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【発明の名称】 マルチスライスX線CT装置
【発明者】 【氏名】宮崎 靖

【氏名】後藤 大雅

【要約】 【課題】検出器を複数列に分割し同時に複数断面の投影データを測定可能にしたマルチスライスX線CT装置において、螺旋ピッチを任意に選択することができ、検出器列数と螺旋ピッチとの関係の変化に対応して常に高画質の断面像を得ることができるX線CT装置を提供する。

【解決手段】螺旋ピッチが列数よりも大きい場合、列数を補う仮想検出器列を想定する。この仮想検出器列に設定した重みを、仮想検出器列の投影データを求める際に用いられた実検出器の投影データの重みに分配する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】多素子検出器を体軸方向に複数列有し、被検体が置かれる患者テーブルを体軸方向に移動しながら、X線源と前記検出器とを回転させて被検体の透過X線を計測し、複数の螺旋投影データを取得するマルチスライスX線CT装置において、計測した螺旋投影データに補正処理を施す補正処理手段と、補正後の投影データを再構成して断層像を得る画像再構成手段とを備え、前記補正処理手段は、前記検出器の列間隔に対する1回転あたりのテーブル移動量である螺旋ピッチに対応して複数の異なるマルチスライス螺旋重みを発生し、計測時の螺旋ピッチに応じて前記複数のマルチスライス螺旋重みの一つを選択して各列の螺旋投影データに適用し、重み適用後の各列の螺旋投影データを合成することを特徴とするマルチスライスX線CT装置。
【請求項2】前記補正処理手段は、計測時の螺旋ピッチに応じて処理対象とする螺旋投影データの重み付け領域を変更することを特徴とする請求項1記載のマルチスライスX線CT装置。
【請求項3】多素子検出器を体軸方向に複数列有し、被検体が置かれる患者テーブルを体軸方向に移動しながら、X線源と前記検出器とを回転させて被検体の透過X線を計測し、複数の螺旋投影データを取得するマルチスライスX線CT装置において、計測した螺旋投影データに補正処理を施す補正処理手段と、補正後の投影データを再構成して断層像を得る画像再構成手段とを備え、前記補正処理手段は、各列の螺旋投影データに適用するマルチスライス螺旋重みを発生する手段と、当該重み適用後の各列の螺旋投影データを合成する手段とを有し、前記マルチスライス螺旋重みを発生する手段は、実検出器とは異なる位置に仮想検出器を設定し、前記実検出器および仮想検出器を含む全列の投影データについてマルチスライス螺旋重みを設定することを特徴とするマルチスライスX線CT装置。
【請求項4】実検出器の列数をN、螺旋ピッチをPとするとき、P>Nであって、前記実検出器および仮想検出器を含む全列数がPであることを特徴とする請求項3記載のマルチスライスX線CT装置。
【請求項5】前記仮想検出器は、隣接する実検出器の間に配置され、当該仮想検出器の投影データに適用される重みを隣接する実検出器の投影データの重みに分配することを特徴とする請求項3または4記載のマルチスライスX線CT装置。
【請求項6】前記仮想検出器は、実検出器列の体軸方向計測範囲の外側に配置され、当該仮想検出器の投影データとして対向データを用い、当該対向データについての重みを隣接する実検出器の投影データに分配することを特徴とする請求項3または4記載のマルチスライスX線CT装置。
【請求項7】前記補正処理手段は、各列の螺旋投影データに適用するマルチスライス螺旋重みを発生する手段と、当該重み適用後の各列の螺旋投影データを合成する手段とを有し、前記マルチスライス螺旋重みを発生する手段は、実検出器とは異なる位置に仮想検出器を設定し、前記実検出器および仮想検出器を含む全列の投影データについてマルチスライス螺旋重みを設定することを特徴とする請求項1記載のマルチスライスX線CT装置。
【請求項8】多素子検出器を体軸方向に複数列有し、被検体が置かれる患者テーブルを体軸方向に移動しながら、X線源と前記検出器とを回転させて被検体の透過X線を計測し、複数の螺旋投影データを取得するマルチスライスX線CT装置において、計測した螺旋投影データに補正処理を施す補正処理手段と、補正後の投影データを再構成して断層像を得る画像再構成手段とを備え、前記X線源は、前記検出器の列間隔に対する1回転あたりのテーブル移動量である螺旋ピッチに対応して前記検出器の列数を制御する手段を備えたことを特徴とするマルチスライスX線CT装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、螺旋状に走査することが可能なマルチスライスX線CT装置(以下、マルチスライスCTという)に関し、特に計測した螺旋投影データに補正処理を施す補正処理手段に特徴を有するマルチスライスCTに関する。
