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【発明の名称】 歯科用根管治療器具及びその製造方法
【発明者】 【氏名】村井 秀行

【氏名】松谷 貫司

【氏名】高瀬 敏之

【要約】 【課題】根管内に挿入されて根管壁を切削する歯科用根管治療器具に於いて、押し操作したときには切削性がなく、引き操作の際にのみ切削性能を発揮させる。

【解決手段】シャフト部1と、シャフト部1に連続する螺旋状の作業部2とを有し、作業部2の横断面形状が、長辺2bが短辺2aの1.5倍以上の長さである平行四辺形であり、該作業部2の長手方向互いに近接する2つのエッジ(鋭角2c,鈍角2d)のうち鋭角2cをシャフト部1側に配置し、鈍角2dを先端部4側に配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有する歯科用根管治療器具であって、作業部の横断面形状が、長辺が短辺の1.5倍以上の長さである平行四辺形であり、該歯科用根管治療器具の作業部の長手方向に互いに近接する2つのエッジのうち鋭角のエッジをシャフト部側に配置したことを特徴とする歯科用根管治療器具。
【請求項2】 シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有する歯科用根管治療器具であって、作業部の横断面形状が、長辺が短辺の1.5倍以上の長さである平行四辺形であり、該歯科用根管治療器具の作業部の長手方向に互いに近接する2つのエッジのうちシャフト部側から離隔する方向に配置されたエッジが潰されていて且つ該エッジの中心軸からの高さが他のエッジの中心軸からの高さより低いことを特徴とする歯科用根管治療器具。
【請求項3】 シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有し、長辺が短辺の1.5倍以上の長さの平行四辺形断面を有する歯科用根管治療器具の製造方法において、短辺面を仕上げた後長辺面を仕上げ、その後、所定の捩じれ角度で捩じることを特徴とする歯科用根管治療器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科治療に於ける根管を成形するためのリーマ,ファイルと呼ばれる歯科用根管治療器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯の根管は極めて細く且つ微妙に屈曲した形状を有しており、且つこの屈曲形状は個人差が大きい。このような根管を切削して成形する治療器具として、リーマやファイルが用いられている。リーマ,ファイルは螺旋状の切刃を有する切削用器具であり、切刃の頂点を結ぶ線はテーパ状に形成されており、リーマは主として回転操作、ファイルは主として押し引き操作して根管を切削する。またファイルの中には比較的捻じれ角度が弱く回転切削も可能なKファイルと、捻じれ角度が最も強く押し引き切削専用のHファイル等がある。
【0003】ここで、現在提供されているKファイル,Hファイルの作業部の断面形状について説明する。図10は作業部の横断面部であり、図11はKファイルの作業部の縦断面図である。尚、図10に示す円はファイルの任意の位置に於ける切刃が内接する円である。図10に於ける51は横断面が正方形のファイルであり、このファイル51の縦断面を図11に示す。このファイル51は市場に提供されているファイルの中では高い断面二次モーメントを有する。このため、曲げや捩じりに対し高い抵抗を発揮するが、切刃51aのすくい角θが小さく、切削性や切削屑の排除特性が悪く、根管追従性も低い。ここで、すくい角とは切刃の移動方向に対して直角方向が0度であり、すくい面(移動方向の切刃面)が移動方向に倒れていればマイナス角であり、反対方向であればプラス角である。よってこの切刃51aのすくい角はマイナス角であり、絶対値の大きいマイナスであるので角θは小さいとの表現になる。
【0004】また図10に於ける52は横断面が三角形のファイルであり、前述のファイル51に比較して断面二次モーメントが小さく、良好な根管追従性を有する。また切刃52aのすくい角が大きく且つ円との間に大きい空間を形成することが出来るため、切削性及び切削屑の排除性共に良好である。
