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【発明の名称】 核磁気共鳴を用いた検査装置
【発明者】 【氏名】山本 由香里

【要約】 【課題】シム電流値計算の発散を避ける核磁気共鳴を用いた検査装置を提供する。

【解決手段】シム電流値計算の繰り返し回数が予め与えられた閾値を超えた場合(101),チャンネル毎に,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いのパターンを分析し(102),計算対象から除外されたチャンネル(103),収束パターン(104)の場合は,何もしないで次のチャンネルの評価に移る(108)。振る舞いのパターンが単調増加(105),単調減少(106)の場合は,該当チャンネルのシム電流値を装置の制限値に設定し,このチャンネルを計算から除外して再計算を行う(109)。シム電流計算値が交互に正負値となる振動パターンの場合は,振動の振幅が最大となるチャンネルを計算から除外して振動が起こらなくなるまで再計算を行う(110)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】静磁場発生手段と,傾斜磁場発生手段と,高周波磁場発生手段と,複数チャンネルからなる付加的磁場発生手段と,前記静磁場発生手段内に置かれた検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と,前記核磁気共鳴信号から得られた静磁場強度分布情報に基づき前記付加的磁場発生手段に与える電流値を計算する電流計算手段と,前記核磁気共鳴信号から得られる前記検査対象の核磁気共鳴画像を表示するとともに,前記付加的磁場発生手段により前記静磁場の強度の均一性向上処理を行う前記検査対象の領域を入力する表示装置とを有し,前記電流計算手段は,前記電流値を求める計算の繰り返し回数が予め定めた閾値を超えた場合,(1)前記電流値の計算値の振る舞いが交互に正負値となる振動パターンを示す場合には,前記振動パターンの振幅が最大となる前記チャンネルを前記電流値の計算対象から除外して,前記計算値の振動が起こらなくなるまで前記電流値の計算を行い,(2)前記振る舞いが単調増加パターン又は単調減少パターンを示す場合には,前記単調増加パターン又は前記単調減少パターンを示す前記チャンネルに与える前記電流値を,前記付加的磁場発生手段の制限値に設定して前記電流値の計算対象から除外して,前記電流値の計算を行うことを特徴とする核磁気共鳴を用いた検査装置。
【請求項2】請求項1に記載の装置に於いて,前記領域に於ける前記静磁場の強度の均一性向上処理に引き続いて行う本スキャンで前記検査対象の撮影領域外からの前記核磁気共鳴信号の抑圧を行う場合,前記核磁気共鳴信号の抑圧を行う領域の選択を,前記領域の選択と同時に,前記表示装置の表示画面で行うことを特徴とする核磁気共鳴を用いた検査装置。
【請求項3】請求項2に記載の装置に於いて,前記検査対象の同一断面で複数の前記領域が選択可能であることを特徴とする核磁気共鳴を用いた検査装置。
【請求項4】請求項2又は請求項3に記載の装置に於いて,前記領域以外の領域が自動的に選択されることを特徴とする核磁気共鳴を用いた検査装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,任意の領域のシミングに適した核磁気共鳴を用いた検査装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】静磁場強度の均一性向上処理(以下,シミングという)を行うために,静磁場発生用磁石内には通常,シムコイルと呼ばれる複数チャンネルの磁場発生機構が内蔵されており,これらの発生する様々な特性のシム磁場を静磁場コイルの発生する静磁場に重畳することにより,撮影領域の静磁場強度を均一にしている。
【0003】超高速撮影法やスペクトロスコピックイメージング等では,通常の撮影では問題にならないような数ppm程度以下の静磁場強度の不均一により,S/Nやスペクトル分解能が著しく劣化する。静磁場コイル内の静磁場強度分布は磁石自身の特性,周辺の磁性体の影響の他,検査対象自身の透磁率分布等によって歪められるため,このような撮影では静磁場中に検査対象が入った状態で静磁場強度の均一性を向上させることが望ましい。
