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【発明の名称】 光化学治療用レーザ装置
【発明者】 【氏名】富永 晃英

【要約】 【課題】病巣部の温度上昇を回避することを課題とする。

【解決手段】所定の疾患細胞に親和性のある光感受性物質があらかじめ集積させてある病巣部Pにレーザ光を照射して光感受性物質を励起することにより治療を行なう光化学治療用レーザ装置1であって、レーザ光を生成するためのレーザ光源20と、レーザ光を病巣部Pに照射する照射手段30と、病巣部Pの赤外線量を検出する赤外線センサ40と、レーザ光源20のレーザ制御手段53とを備え、レーザ制御手段53が、レーザ光源20の出力を制御する出力制御部53と、赤外線センサ40の出力に基づく検出温度から病巣部Pが予め決められた所定の温度を越えないように出力制御部53の制御出力を規制する出力規制部54とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の疾患細胞に親和性のある光感受性物質があらかじめ集積させてある病巣部にレーザ光を照射して光感受性物質を励起することにより治療を行なう光化学治療用レーザ装置であって、前記レーザ光を生成するためのレーザ光源と、前記レーザ光を前記病巣部に照射する照射手段と、前記病巣部の赤外線量を検出する赤外線センサと、前記レーザ光源のレーザ制御手段とを備え、前記レーザ制御手段が、前記レーザ光源の出力を制御する出力制御部と、前記赤外線センサ出力に基づく検出温度から前記病巣部が予め決められた所定の温度を越えないように前記出力制御部の制御出力を規制する出力規制部とを備えることを特徴とする光化学治療用レーザ装置。
【請求項2】 前記照射手段は、前記レーザ光源と前記病巣部とを連絡する光ファイバと、前記赤外線センサと前記病巣部とを連絡する光ファイバとを備えることを特徴とする請求項1記載の光化学治療用レーザ装置。
【請求項3】 前記各光ファイバを一つの光ファイバで共用とすることを特徴とする請求項2記載の光化学治療用レーザ装置。
【請求項4】 前記出力制御部は、繰り返される照射と非照射の時間比率を調節して前記レーザ光源の出力制御を行うことを特徴とする請求項1,2又は3記載の光化学治療用レーザ装置。
【請求項5】 前記出力制御部は、前記レーザ光の出力強度を変えることで前記レーザ光源の出力制御を行うことを特徴とする請求項1,2又は3記載の光化学治療用レーザ装置。
【請求項6】 前記レーザ制御手段は、前記出力制御部で設定するレーザ光源の出力から照射エネルギー量を順次積算すると共に積算された照射エネルギー量が予め決められた所定の値となるまで前記レーザ光源の照射を継続する定量照射部を備えることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の光化学治療用レーザ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光化学治療用レーザ装置に係り、特に、光感受性物質が集積された病巣部に当該光感受性物質の吸収波長に適合したレーザ光を照射して励起し、病巣部の治療を行う光化学治療用レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子医療技術の進歩に伴い、レーザ光を用いた光化学診断や光化学治療、例えば、癌等の腫瘍に親和性を有する光感受性物質を病巣部に集積させ、この病巣部に向けてレーザ光を照射して光感受性物質を励起させることで蛍光発光や殺細胞作用を誘発させて行う診断や治療が急速に発展しつつある。
【0003】この種の光化学診断や光化学治療に用いられる医療用レーザ装置としては、例えば、特開平7−100218号の光化学治療診断装置が公知である。
