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【発明の名称】 磁気共鳴イメージング装置
【発明者】 【氏名】瀧澤 将宏

【氏名】高橋 哲彦

【要約】 【課題】

【解決手段】1画像分の時系列データを取得するパルスシーケンスを複数回繰り返し、時系列の画像を取得するダイナミック撮影を実行する制御手段を有する磁気共鳴イメージング装置において、前記制御手段は取得した所望の1画像分の時系列データと他の時系列データとの差分データに基づいて1画像分の各時系列データを補正する。これにより、脳機能計測の信号活性情報を失うことなく、ダイナミック撮影の時系列画像間の信号揺らぎを低減でき、良好な画像が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1画像分の時系列データを取得するパルスシーケンスを複数回繰り返し、時系列の画像を取得するダイナミック撮影を実行する制御手段を有する磁気共鳴イメージング装置において、前記制御手段は取得した所望の1画像分の時系列データと少なくとも該時系列データ以外の時系列データとの差分データに基づいて1画像分の各時系列データを補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】 前記制御手段は、取得した時系列データのうち基準となる基準データを選択し、該基準データと少なくとも基準データ以外の時系列データの位相差を計算し、該位相差からデータ補正用位相を作成し、該補正用位相を用いて各時系列データを補正することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】 複数回の高周波パルスの照射で1画像分の時系列データを取得するパルスシーケンスを複数画像分繰り返し、時系列の画像を取得するダイナミック撮影を実行する制御手段を有する磁気共鳴イメージング装置において、前記制御手段は取得した1画像分あるいは所望の範囲の時系列データと1画像分あるいは所望の範囲の時系列データとの差分データを画像単位毎に求め、該差分データに基づいて1画像分毎に1画像分あるいは所望の範囲の各時系列データを補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、NMRという)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化する磁気共鳴イメージング(以下、MRIという)装置に関し、特にダイナミック撮影において、ハードウエアや、制御の不安定性に起因する位相変化を除去し、信号揺らぎを効果的に低減することを可能としたMRI装置に関する。
【0002】
【従来の技術】MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に傾斜磁場、高周波(RF)磁場を印加することにより被検体に生じるNMR信号(エコー信号)を検出し、これを信号処理し画像化する装置であり、高品質な画像を得るために静磁場の高度の均一性が要求される。
【0003】MRI装置において、静磁場は永久磁石や超電導磁石等の静磁場発生手段によって形成され、高度の均一性が維持されるが、置かれた被検体の磁化率によっても磁場のオフセットが変化する。また、パルス状に印加された傾斜磁場の不完全性や出力応答等のシステムの不安定性の要因によって、計算上の出力と実際の出力との間に誤差が生じる場合がある。このような場合、サンプリングの中心と、エコー信号の発生位置がずれるため、サンプリングしたエコー信号を配置した計測空間上でエコー信号のピークが計測空間の中央からずれる。通常、計測空間でのエコー信号のピークずれは、フーリエ変換後の空間での1次関数的な位相変化に対応することが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のMRI装置において、画像を連続的に取得する撮影する方法としてダイナミック撮影法がある。このダイナミック撮影法は、例えば脳機能計測MRI(以下、fMRIという)に用いられており、1枚の画像を取得するパルスシーケンスを繰り返し実行し、1000〜2000枚程度の時系列の画像を取得する。この間、被検体に光や、指のタッピング、音等の様々な刺激を与え、刺激の印加とMRI画像の信号変化の相関を検定処理により求め、脳内の活性化領域を特定する。fMRIを精度良く行なう為には、データの時間分解能を向上する、即ち時系列画像間の時間間隔を小さくすることが望ましいので、高速撮影法が用いられることが多い。高速撮影法としては、1回のRFパルス印加に対し、読み出し傾斜磁場を反転しながら、複数のエコー信号を取得するエコープレナー(以下、EPIという)シーケンスある。
【0005】従来のダイナミックEPI撮影では、パルスシーケンスを繰り返し実行し、時系列画像を取得することから、パルスシーケンスの繰り返し毎にシステムの不安定性による傾斜磁場パルスの出力変動や、同期がずれることがある。この結果、エコー信号は位相変化を生じてしまい、時系列画像間で画素値が変わる、いわゆる信号揺らぎを起こす。fMRIで対象としている活性化信号は、画素値の数%程度のオーダーであるので、ダイナミック撮影における信号揺らぎが大きな問題となる。また、前計測データを用いた補正では、1回の前計測データからは各パルスシーケンス毎の個別のデータの補正は行えるが、システムの不安定性によるパルスシーケンス間の信号揺らぎまでは除去できない。