【0004】このような状況では,検査対象の核磁気共鳴画像に含まれる位相情報等から検査対象内の静磁場強度分布を求め,この静磁場強度分布を相殺するための付加的な磁場をシムコイルから発生させる。付加的な磁場を発生させるために各シムコイルに流すシム電流値は,各シムコイルの電流−磁場特性行列と静磁場強度分布に基づいて逆行列計算により求める。
【0005】2枚の核磁気共鳴画像から位相画像を求め,更に,静磁場強度分布を得る手法(以下,位相法という)については,例えば,Journal of Magnetic Resonance,77,pp.40−52(1988)(従来技術(1))に記載されているので,ここでは簡単に述べる。
【0006】静磁場中に置かれた核スピンは歳差運動を行っており,その周波数は静磁場強度に比例している。従って,励起領域内に空間的な静磁場強度の不均一が存在すると,高周波パルスによって励起された核スピンは,その直後から様々な周波数で再差運動をすることになり,位相コヒーレンシーが失われていく。
【0007】このような状態で得られた核磁気共鳴画像には,静磁場強度の不均一を感受した時間に比例した位相情報が与えられる。静磁場強度をE(x,y)とすると,励起後から信号計測までの時間が異なる2枚の画像S1,S2の画素値は,それぞれ(数1),(数2)で与えられる。
【0008】
【数1】
S1(x,y)=ρ(x,y)exp{iγE(x,y)ε1} …(数1)
【0009】
【数2】
S2(x,y)=ρ(x,y)exp{iγE(x,y)ε2} …(数2)
ε1,ε2は,画像S1,S2が静磁場強度の不均一を感受した時間である。(数1),(数2)から静磁場強度E(x,y)は,(数3)のごとく求められる。
【0010】
【数3】
E(x,y)=arg{S2(x,y)/S1(x,y)}/{γ(ε2−ε1)}…(数3)
画像S1,S2を撮影するパルスシーケンスとしては,スピンエコー法やグラディエントエコー法等が用いられる。スピンエコー法の場合,励起高周波パルス印加直後から位相コヒーレンシーが乱れ始めるが,反転高周波パルスを印加することにより,このコヒーレンシーが回復し始める。励起高周波パルス印加時刻と反転高周波パルス印加時刻との時間間隔をτ1,反転高周波パルス印加時刻とエコー計測時刻との時間間隔をτ2で表すと,τ1とτ2が等しい場合には静磁場強度不均一が位相に及ぼす影響は完全に相殺される。
【0011】このため,静磁場強度分布の計測にスピンエコー法を用いる場合には,τ1とτ2が異なる非対称スピンエコー法が用いられる。この場合,τ1とτ2との差が数1のε1あるいは数2のε2となる。
【0012】シムコイルの電流−磁場特性行列の作成方法と,逆行列計算を用いたシム電流値の計算アルゴリズムの詳細については,Journal of Magnetic Resonance,85,pp.244−254(1989)(従来技術(2))に記載されている。従来技術(2)では,静磁場強度分布を位相法ではなく共鳴周波数の空間分布から求めているが,位相法にも適用可能である。以下,要点のみ説明する。
【0013】(シム電流−磁場特性行列の作成方法)各シムコイルのシム電流値を初期状態に設定し,基準となる静磁場強度分布を取得する。各シムコイルについて順次シム電流値を変化させ,静磁場強度分布を取得する。この静磁場強度分布と基準となる静磁場強度分布との差分を取り,シム電流値の変化量で除することにより,各シムコイルの電流−磁場特性が得られる。
【0014】以上の過程を繰り返すことにより,全シムコイルの電流−磁場特性を表す特性行列Aが得られる。jを画素番号,kをシムコイル番号とすると,Aの(j,k)成分は(数4)で表される。
【0015】
【数4】
jk=δBj/Ik …(数4)
δBjは,シムコイルkのシム電流値の変化量Ikに対応する,静磁場強度分布の変化量である。従って,Ajkは,j番目の画素に於いてシムコイルkのシム電流値を単位量変化させた時の静磁場強度分布の変化量を表す。
【0016】(シム電流値の計算アルゴリズム)上記の特性行列を用いれば,シムコイルkにシム電流値Ikを流した時のj番目の画素に於ける静磁場は,ΣAjkkと表すことができる。
【0017】ある関心領域の静磁場強度分布を均一にするということは,関心領域の平均磁場〈B〉とj番目の画素に於ける静磁場Bjとの偏差磁場ΔBj=Bj−〈B〉を最小にするということである。シミングを行う前の偏差磁場をΔB,シム電流値の初期値をI(0)とすると,【0018】
【数5】
AΔI=−ΔB …(数5)