【0004】この特開平7−100218号の光化学治療診断装置は、病巣部に向けて使用するレーザプローブの先端部から照射されるレーザ光の照射特性や照射エネルギー量を測定し且つ制御することで、出力変動や波長変動が生じた場合であっても一定の治療・診断結果を得ることを可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】光化学治療は、前述の如く、レーザ光の照射により光感受性物質を励起させることで治療効果を得る治療法である。その一方で、レーザ光は、その出力が高ければ病巣部の温度の上昇を招く可能性を有しており、かかる温度上昇を回避するためにその設定出力は低く設定され、治療効率や治療効果を高めることが困難であった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、病巣部の温度増加を招かずに治療効率や治療効果の向上を図ることをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、所定の疾患細胞に親和性のある光感受性物質があらかじめ集積させてある病巣部にレーザ光を照射して光感受性物質を励起することにより治療を行なう光化学治療用レーザ装置であって、レーザ光を生成するためのレーザ光源と、レーザ光を病巣部に照射する照射手段と、病巣部の赤外線量を検出する赤外線センサと、レーザ光源のレーザ制御手段とを備えている。
【0008】そして、レーザ制御手段が、レーザ光源の出力を制御する出力制御部と、赤外線センサ出力に基づく検出温度から病巣部が予め決められた所定の温度を越えないように出力制御部の制御出力を規制する出力規制部とを備える、という構成を採っている。
【0009】上記構成では、光感受性物質が集積した病巣部に、レーザ光源から照射手段を介して所定波長のレーザ光を照射する。これにより光感受性物質が励起され、病巣部に治療効果が生じる。
【0010】このとき、病巣部の温度は赤外線センサにより検出され、その検出温度はレーザ制御手段の出力規制部に出力される。そして、病巣部温度が予め設定した温度に達すると、出力規制部では、出力制御部を介してレーザ光源の制御出力を制限するので、レーザ光源の制御出力を当初から低く設定する必要がなく、適度な出力を選択することができる。
【0011】請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明の構成に加えて、照射手段は、レーザ光源と病巣部とを連絡する光ファイバと、赤外線センサと病巣部とを連絡する光ファイバとを備える、という構成を採っている。かかる構成の場合、各光ファイバの先端部を病巣部に向け且つ各々の光ファイバの基端部をレーザ光源と赤外線センサとにそれぞれ向けて配置する。そして、一方の光ファイバを介してレーザ光を病巣部に照射すると共に、他方の光ファイバを介して病巣部から発せられる赤外線を赤外線センサが受光する。
【0012】請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明の構成に加えて、各光ファイバを一つの光ファイバで共用とする、という構成を採っている。かかる構成の場合、光ファイバの基端部に分岐路を設けて一方をレーザ光源に向け、他方を赤外線センサに向けて配置する。また、光ファイバの先端部は病巣部に向けて配置する。その他の動作は、上記各構成と同様である。
【0013】請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明の構成に加えて、出力制御部は、繰り返される照射と非照射の時間比率を調節してレーザ光源の出力制御を行う、という構成を採っている。
【0014】かかる構成の場合には、上述した各構成と同様の動作が行われると共に、通常はレーザ光の照射期間と非照射期間とが予め決められた割合で連続して繰り返され、病巣部の温度が所定温度まで上がったときに、非照射期間の割合が高くなるように出力規制部がレーザ光源の制御を行う。
【0015】請求項5記載の発明では、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加えて、出力制御部は、レーザ光の出力強度を変えることでレーザ光源の出力制御を行う、という構成を採っている。
【0016】かかる構成の場合には、上述した各構成と同様の動作が行われると共に、通常は予め決められた一定の出力強度でレーザ光の照射が行われ、病巣部の温度が所定温度まで上がったときに、その出力強度が小さくるなるように出力規制部がレーザ光源の制御を行う。
