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【発明の名称】 X線断層撮影装置及びX線断層画像処理装置
【発明者】 【氏名】河合 浩之

【氏名】岡島 健一

【要約】 【課題】X線検出器にラインセンサや多層センサを用いたX線断層撮影装置で、同一被検体に対し異なる時点で取得した三次元再構成画像同士間又は投影像同士間の特に回転軸方向の高精度な位置合わせのリアルタイム処理を可能にする。

【解決手段】X線源3とX線検出器4を備えた走査駆動部5、走査駆動部の回転中心軸方向への駆動手段を備えた寝台7、走査駆動部と寝台による螺旋スキャン計測で得た投影データを保管する投影データ保管手段14、投影毎に加算した加算投影データを求める投影加算手段15、異なる時点での投影で取得した二つの加算投影データを各々保管する二組の加算投影データ保管手段16、二つの加算投影データの誤差を重み付け比較する誤差比較手段17誤差比較手段で用いる重み関数を保持する重み関数テーブル18、誤差比較手段で得た位置ずれ量を用い複数の再構成画像間の位置ずれ補正を行う位置ずれ補正手段19を備えたX線断層撮影装置とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置であって、前記X線検出器は前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして前記透過X線を複数の前記投影角において検出するものであり、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されており、前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算手段と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較して前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求める位置ずれ量算出手段と、前記位置ずれ量算出手段により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正手段とを具備してなることを特徴とするX線断層撮影装置。
【請求項2】被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置により計測された前記3次元再構成画像を処理するためのX線断層画像処理装置であって、前記X線断層撮影装置における前記X線検出器は、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されてなり前記透過X線を前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして複数の前記投影角において検出するものであり、前記X線断層画像処理装置は、前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算手段と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較して前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求める位置ずれ量算出手段と、前記位置ずれ量算出手段により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正手段とを具備してなることを特徴とするX線断層画像処理装置。
【請求項3】被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置により計測された前記3次元再構成画像を処理するためのX線断層画像処理方法であって、前記X線断層撮影装置における前記X線検出器は、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されてなり前記透過X線を前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして複数の前記投影角において検出するものであり、前記X線断層画像処理方法は、前記スキャナの前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算工程と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較して前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求める位置ずれ量算出工程と、前記位置ずれ量算出工程により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正工程とを含んでなることを特徴とするX線断層画像処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線断層撮影装置及びX線断層画像処理装置に係り、特に、X線源とX線を検出するラインセンサ又はこのラインセンサを複数重ねた多層センサとが設置されたスキャナを被検体の周囲に螺旋状に回転させることによって上記被検体の多方向からの投影データを計測し、これらの計測投影データを用いて上記被検体のX線吸収係数の三次元分布を再構成するX線断層撮影装置及びそのためのX線断層画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図2に、X線断層撮影装置の一般的な構成を示す。このX線断層撮影装置は、大別して計測部1とデータ処理部2とから構成される。計測部1は、X線源3とX線検出器4とを備えた走査駆動部5と、被検体6を支持してこれを体軸方向に移動させる機構を備えた寝台7と、走査駆動部5と寝台7とを制御する制御手段8とを具備する。データ処理部2は、X線検出器4により検出・収集された投影データから被検体6のX線吸収係数分布を再構成する再構成演算手段9、再構成されたX線吸収係数分布を画像化して表示する表示手段10、及び操作者が上記X線断層撮影装置に必要な値を設定しあるいは指示を入力するための操作卓11を具備する。
