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【発明の名称】 歯科用補綴物適合試験用分離材
【発明者】 【氏名】滝 智靖

【要約】 【課題】軟質材料で裏装された義歯などの歯科用補綴物の適合試験を行うに際し、作業性や試験精度を低下させることなく、試験後に硬化した適合試験材を歯科用補綴物から剥離するときの分離性を向上させる。

【解決手段】最大粒子径が500μmである粉体を分離材として使用し、適合試験材適用前の歯科用補綴物表面に該分離材を塗布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 最大粒子径が500μm以下の粉末からなることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材。
【請求項2】 最大粒子径が500μm以下の粉末および水からなることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材。
【請求項3】 最大粒子径が500μm以下の粉末および粘性率が1〜2000Pの有機溶媒からなることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯などの歯科用補綴物の適合試験を行う際に、補綴物と適合試験材等との分離性を向上させるために使用する分離材に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科用補綴物であるクラウン、インレー、ブリッジ、義歯等は、一般に硬質材料である金属、セラミックス、レジン等により構成される。これらの歯科用補綴物を適用する場合には、患者の口腔内の適用箇所にこれら補綴物が適合するかどうかを試験しながら、適合しない場合には適合するように補綴物を削る等して微調整することが行われている。
【0003】義歯の適合試験においては、義歯床に適合試験材と呼ばれるシリコーン系の硬化性ペーストを盛った後に患者の口腔内に適用し、適合性試験材が硬化したのちに取り出して義歯床面上で硬化した適合試験材の厚さを目視により確認するのが一般的である。この場合、上記の硬化体の厚さが均一に薄く全体的に下地が透けて見える場合は適合性が良好であるが、硬化体の厚さが部分的に厚い場合及び下地が部分的に露出している場合には適合不良であり、この適合不良の部分ついて微調整が行われることとなる。
【0004】従来、義歯床にはレジン、金属等の比較的硬質な材料が用いられており、この様な材質の義歯床に対して上記の適合試験材を用いた場合には、適合試験材の硬化物は、試験後に義歯床から容易に剥離することができ、微調整作業等を円滑に行うことが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、歯科用補綴物に硬質材料と共に軟質材料が使用される機会が増加し、義歯床においてもシリコーンゴム系の軟質材料で裏装されたものが普及し始めている。
【0006】ところが、この様な軟質材料に対して前記適合試験材を適用した場合には、試験後に硬化物を歯科用補綴物から剥がすことが困難になるという問題があることが判った。
【0007】本発明は、このような問題を解決するために、歯科用補綴物の軟質材料で構成される部分に適合試験材を適用したときに、試験後硬化した適合試験材を歯科用補綴物から分離(剥離)し易くするための分離材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために、先ず、軟質材料の表面にワセリンやココアバターを塗布することにより分離性を向上させることについて検討を行った。しかしながら、ワセリンやココアバターは、それ自体が粘度の高いペーストであるため、表面に細かい凹凸が多数存在する軟質材料の表面に薄く均一に塗布すること困難であり、適合試験の精度が低下する場合があることが判明した。
【0009】そこで、分離材としては低粘度液体が有効ではないかと考え、シリコーンオイル、界面活性剤、グリセリンなどの各種低粘度液体について分離性能の検討を行った。しかしながら、これらを用いた場合には、1)軟質材料の表面張力で弾かれて均一に塗布できない、2)均一に塗布できたとしても充分な分離性が得られず、軟質材料が傷つくことがある、或いは3) 適合試験材の硬化を阻害してしまうといった問題が発生し、初期の効果を得ることはできなかった。
【0010】その後、様々な材料を用いてその分離性能の検討を行ったところ、適合試験材を適用する前に粉体を軟質材料にまぶしたときには良好な分離性能が得られる場合があるという知見を得た。そして、更に検討を行った結果、最大粒子径が500μm以下の粉末が分離材として有効であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明は、最大粒子径が500μm以下の粉末からなることを特徴とする歯科用補綴物適合試験用分離材である。該歯科用補綴物適合試験用分離材は、水又は粘度が1〜2000P(ポアズ)の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。