【0002】
【従来の技術】現在、X線CT装置の主流はR/R方式(第3世代)CT装置で、X線源と、このX線源の焦点を指向する円弧状の検出器が被検体を挟んで互いに対向する位置に配置されている。X線源からのX線はコリメートされ、扇状のX線ビームを形成し、被検体の撮影断面に照射される。被検体により減弱した透過X線を回転しながら計測することで撮影動作は行われる。回転中の計測動作は0.1〜0.5度程度の角度間隔で行われ、例えば合計で600〜1200角度程度の投影データを取得する。
【0003】検出器は多数の検出素子で構成され、それぞれの素子の出力が計測回路によってデジタルデータとして収集され、計測角度毎に素子数分のデータ(ビュー)を構成する。このビューデータは回転系から静止系へ伝送路を経由して逐次転送される。転送された計測データは静止系にある画像処理装置によって検出素子の特性補正、線質補正やログ変換などの前処理を施された後、フィルタ補正逆投影法などの公知のアルゴリズムによって断層像として再構成される。
【0004】このようなX線CT装置の一つの応用例として、X線源と検出器との回転と同時に被検体が寝かせられるテーブルを移動しながら計測することにより高速な検査を可能とした螺旋CT(ヘリカルCT)が知られている。このような螺旋状に被検体をスキャンする螺旋CTにおいては、特定の断面の断層像を得るためには、螺旋状に得られるデータから補間によってその断面のデータを得る必要があり、このような補間処理手法が、例えば米国特許U.S.P.4,789,929号(1988)に開示されている。補間処理を施すことにより、動きによるアーチファクトを低減することができる。
【0005】さらに検出器を複数列に分割し同時に複数断面の投影データを計測可能としたマルチスライスCTがある。マルチスライスCTでは、ビューが列数分だけ同時に収集されるので、通常のテーブル固定スキャンの場合、同時に複数数断面の断層像を撮影することができる。
【0006】このマルチスライスCTにおいて螺旋スキャンを実施した場合は、シングルスライスと同様に補間処理を行うか、それに相当する重み付けをして再構成することが必要となる。米国特許U.S.P.5,541,970号には、最も近い対向ビームとの補間になるように重み係数を構成し、ヘリカル補正を実現することが開示されている。また特開平9−285460号には、重み係数をZ軸方向にスムージングすることで連続性を高める方法などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれら従来のマルチスライスCTの螺旋スキャンでは、検出器の列数と螺旋ピッチとの関係の変化に対応することができず、また補間の次元を挙げるなど拡張性がなかった。
【0008】そこで本発明は、マルチスライスCTにおいて螺旋スキャンを実施した際に、螺旋ピッチの変化に対応して常に高画質の断層像を得ることが可能なマルチスライスCTを提供することを目的とする。また本発明は、マルチスライスCTにおいて被曝量の低減を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明のマルチスライスCT装置は、多素子検出器を体軸方向に複数列有し、被検体が置かれる患者テーブルを体軸方向に移動しながら、X線源と前記検出器とを回転させて被検体の透過X線を計測し、複数の螺旋投影データを取得するマルチスライスCTにおいて、計測した螺旋投影データに補正処理を施す補正処理手段と、補正後の投影データを再構成して断層像を得る画像再構成手段とを備え、前記補正処理手段は、前記検出器の列間隔に対する1回転あたりのテーブル移動量である螺旋ピッチに対応して複数の異なるマルチスライス螺旋重みを発生し、計測時の螺旋ピッチに応じて前記複数のマルチスライス螺旋重みの一つを選択して各列の螺旋投影データに適用し、重み適用後の各列の螺旋投影データを合成することを特徴とする。
【0010】本発明のマルチスライスCT装置の一態様として、補正処理手段は、計測時の螺旋ピッチに応じて処理対象とする螺旋投影データの重み付け領域を変更する。