【0003】X線検出器4は、多数のX線検出素子12が走査駆動部5の回転方向に沿って円弧状に配列されたラインセンサである。あるいは、多数のX線検出素子12が走査駆動部5の回転方向及び回転軸方向に沿ってすなわちマトリックス状に円筒表面の一部を成すように配置されたものである場合もある。後者のタイプのX線検出器4は、前者のタイプのラインセンサを回転軸方向に「多層」に並べたものであるので、前者のラインセンサと区別する時には「多層センサ」と呼ぶ。
【0004】また、X線検出器4として、多層センサよりさらに回転軸方向に広い検出視野をカバーするよう、回転軸方向及び回転方向にマトリックス状に多数のX線検出素子12を配置してなる平面センサを用いたX線断層撮影装置も考えられる。一般に、回転軸方向にX線検出素子12が2層から100層程度配列されたものを多層センサ、同様に数百から千数百層配列されたものを平面センサと呼ぶ。平面センサとしてはX線イメージインテンシファイアーTVカメラ系を用いたもの、TFTマトリックスを用いたもの等が実用化されている。
【0005】X線検出器4として多層センサあるいは平面センサを用いた場合、ラインセンサを用いた場合に比べ、一度の投影で投影データを収集できる範囲が回転軸方向に広くなるか、あるいは、回転軸方向の分解能を高くできる。すなわち、計測のスループットを向上することができる。
【0006】次に、X線断層撮影装置による従来の撮影方法を述べる。X線検出器4としてラインセンサあるいは多層センサを備えたX線断層撮影装置を用いて、被検体6の3次元的なX線吸収係数分布を計測するための計測方法として、螺旋スキャン法がある。螺旋スキャン法とは、連続的に走査駆動部5を回転させ、同時に被検体6を載せた寝台7を回転軸方向に移動させ、この間にX線源3からX線を投影し、X線検出器4により被検体6を透過してきたX線を投影データとして計測する(一方、寝台7の回転軸方向への移動を行なわずに、走査駆動部5を被検体6の回りに単純に一回転させて計測する計測法を「シングルスキャン法」と呼び、上記の螺旋スキャン法と区別する)。つまり、螺旋スキャン法では、X線源3及びX線検出器4は被検体6に対して相対的に螺旋上の軌道を動くことになる。
【0007】上記の螺旋スキャン法により計測した投影データから再構成演算手段9において、周知の螺旋スキャン再構成演算法を用いて、被検体6のX線吸収係数分布を再構成する。X線検出器4として多層センサを用いた場合の再構成演算法としては、既にさまざまなものが提案されているが、最も単純なものとして特開平4−343836号公報に記載のものが挙げられる。これは、多層検出器で計測した投影データを近似的に多数の単層の検出器で計測した投影データとみなして再構成を行なうものである。このようにして、取得された被検体6の3次元的なX線吸収係数分布のことを三次元再構成画像と呼ぶ。
【0008】最終的には上記三次元再構成画像に対し、画像化手段13においてボリュームレンダリング処理あるいは最大値投影処理等の画像処理を施して、画像表示手段10上に二次元画像として表示する。操作者はキーボード,マウス,トラック・ボール等の図示しない指示装置を介して、画像化手段13に対して、観察したい視点,部位等のパラメータを入力し、所望の画像を得る。
【0009】医師あるいは操作者は、上記の二次元画像あるいは三次元再構成像にさまざまな処理を加えて、これを利用して診断を下し、治療計画を立て、経過の観察を行なう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のX線断層撮影装置において、医師は取得した三次元再構成画像を利用して診断を下し、治療計画を立て、経過の観察を行なう。その際、異なる時間において取得した同じ被検体についての複数の三次元再構成画像を比較する必要があることがある。
【0011】例えば、被検体を手術の前後で比較する場合や、その他、治療に対する経過の観察を行なう場合、また、術中においてリアルタイムに取得された投影像、あるいは三次元再構成画像と、手術計画に利用した三次元再構成画像との比較を行なう場合等である。
【0012】また、定期的な検診において取得した時間経過を伴う複数の三次元再構成画像を比較する場合もある。このような定期的に取得した複数の三次元再構成画像間での比較は、病変部の鑑別、あるいは病変の進展の度合いを診断する上で医学的な有用性が高い。
【0013】このように時間経過を伴う複数の三次元再構成画像間での比較を行なうためには、先ずそれら複数の三次元再構成画像間での位置合わせが必要である。ところが、一般にX線断層撮影装置を用いた撮影において被検体と撮影装置(計測系)との位置関係を厳密に固定すること、そして前回の撮影時の位置関係を再現することは困難である。
【0014】そのため、医師は頭の中でそれらの三次元再構成画像の位置合わせを行なわなければならず、この作業には習熟を要する。また、正確な診断を行なう際の負担となり、スループット低下をもたらしていた。特に、定期的な集団検診によって取得された三次元再構成画像は量的に膨大なものになるので、医師に対する負担は大きかった。
【0015】上記した医師の負担を減らすための複数の三次元再構成画像間での厳密な位置合わせを行なう方法の一つは、被検体に位置合わせの基準となるようなマーカーを固定することである。しかし、この方法によれば、被検体は撮影が行なわれる可能性のある期間中ずっとこのマーカーをつけていなくてはならず、大きな負担となる。
【0016】上記した医師の負担を減らすための複数の三次元再構成画像間での厳密な位置合わせを行なうもう一つの方法は、画像認識技術を用いて三次元再構成画像間での位置合わせを行なう方法である。すなわち、三次元再構成画像同士を比較あるいはその特徴的な部位の位置関係を比較して、両者の位置関係を割り出す方法である。この方法は、膨大な計算量を必要とする。そのため、例えば、手術に先立って取得し手術計画に利用した三次元再構成画像と術中においてリアルタイムに取得した投影像あるいは三次元再構成画像との位置合わせを行ない、両者の比較を行なうのは困難であった。
【0017】X線検出器4として平面センサを用い、シングルスキャン法によって計測を行なって三次元再構成画像を取得するX線断層撮影装置すなわちコーンビームX線断層撮影装置において、上記のような目的で、高速な位置合わせを行なう方法が特願平10−241604号公報に記載されている。しかし、この三次元再構成画像位置合わせ法は、回転軸方向に広い視野を持つ平面センサを用い、シングルスキャン法によって計測した投影データの性質を利用したものであり、本発明が対象としているようなラインセンサあるいは多層センサを用い螺旋スキャン法によって計測した投影データを利用するX線断層撮影装置には利用することができなかった。