となるようなΔIを求め,現在のシム電流値I(0)をI(0)+ΔIに変更すれば,偏差磁場ΔBは相殺される。ΔIは,偏差磁場を最小にするためのシム電流値の増加量であり,k番目の要素がk番目のシム電流値の増加量に相当するベクトルである。(数5)の行列方程式を満たすΔIを求めるためには,(数6)に示す行列演算を行えば良い。(数6)に於いて,Tは転置行列,−1は逆行列を示す。
【0019】
【数6】
ΔI=−(ATA)-1TΔB …(数6)
これは,最小二乗法的な手法を用いて静磁場強度分布の最適化を行うことになるので,上記の過程を繰り返し行う場合もある。その場合は,I(0)+ΔIを新たな初期値として上記の過程を繰り返す。
【0020】人体等の被検体の影響で生じる静磁場強度分布は,一般的なMRI装置に搭載されたシムコイルの発生する磁場よりも高次の項を有する。このため,広い領域全体にわたってシミングを行う場合には,高次の項の除去は困難である。本スキャンで局所領域を撮影対象とする場合は,シミング領域も局所領域に限定することができる。被検体の影響で生じる静磁場強度分布は,十分狭い領域内では緩やかな空間分布となり,シミングが容易となる。
【0021】以下では,局所領域に限定したシミングを局所領域シミングという。従来技術(1)では「ZOOM SHIM」という名称で局所領域シミングの効果が述べられている。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】異なる特性の磁場を発生する複数チャンネルのコイルで構成されているシムコイルに流す電流値の計算(以下,単に,シム電流値計算という)は,従来技術の説明で述べたように,最小二乗法的に行われるため,1回の計算では十分に収束しない場合がある。このような場合には,「全てのシムチャンネルの計算値が予め与えられた基準値よりも小さい」という収束条件を満たすまで,シム電流値計算を繰り返し行う。
【0023】局所領域シミングのシミング対象領域内では,シム磁場の高次項と低次項との直交性が保障されないため,シム電流値の繰り返し計算の過程で,複数チャンネル間での競合が生じ,計算が発散する危険性が高くなる。従来技術(1)では,このような領域の狭さの起因するシム電流値計算の発散の危険性について対処がなされていない。
【0024】また従来技術では,局所シミング後の本スキャンで撮影領域外信号の抑圧を行う場合,信号の抑圧を行う領域を別途選択しなければならないという問題があった。
【0025】本発明の目的は,最小二乗法によるシム電流値計算の発散に対処することが可能な核磁気共鳴を用いた検査装置を提供すること,本発明の他の目的は,信号の抑圧を行う領域の選択を,局所シミング領域の選択と同時に行うことが可能な核磁気共鳴を用いた検査装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置では,最小二乗法によるシム電流値計算に於いて以下に示す処理を行う。
【0027】(a)最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が予め定めた閾値を超えた場合,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いが交互に正負値となる振動パターンであるシムチャンネルに対しては,振動の振幅が最大となるチャンネルから順次除外していき,振動が起こらなくなるまで再計算を行う。
【0028】(b)最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が閾値を超えた場合,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いが単調増加あるいは単調減少パターンであるシムチャンネルに対しては,該当するチャンネルのシム電流値を装置の制限値とし,このチャンネルを計算から除外した上で再計算を行う。
【0029】(c)最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が閾値を超えた場合,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いが収束パターンあるいは計算から除外されたシムチャンネルに対しては何もしない。
【0030】最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が閾値を超えた場合,即ち,シム電流計算が収束しない場合に考えられる要因のひとつは,シミング対象領域内での複数チャネルの競合であり,もうひとつは装置の制限値の過小設定である。前者の場合には,競合する複数チャンネルのシム電流値が振動するが,この振動の振幅は高次のシムチャンネルほど大きくなる傾向がある。後者の場合には,該当チャンネルのシムコイルには十分なシム電流値を流すことができないが,装置の制限値を流すことが現状の装置に於ける最良の状態であると考えられる。