【0011】これにより補間に用いるデータとして実測位置に近いデータを使用することができ高画質化が可能となる。
【0012】本発明のマルチスライスCT装置の別の態様として、補正処理手段は、各列の螺旋投影データに適用するマルチスライス螺旋重みを発生する手段と、当該重み適用後の各列の螺旋投影データを合成する手段とを有し、前記マルチスライス螺旋重みを発生する手段は、実検出器とは異なる位置に仮想検出器を設定し、前記実検出器および仮想検出器を含む全列の投影データについてマルチスライス螺旋重みを設定することを特徴とする。
【0013】仮想検出器は、実検出器の列数Nが、螺旋ピッチPより小さい場合(P>N)、前記実検出器および仮想検出器を含む全列数がPとなるように設定することができる。
【0014】また仮想検出器は、隣接する実検出器の間に配置することができ、当該仮想検出器の投影データに適用される重みを隣接する実検出器の投影データの重みに分配するものとすることができる。
【0015】或いは仮想検出器は、実検出器列の体軸方向計測範囲の外側に配置され、当該仮想検出器の投影データとして対向データを用い、当該対向データについての重みを隣接する実検出器の投影データに分配するものとすることができる。
【0016】仮想検出器という概念を用いることにより、検出器列数よりも螺旋ピッチが大きい場合にも、適切な重みを用いた補間を可能にし、高画質化を図ることができる。またマルチスライス螺旋スキャンにおいて補間によって一つの断面の投影データを得る際に、補間する実計測データの対が断面内で変わることによって生じる不連続性を解消し、高画質化を図ることができる。
【0017】さらに本発明のマルチスライスCT装置の別の態様として、X線源は、検出器の列間隔に対する1回転あたりのテーブル移動量である螺旋ピッチに対応して前記検出器の列数を制御する手段を備えている。
【0018】螺旋ピッチに応じて最適な列数を設定でき、列数が多い場合には制限することによって被曝量を低減することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下本発明のマルチスライスCT装置を図面に示す実施形態に基づき詳述する。
【0020】《装置構成》図1は、本発明が適用されるX線CT装置の概要を示す図である。このX線CT装置は、図示していないが、X線発生部(X線源)、検出器、計測回路部、回転走査機構制御部を備えたスキャナ11と、被検体である患者を搭載してスキャナ11内の測定空間に搬送する患者テーブル12、計測回路部で計測したデータに前処理、再構成などの画像処理を施す画像処理部13、再構成画像等を表示する表示部14、X線発生部に高電圧を供給する高電圧発生装置15、全体を統括するホストコンピュータ16とを備えている。
【0021】X線検出器17は、図2に示すように、多素子検出器を体軸方向(スライス方向)に複数列有する。図示する例では、検出器は16列に分割されており、この分割された16列の出力は、出力セレクタ171により任意の4系統として出力されるように構成されている。4系統の出力は16列のうちの任意の4列の出力でもよいし、複数の列をアナログ的またはデジタル的に加算した出力であってもよい。4系統の設定の仕方によってスライス厚特性やノイズ特性の異なる画像を得ることができる。なお以下の説明では検出器列数が4列であるとして説明を進めるが、本発明で言う列数は上述したような加算後の列数を含む意味であり、また4列に限定されるものでもない。
【0022】X線発生部18は、X線管181と、X線管から放射されるX線をコリメートし所定の幅、所定の開き角度のファンビームが照射されるように制御するコリメータ182とを備え、さらに本発明の特徴としてコリメータ182はX線のスライス方向の幅を調節する機構を備えている。ファンビームのスライス方向の幅を調整することにより、前述した検出器列の列数を任意に設定することができる。この幅調整のための機構は、ホストコンピュータ16によって制御することができる。
【0023】このような構成のX線CT装置は、患者テーブル12を体軸方向に移動しながら、スキャナ11(X線源と検出器)を回転させて被検体の透過X線を計測し、検出器の列数分(ここでは4系統)の螺旋投影データを取得することができる。なお、このような螺旋投影データの取得は、螺旋スキャンとして公知であり、螺旋ピッチPは検出器の列間隔ΔZに対する1回転あたりのテーブル送り量t(t/ΔZ)として定義される。
