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【発明の名称】 歯科インプラント部品
【発明者】 【氏名】渡辺 清

【要約】 【課題】頭部に設けられている係合部がその前に行った操作時の過剰トルク等によって一部損傷した場合でも、その部品の再度のネジの締結や解除が可能な構造とし、且つその部品を回転させるための係合部材を係合させる際の操作性が良い歯科インプラント部品を提供する。

【解決手段】歯科インプラント部品として、その部品を回転させる係合部材と係合する頭部に設けられている係合部を、中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形a,bが20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形の横断面形状の穴Hとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 その部品を回転させる係合部材と係合する頭部に設けられている係合部が、中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形の横断面形状の穴であることを特徴とする歯科インプラント部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、その部品を回転させる係合部材と係合する頭部に設けられている係合部がその前に行った操作時の過剰トルク等によって一部損傷した場合でもその部品の再度のネジの締結や解除が可能で且つ操作性も良好である歯科インプラント部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、欠如歯部における歯科補綴法としては、ブリッジによる方法と、床義歯による方法とが一般に行われてきた。しかしながら、ブリッジによる方法は、欠如歯部の両側の健全な天然歯を切削して支台とし、この支台に係合固定される金属体間に欠如歯部に位置する歯科用補綴物を固設する方法であるので、支台を形成するために健全な天然歯を切削しなければならないばかりか、欠如歯部に位置する歯科用補綴物部分には咬合圧が直接には加わらないために当該部位で骨吸収を引き起こすという欠点があった。また、床義歯による方法は、合成樹脂等で作成した義歯床に義歯を固定したものを歯科用補綴物とする方法であるが、この方法では歯科用補綴物に作用する咬合力をその床義歯に隣接する残存天然歯及び/又は口腔粘膜によって負担させるものであるので、歯科用補綴物使用中に違和感があることや、口腔粘膜組織中に散在する味覚の受容器を義歯床が覆ってしまうことによる味覚の鈍麻が生じることがあり、更には長期間の使用によって顎堤の吸収を引き起こすという重大な欠点があった。
【0003】そこでこれらの欠点を解消する治療方法として、欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に歯科用補綴物の維持安定装置となるインプラントフィクスチャーを埋入して天然歯における歯根の機能を代行せしめ、このインプラントフィクスチャーの口腔内側に固定されたアバットメントに歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固着する歯科インプラントの技術が開発され、実施されるようになってきている。
【0004】このような歯科インプラントによる治療方法を実施すると、口腔粘膜を覆うことなく歯科用補綴物を固定することができるので、歯科用補綴物装着時の違和感や味覚の鈍麻が生じることがなく、天然歯に似た使用感が得られ、更に顎骨には適度な咬合力が付与されるためインプラントフィクスチャーが埋入されていない場合に想定される骨吸収を最小限に抑制できるという利点があるため、この治療方法は急速な発展を遂げて単独歯欠損,2歯以上の局部欠損のみならず、無歯顎(全歯欠損)に至るまでに適用できるようになってきている。
【0005】この歯科インプラントによる治療方法としては、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入されたインプラントフィクスチャーが欠如歯部の顎骨に充分に結合し且つ埋入孔を形成したことによる手術部分が治癒したら、そのインプラントフィクスチャーが埋入された口腔内側の歯肉部分を再度切開してインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメントを固定する2回法が主として採用されている。