【0005】ファイルに一般的に要求される性能として、個人差の大きい歯の根管の屈曲形状に対し柔軟に追従し得ること、良好な切削性を有すること、切削した屑を押し引き又は回転操作に伴って容易に排除し得ること、根管形状,器具サイズに適切に応じた曲げに対する抵抗や、捩じりに対し高い破断角度特性を有すること、特に回転時に食い込みロックしないこと等が挙げられる。
【0006】上記の如き根管治療器具は、目的のサイズに対応させた太さを持った線状の素材を形成し、この素材の外周を例えば特公昭58−52782号公報に開示された方法等により長手方向に傾斜研削して目的の横断面形状とした後、例えば特公昭62−22733号公報に開示された方法を採用して捩じることで製造される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記根管治療器具、特にファイルでは押し引き操作に伴って根管壁を切削するが、図に示すように、根管壁の深さ方向に接触した切刃は押し側及び引き側(根管壁の深さに沿った方向、ファイルの縦方向に沿った方向)に略等しい角度を有する。このため、押し操作及び引き操作共に略同等の切削性能を有しており、押し操作に伴って発生した切削屑が根尖口に到達して患者の体内に侵入する虞があるという問題がある。このように、切削屑が根尖口に達して根尖から菌が体内に侵入した場合、患者に、炎症を起こしたり、ひどい傷みを伴ったり、腫れを生じさせたり、腫れがひどい場合には顔の形まで変えてしまうという多大な苦痛を与えることになる問題がある。
【0008】本発明の目的は、柔軟で且つ切味が良く、押し操作の際には切削することがなく、引き操作の際にのみ切削性能を発揮する歯科用根管治療器具と、この歯科用根管治療器具の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明に係る歯科用根管治療器具は、シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有する歯科用根管治療器具であって、作業部の横断面形状が、長辺が短辺の1.5倍以上の長さである平行四辺形であり、該歯科用根管治療器具の作業部の長手方向に互いに近接する2つのエッジのうち鋭角のエッジをシャフト部側に配置したものである。
【0010】上記歯科用根管治療器具(以下、単に「治療器具」という)では、作業部の横断面に於ける長辺と短辺との比が1.5以上あるため、長辺に沿った方向の断面二次モーメントと短辺に沿った方向の断面二次モーメントでは値が大幅に変化する。このため、作業部に於ける任意の部位では曲げ易さに方向性が生じる。しかし、作業部が螺旋状に捩じった状態で形成されるため、該作業部全体としては曲げ易さの方向性が生じることがなく、高度な柔軟性と剛性を発揮することが出来る。
【0011】作業部の横断面が平行四辺形であることから、鋭角のエッジを目的の円に内接させたとき、鈍角のエッジは円に接することなく頂点が該円の内側に位置する。このため、螺旋状に捩じった作業部に於ける長手方向に配置され互いに近接した一対のエッジのうち、鋭角のエッジをシャフト側に配置することによって、作業部の先端側に配置された鈍角のエッジは頂点が鋭角のエッジの頂点よりも低くなる。従って、鋭角のエッジが根管壁に接触した場合であっても、鈍角のエッジは根管壁に接触することがない。
【0012】上記の如く、根管壁には互いに近接した2つのエッジのうちシャフト側に配置された鋭角のエッジが接触し、且つ引き操作において該エッジはすくい角の大きい切削性の良好な切刃として形成されるものの、押し操作において該エッジはすくい角の極めて小さいエッジが接触することとなる。従って、治療器具を押し操作した場合には、根管壁に対し鋭角のエッジにおけるすくい角の小さい部位が接触することとなり、この接触によって根管壁を擦り付けることが出来るものの切削することは出来ない。また治療器具を引き操作した場合には、すくい角の大きい切削性の良好な部位が接触することで、根管壁を良好な状態で切削することが出来る従って、治療器具の押し操作では根尖側に切削屑が発生することがなく、切削屑を根尖口の方向に押し込むことがない。
