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【発明の名称】 発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定方法及び装置
【発明者】 【氏名】井川 資英

【氏名】三輪 全三

【氏名】飯島 英世

【氏名】野崎 修一

【氏名】橋本 秀夫

【要約】 【課題】患者に痛みを与えず、客観的な診断ができて、小児の幼若永久歯の歯髄診断に好適であり、しかも低コストにて構成できる、発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定方法及び装置を提供することを課題とする。

【解決手段】患歯6に一方向から緑色光を供給する量子井戸構造の発光ダイオード2と、前記患歯6を透過する光を受光する受光ダイオード4と、前記受光ダイオード4により受光された光電脈波から歯髄脈波に適合する周波数帯域の波形だけを検出する歯髄脈波検出手段と、検出された歯髄脈波を記録する出力手段とから成る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歯髄脈波測定方法における透過光の発光源に、緑色の量子井戸構造の発光ダイオードを使用したことを特徴とする歯髄脈波測定方法。
【請求項2】 前記発光ダイオードとこれに対応する受光センサーが、共に同域にピーク周波数を持つことを特徴とする、請求項1に記載の歯髄脈波測定方法。
【請求項3】 患歯に一方向から緑色光を供給する量子井戸構造の発光ダイオードと、前記患歯を透過する光を受光する受光ダイオードと、前記受光ダイオードにより受光された光電脈波から歯髄脈波に適合する周波数帯域の波形だけを検出する歯髄脈波検出手段と、検出された歯髄脈波を記録する出力手段とから成る発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定装置。
【請求項4】 前記発光ダイオードと前記受光ダイオードが、光ファイバーを介し、患歯に被装される個歯アダプターに接続される請求項3に記載の発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定装置。
【請求項5】 歯髄脈波の測定と同時に指尖脈波の記録を行なう手段を備えた請求項3又は4に記載の発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定方法及び装置、より詳細には、歯髄の生死を診断する方法として診察室で測定できる可能性を備えた、歯髄脈波測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯髄に一旦障害が生じると、種々の解剖学的条件から悪循環を起こし、ついには全部性壊死に陥ることもある。しかし、反面、幼若な歯の歯髄にはかなりの回復力があることが知られており、刺激を除去して安静を保つことにより歯髄を保存し得た症例も少なくない。従って、近時、歯髄診断、即ち、歯髄の生死鑑別を正しく行なうことの必要性が益々高まってきている。
【0003】歯髄疾患あるいは歯周疾患の発現、進行又は治療過程が、局所の血流と密接に関連していることは知られているところであり、歯髄の血行動態を知ることは、各種歯髄疾患の診断に役立つばかりではなく、外傷歯や矯正力を加えた歯にとっては予後を左右する因子として特に重要である。しかし、上述した通り、歯髄は周囲を硬組織に囲まれしかも容積も小さいために、その血行動態を調べる方法は限られている。
【0004】一般に広く用いられている方法としては、電気診断法とレーザードップラー血流測定法とを挙げることができる。電気歯髄診断は歯髄に電流を流し、神経の反応性をみることにより歯髄の生死を決定するものであり、以前はこの電気診が歯髄の生死を判定するのに最も信頼できる方法であると考えられていた。
【0005】しかし、この方法は、患者に痛みを与え、患者の返答は客観性を欠き、幼若永久歯では閾値が高く反応しにくいなどの欠点がある。そのため、殊に、小児歯科臨床においての歯髄の生死の診断法としては、不適当なものと言わざるを得ない。