【0006】このような2回法による歯科インプラントによる治療方法において、第1回目の治療は、欠如歯部のインプラントフィクスチャーを埋入すべき部分の歯肉を切り開いて歯肉弁とし、露出した顎骨の歯槽骨内にインプラントフィクスチャー用の埋入孔を形成し、この埋入孔内にインプラントフィクスチャーを埋入し、この埋入されたインプラントフィクスチャーの口腔内側に開口しているネジ穴にインプラントフィクスチャー側端部がインプラントフィクスチャーの口腔内側の略円柱状端部と同外形状寸法か又は大きな寸法を有しインプラントフィクスチャーから離れるに従ってその外径が大きくなる截頭円錐形を成す部分とを有しており、且つインプラントフィクスチャー側の面にはインプラントフィクスチャーの口腔内側に位置する端部に突設されている角筒状部が収納できる凹部とその中央にオネジが設けられているインプラント用カバースクリューのオネジを螺合させてインプラントフィクスチャーの口腔内側に開口しているネジ穴を封塞すると共に治療過程で骨がインプラントフィクスチャーより口腔内側にまで成長しないようにした後に、歯肉弁を元の状態に戻して露出していた顎骨の歯槽骨を歯肉弁で覆った後、歯肉弁を切り開いた位置で縫合する治療である。
【0007】第2回目の治療は、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入穴内に埋入されたインプラントフィクスチャーがその埋入孔内で骨結合が獲得された後(通常、この期間は3〜6ヵ月程度である)、インプラントフィクスチャーを埋入した歯槽骨の部分で歯肉を切り開いて歯肉弁としてインプラント用カバースクリューを露出させ、インプラントフィクスチャーに螺合されていたインプラント用カバースクリューを取り外し、インプラントフィクスチャーの口腔内側に開口しているネジ穴に、インプラントフィクスチャー側端部がインプラントフィクスチャーの口腔内側の略円柱状端部と略同外形状寸法でその長さが周囲歯肉の厚さより長くインプラントフィクスチャー側がアバットメントと略同形状でインプラントフィクスチャー側の面にはインプラントフィクスチャーの口腔内側に位置する端部に突設されている角筒状部に係合できる凹部とその中央にオネジとが設けられているヒーリングアバットメントのオネジを螺合させてインプラントフィクスチャーの口腔内側に開口しているネジ穴を封塞した後に、歯肉弁を元の状態に戻して露出していた顎骨の歯槽骨は歯肉弁で覆うがヒーリングアバットメントの頭部側は露出するようにした後、歯肉弁を切り開いた位置で縫合する治療である。
【0008】この第2回目の治療は大凡2週間程度で治癒して歯肉がヒーリングアバットメントのインプラントフィクスチャー側に当接した状態になるので、この状態でヒーリングアバットメントを取り外し、図5の歯科インプラント治療完了後の状態を示す縦断面説明図のように、インプラントフィクスチャー1の口腔内側にインプラントフィクスチャー1側がヒーリングアバットメントのインプラントフィクスチャー1側と略同形状のアバットメント2を配置し、このアバットメント2を貫通してインプラントフィクスチャー1のネジ穴にアバットメントスクリュー3を螺合してインプラントフィクスチャー1の口腔内側にアバットメント2を固定し、歯科用補綴物6をその外面に設けたゴールドシリンダー5の完成を待つ場合にはこのアバットメント2の口腔内側に開口している貫通穴を閉塞するためのヒーリングキャップのオネジをアバットメントスクリュー3の口腔内側に螺設されているメネジに螺合させて歯科用補綴物6をその外面に設けたゴールドシリンダー5が完成したらこのヒーリングキャップを取り外し、このアバットメント2の口腔内側に歯科用補綴物6をその外面に設けたゴールドシリンダー5を配置し、この歯科用補綴物6とゴールドシリンダー5とを貫通してアバットメントスクリュー3又はアバットメント2に螺設されているネジ穴にゴールドスクリュー4を螺合して歯科用補綴物6をアバットメント2を介してインプラントフィクスチャー1の口腔内側に固定し、歯科用補綴物6のゴールドスクリュー4を貫通させた貫通穴の口腔内側を歯科用コンポジットレジン等7で閉塞すると、歯科インプラントの治療が完成するのである。
【0009】このように歯科インプラントの治療においては、多数の歯科インプラント部品を使用するのであるが、各部品を固定するのにネジを使用しており、オネジをネジ穴に螺合させることができるようにオネジが螺設されている歯科インプラント部品(インプラント用カバースクリュー,ヒーリングアバットメント,アバットメントスクリュー,ヒーリングキャップ,ゴールドスクリューなど)の頭部にはドライバーや棒スパナのようなその部品を回転させる係合部材と係合する係合部が形成されている。
【0010】これらのオネジが螺設されている歯科インプラント部品の頭部に形成されているドライバーや棒スパナのような係合部材と係合する係合部は、歯科インプラント部品が口腔内の狭い部分で使用される非常に小さな部品であってその頭部が他の部品内に入り込んで使用されるものが多いと共に口腔内に露出する部分に角張った部分が存在することが嫌われるため、通常のボルト等の部品のように周囲に六角形や四角形の如き外形状の部分を設けることができないので、マイナス溝,プラス溝,六角穴,四角穴等であり、それぞれその係合部と係合する形状部分を先端に設けたドライバーや棒スパナのような係合部材によりスクリュー締結が行われてきた。