【0013】また本発明に係る他の治療器具は、シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有する歯科用根管治療器具であって、作業部の横断面形状が、長辺が短辺の1.5倍以上の長さである平行四辺形であり、該歯科用根管治療器具の作業部の長手方向互いに近接する2つのエッジのうちシャフト部側から離隔する方向に配置されたエッジが潰されていて且つ該エッジの中心軸からの高さが他のエッジの中心軸からの高さより低く構成したものである。
【0014】上記治療器具では、作業部の横断面が長方形を含む平行四辺形であっても、該作業部を螺旋状に捩じることで長手方向に近接した2つのエッジのうちシャフト部側から離隔した側に配置されたエッジを積極的に潰すことで該エッジの中心軸からの高さが他のエッジの中心軸からの高さよりも低くすることによって、潰したエッジが根管壁に接触しない。
【0015】このため、前述の治療器具と同様に押し操作した場合には根管壁を切削することが出来ず、引き操作した場合にのみ根管壁を切削することが出来る。従って、治療器具の押し操作では根尖側に切削屑が発生することがなく、切削屑を根尖口の方向に押し込むことがない。
【0016】また本発明に係る治療器具の製造方法は、シャフト部と、シャフト部に連続する螺旋状の切刃からなる作業部とを有し、長辺が短辺の1.5倍以上の長さの平行四辺形断面を有する歯科用根管治療器具の製造方法であって、短辺面を仕上げた後長辺面を仕上げ、その後、所定の捩じれ角度で捩じることを特徴とするものである。
【0017】上記製造方法では、素材を研削等の手段によって先ず短辺面を仕上げ、その後、長辺面を仕上げることによって、素材を安定した状態で保持して研削することが出来る。
【0018】
【発明の実施の形態】上記治療器具の好ましい実施形態について図を用いて説明する。図1は治療器具の全体構成を説明する側面図である。図2は第1実施例に係る治療器具の作業部の横断面図である。図3は第1実施例に係る治療器具の縦断面図である。図4は長手方向に近接した2つのエッジと根管壁との関係を説明する拡大図である。図5は作業部に於ける捩じり方向を説明する図である。図6は第2実施例に係る治療器具の横断面図である。図7は第2実施例に係る治療器具の長手方向に近接した2つのエッジと根管壁との関係を説明する拡大図である。図8は治療器具を製造する方法を説明する図である。図9は作業部を捩じる方法を説明する図である。図10は従来の治療器具の横断面、図11は従来の横断面が正方形のファイルの縦断面を示す図である。
【0019】図1に示す治療器具Aは歯の根管壁を切削して成形するための器具であり、特に、医師が手で把持して操作するものである。この治療器具Aは、通常はサイズが06番(先端部位の太さが0.06mm)〜140番(先端部位の太さが1.40mm)の範囲で複数の太さを持った種類のものが提供されている。
【0020】この治療器具Aは、医師が指先に挟んで微妙な感触をたよりに操作して根管を切削して成形し、これに伴って根管の径が大きくなるに対応してより太い治療器具Aと交換しつつ、更に、操作して患者の歯に目的の径と形状を持った根管を成形していくのに用いられる。
【0021】治療器具Aはシャフト部1と、シャフト部1に連なる作業部2とによって構成されている。本実施例では、作業部2の先端部4は、サイズや作業部2の断面形状の如何に関わらず、所定角度(例えば60度〜90度)の尖端部として構成されている。
【0022】シャフト部1は、一連の製造工程中で合成樹脂製のハンドル3にインサート成形されて一体化されている。
【0023】このシャフト部1はハンドル3側から作業部2に接近するに従って、断面が円形から作業部2の断面である平行四辺形に形成される。シャフト部1のうち、作業部2をこのように構成することによって、急激に断面形状及び断面積を変化させることなく、応力の集中を排除して治療中に作用する曲げ力に対し良好に対抗することが可能である。