【0024】図3は、画像処理部の構成を概念的に示す図であり、検出器17の出力セレクタ171から出力される4列の投影データを格納する投影データメモリ131と、これら投影データを各演算エレメントに分配する投影分配装置132と、演算エレメントにおいて用いる重み係数を、全列の投影データについて設定した重み係数テーブルを作成し格納するマルチスライス螺旋重み発生装置(以下、単に重み発生装置という)133と、重み発生装置に格納された複数の重み係数テーブルのうち所定の重み係数テーブルを選択する重みセレクタ134と、重み係数テーブルの重み係数と対応する投影データを乗算する演算エレメントPE0〜PE3からなる演算部135と、各演算エレメントの演算結果を合成する投影データ合成装置136と、投影データ合成装置136で得られた所定のスライスについての投影データに、フィルタ補正逆投影などの公知の画像処理を施し画像再構成する画像処理装置137とを備えている。
【0025】重み発生装置133は、螺旋ピッチやモード等の相違に応じた複数種の重み係数を作成し、重み係数テーブルとして格納している。本発明のマルチスライスCT装置は、所定の螺旋ピッチを設定したときに、設定した螺旋ピッチに応じた最適な重み係数を適用することに一つの特徴がある。重みセレクタ134は、複数の重み係数テーブルから一つの重み係数テーブルを選択し、各演算エレメントにロードする。この際、重み係数テーブルだけでなく、重み係数適用に必要な情報、例えば、所定のスライス位置Zsにおける所定のビューβsを基準としたときに各列のデータのずれ(オフセットビュー数)、重み付けするビュー長さなども演算エレメントにロードされる。これらについては後述する。
【0026】次に以上のような構成における画像処理特に各列の投影データの補正処理について説明する。
【0027】《マルチスライス螺旋重みの生成》図4は、上述した4系統の出力データ(以下、列データという)R1〜R4を、横軸をスライス方向Z、縦軸を投影角度即ちX線管の焦点の角度位置βとして表したものである。螺旋スキャンでは、スキャナの回転に伴い、各素子列はスライス方向に線形にずれていくため、図示するように、Z−β平面には4本の直線が得られる。所望のスライス位置Zsの投影データを得るためには、Zsを基準とした重み(一般的には補間の概念に基づいた重み)を各列データに乗じる。投影角度毎に、このように重み付けされたデータを累積加算することにより、そのスライスについて1回転分の投影データを得ることができる。
【0028】図中、各列データ上に太線で示す領域が0ではない重み係数を乗じる部分即ち実質的に加重加算される部分(ビュー長さ:Weight Length)である。またスライスZsについての所定のビュー角度(例えばX線管の焦点が通過したときのビュー角度)βsと各列のビュー長さの始点との差V0、V1、V2、V3がオフセットビュー数である。これらビュー長さおよびオフセットビュー数は前述したようにパラメータとして演算エレメントにロードされ、重み係数を適用するために使用される。
【0029】ここで適用される重みの一例をサイノグラム上に表現したものを、図5に示す。サイノグラムとは、横軸を検出器チャンネルの開き角度α、縦軸をX線管球角度(投影角度)βとする2次元計測空間のことである。
【0030】図5に示す例は、検出器列数が4で螺旋ピッチPが4である。これを図4と同様にβ-Z座標に示すと図6(b)のようになる。なお図6(a)は列数4、螺旋ピッチ3の例であり、このように列数Nが、螺旋ピッチPより多い場合には、周期mの第4列と次の周期m+1の第1列が重なる。即ち、N-P分の列のオーバーラップが生じる。この場合には、オーバーラップした列データを平均化することでP=Nの場合と同様に対応できる。P>Nの場合については後述する。
【0031】図5において、Row1〜Row4は4列の検出器の投影データに対応し、各列n(n=1,2,3,4)が所定のスライス位置Zsを通過したときのビュー角度(基準ビュー角度)βnを基準として重みが設定される。図中、ハッチで示す領域が重みが設定される領域であり、同じハッチングで示す領域が補間の対となる。具体的には、例えばRow1のβ1とβ1-との間の領域と、Row2のβ2+とβ2との間の領域とが補間の対、Row2のβ2とβ2-との間の領域と、Row3のβ3+とβ3との間の領域とが補間の対である。