【0018】また、螺旋スキャン法により計測した場合の三次元再構成画像の回転軸方向の空間分解能の低さも高精度な位置合わせを行なう上で問題であった。螺旋スキャン法を用いた場合、一般に、同一の検出器4と再構成演算法を利用する限りは、走査駆動部5の一回転当たりの寝台7の移動量によって三次元再構成画像の回転軸方向の空間分解能が定まる。例えば、一般的に肺野の検診向けの撮影を行なう場合、寝台7の上記移動量は20mmが選択されている。この時、三次元再構成画像の回転軸方向での空間分解能も10〜20mm程度である。一方、回転軸に垂直な方向での三次元再構成画像の空間分解能は,一般に0.5〜1mmには達するので、これに対比すると、回転軸方向の空間分解能は著しく低いと云わざるを得ない。従来、複数画像間での位置合わせは三次元再構成画像自体を利用して行なわれていたため、回転軸方向の位置合わせ精度は同じく10〜20mm程度に制限されていた。
【0019】従って、本発明の目的は、X線検出器としてラインセンサあるいは多層センサを用いたX線断層撮影装置を用い、螺旋スキャン計測を行なって得られた三次元再構成画像に関し、医師の習熟の度合いによらず、また、医師や被検体に負担をかけずに、同一の被検体に対して異なる撮影によって取得した三次元再構成画像同士間あるいは投影像同士間での特に回転軸方向における高精度な位置合わせをリアルタイム処理が可能な程度の少ない演算量で実現することであり、結果的にX線断層撮影装置を用いた診断の精度向上を実現することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明によれば、(1)被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置であって、前記X線検出器は前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして前記透過X線を複数の前記投影角において検出するものであり、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されており、前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算手段と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較してる位置ずれ量算出手段と、前記位置ずれ量算出手段により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正手段とを具備してなることを特徴とするX線断層撮影装置が提供される。
【0021】上記位置ずれ量算出手段によって前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求め、求めた位置ずれ量を基にして上記位置ずれ補正手段によって前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正することにより、高精度の位置合わせをリアルタイムで実現できる。
【0022】(2)上記(1)に記載のX線断層撮影装置において、前記投影角をA,前記X線検出素子の前記回転円周方向での角度をB,前記X線検出素子の前記回転中心軸方向での角度をC,前記X線源の前記回転中心軸方向での位置をz,前記スキャナの1回転の間での前記寝台の前記回転中心軸方向での移動量をd,前記寝台の前記回転中心軸方向での初期位置をz0とし、前記投影データをP(z,A,B,C)とした時、前記螺旋スキャンの螺旋軌道がz=z0+d・A/(2π)により表わされ、前記加算手段は、次式(1) により、【0023】
【数1】

【0024】前記加算投影データR(z)を求める手段であることができる。これにより、少ない演算量で前記加算投影データR(z)を求めることができ、リアルタイムでの精度の良い位置合わせが可能となる。
【0025】(3)上記(2)に記載のX線断層撮影装置において、前記位置ずれ量算出手段は、前記両時点a,bでの前記3次元再構成画像計測に際してそれぞれ得られた前記加算投影データRa(z),Rb(z)に基づき、前記回転中心軸方向で変化する重み関数w(z)を用いて、次式(2) により表わされる評価関数E(z1) を演算し、【0026】
【数2】

【0027】この評価関数E(z1) を最小とするようなz1 値を求め、求めたz1 値をもって前記回転中心軸方向における位置ずれ量とする手段であることができる。これにより、少ない演算量で前記位置ずれ量z1 を求めることができ、リアルタイムでの精度の良い位置合わせが可能となる。
【0028】(4)上記(3)に記載のX線断層撮影装置において、前記重み関数w(z)は一定値(例えば、w(z)=1に固定)とすることができる。これにより、さらに演算量を減らすことができ、高速での位置合わせが可能となる。
【0029】(5)上記(3)に記載のX線断層撮影装置において、前記位置ずれ補正手段は、前記位置ずれ量算出手段により求められた前記z1 値を前記回転中心軸方向での位置ずれ量として前記3次元再構成画像同士間での位置ずれを補正する手段であることができる。これによって、リアルタイムでの精度の良い位置合わせが可能となる。
【0030】また、本発明によれば、(6)被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置により計測された前記3次元再構成画像を処理するためのX線断層画像処理装置であって、前記X線断層撮影装置における前記X線検出器は、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されてなり前記透過X線を前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして複数の前記投影角において検出するものであり、前記X線断層画像処理装置は、前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算手段と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較して前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求める位置ずれ量算出手段と、前記位置ずれ量算出手段により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正手段とを具備してなることを特徴とするX線断層画像処理装置が提供される。