【0024】作業部2は、平行四辺形の横断面を有する線状体を所定方向に、所定のねじれ角でねじることにより、螺旋構造を持った棒状の形状を有している。そして、その全体の輪郭はストレート状或いはテーパ状(図ではテーパが形成されたものを図示する)に形成されている。
【0025】作業部2は、図2に示すように、短辺2aと長辺2bとにより断面が平行四辺形として形成されており、長辺2bの長さは短辺2aの長さの1.5倍以上に設定されている。前記長辺2bと短辺2aとの比率は、従来製品と比較し柔軟性、屈曲根管追従性及び視覚的新規性の点で、はっきりとした優位性を示す比率として多数の医師の意見も取りいれて求められたものである。また、比率の上限は、1:5であることが好ましい。これは、1:5以上であると柔軟過ぎてファイルとして使い物にならないという、現場の医師の意見による。
【0026】上記の如く、作業部2の断面が平行四辺形であることから、対角線上に夫々鋭角2cと鈍角2dが形成される。そして鋭角2cは作業部2の内接する円に接触して切刃2cとしての機能を発揮し、鈍角2dは円に接触することなく切刃としての機能を有していない。
【0027】即ち、鋭角2c(切刃2c)を構成する長辺2bと円とのなす角αが大きくなり且つ鋭角2cを構成する短辺2aと円とのなす角βが小さくなる。従って、図2(a)に示すように、作業部2が矢印a方向に進行するとき、角90−αがすくい角としての機能を発揮し、且つ角βが逃げ角としての機能を発揮する。即ち、切刃2cが根管壁に接触して長辺2bの方向に進行したときに良好な切削機能を発揮する。このため、作業部2の断面は鋭角2c,鈍角2dを如何なる方向に存在させるかによって方向性を有することとなり、前記各角2c,2dの位置と捻じれ方向との合成によって切削性を設定することが可能である。
【0028】例えば、図2に示す作業部2の断面をシャフト部1側から見た形状とした場合、同図(a)に示すように、長辺2bを水平方向にした時に鋭角2cが右下方向と左上方向に配置され且つ鈍角2dが右上方向と左下方向に配置された場合、鋭角2cが矢印a方向に進行したときに切削性を有する。目的の治療器具Aがリーマとして構成されている場合、単に該治療器具Aを矢印a方向に回転させることで鋭角2cを矢印a方向に進行させることが可能である。
【0029】しかし、目的の治療器具Aがファイルとして構成されている場合、押し引き操作の何れかの操作に伴って鋭角2cが相対的に矢印a方向に進行するように捩じることが必要である。特に、治療器具Aを引き操作したときに良好な切削性能を発揮する場合には、図5(a)に示すように、作業部2に於ける捩じり方向をシャフト側からみて右方向とすることが必要である。この場合、治療器具Aを引き操作することで、見掛け上、鋭角2c(切刃2c)がリードに従って矢印a方向に回転する。また押し操作した場合、鋭角2cを矢印b方向に後退させることとなり、角βが小さいことから、鋭角2cは殆ど切削性を発揮することなく、接触面を擦るようにして後退する。
【0030】また図2(b)に示すように、長辺2bを水平方向にした時に鋭角2cが右上方向と左下方向に配置され且つ鈍角2dが右下方向と左上方向に配置された場合、鋭角2cが矢印b方向に進行したときに切削性を有する。目的の治療器具Aがファイルであり且つ引き操作したときに良好な切削性能を発揮する場合には、図5(b)に示すように、作業部2に於ける捩じり方向を左方向とすることが必要である。この場合、治療器具Aを引き操作することで、見掛け上、鋭角2c(切刃2c)がリードに従って矢印b方向に回転する。また押し操作した場合、鋭角2cを矢印a方向に後退させることとなり、角βが小さいことから、鋭角2cは殆ど切削性を発揮することなく、接触面を擦るようにして後退する。