【0032】基準ビュー角度βnは、焦点がスライスZsを通過したときのビュー角度βsを用いて次式(1)より求められる。
【数1】

ここで、Vはテーブル送り方向によって+1または−1をとる。またΔβは、各列のビュー角度βnの差で、Δβ=2π/Pである。図示する例では螺旋ピッチPが4であるのでΔβは2π/4である。
【0033】ビュー角度βnを中心として上限をβn+、下限をβn-とする領域に重みが適用される。上限および下限を表すβn+、βn-は、それぞれ【数2】

である。具体的な列nの重みWn(α、β)は、式(4)〜(7)
【数3】

である。ここで、Wn(α,β)は上式のように線形である必要はなく、補間位置δ(サンプル間隔に対する補間位置の比)に対し、次式を満足すればよい。
【数4】

【0034】f(δ)の典型的な例としては、3δ2+2δ3がある。この場合、βn-<β<βn+では上式のWn (α,β)がδに相当する。
【0035】この図5は、α軸に平行なファンビーム投影データを用いた位相が同じデータ間の補間(同位相補間)の場合の重みを例示したがマルチスライスCTの場合にも、シングルスライスにおける180度補間と同様に、位相が180度(π)異なる対向ビームを利用した逆位相補間が可能である。対向ビームとは、図7(a)に示すように焦点が位置S0(β0)のファンビームについては、S1〜S2(β0+π±2α)の範囲のビームであり、サイノグラム上では傾きをもつ領域として表現される。
【0036】このような対向ビームを用いた逆位相補間の場合の重みの一例を図8に示す。図8中、Row1〜Row3は図5のRow1〜Row3に対応する。但し、図8は螺旋ピッチP=3の場合であり、Row1のデータとRow4のデータはオーバーラップしている。
【0037】R1’、R2’、R3’はそれぞれRow1、Row2、Row3の対向ビームに相当する。このような逆位相補間は、±Δβ/2の範囲のデータに対する重み付けとして実現できる。
【0038】マルチスライスCTにおける同位相補間と逆位相補間の相違を、図9(a)、(b)を用いて説明する。図9(a)は、同位相補間の場合であり、所定の断面SPの投影データは、最も近い列の同位相データの補間であり、その重みは下段に示すようにSPを最大とするランプ関数となる。この重みのZ方向の幅は±ΔZである。
【0039】一方、図9(b)に示す逆位相補間の場合には、実線で示す列データと、位相πずれた対向データ(点線)との補間であるので、重みのZ方向の幅は±ΔZ/2である。このように逆位相補間の場合には、重みのZ方向の幅を同位相補間の場合の1/2にできるので、実効的なスライス幅を半減することができる。なお、この場合にも重み関数としては、前述の式(8)を満たすことを条件として、図示するような線形関数以外の関数を用いることができる。
【0040】《可変ビュー補間》以上、本発明のマルチスライスCTにおける一般的な重みの生成について説明したが、本発明の一つの特徴は、螺旋ピッチ(螺旋の傾き)に対応して、扱うビューを可変にしたことである。以下、可変ビュー補間について説明する。
【0041】まず可変ビューの概念について図7および図10を参照して説明する。
【0042】図7(a)はα軸に平行なファンビームとその対向ファンビームとの関係を示し、同図(b)はα軸に平行なファンビームと各チャンネルの投影角が等しい平行ビームとの関係を示したものである。図10は、これら異なるビュータイプをサイノグラム(α、β)空間上に表したものである。図10からわかるように、各線分の投影角はファンビーム: βf=β平行ビーム: βp=β+α対向ファンビーム:βc=β+2αとなり、これらは重み付け領域の境界を示す線分(基準線)の傾きによって区別されることがわかる。そこで、本実施形態のマルチスライス螺旋重みでは各列の基準線を次式のように選択可能としたものである。
【0043】βn+=βn+Δβ+Mαβn-=βn−Δβ+MαM=0、1、2M=0の基準線がファンビーム、M=1は平行ビーム、M=2は対向ビームすなわちファンビームである。前掲の図5の例では、M=0であり基準線がファンビームである。従って、この例ではファンビーム投影データ間の同位相補間となる。