【0031】上記位置ずれ量算出手段によって前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求め、求めた位置ずれ量を基にして上記位置ずれ補正手段によって前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正することにより、高精度の位置合わせをリアルタイムで実現できる。
【0032】(7)上記(6)に記載のX線断層画像処理装置においても、前記加算手段は、上記(2)に記載のX線断層撮影装置における加算手段と同様に構成することができ、それによる作用効果も同様である。
【0033】(8)上記(7)に記載のX線断層画像処理装置においても、前記位置ずれ量算出手段は、上記(3)に記載のX線断層撮影装置における位置ずれ量算出手段と同様の構成を採ることができ、それによる作用効果も同様である。
【0034】(9)上記(8)に記載のX線断層画像処理装置においても、上記(4)に記載の場合と同様に、前記重み関数w(z)は一定値(例えばw(z)=1に固定)とすることができ、それによる作用効果も同様である。
【0035】(10)上記(8)に記載のX線断層画像処理装置においても、前記位置ずれ補正手段は、上記(5)に記載のX線断層撮影装置における位置ずれ補正手段と同様の構成とすることができ、それによる作用効果も同様である。
【0036】また、本発明によれば、(11)被検体に照射する放射状のX線を発生するX線源及び前記被検体を透過した透過X線を検出するX線検出器とを搭載して前記被検体の周りで回転するスキャナと前記被検体を前記スキャナの回転中心軸方向に移動させながら保持する寝台とを具備し、前記寝台と前記スキャナとの相対位置を前記回転中心軸方向に変化させて螺旋スキャンを行なって前記被検体の3次元再構成画像を計測するX線断層撮影装置により計測された前記3次元再構成画像を処理するためのX線断層画像処理方法であって、前記X線断層撮影装置における前記X線検出器は、前記スキャナの回転円周方向に複数列に配列されかつ前記回転中心軸方向に1列以上に配列された複数のX線検出素子を含んで構成されてなり前記透過X線を前記スキャナの回転角に対応する投影角における投影データとして複数の前記投影角において検出するものであり、前記X線断層画像処理方法は、前記スキャナの前記回転円周方向に配列された各列毎の前記X線検出素子により検出された前記投影データを前記投影角毎に加算して加算投影データを求める加算工程と、ある時点における前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データと前記時点と異なる時点での前記3次元再構成画像の計測に際して得られた前記加算投影データとを比較して前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求める位置ずれ量算出工程と、前記位置ずれ量算出工程により求められた前記位置ずれ量を用いて前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正する位置ずれ補正工程とを含んでなることを特徴とするX線断層画像処理方法が提供される。
【0037】上記位置ずれ量算出工程において前記両時点においてそれぞれ計測された前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれ量を求め、求めた位置ずれ量を基にして上記位置ずれ補正工程において前記3次元再構成画像同士間での前記回転中心軸方向における位置ずれを補正することにより、高精度の位置合わせをリアルタイムで実現できる。
【0038】(12)上記(11)に記載のX線断層画像処理方法において、前記投影角をA,前記X線検出素子の前記回転円周方向での角度をB,前記X線検出素子の前記回転中心軸方向での角度をC,前記X線源の前記回転中心軸方向での位置をz,前記スキャナの1回転の間での前記寝台の前記回転中心軸方向での移動量をd,前記寝台の前記回転中心軸方向での初期位置をz0とし、前記投影データをP(z,A,B,C)とした時に、前記螺旋スキャンの螺旋軌道が、z=z0+d・A/(2π)によって表わされ、前記加算工程は、次式(1) により、【0039】
【数3】

【0040】前記加算投影データR(z)を求める工程であることができる。これにより、少ない演算量で前記加算投影データR(z)を求めることができ、リアルタイムで精度の良い位置合わせを行なうことができる。
【0041】(13)上記(12)に記載のX線断層画像処理方法において、前記位置ずれ量算出工程は、前記両時点a,bでの前記3次元再構成画像計測に際してそれぞれ得られた前記加算投影データRa(z),Rb(z)に基づき、前記回転中心軸方向で変化する重み関数w(z)を用いて、次式(2) によって表わされる評価関数E(z1)を演算し、【0042】
【数4】

【0043】この評価関数E(z1) を最小とするようなz1 値を求める工程であることができる。これにより、少ない演算量で前記位置ずれ量z1 を求めることができ、リアルタイムでの精度の良い位置合わせが可能となる。
【0044】(14)上記(13)に記載のX線断層画像処理方法において、前記重み関数w(z)は一定値(例えばw(z)=1に固定)とすることができる。これにより、さらに演算量を減らすことができ、高速での位置合わせが可能となる。
【0045】(15)上記(13)に記載のX線断層画像処理方法において、前記位置ずれ補正工程は、前記位置ずれ量算出工程において求められた前記z1 値を前記回転中心軸方向での位置ずれ量として前記3次元再構成画像同士間での位置ずれを補正する工程であることができる。これにより、リアルタイムでの精度の良い位置合わせが可能となる。