【0011】しかしながら、係合部がマイナス溝、即ちマイナスドライバーのような係合部材で締結するものの場合には、一度ネジ溝が過剰トルクにより損傷すると逆回転させることはできるものの正回転は不可能となる。また係合部材だけによってその歯科インプラント部品の保持もできないため作業性において劣っている。これに対し、係合部がプラス溝、即ちプラスドライバーのような係合部材で締結するものの場合には、係合部がマイナス溝の場合に比べて係合部と係合部材の係合が容易で作業性が良く、係合部材によってその歯科インプラント部品の保持も或る程度可能である点などで優れているが、プラス溝が過剰トルクにより損傷するとその損傷個所がプラス溝中央側の基点部分となるため正逆いずれの方向にも回転させることができなくなる。
【0012】また係合部が六角穴、即ち六角棒スパナのような係合部材で締結するものの場合には、係合部材によってその歯科インプラント部品の保持が可能であるため広く賞用されているが、六角穴が過剰トルクにより損傷するとその損傷によって六角穴の横断面形状が円形に近い形状になるため正逆いずれの方向にも回転させることができなくなる。これに対し、係合部が四角穴、即ち四角棒スパナのような係合部材で締結するものの場合には、その対称性の故に係合部材と係合させる際の操作性において六角穴よりも劣るため使用範囲は限定されるが、係合部材によってその歯科インプラント部品の保持が可能であり、六角穴のように損傷してもその穴の横断形状が円形にまでは至らないため、過剰トルク等で破損した場合でも少なくとも逆方向の回転は可能であるなどの利点を持っている。
【0013】以上の如く、溝又は穴が一部破損した時に正逆両方向に回転が可能で、歯科インプラント部品をドライバー又は棒スパナのような係合部材で保持でき、且つ係合部材と係合させる際の操作性が良いという諸点を満たす係合部は現在存在していない。
【0014】しかるに、オネジが螺設されている歯科インプラント部品は生体親和性が要求されるためにチタン又はチタン合金で形成されているか、又は金合金のような材料で形成されているため、その強度が比較的弱く、また小さなものであるためドライバーや棒スパナのような係合部材と係合する部分の面積が小さいことと相まって係合部が損傷する現象が発生し易く、係合が損傷すると人体に固定した後にその部品を取り外すことができなくなり、その結果他の部品も取り外せなくなって修理その他の治療を行うことができなくなるという致命的な欠陥に繋がってしまうので、この解決が要望されていたのである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述した如く従来の歯科インプラント部品ではその頭部に設けられている係合部がその前に行った操作時のトルク等によって一部損傷すると少なくともその部品の再度のネジの締結が不可能になるという欠点を解消し、その頭部に設けられている係合部がその前に行った操作時のトルク等によって一部損傷した場合でも、その部品の再度のネジの締結や解除が可能な構造とし、且つその部品を回転させるための係合部材を係合させる際の操作性が良い歯科インプラント部品を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、従来の係合部として存在していたマイナス溝,プラス溝,六角穴,四角穴の中で、棒スパナのような係合部材よってその歯科インプラント部品の保持が可能で、過剰トルク等で破損した場合でも少なくとも逆方向の回転は可能であるなどの利点を持っている四角穴の場合について検討した結果、その部品を回転させる係合部材と係合する頭部に設けられている係合部を、中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴とすれば良いことを究明して本発明を完成したのである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面により本発明に係る歯科インプラント部品の実施例について詳細に説明する。図1は頭部に設けられている係合部が中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が45度の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴である本発明に係る歯科インプラント部品であるゴールドスクリューの1実施例の平面拡大説明図、図2は図1のA−A線断面説明図、図3は頭部に設けられている係合部が中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が20度の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴である本発明に係る歯科インプラント部品であるゴールドスクリューの1実施例の平面拡大説明図、図4は図1に示した係合部が破損した状態を示す説明図である。