【0044】M=1の場合を図11に示す。この場合、基準線は平行ビームであり、各領域はΔβの広がりを持った平行ビームデータセットとなる。従って、平行ビーム投影データ間の同位相補間に相当する重み付けがなされる。M=2の場合は図7(a)からわかるように4αmの傾きとなり、ファンビームと対向ビーム投影データ間の同位相補間に相当する重み付けがなされる。M=0以外の場合には、基準線がスライス位置に対して傾いているが、臨床的には問題のないレベルである。
【0045】このようなビュータイプ(M)は、一般には螺旋ピッチ(テーブル送り量)に応じて変化させる。螺旋の傾きとビームの傾きを近づけることで補間に用いるデータが実計測位置に近付くため高画質化が可能となる。Mの選択は、螺旋の傾きと連動させてもよいし、それぞれ専用モードを設けて任意に選択するようにしてもよい。
【0046】尚、図11には同位相補間の場合を説明したが、上述した可変ビューの考え方は、逆位相補間の場合にも同様に適用することができる。以上、マルチスライス螺旋重みの生成の一実施形態として、螺旋ピッチに対応する可変ビューの設定について説明した。
【0047】一列分の重みの生成のフローを図12に示す。なお重みの生成はすでに述べたように図3に示す画像処理装置13の重み発生装置133において実現される。
【0048】まず画像再構成しようとするスライス位置に相当する基準角度βsを求める(ステップ121)。基準角度βsは、例えば焦点がスライスZsを通過したときのビュー角度である。ついで前掲の式(1)により、各列の基準角度βnを求め(ステップ122)、さらに予め選択された或いは予め設定されたM値に基づき、列データの重み付け領域の上限βn+および下限βn-を定義する(ステップ123)。さらに重みの広がり(重み付けする範囲)を設定する(ステップ124)。図中、Gは重み幅を制御するパラメータである。後述するように本発明のマルチスライス螺旋重みでは、画像スライス厚に応じて重みの広がりを任意に可変にできる。その後、例えば式(4)〜(7)で表されるランプ関数を適用して重みWnを決定する(ステップ125)。
【0049】《仮想検出器の設定》次に第二の実施形態として、螺旋ピッチに対応する仮想検出器の設定とそれを含む全列データについての重みの生成について説明する。
【0050】図5に示す例では、列数Nと螺旋ピッチPがN≧Pの場合(図6(a)、(b))を例示したが、図6(c)、(d)に示したP>Nの場合は、K(=N-P)<0となり、K列分のデータが不足する。同相補間を実施するためには、N≧Pが条件となる。
【0051】そこで、本実施形態では仮想検出器列として不足する列を仮想的に設定する。例えば5列のマルチスライスシステムでピッチ5で計測すれば容易に補正が可能であること、また理想的な計測となることは明らかである。
【0052】図13に4列のマルチスライスでピッチ5の場合を示した。ここで設定した第5列は実際には存在しないので、これを例えばRow3、Row4から外挿補間して求めるか、第5列の対向ビームで代用し、これに重みを適用する。
【0053】図14は、対向ビームに適用する場合の例を示したものである。対向データとは、半周期の位相差(π)のデータであるから、π=Δβ×P/2の関係から、P=5では2.5列ずれたものとなる。すなわち第5列の対向データは、Row2、Row3とから内挿補間によって求めた列として扱うことができる。
【0054】この場合にも、図中同じハッチングで示した領域が補間の対となるが(例えば、Row1のQ1とRow5のQ5)、第5列に相当するデータは、実際に求める必要はなく、単にこの仮想検出器のデータを求める場合の補間重みに従って、仮想検出器の重みを実検出器に分配すればよい。例えば、Row2、Row3から内挿補間した場合は、Row2、Row3に0.5ずつ分配する。
W2(α,β)=W2(α,β)+0.5×W5(α,β)W3(α,β)=W3(α,β)+0.5×W5(α,β)【0055】この場合、第5列のデータを求める演算が不要であるので処理時間を短縮でき実用的である。処理時間の制約を考慮しなくてよい場合には、仮想検出器の列データを演算によって求め、それに式(4)〜(7)に基づく重みを適用してもよい。
【0056】いずれの場合にも、仮想検出器という概念を導入することにより、容易に補正でき且つ理想的な計測となる。なお図13および図14は、可変ビューとしてM=1が選択された場合、すなわち平行ビーム投影データ間に補間を施す場合に適用される重みであり、従って第5列の対向ビームも平行ビームである。本実施形態は、ファンビームを用いた場合にも同様に適用することができる。