【0046】本発明の上記以外の目的,構成,並びに、それによって得られる作用・効果については、以下の実施例を挙げての詳細な説明の中で順次明らかにされよう。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につき、実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【0048】〈実施例1〉図1に、本発明の第一の実施例になるX線断層撮影装置の概略構成を示す。本実施例1では、X線検出器4として、多数のX線検出素子12が走査駆動部5の回転方向に沿って円弧状に配列されたラインセンサを用いている。
【0049】(ジオメトリ定義)先ず、以下の説明で必要になる座標系を定義する。図3に、計測部1における座標系を示す。なお、ここでは説明を簡単にするために、寝台7に固定した座標系(x,y,z)を考え、走査駆動部5が、寝台7の周囲を相対的に螺旋軌道を描くものとする。被検体6は計測時には寝台7上に固定されるので、走査駆動部5は、被検体6の周囲を相対的に螺旋軌道を描くとも云える。ただし、被検体6と寝台7との相対的な位置関係は計測を行なうごとに変化する。時間経過を伴う複数の三次元再構成画像間で位置ずれが生じるのは、つまりは被検体6と寝台7との相対的な位置関係が計測の度ごとに変化するからである。
【0050】図3において、z軸は回転中心軸方向すなわち寝台7の移動方向にとった座標軸であり、このz軸に垂直で地面(設置床面)に平行な座標軸をx軸、上記z軸に垂直で地面に垂直な座標軸をy軸とする。そして、被検体6のX線吸収係数分布すなわち三次元再構成画像をf(x,y,z)で表わす。
【0051】計測に際して走査駆動部5上のX線源3の描く螺旋軌道は、X線源3の回転角A(以下、投影角A)とz軸方向の移動量zとで表わすことができる。X線源3は螺旋軌道を描くので、A,z間には、z=z0+d・A/(2π)という関係が成り立つ。ここで、dは走査駆動部5一回転当たりの寝台7移動速度に相当し、z0はz軸方向の寝台の初期位置である。
【0052】また、投影角Aにおける投影データを、X線源位置z及びX線検出器(ラインセンサ)4上のX線検出素子12の位置B(検出素子角B)を用いて、P(z,A,B)と表わすことにする。
【0053】以下、「一投影」とは、ある投影角A1,X線源位置z1において、X線検出器(ラインセンサ)4上の全てのX線検出素子12により計測された投影データのセットのことであり、つまり、P(z1,A1,B)(−Bmax≦B≦+Bmax)で表わされる投影データである(但し、Bmax はX線検出器(ラインセンサ)4の最大幅)。
【0054】図4は、一投影計測時の計測系の位置関係を、z軸に垂直な断面(以下、計測断面)において示したものである。X線源3−回転中心軸間距離をSOD、X線源3−X線検出器4間距離をSIDとする。
【0055】(螺旋スキャン)螺旋スキャンは、連続的に走査駆動部5の回転と寝台7の並進とを行ないながら、走査駆動部5が微少角回転する毎に一投影ずつ計測を行ない、所望の範囲内の投影データを数百から数千投影分計測することである。この時、寝台7の移動速度は三次元再構成画像のz軸方向の空間分解能を左右する重要なパラメータである。
【0056】例えば、螺旋スキャン機能を有する一般的なX線断層撮影装置で、肺野の検診向けの撮影を行なう場合、X線検出器4のz方向の実効的な開口厚を10mm,走査駆動部5の回転速度を一回転/秒,寝台7移動速度d=20mm/秒とし、約15秒間でz軸方向に30cmの範囲内を計測する。この場合、三次元再構成画像のz軸方向の空間分解能は20mm程度である(再構成演算法によっては、10mm)。より高分解能が求められる頭部を計測する場合には、X線検出器4のz方向の実効的な開口厚を2mm、寝台7移動速度d=2mm/秒とするような計測が行なわれる。
【0057】すなわち、一般に、寝台7の移動速度が遅いほど、得られる三次元再構成画像のz軸方向の空間分解能は高くなり、早いほど、得られる三次元再構成画像のz軸方向の空間分解能は低くなる。一方で、z軸方向に同程度の範囲内を計測するのであれば、計測のスループットは寝台7の移動速度で決定されるので、計測のスループットと三次元再構成画像のz軸方向空間分解能とはトレードオフの関係にあることになる。よって、必要以上に三次元再構成画像の空間分解能を上げる訳にはいかず、目的によって最適な寝台7移動速度が定まることになる。
【0058】(位置合わせ処理過程)続いて、本発明による時間経過を伴う複数三次元再構成画像同士の位置合わせ処理の過程を説明する。図8の(A),(B)に、被検体6と走査駆動部5との螺旋スキャンの関係と、各投影角Aごとの投影P(z,A,B)の関係を示す。
【0059】同一被検体6に関して、時間をおいて2回の螺旋スキャン計測を行ったものとする。この2回の計測間の時間的な隔たりは、術前と術中、術前と術後のように数分から数時間程度でもよいし、定期健康診断のように、数ヵ月から数年の間であってもよい。いずれにせよ、ある時点aにおいて計測された投影データをPa(z,A,B)、また、それとは異なる時点bにおいて計測された投影データをPb(z,A,B)で表わすことにする。また、計測された投影データを再構成して得られた3次元再構成画像をそれぞれfa(x,y,z)、fb(x,y,z)とする。
【0060】(処理1)投影データ保管手段14に保管してある投影データに関し、投影加算手段15において以下の演算を行なって、加算投影データRa(z),Rb(z)を求める。計測した各投影毎に投影値の和を求める。先ず、次式(3) に従って、Pa(z,A,B),Pb(z,A,B)をBについて積分する。
【0061】
【数5】

【0062】ここでは、螺旋スキャン計測を行なっているので、前述のように、z,A間には、z=z0+d・A/(2π)という関係が成り立つ。
【0063】よって、次式(4) により、Ra(z),Rb(z)を求める(図8の(C))。
【0064】
【数6】

【0065】加算投影データRa(z),Rb(z)は、一時、加算投影データ保管手段16に保持する。
【0066】(処理2)加算投影データRa(z),Rb(z)に対し、誤差比較手段17において、以下の演算により、z軸方向の計測範囲 zmin≦z≦zmax において、所定の誤差の範囲内で、Ra(z) ≒ Rb(z+z1) が成立するz1 を求める。より具体的には、次式(5) により、位置ずれ評価関数E(z1) を定義し、E(z1) が最小値をとるz1 を求める。
