、例えば図12に示すように顎堤4の顎骨に埋入された人工歯根に固定されている人工歯5aにフィメールが配備されている場合と、図13に示すように歯根(天然歯又は人工歯根)に固着された支台1gにメール1が横方向(顎堤4の表面にほぼ並行な状態)に鋳接されている場合との二つの方法が存在している。また、アタッチメントとしての強度不足が考えられる場合には、隣の天然歯にも同様の加工を施してフィメール又はメール1を二連にして用いるようにされていても良い。
【0025】また、前記したハウジング部材2に切り溝2fが、またライダー3にスリット3cがそれぞれ形成されているフィメールである場合とそうでない場合とにおいては、図14に示すように歯根(天然歯にあっては支台歯に、また人工歯根にあっては人工歯根に固定されたゴールドシリンダー)に2個のメールをその向きが顎堤と直角となるように配備固着し、図15に示すように有床義歯5の義歯床5cの顎堤4の粘膜面に接する部分に溝状の床内空隙5bを形成しておいて、この床内空隙5bの両端にフィメールを配置させると共に、この床内空隙5b内とこれに対応する位置の顎堤4には別な有床義歯5の維持手段(図示なし)を収納するように構成しても良い。即ち、本発明に係る有床義歯用アタッチメントと他の有床義歯の維持手段とを組み合わせることでより良い有床義歯5の装着環境が整えることも可能である。
【0026】前述のような位置関係にメール1とフィメールとを配備すると、有床義歯5の義歯床5cの高さを低く抑え、しかも小型でありながら強力な結合が可能であり、有床義歯5の装着時に義歯床5cを傾けながら装着することなどによるモーメントの発生や、咀嚼時などに咬合圧力のような変形圧力や予想外の大きな力を常に受けても、メール1側の形状が球状体1aであるからこの球状体1aを中心とするフィメール側の傾斜が可能であるので、有床義歯5やアタッチメントが破損することがないのである。
【0027】また、ライダー3の保持空間3bが、この保持空間3b内に保持されたメール1の球状部1aが保持空間3b内で僅かにライダー3の軸線Yに直角又は平行な方向に移動できるようにその断面形状が両側が半球状でその間が円筒状であると、前記メール1の球状体1aを中心とするフィメール側の傾斜が可能であるという動きの自由度に加えて、食物を咀嚼する時などの有床義歯5の全体的な義歯床5cの沈み込み(平行移動)にも対応可能であるという動きの自由度も確保できるのである。このライダー3の保持空間3bにおける両側の半球状部間の円筒状部の長さは、ライダー3の軸線Yが顎堤4の表面にほぼ並行な状態に配備されて固定された場合を示す図9に示すように有床義歯5の全体的な義歯床5cの沈み込み(平行移動)の予想距離Lに対応する長さ、そして別の維持手段(ドルダーバーアタッチメント等)と共用した場合には所定の長さに予め設定しておけば良いのである。
【0028】また、ライダー3の開口部3a及びハウジング部材2の開口部2aから所定の位置までライダー3及びハウジング部材2の側面の各々対応合致する位置にスリット3c及び切り溝2fが形成されており、少なくともライダー3に形成されているスリット3cの幅がメール1の球状部1aの直径より小さくネック部1bの太さより大きな幅であると、図10及び11に示すようにメール1の球状部1aの中心とネック部1bの中心とを結ぶ軸線とライダー3の軸線Yとが直角を成す状態にもメール1の球状部1aをライダー3の保持空間3b内に収納することもでき、更にハウジング部材2の側面に形成されている切り溝2fの幅がメール1の球状部1aの直径よりも大きく且つライダー3の側面に形成されているスリット3cがメール1の球状部1aの直径よりも大きく押し拡げ得る場合にはメール1の球状部1aをライダー3の保持空間3b内に収納するのに開口部3aを押し拡げて挿入するのではなく、ライダー3のスリット3cを押し拡げて側面から直ちに挿入することもできる。
【0029】そして、ライダー3の外周面が開口部3a側に向け先細りとなる截頭円錐形状をなしていれば、メール1の球状部1aをライダー3の保持空間3b内に収納するのにライダー3の開口部3aを押し拡げることが容易となるので、ライダー3の開口部3aの口径をメール1の球状部1aの直径より充分小さくなるように設定しておくことができるため、メール1の抜け止め効果を高めることができるのである。また、図9に示すようにライダー3のスリット3cの両側から外側に突出したフランジ3fを設けてハウジング部材2の切り溝2fの端面をこのフランジ3fで被うようにしておけば、ライダー3のハウジング部材2内での回転止め効果と同時にメール1のネック部1bに連設された基底部1dとハウジング部材2との金属同士の接触を完全に防ぎ得るので更に好ましい。
【0030】