【0017】請求項6記載の発明では、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加えて、レーザ制御手段は、出力制御部で設定するレーザ光源の出力から照射エネルギー量を順次積算すると共に積算された照射エネルギー量が予め決められた所定の値となるまでレーザ光源の照射を継続する定量照射部を備える、という構成を採っている。
【0018】かかる構成では、上述と同様の動作に加えて、レーザ光の照射の開始と共にその出力強度や出力時間に基づいて照射エネルギー量を随時積算する。そして、その積算値が予め決められた所定値に到達すると、レーザ光の照射を終了する動作制御が定量照射部により行われる。
【0019】本発明は、上述した各構成によって前述した目的を達成しようとするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】[第1の実施形態](全体構成)本発明の一実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。この第1の実施形態では、所定の疾患細胞(例えば腫瘍)P1に親和性のある光感受性物質があらかじめ集積させてある病巣部Pにレーザ光を照射して光感受性物質を励起することにより治療を行なう光化学治療用レーザ装置1を示すものとする。
【0021】図1は光化学治療用レーザ装置1の概略ブロック図を示す。この光化学治療用レーザ装置1は、レーザ光を生成するためのレーザ光源としてのレーザユニット20と、レーザ光を病巣部に照射する照射手段30と、病巣部Pの温度を検出する赤外線センサ40と、レーザユニット20の動作制御を行うレーザ制御手段50とを備えている。
【0022】(レーザユニット)以下、これらを詳説する。まず、レーザユニット20はレーザーダイオードを備え、これにより光感受性物質の励起可能な波長域のレーザ光を出射する。このレーザユニット20からの出射レーザ光の出力強度については、レーザ制御手段50によるレーザダイオードの通電制御により設定される。また、レーザダイオードは低温に維持され、波長は一定値に固定される。さらに、レーザユニット20の出射部位には図示しないシャッタが設けられており、レーザ制御手手段50によりレーザ光の出射時に応じて開かれる動作制御が行われる。
【0023】(照射手段)照射手段30は、病巣部側の光ファイバ34と、この光ファイバ34を装着する光コネクタ32と、この光コネクタ32とレーザユニット20とを連絡する光ファイバ33とを有する構成となっている。
【0024】上記光ファイバ34は、その先端部を病巣部に向け、その基端部を光コネクタ32に接続して使用する。この光ファイバ34は、光コネクタ32から病巣部Pにレーザ光を伝達すると共に病巣部Pから発する赤外線を光コネクタ32に伝達する機能を有する。
【0025】他方、光コネクタ32は、光ファイバ33と光ファイバ34とを光の伝達が可能な状態で連結する機能を有する。図2は光コネクタ32の断面図を示しており、これによると、光コネクタ32は、中心部に貫通孔を備えた筒状を成し、その貫通孔の両端部からそれぞれレーザユニット20に通じる光ファイバ33の先端部と光ファイバ34の基端部とを差し込んで接続するようになっている。また、光ファイバ33の先端部と光ファイバ34の基端部の各々の近傍には環状の位置決め部材32a,32bが固着され、光ファイバ33,34が必要以上に光コネクタ32に突入するのを防止して、光ファイバ33の先端部端面と光ファイバ34の基端部端面との間に所定の間隙32cが保持されるようになっている。
【0026】さらに、光コネクタ32には、間隙32cと連絡する開口部32d,32eが光コネクタ32の径方向に向けて設けられ、開口部32dには光学センサ35が埋設して取り付けられており、また開口部32eには前述した赤外線センサ40が埋設して取り付けられている。
【0027】かかる構造により、レーザユニット20から出力されたレーザ光は光ファイバ33の中を反射しながら進み、光ファイバ33の先端部端面から送出されたレーザ光の大半はそのまま光ファイバ34の基端部端面に進入し、また、レーザ光の一部は、光ファイバ34の基端部端面で拡散や反射によって光路を外れた後、更に、開口部32d内を反射して光路脇の光学センサ35によって検出される。