【0012】前記したように従来の硬質材料からなる歯科用補綴物の適合試験を行う際に分離材を使う必要はなく、歯科用補綴物適合試験用分離材という概念自体これまで無かったものである。本発明の分離材は、軟質材料を用いた歯科用補綴物の適合試験を行うという新たな要求に応えるために、新規に創出されたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の歯科用補綴物適合試験用分離材(以下、単に分離材ともいう。)は、最大粒子径が500μm以下の粉末からなるものであればその形状、成分、組成は、特に限定されない。粒子の形状は球状、破砕状、層板状などのいずれであってもよく、成分は有機系、無機系、有機無機複合系のいずれであってもよい。このような粉末材料を具体的に例示すると、通常アルジネート印象材として使用されている粉末、片栗粉、小麦粉、ポリメタクリル酸メチル樹脂粉末、石膏粉末、通常埋没材として使用されている粉末、タルク粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ベビーパウダーなどが挙げられる。これら粉末は、単独で使用することもできるし、種類の異なるものを複数混合して用いることもできる。
【0014】本発明の分離材を構成する上記粉末の最大粒子径は500μm以下である必要がある。粉末であっても、その最大粒子径が500μmを越える粉末では分離性が不十分でありなお且つ薄く均一に塗布することが困難である。本発明の分離材である粉末の最大粒径は500μm以下であれば特に限定されないが、塗布性や分離性の観点から層板状の形状である粒子の全体に占める割合が10〜100%であるのが好適である。
【0015】この様な最大粒子径を有する粉末は、例えば、目の間隔が500μmより細かいふるいを通過させることにより簡単に得ることができる。
【0016】本発の分離材は、適合試験材を盛り付ける前に歯科用補綴物の表面、特に軟質材料を用いたものの軟質材料部分の表面に塗布することにより良好な分離性能を発揮する。しかも、適合試験材の硬化を阻害することもなく、試験後に硬化体を分離した後に、歯科用補綴物の表面から水洗により簡単に除去することができる。
【0017】本発明の分離材を歯科用補綴物の表面に塗布する方法は、特に限定されないが、ボトルなどの容器から直接振り掛ける、ボトルから振り掛けた後に筆や指で擦り付ける、紙等に分取した後に筆等で塗布するなどの方法により好適に行うことができる。特に、本発明の分離材の分離効果を最大限に発揮させるためには、水と組み合わせて使用するのが好ましい。水との組み合わせ方は特に限定さず、水性懸濁液として使用してもよいが、塗布操作も簡単で均一に塗布できるという観点から、本発明の分離材を塗布した後に水中に短時間浸漬する、または霧吹きで水を吹き付けるなどの処理によって水と接触させるのが好ましい。
【0018】更に、最大粒子径が500μm以下の粉末は、粘性率が1〜2000P(ポアズ)の有機溶媒とを混合することでペースト状の性状とし、このペーストを指や筆で擦り付ける等の方法によって好適に使用することもできる。有機溶媒の粘性率が2000Pを越える場合は、歯科用補綴物の表面に薄く均一に塗布することが難しく、試験精度が低下することがある。
【0019】この時使用できる有機溶媒は、その粘性率(粘度)が1〜2000P、特に3〜100Pのものであれば特に限定されないが、除去性の観点から水溶性の有機溶媒が好適である。本発明で好適に使用できる有機溶媒を具体的に例示すれば、流動パラフィン、シリコーンオイルの他、水溶性の有機溶媒としてグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これら有機溶媒は水溶液の形で使用することもできる。また、ペーストとする時の有機溶媒の使用量(水溶液の場合は水溶液の使用量)としては、最大粒子径が500μm以下の粉末100重量部に対して10〜1000重量部であるのが好適である。
【0020】なお、本発明の分離材には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、顔料や香料等の添加剤を添加することもできる。
【0021】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】実施例1アルジネート印象材{(株)トクヤマ製、商品名:トクソーA−1α}を70メッシュの篩いを用いて篩い分けし、通過分を分離材として使用した。なお、該分離材の最大粒子径は、上記篩の呼び寸法と同じ210μmである。
【0023】軟質裏装材{(株)トクヤマ製、商品名:トクヤマソフトリライニング}を用いて厚さ1〜2mmの硬化体を作製し、室温中で8ヶ月保管した。この硬化体に上記の分離材を過剰に塗布させた後、その硬化体を軽く叩いて余剰の粉末を除去した。表面に残った粉末の状態を「塗布性」として評価したところ、薄く均一に塗布されており良好な塗布性であった。
【0024】次いで、分離材が塗布された硬化体の上に練和した適合試験材{(株)ジーシー製、商品名:ジーシーフィットチェッカー}を用いて次のようにして分離試験を行った。
【0025】まず、該適合試験材を練和後直ちに分離材を塗布した上記の軟質裏装材硬化体に盛りつけ、下地の色(ピンク色)が薄く見えるまで透明プラスチック板で圧接した。3分後に透明プラスチック板を取り除き適合試験材の「硬化性」を評価したところ、適合試験材は十分に硬化していた。次いで、硬化した適合試験材を手で剥がし、「分離性」を評価したところ、容易に分離することができた。その後、水洗を行い「除去性」を評価したところ、分離材は軟質材料の表面から容易に除去された。
【0026】実施例2〜5表1に示す粉末および篩を用いる他は実施例1と同様にして篩い分けし、篩通過分を分離材とした。
【0027】
【表1】