【0006】そこで本発明は、ダイナミック撮影の時系列データ間の位相変動を除去し、信号揺らぎを低減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明のMRI装置は、1画像分の時系列データを取得するパルスシーケンスを複数回繰り返し、時系列の画像を取得するダイナミック撮影を実行する制御手段を有する磁気共鳴イメージング装置において、前記制御手段は取得した所望の1画像分の時系列データと少なくとも該時系列データ以外の時系列データとの差分データに基づいて1画像分の各時系列データを補正するようにしたものである。そして、前記制御手段は、取得した時系列データのうち基準となる基準データを選択し、該基準データと少なくとも基準データ以外の時系列データの位相差を計算し、該位相差からデータ補正用位相を作成し、該補正用位相を用いて各時系列データを補正するようにしたものである。
【0008】さらに、複数回の高周波パルスの照射で1画像分の時系列データを取得するパルスシーケンスを複数画像分繰り返し、時系列の画像を取得するダイナミック撮影を実行する制御手段を有する磁気共鳴イメージング装置において、前記制御手段は取得した1画像分あるいは所望の範囲の時系列データと1画像分あるいは所望の範囲の時系列データとの差分データを1画像分毎に求め、該差分データに基づいて1画像分毎に1画像分あるいは所望の範囲の各時系列データを補正するようにしたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の磁気共鳴イメージング装置について、図面を参照して詳述する。図4は典型的な磁気共鳴イメージング装置の構成である。被検体401の周囲に静磁場を発生する磁石402と、該空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル403と、この領域に高周波磁場を発生するRFコイル404と被検体401が発生するNMR信号を検出するRFプローブ405がある。傾斜磁場コイル403は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源409からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル404はRF送信部410の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ405の信号は、信号検出部406で検出され、信号処理部407で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像は表示部408で表示される。傾斜磁場電源409、RF送信部410、信号検出部406は制御部411で制御され、制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。ベッド412は被検体が横たわるためのものである。
【0010】現在MRI装置の撮影対象は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質、プロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。
【0011】次に、撮影方法を説明する。傾斜磁場により異なる位相エンコードを与え、それぞれの位相エンコードで得られるエコー信号を検出する。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり64、128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として得られる。これらのデータを2次元フーリエ変換して1枚のMR画像を作成する。代表的な高速シーケンスとしてEPIシーケンスがある。
【0012】図2はシングルショットグラディエントエコーEPIシーケンスを示す図である。まず、検知する磁化を含む被検体に高周波パルス201を照射すると同時にスライスを選択する傾斜磁場パルス202を印加し、画像化するスライスを選択する。次いで位相エンコードのオフセットを与えるパルス203と読み出し傾斜磁場のオフセットを与えるパルス204を印加し、位相エンコード傾斜磁場パルス205を離散的に印加しながら反転する読み出し傾斜磁場206の各周期内で各位相エンコードのエコー信号208をサンプリング207する。1枚の画像再構成に必要なエコーは、時間間隔209で全て取得される。ダイナミック撮影では、このようなシーケンス209を複数回(N回)繰り返し、N枚の時系列画像を得る。