【0028】また、病巣部Pの腫瘍P1から発せられた赤外線光は光ファイバ34の中を反射しながら進み、光ファイバ34の基端部端面から送出された赤外線光の一部が、光ファイバ33の先端部端面で拡散や反射によって光路を外れた後、更に、開口部32e内を反射して光路脇の赤外線センサ40によって検出される。
【0029】上記光学センサ35はレーザ光の出力強度を検出するためのものであり、当該光学センサ35に入射したレーザ光の出力強度に応じた検出信号がレーザ制御手段50に出力される。
【0030】(赤外線センサ)また、赤外線センサ40はサーモパイルであり、入射した赤外線量に応じた検出信号をレーザ制御手段50に出力する。また、この赤外線センサ40にはサーモパイルの冷接点温度を検出する図示しないサーミスタが併設されており、このサーミスタの検出信号もレーザ制御手段50に出力される。レーザ制御手段50では、サーミスタにより検出される温度上昇前のサーモパイルの温度で補正することでサーモパイルの出力から病巣部Pの温度を検出することを可能としている。
【0031】(レーザ制御手段の全体構成)次に、レーザ制御手段50について、図3に基づいて説明する。このレーザ制御手段50は、CPU,ROM,A/D変換器を含む演算装置で構成され、後述する光化学治療用レーザ装置1の動作制御を実行するプログラムが入力されている。
【0032】このレーザ制御手段50は、当該レーザ制御手段50に併設された入力手段51から入力された初期作動設定条件を記憶する設定条件記憶部52と、レーザユニット20の作動状態を制御する出力制御部53と、赤外線センサ40の出力に基づく検出温度から病巣部Pの腫瘍P1が予め決められた所定の温度を越えないように出力制御部53の制御出力を規制する出力規制部54と、出力制御部53で設定するレーザユニット20の出力から照射エネルギー量を順次積算すると共に積算された照射エネルギー量が予め決められた所定の値となるまでレーザユニット20の照射を継続する定量照射部55とを備えている。
【0033】(入力手段及び設定条件記憶部)上記入力手段51は、光化学治療用レーザ装置1の操作パネルであり、その初期作動設定条件を入力する。ここで入力される設定条件は、レーザユニット20から出力されるレーザ光の出力強度,腫瘍P1に照射する総照射エネルギー量及び治療時における病巣部の上限温度である。これら入力手段51で設定入力された上述の各数値設定条件はメモリである設定条件記憶部52に記憶される。
【0034】(出力制御部)出力制御部53は、設定条件記憶部52に記憶されたレーザ光の出力強度を参照し、当該設定出力強度を維持してレーザ光を出射するようにレーザユニット20の動作制御を行う機能を有している。即ち、前述した光センサ35により出射しているレーザ光の出力強度を検出し、これらが設定された値となるようにレーザユニット20の通電制御を行う。
【0035】さらに、出力制御部53は、レーザユニット20に対してレーザ光の出射状態と非照射状態とを連続して繰り返すパルス発振を行い、一周期当たりの照射期間と非照射期間の時間比率を修正することにより単位時間当たりの照射エネルギー量を調節するduty制御を行う機能を備えている。この時間比率(duty)の初期値は、赤外線センサ40に基づいて算出されるレーザ光照射前の病巣部Pの検出温度と設定条件記憶部52に記憶された病巣部の上限温度との温度差に基づいて決定される。
【0036】(出力規制部)出力規制部54は、赤外線センサ40と併設されたサーミスタの出力から病巣部Pの温度を算出する算出部と、算出された病巣部Pの温度と設定条件記憶部52に設定された病巣部Pの上限温度とを比較する比較部と、算出温度が上限温度を超える場合に出力制御部に温度上昇警告指令を出力する警告部とから構成されている(各構成の図示は省略)。
【0037】なお、赤外線センサ40は、ゲート回路57を介して出力規制部54に検出信号を出力する構成となっている。このゲート回路57は、前述したduty制御によりレーザユニット20が非照射期間であるときのみ赤外線センサ40の検出信号の通過を許容する動作制御が出力制御部53により行われる(参照図1(B))。従ってレーザユニット20の非照射期間にのみ赤外線検出が行われることとなり、赤外線検出におけるレーザ光の影響を回避すると共に、レーザ光の影響回避のための光フィルターの装備を不要とすることが可能である。