【0031】本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置によれば,最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が閾値を超えた場合,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いが交互の正負値となる振動パターンであるシムチャンネルに対しては,振動の振幅が最大となるチャンネルから順次除外していくので,競合チャンネルの中で次数の高いシムチャンネルを選択的に除外することができる。更に,振動が起こらなくなるまで競合チャンネルの除外と再計算を繰り返すので,シミング対象領域に最適なシムチャンネルの組を選択し,シム電流値計算の収束性を向上させることができる。
【0032】また,本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置によれば,最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が閾値を超えた場合,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いが単調増加あるいは単調減少パターンであるシムチャンネルに対しては,該当するチャンネルのシム電流値を装置の制限値(即ち,各シムコイルに流すことが可能な最大電流)とし,このチャンネルを計算から除外した上で再計算を行うので,装置の制限内では最良の状態を得ることができる。
【0033】本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置は,局所領域シミングに引き続いて行う本スキャン(検査対象のの撮影のためのスキャン)に於いて、撮影領域外からの核磁気共鳴信号の抑圧を行う場合,信号の抑圧を行う領域の選択を、局所領域シミングの対象領域の選択と同時に行う。シミング後の本スキャンに於いて局所領域の撮影を行う場合,撮影領域外からの信号の漏れ込みを防ぐために撮影領域外信号の抑圧を行う必要がある。従来技術では信号の抑圧を行う領域を別途選択しなければならないが,本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置によれば,信号の抑圧を行う領域の選択を,局所シミング領域の選択と同時に行うので検査の効率向上が可能である。
【0034】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】本発明の核磁気共鳴を用いた検査装置は,永久磁石又は静磁場発生コイルを含む静磁場発生手段と,傾斜磁場発生コイルを含む傾斜磁場発生手段と,高周波発振器を含む高周波磁場発生手段と,異なる特性の磁場を発生する複数チャンネルのコイルを含み,複数チャンネルからなる付加的(シム)磁場発生手段と,静磁場発生手段内に置かれた検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する受信器を含む信号検出手段と,核磁気共鳴信号から得られた静磁場強度分布情報に基づき付加的(シム)磁場発生コイルに流す電流値を最小二乗法により計算する電流計算手段と,核磁気共鳴信号から得られる検査対象の核磁気共鳴画像を表示するとともに,付加的磁場発生手段により静磁場の強度の均一性向上処理(シミング)を行う対象とする検査対象の領域を入力する表示装置を有している。
【0036】通常のMRI装置には,2次〜4次程度の磁場を発生するシムコイルセットが搭載されているが,人体の影響による静磁場の歪みは更に,高次の特性を有するため,撮影領域が広い場合には十分なシミング効果を得ることが難しい。しかし,高次歪みも領域を限定すれば低次歪みとみなせるため,対象領域が小さいほど高いシミング効果が期待できる。
【0037】一方で,シミング領域を狭くすることにより,シム電流値の計算が発散しやすいという問題が生じる。これは,局所領域内では複数のシムコイルの発生する磁場特性の差が小さいため,シムチャンネル間で競合が起こるためである。このような場合,低次シムチャンネルのみをシム電流値計算に用いることにより,シム電流値の計算の発散を回避することも可能である。