【0013】図1を用いて本発明の実施例を説明する。図2のパルスシーケンスを実行して取得した各時系列データ208nをs(n,m,t)とする。ここで、m(1≦m≦M)は209内で取得するエコー数(=位相エンコード方向のデータ数)、tはサンプリング時間(=読み出し方向の点数)、n(1≦n≦N)は209の繰り返し数(=画像枚数)である。まず、取得したエコー208nを読み出し方向にフーリエ変換し(ステップ101)、時系列データ104nを算出する。次に、時系列データ104nのうちの一つを基準データ105として選択する(ステップ102)。この基準データ105と、各時系列データ104nについて信号揺らぎ補正を行い(ステップ103n)、補正された時系列データ106nを得る。
【0014】信号揺らぎ補正の詳細を図3を用いて説明する。最初に、基準データ105(s(n0,m,x))と時系列データ104( s(n,m,x))との位相差マップ302( p(n,m,x))を計算する(ステップ301)。例えば、具体的な計算は(1)式及び(2)式で示される。
【0015】
【数1】

【0016】時系列データ104nから位相差マップ302nを位相減算することで、システムの不安定性による変動を低減することができる。本実施例においては、脳機能解析で対象としている活性化の信号変動が画素値の数%であることと、信号揺らぎに大きく影響するのは、偶数番目のデータと奇数番目のデータ間に生じた位相差であることから、位相差マップ302nから補正用の位相を算出し、時系列データ104nの補正を行なう。
【0017】以下、補正用の位相の算出を説明する。まず、位相差マップ302nを奇数番目の位相差マップ304nと偶数番目の位相差マップ305nに分割する(ステップ3031)。ステップ3031を模式的に表すと図5のように示される。図5(a)は位相差マップ302nであり、横軸はx、縦軸はky(エコー番号mに対応する)であり、図の上から順にM個のデータを配置する。1≦i≦M/2とした場合、奇数番目のデータはm=2×i−1のデータを抜き出して、位相差304nとし(図5(b))、偶数番目のデータはm=2×iのデータを抜き出して、位相差305nとする(図5(c))。
【0018】また、位相差マップ302nを奇数番目と偶数番目のデータに分割したのと同様に、時系列データ104nも奇数番目のデータ308n(s(n,2×i-1,x))と偶数番目のデータ309n(s(n,2×i,x))に分割する(ステップ3032)。
【0019】次に、奇数番目の位相差マップ304nから奇数番目の補正用位相3071( po(n,x))を求め(ステップ3061)、同様に偶数番目の位相差マップ305nから偶数番目の補正用位相3072(pe(n,x))を求める(ステップ3062)。なお、画像全体の信号を用いるとノイズの影響がその分多くなるため、ノイズ成分を多く含む高周波成分を除き低周波成分だけを補正用位相3071、3072としてもよい。位相差マップ302nの中心ラインが低周波成分(ky=0)であるので、分割した位相差マップ304n、305nの中心ラインも、それぞれ低周波成分となる。そこで、図5(b),(c)に示すように、それぞれ中心ライン付近のNo、Ne個を平均して、例えば(3)式及び(4)式から補正用位相3071、3072とする。
【0020】
【数2】

No、Neの具体的な数としては、M=64の場合はNo=8、Ne=7とすることが望ましい。
【0021】次に、奇数番目の補正用位相3071を用いて奇数番目のデータ308nを補正しデータ311を得る(ステップ3101)と共に、偶数番目の補正用位相3072を用いて偶数番目のデータ309を補正してデータ312を得る(ステップ3102)。例えば、ステップ3101は具体的には、(5)式及び(6)式で求められ、またステップ3102は(7)式及び(8)式で求められる。
【0022】
【数3】

【0023】最後に、補正後の奇数番目のデータ311と偶数番目のデータ312とを結合して、1枚の画像用の時系列データ106nを作成する(ステップ313)。データの結合(ステップ313)では、データの分割(ステップ303n)の逆の操作を行なう。
【0024】この結果、ダイナミック撮影におけるパルスシーケンス間の信号の揺らぎを低減することができ、良好な画像を得ることができる。
【0025】次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本発明においては、EPIシーケンスを用いているが、読み出し傾斜磁場を反転してエコー信号を取得するため、読み出したエコー信号の情報が左右逆となるので、再構成時に左右反転を行なう必要がある。このため、エコーのピークが一様にずれると、左右反転の影響で奇数番目のエコーと偶数番目のエコーのピーク位置がそろわないため、この状態で読み出し方向にフーリエ変換を行なうと、奇数番目のデータと偶数番目のデータ間に位相の差が生じ、位相エンコード方向のフーリエ変換時にアーチファクト(N/2アーチファクトと呼ぶ)が生じてしまう。
【0026】基準データ105に奇数番目のエコーと偶数番目のエコー間の位相差によるN/2アーチファクトが存在したまま補正を行うと、パルスシーケンス間の信号揺らぎは低減できるが、N/2アーチファクトは低減されずに画像化されてしまう。