【0006】レーザードップラー血流測定法は、照射したレーザー光が毛細血管内を流れる赤血球に衝突して散乱される際に受けるドップラーシフトを利用した測定法で、流速とドップラーシフト周波数の間に直線関係が成立するという特色を持ったものである。
【0007】この方法は、硬組織や歯髄などに傷害を与えずに歯髄血流を測定し得る利点を有し、外傷歯で電気診に反応しない歯髄の予後観察や、各種刺激に対する歯髄血流の変化の研究などいろいろな応用が期待される。しかし、測定に硬組織の厚さなどのファクターが影響するため、相対的な値での比較しかできず、歯肉等歯周組織の脈波成分が混入しやすく、体動等の影響を受けやすく、また装置も高価であるなどの欠点がある。
【0008】一方、透過光光電脈波法は光が歯冠を口蓋側から唇側に透過する際の歯髄血流に応じて散乱、吸収により生じる変化量を脈波として観察するものであり、レーザードップラー血流測定法に比べ、歯髄血流に由来する信号成分が多く含まれる。
【0009】透過光光電脈波法における光源としては、従来、タングステンランプや、歯を透過し易く血流量の変化を捕らえやすい波長である緑色に近い波長の発光ダイオードが使用されている。
【0010】しかし、従来使用している発光ダイオードは、波長が約565nmの黄緑色で発光輝度は数mcdから数十mcdのものであった。歯髄の光電脈波はきわめて微弱であるため、明るい光の方が信号対雑音の点で有利である。また、指向性が広いと、歯肉からの反射光を捕らえてしまう。そのため、検出される光電脈波はきわめて微弱で、外乱光や人の体動の影響を受けやすく、光を完全に遮断した暗室で患者や光源・センサーの固定に気を付けて測定しなければならないという欠点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従来の歯髄診断方法には上述したような欠点があったので、本発明はそのような欠点のない、即ち、患者に痛みを与えず、客観的な診断ができて、小児の幼若永久歯の歯髄診断に好適であり、しかも低コストにて構成できる、発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明に係る発光ダイオードを使用した歯髄脈波測定方法は、従来の歯髄脈波測定方法における透過光の発光源に、緑色の量子井戸構造の発光ダイオードを使用したことを特徴とするものである。
【0013】また、上記課題を解決するための本発明に係るダイオードを使用した歯髄脈波測定装置は、患歯に一方向から緑色光を供給する量子井戸構造の発光ダイオードと、前記患歯を透過する光を受光する受光ダイオードと、前記受光ダイオードにより受光された光電脈波から歯髄脈波に適合する周波数帯域の波形だけを検出する歯髄脈波検出手段と、検出された歯髄脈波を記録する出力手段とから成るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る方法を示すもので、本発明に係る装置を構成する個歯アダプター1と、これに取り付けられる光ファイバー3、5が示されている。個歯アダプター1は、患歯6の精密印象をとり、石膏模型上で即重レジンにて作製したものである。個歯アダプター1は前記患歯6に個装する。
【0015】図2は、本発明に係る装置の構成図で、それは、上記個歯アダプター1による歯髄脈波測定部21と、指尖脈波測定部22とで構成される。歯髄脈波測定部21において、受光センサー4で受光された光電脈波は、その中から歯髄脈波に合わせた周波数帯域の波形だけを検出するための歯髄脈波検出回路10に送られる。そこで検出された歯髄脈波は、オシロスコープや波形記録計等の出力手段11により出力される。
【0016】指尖脈波測定部22も歯髄脈波測定部21に似通った構成で、指先23を挟んで配置される発光ダイオード24と受光センサー25、指尖脈波検出回路26及び出力手段27を備える。出力手段11における出力波形と出力手段27における出力波形は、必要に応じてスムージング処理をした後、比照のための重合操作を行なう。
【0017】本発明において指尖脈波を歯髄脈波と同時に記録することとしたのは、歯髄脈波は心電図と同期するが、心電図を導出するより、同じく心電図に同期している指尖脈波を導出した方が、はるかに測定の簡便性があるためである。
【0018】ここにおける指尖脈波の検出には、既存のパルスオキシメーター等を利用することができる。このパルスオキシメーターにおいては、指尖脈波は、ピーク波長622nmの赤色発光ダイオード24と、同域にピーク波長を持つ受光センサー25にて、指先23の透過光から観察される。