【0038】また、出力制御部53では、出力規制部54の警告部の温度上昇警告指令を受信するとレーザ照射のdutyについて照射期間が若干(予め設定された一定値だけ)減少するように修正を行う機能をさらに有している。これにより、病巣部Pではレーザ光から受ける単位時間当たりの照射エネルギー量が減少するので、病巣部の温度上昇が回避される。
【0039】また、出力規制部54の警告部については、算出温度が上限温度よりも一定温度以上低くなった場合に温度低下警告指令を出力制御部53に出力する機能を付加しても良い。この場合、出力制御部53では、温度低下警告指令を受信すると、レーザ照射のdutyについて照射期間が若干(予め設定された一定値だけ)増加するように修正を行う機能を備えていることが望ましい。これにより、レーザ光の照射期間が過度に小さく設定された場合でも修正され、単位時間当たりの照射エネルギー量も適度に増加するので、治療効率の向上を図ることが可能である。
【0040】(定量照射部)次に、定量照射部55について説明する。この定量照射部55は、光センサ35により検出される出力強度から照射エネルギー量を積算する積算部と、積算された照射エネルギー量と設定条件記憶部51に記憶された総照射エネルギー量とを比較する比較部と、その比較結果により積算照射エネルギー量が記憶された総照射エネルギー量に到達したときにレーザ出力停止指令を出力制御部53に出力する指令出力部とから構成されている(各構成の図示は省略)。
【0041】上記積算部では、正確には出力制御部53を介してレーザユニット20の照射期間の入力を受け、これを積算すると共に、当該積算値とレーザ光の出力強度から照射エネルギーの総和を算出する。
【0042】なお、光センサ35はゲート回路56を介して定量照射部55に検出信号を出力する構成となっている。このゲート回路56は、前述したduty制御によりレーザユニット20が照射期間であるときのみ光センサ35の検出信号の通過を許容する動作制御が出力制御部53により行われる(参照図1(A))。従ってレーザユニット20の非照射期間におけるレーザ光以外の光による照射エネルギーの積算は回避される。
【0043】また、出力制御部53では、レーザ出力停止指令を受信するとレーザユニット20のレーザ照射を終了する制御を行う機能をさらに有している。従って、かかる定量制御部55の構成により、予め決められた総照射エネルギー量を病巣部Pに照射することが可能である。
【0044】(光化学治療用レーザ装置の動作説明)上記構成からなる光化学治療用レーザ装置1の動作を説明する。図4,5は光化学治療用レーザ装置1のフローチャートを示す。
【0045】まず、設定条件記憶部52では、入力手段51からの初期設定条件(レーザ光の出力強度,腫瘍P1に照射する総照射エネルギー量及び治療時における病巣部の上限温度)の入力待ちとなる(ステップS1)。
【0046】上記設定条件の入力が行われると、レーザユニット20におけるレーザ光の出力強度の調節が行われる(ステップS2)。この調節に際しては、病巣部側の光ファイバ34をまだ病巣部Pには向けないでレーザ光の試射を行い、これにより光センサ35で検出される出力強度が設定された出力強度となるようにレーザユニット20への通電量が決定される(ステップS3)。そして、その通電量もまた設定条件記憶部52に記憶される。
【0047】レーザ光の出力強度の調節が済むと、レーザ光の出射は中断し、光ファイバ34の先端部を病巣部Pに向けて、レーザ光照射前当初の病巣部温度の測定が行われる(ステップS4)。即ち、赤外線センサ40の出力から病巣部温度が算出され、当該算出温度と設定条件記憶部52に設定された病巣部Pの上限温度との差が求められる。そして、この温度差に応じてレーザユニット20のdutyが決定される。例えば、病巣部温度が設定上限温度を大きく下回れば、dutyにおける照射期間の割合が大きく設定され、病巣部温度が設定上限温度に近ければ、dutyにおける照射期間の割合は小さく設定される(ステップS5)。
【0048】そして、上記決定されたdutyによる照射期間でレーザ光を病巣部Pに照射する(ステップS6)。さらに、照射終了後、非照射期間中に病巣部Pの温度を赤外線センサ40により測定し(ステップS7)、この測定温度と設定条件記憶部52に記憶された上限温度とを比較する(ステップS8)。
