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【発明の名称】 磁気共鳴診断装置
【発明者】 【氏名】渡邉 英宏

【氏名】石原 康利

【要約】 【課題】位相処理補正を容易に行うことのできる磁気共鳴診断装置を提供する。

【解決手段】代謝物分布を観測するのと同様のボクセル配置に基づく被検体から観測される信号対雑音比の良好な水スペクトルから各ボクセルにおける位相特性を予め算出しておき、これを用いて水信号抑圧操作を伴う多次元MRSIを行うことにより観測されるプロトン代謝物のスペクトルの位相回りを各ボクセルにおいて補正し、位相補正されたスペクトルの実部の面積を算出し、代謝物の濃度分布を反映した画像を表示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場及び勾配磁場を所定のパルスシーケンスに従って印加し、被検体内の代謝物質のスペクトルに関する情報を収集し、該スペクトルの位相ずれを補正した後、代謝物質の分布画像を得る磁気共鳴診断装置において、前記代謝物質の分布関数を構成する際に分割される各ボクセルから水スペクトルを観測する手段と、前記スペクトルの最大値を各ボクセル毎に検出し、該最大値における該スペクトルの位相値を位相基準値として設定する手段と、前記位相基準値を基に、前記代謝物質の分布画像を構成するスペクトルの位相を補正する手段とを有することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項2】 静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場及び勾配磁場を所定のパルスシーケンスに従って印加し、被検体内の代謝物質のスペクトルに関する情報を収集し、該スペクトルの位相ずれを補正した後、代謝物質の分布画像を得る磁気共鳴診断装置において、前記代謝物質の分布画像を構成する際に分割される各ボクセルから水スペクトルを異なる共鳴周波数で複数回観測する手段と、各共鳴周波数における前記スペクトルの最大値を各ボクセル毎に検出し、該最大値における該スペクトルの位相値から各共鳴周波数に対する位相特性を求める手段と、前記位相特性を基に、前記代謝物質の分布画像を構成するスペクトルの位相を補正する手段とを有することを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項3】 前記磁気共鳴診断装置のシステム若しくはパルスシーケンスに依存するスペクトルの位相特性を記憶する記憶手段を備え、該位相情報を基に、前記代謝物質の分布画像を構成するスペクトルの位相を補正することを特徴とする請求項1又は2記載の磁気共鳴診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気共鳴現象を利用して被検体の解剖学的情報や、生化学的情報を得る磁気共鳴診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気共鳴診断装置の開発が進められる中で、生体内の微少な代謝産物を非侵襲的に観測・画像化することのできるMRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)が実用に供されている。
【0003】そして、昨今においては、MRSIを用いたプロトン化合物の画像化が盛んに行なわれている。例えば、ある種の腫瘍組織においては、NAA(N−アセチルアルバラギン酸)の濃度が正常組織に比べ減少し、Cholineの濃度は正常組織に比べて増加する傾向がみられるため、これらの分布を画像化することで形態的な変化を呈する前に生体の代謝異常を起こしている部位を把握することができる。
【0004】生体内に含まれる種々の代謝産物の濃度を反映した画像情報を算出するためには、各化学シフトスペクトル(スペクトル実部)の面積を算出する必要がある。ところが、収集されるスペクトルは、システム、及びシーケンスパラメータ等に依存する原因、又はそれら以外の種々の原因に基づく位相回転が観測されるため、面積算出の際にはこの位相を補正しなければならない。
【0005】一般に、位相は周波数に対して近似的に1次までの関数で近似することができるため、従来は、観測されるスペクトルのピークにおける位相特性を最小二乗法を用いて算出して位相の補正を行う方法が広く採られていた。
【0006】しかしながら、生体内におけるこれらの化合物の濃度は総じて低いためにスペクトルの信号対雑音比(S/N比)は、必ずしも良好とはいえない。そのため、位相補正処理におけるピークの検出、及び位相算出に大きな誤差が含まれるために、位相補正後のスペクトルは正確な吸収曲線(実部スペクトル)、分散曲線(虚部スペクトル)を描かず、実部、虚部の混合したスペクトルしか得られない場合がある。このような場合には正確な代謝分布画像を得ることは困難となり、最終的にはMRSIにおいて収集された多くのボクセルの1つ1つに対して人為的に位相補正を行う必要がある。例えば、3D−プロトンMRSIの場合には、多くの場合32×32マトリクスの画像が用いられており、位相補正を人為的に行なう場合にはスペクトルデータ処理に多大な時間を要するという欠点があった。
【0007】また、MRI画像の場合では、予め位相回転の大きさを測定しておき、このデータを用いて位相補正を行う方法が報告されている。すなわち、ファントムに関して得られた画像の各ピクセル毎の虚数部が0となるような位相分布を測定しておき、この後に測定される画像の位相補正を行う方法である。ところが、このような方法をMRSIに適用した場合には、例えば表面コイルを用いた際に位相特性が表面コイルの設定位置によって大きく変化するため、実際には適用が困難であった。