【0019】本発明に係る方法の実施に当っては、個歯アダプター1の口蓋側歯頚部より2mm程の位置に、直径2mm程の挿入孔7を開け、そこに、透過光光電脈波検出のための光源としての量子井戸構造の発光ダイオード2から延びる光ファイバー3の端部を挿入する。このとき、光源の直径を約1mm程度にする。発光ダイオード2は口内に配置される場合と、口外に配置される場合とがある。唇側にも同様の挿入孔8を開け、そこに、Cds素子の光センサ4から導出した光ファイバー5の端部を挿入する。
【0020】使用する発光ダイオード2は、量子井戸構造の発光ダイオードで、波長が約525nmの純緑色、高出力(例えば発光輝度が6000mcd程度)で、かつ指向性が狭いものが好適である。
【0021】個歯アダプター1に挿入した光ファイバー3から、小型発光ダイオード2による光が入射されると、入射した光は、歯髄9を透過して、唇側に挿入されている受光用の光ファイバー5を通してCds素子の光センサー4で受光される。受光センサー4は、前記発光ダイオード2と同域にピーク周波数を持つ。
【0022】
【実施例】本発明においては、上述したように発光源として、緑色の量子井戸構造で指向性の狭い発光ダイオード2が用いられるが、これにより、従来の方法では満足のいく評価が下せなかった歯髄の生死鑑別を正しく行なうことが可能となった。このことは、下記試験例から明らかとなろう。なお、上述した理由並びに方法により、歯髄脈波の測定と同時に被験者の指尖脈波も記録した。
【0023】(実施例1)図3は成人被験者の、図4は小児被験者の、それぞれ健全な上顎中切歯から検出した歯髄脈波と指尖脈波の一例を示すものである。成人の歯髄脈波は指尖脈波との対応が明確でない部分もあるが、波形をスムージングし、指尖脈波と重ね合わせる操作をすれば、同期を確認しやすくなる。小児の幼若永久歯の場合は、スムージング処理をすることなく原波形のままでも両波の対応が明確である。
【0024】(実施例2)図5は成人被験者で局部麻酔を注射後5分、15分、30分経過後の歯髄脈波を平均加算したものである。この場合、麻酔の効果とともに、麻酔剤に含有される血管収縮剤のために脈波が観察されなくなり(麻酔5分後、15分後参照)、麻酔が醒めると再び脈波が観察されるようになった(麻酔30分後参照)。
【0025】(実施例3)図6は9歳男児の外傷完全脱臼による再植歯と脱臼歯を受傷4週間後に測定したものである。いずれの歯も電気診には反応せず、指尖脈波に対応した明瞭な脈波も観察されなかったため歯髄死が疑われる。
【0026】図7も同様に、6歳男児の外傷による不完全脱臼歯と打撲歯を受傷3週後に測定したものである。いずれの歯も電気診には反応しなかった。脱臼歯は平均加算しても脈波は観察されなかったが、打撲歯は平均加算すると指尖脈波に対応した脈波が観察されたため、現時点で生活歯であることが確認できた。
【0027】
【発明の効果】本発明は上述した通りであって、患者に痛みを与えず客観的に診断でき、小児の幼若永久歯から、電気診に反応しない場合であっても明瞭な歯髄波を検出でき、以って歯髄の生死鑑別を正しく行なうことができる歯髄脈波測定方法及び装置を提供し得る効果がある。この方法は、通常の診療室で実施できる可能性があり、被験者に恐怖心を起こさせるようなことはない。また、従来よりも人の体動の影響を受けにくく、殊に小児歯科臨床における脈波測定において診察をより円滑に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】599096101
【氏名又は名称】井川 資英
【識別番号】391026405
【氏名又は名称】東京医科歯科大学長
【識別番号】399033636
【氏名又は名称】ローテル株式会社
【出願日】 平成11年7月8日(1999.7.8)
【代理人】 【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 晴男
【公開番号】 特開2001−17453(P2001−17453A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−194914