【0031】シャフト部1側から見た作業部2の断面が図2(a)に示す長辺2bを水平方向にした時に鋭角2cが右下に位置するものであり、且つ図5(a)に示す右捩じり方向に予め設定された捩じれ角度(43度)で捩じった作業部2では、長手方向の断面が図3に示すように形成される。即ち、短辺2aを挟む鋭角2cがシャフト部1側(図3に於ける左側)に配置され、鈍角2dがシャフト部1側から離隔した先端部4側(図3に於ける右側)に配置される。同様に図2(b)に示す断面を持ったものを図5(b)に示す左捩じり方向に捩じった作業部2も鋭角2cがシャフト部1側に配置され、鈍角2dが先端部4側に配置される。
【0032】また図3において鋭角(切刃)2cの頂点を線10によって結んだとき、鈍角2dの頂点は線10に接触することなく離隔する。このとき、線10から鈍角2dの頂点までの間隙11(図4参照)の寸法は、鋭角2cの角度及び短辺2aの長さ等の条件に応じて変化する。しかし、鈍角2dの頂点は短辺2aと長辺2bとが交差するエッジによって形成される。
【0033】尚、切刃2cの頂点を結ぶ線10は、治療器具Aによって根管の治療を行なう際の根管壁に対応するものである。
【0034】上記の如く構成された治療器具Aに於いて、作業部2の横断面に於ける鋭角2cの角度範囲は80度〜87度の範囲であることが好ましい。従って、鈍角2dの角度範囲は93度〜100度となる。
【0035】前述したように、治療器具Aの作業部2は極めて細く(最大の140番で先端部位の太さ(鋭角2cの対角線の寸法)が1.40mm)、極めて繊細な作業が要求され、且つ所定の公差が設定される。
【0036】鋭角2cの上限を87度に設定することで、作業部2の断面に於ける平行四辺形を確実に確保することが可能である。即ち、治療器具Aに、製造工程で設定された加工公差の範囲内のバラツキが生じた場合であっても、容易に鋭角を形成すると共にこの鋭角を確実に保証することが可能である。
【0037】また鋭角2cの下限を80度に設定することで、切刃2cとしての耐久性を確保することが可能であり、且つ押し操作の際に切削性を発揮させることがない。即ち、鋭角2cの角度を80度以下とした場合、切刃2cとしての剛性が小さくなり、且つ強度的に不利である。
【0038】また鋭角2cを80度以下にした場合、図2(a)に示す角βが大きくなって矢印b方向に後退させたとき、該鋭角2cが切刃2cとして機能して根管壁を切削することが可能となる。このため、治療器具Aを押し操作した場合であっても切削性を発揮することとなり、押し操作に伴って発生した切削屑を根尖口に到達させる虞が生じる。このように、鋭角2cが押し操作で切刃2cとして機能したとしても、角βは角α程度に大きくはなく、結局、鋭角2cは根管壁を切削しつつ擦ることとなり、該鋭角2cにへたりが生じて引き操作したときの切削性を損なって消耗することとなる。
【0039】従って、鋭角2cは、上限が87度で下限が80度の範囲に設定することが好ましい。
【0040】上記の如く形成された作業部2を有する治療器具Aでは、押し操作したときには切刃2cは切削性を発揮することがなく、引き操作したときに切削性を発揮する。特に、切刃2cが鋭角であるため根管壁となす角が大きくなり、根管壁に食い込んで良好な切削性を発揮することが可能である。
【0041】次に、治療器具Aに於ける作業部2の第2実施例の構成について図6,図7により説明する。本実施例に係る作業部2は、図6に示す断面20によって構成されている。この断面20は、短辺20aと長辺20bからなる長方形を含む平行四辺形として形成されており、長辺20bの長さは短辺20aの長さの1.5倍以上に設定されている。
【0042】本実施例では断面20は長方形に形成されており、短辺20aを挟んでエッジ20cと潰しエッジ20dが形成されている。前記各エッジ20c,20dは何れも短辺20aと長辺20bの交差角度が90度に設定され、エッジ20cは両辺20a,20bがエッジとして交差し、潰しエッジ20dは両辺20a,20bが交差した頂点及びその近傍を研削或いは塑性加工によって潰すことで形成されている。
【0043】上記断面20に於いて、中心Oからエッジ20cまでの距離は、中心Oから潰しエッジ20dの表面までの距離よりも大きい。また断面20は潰しエッジ20dを形成することによって、前述した第1実施例の場合と同様に方向性が生じる。このため、断面20を捩じる際には、シャフト部1側から見たエッジ20cの位置に対応させて捩じり方向が設定される。このとき、エッジ20cの位置と捩じり方向の関係は、前述の第1実施例と同様である。