【0028】各分離材を用いて実施例1と同様にして分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】なお、各項目の評価基準は、次のとおりである。
塗布性・・・○:薄く均一に塗布できる。
△:薄く塗布できるが不均一である。
×:薄く塗布できない(厚い)。
硬化性・・・○:十分に硬化した。
△:硬化が不十分である。
×:硬化しない。
分離性・・・◎:極めて容易に剥がせる。
○:容易に剥がせる。
△:剥がせるが軟質材料もちぎれる。
×:剥がせない。
除去性・・・○:容易に除去できる。
△:なんとか除去できる。
×:除去できない。
【0031】実施例6〜10軟質裏装材{(株)トクヤマ製、商品名:ソフリライナースーパーソフト}を室温20分で硬化させて厚さ1〜2mmの硬化体を作製した。この硬化体を用いて実施例1〜5で使用したのと同じ分離材について、適合試験材料として適合試験材{(株)トクヤマ製トクソーフィットテスター}を用いる他は実施例1と同様にして塗布及び分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を表3に示す。なお、実施例6、7、8、9、及び10では、それぞれ実施例1、2、3、4、及び5で使用した分離材を用いている。また、表3中の各評価項目の評価基準は前記した表2における評価基準と同じである。
【0032】
【表3】

【0033】比較例1シリカ粉末{(株)トクヤマ製}を24メッシュ(呼び寸法710μm)の篩を用いて篩い分けし、通過せずに残ったものを分離材として使用する他は実施例6〜10と同様にして、塗布及び分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を併せて表3に示す。
【0034】実施例11及び12実施例6〜10で使用したのと同じ軟質裏装材の硬化体に、実施例8で分離材として使用したのと同じタルク粉末(実施例11)と実施例10で分離材として使用したのと同じベビーパウダー(実施例12)をそれぞれ別に均一に塗布した。その後、各試料を水中に1秒間浸漬して取り出してから表面に付着した水滴を払い落とし、表面に残った粉末の塗布性を評価した。
【0035】その後、実施例6〜10と同様にして分離試験を行い、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を併せて表4に示す。なお、表4中の各評価項目の評価基準は前記した表2における評価基準と同じである。
【0036】
【表4】

【0037】実施例13実施例8で分離材として使用したのと同じタルク粉末1gをグリセリン{和光純薬成、粘性率945cP(25℃)}2gと混合することでペースト状の性状とした。このペースト状の分離材を実施例6〜10で使用したのと同じ軟質裏装材の硬化体に指で塗布した。その後、実施例1と同様にして分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を合わせて表4に示す。なお、表4中の各評価項目の評価基準は前記した表2における評価基準と同じである。
【0038】比較例2〜6実施例6〜10と同様にして硬化させた軟質裏装材に、表5に示す各分離材を指で塗布した。その後、実施例1と同様にして分離試験を行い、塗布性、硬化性、分離性、および除去性を評価した。結果を併せて表5に示す。なお、表5中の各評価項目の評価基準は前記した表2における評価基準と同じである。
【0039】
【表5】

【0040】
【発明の効果】本発明の分離材は歯科用補綴物の表面に均一に薄く塗布できるために、適合試験の精度を低下させることがない。また、適合試験材の硬化を阻害することもなく、試験後に適合試験材硬化体の歯科用補綴物からの剥離するときの分離性を向上させる。しかも、使用後は水洗によって簡単に洗い流すことが出来るので、その後の微調整作業等も円滑に行うことができる。
【0041】このような優れた特徴を有する本発明の分離材を用いることにより、軟質材料を使用した歯科用補綴物について適合試験を効率的に行うことが可能となり、本発明の臨床的な価値は大きい。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【出願日】 平成11年7月7日(1999.7.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−17450(P2001−17450A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−192849