【0038】しかし,複数チャンネル間での競合等に起因する計算の発散頻度はシミング領域の大きさにも依存するため,必ずしもチャンネル数を減らす必要は無い。次数の減少により静磁場均一度の補正効果が劣化する危険も伴う。
【0039】この問題に対処するため,本発明では,図1に示す手順により最小二乗法によるシム電流値計算で発生する発散に対応する。最小二乗法によるシム電流値計算の繰り返し回数が予め与えられた閾値を超えた場合(101),チャンネル毎に,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いのパターンを分析し(102),パターンに応じて以下の処理を行う。
【0040】何らかの理由で計算対象から除外されたチャンネル(103),収束パターン(104)の場合は,何もしないで次のチャンネルの評価に移る((処理1)108)。
【0041】単調増加パターン(105),単調減少パターン(106)の場合は,ハードの制限値の過小設定が原因であると考えられる。このような場合には,該当チャンネルのシム電流値を装置の制限値に設定し,このチャンネルを計算から除外した上で再計算を行う((処理2)109)。
【0042】最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値が交互に正負値となる振動パターンの場合は,シミング対象領域内に於いて複数チャンネルの競合が生じている可能性が大きい。この場合,競合する全てのチャンネルのシム電流値が振動する。従って,振動の振幅が最大となるチャンネルを計算から除外し,振動が起こらなくなるまで再計算を行う((処理3)110)。
【0043】チャンネル毎に,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いのパターンを分析し,処理2,処理3を実行することにより,最小二乗法によりシム電流値計算を最終的に収束させることができる。
【0044】図2は本発明が適用される核磁気共鳴を用いた検査装置の構成例を示す図である。図2に於いて,検査対象203は,静磁場を発生するコイル201及び傾斜磁場を発生するコイル202内に配置される。静磁場を発生するコイル201は,静磁場電源219から電流を供給され静磁場を発生する。シーケンサ204は,傾斜磁場電源205,高周波発振器206に命令を送り,静磁場,傾斜磁場,高周波パルスを検査対象203に印加する。高周波パルスは,高周波変調器207,高周波増幅器208を経て高周波送信器209により,検査対象203に印加される。
【0045】検査対象から発生したMR(核磁気共鳴)信号は受信器210によって受波され,増幅器211,位相検波器212,AD変換器213を通ってCPU(計算機)214に送られ,ここで信号処理が行われ,検査対象に関する核磁気共鳴画像が得られ,核磁気共鳴画像は表示装置218に表示される。必要に応じて,記憶媒体215に信号や測定条件を記憶させることもできる。
【0046】シムコイル216は,異なる特性の磁場を発生する複数チャンネルのコイルで構成されている。各チャンネルのコイルに流す電流の値(シム電流値)は,シーケンサ204により決定され,図1に説明した手順を含む,従来技術の最小二乗法による処理により決定される。シム電源217は,シーケンサ204の命令に従い,シムコイル216に電流を流す。このシム電流値は記憶媒体215に記憶させておくこともできる。シム電源217自体にメモリを内蔵し,シム電流値を記憶させおくこともできる。シーケンサ204をシム電流計算手段とする代わりに,シム電流計算手段として計算機214を使用しても良い。
【0047】シムコイル216のうち,1次のコイル(X,Y,Zチャンネル)は,傾斜磁場と干渉を起こす可能性があるため,傾斜磁場を発生するコイル202とシムコイル216の1次のコイルを一体化する場合もある。また,シムコイル216の1次のコイルを用いる代わりに,傾斜磁場のオフセットを用いることも可能である。
【0048】局所領域シミングを行う場合にも,従来のスライスシミングと同様に静磁場強度分布を作成する。静磁場強度分布は,例えば,従来技術の説明で述べた位相法等により得られる。位相法では,非対称スピンエコー法やグラディエントエコー法等のパルスシーケンスを用いて撮影した核磁気共鳴画像から静磁場強度分布を得るが,スライスシミングでは撮影対象全体を含む視野を選択するのに対し,局所領域シミングの場合は任意領域の静磁場強度分布を作成する必要がある。