【0044】上記断面20を有する素材を所定の角度で捩じって作業部2を構成し、図7に示すように、作業部2に於けるエッジ20cを線10で結んだとき、潰しエッジ20dと線10との間に間隙11が形成される。
【0045】しかし、潰しエッジ20dの潰し形状や潰し寸法は特に限定するものではなく、目的の治療器具Aの性格に応じて適宜設定することが可能である。又、本実施例における平行四辺形の1つの角は、80度以下ではエッジの耐久性が悪くなるので、80度〜90度であることが好ましい。
【0046】上記の如き作業部2を有する治療器具Aであっても、前述した第1実施例と同様に、押し操作の際には切削性を発揮することなく、引き操作の際に良好な切削性を発揮することが可能である。
【0047】次に、治療器具Aを製造する方法の例について図8,図9により説明する。この方法は特に作業部2を構成するものであり、シャフト部1に連なる作業部2を構成した後、合成樹脂製の手用ハンドル3と一体化させるか、或いはハンドピースに装着するためのエンジン用ハンドルと接続するかあるいはハンドルを付けずに直接別な器具に取付けるかを問うものではない。
【0048】図8に於いて、(a)の30は素材であり、作業部のシャンク側端の大きさに応じて一般的には太さが決められ、(b)の30は中間素材であり、予め研削等の工程を経て、シャフト部1に対応する部分が形成されると共に、作業部2に対応する部分が目的の治療器具Aのサイズに対応した太さとテーパを持って形成されている。また中間素材30を構成する材料は、錆びが発生することがなく且つ熱処理を要しないもの、例えば冷間線引き加工を施すことで充分に高い硬度と曲げ強さを発揮したオーステナイト系ステンレスを使用している。
【0049】中間素材30を、例えば特公昭58-52782号公報に開示されるように押し金によって砥石に押圧して研削する。この研削の第1の工程は、同図(a)に示すように、平行な2方向から研削して作業部2に於ける長辺2b,20bの寸法に仕上げるものであり、この工程によって短辺2a,20aの面が仕上がることになる。
【0050】次に、中間素材30を同図(b)に示すように回転させる。このとき、回転角度を設定することによって、第1実施例に於ける鋭角2cを80度〜87度の範囲に設定し、或いは第2実施例に於ける直角に設定する。同図は中間素材30を90度回転させて第2実施例の断面20を形成する場合を示している。
【0051】第1工程を経た中間素材30を回転させた後、この状態で平行な2方向から研削して短辺2a,20aの寸法に仕上げることで、長辺2b,20bの面を仕上げ、これにより、作業部2を目的の断面2,20に仕上げることが可能である。ここで「仕上げ」とは、「形成」を意味するものである。
【0052】上記の如くして中間素材30を目的の断面形状を持った直状に研削した後、予め設定された捩じれ角度で捩じることで目的の作業部2を持った治療器具Aを構成する。
【0053】中間素材30を捩じる場合、例えば特公昭62−22733号公報に開示された方法を採用することが可能である。特に、断面20を持った中間素材30を捩じって第2実施例に係る作業部2を形成する場合には、図9に示す方法を採用することが好ましい。
【0054】図9の方法は、互いに対向させて且つ予め設定された間隔を持って、一対の針押さえ治具31と、一対の針支え治具32を配置し、これらの針押さえ治具31と針支え治具32とによって構成された成形空間33に中間素材30を挿通し、この状態で全体を回転させることで中間素材30を捩じり、同時に中間素材30のエッジに針押さえ治具31を圧接させることで、該エッジを潰すことが可能となる。
【0055】従って、図9の方法を実施することによって、潰しエッジ20dを有する第2実施例の作業部2を一度の捩じり工程を経ることで製造することが可能である。図9はシャフト側から見た断面図である。