【0018】図面中、4は本発明に係る歯科インプラント部品であるゴールドスクリューであって、図5に示したようにインプラントフィクスチャー1の口腔内側に配置したアバットメント2を貫通してインプラントフィクスチャー1のネジ穴にアバットメントスクリュー3を螺合してインプラントフィクスチャー1の口腔内側にアバットメント2を固定した後に、このアバットメント2の口腔内側に歯科用補綴物6をその外面に設けたゴールドシリンダー5を配置し、この歯科用補綴物6とゴールドシリンダー5とを貫通してアバットメントスクリュー3又はアバットメント2(図示した実施例ではアバットメントスクリュー3)に螺設されているネジ穴に螺合して歯科用補綴物6をアバットメント2を介してインプラントフィクスチャー1の口腔内側に固定するためのものであり、その頭部に設けられている係合部が、中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形a,bが20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴Hに形成されている。
【0019】このような構造の係合部を有する歯科インプラント部品であるゴールドスクリュー4を歯科用補綴物6とゴールドシリンダー5とを貫通してアバットメントスクリュー3又はアバットメント2(図示した実施例ではアバットメントスクリュー3)に螺設されているネジ穴に螺合して歯科用補綴物6をアバットメント2を介してインプラントフィクスチャー1の口腔内側に固定しようとすると、先ずゴールドスクリュー4を歯科用補綴物6とゴールドシリンダー5とに貫通して設けられている貫通穴に挿入し、頭部に設けられている係合部である穴Hに四角棒スパナのような係合部材を係合させて回転させてアバットメントスクリュー3又はアバットメント2(図示した実施例ではアバットメントスクリュー3)に螺設されているネジ穴に螺合するのであるが、係合部である穴Hは中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形a,bが所定の相対角度をなして重畳した横断面の穴形状を成しているので、係合部材を係合させる際に正方形a,bのいずれか一方に係合するように係合部材を回転させれば良いので、係合部である穴が正方形1個の穴である場合に比べて係合部材の回転角度が少なくて済むため操作性が良い。
【0020】そして、歯科インプラント部品の頭部に設けられている係合部がその前に行った操作時のトルク等によって図4に示すように一部(正方形aの正回転側)が損傷した場合でも、正方形bの正回転に寄与する部分Xと正方形aの逆回転に寄与する部分Yは損傷せずに残るためネジの締結や解除が可能なのである。
【0021】ここで、係合部が中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形a,bが20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴Hに形成されていなければならないのは、穴Hの横断面形状が中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が相対角度をなして重畳した二重四角形であるからその取り得る相対角度は0度から45度までの範囲であり、相対角度が20度未満の場合には二重四角穴の破損により2個の正方形の連結部分が同時に破損してする現象が生じて正逆両方向とも再度の回転はできなくなる現象が生じ易いので好ましくなく、また図形の対称性から45度が上限となる。
【0022】
【発明の効果】以上に詳述した如く、本発明は、生体親和性が要求されるためにチタン又はチタン合金で形成されているか、又は金合金のような材料で形成されているのでその強度が比較的弱く、また小さなものであるためドライバーや棒スパナのような係合部材と係合する部分の面積が小さいことと相まって係合部が損傷する現象が発生し易く、係合が損傷すると人体に固定した後に取り外すことができなくなるという致命的な欠陥に繋がってしまう歯科インプラント部品の頭部に設けられている係合部が、中心軸を同じくする2つの同一形状の正方形が20度以上45度以下の相対角度をなして重畳した二重四角形を横断面形状とする穴であるから、その前に行った操作時のトルク等によって係合部が一部損傷した場合でも2つの同一形状の正方形においてそれぞれ係合部材と係合する部分が残るため再度のネジの締結や解除が可能であるばかりでなく、且つ係合部材と係合させる際の操作性も良好であるという効果を奏するのである。このような本発明に係る歯科インプラント部品の歯科分野、特に歯科インプラント治療分野に貢献する価値は非常に大きなものである。
【出願人】 【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
【出願日】 平成11年7月12日(1999.7.12)
【代理人】 【識別番号】100070105
【弁理士】
【氏名又は名称】野間 忠之
【公開番号】 特開2001−17448(P2001−17448A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−197509