【0027】そこで、被検体の画像形成のための撮影(本計測)に先立って、位相エンコード傾斜磁場を印加しないで補正用のデータを取得しておき、この補正用データを用いて本計測データを補正する。この補正の手段として、例えば、一組の奇数エコー、偶数エコーの補正用データを取得し、これらをフーリエ変換した後にエコー間の位相差を求め、本計測データを補正する。これによりN/2アーチファクトが低減できる。そして、この後もしくは同時に、位相差マップ302nを作成し、奇数番目と偶数番目の補正用位相3061,3062を作成し、位相補正3101,3102をすることで、N/2アーチファクトの低減と共に信号揺らぎも低減できる。
【0028】また、N/2アーチファクトの補正に、本計測データのエコーと同じ数の補正用データを取得し、補正用データと本計測データをそれぞれ読み出し方向にフーリエ変換した後に、本計測データから前計測データの位相を減算する方法を用いてもよい。
【0029】次に、本発明の第3の実施形態としてマルチショット型のシーケンスへの適用について説明する。シングルショット型のシーケンスでは1回の高周波パルスの照射で1画像分のエコー信号を全て取得できるが、マルチショット型のシーケンスにおいては、1画像を取得するのに複数回の高周波パルスを照射する。第1の実施形態においては、1回のシーケンス(1回の高周波パルスの照射)で得られる時系列データは1画像分であり、この1画像分の時系列データのうちの1つを基準データに選定しているが、本実施形態においては複数のシーケンスで1画像分のデータを得るため、複数の時系列データを基準データに選定する。
【0030】図6及び図7において詳細を説明する。図7のパルスシーケンスを実行して取得した各時系列データ708nをs(n,m,t)とする。シングルショット型のシーケンスと同様に、m(1≦m≦M)は209内で取得するエコー数(=位相エンコード方向のデータ数)、tはサンプリング時間(=読み出し方向の点数)、n(1≦n≦N)は209の繰り返し数(=画像枚数)である。そして、シングルショット型のシーケンスとの違いは1画像分のデータを3回のシーケンスで取得する点である。つまり、1枚目の画像は7081'、7081''、7081'''と3回のシーケンスで得た信号で構成される。まず、取得したエコー708n'、708n''、708n'''を読み出し方向にフーリエ変換し(ステップ601)、時系列データ604n'、604n''、604n'''を算出する。次に、時系列データ604n'、604n''、604n'''のうちの1画像分を基準データ605(605'、605''、605''')として選択する(ステップ602)。この基準データ605(605'、605''、605''')と、各時系列データ604n'、604n''、604n'''について信号揺らぎ補正を行い(ステップ603n)、補正された時系列データ606n'、606n''、606n'''を得る。そして、時系列データ606n'、606n''、606n'''を合成して、1枚の画像を得る。
【0031】また、1画像分を構成する複数シーケンスのうち低周波成分に該当する時系列データのみを基準データにして、補正も低周波成分に該当する時系列データを対象にしてもよい。つまり、図8に示すように、取得したエコー708n'、708n''、708n'''を読み出し方向にフーリエ変換し(ステップ801)、時系列データ804n'、804n''、804n'''を算出する。次に、時系列データ604n'、604n''、604n'''のうちの1画像分のうちの低周波成分に該当するデータを基準データ805として選択する(ステップ802)。本実施例では2回目のシーケンスで得たデータを対象とする。この基準データ805と、各時系列データのうち対応する時系列データ(2回目のシーケンスに相当するデータ)804n''について信号揺らぎ補正を行い(ステップ803n)、補正された時系列データ806n''を得る。そして、補正前の時系列データ804n'、804n'''と補正後の時系列データ806n''を合成して、1枚の画像を得る。
【0032】このように、マルチショット型のシーケンスにおいても、信号揺らぎを低減することができる。なお、以上の実施例においては1画像分の時系列データを基準データとしたが、1画像分に限定することなく、複数画像分でもよく、複数画像分の時系列データを加算平均したデータとしてもよい。また、本発明は、以上の実施例で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で各種形態を取り得る。マルチスライス、3D計測等に本処理を適用することも可能である。
【0033】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、fMRIの信号活性情報を失うことなく、ダイナミック撮影の時系列画像間の信号揺らぎを低減できるため、良好な画像を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成12年6月6日(2000.6.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−340316(P2001−340316A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−168656(P2000−168656)