【0067】
【数7】

【0068】あるいは、重み関数テーブル18内に保持しておいた体軸方向の重み分布関数w(z)を利用して、次式(6) により、重み付き位置ずれ評価関数E'(z1)を計算し、このE'(z1)が最小値をとるz1 を求める。
【0069】
【数8】

【0070】上記の過程によって求めたz1 を、時点aと時点bとの間での寝台7に対する被検体6のz軸方向の移動量として、位置ずれ補正手段19において位置合わせを行なう。また、位置ずれ補正手段19では、その他にも、x,y軸方向の平行移動およびx,y,z軸中心の回転移動に関する大局的な位置合わせを行ない、また、重力や心拍,呼吸のフェーズ等によって被検体6に生ずる局所的な歪みによる局所的な位置ずれの補正を行なう。
【0071】(原理の説明)続いて、上記の過程により求めたz1 が、時点aと時点bとの間での寝台7に対する被検体6のz軸方向の移動量に他ならない理由を説明する。二つの3次元再構成画像fa(x,y,z),fb(x,y,z)は、理想的には同一被検体6を計測したものであるから、本来誤差の範囲内で同一のものであり、また投影データPa(z,A,B),Pb(z,A,B)も誤差の範囲内で同一である筈である。すなわち、fa(x,y,z)≒ fb(x,y,z) 及びPa(z,A,B)≒ Pb(z,A,B) である。なお、ここで云う誤差とは計測データに不可避的に含まれるノイズ等を意味する。
【0072】しかし、実際の計測では、両者のデータ間には、ノイズ等による誤差の範囲内には収まらない差異が生じる。その原因としては次の二つが挙げられる。第一の原因は、被験者本人の成長や病変部の変化といった生理的な変化のためである。特に、定期検診等により数ヵ月から数年の時間経過を経て計測が行われた場合、その間に被験者6に成長,老化,けが等で身体的な変化が生じる。また、病変部の発生,成長,消滅といった変化も起りうる。ただし、本発明では一般的な状況として成人を対象とした撮影を想定しているので、被験者の成長による変化に関しては、本発明の関与するところではない。一方、余程病変が進行している場合でなければ、この病変部の変化は局所的な変化にとどまる筈である。本発明は、病変部の変化を診断するために大局的な計測時の位置ずれを補正するためのものであり、病変部の変化が三次元再構成画像全体に影響を及ぼしているような状況を想定したものではない。逆に云えば、それほどに病変部の影響が深刻なものであれば、本発明を利用するまでもないからである。
【0073】第二の原因は、2回の計測を行なう間の被検体6の位置ずれである。この場合の位置ずれとは、寝台7に固定された(x,y,z)座標系に対する位置のずれである。この位置ずれの問題は、時間を隔てて計測が行なわれた際に容易に起り得る。2回の計測によって得られた三次元再構成画像を比較する場合、先ずこの位置ずれを補正する必要がある。このような位置ずれの補正を位置合わせまたはレジストレーションと呼ぶ。
【0074】本発明は、後者の位置ずれに対する大局的な位置合わせ方法を提供するものである。通常、3次元再構成画像の位置合わせ(レジストレーション)は、大局的な位置合わせと局所的な位置合わせの段階を追って行われる。一般的に、大局的な位置合わせは被検体6全体の回転移動,平行移動に関する位置合わせを行なう過程であり、局所的な位置合わせとは、重力や心拍,呼吸のフェーズ等によって被検体6に生ずる局所的な歪みによるずれを合わせていく過程である。
【0075】局所的な位置合わせには、高度な計算処理が必要で、多くの演算時間を要するため、効率を上げるためには、その前段階での大局的な位置合わせを精度良く行なっておく必要がある。つまり、大局的な位置合わせの精度が悪いと、局所的な位置合わせの段階において、無意味な高負荷演算を行うことになり、また、計算結果を誤ってしまう可能性も高い。よって、本発明で示すような高精度な大局的位置合わせ技術が重要である。
【0076】次に、位置ずれの問題をもう少し詳しく見ていくことにする。
【0077】3次元空間中における被検体6の大局的な位置ずれは、図7に示すような、6種類のずれの組み合わせで全て表わすことができる。同図の(A)は、基準となる第一の計測時の位置を示す。同図の(B),(C),(D)は、それぞれx,y,z軸方向への平行移動を、同図の(E),(F),(D)は、それぞれx,y,z軸を中心とした回転移動を表わしている。
【0078】よって、計測誤差と先の第一の理由すなわち被検体6の生理的な変化とによる差異を除くと、前記の二つの3次元再構成画像fa(x,y,z),fb(x,y,z)間での差異は、2回の計測間において、被検体6が平行移動と回転移動をしたためであると云える。
【0079】ここで、被検体6の位置ずれと上記の計算によって求めた加算投影データRa(z),Rb(z)との関係を説明する。R(z)は、すなわち、X線源3が位置zにある時の被検体6の計測断面上でのX線吸収係数の総和である。よって、図7の(B),(C)のようなx方向,y方向の平行移動、および図7の(G)のようなz軸まわりの回転移動によらず、R(z)は一定である。被検体6の身体は寝台7で支えられているので、同図の(E)のようなx軸まわりの回転移動は実際には微少である。同図の(F)のようなy軸まわりの回転移動は有り得るが、被検体6の体軸を寝台7に目視で合わせる程度でも、この位置ずれを許容範囲内に納めることができる。一方、同図の(D)のようなz軸方向の平行移動に関しては場合によっては数センチから10センチの移動量になることも有り得る。
【0080】以上の考察により、一般的な計測を行なう限り、上記の計算により求めた加算投影データRa(z),Rb(z)間での差異は、主として、被検体6の同図の(D)に示すようなz軸方向の移動によるものであることが判る。よって、前記の位置ずれ評価関数E(z1) を最小にするようなz1 を求めれば、そのz1 がすなわち2回の計測間における被検体6のz軸方向の移動量である。
【0081】以上で、本発明によって、大局的な位置合わせにおいて最も大きな比重を持つ被検体6のz軸方向への移動量を簡単に求めることができることが示された。