【0049】このような任意領域の静磁場強度分布を作成するには2通りの方法が考えられる。第1の方法は,核磁気共鳴画像を撮影する際にプリサチュレーションによりシミング対象領域外の信号を抑圧する方法である。この場合,核磁気共鳴画像を撮影する部分のパルスシーケンスはスライスシミングと同じものを用いることができる。但し,プリサチュレーションは核磁気共鳴画像の位相成分に影響を与える可能性があり,シミングの精度を劣化させる原因ともなり得る。
【0050】第2の方法は,撮影対象全体を含む視野の核磁気共鳴画像を取得し,この核磁気共鳴画像上で所望の領域を切り出して静磁場強度分布を作成する方法である。この場合,核磁気共鳴画像を撮影するパルスシーケンスは,スライスシミングと同様に,非対称スピンエコー法やグラディエントエコー法を用いることができる。 所望の領域の切り出しは,核磁気共鳴画像を表示する表示装置の画面上でマウス等のユーザーインターフェースを用いて行うことができる。また,所望の領域は矩形に限定されず,例えば,円形や楕円形等でも良い。同一断面上に複数のシミング対象領域が存在する場合を想定すると,第2の方法の方が汎用性が高い。
【0051】図3は,本発明の実施例に於けるシミング対象領域の選択方法を説明する図である。シミング領域選択画面を用いたシミング領域の選択方法の例を図3に基づいて説明する。局所領域シミングと視野全体のスライスシミングでは,位置決め画像の撮影等の過程が異なるので,両者は別々のシミングモードとして選択できるようにしておくと使い勝手が良い。
【0052】図3に示すシミング領域選択画面でシミング領域を選択を行う場合,シミングパラメータ設定タブ301を開いてシミングモード選択部302から局所領域シミングモードを選択する。スキャン後の画像と位置決め画像の表示を切り替える,表示画像切り替えタブ303で位置決め画像表示タブを選択する。位置決め画像は2種類撮影することができ,位置決め画像方向選択部304,306で画像方向を選択する。撮影した位置決め画像は位置決め画像表示部305,307に表示する。位置決め画像は1種類でも良く,その場合は位置決め画像方向選択部306から「OFF」を選択する。
【0053】位置決め画像表示部305に表示された第1の位置決め画像上で,スライス位置表示カーソル308を用いてシミング及び本スキャンの撮影スライス位置を選択する。必要に応じて,更に,別方向で撮影した第2の位置決め画像を位置決め画像表示部307に表示させ,第1,第2の位置決め画像上でシミング,本スキャンの撮影スライス位置を選択することもできる。
【0054】シミングモード選択部302でスライスシミングを選択した場合には,この段階で位置決めが終了するので,選択したスライス位置に於いてシミング用のパルスシーケンスを実行してシム電流値計算を行う。局所領域シミングモードを選択した場合は,選択したスライス位置に於いて,更に,第3の位置決め画像を撮影して画像表示部311上に表示する。マルチスライス画像の場合は表示画像のスライス番号を,スライス番号表示部310に表示し,隣接するスライス画像を表示する場合には,スライス番号表示部310の左右の矢印をクリックする。
【0055】画像表示部311上に表示された第3の位置決め画像上で,シミング,本スキャンの撮影領域を選択する。撮影領域は複数個選択可能で,領域個数はシミングパラメータ設定タブ301上の領域個数設定部315で変更可能である。複数の撮影領域を選択する際には,領域番号表示部312に選択中の領域番号が表示される。
【0056】また,画像表示部311に表示された位置決め画像上に於いて,現在選択中の選択領域313と選択中ではな領域と区別するために,領域を囲む線の太さや色を変えて表示する。視野設定部314ではシミング,本スキャンの撮影領域の視野の設定を行い,複数個の撮影領域を選択する場合は各撮影領域毎に視野の設定を行うことができる。選択領域の視野は,マウス等を用いて選択領域313をドラッグすることにより変更することもできる。
【0057】視野設定部で視野を設定する場合には,選択領域313の中心位置を固定して,視野だけが変更される。撮影領域を選択する際に用いる画像のスライス位置は,スライス番号表示部310の左右の矢印をクリックするか,位置決め画像305,307上のスライス位置表示カーソル308,309をクリックすることにより変更可能である。複数個の撮影領域を選択した場合には,それぞれの領域毎に計算したシム電流値をメモリに保存しておき,本スキャンに際して対応する領域のシム電流値を読み出してセットする。