【0008】また、Journal of Magnetic Resonance 誌69、151−155(1986)、あるいは、 Magnetic Resonance in Medeicine誌14,26−30(1990)記載のように、時間領域において算出した位相特性からスペクトルの位相補正が行えることを利用して各ボクセルの位相を補正する方法が考えられるが、この方法では、原理的に1次位相特性を各ボクセルにおいて補正することができないこと、及び時間領域における位相特性を求めるため信号対雑音比の影響により位相算出の誤差が大きい等の欠点がある。
【0009】更に、プロトン代謝物を観測するためには代謝物濃度に対して10程度の大きさを持つ水信号を抑圧する必要があり、このとき完全に水信号を除去することは難しく多くの場合が水信号が残留し図8に示すように水スペクトルと代謝物のスペクトルが重なる現象が観測される。このような場合には、代謝物のスペクトルのピーク31における位相は残留水信号によって歪みを受けるため正確に位相補正を行うことができないという問題点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来における磁気共鳴診断装置では、MRSAを用いて、代謝産物の分布画像を収集する際に、各々の代謝産物の濃度を反映した分布画像を正確に得るためには、スペクトルの位相補正を行なわなければならず、従来においては、各ボクセル毎に人為的に位相補正を行なっているので、多くの労力を必要とするという問題点があった。
【0011】この発明はこのような従来の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、容易に位相処理補正を実施し得る磁気共鳴診断装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場及び勾配磁場を所定のパルスシーケンスに従って印加し、被検体内の代謝物質のスペクトルに関する情報を収集し、該スペクトルの位相ずれを補正した後、代謝物質の分布画像を得る磁気共鳴診断装置において、前記代謝物質の分布関数を構成する際に分割される各ボクセルから水スペクトルを観測する手段と、前記スペクトルの最大値を各ボクセル毎に検出し、該最大値における該スペクトルの位相値を位相基準値として設定する手段と、前記位相基準値を基に、前記代謝物質の分布画像を構成するスペクトルの位相を補正する手段とを有することにあり、さらに、本発明の第2の特徴は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場及び勾配磁場を所定のパルスシーケンスに従って印加し、被検体内の代謝物質のスペクトルに関する情報を収集し、該スペクトルの位相ずれを補正した後、代謝物質の分布画像を得る磁気共鳴診断装置において、前記代謝物質の分布画像を構成する際に分割される各ボクセルから水スペクトルを異なる共鳴周波数で複数回観測する手段と、各共鳴周波数における前記スペクトルの最大値を各ボクセル毎に検出し、該最大値における該スペクトルの位相値から各共鳴周波数に対する位相特性を求める手段と、前記位相特性を基に、前記代謝物質の分布画像を構成するスペクトルの位相を補正する手段とを有することにある。
【0013】
【作用】上述の如く構成された本発明では、スペクトルの位相ずれを補正する際には、まず、水スペクトルを観測し、この観測結果に基いて代謝産物の化学シフトスペクトルの位相補正を行なっている。従って、人手による多くの労力を必要とせず、正確な位相補正が可能となる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係わる磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図である。
【0015】同図において、静磁場磁石1とその内側に設けられた勾配コイル2及びシムコイル4により、図示しない被検体に一様な静磁場とそれと同一方向で互いに直交するx,y,z三方向に線形傾斜磁場分布を持つ勾配磁場が印加される。勾配コイル2は、勾配コイル電源5により駆動され、シムコイル4はシムコイル電源6により駆動される。勾配コイル2の内側に設けられたプローブ3は、送信部7から高周波信号が供給されることによって被検体に高周波磁場を印加し、被検体からの磁気共鳴信号を受信する。プローブ3は送受両用でも、送受別々に設けても良い。プローブ3で受信された磁気共鳴信号は受信部8で検波された後、データ収集部9に転送され、ここでA/D変換されてから計算機システム10に送られ、データ処理がなされる。
【0016】以上の勾配コイル電源5、シムコイル電源6、受信部8およびデータ収集部9は、全てシーケンス制御部12によって制御され、またシーケンス制御部12は計算機システム10によって制御される。また、計算機システム10はコンソール11からの指令により制御される。そして、データ収集部9から計算機システム10に入力された磁気共鳴信号は、フーリエ変換等が行われ、それに基づいて被検体内の所望原子核の密度分布の画像データが再構成される。その後、この画像データは画像ディスプレイ13に送られ、画像として表示される。
【0017】本実施例では、MRSIにおける位相処理補正を自動的に行なう方法を示す。
【0018】図2は該実施例の操作手順を示すフローチャートであり、まず初めに、目的とするMRSIデータの位相補正を行うための基準データの撮像を行う(ステップST1)。この位相データの測定は、図3に示されるプロトン代謝物を観測するためのパルスシーケンスの一例のうち、水信号抑圧処理を除いたパルスシーケンス、即ち、図4に示したパルスシーケンスを用いて行われる。ここでは、空間2次元の代謝物分布を画像化する局所化MRSIパルスシーケンスを示している。このとき、パルスシーケンスの繰り返し時間はプロトン代謝物を観測する際に比べて短い時間に設定され、計測時間の短縮が図られる。また、可能であれば周波数分解能を粗くすることによって観測時間を短縮することも可能である。