【0056】針押さえ治具31と針支え治具32を一体的に回転させて第2実施例の作業部2を製造する場合、目的の作業部2の捩じり方向が右方向である場合には、同図に於いて矢印a方向に回転させながら中間素材30のシャフト側から先端側へ移動すれば良く、また目的の作業部2の捩じり方向が左方向である場合には、同図に於いて矢印b方向に回転させながら先端側へ移動すれば良い。
【0057】上記製造方法を実行することによって、長辺2b,20bの長さが短辺2a,20aの1.5倍以上に設定された平行四辺形の断面を持った作業部2を合理的に製造することが可能である。ここで、短辺面、長辺面を仕上げた後に所定の捩り角度で捩るが、捩った後にバリ取り、表面の酸洗、表面硬化、表面着色等の表面仕上げを追加して行ってもこの請求項3の製造方法の範囲であることは言うまでもない。
【0058】尚、前述した各実施例に係る作業部2に於いて、長辺と短辺との比率をシャフト部1に接近するに連れて大きくすることが好ましい。この場合、作業部2がシャフト部1に接近するのに従って太くなるが、前記比率を大きくすることで柔軟性を維持することが可能である。また治療器具Aのサイズを大きくするのに従って前記比率を大きくすることが好ましい。この場合であっても、サイズの上昇に伴って太くなる作業部2に関わらず、柔軟性を維持することが可能である。
【0059】更に、作業部2に於けるシャフト部1側の長辺と短辺との比率と、先端部側の比率との比をサイズの上昇に伴って大きくすることが好ましく、作業部2のテーパが大きいもの程、前記比を大きくすることが好ましい。このような比とすることによって、作業部2の柔軟性を維持することが可能である。
【0060】また作業部2の捻じれ角は限定するものではない。特に、医師が手で操作する場合には40度以上であることが好ましく、更に先端から5mm程度の範囲では捻じれ角が30度程度であることが好ましい。先端部分の捻じれ角を30度とすることによって、該部分とこの部分に連なる部位との切削性能を変化させることが可能となる。
【0061】また各実施例に於いて、作業部2の断面は平行四辺形及び長方形を含む平行四辺形として規定しているが、これらの形状は、厳密な意味で平行四辺形或いは長方形である必要はなく、巨視的に見て平行四辺形であり長方形であれば良い。
【0062】またシャフト部1を取り付けるハンドルは、主として手操作による場合は図1に示すハンドル3で良い。しかし、治療器具Aをハンドピースに装着して治療する場合、ハンドルとして金属製のエンジン用のものが設けられる。またハンドピースに装着することを前提とした作業部2では捩じれ角を30度以下に設定することが好ましい。この捩じれ角が大きい場合、ハンドピースを回転させることによって根管壁に食い込むことが多くなる。
【0063】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明に係る治療器具では、押し操作したときに切削性を発揮することなく、引き操作によってのみ切削性を発揮することが出来る。このため、根管の治療に際し、根尖側に切削屑が発生することがなく、従って、切削屑が根尖に到達することがない。
【0064】また作業部の断面が平行四辺形及び長方形を含む平行四辺形とすることで、高い柔軟性を発揮することが出来る。
【0065】また長手方向に近接した2つのエッジのうちの一方を潰すと共に潰したエッジを他方のエッジよりも低くすることによって、潰したエッジが切削性を発揮することがなく、引き操作によってのみ切削性を発揮することが出来る。
【0066】また本発明に係る製造方法では、断面が平行四辺形、及び長方形を含む平行四辺形の治療器具を合理的に製造することが出来る。
【出願人】 【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100066784
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 周吉 (外1名)
【公開番号】 特開2001−170077(P2001−170077A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−358917