【0082】また、重み付き位置ずれ評価関数E'(z1)は、体軸方向の重み分布関数w(z)を考慮した評価関数である。この重み分布関数w(z)について以下に説明する。例えば、肺ガン検診などの目的を持って被検体6の胸部を計測したとする。この場合、呼吸によって横隔膜を中心として身体形状が変動しやすい。つまり、呼吸のフェーズによって横隔膜が上下するため(図9の(A),(B))、この部位まで含めて正確に位置合わせを行なおうとすると、返って全体の位置合わせが不正確になってしまう。そこで、位置ずれを評価する際に、体軸方向の重み分布関数w(z)をかけることによって、前記の横隔膜部位の位置ずれが評価関数全体に寄与する割合を低下させ、上記のような悪影響を及ぼさせないようにする。この重み分布関数w(z)の例を、図9の(C)に示す。この重み分布関数w(z)の形状は、撮影対象となる部位ごと、あるいは被検体6の体格ごとに経験的に最適なものを選ぶようにする。
【0083】前述のように、一般に、三次元再構成画像のz軸方向空間分解能は、寝台7の移動速度dによって制限される。よって、三次元再構成画像同士を用いて位置合わせを行なおうとすれば、せいぜい、その三次元再構成画像自身のz軸方向空間分解能程度の位置合わせ精度が限界である。しかし、本発明では、投影データを用いた位置合わせを行なうので、原理的には、三次元再構成画像の空間分解能の数百倍程度の精度で位置合わせを行なうことができる。
【0084】具体例を用いて説明する。前述のように、螺旋スキャン機能を有する一般的なX線断層撮影装置で、肺野の検診向けの撮影を行ない、X線検出器4のz方向の実効的な開口厚を10mm,走査駆動部5の回転速度が1回転/秒,寝台7移動速度d=20mm/秒とし、約15秒間でz軸方向に30センチの範囲内を計測したとする。この場合、三次元再構成画像のz軸方向の空間分解能は約20mmであり、三次元再構成画像を直接用いて位置合わせを行なえば、やはりその精度も20mm程度となる。しかし、走査駆動部5の一回転につき1000投影の撮影を行なったとすれば、寝台7の移動量は一投影につき、0.02mmである。すなわち、本発明による投影データを用いた位置合わせを行なえば、原理的には0.02mm程度の精度で位置合わせできることになる。つまり、計測のスループットを向上させるために寝台7の移動速度を大きくしても、十分な精度で位置合わせを行なうことができるのである。しかも、本発明において利用される演算は単純な加算および積算演算でしかなく、演算量が特別に増大することもない。三次元再構成像を直接用いて行なう従来の位置合わせ方法に対する本発明による位置合わせ方法の利点はまさにここにある。
【0085】〈実施例2〉次に、X線検出器4としてラインセンサを用いた場合の他の一実施例について説明する。本実施例2では、各投影毎にR(z)を求めるのでなく、数投影置きにR(z)を求め、これから位置ずれ評価関数を求める。前述のとおり、一投影毎の寝台7の移動量は、三次元再構成画像のz軸方向空間分解能に比べ非常に小さいので、サンプリングを荒くしても実用上問題は生じない。むしろ、こうすることにより、処理の負荷を低減することができる。
【0086】〈実施例3〉本実施例では、数投影分毎に加重平均した上で、R(z)を求める。あるいは、各投影毎にR(z)を求めた上で、このR(z)を数投影分ずつ加算してから、位置ずれ評価関数を求めてもよい。これらの場合には、位置合わせ精度を実用上低下させることなく、処理の負荷を低減できると共に、計測ノイズによる誤差を低減させることができる。
【0087】以上により被検体6のz軸方向の平行移動量が求まったら、続いて、先ず二つの三次元再構成画像間のz軸方向の位置ずれを補正した上で、その他の平行移動量,回転移動量の補正を行なう。これは、3次元再構成画像fa(x,y,z)及びfb(x,y,z+z1 )に対して、周知の画像位置合わせ処理を行なえばよい。ここで、すでにz軸方向の位置ずれが補正されているので、問題は二次元画像の位置合わせの問題だけに単純化されており、三次元画像をそのまま用いて位置合わせを行なう場合に比べると大幅に少ない演算量で済む。このようにして大局的な三次元再構成画像の位置合わせを行ない、続いて、周知の手法によって局所的な位置合わせを行なう。
【0088】〈実施例4〉次に、X線検出器4として多層センサを用いた場合の実施例につき説明する。先にラインセンサを用いた場合の実施例として説明した方法を多層センサを用いた場合に拡張するのは難しくない。但し、多層センサを用いた場合、投影データは二次元に広がったデータとなる。よって、図5に示すように、前記投影角A,検出素子角Bに加えて回転軸方向へのX線ビームの傾き角Cを用い、投影データをP(z,A,B,C)で表す(但し、−Cmax ≦ C ≦ +Cmax)。
【0089】ラインセンサの場合と同様、同一被検体6に関して、時間をおいて2回の螺旋スキャン計測を行なったものとする。ある時点aにおいて計測された投影データをPa(z,A,B,C)、また、異なる時点bおいて計測された投影データをPb(z,A,B,C)とする。また、計測された上記投影データを再構成して得られた3次元再構成画像をそれぞれfa(x,y,z),fb(x,y,z)とする。
【0090】次いで、計測した各投影毎に投影値の和を求める。先ず、次式(7) に従って、Pa(z,A,B,C),Pb(z,A,B,C)をB,Cにつき積分する。
【0091】
【数9】

【0092】ここで、cosCはX線ビーム傾き角CによってX線ビーム経路長が変化する分を補正する係数である。多層センサのz軸方向の広がり幅が十分小さければ、cosC≒1として近似し、この計算を省いてもよい。
【0093】以下、前述のラインセンサの場合と同様に、Qa(z),Qb(z)を求め、位置ずれ評価関数E(z1) を求め、この位置ずれ評価関数E(z1)が最小になるz1を求める。または、別の実施例として、体軸方向の重み分布関数w(z)を基に重み付き位置ずれあるいは重み付き位置ずれ評価関数E'(z1)を求め、これが最小になるz1 を求める。
【0094】以上の過程により求めたz1 を、時点aと時点bとの間での、寝台7に対する被検体6のz軸方向の移動量とする。
【0095】〈実施例5〉次に、X線検出器4として多層センサを用いた場合の別の実施例を説明する。先の実施例4では、多層センサの各層を最初に加重平均し、言わば、ラインセンサと見做したが、多層センサの各層毎の投影データを個別に扱う方法も考えられる。すなわち、前記Qa(z,A),Qb(z,A)の代わりに、次式(8) に従ってQ'a(z+SOD・sinC,A),Q'b(z+SOD・sinC,A)を求める。