【発明の効果】以上に詳述したようなメールとフィメールとの組合せから成る本発明に係る有床義歯用アタッチメントは、咀嚼時などに咬合圧力のような変形圧力や予想外の大きな力を常に受けても、メール側の形状が球状体であるからこの球状体を中心とするフィメール側の傾斜が可能であるので、有床義歯やアタッチメントが破損することがなく、またメールの球状体と接するフィメールのライダーがハウジング部材の中空部内に着脱自在で且つメールの球状体より軟質で加工が容易で変形抵抗力の設定が自在で且つ安価であるプラスチック製であるため、毎日有床義歯の着脱が幾度となく繰り返され更に咀嚼時などに咬合圧力のような変形圧力や予想外の大きな力を常に受けてメールのの球状体を中心とするフィメール側が傾斜することにより摩耗するのはフィメールのライダーだけであるから、このライダーを交換することによりメールとフィメールの接触部分の摩滅から来る両者の適合不全に容易に対処でき、その結果メールやフィメールが固着されている維持歯となる天然歯又は人工歯根や歯科用補綴物全体を作り替えなければならなくなることがなくなるばかりでなく、有床義歯に偏った力が加わりゆがむような状態になっても、メールとフィメールとの間の動きに自由度が確保できるのである。
【0031】そして、ライダーの外周面が開口部側に向け先細りとなる截頭円錐形状をなしていれば、メールの球状部をライダーの保持空間内に収納するのにライダーの開口部を押し拡げることが容易となるので、ライダーの開口部の口径をメールの球状部の直径より充分小さくなるように設定しておくことができるため、メールの抜け止め防止効果を高めることができる。
【0032】また、ライダーはハウジング部材の中空部内に着脱自在で且つハウジング部材の中空部に係合して装着されるものであるが、このハウジング部材の中空部とライダーとの係合構造が、ハウジング部材の中空部内周面に形成されたハウジング部材の軸線に略直角な凸条又は凹溝とライダーの外周面であってハウジング部材の中空部内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成されたライダーの軸線に略直角な凹溝又は凸条とから成る抜け止め構造や、更にハウジング部材の中空部内周面に形成されたハウジング部材の軸線に略平行な凸条又は凹溝とライダーの外周面であってハウジング部材の中空部内周面に形成された凸条又は凹溝に対応する位置に形成されたライダーの軸線に略平行な凹溝又は凸条とから成る回転止め構造が付加されているものであると、ライダーがハウジング部材の中空部内から抜け落ちたり、更にはハウジング部材の中空部内で回転したりすることがないので、良好な状況で使用できる。
【0033】更に、ライダーの保持空間がその内部に保持されたメールの球状部が保持空間内で僅かにライダーの軸線に直角又は平行な方向に移動できるようにその断面形状が両側が半球状でその間が円筒状である場合には、食物を咀嚼する時などの有床義歯の全体的な義歯床の沈み込み(平行移動)にも対応可能であり、有床義歯用アタッチメントを構成するメールとフィメールとの間の動きの自由度がより高くなり、有床義歯やアタッチメントに有害な外力を歯肉に負担させたり分散させたりすることができるから、結果的に有床義歯を維持する天然歯や人工歯根への負担を軽減できる。
【0034】そして、ライダーの開口部及びハウジング部材の開口部から所定の位置までライダー及びハウジング部材の側面の各々対応合致する位置にスリット及び切り溝が形成されており、少なくともライダーに形成されているスリットの幅がメールの球状部の直径より小さくネック部の太さより大きな幅であれば、このスリットの部分にメールのネック部が位置する状態にして開口部からメールの球状部をフィメール内、即ちライダーの収納空間内に挿入格納することができる。更に、ハウジング部材の側面に形成されている切り溝の幅がメールの球状部の直径よりも大きく且つライダーの側面に形成されているスリットがメールの球状部の直径よりも大きく押し拡げ得る場合にはメールの球状部をライダーの保持空間内に収納するのにライダーの開口部を押し拡げて挿入するのではなく、ライダーのスリットを押し拡げて側面から直ちに挿入することもできる。加えて、フィメールの軸線に対して平行又は直角であるメールの動きに対応することができるから、有床義歯の製作の自由度が向上するのでより一層好ましいのである。
【0035】更に、メールの固着部が、ネック部に連設された基底部と、この基底部のネック部側と反対側に連設されている基底部より細い棒状連結部と、棒状連結部の基底部側と反対側に連設されている棒状連結部より大きな突起状板とで構成されており、基底部のネック部側がネック部に向けて厚板状になだらかに隆起していると、レジンに確実に固着できると共に、フィメールと面当たりすることがなくなるので有床義歯の着脱がより容易に行えるようになる。
【0036】このような種々の効果を奏するに本発明に係る有床義歯用アタッチメントの歯科医療の技術の向上に寄与する価値は非常に大きなものがある。
【出願人】 【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
【出願日】 平成11年12月20日(1999.12.20)
【代理人】 【識別番号】100070105
【弁理士】
【氏名又は名称】野間 忠之
【公開番号】 特開2001−170081(P2001−170081A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−361379