【0049】かかる比較において、病巣部Pの測定温度が設定上限温度を越えた場合には、照射期間比率が小さくなるように設定条件記憶部52のdutyが更新され(ステップS9)、越えない場合にはdutyは現状の値で維持される。
【0050】そして再び、更新された或いは現状のdutyに基づいてレーザ光の照射が行われる(ステップS10)。かかる照射終了後、非照射期間の間に、前回の照射期間の照射エネルギー量が求められ積算される(ステップS11)。さらに、かかる積算された積算照射エネルギー量が設定条件記憶部52に記憶された設定エネルギー量と比較され(ステップS12)、これに満たない場合には、ステップS7以降の動作が繰り返される。
【0051】そして、病巣部Pが設定上限温度を超えないように随時dutyを調節しつつ、繰り返しレーザ光の照射が行われ、積算照射エネルギー量が設定条件記憶部52に記憶された設定エネルギー量に到達した時点で、光化学治療用レーザ装置1の動作は終了する。
【0052】(光化学治療用レーザ装置の効果)以上のように、光化学治療用レーザ装置1は、絶えず赤外線センサ40により病巣部Pの温度を検出し、これに基づいてdutyを更新するので、病巣部の一定値以上の温度上昇を有効に回避することが可能である。また、絶えず温度検出を行い、適当なdutyに更新されるので、温度上昇回避のために必要以上にレーザ光源の出力を低減して設定する必要がなく、治療効果及び治療効率の向上を図ることが可能である。
【0053】また、従来のように、病巣部を冷却する構成を不要とすることが出来、装置の小型化,生産コストの低減及び生産性の向上を図ることが可能である。
【0054】さらに、レーザユニット20に対してduty制御を行い、レーザ光の非照射期間において赤外線検出を行う構成としているため、単一の光ファイバ34をレーザ光と赤外線の光路とすることができ、さらなる生産コストの低減及び生産性の向上を図ることが可能である。
【0055】また、温度測定のために赤外線センサ40を使用すると共に、光ファイバ34を介して病巣部Pからの赤外線を検出する構成とすることにより、非常に狭い領域内の病巣部Pに対しても、温度上昇を回避しながらレーザ光の照射を行うことが可能である。
【0056】さらに、レーザ制御手段50に、定量照射部55を備えているので、目標とする照射エネルギー量でレーザ光の照射を終了する制御を行うことができ、当該照射エネルギー量を適量化し、適度な治療効果を得ることが可能である。
【0057】[第2の実施の形態](全体構成)次に、本願発明の第2の実施形態について図6乃至図8に基づいて説明する。なお、本実施形態で示す各構成の内、前述した光化学治療用レーザ装置1で示した構成と同一のものについては同符号を付して重複する説明は省略するものとする。
【0058】図6は上記第2の実施形態たる光化学治療用レーザ装置1Aの概略ブロック図を示している。この光化学治療用レーザ装置1Aは、レーザユニット20と、レーザ光を病巣部に照射する照射手段30Aと、病巣部Pの温度を検出する赤外線センサ40と、レーザユニット20の動作制御を行うレーザ制御手段50Aとを備えている。
【0059】(照射手段)照射手段30Aは、前述した照射手段30と同様に光ファイバ34,光コネクタ32及び光ファイバ33を備えると共に、病巣部Pと赤外線センサ40とを連絡する独立した光ファイバ36Aを備えている。
【0060】つまり、赤外線センサ40は光化学治療用レーザ装置1とは異なり光コネクタ32には装備されておらず、病巣部Pからの赤外線は光ファイバ36Aを介して検出することとなる。この光ファイバ36Aの先端部は光ファイバ34の先端部と共に同一方向に向けられて一体的に連結されている。
【0061】また、光ファイバ36Aの基端部からは、光学フィルタ41Aを介して赤外線センサ40が赤外線を受光するようになっている。この光化学治療用レーザ装置1Aは、光化学治療用レーザ装置1と異なり、duty制御は採用しておらず、病巣部Pにレーザ光を照射したままの状態で赤外線の検出が行われる。従って、光ファイバ36Aの先端部からは、病巣部Pからの赤外線のみならずレーザ光の反射光も入射することとなる。このため、赤外線の波長域のみの光の通過を許容する光学フィルタ41Aを赤外線センサ40の手前に設け、レーザ光の反射光が赤外線センサ40に入射することを防止している。