【0057】図15にファンビームを用いた場合(螺旋ピッチP=5、M=0)の仮想検出器の設定と重みを示す。この例でも、仮想検出器である第5列のデータとして対向ビームを用いるとすると、この場合の対向データは図示するようにM=2の対向ファンビームであり、領域Qの代わりに領域Q‘が用いられる。対向ビームについても重みの設定は図14の場合と同様である。
【0058】また図14は螺旋ピッチと列数との差が1の場合を示したが、2以上であっても同様に適用することができる。図16は、螺旋ピッチPが6、M=2の例である。螺旋ピッチが6の場合はK=2(=6−4)であるため、2列の仮想検出器列(0列および5列)を設定する。この場合は仮想検出器の対向データセットは、3列分の位相差となり、仮想0列のデータは第3列で、仮想5列のデータは第2列で補うことができる。この仮想列に対応する領域はハッチングせずに太枠のみで図示してある。この場合、M=2の仮想列ファンビームの対向ファンビームは、M=0のファンビームとなる。
【0059】本実施形態は、また螺旋ピッチが整数である場合のみならず、端数を有する場合にも適用できる。この場合には、検出器列をさらに細分化する。例えば、4列、ピッチ4.25の場合は16列、ピッチ17として重みを構成する。このように検出器列を細分化して考えることにより問題が単純化でき、仮想検出器列の概念を容易に適用することができる。
【0060】《逆位相補間》上述した仮想検出器の概念は、逆位相補間にも適用することができる。但し、逆位相補間は奇数ピッチの場合に実効性がある。すなわち、図15と図16との比較からわかるように、螺旋ピッチが奇数の場合には仮想検出器列の対向データが実検出器列の列データの中間に位置するのに対し、螺旋ピッチが偶数の場合には仮想検出器列の対向データは実検出器列と一致し、図9で説明した高分解能化の効果が期待できない。この様子を図17に示した。
【0061】従って奇数ピッチの場合に、仮想検出器を用いて理想的なデータ配分を行うことにより、逆位相補間を容易に実現でき、その実効を得ることができる。図18に、Row5に仮想検出器を設定した場合の逆位相補間の例を示した。このように奇数ピッチの場合には、同位相補間で作成した重みの幅をΔβ/2とすることにより逆位相補間が実現でき、20%以上の高分解能化が可能である。
【0062】ただし、P=3<Nの場合は、図8に示したように仮想検出器を用いずに実検出器での補間が可能となる。図8中のR1’〜R3’は実検出器のデータRow1〜Row3の中に存在するからである。
【0063】仮想検出器を補う対向データセットは、例えば基準線がβn’= βn+Mαである場合、位相がπずれて傾きが(2−M)であるので、βn’= βn±π+(2-M)αとなる。この対向データセットの区分線は補間の対を表現するものであるから、平行ビーム(M=1)は平行ビーム、ファンビームはファンビームまたは対向ビームと対を組むことになる。
【0064】《高次補間》以上、重みの幅として、基本的なΔβの場合と最も高分解能化可能な奇数ピッチの場合のΔβ/2の場合を例示したが、重みの幅はΔβ/2を最小として任意に変更することが可能である。この幅を変えることにより画像の実効スライス厚を任意に変更することができる。
【0065】このように重みの幅を任意に変更する場合には、重み幅の異なる複数の重みをさらに加重平均して新たな重みとする。例えば幅2Δβの重みWaと、 幅Δβの重みWbの加重平均を用いる。或いは、前述のように補間位置(式(8)におけるδ)がすでに決まっているので高次補間の重みとすることも可能である。
【0066】《不連続性の解消》以上説明したように、マルチスライス螺旋補間では、Δβ毎に補間の対が異なることになる。この切り替わりによって補正後の投影データに不連続性が生じることになる。この不連続性は、重みの幅が小さいときに顕著となる。
【0067】そこで本実施形態では、図19に示すように各列の間に仮想検出器VRを配置し、この仮想検出器を含む全列について重みを設定する。これにより例えば4列、螺旋ピッチ3で得られる螺旋投影データは、8列または7列、螺旋ピッチ8と同等となる。仮想検出器VRに対する重みは、仮想検出器だけを考慮して3列、ピッチ3とした場合の重みを適用する。この仮想検出器に対する重みを周辺の重みに分配し、各列の重みに加算する。
【0068】このように仮想検出器を実検出器の間に想定し、仮想検出器を含む列全体を考慮して重みを設定し、各列データに適用することにより不連続性を解消し、マルチスライス螺旋走査における高画質化を図ることができる。