【0058】図4は,本発明の実施例に於ける撮影領域の選択方法を示す図である。図4に示すシ撮影領域選択画面で撮影領域を選択を行う場合,撮影領域のパラメータは,本スキャンのパラメータ設定タブ403とも連動している。本スキャンのパラメータ設定タブ403では,本スキャンに固有のパラメータの設定を行うことができる。例えば,パルスシーケンス選択部404では本スキャンで用いるパルスシーケンスの種類を選択し,撮影条件設定部407では本スキャンの撮影条件を設定する。
【0059】また,本スキャンのパラメータ設定タブ403では,位置決め画像の方向選択等,シミングパラメータ設定タブと共通のパラメータの設定を行うこともできる。例えば,位置決め画像表示部405,406は,位置決め画像表示部305,307と連動しており,いずれのパラメータ設定タブを開いている時でも,位置決め画像表示部上で撮影スライス位置をスライス位置表示カーソル308によって選択することができる。
【0060】共通実行部402は,画像や撮影条件の保存や呼び出し,被験者情報の登録や参照を行い,全てのパラメータ設定タブで共有する。基本情報表示部401には日付や患者名,スタディ名称が表示されており,基本情報表示部401をクリックすると,予定されたスタディ内容が表示される。また,必要に応じてスタディ内容の更新を行うこともできる。
【0061】シミング後の本スキャンでプリサチュレーションを行う場合には,信号抑圧領域を別途選択しなければならない。しかし,信号抑圧領域と局所領域シミングの対象領域とは相補的な関係にあるので,シミング対象領域を選択した際に,対象領域外の信号領域を自動的に信号抑圧領域とすれば,位置決めの手間が半減する。本スキャンに於いて領域外信号の抑圧を行うかどうかを,図3に示す信号抑圧モード選択部316で選択する。
【0062】図5は,本発明の実施例に於ける信号抑圧領域の選択方法を説明する図である。図5に示す信号抑圧領域選択画面で信号抑圧領域の選択を行う場合,図3に示す信号抑圧モード選択部316は,本スキャンのパラメータ設定タブにも共通のパラメータである。図3に示す信号抑圧モード選択部316で手動モードを選択した場合には,信号抑圧領域選択画面501の位置決め画像502,503,504上でユーザーが信号抑圧領域505,506,507を選択する。図3に示す信号抑圧モード選択部316で自動モードを選択した場合,図3に示す選択領域313を含まない領域を撮影信号抑圧領域505,506,507として信号抑圧領域を自動的に設定する。この自動的な設定に引き続いて,位置決め画像502,503,504上で信号抑圧領域の微調整を手動で行うことも可能である。
【0063】図6は本発明の実施例における本スキャン画像の表示例を示す図である。撮影領域の局所領域シミングに引き続いて本スキャンが実行され,画像再構成が終了すると,画像表示部601に本スキャン画像603が表示される。画像表示部601に位置決め画像を再度表示させたいときは,表示画像切り替えタブ602を切り替える。図6に示す画像表示画面のように,本スキャン画像がマルチスライス画像である場合には,スライス番号表示部604に表示中のスライス番号が表示され,スライス番号表示部604の左右の矢印をクリックすることにより,表示するスライスを変更することができる。
【0064】
【発明の効果】本発明による核磁気共鳴を用いた検査装置では,最小二乗法によるシム電流値計算が収束しない場合,チャンネル毎に,最小二乗法の計算サイクルの繰返しに於けるシム電流計算値の振る舞いをパターン分けし,パターンに応じて異なる処理を行うので,任意の局所領域を対象とするシミングを行う場合にも,最小二乗法によるシム電流計算値の発散を回避でき,収束性の高いシミングを行うことができる。結果,シム電流値の計算精度が向上し,オートシミングの自由度が高くなる。また,局所領域シミングの領域選択と本スキャンに於ける信号抑圧領域の選択とを同時に行うので効率よく検査を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成12年6月2日(2000.6.2)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2001−340317(P2001−340317A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−170412(P2000−170412)