【0062】(レーザ制御手段の全体構成)次に、レーザ制御手段50Aについて、図7に基づいて説明する。このレーザ制御手段50Aは、CPU,ROM,A/D変換器を含む演算装置で構成され、後述する光化学治療用レーザ装置1Aの動作制御を実行するプログラムが入力されている。
【0063】このレーザ制御手段50Aは、当該レーザ制御手段50と同様に入力手段51が併設されると共に初期作動設定条件を記憶する設定条件記憶部52と、レーザユニット20の作動状態を制御する出力制御部53Aと、赤外線センサ40の出力に基づく検出温度から病巣部Pの腫瘍P1が予め決められた所定の温度を越えないように出力制御部53Aの制御出力を規制する出力規制部54と、出力制御部53Aで設定するレーザユニット20の出力から照射エネルギー量を順次積算すると共に積算された照射エネルギー量が予め決められた所定の値となるまでレーザユニット20の照射を継続する定量照射部55Aとを備えている。
【0064】(出力制御部)出力制御部53Aは、設定条件記憶部52に記憶されたレーザ光の出力強度に従ってレーザ光を出射するようにレーザユニット20の動作制御を行う機能を有している。即ち、光センサ35の検出する出力強度が設定出力強度となるようにレーザユニット20の通電制御を行う。
【0065】また、前述した出力制御部53では、レーザユニット20の出力強度を一旦初期設定出力強度に合わせると後はその値に固定したままレーザ照射を行い、単位時間当たりの照射エネルギー量はduty制御により調節していたが、この出力制御部53Aでは、レーザ光の非照射期間を設けることなく継続して照射を行い、単位時間当たりの照射エネルギー量は出力強度の増減により調節する。
【0066】出力制御部53Aに併設された出力規制部54は、前述の如く、赤外線センサ40による検出温度が設定された上限温度を超える場合に出力制御部53Aに温度上昇警告指令を出力する。
【0067】そして、出力制御部53Aは、この温度上昇警告指令を受信するとレーザ照射の出力強度が若干(予め設定された一定値だけ)減少するように修正を行う機能をさらに有している。これにより、病巣部Pではレーザ光から受ける単位時間当たりの照射エネルギー量が減少するので、病巣部Pの温度上昇が回避される。
【0068】また、出力規制部54の警告部に、赤外線センサ40に基づく算出温度が上限温度よりも一定温度以上低くなったときに温度低下警告指令を出力制御部53Aに出力する機能を付加した場合には、出力制御部53Aには、温度低下警告指令の受信によりレーザ照射の出力強度を若干(予め設定された一定値だけ)増加するように修正を行う機能を備えていることが望ましい。これにより、レーザ光の照射期間が過度に小さく設定された場合でも修正され、単位時間当たりの照射エネルギー量も適度に増加するので、治療効率の向上を図ることが可能である。
【0069】(定量照射部)次に、定量照射部55Aについて説明する。この定量照射部55Aは、光センサ35により検出される出力強度から照射エネルギー量を積算する積算部と、積算された照射エネルギー量と設定条件記憶部51に記憶された総照射エネルギー量とを比較する比較部と、その比較結果により積算照射エネルギー量が記憶された総照射エネルギー量に到達したときにレーザ出力停止指令を出力制御部53Aに出力する指令出力部とから構成されている(各構成の図示は省略)。
【0070】上記積算部では、レーザ光の出力強度を所定周期でサンプリングすると共に順次積算を行い、これによって、照射エネルギーの総和を算出する。
【0071】一方、出力制御部53Aでは、前述した機能の他に、レーザ出力停止指令を受信するとレーザユニット20のレーザ照射を終了する制御を行う機能をさらに有している。従って、かかる定量制御部55Aの構成により、予め決められた総照射エネルギー量を病巣部Pに照射することが可能である。
【0072】なお、赤外線センサ40と出力規制部54との間と、光センサ35と定量照射部55Aとの間には、光化学治療用レーザ装置1のようにゲート回路を設けてはいないので、各センサ40,35からの出力は常時出力規制部54又は定量照射部55Aに入力される。