【0069】図19では螺旋ピッチが整数(=3)である場合を例示したが、この実施形態は、螺旋ピッチが端数を持つ場合にも有効である。例えば、4列、螺旋ピッチ1.25のような場合は8列、螺旋ピッチ2.5として扱うことができる。このように任意の螺旋ピッチにおいて仮想検出器の概念を用いることにより、効率的な重みの設定が可能となる。
【0070】仮想検出器を用いた場合の重み発生のフローを図20に示した。図示するように、まず実検出器列についての重みを発生する(ステップ201)。ここで列数NがP<Nを満たす場合には、N-P分の列のオーバーラップが生じる。この場合には、オーバーラップする列は平均化し、冗長性を回避する(ステップ202)。一方、N<Pの場合には列数が不足するので仮想検出器を想定し、その重みを発生し(ステップ203)、この重みを実検出器の重みに分配する(ステップ204)。なお、上述したように不連続性を解消するために仮想検出器を設定する場合には、ステップ201において、隣接する実検出器間に仮想検出器を設定した重みを実検出器間に分配した後、上記重み処理を行う。
【0071】《コリメート制御手段》以上の説明において、列数Nが螺旋ピッチPより大きい場合に、N-P分の列のオーバーラップを平均化し、冗長性を回避することを述べた。しかし、被曝低減の観点からは列数を調整することが好ましい。
【0072】そこで本発明のさらに別の実施形態は、X線の幅、開き角度を制御するコリメータ182に、X線のスライス方向の幅を調節する機構を設けたものである。この機構を図21に示す。
【0073】この調節機構は、ホストコンピュータ16(図1)からの指令によって制御される制御手段211(図2)と、制御手段211により駆動されるモータ212と、リンク機構のスライスコリメータ213と、モータ212の回転をスライスコリメータ213のリンク機構に伝達する手段とを備えている。ホストコンピュータから螺旋ピッチに応じて必須列数の情報或いはそれに相当する情報が制御手段211に与えられると、制御手段211はモータ212を駆動してスライスコリメータ213のスライス方向開口幅を調節する。例えばモータ212の回転によって、リンクが例えば図中時計回りに回転すると、Z方向のX線照射範囲を広げ、半時計回りに回転すると、Z方向のX線照射範囲を狭める。Z方向と直交する方向の照射範囲は、X線遮蔽容器によって制限されている。
【0074】この調節機構は、特に検出器の列数が16〜96列などに増えたときに有効であり、基本的にはピッチPの約半分の列数があれば完全な画像を再構成することが可能である。
【0075】なお図示するコリメータはリンク機構を採用したものであるが、Z方向の幅を調整可能な機構であれば、例えばスライド機構など公知の機構を採用することが可能である。
【0076】このようにマルチスライスCTにおいて列数を制御する機構を備えることにより、上述した重みのアルゴリズムと関連させた列数の調整が可能であり、本発明による補間処理の実効性をさらに向上させることができる。また計測の冗長性をなくすとともに被曝量の低減を図ることができる。
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、マルチスライスCTにおいて螺旋ピッチに応じて最適な補間重みの設定が可能であり、高画質化を図ることができる。また本発明によれば、仮想検出器という概念を用いることにより、検出器列数と螺旋ピッチの関係が種々の場合において、効率的に最適な補間重みを設定することができ、またマルチスライス螺旋重みに発生する不連続性を解消することが可能である。さらに本発明によれば、冗長な計測をできるだけ少なくし、被曝低減を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成12年9月29日(2000.9.29)
【代理人】 【識別番号】100099852
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 公子 (外1名)
【公開番号】 特開2001−346794(P2001−346794A)
【公開日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願番号】 特願2000−298888(P2000−298888)