【0019】次に、各ボクセルの水の信号によるスペクトル(絶対値)の最大値を検出する(ステップST2)。この際、スペクトルの大きさが予め設定されたしきい値よりも小さいボクセルについてはこれ以降の処理は行わないようにすることが好ましい。
【0020】その後、各ボクセルのスペクトルのピーク位置における位相φ1 (x,y,z)を算出し、これを記憶する(ステップST3)。ここで、スペクトルのピーク近傍の位相は、通常図5(a)、(b)に示すように急峻に変化するため、位相を算出する際に大きな誤差を含む場合がある。そこで、スペクトルの線幅が狭い場合には、良く知られるているように時間領域において指数関数等を乗算することによるスペクトルのラインプローディング処理を施せばこのような誤差を軽減することができる。
【0021】次いで、送受信機の周波数をΔfだけ変化させ、上記ステップST1からステップST3までの処理を実行し、このときの各ボクセルのスペクトルのピーク位置における位相φ2 (x,y,z)を求め、これを記憶する。
【0022】その後、得られた位相φ1 (x,y,z),φ2 (x,y,z)に基づいて、各ボクセルにおける位相特性θ(x,y,z,f)を算出し、これを記憶する(ステップST5)。ここで位相特性は通常、0次、1次までの位相特性が算出されるが、必要であれば周波数Δfを数点変えることでより高次の特性を求めることも可能である。
【0023】いま、位相φ1 を測定したときの送受信機の周波数をf0 とすると、位相特性θ(x,y,z,f),及び位相φ1 (x,y,z),φ2 (x,y,z)は、1次、及び0次の位相補正係数a(x,y,z),b(x,y,z)を用いて、次の(1)〜(3)式で示される。
【0024】
θ(x,y,z,f)=a(x,y,z)f+b(x,y,z) …(1)
φ1 =a(x,y,z)・f0 +b(x,y,z) …(2)
φ2 =a(x,y,z)・(f0 +Δf)+b(x,y,z) …(3)
従って、1次の位相補正係数a(x,y,z),及び0次の位相補正係数b(x,y,z)は、次の(4)、(5) の式で示される。
【0025】
a(x,y,z)=(φ2 −φ1 )/Δf …(4) b(x,y,z)=φ1 −(φ2 −φ1 )・f0 /Δf …(5)
その後、図3に示した代謝物観測用のパルスシーケンスによりMRSIデータを収集する(ステップST6)。このとき観測された各ボクセルのスペクトルSm(x,y,z)は、上記位相特性θ(x,y,z,f)を持っているため、実部・虚部が分離したスペクトル形状S(x,y,z)に対してスペクトル歪みを呈している。
【0026】従って、スペクトルSm(x,y,z)は次の(6) 式で示される。
【0027】
Sm(x,y,z)=S(x,y,z)
・exp(−jθ(x,y,z,f)) …(6) そして、上記(4)、(5) 式で示した位相特性を用いて(6)式の位相項を除去すれば、観測されたスペクトルSm(x,y,z)から、実部,虚部の分離したスペクトルS(x,y,z)を得ることができる(ステップST7)。
【0028】その後、求められた実部スペクトルの面積を算出し、又、場合によってはスペクトルのピーク高さを算出し(ステップST8)、これに基づいて代謝物分布画像を表示する(ステップST9)。
【0029】こうして、位相補正された代謝産物の分布画像を得ることができるのである。このようにして、本実施例では、予め水スペクトルを用いて位相特性を算出しておき、これを用いてプロトン代謝物のスペクトルの位相回りを補正しているので、人手による労力を必要とせず、容易に位相補正を行なうことができる。その結果、代謝物の濃度分布を反映した物理的に意味のある画像を短時間に得ることができる。
【0030】なお、本実施例において、システム等に依存した2次以上の位相特性が存在する場合には前述したように予めより高次の位相特性を測定しておきこれを補正することもできるが、高次の位相特性の発生原因であるフィルタ特性が図6に示す如く既存であれば、このような特性を記憶しておき前記手法で求められた位相特性を重畳することで補正を行なうこともできる。
【0031】また、本実施例に示した手順を用いれば、図7に示すような位置情報付加のためのエンコード時間のために、いわゆるデッドタイムを持つパルスシーケンスによって収集されたスペクトルに生じる位相の1次歪みを補正することも可能である。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、MRSIを用いてスペクトル情報を得る際には、予め水スペクトルを用いて位相特性を求め、この位相特性を用いて代謝産物のスペクトルの位相回りを補正している。従って、人手の労力を必要とせず容易に位相補正を行なうことができ、その結果、代謝物の濃度分布を反映した正確な画像を短時間で得ることができるという効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成3年12月10日(1991.12.10)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外7名)
【公開番号】 特開2001−346779(P2001−346779A)
【公開日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願番号】 特願2001−115659(P2001−115659)