【0073】(光化学治療用レーザ装置の動作説明)上記構成からなる光化学治療用レーザ装置1Aの動作を説明する。図8は光化学治療用レーザ装置1Aのフローチャートを示す。
【0074】まず、設定条件記憶部52では、入力手段51からの初期設定条件(レーザ光の出力強度,腫瘍P1に照射する総照射エネルギー量及び治療時における病巣部の上限温度)の入力待ちとなる(ステップS21)。
【0075】上記設定条件の入力が行われると、レーザユニット20におけるレーザ光の出力強度の調節が行われる(ステップS22)。この調節に際しては、病巣部側に光ファイバ34,36Aの各先端部を病巣部Pに向けた状態において、レーザ照射を開始し(その初期出力強度は設定条件記憶部52に予め設定されている)、これにより光センサ35で検出される出力強度が設定された出力強度となるようにレーザユニット20への通電量が決定される(ステップS23)。
【0076】レーザ光の出力強度の調節が済むと、病巣部温度の測定が行われる(ステップS24)。即ち、赤外線センサ40の出力から病巣部温度が算出され、当該算出温度と設定条件記憶部52に設定された病巣部Pの上限温度とが比較される(ステップS25)。そして、この比較により、病巣部温度が設定上限温度を下回っている限りレーザ光の出力強度は一定値に維持され、病巣部温度が設定上限温度以上であれば、レーザ光の出力強度は低減される(ステップS26)。
【0077】さらに、病巣部Pの温度観測が終わると、これまでの照射エネルギー量が求められ積算される(ステップS27)。そして、かかる積算された積算照射エネルギー量が設定条件記憶部52に記憶された設定エネルギー量と比較され(ステップS28)、これに満たない場合には、ステップS24以降の動作が繰り返される。
【0078】そして、病巣部Pが設定上限温度を超えないように随時レーザ光の出力強度を調節しつつ、継続してレーザ光の照射が行われ、積算照射エネルギー量が設定条件記憶部52に記憶された設定エネルギー量に到達した時点で、光化学治療用レーザ装置1の動作は終了する。
【0079】以上のように、光化学治療用レーザ装置1Aは、絶えず赤外線センサ40により病巣部Pの温度を検出し、これに基づいてレーザ光の出力強度の調節を行い、病巣部の一定値以上の温度上昇を有効に回避することが可能である。即ち、かかる構成にあっても、前述した光化学治療用レーザ装置1と同様の効果を得ることが可能である。
【0080】
【発明の効果】以上のように、本願発明では、赤外線センサにより病巣部の温度を検出し、これに基づいてレーザ光源の出力制御を行っているので、病巣部の一定値以上の温度上昇を有効に回避することが可能である。また、病巣部の温度検出を行っているので、必要以上にレーザ光源の出力を低減して設定する必要がなく、治療効果及び治療効率の向上を図ることが可能である。
【0081】さらに、従来のように、病巣部を冷却する構成を不要とすることが出来、生産コストの低減及び生産性の向上を図ることが可能である。
【0082】また、温度測定のために赤外線センサを使用しているため、特に光ファイバを介して病巣部からの赤外線を検出する構成とすることにより、非常に狭い領域内の病巣部に対しても、温度上昇を回避しながらレーザ光の照射を行うことが可能である。
【0083】さらに、レーザ制御手段に定量照射部を備える構成の場合には、目標とする照射エネルギー量でレーザ光の照射を終了する制御が行われるので、当該照射エネルギー量を適量化し、適度な治療効果を得ることが可能である。
【0084】本発明は以上のように構成され機能するので、これによると、従来にない優れた光化学治療用レーザ装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
【出願日】 平成12年6月6日(2000.6.6)
【代理人】 【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
【公開番号】 特開2001−346807(P2001−346807A)
【公開日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願番号】 特願2000−169397(P2000−169397)