【0096】
【数10】

【0097】ただし、左辺に含まれるSOD・sinCは、X線ビーム傾き角がCとなるX線検出素子12のz軸方向のシフト量を回転中心軸位置に換算した距離である(図6)。なお、多層センサのz軸方向広がり幅が十分小さければ、cosC≒1,sinC≒Cとして近似し、三角関数の計算を省いてもよい。
【0098】〈実施例6〉また、別の実施例として、多層センサ上の一層分の投影のみを使って、ラインセンサの場合と同様の計算を行なってもよい。また、さらに別の実施例として、多層センサ上の一部の層分(例えば、全部で4層あるうちの2層分)の投影のみを使って、上記と同様の計算を行なってもよい。
【0099】〈実施例7〉さらに、別の実施例では、ラインセンサの場合と同様に各投影毎にR(z)を求めるのではなく、数投影おきにR(z)を求めて、これから位置ずれ評価関数を求めてもよい。
【0100】〈実施例8〉さらに、別の実施例では、ラインセンサの場合と同様に各投影毎にR(z)を求めるのでなく、数投影分を加算平均した上で、R(z)を求めてもよい。いずれの場合も、ラインセンサの場合について説明したのと同様の原理により、本発明によって、時点aと時点bとの間での、寝台7に対する被検体6のz軸方向の移動量を高速かつ高精度に推定することができる。続いて、その他の回転移動,平行移動を補正し、局所位置合わせを行なう。
【0101】〈実施例9〉また、ラインセンサの場合にも多層センサの場合にも適用可能な別の実施例として、三次元再構成画像の比較を行なう毎にそれぞれの加算投影データR(z)を計算するのではなく、投影データ計測後に螺旋スキャン再構成演算を行なうと共に、加算投影データの計算をもしておき、得られた三次元再構成演算結果と加算投影データとをセットにして保管しておいてもよい。この場合、加算投影データは元々の投影データに比べはるかにデータ量が少ないので、記憶手段として必要な記憶容量が少なくて済む。
【0102】以上では、X線検出素子12が回転中心軸方向及び回転円周方向に沿って円筒状に配置されたX線検出器4に関して説明してきたが、X線検出素子12が平面状あるいはその他の形状に配置されたX線検出器4であっても、各X線検出素子12の位置は、容易にX線源3から見たときの角度に換算可能であり、本質的な差異は無い。従って、それらいずれの場合も本発明の範囲内である。
【0103】〈実施例10〉さらに別の実施例として、図10に本発明を実現するためのX線断層画像処理装置の構成例を示す。本実施例では、X線断層撮影装置とは独立して、X線断層画像を処理するためのX線断層画像処理装置について示すものである。
【0104】本実施例によるX線断層画像処理装置は、X線源及びX線検出器を備えた走査駆動部と、該走査駆動部の回転中心軸方向への駆動手段を備えた寝台とを有し、上記走査駆動部と上記寝台とにより螺旋スキャン計測を行なうX線断層撮影装置を用いて計測された投影データと、上記X線断層撮影装置によって再構成された被検体のX線吸収係数の分布すなわち再構成画像を処理するX線断層画像処理装置であって、特にX線断層撮影装置によって計測された投影データを管理・保存している画像データベース20から処理すべき投影データを読み出し、この投影データを各投影毎に加算して加算投影データを求める投影加算手段15と、上記投影加算手段15によって得られた複数組の加算投影データを保持する加算投影データ保管手段16と、上記複数組の加算投影データの誤差を重み付け比較する誤差比較手段17と、上記誤差比較手段17において用いる重み関数を保持しておく重み関数テーブル18と、上記誤差比較手段17によって得られた位置ずれ量を用いて、複数の再構成画像間の位置ずれ補正を行なう位置ずれ補正手段19とを有してなることを特徴としている。
【0105】上記画像データベース20とは、X線断層撮影装置の具備するデータ記憶手段であるか、あるいはPACSとして知られる統合的なデータベース、あるいは、広域ネットワークを介して構成されたデータベースであって、投影データや三次元再構成画像を、X線断層画像処理装置から必要に応じて読み書き可能なデータベースである。
【0106】〈実施例11〉また、別の実施例では、三次元再構成画像の比較を行なう毎にそれぞれの加算投影データR(z)を計算するのではなく、予め加算投影データの計算をしておいて、得られた三次元再構成演算結果と加算投影データをセットにして画像データベース20に保管しておいてもよい。この場合は、加算投影データは元々の投影データに比べはるかにデータ量が少ないので、データベースの記憶容量が少なくて済む。
【0107】なお、前記X線断層画像処理装置において、各構成要素が行なう処理自体は、既に前記X線断層撮影装置の実施例において説明したものと同等である。
【0108】
【発明の効果】本発明によれば、異なる時点において取得した同一の被検体についての複数の三次元再構成画像を比較する際に基準とすべき位置合わせ情報を高速かつ高精度に推定することができる。特に、計測の際に最も大きく位置ずれが起り易い体軸方向の位置ずれ量を正確に推定することができる。
【0109】上述したように、本発明においては、位置合わせ情報の推定を投影データのみに基づいて行なう。それがため、寝台の移動速度に依存する三次元再構成画像の体軸方向の空間分解能の制限以上の精度で位置ずれ量を推定することができる。また、各処理において行なわれる演算は、加算と積算中心の単純な演算のみからなっているため、複雑なアルゴリズムを要しない。そのため、全体としても演算量が少なく、高速な処理が可能である。
【0110】以上により、最終的には、本発明はコーンビームX線断層撮影装置を使用しての医師による診断の精度向上に貢献することになる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成12年6月9日(2000.6.9)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−346792(P2001−346792A)
【公開日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願番号】 特願2000−179361(P2000−179361)